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事件 平成 25年 (行ケ) 10342号 審決取消請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2014/06/11
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
判例全文
判例全文
平成26年6月11日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成25年(行ケ)第10342号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 平成26年5月14日

判 決

原 告 株 式 会 社 ビ ー ム ス

訴訟代理人弁理士 和 田 則

同 小 松 秀 彦

被 告 特 許 庁 長 官

指 定 代 理 人 西 田 芳 子

同 渡 邉 健 司

同 堀 内 仁 子

同 山 田 和 彦

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1 請求

特許庁が不服2013−11560号事件について平成25年11月19日

にした審決を取り消す。

第2 事案の概要

1 特許庁における手続の経緯等
A 原告は,平成24年3月19日に商標登録出願された商願2012−2

0934号に係る商標法10条1項の規定による商標登録出願の分割とし

て,平成24年8月9日,別紙本願商標目録記載の構成からなり,第25

類「ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,水上スポーツ用





特殊衣服,ウインドサーフィン用シューズ」を指定商品とする商標(以下

「本願商標」という。)の商標登録出願をした(甲1)。
B 原告は,平成25年3月21日付けの拒絶査定を受けたので,同年6月1

9日,これに対する不服の審判を請求した。
C 特許庁は,原告の請求を不服2013−11560号事件として審理し,

平成25年11月19日に「本件審判の請求は,成り立たない。」とする審

決(以下「本件審決」という。)をし,同年12月2日,その謄本は原告に

送達された。
D 原告は,平成25年12月24日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を

提起した。

2 本件審決の理由の要旨

本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりであり,要するに,本

願商標は,別紙引用商標目録1及び2記載の各商標(以下,順に「引用商標

1」,「引用商標2」といい,併せて「引用商標」という。)との関係で,商

標法4条1項11号に該当するから,商標登録を受けることができない,とい

うものである。

3 取消事由

商標法4条1項11号該当性に係る判断の誤り

第3 当事者の主張

〔原告の主張〕

1 商標の類否の判断基準等

商標の類否については,商品に使用された商標が,その外観観念称呼

によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察

すべきであり,かつ,その商品又は役務に係る取引の実情を明らかにし得る限

り,その具体的な取引状況に基づいて判断すべきである。また,商標の外観





観念又は称呼の類似は,その商標を使用した商品につき出所混同のおそれを推

測させる一応の基準に過ぎず,上記3点のうちその一において類似するもので

も,他の2点において著しく相違することその他取引の実情によって何ら商品

の出所について誤認混同をきたすおそれの認めがたいものについては,これを

類似商標と解すべきではない(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決・

民集22巻2号399頁参照)。

本件審決は,具体的な取引状況等については全く無視又は顧慮せずに,本願

商標と引用商標の外観称呼及び観念について単純に対比し,そのいずれか一

つが同一又は類似であれば両商標は類似と判断したものであるが,取引の実情

等からすれば,本願商標については商品の出所について誤認混同をきたすおそ

れを生じる余地はないのであって,本件審決は違法なものである。

2 本願商標と引用商標の類否
A 外観

本願商標は,上段に「B」の欧文字と,該「B」の欧文字の半分ほどの高

さで「MING」の欧文字を青色で表し,下段に「LIFE STORE」

の欧文字を赤色で円弧状に湾曲させて上下二段に表した構成からなるもので

あるのに対し,引用商標は「ライフストア」と片仮名文字で書してなるもの

であるから,両商標の全体構成は顕著に異なり,構成全体の外観が異なるも

のであり,この点は本件審決においても認められている。
B 称呼及び観念

本件審決は,本願商標を構成する「B MING」の文字部分と「LIF

E STORE」の文字部分とは,視覚上分離して把握され,また,これら

を常に不可分一体のものとしてのみ把握しなければならない特別の事情も見

出せないものであるから,それぞれ独立して自他商品の識別標識としての機

能を果たすものであるとした上で,本願商標の「LIFE STORE」の





文字部分と引用商標とを対比して両商標は称呼観念を共通し,両商標は類

似すると認定したものであるが,このように本願商標を分離観察によって引

用商標と対比することは誤りである。

原告及び取引関係者は,本願商標において,「B MING」の文字部分

と「LIFE STORE」の文字部分とを分離して,「LIFE STO

RE」「ライフストア」と表記して取引の具に供している事実は全くなく,

本願商標に関連する広告・宣伝をする際及びホームページ上で本願商標に関

連する表記をする際には,全て「ビーミングライフストア」「B MING

LIFE STORE」と表記し,かつ「ビーミングライフストア」として

取引の具に供されている。本願商標は「B MING」の上段の欧文字と下

段の「LIFE STORE」の欧文字とが一体となって,まとまりよくデ

ザイン化されてなるものであり,本願商標の指定商品の取引者・需要者等は

本願商標を「B MING LIFE STORE」「ビーミングライフス

トア」と一体不可分の商標と理解しており,そのような印象,記憶,連想等

のもと,「ビーミングライフストア」とのみ称呼観念されるものである。

したがって,本願商標と引用商標は称呼及び観念においても異なる。
C 取引の実情

ア 原告は昭和51年2月に創業し,平成25年8月現在の従業員数113

4名,同年2月期連結ベースの売上げは612億円,同年8月現在の店舗

数は国内127店舗,海外13店舗を有する会社であり,わが国を代表す

るセレクトショップである(甲17)。原告は,本願商標の指定商品

「B MING LIFE STORE」「ビーミングライフ」という名

称の店舗で販売しており,本願商標を,17店舗の看板,レシート,商品

収納袋,靴下等の商品タグ,顧客に対する店舗カード,原告のホームペー

ジ等に使用している(甲5の1〜10)。また,新聞,雑誌,WEBメデ





ィアや取引関係者らにおいても本願商標が使用されている(甲6の1〜

8)。

一方,引用商標の商標権者である株式会社ライフコーポレーション(以

下「ライフコーポレーション」という。)は食品を中心とするスーパーマ

ーケットであり(甲11の1〜5),主に主婦を需要者層とするのに対し,

原告は主に被服関係,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト

の商品を販売するセレクトショップであって,主に若い男女を需要者層と

している。

以上からすると,原告とライフコーポレーションは,取引形態,取引商

品及び需要者層が全く異なる上,原告及び取引関係者は,「B MING」

の文字部分と「LIFE STORE」の文字部分とを分離して,「LI

FE STORE」「ライフストア」と表記して取引の具に供している事

実は全くないのであって,原告の取引者が商品の出所を誤認混同してライ

フコーポレーションの商品を購入するとか,逆にライフコーポレーション

の取引者が商品の出所を誤認混同して原告の商品を購入するとか,両者の

取引の相手方が,商品の出所について誤認混同をきたすおそれは全くない。

実際,ライフコーポレーションから原告に対し,本願商標が引用商標と同

一又は類似する旨の通知書等が送付されたことは全くない上,本願商標を

原告店舗の看板等に使用していることについて,原告の取引関係者等から

原告とライフコーポレーションとが資本的あるいは人的に何らかの関係が

あるのか等に関する問合せ電話等は一切ない。

イ また,本件審決は,引用商標について自他商品識別力が非常に弱い,又

は発揮し得ないとはいえないと認定するとともに「ライフストア」「LI

FE STORE」の文字が商品の品質を表示するものではないと認定し

たが,わが国において「ライフストア」の文字は特に小売や卸売りに係る





店舗名や屋号に広く使用され,業界の一般名称・普通名称を表すものと認

識されており,「ライフストア」という語はすでに自他商品識別能力を喪

失している。ライフコーポレーションは,本来,「ライフストア」を店舗

名等として他者に使用された場合,商標権侵害の排除を求めて何らかの法

的措置を講ずべきところ,何ら権利行使をしているようには認められず,

引用商標は既に希釈化して商品の品質保証機能及び商品の出所表示機能

喪失しており,後願を排除する効力はない。

3 商標法4条1項11号該当性

以上からすれば,本願商標と引用商標は,外観称呼及び観念が異なり,取

引の実情に照らしても「何ら商品の出所について誤認混同の生ずるおそれのな

い」商標であって,これを類似商標と判断すべきではなく,商標法4条1項

1号には該当しない。

4 被告の主張に対する反論

被告は,2013年(平成25年)12月2日付け日経MJ(流通新聞)の

記事(乙13)から,本願商標が簡略化されて表示される取引の実情がある旨

主張するが,同記事は,原告が流通新聞に出稿したものでも,原告の依頼に基

づいて掲載されたものでもなく,流通新聞が原告と関係なく掲載したものであ

る。

また,同記事に掲載されている「ライフストア」の文字は「商品に関する広

告」行為に該当するものではなく,この記載は単なる原告会社の紹介記事にす

ぎない。したがって,この紹介記事をもって本願商標が簡略化されて表示され

たものということはできない。なお,同記事には「ビーミング ライフストア

by ビームス」とも紹介されており,本願商標はその構成から「ビーミング

ライフストア」とのみ称呼観念されて取引の具に供されている。

〔被告の主張〕





1 本願商標と引用商標の類否について
A 本願商標について

本願商標は,上段に,「B」の欧文字(二つの縦長の菱形図形を右側に配

してなる。)と,該文字の半分ほどの高さで「MING」の欧文字を,縦線

と横線の太さが異なるローマン体風の藍色で横書きして表し(以下,単に

「B:MING」と表示する。),下段には,「LIFE STORE」の

欧文字を赤色で円弧状に湾曲させて線の端に飾りをつけた,線の太さが均一

のゴシック体風に表した構成からなるところ,上段部分の文字がローマン体

風で藍色に横書きされているのに対し,下段部分の文字は線の端に飾りのあ

るゴシック体風に赤色で円弧状に配されているものであるから,本願商標の

上段部分と下段部分とは,文字の書体,色彩,配置及び態様において明らか

な違いがあり,各部分が,それぞれにまとまった単位を構成している。その

ため,本願商標は,視覚上,明確に分離して観察されるものである。

このうち,上段部分を構成する文字「B:MING」又は「MING」は,

一般的に使用される英語の辞書に採録されていないことから(乙1,2),

本願商標の上段部分は,親しまれた特定の意味合いを理解させるものではな

い。一方,下段部分を構成する「LIFE STORE」の文字は,平易な

英語「life」と「store」から構成されているものであるから,各

語が有する語意により(乙3,4),その全体から「生活の店」程の意味合

いを理解させる。

そして,上段部分と下段部分とは,互いに関連のない文字(語)の組み合

わせであるから,両者が合わさってまとまった特定の意味合いを看取させる

ことはなく,また,指定商品について,両部分が一体となり一つの(意味を

表す)ものとして,知られているという実情もない。そうとすると,本願商

標は,上段部分と下段部分とが,外観上も観念上も,常に一つのまとまりと





してのみ,看取されるものではなく,分離して観察することが取引上不自然

であると思われるほど不可分的に結合しているということはできない。

また,その構成中の「LIFE STORE」の文字部分は,平易な英語

2語から構成されていることから「生活の店」程の意味合いを理解させるも

のであるが,指定商品について,該文字が商品の品質等を表示する等の密接

的に関連した具体的な語であるとする実情はなく,上段部分に対する付記的

又は付随的な部分ということもできないものであるから,本願商標の下段部

分は,独立して,商品の出所識別標識としての機能を果たし得るものである

というべきである。

そうしてみると,本願商標に接する取引者,需要者は,その構成中,上段

部分と分離して観察されて,印象に残る色彩の覚えやすい「LIFE ST

ORE」の文字部分に着目し,記憶にとどめ,該文字部分をもって取引に資

することも決して少なくないというべきであり,その構成文字に相応して

「ライフストア」の称呼,「生活の店」の観念を生じる。

したがって,本願商標は,その構成全体及び構成中の「B:MING」部

分のほか,「LIFE STORE」の文字部分からも,自他商品識別標識

としての称呼及び観念を生じるというべきである。

以上のとおり,本願商標は,その外観観念称呼等によって取引者,需

要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察した結果,構成中

の「LIFE STORE」の文字部分が,単独でも商品の出所識別標識と

しての機能を発揮し,「ライフストア」の称呼をも生じるものであって,か

つ,「生活の店」の観念を生じるものである。
B 引用商標について

引用商標は,「ライフストア」の片仮名からなり,その構成文字に相応し

て「ライフストア」の称呼を生じる。そして,その構成は,我が国の英語の





普及程度からすると,「生活」の意味を有する「life」に通ずる「ライ

フ」と「店」の意味を有する「store」に通ずる「ストア」を結合した

ものであると理解させるから,その全体から「生活の店」程の意味合いを認

識させる(乙5)。
C 本願商標と引用商標の類否判断について

ア 本願商標と引用商標の外観称呼及び観念の比較

本願商標と引用商標の構成全体を対比観察した場合,外観において相違

するものであるが,「ライフストア」の称呼及び「生活の店」の観念を共

通にする。

したがって,これらを同一又は類似の商品に使用するときは,時と所を

異にして接する取引者,需要者にとって,互いに紛らわしい類似する商標

というべきである。

取引の実情

商標の類否判断にあっては,本願商標の指定商品と引用商標の指定商品

について比較するべきであり,原告と引用商標の商標権者の現在の業態の

相違及びそれ自体による需要者層の相違によって判断すべきものではない。

また,商標の類否判断にあたり考慮される取引の実情とは,その指定商

品全般についての一般的,恒常的なそれを指すものであって,単に当該商

標が現在使用されている商品についてのみの特殊的,限定的なそれを指す

ものではないから,現在の業態,需要者層の相違,及び商品の出所の混同

について問題が生じていないこと,本願商標の宣伝等において,広告文中

に一連に表示されていることは,取引の実際における一時的な局面にすぎ

ず,このような局面的,限定的な事実を,指定商品全般についての一般的,

恒常的な取引の実情とはいい難いものである。

本願商標及び引用商標の指定商品を含む,ファッションやスポーツ関連





用品を取り扱う業界において,経営上,限定した需要者層を対象に宣伝を

する場合があるが,それらの商品は,消費者の嗜好,目的により選択され

るものであるから,実際の需要者層は,必ずしも,上記の経営戦略により

形成されるものではなく,また,日々,容易に変動する需要者に対し,販

売対象の需要者層・年齢層の変更・拡大が行われているのが実情である。

なお,原告は,本願商標について,原告等がそのホームページ等におい

て「B MING LIFE STORE」のように一連に表示している

旨主張するが,同事実から,その指定商品全般の需要者が,直ちに本願商

標を一体不可分の商標と理解するものとはいえず,むしろ,実際の商取引

においては,商標が広告等で一連一体に表示される場合があるとしても,

別途,簡略化されて表示される場合も決して少なくない。

2 本願商標の指定商品と引用商標の指定商品との類否について

本願商標の指定商品は,引用商標の指定商品と同一又は類似する。

3 商標法4条1項11号該当性

以上のとおり,本願商標は,引用商標と類似する商標であり,かつ,本願商

標の指定商品は,引用商標の指定商品と同一又は類似する商品であるから,本

願商標をその指定商品に使用するときは,商品の出所について誤認混同するお

それがある。

よって,本願商標は,商標法4条1項11号に該当し,本件審決に誤りはな

い。

第4 当裁判所の判断

1 商標の類否判断の基準

商標法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に

使用された商標が,その外観観念称呼等によって取引者,需要者に与える

印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべきであり,かつ,その商品の





取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断する

のを相当とする(前掲最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決参照)。

しかるところ,複数の構成部分を組み合わせた結合商標については,商標の

各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほ

ど不可分的に結合しているものと認められる場合においては,その構成部分の

一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判

断することは,原則として許されない。他方,商標の構成部分の一部が取引者,

需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるも

のと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼観念

が生じないと認められる場合などには,商標の構成部分の一部だけを他人の商

標と比較して商標そのものの類否を判断することも,許されるというべきであ

る(最高裁昭和38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621

頁,最高裁平成5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁,

最高裁平成20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参

照)。

そこで,以上に説示した見地から本願商標と引用商標との類否について検討

する。

2 本願商標と引用商標との類否
A 本願商標

外観

本願商標は,別紙本願商標目録記載のとおり,上段部分に,欧文字「B」

と欧文字「MING」が,少し間を空けて後者が前者の半分程度の高さに

なるようにして下端を揃えて青色の直立した活字体で横書きされ,「B」

と「MING」の間の「B」の半分ほどの高さに,青色の縦長の菱形を配

した上で,当該菱形の右上かつ「M」の字の左寄り上方に,当該菱形より





も少し大きな青色の菱形を配し(B:MING),下段部分に,欧文字

「LIFE STORE」を,「MING」の半分ほどの高さの赤色の活

字体で,「B:MING」よりもやや狭い幅の範囲内に,「LIFE」と

「STORE」の間に半角程度の隙間を空け,下側に円弧状に湾曲する形

で配置した構成からなるものである。また,「B:MING」の各文字は,

横線と右から左への斜線は細く,縦線と左から右への斜線は太い書体であ

る一方で,「LIFE STORE」の各文字は,部位にかかわらず線の

太さは一様に肉太であるなど両者は書体も異なっている。

観念

本願商標中,上段部分である「B:MING」又は「MING」は,一

般の辞書に見当たらない造語であり(乙1,2),特定の観念が生じない。

一方,下段部分である「LIFE」及び「STORE」は,いずれも英

単語であって,「ベーシック ジーニアス英和辞典(初版第7刷)」(発

行所:株式会社大修館書店)によれば,「LIFE」は,生命,生物,人

生,生活,活気等の意味を有する名詞(乙3),「STORE」は,店,

蓄え,必需品,百貨店等の意味を有する名詞で(乙4),いずれも外来語

として広く親しまれている(乙5参照)。そして,これらの語を併せると,

一義的な意味が生じるとまでは認められないが,両者の意味を併せた「生

活の店」程度の観念が生じ得る造語である。

したがって,本願商標は,上段部分と下段部分において,互いに観念

なつながりはなく,全体及び上段部分としては,特定の観念を生じないが,

下段部分については「生活の店」程度の観念が生じ得る。

称呼

本願商標の構成文字全体から生じる称呼は,「ビーミングライフストア」

「ビーエムアイエヌジーライフストア」等が考えられる。また,前者であ





っても11音とやや冗長なものであるから,取引者,需要者は本件商標の

文字部分を上段部分と下段部分に区別して把握し,上記の称呼のほかに,

上段部分から「ビーミング」「ビーエムアイエヌジー」の称呼と下段部分

から「ライフストア」の称呼も生じ得ると認められる。

分離観察の可否について

以上によれば,本願商標の上段部分である「B:MING」の文字と下

段部分である「LIFE STORE」の文字は,少し離れた位置に配置

され,青色と赤色という明確な色の違いがある上,その態様も直立と円弧

状とで異なっているほか,書体も異なり,上段部分と下段部分には明らか

な違いがあること,上段部分である「B:MING」は大きく表示されて

おり見る者の注意を相当程度引く一方で,下段部分である「LIFE S

TORE」も十分認識できる大きさで,目立つ色,態様で表示されている

こと,「B:MING」も「LIFE STORE」も造語であって観念

的なつながりはなく,「B:MING」は特定の観念を生じないが,「L

IFE STORE」は「生活の店」程度の観念を生じ,いずれも相当程度

識別力を有すると考えられること等に照らすと,上段部分である「B:

MING」と下段部分である「LIFE STORE」を分離して観察す

ることが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとい

うことはできない。

そうすると,本願商標においては,上段部分である「B:MING」と

下段部分である「LIFE STORE」は,分離して観察することが可

能というべきである。
B 引用商標

引用商標は,「ライフストア」の片仮名からなり,その構成文字全体から

「ライフストア」の称呼を生じる。そして,その構成は,いずれも前記のと





おり英単語であって外来語として親しまれている「ライフ(LIFE)」と

「ストア(STORE)」を結合したものであると理解されるから,前記の

とおり,その全体から一義的な意味が生じるとまではいえないが,両者の意

味を併せた「生活の店」程度の観念を生じ得る(乙3ないし5)。
C 取引の実情

証拠(甲5の1〜10,6の1〜8,10の1〜4,11の1〜5,17)

及び弁論の全趣旨によれば次のとおりの事実を認めることができる。

ア 原告は,昭和51年2月に創業し,昭和57年5月に設立した株式会社

であり,資本金は2000万円,平成25年8月現在の従業員数1134

名,同年2月期連結ベースの売上げは612億円,同年8月現在の店舗数

国内127店舗,海外13店舗を有し,被服関係を中心とするセレクト

ショップである(甲5の7,6の2・4・5,10の1〜3,17)。

イ 原告は,平成24年3月19日に本願商標の商標登録出願をした後,同

年4月末頃に「ビーミングライフストア」の1号店をオープンし,本願商

標の指定商品を「B MING LIFE STORE」という原告の店

舗で販売し,現在,本願商標を,17店舗の看板,レシート,商品収納袋,

靴下等の商品タグ,顧客に対する店舗カード等に使用している(甲5の1

〜10,6の1〜8)。

ウ また,原告は,原告のウェブサイトにおいて,本願商標に関して「幅

広い世代に向け,メンズ&ウィメンズのカジュアルからビジネス,さら

にキッズ&ベビーや雑貨まで多彩なラインナップで現代のファッション

とライフスタイルを提案します。」(甲5の8),「<ビーミング ラ

イフストア>はその名の通り,暮らしを取り巻くさまざまなコトやモノ

についても,お客様と同じ生活者として,いわゆる3世代に向けて提案

していくお店です。」(甲10の4)などと記載している。





エ さらに,本願商標に関連する記事等についてみると,平成24年5月

17日付け船橋経済新聞の電子版の記事では,「ビーミングライフスト

アは,ファミリー3世代に向けて立ち上げた新業態。」(甲6の1),

ウェブサイトであるjapan.internet.com編集部の平

成24年10月26日付けの記事では,「ビームスの新ブランド『ビー

ミングライフストア』は,親と子,そして孫の親子3世代が楽しんでシ

ョッピングができるという,セレクトショップとしては異例のコンセプ

トを持つ。そして,そのコンセプトは見事に的中し,土日ともなれば子

ども連れの家族で賑わい,子どもも満面の笑みで店を後にしていく。」

(甲6の5),ウェブサイトであるFashionsnap.comの

平成24年4月17日付けの記事では,「ビームスが,ファミリー3世

代へ向けた新業態『B:MING LIFE STORE(ビーミング

ライフストア)』を立ち上げた。メンズ,ウィメンズ,キッズ,そして

ベビーまで,ファッションとライフスタイルを幅広く提案。家族全員で

楽しめる店舗を目指す。」(甲5の9)などと記載されているほか,ブ

ランド検索サイト 「Fuku DB」では ,「B:MING LIF E

STORE(ビーミングライフストア)とは,日本を代表する老舗セレ

クトショップ「BEAMS」が展開するショッピングセンター向けスト

ア。三世代(親・子・孫)のファミリー層に向けて,アパレルからコス

メ,雑貨に至るまでライフスタイル全般のオリジナル&セレクトアイテ

ムをリーズナブル価格で取り揃える。」(甲6の4)などと紹介されて

いる。

オ 一方,引用商標の商標権者であるライフコーポレーションは,フリー

百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」等によれば,昭和

36年11月にスーパーマーケット1号店を開設開業し,資本金100





億400万円,従業員約1万9000人,店舗数200以上のスーパー

マーケットチェーンであり,食品を中心とするものの衣料部門を設けて

衣料品,服飾等も取り扱っている(甲11の1〜5)。
D 本願商標の指定商品と引用商標の指定商品との類否

本願商標の指定商品は,第25類「ガーター,靴下止め,ズボンつり,

バンド,ベルト,水上スポーツ用特殊衣服,ウインドサーフィン用シュー

ズ」であり,引用商標1の指定商品は,第25類「ガーター,靴下止め,

ズボンつり,バンド,ベルト」を含み,引用商標2の指定商品は,第25

類「運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を含むから,本願商標の指定商品

引用商標の指定商標と同一のものであると認められる。
E 本願商標と引用商標との類否判断

本願商標は,前記のとおり,その外観は,上段部分である「B:MING」

の欧文字等と下段部分である「LIFE STORE」の欧文字からなって

いるところ,引用商標は一行で「ライフストア」の片仮名からなるものであ

るから,両商標の外観は異なるといえる。

次に,本願商標は,上段部分である「B:MING」と下段部分である

「LIFE STORE」を分離して観察することが可能であるから,その

称呼について,「ビーミングライフストア」のほか,「ライフストア」との

称呼も生じ得るもので,その限度で引用商標と一致し,観念についてみても,

「生活の店」程度の観念が生じ得るという限度で引用商標と一致する。また,

外観についても,上記のとおり全体としては異なるものの,前記Aアのとお

り,上段部分である「B:MING」は大きく表示されており見る者の注意

を相当程度引く一方で,下段部分である「LIFE STORE」も十分認

識できる大きさで,目立つ色,態様で表示されており,「LIFE STO

RE」の方が著しく識別力が劣るとまではいえない。そして,前記Cウ及び





エで認定した事実からすると,本願商標及び引用商標の指定商品の需要者は,

いずれも一般消費者であると認められるところ,一般消費者は必ずしも商

標やブランドについて詳細な知識を持つ者ばかりではなく,一般消費者の

通常有する注意力に照らすと,商品の購入に際して,ブランド名等を常に

注意深く確認するとは限らないと認められる。

以上からすると,本願商標と引用商標とは,全体としての外観は異なる

ものの,同一の称呼観念が生じ得るも のである。そして,本願商標の

「LIFE STORE」の文字部分は,引用商標と,英語表記か片仮名

表記かの違いがあるにすぎず,同部分も独立して見る者の記憶に残るもの

であって,簡易迅速を尊ぶ商取引の実際にあっては,本願商標と引用商標

とが同一の商品に付された場合には,取引者,需要者である一般消費者に

とって,商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるというべきで

ある。

したがって,指定商品が同一である本願商標と引用商標とは,類似する

というべきである。

3 原告の主張について
A 原告は,原告とライフコーポレーションは,取引形態,取引商品及び需要

者層が全く異なる上,原告及び取引関係者は,「B:MING」の文字部分

と「LIFE STORE」の文字部分とを分離して,「LIFE STO

RE」「ライフストア」と表記して取引の具に供している事実は全くなく,

原告及びライフコーポレーションの取引の相手方が,商品の出所について誤

認混同をきたすおそれは全くない旨主張する。

前記認定事実のとおり,原告は被服関係を中心とするセレクトショップで

あって,原告及び新聞,雑誌,WEBメディアの記者等が,「B:MING」

の文字部分と「LIFE STORE」の文字部分を分離しないで表記して





いることが認められる。

しかしながら,前記Eのとおり,原告とライフコーポレーションの需要者

層はいずれも一般消費者であり,取扱商品についても衣料品を扱っていると

いう点で同一であり,全く異なるということはできないのであって,原告及

び新聞,WEBメディアの記者等が現時点において「B:MING」の文字

部分と「LIFE STORE」の文字部分を分離しないで表記しているか

らといって,直ちに本願商標及び引用商標の需要者である一般消費者が,商

品の出所について誤認混同するおそれがないということはできない。

なお,原告は,原告が本願商標を使用していても,原告の取引関係者等か

ら原告とライフコーポレーションの関係性に関する問合せ電話等は一切無い

旨主張するが,商品の需要者が商品の出所を誤認混同してもそれが直ちに問

合せを行うことに結びつくとはいえないから,仮にそのような問合せがない

としても,そのことから直ちに商品の出所について誤認混同するおそれがな

いということはできない。

したがって,原告の主張には理由がない。
B また,原告は,わが国において「ライフストア」の文字は特に小売や卸売

りに係る店舗名や屋号に広く使用され,業界の一般名称・普通名称を表すも

のと認識されていることから,「ライフストア」という語はすでに自他商品

識別能力を喪失している旨主張する。

証拠(甲8の3〜7,8の10〜13)によれば,「ライフストア」との

名称を事業者名又は店舗名等の一部若しくは全部に使用している事業者が全

国に少なくとも約7名存在することが認められる。

しかしながら,上記の事業者のうち,衣料品を取り扱っている事業者は2

名にすぎない上,証拠(甲7の1〜6,8の1・2・8・9)によれば,上

記を除く,多くのウェブサイトでは「ライフストア」という語だけで特有の





意味を持たせているわけではなく,「カーライフストア」(甲7の1),

「ファッションライフストア」(甲7の2〜4),「ナチュラルライフスト

ア」(甲7の5)「アウトドアライフストア」(甲7の6),「プライベー

トライフストア」(甲8の1),「イーライフストア」(甲8の2),「ニ

ューフードライフストアふじしろ前」(甲8の8),「ビューティーライフ

ストア」(甲8の9)など,「ライフストア」の前に何らかの単語を付けて

それぞれ意味を持たせていると認められるから,これらの事実を勘案すると,

「ライフストア」という語自体が一般名称,普通名称として広く使用され認

識されていると認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。

したがって,原告の主張には理由がない。

4 結論

以上からすれば,本願商標と引用商標は類似し,かつ,その指定商品は同一

のものであるから,本願商標は,商標法4条1項11号に該当すると認めるの

が相当である。

よって,本件審決は相当であって,原告の請求は理由がないから,これを棄

却することとし,主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第4部



裁判長裁判官 富 田 善 範




裁判官 大 鷹 一 郎




裁判官 平 田 晃 史





(別紙)

本願商標目録





(別紙)

引用商標目録



1 引用商標1

出願日:昭和57年3月29日

設定登録日:昭和59年6月21日

商標登録番号:第1694056号

商標の構成:




指定商品

登録時:第14類「バンド類,頭飾品,ボタン類,宝玉およびその模造品」

書換登録時(平成17年8月17日):第14類「カフスボタン,宝玉及び

その模造品」,第25類「ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」

及び第26類「腕止め,頭飾品,ボタン類」

更新登録:平成16年5月18日



2 引用商標2

出願日:昭和57年3月29日

設定登録日:昭和60年2月27日

商標登録番号:第1749796号





商標の構成:




指定商品

登録時:第24類「運動具」

書換登録時(平成18年2月22日):第9類「ウエイトベルト,ウエット

スーツ,浮袋,運動用保護ヘルメット,エアタンク,水泳用浮き板,レギュレ

ーター」,第22類「ザイル,登山用又はキャンプ用のテント」,第25類

「運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。),乗馬靴」,第28

類「運動用具」

更新登録:平成17年2月22日