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関連審決 審判1999-14049
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成12行ケ11審決取消請求事件 判例 商標
平成13行ケ45審決取消請求事件 判例 商標
関連ワード 識別力 /  識別機能 /  指定商品 /  指定役務 /  3条1項6号 /  周知性 /  観念(観念類似) /  補正 /  共有 /  外国 / 
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事件 平成 16年 (行ケ) 177号 審決取消請求事件
原告 太洋開発株式会社
訴訟代理人弁護士 飯塚孝
同 荒木理江
訴訟代理人弁理士 若林擴
被告 特許庁長官小川 洋
指定代理人 茂木静代
同 涌井幸一
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2004/07/22
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 (1) 特許庁が,平成11年審判第14049号事件について平成16年3月9日にした審決を取り消す。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯等 原告は,「情報マネジメント」の文字を横書きして成る商標(別紙参照),以下「本願商標」という。指定役務は,第36類「預金の受入れ(債券の発行により代える場合を含む。)及び定期積金の受入れ,資金の貸付け及び手形の割引,内国為替取引,債務の保証及び手形の引受け,有価証券の貸付け,金銭債権の取得及び譲渡,有価証券・貴金属その他の物品の保護預かり,両替,金融先物取引の受託,金銭・有価証券・金銭債権・動産・土地若しくはその定著物又は地上権若しくは土地の賃借権の信託の引受け,債券の募集の受託,外国為替取引,信用状に関する業務,割賦購入あっせん,前払式証票の発行,ガス料金又は電気料金の徴収の代行,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,外国有価証券市場における有価証券の売買取引及び外国市場証券先物取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券の引受け,有価証券の売出し,有価証券の募集又は売出しの取扱い,株式市況に関する情報の提供,商品市場における先物取引の受託,生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出,建物の管理,建物の賃借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の賃借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供,骨董品の評価,美術品の評価,宝玉の評価,企業の信用に関する調査,慈善のための募金」であり,これは,平成11年6月10日付け手続補正書をもって補正されたものである。)につき,平成10年2月12日,商標登録の出願をし,平成11年8月6日,拒絶査定を受けた。
原告は,同月30日,これに対する不服の審判を請求した。
特許庁は,これを平成11年審判第14049号事件として審理した。そして,平成15年12月5日付拒絶理由通知書をもって拒絶理由を通知した上で,平成16年3月9日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本を,同月29日原告に送達した。
2 審決の理由 審決の理由は,別紙審決書の写しのとおりである。要するに,本願商標は,全体として,「情報の管理及び運用」の意味で,実際の取引において普通に用いられるものであり,これを,その指定役務について使用しても,需要者が,何人かの業務に係る役務であることを認識できないものであるから,商標法3条1項6号に該当する,というものである。
原告の主張の要点
審決は,本願商標の自他役務の識別力の有無についての認定判断を誤り,本願商標が商標法3条1項6号に該当する,と判断したものであるから,取り消されるべきである。
1 本願商標の創造性 (1) 原告の代表取締役Aは,発明の名称を「支払情報の流通市場システムの構築方法」とする特許を出願している(特願2000-96611号,以下「本願特許」という。)。
原告は,本願特許に付随するものとして,情報の債権化・債務化をマネジメントすること,すなわち,情報を金銭的な価値あるもの(無形の商品)と見立て,単位を決めて効率よく取引の対象としてマネジメントするという技術思想を表象するものとして,「情報マネジメント」という標章(以下「本件標章」という。)に係る本願商標を創造したものである。
(2) 本願特許の出願に付随するものとして創造された本願商標に,自他役務の識別力があることは明らかである。
2 本件標章の使用実態 審決は,横須賀市の「情報マネジメントに関する基本指針」における定義づけ,株式会社ワンビシアーカイブズのホームページ及び金沢工業大学その他多くの大学や高校で「情報マネジメント学科」が講義科目として設置されているという使用事例を理由に,本願商標に自他識別機能を有しないと結論付けている。すなわち,審決は,以上の使用事例から,本件標章は,一般的に,情報の管理及び運用という意味を持つものとして理解され,認識されるものである,と根拠付けている。
しかし,審決の挙げる事例は,いずれもその策定時期等(使用開始時期)が不明であるか,あるいは,単なる一企業のホームページにおける使用例で周知性を欠くものであり,そのような事例をもって,本件標章の一般的な理解を認定し,本願商標に自他役務の識別力がないとするのは,適切さを欠く。
3 特許庁の審査の不統一性 原告は,本件標章について,指定商品ないし役務を異にする商標の登録を出願し,登録を受けている(甲第4号証ないし第7号証)。
本願商標のみ,登録が認められないのは,判断の統一性を欠く。しかるに,審決は,「上記登録例は,本願商標と事案を異にするものといわざるを得ず,前記認定,判断を左右するものではない。」(審決書5頁3段目)と説示するだけで,原告が指摘した,特許庁の審査に齟齬があり,判断の統一性を欠いていることについて,何ら判断をしていない。
被告の主張の要点
1 原告の主張1(本願商標の創造性)に対して 本件標章は,「情報」と「マネジメント」という,いずれも一般的な語の組み合わせからなるものである。本願商標が,原告の主張するように,本願特許に付随するものとして出願されたものであるとしても,原告が創造した語であるとはいえない。
2 原告の主張2(本件標章の使用実態)に対して (1) 本件標章は,様々な企業において営業戦略等として掲げられており,本件標章を標榜する研修も実施されている。
本件標章を名称とする授業を実施している高校,大学が存在し,あるいは,本件標章をその内容の説明として用いて,他企業の有する情報の運用・管理を業として行う企業も存在する。
地方公共団体である横須賀市では,本件標章を含む基本方針,規則を定めており,その基本方針及び規則は,本件標章を,情報の適正な管理及び円滑な運用を行うこと,との意味で用いている。
(2) 以上のとおり,本件標章は,取引社会において多くの企業等が経営戦略等の一つに掲げている一般的な用語であって,これを商標としてその指定役務に使用しても,自他役務の識別力がないというべきである。
なお,審決が指摘した本件標章の使用事例は,いずれも,本件審判における平成15年12月5日付拒絶理由通知書において,原告に対し示されているものであるから,少なくとも審決時前のものであることは,明らかである。
3 原告の主張3(特許庁の審査の不統一性)に対して 審決は,原告が指摘する商標について,その指定役務等が,本願商標の指定役務とは異なることを指摘した上で,本願商標の場合,その指定役務と本件標章の意味する「情報の管理及び運用」が,格別に密接な関連を持つことを考慮して,自他役務の識別力を有しない,との判断を示している。
判断を異にする理由は示されており,かつ,判断の不統一もない。
当裁判所の判断
1 原告の主張1(本願商標の創造性)について (1) 原告は,本願商標は,本願特許に付随して創造されたものであり,自他役務の識別力を有する,と主張する。
(2) 情報とは,「あることがらについてのしらせ。判断を下したり行動を起したりするために必要な,種々の媒体を介しての知識」(広辞苑第5版・乙第1号証)のことであり,マネジメントとは,「管理,処理,経営」(同号証)のことである。いずれも極めて一般的な,日常よく用いられる言葉であることは明らかである。
また,情報を,必要に応じて,消失を防ぎ,利用(運用)し易くするために管理することは当然のことであるから,「情報」及び「マネジメント」の組み合わせも,格別特異性のない,ごく自然なものであると認められる。現実に,後記のとおり,これら両者を組み合わせた本件標章,すなわち「情報マネジメント」の複合語も,情報の管理運用といった意味で,本件審判手続における拒絶理由通知当時には,既に広く用いられていた,と認められる。
したがって,本件標章が,原告により創造された言葉であるとか,造語性の高い言葉であると認めることはできない。
(3) 商標の自他役務又は自他商品の識別力の有無は,当該商標の構成自体から判断されるべきことは当然である。原告が,本願特許に付随し,その技術思想をよく表現するものとして,本件標章を思いついたとしても,そのような経緯・動機・意味づけは,取引者・需要者の窺い知ることのできないものであって,取引者・需要者にとっての,原告の提供する役務の自他識別性を根拠付けるものとすることはできない。
2 原告の主張2(本件標章の使用実態)について (1) 乙第2号証,第3号証の1,2,第4号証の1ないし3,第5号証の1ないし5,第6号証の1,3,4からは,本件標章は,本件審判手続における拒絶理由通知当時において,広く一般的に用いられていたと,優に認めることができる。
例えば,毎日新聞社は,平成8年6月15日の記事として,神戸市教育委員会が平成10年に普通科高校を新設する予定であることと,その新設校のカリキュラムの具体的な内容として「新設校は,生徒がそれぞれの適性,進路などに応じて選択できる社会科学,国際人文,総合科学,芸術,国際情報,情報マネージメント,生活福祉の7学系(20単位)を開設。・・・」とを,それぞれ報道した事実を認めることができる(乙第5号証の1)。
また,朝日新聞社は,平成9年11月14日付けで,弘前大学の学科改組について,「人間文化,情報マネジメント,社会システムの3課程制に改組し,・・・」と報道している(乙第5号証の2)。
(2) 本件標章を全て日本語に訳したものに対応する「情報管理」の語の派生語(複合語)である「情報管理システム」は, 「情報管理システム(じょうほうかんりシステム) information management system, IMS 抽象的・観念的であった経営管理に対し,経営の最高意志の決定のために,各種経営情報を体系的に処理および管理するためのしかた,ならびにシステムのこと。」(情報処理用語大事典第1版(平成4年11月発行)・乙第2号証) の意味を持つものとされ,また,本件標章は, 「「職場内での情報の共有化を!!」〜情報マネジメント研修を実施」,「11月25日,職種横断研修「情報マネジメント(第2回)〜情報連絡の重要性〜」が・・・行われた。」(東京都健康局総務部総務課広報係発行の「健康局NEWS けんこうTOKYO」・乙第4号証の3), 「セキュリオン24・・・は,・・・統合・情報マネジメント事業に乗り出す。書類や磁気テープ類の保管,輸・配送サービスおよび光ファイリングシステムなどの利用による「オフィスなどからの遠隔操作によるオンライン情報検索システム」の提供がその主要業務となる。」(平成元年9月13日付の日刊工業新聞社の報道・乙第6号証の1), 「唯一の「総合情報マネジメント企業」として更なる情報管理の可能性を追求しつづける。」,「ワンビシアーカイブズ総合情報マネジメント部門は,・・・オフィス情報管理の合理化を目指して,・・・情報管理分野における様々な事業を開拓してまいりました。」,「情報の発生段階から機密抹消処理まで,・・・企業情報の一元管理を実現する「総合情報マネジメント企業」として,・・・付加価値の高い情報管理サービスを提供しています。」(「株式会社ワンビシアーカイブズのホームページ・乙第6号証の3), との文脈で用いられている。
(3) 以上からは,本件標章は,一般に,経営等に関する情報の管理運用等の意味を持つものと理解され,広く用いられていた,と優に認めることができる。
この点についての審決の判断に,結論として誤りはない。
3 原告の主張3(特許庁の審査の不統一性)について 審決は, 「第1号証ないし第4号証に示された登録商標は,本願商標の指定役務とは異なる商品及び役務を指定商品及び指定役務とするものであって,前記2で認定したとおり,本願商標の指定役務は,「情報の管理及び運用」と格別密接な関係を有する役務ということができるから,過去の登録例の存在をもって,本願商標がその指定役務に使用された場合も,自他役務の識別機能を有するとすることはできない。したがって,上記登録例は,本願商標と事案を異にするものといわざるを得ず,前記認定,判断を左右するものではない。」(審決書5頁17行目〜24行目) としている。
例えば,登録番号第4308641号の「情報マネジメント」の商標は,その指定商品が第16類「雑誌,新聞」であり,この種商品に,本件標章が付された場合,その態様によっては,取引者・需要者は,雑誌名・新聞名であると認識し,それにより自他商品の識別力が高い蓋然性をもって生じ得る。
あるいは,登録番号4289380号の「情報マネジメント」の商標については,その指定役務のうち,例えば「自転車の修理」は,情報の管理運用そのものではなく,それと密接な関連を有するものでもないから,それに付された本件標章に接した取引者・需要者は,本件標章の一般的な意味である情報の管理運用を認識せず,そのため,本件標章に別の意味,すなわち自他役務の識別標識としての意味,があると認識し得るのである。
指定商品ないし役務が違うことを理由に,本願商標と,本件標章を採用した別の商標との間で,登録の可否についての判断が異なる,とした審決の判断は相当であり,審決が原告の指摘した点について判断をしていないというわけでもない。
4 以上のとおり,本件標章は,格別造語性のない,一般的な語であり,情報の管理運用といった意味で広く用いられている語であって,それが,本願商標の指定役務に関して用いられるときは,取引者・需要者は,その役務の内容そのものを簡略に説明するものと認識し,自他役務を識別する標章とは認識しない,と認めることができる。
本願商標が,その指定役務との関係で自他役務の識別力を有しない,とした審決の判断は,正当である。
5 結論 以上によれば,審決の取消しを求める原告の本訴請求には,理由がない。
よって,原告の請求を棄却することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 佐藤久夫
裁判官 設樂隆一
裁判官 高瀬順久