審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成24ネ10010不当利得返還,損害賠償等請求控訴事件 | 判例 | 商標 |
平成23ワ7858損害賠償請求事件 | 判例 | 商標 |
平成25ネ10021商品販売差止請求権不存在確認請求控訴事件 | 判例 | 商標 |
平成24ワ8346商標権侵害差止等請求事件 | 判例 | 商標 |
平成22ワ44788損害賠償等請求事件 | 判例 | 商標 |
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事件 |
平成
24年
(ネ)
10082号
商標権侵害差止等請求控訴,同附帯控訴事件
平成 24年 (ネ) 10089号 商標権侵害差止等請求控訴,同附帯控訴事件 |
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控訴人・附帯被控訴人 株式会社チェルシー 訴訟代理人弁護士 土谷喜輝 同 土橋央征 同 荒牧浩昭 被控訴人・附帯控訴人 株式会社PLATFORM 訴訟代理人弁護士 照井勝 同 星知矩 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2013/03/18 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 本件控訴及び附帯控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人の,附帯控訴費用は附帯控訴人の各負担とする。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求める裁判
1 控訴 (1) 原判決を次のとおり変更する。 (2) 被控訴人・附帯控訴人(以下「被告」という。 は, ) 控訴人・附帯被控訴人(以下「原告」という。)に対し,269万6816円及びこれに対する平成22年1月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (3) 被告は,原告に対し,原判決別紙商標目録6及び7記載の各商標権について,同別紙登録目録記載の登録の抹消登録手続をせよ。 (4) 訴訟費用は,第1,2審とも,被告の負担とする。 2 附帯控訴 (1) 原判決中,被告敗訴部分を取り消す。 (2) 原告の上記取消しに係る部分の請求を棄却する。 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも,原告の負担とする。 |
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事案の概要
1 本件は,原告が,被告に対し,@原告,被告及び株式会社エムズリーグ(以下「エムズリーグ」という。)の3者間で締結した原告及びエムズリーグが共有する原判決別紙商標権目録1〜5記載の各商標権(以下,同商標権目録1〜7記載の商標権を「本件商標権1」〜「本件商標権7」,その登録商標を「本件登録商標1」〜「本件登録商標7」という。)の独占的使用権を被告に許諾する旨のライセンス契約(以下「本件ライセンス契約」という。)に基づく平成21年6月22日から同年11月26日までの間の未払ロイヤルティ269万6816円及びこれに対する弁済期の翌日である平成22年1月1日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金並びに本件ライセンス契約の債務不履行に基づく弁護士費用相当額の損害賠償金100万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である同年3月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,A原告及びエムズリーグの共有に属する本件商標権6,7について,被告に原告の持分権を譲渡した事実がないのに,被告名 義 の不実の商標権 移転 登録(原判決別紙登録目録記載の商標権移転登録。以下「本件移転登録」という。)がされているとして,本件商標権6,7の持分権に基づき,本件移転登録の抹消登録手続を求める事案である。 2 原審の東京地裁は,平成24年9月28日,原告の上記各請求について,本件ライセンス契約に基づく未払ロイヤルティ269万6816円及びこれに対する平成22年1月1日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において認容し,その余の請求を棄却した。 そこで,原告は,前記第1の1の裁判を求めて控訴をし,被告は,同2の裁判を求めて附帯控訴をした。 |
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当事者の主張
1 当事者の主張は,次に付加するほか,原判決「事実及び理由」欄第3「当事者の主張」記載のとおりであるから,これを引用する(略称は,本判決で注記したもののほか,原判決のものを用いる。)。 2 控訴について (1) 原告の主張 ア 本件譲渡証書の不成立 原判決は,本件譲渡証書は真正に成立したものと推定されるとしたが,文書に本人の押印がある場合,民事訴訟法228条4項により真正に成立したものと推定されるのは,本人が保有している印章による印影があれば,本人が押印したと推定されるからである。しかし,原告の実印は,Aが被告の事務所において保管しており,同条項による推定が働く場面ではなく,被告は,原告が本件譲渡証書に押印した事実を立証する必要がある。 仮に民事訴訟法228条4項が適用されるとしても,が被告の事務所において原 A告の実印を保管していたという事実は,反証の一つに該当するから,後述する理由などからも,本件譲渡証書の成立は認められない。 イ 本件譲渡の合意の不存在 (ア) 原判決は,@平成21年3月1日以降,被告の事業収益をB,A及びCの3者で分配するため,原告及びエムズリーグが共有する商標権については全て無償で被告に譲渡することが想定されていたこと, AがB及びCに送信した平成21年5月13 A日付け電子メール中に,「今回の商標権の移管に伴いMUVEIL関連の商標をPLATOFORMに移管したく思います」との記載があること,BAがBに送信した同年6月4日付けメールに,「MUVEILは既にPF(判決注:被告)に移管手続き開始しております」とあり,これに対し,Bが同月5日付けメールで, ほぼ理 「解できました」と返信していること,C同月11日,捺印作業が行われ,その終了後に,Aから,D弁理士に対し,本件商標権6,7の譲渡に関する一連の資料が送付されていることを理由に,本件譲渡の合意が成立したと認定した。 しかし,パートナーシップ解消後,すなわちBが被告の株式売却後は,被告に本件商標権6,7が移転すると,Bは,間接的にもこれらの商標を保有できなくなるのであり,平成21年5月13日時点とは全く利害関係が異なる。原判決は,パートナーシップ解消の前後で利害関係が異なることを全く理解しておらず,このような誤解が認定を誤らせたものである。 (イ) 平成21年6月4日には,本件商標権6,7の譲渡については,全く話し合われていない。 また,Bは,同月11日には,本件商標権6,7の無償譲渡の話は出ておらず,無償譲渡に関する書類に押印していないという明確な記憶があるのであり,このことは他の捺印書類を覚えていないことと何ら矛盾しない。本件譲渡証書(乙56の4枚目)の年月日欄には,「平成21年4月28日」と手書きで数字部分が記入されているが,BとAが,同年6月11日に本件譲渡の合意をしたのであれば,本件譲渡証書の年月日欄にも「平成21年6月11日」と記載すれば足りたはずである。かかる日付が記載されていないことからも,同日には,本件譲渡の合意がなされていないことが推認される。 (ウ) 原判決は,@Bが本件商標権1〜5の譲渡の受け皿となる新会社を設立し,A本件商標権1〜5を使用した商品の取引を展開することで利益が得られるものと期待していたと認められること,BBが,被告の株式の譲渡代金として,Aから750万円を受領していること,C被告のみずほ銀行に対する借入金債務の連帯保証債務が免除されること,D本件登録商標6,7を使用した商品の売上高が被告の他のブランド商品と比較してそれほど大きくなかったと認識していたことなどを理由として,本件商標権6,7を被告に無償で譲渡することは,Bにとって,特段不合理な取引ではないと認定した。 しかし,被告が平成21年当時赤字であったことから明らかなとおり,本件商標権1〜5を使用した商品の取引を展開することにより利益が得られるなどとは,Bはもとより,誰も想定していなかったから,上記@,Aは理由にならない。また,被告の株式を売却する際には,被告グループの連結決算直近12か月の純資産から計算することとされ(株主間協定書(乙3)第4条),Bは,被告の純資産約6344万円(乙14),被告の子会社FRIENDSの純資産約325万円の合計約6669万円の3分の1である約2223万円で株式を売却することができたのであるから,上記Bは本件譲渡の合理性を基礎づける事情になるはずがない。さらに,被告の資産状況(乙14)などから連帯保証債務が現実化することは考えられない 上記Cは本件譲渡の合理性を基礎づける事情にはならず,上記Dについても,から,本件登録商標6,7を使用した商品の売上げが大きく伸びることが予測されていたのであるから,誤りである。 原判決は, ートナーシップ解消前に話が出ていた本件商標権6, パ 以上のとおり,7の移転がパートナーシップ解消後も続いていたかのように誤解して,本件合意を認定したものである。 (2) 被告の反論 ア 本件譲渡証書の不成立の主張に対し 本人が印章を保管していないとの一事をもって,民事訴訟法228条4項に基づく推定が働かないと解するのは誤りであり,推定を覆す事情としては,あくまで受託者が委託の趣旨に反して使用した場合や, 者が濫用した場合などに限られる。 保管 本件において,上記の場合に当たるような事実が存在しないことは,証拠全体から明らかであり,原判決が正しく判示するとおりである。 イ 本件譲渡の合意の不存在の主張に対し (ア) Aは,平成21年6月1日及び同月4日の2回にわたり,Bの入院先を訪問し,本件パートナーシップ解消の話合いを持ち,同月4日,その話合いの結果をまとめた内容の電子メール(本件登録商標6,7の被告への移転に向けた手続が進められていることが明記されている。乙7,18)をBに送信した。これに対し,Bは,その翌日に,「ほぼ理解できました。退院次第,豊田(被告注:豊田通商)と話し,この予定に支障ないよう話します。」と返信し(乙8),本件登録商標6,7の移転手続について認識し,理解している旨をAに伝えていた。 Bが退院した後の同月11日午前11時, 本件譲渡証書 乙 被告の事務所において, (56の4枚目)を含めた本件パートナーシップ解消に関する関係書類の捺印がAとBとの間で行われた。 は, A 同日, 弁理士に対し本件譲渡証書, D 本件取締役会承認書 乙 (56の5枚目)等を送付し,D弁理士は,翌12日,本件譲渡証書,本件取締役会承認書等を添付した本件移転登録の申請手続を行い,その旨の移転登録がなされたものである。 (イ) 原告は,本件パートナーシップ解消の前後で利害関係が大きく変化したと主張するが,Bが,Aやその他の関係者に対し,譲渡の中止を求めたり,又は有償譲渡を求めるなど行動をとった事実を認めるに足りる証拠は存在しない。本件パートナーシップ解消は,Bが保有する被告の全株式をAに譲渡することを意味するが,本件 7を使用しているのは被告の子会社であるFRIENDSであるから,登録商標6,BがFRIENDSの経営に関与できなくなることを意味し, 的に本件登録商標 必然6,7の使用にも関与できなくなることを意味する。本件登録商標6,7の無償譲渡は,本件パートナーシップ解消に伴う利害関係の変化に合致していると考えるのが自然かつ合理的である。 (ウ) 本件譲渡証書のドラフト(乙19の2)の日付欄には,手書きで「記入しないで下さい」と記載され,D弁理士が空欄での捺印を求めたのであり,仮にAが捺印を偽造するのであれば,成立に疑義を生じさせるような平成21年6月11日以前の日にちをあえて記入する動機も理由もない。 (エ) 原告は,本件登録商標1〜5を使用した商品の取引を展開することにより利益が得られるとは想定していなかったなどと主張する。しかしながら,本件パートナーシップ解消後に,本件商標権1〜5がBの個人会社又はBと提携予定であった豊田通商等の第三者に譲渡予定であったのであるから,利益が得られると思っていない商標権を自己の個人会社や提携先に譲渡することを予定していたなどと主張すること自体が,不自然極まりないものである。 また,原告は,株主間協定書(乙3)に規定する算定方式に基づき,Bは約2223万円での株式を売却できたと主張する。しかしながら,株主間協定書に規定する算定方式に基づかずに株式を売却したのは,それだけ当時の被告の財務体質が悪化していた事実を端的に示しているにすぎない。平成21年5月末時点における連帯保証債務の主たる債務である被告の長期借入金債務の残高は合計4500万円と高 B 被告の事業に関する自らの連帯保証が解約できるかどうかに強い関額であり, は,心を示していた。連帯保証債務が現実化することは考えられないとの原告の主張には,何ら理由がないというべきである。 3 附帯控訴について (1) 被告の主張 ア 本件使用許諾の合意は,@本件ライセンス契約解除後の被告による2009年秋冬商品の販売行為の許諾と,Aこれに伴う対価(ロイヤルティ)が無償であることの合意から構成される抗弁である。 しかるところ,Bは,平成21年6月1日覚書が締結された後も,被告による2009年秋冬商品の販売を認識していただけでなく,平成21年7月31日付け「通知書」(甲7の1)を被告に対して送付するまで,その販売に積極的に協力していたから,上記@の事実が認められることは明らかである。 したがって,本件使用許諾の成否は,上記Aの合意を認定できる直接証拠又はかかる事実の存在を推認させる間接事実が存在するか否かに帰着する。 (ア) AがBに送信した6月4日付けメール(乙7)には,被告が2009年秋冬商品の取引先に対する「納品」のみならず「売掛回収」まで行うこと,「サンプル代金・展示会費用」は被告が負担する旨が記載されているが,このように本件ライセンス契約解除後の被告による販売行為及びこれに付随して被告が負担する経費・費用を列記しながら,その中からロイヤルティは明確に除外されている。また,6月4日付けメールでは,被告に資金的余裕がないことが繰り返し記載されていたのであり,この点からも被告が負担する予定であった上記経費・費用対象は明記されていたものに限定的に解釈するのが自然かつ合理的である。 そして,有償であることを明記してなく,有償であることを推認させる記載のない6月4日付けメールから推認される事実は,AとBの平成21年6月1日及び同月4日の話合いにおいて,被告による2009年秋冬商品での使用はロイヤルティを無償とすることが合意されたという事実であり,少なくともロイヤルティが無償であることを前提とした黙示の合意があったと解するのが合理的である。 したがって,6月4日付けメールにおいてロイヤルティについて何ら記載されていないという間接事実から推認される事実は,契約解除後のロイヤルティも引き続き無償とする合意があったという事実である。 (イ) 本件ライセンス契約に基づくロイヤルティは,同契約が締結された平成18年8月31日当時,卸売価格又は小売価格の5%に設定されていたが(甲3の第4条1項),被告の財務状況の悪化を受けて,平成19年3月以降5%から2%に減額され(乙39),さらに,原告及びエムズリーグとの間で締結された平成20年11月30日覚書(乙2の1,2)第2条に基づき,将来発生する分も含めてロイヤルティ全額の免除が合意されていた。したがって,同覚書が締結された当時,原告及び被告間において,同日以降に発生する将来のロイヤルティに関しても全額免除し,別途合意をしない限り,ロイヤルティを発生させない旨の合意が成立していたと解するのが合理的である。再び有償のロイヤルティに戻すのであれば,有償である旨及びその比率について協議するのが自然であり,資金的に逼迫していた被告の財務状況を考慮すれば,有償であるのならば,その旨やその比率について協議・言及していたはずである。しかしながら,かかる事実が存在したことを認めるに足りる証拠は存在しない。 また,Bは,平成21年6月12日以降,本件ライセンス契約第15条4項に基づくリストの提出を求めたことは一度もなかったのであり,同条5項適用の前提となる4項の履行を求めていない以上,当事者としては同条4項及び5項の適用を予定していなかったと解するのが合理的である。 イ 更改による債務消滅 平成21年6月1日付け覚書 甲6)第4条には, 甲 「 (判決注:原告)及び乙 ( (判決注:被告)は,当事者間に本覚書締結日現在で,本覚書に定める外,本契約に関しては何らの債権・債務のないことを相互に確認する。」と記載されている。同覚書が締結され本件ライセンス契約が解除された後も,が被告による2009年秋冬 B商品の販売を認識していたのみならず,これに積極的に協力していたことからすれば,上記規定は,本件ライセンス契約解除後に被告が2009年秋冬商品を販売する権限を否定するものではなく,単に当該販売に伴い,被告が原告に対しロイヤリティ等の金銭債務を負わないことを確認 合意していたと解するのが合理的である。 ・また,同覚書第1条は,用語の定義は本件ライセンス契約の定義に従う旨を規定しているが,本件ライセンス契約第15条4項,5項が引き続き適用されるとは規定されていない。 したがって,平成21年6月11日又は同月12日以降,平成21年6月1日付け覚書第4条によって,本件ライセンス契約の第15条4項,5項に基づく被告の金銭債務は,更改により消滅したと解するのが合理的である(民法513条1項及び2項)。 (2) 原告の反論 被告の更改による債務消滅の主張は,否認ないし争う。 |
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当裁判所の判断
1 当裁判所も,原告の本訴各請求は,本件ライセンス契約に基づく未払ロイヤルティ269万6816円及びこれに対する平成22年1月1日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却すべきものと判断する。その理由は,次に付加するほか,原判決の「事実及び理由」欄第4の1ないし3記載のとおりであるから,これを引用する。 2 控訴について (1) 本件譲渡証書の不成立の主張について 原告の実印はAが被告の事務所において保管していたことを理由に, 原告は, 民事訴訟法228条4項による推定は働かず, に同項が適用されるとしても, が被告 仮 Aの事務所において原告の実印を保管していたという事実は反証の一つに該当するから,本件譲渡証書(乙56の4枚目)の成立は認められないと主張する。 確かに,平成21年6月11日当時,Aが被告の事務所で原告の実印を保管・管理していたことは,前記認定(引用に係る原判決33頁1行〜2行)のとおりである。 しかしながら,本件譲渡証書の譲渡人欄における原告の印影は原告の意思に基づいて顕出されたものと認められることは前記説示(引用に係る原判決32頁9行〜39頁9行)のとおりであるから,本件譲渡証書は,民事訴訟法228条4項により真正に成立したものと推定されるというべきであり,原告の主張は理由がない。 (2) 本件譲渡の合意の不存在の主張について ア 原告は,本件パートナーシップ解消後は,平成21年5月13日時点とは全く利害関係が異なるから,本件パートナーシップ解消前に本件商標権6,7の譲渡の話が進んでいたことは, 本件譲渡の合意を認定する理由とはならないと主張する。 しかしながら,本件パートナーシップ解消に当たって,Bは,本件商標権1〜5の譲渡を受ける新会社の代表者に就任する予定であり,新会社における本件商標1〜5を使用した商品の取引から利益が得られると期待していたこと,AがBに対し被告の株式(750株)の譲渡代金として750万円を支払い,また,被告のみずほ銀行に対する長期借入金(平成21年5月末現在の残高合計4500万円) 関するB にの連帯保証債務を免除する合意をしたこと等を考慮すると,本件商標権6,7を被告に無償で譲渡することがBにとって不合理な取引ということはできないことは, 前記説示(引用に係る原判決37頁11行〜38頁11行)のとおりである。 これらの点について,原告は,本件商標権1〜5を使用した商品の取引を展開することにより利益が得られるなどとは誰も想定していなかった,被告の株式は合計約2223万円で売却することができた,被告の資産状況などから連帯保証債務が現実化することは考えられないなどと主張する。しかし, が豊田通商から本件商標 B権1〜5の譲渡の受け皿となる新会社の代表者に就任するという条件で豊田通商と交渉していたことは,B作成の陳述書(甲15)にも記載されているとおりであるところ,これらの商標権が本件パートナーシップの解消に際して被告に譲渡された本件商標権6,7と比較して価値のないものであったとは認められないし,また,平成21年5月当時,被告の財務状況は悪化しており,みずほ銀行に対する長期借入金債務の残高が4500万円に上っていたこと(乙11の4,12の4)からすれば,被告の株式が高額で売却できたと認めることはできず,また,連帯保証債務が現実化する可能性も否定し得ない状況であったと認められる。 したがって,原告の上記主張は,いずれも採用することができない。 イ 原告は,本件譲渡証書の年月日欄に「平成21年4月28日」と記載されていることは,平成21年6月11日に本件譲渡の合意がなされていないことが推認されると主張する。 しかしながら,本件譲渡証書の年月日欄は,D弁理士が,平成21年6月12日,特許庁に本件移転登録申請手続をする際に手書きで書き加えたことは前記認定(引用に係る原判決25頁13行〜15行)のとおりであるところ,そのことが本件譲渡の合意がなされていないことを推認する事情になるとは認められず,原告の主張は理由がない。 ウ 原告は,そのほかにも縷々主張するが,採用の限りではない。 (3) 以上のとおり,原告の当審における主張はいずれも採用することができず,本件控訴は理由がない。 3 附帯控訴について (1)ア 被告は,6月4日付けメール(乙7)に被告による2009年秋冬商品での本件商標1〜5の使用についてロイヤルティを有償とする記載がないことから,少なくともロイヤルティを無償とする合意があったと推認される,が平成21年6 B月12日以降本件ライセンス契約第15条4項に基づくリストの提出を求めなかった以上,同条5項の適用を予定していなかったなどと主張する。 しかしながら,本件ライセンス契約第15条5項には,契約期間満了後又は解除後の販売も本件ライセンス契約に定められたロイヤルティの支払の対象となることが明記されているのであって,6月4日付けメールにロイヤルティを有償とする記載がないからといって, これを無償とする合意があったものと認めることはできず,また, が同条4項のリストの提出を求めなかったからといって, 条5項の適用を B 同予定していなかったと認めることもできない。 イ 被告は,原告及びエムズリーグとの間で締結された平成20年11月30日覚書(乙2の1,2)が締結された当時,原告及び被告間において,同日以降に発生する将来のロイヤルティに関して全額免除し,別途合意をしない限り,ロイヤルティを発生しない合意が成立していたと主張する。 しかしながら,上記各覚書には,経営状況の悪化に伴い,別途合意する期間内に発生するロイヤルティ全額を免除する旨の記載はあるが,同日以降に発生する将来のロイヤルティに関して全額免除する旨の記載はなく,また,上記別途合意する期間として2009年秋冬商品の販売に係る期間(平成21年6月22日から同年11月26日までの期間)が合意されたことを認めるに足りる証拠はない。 ウ したがって,被告の上記主張はいずれも採用することができない。 (2) 更改による債務消滅の主張について 被告は,平成21年6月1日付け覚書(甲6)第4条に「甲(判決注:原告)及び乙(判決注:被告)は,当事者間に本覚書締結日現在で,本覚書に定める外,本契約(判決注:本件ライセンス契約)に関しては何らの債権・債務のないことを相互に確認する。」と記載されていることを根拠に,本件ライセンス契約の第15条4項, 項に基づく被告の金銭債務は, 改により消滅したと解するのが合理的で 5 更ある(民法513条1項及び2項)と主張する。 債務の要素 給付の内容, を変更することによって, 更改は, ( 債権者,債務者等)もとの債権を消滅させ,新たな債権を成立させる契約である。しかしながら,被告が更改の根拠とする前記覚書第4条は,上記のとおり「本覚書締結日現在」すなわち平成21年6月1日現在において,「本覚書に定める外,本契約に関しては何らの債権・債務のないことを相互に確認する」ことは記載されているが,本件ライセンス契約の債務の要素を変更する趣旨の記載はない。 したがって,上記覚書第4条から被告主張の更改を認めることはできず,また,上記記載をもって,2009年秋冬商品の販売に係る期間(平成21年6月22日から同年11月26日までの期間) 発生するロイヤルティを無償とする, に ないしは消滅させる趣旨と解することもできない。 って,被告の上記主張も採用するこ よとができない。 (3) 以上のとおり,被告の当審における主張はいずれも採用することができず,本件附帯控訴は理由がない。 4 結論以上のとおり,原判決は相当であって,本件控訴及び附帯控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 |