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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成24行ケ10336審決取消請求事件 判例 商標
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事件 平成 25年 (行ケ) 10026号 審決取消請求事件 
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2013/05/30
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
判例全文
判例全文
平成25年5月30日判決言渡

平成25年(行ケ)第10026号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 平成25年4月30日

判 決



原 告 株 式 会 社 庫 や



訴訟代理人弁護士 矢 野 義 宏

弁理士 阪 本 清 孝



被 告 株 式 会 社 い づ み や



訴訟代理人弁護士 鈴 木 修

中 野 亮 介

弁理士 柳 生 征 男



主 文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。



事 実 及 び 理 由

第1 原告の求めた判決

特許庁が無効2012−890039号事件について平成24年12月18日に

した審決を取り消す。



第2 事案の概要





本件は,商標登録無効審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。争点は,

商標法4条1項11号,10号,19号,15号,7号の該当性である。(以下,

「7号」,「10号」,「11号」,「15号」,「19号」というときは商標法

4条1項における号を指す。)

1 特許庁における手続の経緯

(1) 被告は,本件商標権者である(甲1)。

【本件商標】(登録第5415157号)

御用邸の月 (標準文字)

指定商品 第30類「菓子及びパン」

・出願日 平成22年11月29日

・登録日 平成23年5月27日

(2) 原告は,平成24年5月11日,本件商標の登録無効審判(無効2012

−890039号)を請求した。

特許庁は,平成24年12月18日,「本件審判の請求は成り立たない。」との

審決をし,その謄本は同月28日,原告に送達された。

(3) 原告は,審判において,無効事由として7号,10号,11号,15号及

び19号該当を主張し,引用商標として以下の商標を援用した(甲2)。

【引用商標】(登録第3161363号)




指定商品 第30類「菓子及びパン」

・出願日 平成5年9月21日





・登録日 平成8年5月31日

・商標権者 A

2 審決の理由の要点
1 原告の使用に係る商標「御用邸」の周知・著名性及び「御用邸」の語の独創性に

ついて

(1)「御用邸」の語について

「御用邸」とは,「皇室の別邸」を意味する語である(甲52(審決乙2))。そ

して,「御用邸」は,現在,栃木県の那須郡那須町,神奈川県三浦郡葉山町及び静岡

県下田市の三か所に存在し,これら御用邸は,天皇皇后両陛下・皇太子同妃両殿下・

皇族方がご静養に使用される場である(甲53(審決乙3))ことが知られているこ

とから,上記各地域にある御用邸は,一般に広く知られているものということができ

る。

(2)原告の使用に係る商標「御用邸」の周知・著名性について

原告は,「菓子製造と販売」を主たる業務とする製造会社(甲3)であり,原告会

社の代表者であるAは,「御用邸」の文字よりなる商標を平成5年9月21日に第3

0類「菓子及びパン」を指定商品として特許庁に登録出願し(甲2),原告は,平成

6年よりチーズケーキに本件商標を使用した「御用邸チーズケーキ」の販売を開始し

た(甲20)。

「御用邸チーズケーキ」は,平成12年にオープンした原告が経営する「チーズガ

ーデン五峰館」で販売している(甲5)ほか,原告の主張によれば,原告のホームペ

ージをはじめ,JR宇都宮駅,JR上野駅,東北自動車道 那須高原サービスエリア

下り,同 上河内サービスエリア下り,同 上河内サービスエリア上り,同 佐野サ

ービスエリア上り,道の駅 どまんなか田沼,ホテル サンバレー那須,ホテル ラ

フォーレ那須,ホテル東急ハーヴェスト那須,ホテルエビナール那須,大丸百貨店

東京店,阪急百貨店 梅田本店,同 大井食品館,新宿京王百貨店,東武百貨店 宇

都宮店,同 船橋店,同 池袋店,福田屋百貨店 宇都宮店,ショッピングモール





ベルモールで販売され,平成22年には,約77万個が販売されている(甲20)。

なお,「チーズガーデン五峰館」の入館数は,平成21年ころには,年間100万

人を超え(甲20) 那須への旅行客が訪れることが多い人気スポットとなっている。


また,「御用邸チーズケーキ」について,旅行雑誌など,那須地方に関する雑誌等

に掲載されているほか(甲4〜甲14),那須周辺道路への看板(甲15),東京駅

での広告(甲16)などが行われたことが認められ,また,東京をキー局とするテレ

ビ局を中心に番組に取り上げられたことがあることが認められる。

そして,平成18年ころから,チーズケーキ以外の菓子に「御用邸」の商標を使用

して販売していることが認められる。

原告の使用する商標「御用邸チーズケーキ」は,商品の包装や広告には「御用邸」

の文字を特徴のある書体で大きく表し,「チーズケーキ」の文字を一般的な書体で小

さく表して使用されているが,新聞,雑誌あるいは個人のブログでは,「御用邸チー

ズケーキ」のように使用され,「御用邸」の文字のみにより使用された事実は見当た

らない。

以上によれば,本件商標の登録出願時及び査定時において,「御用邸チーズケーキ」

は,那須を訪れる旅行客を中心に原告の業務に係る商品を表示するものとして広く知

られているものということができ,「御用邸」についても,商品や広告において,当

該文字部分が顕著に表されていることから,特にチーズケーキを中心に原告の業務に

係る商品を表示するものとして,ある程度知られていたものということができる。

2 商標法4条1項11号について

本件商標は,「御用邸の月」の文字よりなるものであるところ,これよりは,「ゴ

ヨウテイノツキ」の称呼を生じ,「皇室の別邸より見る月」又は「皇室の別邸に昇る

月」ほどの一体的観念の生ずる造語よりなるものである。

原告は,本件商標「御用邸の月」における「の月」部分は,菓子について慣用され

ている文字であること,本件商標と同じような字配りからなる商標にあっては,その

月に係る対象物である物,名所等が商品の出所表示機能の役割を果たす事項として認





識されることなどから,本件商標の「御用邸」の文字部分がその要部であると主張し

ている。

しかしながら,「の月」の文字が,本件商標の指定商品において商品の形状や品質

を表すものとして慣用されているとはいえないし,本件商標の構成中,「御用邸」の

文字は,前記のとおり,「皇室の別邸」を意味する語として広く知られている語であ

り,「月」の文字は,夜空に輝く天体(月)を意味する語として広く知られている語

であって,本件商標は,その構成全体として前記のとおりの観念を生ずるものである

から,原告の使用する「御用邸チーズケーキ」若しくは「御用邸」の商標が需要者に

広く認識されていることを考慮しても,「御用邸の月」の文字からなる本件商標に接

する需要者は,その「御用邸」の文字部分について「皇室の別邸」である「御用邸」

を認識するというべきであり,原告の業務に係る商品及び使用する商標を想起するも

のとはいえず,本件商標は,前記観念を生ずる一体不可分の商標というべきである。

したがって,本件商標は,その構成文字より,「御用邸」の文字部分のみを抽出して

認識されるものではなく,当該文字部分が本件商標の要部ということはできない。

そこで,本件商標と引用商標とを比較するに,外観においては,「の月」の存否に

よって,外観上明瞭に区別でき,称呼においては,本件商標の称呼が「ゴヨウテイノ

ツキ」であるのに対し,引用商標の称呼は,「ゴヨウテイ」であるから,両称呼は,

その構成音及び構成音数が明らかに相違し,これらを一連に称呼した場合であって

も,十分に聴別し得るものである。

また,観念においては,本件商標の観念が「皇室の別邸より見る月」又は「皇室の

別邸に昇る月」ほどの観念であるのに対し,引用商標は,「皇室の別邸」の観念を生

じ,相違する。

してみれば,本件商標と引用商標とは,その外観称呼及び観念のいずれからみて

も,何ら相紛れるおそれのない,非類似の商標である。

したがって,本件商標は,商標法4条1項11号に該当しない。

3 商標法4条1項10号及び同19号について





本件商標は,原告の使用する「御用邸」の商標とは,前記のとおり,非類似であり,

同様に「御用邸チーズケーキ」の商標と非類似である。

してみれば,その余の点について論及するまでもなく,本件商標は,商標法4条

項10号又は同19号に該当しない。

4 商標法4条1項15号について

原告の業務に係るチーズケーキ等の菓子を表示するものとして「御用邸チーズケー

キ」あるいは「御用邸」が需要者に広く認識されているとしても,当該「御用邸」が,

一般に広く知られている「皇室の別邸」の観念を凌駕するほどに原告の商品の取引指

標として,周知,著名であるとは認められないばかりでなく,前記2及び3の認定の

とおり,本件商標と「御用邸」又は「御用邸チーズケーキ」とは,何ら相紛れるおそ

れのない別異の商標であるから,これをその指定商品について使用しても,これに接

する取引者・需要者が原告又は原告と経済的・組織的に何らかの関係のある者の業務

に係る商品であるかのごとく,その商品の出所について混同を生ずるおそれはないも

のというべきである。

したがって,本件商標は,商標法4条1項15号に該当しない。

5 商標法4条1項7号について

原告は,被告が本件商標を自己の商品(菓子)に使用することは,原告が長年の営

業努力により培ってきた周知商標が有する高品質イメージ及び顧客吸引力を無断で

利用することになり,原告の業務上の信用を害し,更には,商標の希釈化を生じさせ,

商標に化体した業務上の信用維持の保護を目的とする商標法の精神により維持され

る商品流通社会の秩序を侵害するものであるとして,本件商標は商標法4条1項7号

に該当する旨主張しているが,本件商標は,「御用邸の月」の文字よりなるものであ

るところ,原告提出の証拠によっては,商標権者に本件商標の出願の経緯に著しく社

会的妥当性を欠く等の事実は認められず,本件商標は,「公の秩序又は善良の風俗を

害するおそれがある商標」ということはできない。

してみれば,本件商標は,商標法4条1項7号にも該当しない。





第3 原告主張の審決取消事由

1 取消事由1(「御用邸」の語についての認定の誤り)

御用邸の語を以て現在の皇室の別邸を指すと決めつけるのは誤りである。

単に「御用邸」という場合,歴代の天皇がそれぞれの世代に建てられた皇室の別

邸を指す言葉と,或いは現在皇室の別邸として使われている施設を指す言葉とがあ

る。

現在,皇室の別邸として使われている御用邸は,正式名称を那須御用邸,葉山御

用邸,須崎御用邸と呼ばれる3つの御用邸である。

これに対して歴代の天皇によってその天皇の世代に建てられた皇室の別邸として

の御用邸は,これまで沢山あったが,現在は観光施設等として残されて保存されて

いるものがある。

現に皇室の別邸として使われている御用邸のある地元,或いは観光施設として保

存されている旧御用邸のある地元や関係者の間で御用邸と言えば,地元にある御用

邸,或いは旧御用邸を指す言葉として使われている。

それだけでなく,明治,大正,昭和,平成の時代に跨る歴史の話や,回顧談で使

われる御用邸の言葉は,旧御用邸や現在の御用邸を指す言葉としても使われる。

旧御用邸のある場所のバス停の標識として「御用邸」なる文字が使われている例

もある。

以上の事実から「御用邸」の語を特許庁が指摘する現在の御用邸のみを指すとす

るのは誤りである。

2 取消事由2(11号にいう「類似」に該当しないとした認定の誤り)

(1) 「の月」の文字が,本件商標の指定商品において商品の形状や品質を表示

するものとして慣用されているとはいえないとし,「御用邸」部分が本件商標の要

部とはいえないとした誤り

本件商標と同じように指定商品を第30類の菓子,パンとし,冒頭に名所,旧跡,





その他の名称を表示し,その表示に続いて「の月」という文字を配して成る態様の

登録商標は,200件以上登録されている。

既に登録された本件商標と同じような態様の登録商標を使用する商品には,被告

が本件商標である「御用邸の月」の商標を使用する以前に使用していた「那須の月」

の商標を付した商品,即ち,クリームをスポンジ状ケーキで包んだ蒸し菓子,仙台

の銘菓として知られている「萩の月」の商標を使用した同様商品をはじめ,本件商

標と同じような態様の商標を使用する商品が多数存在する。

この事実から,本件商標と同じような態様の商標を構成するのに使われている「の

月」という文字は,前記態様の商標が付された菓子に共通な用語として使用されて

いること,また,この記載は,11号の審査基準にある慣用語に該当することにな

り,従って,本件商標と同じ態様の登録商標の要部は,冒頭に記載された名所,旧

跡等の記載であることは明らかである。

よって,「の月」の文字部分を以て商品の出所識別機能を発揮する部分として取

り扱うことはできない。それだけでなく,本件商標と同じような態様で構成された

商標は,当然「冒頭に表示された文言」が前記態様の商標に接した需要者の目を引

く文言となる。また,称呼についても「ゴヨウテイ」の発音が最初に耳に入ること

からしても,本件商標並びに本件商標と態様を同じくする商標は,「冒頭に記載さ

れた文字を要部」として認識される。

(2) 「御用邸の月」の観念についての誤り

ア 「御用邸の月」は,「月に照らされた御用邸」の字義を有し,御用邸の

存在を抜きに観念が生じ得ないのであるから,そこから生じる観念は「御用邸」の

観念における一形態を示すものに過ぎない。

イ 被告が使う「御用邸の月」という商標を選択するについては,那須を代

表する「御用邸」を含めた那須の風景がイメージできるような名称を是非に付けた

いと考えたとされている。

また,被告は,「御用邸の月」の文字から生ずる観念は,「皇室の別邸から見え





る月」,「皇室の別邸に昇る月」というような風景を想起させるものであるとし,

「皇室の別邸から見える月」又は「皇室の別邸に昇る月」というような月の見える

風景についての観念を生じさせるとしている。

加えて被告は,那須地方の象徴である皇室の御用邸とそこに昇る満月の美しい情

景こそが那須地方の良き伝統,美しい風情を表現するものであると考え,「御用邸

の月」という商標を構想するに至ったともしている。

これらの記載から,被告は那須の代表である「御用邸」の存在を強く意識し,御

用邸にかかる「月」の存在も意識して,皇室の別邸である「御用邸」と「御用邸に

かかる月」の織り成す風情,情景から成る観念を,需要者に印象づける意図を持っ

て「御用邸の月」の商標を選定していたことが如実に現れている。

「御用邸」の言葉が被告により重視されていたことが明らかであることからも,

「御用邸の月」の商標を構成する「御用邸」の文字は,当該商標の要部と評価され

るべきである。

ウ 「御用邸の月」の商標は,「御用邸」の文字が冒頭に記載されている。

従って,この文字が当然人目を引く文字となる。それだけでなく,被告は,「御用

邸の月」の商標を選定した動機について,「月」に照らされる「御用邸」の情景を

念頭において選択したとしている。このことは,「御用邸」は,客観的に見ても,

主観的に見ても,「御用邸」の商標を観る人に対して,「御用邸」の文字を注目さ

せようとする意図が十分に汲みとれる。このことからしても,「御用邸」の部分は

商標の要部と評価されるべきである。

(3) 以上から,本件商標は,引用商標に類似する商標に該当することが明らか

である。「御用邸の月」の要部を看過し,「御用邸」の商標と「御用邸の月」の商

標を形式的に対比観察し,具体的取引関係の状況を無視し,且つ離隔観察をしない

でなされた審決は,違法であり,取消されるべきものである。

(4) 原告は,平成5年ころ,那須土産に適した商標名について検討を重ね,那

須土産であることが認識でき,且つ重厚及び高貴なイメージ(観念)が生じる「御





用邸」なる商標を想起し,その商標登録を得て,平成6年8月より,「御用邸」の

商標を付したチーズケーキの販売を開始し,近年では年間80万個の販売実績を誇

る商品となり,平成18年ころからは,チーズケーキ以外の他の商品にも「御用邸

シリーズ」として「御用邸」ブランドの展開を始めるに至り,今日,それら全体と

して100万個以上の売上げに至っている。

然るところ,被告は,従来,「那須の月」の商標を用いて商品の販売をしてきた

が,平成23年5月に「御用邸の月」の商標登録を取得するや,わざわざ「那須の

月」を「御用邸の月」と改め,その販売を開始し,初年度から6%の売上増になっ

たという。原告と被告は同じ那須に本店を有し,共に菓子の製造,販売をする同業

者であり,原告の「御用邸」シリーズを熟知しているのであるから,仮に「那須の

月」を改めるとしても,わざわざ「御用邸の月」とする合理的な理由は何等存在し

ない。

従って,被告は,原告の使用する「御用邸」の商標に目をつけ,それにフリーラ

イドする形で「御用邸の月」の商品販売を企画し,これを実施したという取引の実

情を有する。

審決は,これらの点について,一言の言及もないまま非類似の判断をしていると

ころであり,それは,致命的取消事由というべきものである。

3 取消事由3(10号,19号の規定に該当しないとした判断の誤り)

(1) 審決は,本件商標と引用商標とは非類似であるからその余を論及するまで

もないとして当該適用を排斥するが,本件商標と引用商標とが類似であることは既

述のとおりであり,取消を免れない。

(2) 原告は,平成6年8月頃より長期間に亘り「御用邸」を付した菓子(チー

ズケーキ)を販売しており,平成18年頃からは,「御用邸シリーズ」としてチー

ズケーキ以外にも「御用邸」ブランドを付した商品を販売している。そして,近年

では,これらは,那須地方を代表する土産物として認識されている。

なお,「御用邸」を付した菓子は,略正方形状の箱体の中央部に毛筆縦書きに「御





用邸」と表記したものである。

一方,被告の商標は,原告が使用する商標「御用邸」を含んだ「御用邸の月」で

ある。「御用邸の月」の文字が付された那須地方の土産物商品に接した需要者は,

前記したように「御用邸」の文字部分を注視するので,原告の商標「御用邸」を思

い浮かべ,両者に何等かの関係がある(販売元が同じである等)かの混同を生じさ

せるものである。被告商品の「御用邸の月」と,原告商品の「御用邸」は,共に「御

用邸」の文字を含むことで,特に隔離観察においては両者に何等かの関係があるも

のと認識するものである。

したがって,被告の商標「御用邸の月」と,原告の商品に使用される「御用邸」

は,需要者をもって両者に何等かの関係がある(販売元が同じである,あるいは系

列関係にある等)かの混同を生じさせるものであるから,両商標は類似するもので

あり,10号に該当する。

(3) 原告と被告は,共に那須街道に面してほど近い場所に店舗を構え,営業形

態もほぼ同一のものである。原告が毛筆体で表記した「御用邸」の名前でチーズケ

ーキを販売して業績を伸ばしてきたこと,チーズケーキ以外の菓子についても「御

用邸」の名前を付けて販売していることは被告も十分承知していたところであり,

そのような状況下において,被告が従前から販売してきた「那須の月」を,わざわ

ざ毛筆体の「御用邸の月」に変更することは,原告の「御用邸」が付された商品に

便乗して売り上げを伸ばそうと意図したものと解さざるを得ず,不正な目的に該当

する。

被告の商標「御用邸の月」は,このような状況下で出願し,その使用が行われて

いるものであり,19号に該当する。

4 取消事由4(15号における混同を生じるおそれがないとの認定の誤り)

審決が,『本件商標の登録出願時及び査定時において,「御用邸チーズケーキ」

は原告の業務に係る商品を表示するものとして広く知られている,「御用邸」につ

いても,特にチーズケーキを中心に原告の業務に係る商品を表示するものとしてあ





る程度知られている』と認定しているところからすれば,原告も被告も那須に本店

を有し,共に那須の土産として菓子類の製造・販売をしているところであるから,

需要者が「御用邸の月」をもって,原告の行っている「御用邸シリーズ」の一種と

して混同することは明らかであって,15号に関する審決の認定は失当である。

ちなみに,被告の「御用邸の月」は,「那須の月」から改称した年から,その売

り上げが6%も上昇している。

5 取消事由5(7号における公序良俗を害するおそれがないとする誤り)

審決は,被告には本件商標の出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠く等の事実は

認められないとする。

しかし,原告と被告は,共に那須に本店を有し,那須土産として商品を製造・販

売をしている者であり,原告が「御用邸」の商標を付してチーズケーキを販売し,

那須土産として人気商品となっていたことは,当然被告も承知していたものである。

このような状況下において,被告は「那須の月」で商品を販売していたものを,わ

ざわざ「御用邸の月」と改め,売上げを伸ばしている。

このことは,原告の「御用邸」にフリーライドするものというべく,取引の実情

を考慮すれば,被告の出願経緯等には公序良俗違反があるというべきであり,取消

されるべきである。



第4 被告の反論

1 取消事由1に対して

審決は原告主張のように,「御用邸」の語の意味を現存する3か所の御用邸に限

定したものではなく,「御用邸」の語の意味は「皇室の別邸」であると述べた後に,

我が国に現存する御用邸が3か所であり,それらを皇室の方々が現在も利用してい

ることから,当該各御用邸が一般に広く認知されていると述べているものである。

したがって,原告の主張は,その前提を欠くものであり,失当である。

2 取消事由2に対して





(1) 要部認定方法について

ア 本件商標は,「御用邸の月」の文字を毛筆体を用いて横書き,又は縦書

きにて記載する場合があるが,いずれの場合においても,同一の書体で全体が等間

隔に一行でまとまりよく表現されている。したがって,「御用邸」の文字部分だけ

が独立し,見る者の注意を引くように構成されているとは認められない。

また,審判で提出された証拠から認められるように,引用商標は,原告の商品の

出所を表示する機能を獲得したものでも,し得るものでもないことから,本件商標

中の「御用邸」の文字部分が,原告の指定商品である菓子やパンの出所である旨を

示す識別標識として,強く支配的な印象を与えるものとは認められない。

イ 本件商標の指定商品は「菓子,パン」である。「月」という語は,「地

球の衛星」や「暦の単位」等の意味を有するから,「の月」という表現が,菓子や

パンに分類される商品の内容,属性又は品質を示しているとは言えない。

ウ 本件では,本件商標の構成中「御用邸」の文字部分を取り出して観察す

ることが正当化されるような,他の事情も存在していない。却って,本件商標は,

僅か五文字から構成され,冗長なものではなく,全体として同一書体でまとまりよ

く表記されており,観念も「皇室の別邸から見える月」もしくは「皇室の別邸の上

に昇る月」といった一体としての観念を与えるものであるから,その構成部分を分

離して観察すべき理由は全くない。本件商標と引用商標の類否判断に当たっては,

原則に従い,その構成部分全体を対比すべきである。

(2) 観念について

ア 「御用邸の月」の「御用邸」の語が「皇室の別邸」を意味することは一

般人には明らかであり,また「月」の意味も上述のように明白なものであるから,

この二つの言葉を「の」で結んで構成された本件商標から,「皇室の別邸から見た

月」ないし「皇室の別邸の上に昇る月」との観念が生じる。

よって,「御用邸」そのものと,「御用邸の月」とは観念を異にするものである

ことは明らかである。





イ 原告は,審決が「御用邸の月」から生ずる観念として,「皇室の別邸か

ら見える月」及び「皇室の別邸に昇る月」という異なる2つの観念を示し,これら

を同一の観念として扱っているため,誤りであると主張する。

しかし,審決は,「御用邸の月」の語から,上記の2つの異なる観念が生ずるこ

とを述べているが,両観念を「又は」の文字で接続していることから,両観念を別

個のものとして扱っていることは明らかである。

ウ 以上より,引用商標と本件商標とにおいて,観念が類似しているという

原告の主張は誤りである。

(3) 類似性の検討

以上を踏まえ,引用商標と本件商標の類否についての被告の主張は次のとおりで

ある。

外観

引用商標は「御用邸」の文字からなり,本件商標は「御用邸の月」の文字からな

るため,両商標は後半部において「の月」の有無により明らかな差異を有している

ことから,外観上,十分に区別される。

観念

上記で検討したように引用商標からは,「皇室の御用邸」という建物,場所につ

いての観念が生ずる。他方,本件商標は「皇室の御用邸から見える月」又は「皇室

の御用邸に上る月」というような,月の見える風景についての観念を生じさせる。

従って,両商標は観念上類似するものではない。

称呼

引用商標から生ずる称呼は「ゴヨウテイ」であり,本件商標から生ずる称呼は「ゴ

ヨウテイノツキ」である。従って,両商標には,称呼上明らかな差異が認められる

ため,両者は称呼においても相紛れることはない。

エ 商取引の具体的状況

原告は,審決が両商標の類否判断に際し,取引の実情を全く考慮せずに判断した





ことが誤りである旨主張する。

しかし,原告は,原告及び被告が各々自らの商標を付した商品を販売した経緯を

記載するのみで,外観称呼観念のいずれから見ても明らかに異なる両商標を使

用した場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるとする極めて特殊

な取引状況の存在については,具体的に何ら述べていないのであるから,原告の主

張は失当である。

類似性についての小括

以上のように両商標は,外観観念称呼のいずれにおいても類似しておらず,

実際の商標を付した各商品取引の具体的状況下において,両商標の使用が,それぞ

れの商品の出所について誤認・混同を生じさせるおそれがある事情の存在も具体的

に主張立証されておらず,両商標が非類似の関係にあることは明らかであり,原告

の主張には理由がない。

3 取消事由3に対して

10号及び19号該当性については,引用商標と本件商標が類似であることがそ

の前提であるが,上述のように両商標は非類似であることから,その前提を欠くた

め,原告の主張は理由がない。

加えて,原告は,引用商標「御用邸」が周知であることを客観的に示す具体的事

実も主張していないため,この点からも,原告の主張は理由がない。

4 取消事由4に対して

本件商標の15号該当性を主張する前提として,原告は,引用商標「御用邸」が,

一般に広く知られている「皇室の別邸」の概念を凌駕するほどに原告商品の取引指

標として周知,著名であることを具体的事実に基づいて主張しなければならない。

しかし,原告は,引用商標が周知,著名であることを客観的に示す具体的事実を何

ら主張していない。

加えて,本件商標を付した商品を販売した際に,これに接する取引者・需要者が

原告の商品であるかのごとく,その商品の出所について混同を生ずるおそれに関し





ても,具体的な事実に基づく主張をしていない。

したがって,原告の主張は,その前提を欠き,失当である。

5 取消事由5に対して

本件商標の7号該当性を主張する前提として,被告による本件商標の出願経緯に

著しく社会的妥当性を欠く等の事実の主張が必要であるが,原告はこの点について

も,具体的事実に基づく主張はしていない。

したがって,原告の主張は,その前提を欠き,失当である。

なお,本件商標を付した商品の内容である菓子自体は,本件商標を付する以前か

ら被告店舗において別途商標を付して販売していたものである。本件商標出願当時

から,被告が健全な営業活動を継続していたことの証として,被告商品は平成25

年4月19日に全国菓子博覧会において橘花榮光章を受章しており,また,高速道

路で配布される広報誌にその広告を掲載することが認められるなど,その継続的な

営業活動の結果,現在,多くの需要者にその商品価値が認められていることからも,

被告による本件商標の出願経緯に著しく社会的妥当性を欠くなどといったことがな

いことは明らかであるから,原告の主張には理由がない。



第5 当裁判所の判断

1 取消事由1(「御用邸」の語についての認定の誤り)について

「御用邸」とは,皇室の別邸を意味する(甲52)。審決が「『御用邸』とは,

『皇室の別邸』を意味する語である」とした認定に誤りはない。原告は,旧御用邸

も存在することをもって,「御用邸」とは,現在の御用邸を指すものではなく,こ

のことを認識して本件請求について判断すべきである旨主張する。しかし,沼津市

などに御用邸がかつて存在していたことは公知の事実であるし,審決も,これらの

存在を認識しながらも,とりわけ前記3か所の御用邸を念頭に置いて判断を進めた

ことが明らかである。

したがって,取消事由1には理由がない。





2 取消事由2(11号にいう「類似」に該当しないとした認定の誤り)につい



(1) 本件商標

本件商標は,「御用邸の月」の文字を標準文字で表してなり,これより「ゴヨウ

テイノツキ」の称呼を生じ,「皇室の別邸より見る月」又は「皇室の別邸に昇る月」

ほどの観念を生じるものである。

原告は,「○○の月」という菓子は,仙台銘菓として著名な人気商品「萩の月」

にあやかり,これに類する菓子が全国各地に多数存在し,お土産菓子の代名詞的な

存在となっており,お土産菓子を購入しようとする需要者にとっては,「○○の月」

という名の商品が「萩の月」に似た菓子(クリームをスポンジ状ケーキで包んだ蒸

し菓子),それに類する菓子,若しくは少なくとも菓子であることは十分に認識さ

れているから,「の月」の部分には出所表示機能がなく,冒頭で目を引く「御用邸」

部分のみが当該商標の要部であると主張する。しかし,本件商標は,「御用邸の月」

の文字を標準文字で同書,同大,等間隔に書され外観視覚上極めてまとまりよく一

体に表されてなるものであり,これより生ずると認められる「ゴヨウテイノツキ」

称呼も冗長でなく無理なく一気一連に称呼し得るものであるから,一体不可分に

理解されるとみるのが相当である。「○○の月」の名を持つ菓子が複数あることは

認められるけれども,指定商品について,一般に「○○の月」の名が,クリームを

スポンジ状ケーキで包んだ蒸し菓子,それに類する菓子,若しくは少なくとも菓子

であることを意味するため慣用的に使用されていると認めるに足りる証拠はない。

したがって,「御用邸」部分のみが要部であるとの原告の主張は理由がない。

原告は,本件商標から生じる観念は「御用邸」の観念における一形態を示すもの

などと主張するが,本件商標は,その構成全体をもって一体不可分のものとして認

識し把握されるとみるのが自然であるから,「皇室の別邸より見る月」又は「皇室

の別邸に昇る月」ほどの観念を生じるとみるのが相当であって,原告の主張には理

由がない。





(2) 引用商標

引用商標は,「御用邸」の文字を縦書きしてなり,これより「ゴヨウテイ」の称

呼を生じ,「皇室の別邸」の観念を生じるものである。

(3) 類否判断

上記(1)にみたところによれば,本件商標は,これを一連に称呼するものと認める

べきであるところ,本件商標と引用商標を比較すると,外観は「の月」の有無によ

り明確に区別でき,称呼は,両者の構成音及び構成音数が明らかに相違し,一連に

称呼した場合,両者は十分に聴別し得るものであり,観念においても相違するから,

本件商標と引用商標は,外観称呼観念のいずれにおいても相違し,混同のおそ

れのない非類似の商標であると認めることができる。同旨の審決の判断に誤りはな

い。

原告は,被告が本件商標を登録した経緯に言及しないでした審決の類否判断には

誤りがあると主張するけれども,原告が主張するような,原告被告各自の商標の登

録と使用の経緯をもって,外観称呼観念のいずれかで類似するものとすべき事

実関係は認めることはできない。

したがって,本件商標と引用商標が類似しないとの審決の判断に誤りはなく,取

消事由2には理由がない。

3 取消事由3(10号,19号に該当しないとした判断の誤り)について

原告が10号,19号で引用する原告使用の商標は上記11号で引用する登録商

標と同じものであるから,本件商標が10号,19号に該当するというためには,

本件商標と引用商標が類似することが前提となる。しかし,本件商標と引用商標が

類似しないことは上記のとおりである。

したがって,本件商標が10号,19号に該当しないとの審決の判断に誤りはな

く,取消事由3には理由がない。

4 取消事由4(15号における混同を生じるおそれがないとの認定の誤り)に

ついて





甲2〜16,20,59及び弁論の全趣旨によれば,原告は「菓子製造と販売」

を主たる業務とする製造会社であること,原告の代表者であるAは,引用商標を平

成5年9月21日に登録出願し,平成8年5月31日に登録を得たこと,原告は,

平成6年よりチーズケーキに引用商標を使用した「御用邸チーズケーキ」の販売を

開始したこと,「御用邸チーズケーキ」は,平成12年にオープンした原告が経営

する「チーズガーデン五峰館」(栃木県那須郡那須町所在)で販売しているほか,

現在では,原告のホームページをはじめ,JR宇都宮駅,JR上野駅,東北自動車

道那須高原サービスエリア下り,同上河内サービスエリア下り,同上河内サービス

エリア上り,同佐野サービスエリア上り,道の駅どまんなか田沼,ホテルサンバレ

ー那須,ホテルラフォーレ那須,ホテル東急ハーヴェスト那須,ホテルエビナール

那須,大丸百貨店東京店,阪急百貨店梅田本店,同大井食品館,新宿京王百貨店,

東武百貨店宇都宮店,同船橋店,同池袋店,福田屋百貨店宇都宮店,ショッピング

モールベルモール,東京スカイツリーソラマチ,シブヤヒカリエで販売され,平成

22年時点で,約77万個が販売されていたこと,「チーズガーデン五峰館」の入

館数は,平成21年ころには,年間100万人を超え,那須への旅行客が訪れるこ

とが多い人気スポットとなっていること,「御用邸チーズケーキ」について,旅行

雑誌など,那須地方に関する雑誌等に掲載されているほか,那須周辺道路への看板,

東京駅での広告などが行われ,東京をキー局とするテレビ局を中心に番組に取り上

げられたことがあること,原告は平成18年ころからチーズケーキ以外の菓子に「御

用邸」の商標を使用して販売していることを認めることができる。

以上によれば,本件商標の登録出願時及び査定時において,「御用邸チーズケー

キ」は,那須を訪れる旅行客を中心に原告の業務に係る商品を表示するものとして

広く知られているものということができ,「御用邸」についても,商品や広告にお

いて,当該文字部分が顕著に表されていることから,特にチーズケーキを中心に原

告の業務に係る商品を表示するものとして,かなりの範囲で知られていたものとい

うことができる。





また,甲1,58によれば,被告は,本店である栃木県那須郡那須町所在の「お

菓子の城那須ハートランド」において,本件商標を使用した土産菓子を販売してい

ることが認められる。

しかし,本件商標と引用商標が,外観称呼観念の,いずれにおいても相違す

非類似の商標であることは上記のとおりである上,「御用邸」とは「皇室の別邸」

であることは日本人にとって誰もが知ることであり,原告及び被告が店舗を構える

那須を訪れ原告の商品に接したとしても,そこに表示された「御用邸」とは,まず

もって栃木県那須郡那須町所在の「那須の御用邸」(甲53)を意味するのであっ

て,その観念を凌駕して,「御用邸」の文字のみから原告の商品と識別するほどに,

原告使用の商標が独立して周知あるいは著名となっているとは認められない(原告

の商品の包装あるいは商品自体の形態や味付けなどで,原告の商品を識別するもの

である。)。本件商標と原告使用の商標に共通する指定商品である第30類「菓子

及びパン」に本件商標を使用したとしても,これに接する需要者が,その商品の出

所について,原告又は原告と経済的・組織的に何らかの関係のある者の業務に係る

商品であるかのように混同を生ずるおそれがあると認めることはできない。

したがって,本件商標が他人の業務に係る商品と混同を生じるおそれがないとし

た審決の判断に誤りはなく,取消事由4には理由がない。

5 取消事由5(7号における公序良俗を害するおそれがないとする誤り)につ

いて

本件全証拠をもってしても,本件商標の出願経緯に社会的妥当性を欠く等のこと

を裏付ける事実は認められず,本件商標が「公の秩序又は善良の風俗を害するおそ

れがある商標」に当たるということはできない。

したがって,本件商標が公序良俗を害するおそれがないとの審決の判断に誤りは

なく,取消事由5には理由がない。



第6 結論





以上によれば,原告主張の取消事由にはいずれも理由がない。よって,原告の請

求を棄却することとして,主文のとおり判決する。



知的財産高等裁判所第2部




裁判長裁判官

塩 月 秀 平




裁判官

池 下 朗




裁判官

新 谷 貴 昭






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