審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成24ワ24872損害賠償請求事件 | 判例 | 商標 |
平成19ワ3083先使用権確認 | 判例 | 商標 |
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事件 |
平成
24年
(ワ)
16372号
商標権侵害行為差止等請求事件
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裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2013/11/28 |
権利種別 | 商標権 |
判例全文 | |
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判例全文
平成25年11月28日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 平成24年(ワ)第16372号 商標権侵害行為差止等請求事件 口頭弁論の終結の日 平成25年10月1日 判 決 福岡市<以下略> 原 告 新 日 本 製 薬 株 式 会 社 同 訴 訟 代 理 人 弁 護 士 田 中 雅 敏 宇 加 治 恭 子 鶴 利 絵 柏 田 剛 介 生 島 一 哉 新 里 浩 樹 浦 川 雄 基 小 柳 美 佳 同 訴 訟 代 理 人 弁 理 士 有 吉 修 一 朗 同 補 佐 人 弁 理 士 森 田 靖 之 京都市<以下略> 被 告 株式会社ラ・フィーネ 同 訴 訟 代 理 人 弁 護 士 永 井 弘 二 草 地 邦 晴 福 市 航 介 主 文 原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事 実 及 び 理 由 第1 請求 1 1 被告は,化粧品に別紙被告標章目録記載一ないし六の標章を付して,譲渡し, 引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示し,電気通信回線を通じて提供し てはならない。 2 被告は,化粧品に関する広告,宣伝用のカタログ,パンフレット,チラシ及 びホームページに別紙被告標章目録記載一ないし六の標章を付して展示し,若 しくは頒布し,同広告を内容とする情報に上記各標章を付して電磁的方法によ り提供してはならない。 3 被告は,その占有する別紙被告標章目録記載一ないし六のいずれかの標章を 付した化粧品を廃棄せよ。 4 被告は,その占有する別紙被告標章目録記載一ないし六の標章を付した化粧 品に関する宣伝用のカタログ,パンフレット,チラシを廃棄せよ。 5 被告は,原告に対し,7000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日か ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 本件は,化粧品等を指定商品とする3個の商標権を有する原告が,被告が化 粧品等に付した別紙被告標章目録記載一ないし六の標章(以下,それぞれを目 録の番号に従い「被告標章1」,「被告標章2の1」のようにいい,併せて 「被告標章」という。)が原告の商標権の各登録商標に類似すると主張して, 被告に対し,商標法36条に基づき,被告標章の使用の差止め及び被告標章を 付した化粧品やカタログ等の廃棄を求め,民法709条に基づき,損害金70 00万円及びこれに対する不法行為の日の後である訴状送達の日の翌日から支 払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案であ る。 1 前提事実(当事者間に争いがない。) (1) 原告は,別紙商標権目録記載1ないし3の各商標権(以下,それぞれを 目録の番号に従い「本件商標権1」のようにいい,併せて「本件各商標権」 2 という。また,それぞれの登録商標を「本件登録商標1」のようにいい,併 せて「本件各登録商標」という。)を有している。 (2) 被告は,頭皮用化粧品「FGF−7ジェネレFエッセンス」(以下「被 告商品1」という。)の外箱に被告標章2の1,その容器の商品ラベルに被 告標章2の2を,育毛用美容液「EGFジェネレエッセンス」(以下「被告 商品2」という。)の外箱に被告標章3の1,その容器の商品ラベルに被告 標章3の2を,頭皮用ヘアパック「ジェネレヘアパック」(以下「被告商品 3」という。)の容器に被告標章4を,コンディショナー「ジェネレコンデ ィショナー」(以下「被告商品4」という。)の容器に被告標章5を,トリ ートメント「ジェネレ洗い流さないトリートメント」(以下「被告商品5」 といい,これらを併せて「被告各商品」という。)の容器に被告標章6をそ れぞれ付し,被告標章1を表示した被告のホームページ(http:// <以下略 >)等において,これらを販売している。 (3) 被告各商品は,本件各商標権の指定商品である化粧品に含まれる。 2 争点 (1) 被告標章が本件各登録商標に類似するか否か(争点1) (2) 被告が先使用による被告標章の使用をする権利を有するか否か (争 点 2) (3) 本件各登録商標の商標登録が商標登録の無効の審判により無効にされる べきものと認められるか否か(争点3) (4) 原告の本訴請求が信義則に反し,又は権利の濫用に当たるもの か否 か (争点4) 3 争点に関する当事者の主張 (1) 争点1(被告標章が本件各登録商標に類似するか否か)について (原告) 被告標章に接する一般消費者は,「Raffine」という文字部分に着 3 目する。被告標章の「e」の上方にある略三角形状の図形は,文字との相対 的な大きさや形状からアキュート・アクセント(フランス語におけるアクサ ン・テギュ)とは到底考えらないし,「Ra」及び「ine」の各下方の略 長方形状の図形は左右に分離配置され,文字部分とデザイン上の一体性が見 出せないから,これらの図形を上記文字部分と一体的に把握する必要はなく, 原告と無関係の第三者が「Raffine」を多数使用しているということ もないから,被告標章の上記文字部分が識別力を有する。そうすると,被告 標章の要部は,「Raffine」との文字部分である。 本件各登録商標と被告標章の要部は,いずれもアルファベット7文字の同 一のスペルで構成されているから,外観上明らかに類似する。また,両者は, 「ラフィネ」という同一の称呼を生じ,その語義から「洗練された」,「上 品な」といった観念を生じさせる点でも共通する。 そして,原告の商品と被告各商品は,いずれも,美しさに興味を持つ,主 として女性消費者を対象とし,広く一般消費者に向けて,インターネット上 の物販サイトで販売を行っているといった共通点があり,両者の需要者は共 通するから,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがある。 したがって,被告標章は,本件各登録商標に類似する。 (被告) ア 本件登録商標1の外観は,全て大文字から成り,本件登録商標2及び3 は「ff」のみが小文字でその余は全て大文字から成る。本件登録商標1 及び2は,標準文字で構成されているから外観上の特徴は認められないが, 本件登録商標3は,「ff」の部分だけが縦長の小文字で構成され,両文 字が連結されているという特徴がある。 被告標章は,「R」のみが大文字,その余は全て小文字であり,語尾の 文字も「e」ではなく,アクサン・テギュが付された「?」で,「ff」 の部分も連結されていない。そして,全体として文字が丸みを帯び,被告 4 代表者がデザインした独特のフォントで構成され,「Ra」及び「in ?」の下部には丸みを帯びた右肩上がり の太いラインが施さ れ, ア ク サ ン・テギュの部分もこれと統一感のあるラインであり,全体が一体感をも って構成されているため,看者に丸みを帯びた柔らかい印象を与え,デザ イン性の高い一つのロゴマークとしての印象を与えるものであって,不可 分一体のものとして捉えるべきである。 このように,本件各登録商標と被告標章の外観は大きく相違する。 イ 「raffin?」は,「洗練された」,「上品な」等を意味するフラ ンス語の形容詞であり,これのみでは識別力がない。特に美容関連業界で は屋号,サービスや商品を示す標識として広く使用され,「raffin e」,「ラフィーヌ」,「ラフィーネ」,「ラフィネ」なども多用されて きたから,これらの単語の称呼や観念そのものに識別力がなく,その他の 標章との結合やデザイン等によって識別される。 ウ 被告標章は,被告自身を示す標章,ロゴとして,いずれも「produ ced by」の表記とともに小さく下部に使用されており,被告の商品 の識別標識として使用されているのは大きく中央に表示された被告の登録 商標「G?n?rer」である。また,本件各登録商標が使用されている原 告の商品は,洗顔,スキンケア,メイクアップ,美白など,女性の肌美容 に関する商品群で,需要者は女性消費者であるのに対し,被告各商品は, いずれも抜け毛,薄毛等に悩む層に向けた商品群で,需要者はヘアケアに 関心を持つ男女である。これらからすれば,需要者が出所を誤認混同する おそれがあるとはいえない。 エ したがって,被告標章は,本件各登録商標のいずれにも類似しない。 (2) 争点2(被告が先使用による被告標章の使用をする権利を有す るか 否 か)について (被告) 5 被告は,平成11年4月の設立から被告標章の使用を開始し,平成13年 頃から被告標章を化粧品に使用しているが,被告が特に京都とその周辺の関 西地域において,新聞,雑誌,テレビ,ラジオ等で積極的に広告宣伝活動を 行い,被告代表者がテレビ番組に出演し,講習会で講義をするなどしたこと により,被告標章は,平成14年1月ころには需要者に広く認識されるに至 った。このように,被告標章は,本件各登録商標の商標登録出願前から被告 の商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているから, 被告は,先使用による被告標章の使用をする権利を有する。 (原告) 被告標章は,化粧品についての使用実績がほとんどなく,需要者の間に広 く知られた商標ではないから,被告は,先使用による被告標章の使用をする 権利を有しない。 (3) 争点3(本件各登録商標の商標登録が商標登録の無効の審判により無効 にされるべきものと認められるか否か)について ア 本件各登録商標が商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章の みからなる商標に当たるか否か (被告) 本件各登録商標は,洗練された化粧品,上品な化粧品等といった商品の 品質イメージを表すものとして取引者,需要者に認識されるものであり, かつ,普通に用いられる方法で表示されたものに過ぎないから,いずれも 商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標に当 たる。 (原告) 本件各登録商標は,十分に自他商品識別力があるから,商品の品質を普 通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標に当たらない。 イ 本件各登録商標が他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして 6 需要者の間に広く認識されている商標と類似する商標,あるいは他人の業 務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標に当たるか否か (被告) 被告標章は,平成14年1月ころには需要者に広く認識されるに至った から,仮に被告標章が本件各登録商標に類似するとすれば,本件各登録商 標は,被告の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に 広く認識されている商標に類似する商標(商標法4条1項10号),ある いは既に長期間広く使用されてきた被告の業務に係る商品又は役務と混同 を生ずるおそれがある商標(同項15号)に当たる。 (原告) 被告標章は,需要者の間に広く知られた商標ではないから,本件各登録 商標は,商標法4条1項10号や同項15号の商標には当たらない。 (4) 争点4(原告の本訴請求が信義則に反し,又は権利の濫用に当たるもの か否か)について (被告) 被告標章は需要者に広く認識されていたが,原告は,本件各商標権の登録 を得たことを奇貨として,被告の業務を妨害し,不正な競争を図る目的で, 本訴を提起した。原告の本訴請求は,商標制度を悪用し,商標法の趣旨に反 するものであるから,信義則に反し,また,権利の濫用に当たる。 (原告) 被告標章が周知,著名であるという事実はないから,被告の主張は,その 前提を欠く。原告は,「RAffINE」や「ラフィネ」等のブランドを長 期間にわたり全国的に使用しており,かかる信用や名声にただ乗りしようと しているのはむしろ被告である。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(被告標章が本件各登録商標に類似するか否か)について 7 (1) 被告標章には,青色又は紺色のもの(被告標章1,被告標章2の2及び 被告標章6)と金色のもの(被告標章2の1,被告標章3の1,被告標章3 の2,被告標章4及び被告標章5)があるが,形状は全て同一であり,デザ インされた「Raffine」の欧文字を横書きし,「ff」が「Ra」及 び「ine」よりも下方に伸びて配置された文字部分と「Ra」及び「in e」の下に略平行四辺形状の図形,「e」のすぐ上に近接して略三角形状の 図形が配置された図形部分から成る。 被告標章の構成中には,「Raffine」の文字部分が含まれるところ, 各文字の書体及び大きさは同一であり,その全体がまとまりよく表わされて いて,その一部だけが独立して見る者の注意をひくように構成されていると いうものではない。そして,「e」のすぐ上に近接して配置された略三角形 状の図形は,その位置や形状及び化粧品の容器等に付されるという被告標章 の使用態様に照らすと,需要者は,フランス語のアクサン・テギュ等のアキ ュート・アクセントと理解すると考えられる。また,「Ra」及び「in e」の下に配置された略平行四辺形状の図形は,その位置や形状に照らして, 単なる装飾であり,この部分が独立して見る者の注意をひくということはな い。そうであるから,被告標章に接した需要者は,「Raffine」の文 字部分に上記略三角形状の図形を組み合わせた部分(以下「「Raffin ?」の部分」という。)をまとまりのある部分として感得するものと認めら れる。そうすると,被告標章について本件各登録商標との類否を判断するに 当たっては,被告標章中の「Raffin?」の部分を対比するのが相当で ある。 被告は,被告標章の全体を不可分一体のものとして捉えるべきであるとか, 「raffin?」は「洗練された」等を意味する単なるフランス語の形容 詞であって,これのみでは識別力がないなどと主張する。しかしながら,被 告標章中の上記略平行四辺形状の図形は,単なる装飾であるから,文字部分 8 を含む「Raffin?」の部分が見る者の注意をひき,被告標章に接した 需要者がその全体を不可分一体のものとして感得することはないというべき である。また,我が国の一般国民の通常の外国語の理解力に照らすと,「r affin?」が「洗練された」,「上品な」を意味するフランス語である と理解されているとは考え難く,これを認めるに足りる証拠もないから, 「Raffin?」の部分に識別力がないということはできない(仮に「R affin?」が「洗練された」,「上品な」を意味するフランス語である と理解されるとしても,このことから,直ちに,「Raffin?」の部分 に識別力がないということもできない。)。被告の上記主張は,採用するこ とができない。 (2) そこで,本件各登録商標と被告標章を対比する。 ア 本件登録商標1について 本件登録商標1は,標準文字による「RAFFINE」の欧文字から成 るもので,「ラフィネ」,「ラフィーネ」の称呼を生じるが,「raff in?」の意味が理解されているとは認められないから,特定の観念を生 じない。これに対し,被告標章の要部は,「Raffin?」の部分であ って,「ラフィネ」,「ラフィーネ」の称呼を生じるが,特定の観念を生 じるものではないから,被告標章の要部と本件登録商標1とは,称呼が同 一であり,特定の観念ではないものの,「RAFFINE」又は「Raf fin?」の綴りや「ラフィネ」,「ラフィーネ」の称呼から同一又は類 似の観念を生じるものと認められる。 そうであるから,被告標章は,本件登録商標1に類似する。 イ 本件登録商標2について 本件登録商標2は,標準文字による「RAffINE」の欧文字から成 るもので,「ラフィネ」,「ラフィーネ」の称呼を生じるが,「raff in?」の意味が理解されているとは認められないから,特定の観念を生 9 じない。これに対し,被告標章の要部は,「Raffin?」の部分であ って,「ラフィネ」,「ラフィーネ」の称呼を生じるが,特定の観念を生 じるものではないから,被告標章の要部と本件登録商標2とは,称呼が同 一であり,特定の観念ではないものの,「RAffINE」又は「Raf fin?」の綴りや「ラフィネ」,「ラフィーネ」の称呼から同一又は類 似の観念を生じるものと認められる。 そうであるから,被告標章は,本件登録商標2に類似する。 ウ 本件登録商標3について 本件登録商標3は,黒色の「RAffINE」の欧文字で,ブロック体 の「RA」,横棒部分が連結され,上下に伸びた縦長形状の「ff」及び 「INE」を横書きして成るもので,「ラフィネ」,「ラフィーネ」の称 呼を生じるが,「raffin?」の意味が理解されているとは認められ ないから,特定の観念を生じない。これに対し,被告標章の要部は,「R affin?」の部分であって,「ラフィネ」,「ラフィーネ」の称呼を 生じるが,特定の観念を生じるものではないから,被告標章の要部と本件 登録商標3とは,称呼が同一であり,特定の観念ではないものの,「RA ffINE」又は「Raffin?」の綴りや「ラフィネ」,「ラフィー ネ」の称呼から同一又は類似の観念を生じるものと認められる。 そうであるから,被告標章は,本件登録商標3に類似する。 (3) 被告は,被告各商品の識別標識として使用されているのは「G?n?re r」であり,また,本件各登録商標を使用した原告の商品と被告各商品の需 要者が異なるから,出所を誤認混同するおそれはないと主張する。 前記前提事実に,証拠(甲7の1ないし3,8の1ないし5,10の1な いし7,乙1,4の2ないし9,9,11,12,15の1及び2)を総合 すれば,原告は,女性用化粧品の容器に本件各登録商標を付し,「ラフィネ シリーズ」として全国の店舗,原告のホームページ及び物販サイト等で販売 10 していること,被告は,化粧品である被告各商品の外箱や容器の正面下部に, 「produced」,「by」の欧文字に続いて被告標章2ないし6を付 し,中央部付近には,「G?n?rer」の欧文字を横書きして成る標章を付 し,これを冒頭に被告標章1を付した被告のホームページや物販サイト等で 販売し,被告が経営する女性専門育毛サロン「ラ・フィーネ」(以下「本件 サロン」という。)で使用していることが認められる。これらの事実による と,被告は,そのホームページに被告標章1を付し,被告各商品の外箱や容 器に出所を示す「produced by」の文字に続いて被告標章2ない し6を付して,被告標章を出所識別標識として使用しているのであり,また, 原告の商品と被告各商品の需要者は,いずれも主として女性であって,共通 するのである。被告の上記主張は,採用することができない。 2 争点2(被告が先使用による被告標章の使用をする権利を有するか否か)に ついて (1) 前記前提事実に,後掲の証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実 を認めることができる。 ア 被告は,平成11年4月の設立後,京都市内に本件サロンを開業して被 告標章の使用を開始し,遅くとも平成13年4月頃からは,被告のホーム ページや物販サイト等において,その冒頭に被告標章を付し,商品の写真 を掲載するなどして,化粧品等の商品の販売を開始した。被告各商品の販 売開始時期は,被告商品1(頭皮用化粧品「FGF−7ジェネレFエッセ ンス」)が平成19年1月,被告商品2(育毛用美容液「EGFジェネレ エッセンス」)が平成18年1月,被告商品3(頭皮用ヘアパック「ジェ ネレヘアパック」)が平成13年8月,被告商品4(コンディショナー 「ジェネレコンディショナー」)が同年9月,被告商品5(トリートメン ト「ジェネレ洗い流さないトリートメント」)が平成24年1月である。 (甲7の1ないし3,乙2,3,9,13の1ないし13) 11 イ 被告は,平成11年9月頃から,京都新聞,週刊テレビ京都,Hot Pepper,SAVVY,Leaf,シティリビング等の京都府内など で販売,配布等される新聞,雑誌やタウンページ等に,本件サロンの広告 を700回以上にわたり掲載してきたが,その大半において,被告の商号 や「ラ・フィーネ」との表示がある近辺等に被告標章を付した。そして, 上記広告中には,平成14年4月頃から,被告商品3,シャンプー,トリ ートメント,エッセンス等各種の被告オリジナルの化粧品を販売している 旨記載したものや被告が販売する化粧品等の商品の写真などを併せて掲載 したものが見られるようになり,平成18年1月頃からは被告商品2の販 売を開始した旨,平成19年1月頃からは被告商品1の販売を開始した旨, 平成21年5月頃からはダメージヘアケア用トリートメントの販売を開始 した旨記載したものなどが見られるようになり,こうした被告の化粧品の 宣伝も兼ねた広告の件数は,本件各登録商標のうち最初にした本件登録商 標2に係る商標登録出願の日である平成22年8月24日より前のもので 少なくとも約150件に達した。 (乙4の1ないし9,12) ウ 被告は,平成12年7月に,KBS京都で被告標章を付した本件サロン のスポット広告を流し,平成13年10月には,被告代表者が関西テレビ の番組に出演して,被告商品3や被告オリジナルのシャンプー,リンスを 大写しにして宣伝を行い,また,平成14年1月には関西テレビで,同年 4月にはサンテレビでそれぞれレポーターが本件サロンを訪問する番組が 放映されて,被告標章の映像が流され,後者では,さらに被告商品3や被 告オリジナルのシャンプー,コンディショナー,ヘアエッセンス等が映像 とともに紹介された。 (乙5の1・2・4ないし6) エ 被告は,平成16年ころ,京都市営地下鉄に被告標章を付した本件サロ 12 ンの吊り広告を掲示した。 (乙19) オ 被告代表者は,平成20年4月と同年6月の2度にわたって,東京で行 われた日本臨床抗老化医学会の認定実技講習会において,被告商品1など を用いた発毛施術の講座を開講したが,それに先立つ同年3月に月刊「健 康と医療」に上記講習会の告知等がされ,被告商品1などの写真入りの広 告が掲載された。また,被告は,同年7月に東京で開催された第1回アン チエイジング展覧会に出展し,同年8月に東京で開催されたコ・メディカ ル産業展2008(ドラッグストア流通フェア2008)に出展して,後 者を特集した月刊「ヘルスケアタイムス」には被告商品1などの写真入り の広告が掲載された。 (乙6の1及び2,7の1及び2,8) カ 被告は,平成15年頃に作成した本件サロン,ヘアケア商品のパンフレ ットや平成20年頃に作成した被告商品1ないし3等被告が販売する商品 のカタログに被告標章を付し,商品の写真を掲載した。 (乙15の1及び2,18) キ 被告は,現在も,継続して被告各商品等の化粧品について被告標章を使 用している。 (2) 上記(1)認定の事実によれば,被告は,本件各登録商標の商標登録出願前 の平成13年4月頃から,化粧品について被告標章を使用してホームページ 等で販売するようになり,平成14年4月頃からは,本件サロンが所在する 京都府内を中心に,本件サロンの広告と併せて被告各商品を含む化粧品の広 告宣伝を多数回にわたり行うなどしているのであり,不正競争の目的でなく 化粧品について被告標章の使用をしていた結果,被告標章は,少なくとも京 都府内やその近辺において,本件各登録商標の商標登録出願の際,被告の販 売する化粧品を表示するものとして,その主な需要者である女性の消費者に 13 広く認識されるに至っていたものと認められる。 そして,被告は,現在も,継続して化粧品について被告標章を使用してい るから,化粧品について被告標章の使用をする権利を有すると認められる。 (3) 原告は,本件サロンについての被告標章の使用実績は考慮すべきではな いとか,広告に掲載された被告各商品の写真からは被告標章が判別できない ものも多いなどとして,被告標章が化粧品についての使用実績がほとんどな く需要者の間に広く知られていないと主張する。しかしながら,本件サロン の広告宣伝により被告標章の周知性が高まれば,同じ被告標章を使用する化 粧品の広告宣伝を行うことによって,需要者が被告標章を被告の化粧品を表 示するものとして認識することになることは明らかであるし,被告は,本件 サロンと化粧品を同時に広告宣伝するなどしているのであるから,化粧品に ついて被告標章を使用していた結果,周知性を獲得したものといえる。また, 被告の化粧品の広告に被告標章を付することは,化粧品についての被告標章 の使用に当たるのであるから,大半の広告に被告標章が表示されている本件 において,被告各商品の写真において被告標章を判別することができるかど うかはさしたる意味がない。原告の上記主張は,採用することができない。 3 以上のとおりであって,被告標章は,本件各登録商標に類似するが,被告は, 化粧品について先使用による被告標章の使用をする権利を有するから,原告の 請求は,その余の点につき検討するまでもなく,全て理由がない。 4 よって,原告の請求をいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官 高 野 輝 久 裁判官 三 井 大 有 14 裁判官 志 賀 勝 <目録記載のローマ数字は本文では「2の1」「3の1」などと記載> 15 16 17 別紙 商標権目録 1 出願年月日 平成22年11月2日 登録年月日 平成23年4月22日 登 録 番 号 第5408589号 指 定 商 品 第3類 化粧品,つけづめ,つけまつ毛 第8類 ひげそり用具入れ,ペディキュアセット,まつ毛カール 器,マニキュアセット,アイロン(電気式のものを除く。),糸 通し器,チャコ削り器,五徳,十能,暖炉用ふいご(手持ち工具 に当たるものに限る。),火消しつぼ,火ばし,護身棒,殺虫剤 用噴霧器(手持ち工具に当たるものに限る。) 第21類 化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。),携帯用化 粧用具入れ,洋服ブラシ,紙タオル取り出し用金属製箱,靴脱ぎ 器,せっけん用ディスペンサー,花瓶,水盤,風鈴,香炉,靴ブ ラシ,靴べら,靴磨き布,軽便靴クリーナー,シューツリー 第26類 つけあごひげ,つけ口ひげ,ヘアカーラー(電気式の ものを除く。),編み棒,裁縫箱,裁縫用へら,裁縫用指抜き, 針刺し,針箱,造花の花輪,靴飾り(貴金属製のものを除く。), 靴はとめ,靴ひも,靴ひも代用金具 登 録 商 標 RAFFINE(標準文字) 2 出願年月日 平成22年8月24日 登録年月日 平成23年5月13日 登 録 番 号 第5411218号 指 定 商 品 第3類 化粧品,つけづめ,つけまつ毛 登 録 商 標 RAffINE(標準文字) 18 3 出願年月日 平成23年2月4日 登録年月日 平成23年8月12日 登 録 番 号 第5431315号 指 定 商 品 第3類 化粧品,つけづめ,つけまつ毛 第8類 ひげそり用具入れ,ペディキュアセット,まつ毛カール 器,マニキュアセット,アイロン(電気式のものを除く。),糸 通し器,チャコ削り器,五徳,十能,暖炉用ふいご(手持ち工具 に当たるものに限る。),火消しつぼ,火ばし,護身棒,殺虫剤 用噴霧器(手持ち工具に当たるものに限る。) 第21類 化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。),中身入り の携帯用化粧用具入れ,洋服ブラシ,紙タオル取り出し用金属製 箱,靴脱ぎ器,せっけん用ディスペンサー,花瓶,水盤,風鈴 第26類 つけあごひげ,つけ口ひげ,ヘアカーラー(電気式の ものを除く。),編み棒,裁縫箱,裁縫用へら,裁縫用指抜き, 針刺し,針箱 登 録 商 標 19 |