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事件 平成 26年 (行ケ) 10092号 審決取消請求事件
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裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2014/09/11
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
判例全文
判例全文
平成26年9月11日判決言渡

平成26年(行ケ)第10092号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 平成26年8月5日

判 決



原 告 X

訴訟代理人弁理士 鮫 島 信 重


被 告 特 許 庁 長 官



指 定 代 理 人 大 森 健 司

同 小 林 由 美 子

同 堀 内 仁 子

主 文

1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

特許庁が不服2012−18712号事件について平成26年2月25日にした

審決を取り消す。

第2 前提事実

1 特許庁における手続の経緯(審決謄本送達の日を除いて争いがない。)

原告は,平成23年12月16日に,「東京維新の会」の文字を標準文字で表し

てなる標章について,第41類「技芸,スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画

・運営又は開催,教育研修のための施設の提供,電子出版物の提供,書籍の製作,
放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広

1
告用のものを除く。)」を指定役務として,商標登録出願(以下「本願」という。)

をしたものの,平成24年8月16日に拒絶査定を受けたため,平成24年9月2

5日に拒絶に対する不服の審判を請求した。

特許庁は,上記請求を不服2012−18712号事件として審理をした上,平

成26年2月25日,「本件審判の請求は成り立たない。」との審決をし,その謄

本を,同年3月15日,原告に送達した(送達日については乙1により認められる。 。


2 審決の理由

審決の理由は別紙審決書写しのとおりである。その要旨は,東京維新の会は,平
成24年9月27日に設立された地域政党であって,少なくとも東京都及びその周

辺地域に広く認識されているといえるものであり,同政党を表示する標章である「東

京維新の会」の文字についても,少なくとも東京都及びその周辺地域に広く認識さ

れているから,標章「東京維新の会」は,公益に関する団体であって営利を目的と

しないものを表示する標章であって著名なものであり,これと同一又は類似の商標

である本願商標は,商標法4条1項6号に該当し,登録することができない,商標

4条1項6号の判断の基準時は,拒絶査定に対する審判が請求されたときには,
査定の事情にかかわらず,審決を基準時として判断されるというものである。

第3 当事者の主張

1 取消事由に係る原告の主張

(1) 商標法4条1項6号の登録阻却事由の有無の判断時期は査定時であること

商標法4条1項6号の登録阻却事由の有無の判断基準時が査定時ではなく審決時

であるとすると,査定時には存在しなかった標章が審決時には存在することになり,

本願商標が後発標章のために登録を受けられなくなってしまい,出願人の利益が不

当に害される。また,後願者は,先願商標を調査した後にフリーライドして商標登

録が可能となる。これらの結果は,商標制度の信頼を根幹から覆し,商標制度を不

安定なものとするのであって許されない。
商標法4条1項6号の判断基準時は査定時であるべきである。

2
(2) 査定時における東京維新の会の不存在

政治団体である東京維新の会は,平成24年9月10日,東京都議会議員(A,

B,C)により結成され(甲8),同月27日,東京都に政治団体としての届出が

なされた(甲9)。

本件商標登録出願は,平成23年12月16日になされ,平成24年8月16日

起案,同月24日発送の拒絶査定により拒絶された。

上記経過から明らかなとおり,拒絶査定当時,東京維新の会なる政治団体は存在

しなかったのである。上記(1)のとおり,商標法4条1項6号の判断基準時は査定時
であるから,存在しない団体についてこれを公益に関する団体であって,営利を目

的とせず,著名であるとした審決の判断は誤りである。

(3) 審決時における東京維新の会の不存在

登録の判断時期は査定時であり,これを審決時とする審決の判断は誤っているが,

これを審決時としても審決の判断は誤りである。

政治団体である東京維新の会は,平成25年12月2日に解散届を提出しており

(甲10),審決時(平成26年2月25日)には存在していなかった。
したがって,既に解散して存在しない団体についてこれを公益に関する団体であ

って,営利を目的とせず,著名であるとした審決の判断は誤りである。

(4) 政治団体である東京維新の会の標章の著名性の欠如

政治団体である東京維新の会は,政党名を届け出た平成24年9月27日から,

解散届を提出した日である平成25年12月2日まで,実質的には1年3か月しか

存在していなかった。政治団体である東京維新の会は,政党である日本維新の会の

陰に隠れており,東京維新の会の標章の著名性を認めることはできない。

(5) 小括

以上によれば,本願商標には,商標法4条1項6号の登録拒絶事由は存在しない

から,審決は取り消されるべきである。
2 被告の反論

3
(1) 商標法4条1項6号の登録拒絶事由の有無の判断の基準時

商標法4条1項各号の登録阻却要件に該当するか否かの判断は,行政処分一般の

本来的性格にかんがみ,一般の行政処分と同じく,特別の規定のない限り,行政処

分時,すなわち,査定時又は審決時を基準として判断されるべきである。

そこで,上記特別の規定の有無について検討するに,商標法上,拒絶査定に対す

る審判の判断基準時についての特別の規定はない。また,商標法4条1項6号の判

断基準時についての特別の規定もない。

商標法4条3項は,同法4条1項各号に係る判断時期の例外と位置付けられるが,
商標法4条1項6号を対象としていない。加えて,商標法4条1項6号は,その趣

旨からすれば,公益的不登録事由といえ,同号該当性については公益的見地から判

断すべきであるから,需要者利益の保護という商標法の目的を踏まえてみても,出

願時に同号に該当しない商標であっても,審決時又は査定時に同号に該当する商標

は,その登録を認めるべきではない。

したがって,商標法4条1項6号に係る拒絶査定に対する審判の判断の基準時は

審決時である。
(2) 査定時における東京維新の会の不存在について

上記(1)のとおり,審判における商標法4条1項6号該当性の判断の基準時が審決

時である以上,拒絶査定当時に東京維新の会が存在していなかったとしても,それ

が審決の取消事由となるものではない。

(3) 審決時における東京維新の会の不存在について

東京都公報による東京維新の会の解散についての公示は,平成26年3月17日

になされたものである。一般には,公示の時点から政治団体の解散を知ることが可

能になることから,審決時に東京維新の会の解散が公示されていない以上,世人や

需要者は,政治資金規正法により規制される政治団体東京維新の会が存在している

と理解していたというべきであり,審決が東京維新の会が存続しているものとして
判断したことに誤りはない。

4
なお,東京維新の会が解散の届出をし,その実態が失われたとしても,政治団体

の活動の公益性,公共性を考慮すれば,著名な東京維新の会に化体された権威,信

用は,その後も残存していたというべきであり,結論を左右するものではない。

(4) 政治団体である東京維新の会の標章の著名性について

東京維新の会に関し,新聞による報道等によれば,以下の事実が認められる。

平成24年9月10日,Aら東京都議会議員(当時)3人が,東京都議会の新会

派として東京維新の会を設立し,議員改革や脱原発依存などを目指すとした「東京

都版維新八策」を公表した(乙7)。
同月27日,同会派のA都議らは,地域政党東京維新の会を立ち上げ,東京都選

挙管理委員会に届け出るとともに,大阪維新の会とも連携し,日本維新の会の傘下

に入った(乙8,9)。そして,東京維新の会の東京都選挙管理委員会への届出が,

同年10月31日発行の東京都公報において公示された(甲9)。

東京維新の会は,同年11月に,新代表をD元東京都杉並区長(現,日本維新の

会所属の衆議院議員,乙4)としたところ,日本維新の会と協定を締結して同党と

協力関係を築くとともに(乙5,6),平成25年1月21日には,D代表が日本
維新の会の東京都支部長となり,東京維新の会所属の都議会議員2人が都議選にお

ける日本維新の会の候補として公認されることとなった(乙10,11)。

また,同年3月28日には,東京維新の会所属の都議会議員数は,民主党を離党

したE都議が東京維新の会に入会したことにより,再び3人となった(乙12)。



上記の事実によれば,東京維新の会は,東京都選挙管理委員会に届出がされた政

治団体であることが東京都公報により公示されていること,そして,平成24年の

都議会の会派としての設立から,「東京都版維新八策」を公表するとともに,大阪

維新の会とも連携し,日本維新の会と協力関係にある地域政党であるなどとして,

その活動が新聞に度々取り上げられていることが認められる。
このような報道等に接する者は,東京維新の会が,我が国の主要な政党である日

5
本維新の会と協力関係にある地域政党として強く記憶に留めるというべきである。

このように,東京維新の会は,その設立以来,東京都における地域政党として,

継続して政治活動を行い,その活動が新聞にも度々取り上げられ,さらに,我が国

の主要な政党の一つである日本維新の会と協力関係にある政治団体として記憶され

ることからすると,東京維新の会は,需要者をして,審決時には,少なくとも東京

都,またその周辺地域において広く認識されているものというべきである。

そして,商標法4条1項6号の趣旨は,同号に掲げる団体の公共性に鑑み,その

権威,信用を尊重するとともに,出所の混同を防いで需要者の利益を保護するもの
であると解されるところ,同号に掲げる「地方公共団体」は,市区町村を含むもの

であり,これらの地方公共団体の事業の範囲は,特定の地域に限定されることを考

慮すれば,同号にいう「著名」とは,必ずしも全国的に知られていることまでは要

しないと解される。

そうすると,「東京維新の会」の標章は,政治団体である東京維新の会を表示す

る標章として,少なくとも東京都,またその周辺地域に広く認識されている,商標

4条1項6号に規定する「著名なもの」に該当する。
(5) 東京維新の会が公益に関する団体であって営利を目的としないものである

こと

東京維新の会は,前記(4)のとおり,平成24年9月27日に設立された政治団体

であり,政治資金規正法6条1項の規定により,東京都選挙管理委員会に届出され

た団体である(甲9)。

したがって,東京維新の会は,政治資金規正法で規制される政治団体であって,

地域の公共の利益である教育,福祉等のために活動する団体であるから,商標法4

条1項6号に規定する「公益に関する団体であって営利を目的としないもの」とい

える。

(6) まとめ
本願商標は,著名な標章「東京維新の会」と同一の構成文字からなるものである。

6
したがって,本願商標は,公益に関する団体であって営利を目的としないものを

表示する標章であって著名なものと同一又は類似の商標というべきであり,商標法

4条1項6号に該当するものであるから,審決の認定,判断に誤りはない。

第4 当裁判所の判断

当裁判所は,審決の結論に誤りはなく,審決を取り消すべき理由はないものと判

断する。その理由は,以下のとおりである。

1 本件における商標法4条1項6号の登録阻却事由の判断の基準時について

商標法4条1項には,「次に掲げる商標については,前条の規定にかかわらず,
商標登録を受けることができない。」と定められ,登録を受けることができない事

由として1号から19号までが定められている。そして,同条3項には,「第1項

第8号,第10号,第15号,第17号又は第19号に該当する商標であっても,

商標登録出願の時に当該各号に該当しないものについては,これらの規定は,適用

しない。」と定められている。

これらの規定によれば,商標法4条1項6号については,同条3項により,出願

時においても登録阻却事由が存在することが求められていないから,通常の場合は,
査定時において登録阻却事由の存在が認められれば同号に該当するものと解され

る。

しかし,拒絶査定に対する審判が請求された場合には,審査においてした手続は,

拒絶査定不服審判においてもその効力を有するものとされ(商標法56条,特許法

158条),審査と拒絶査定不服審判とは続審の関係にある。このように審判が続

審の手続であることから,審査段階で提出されていなかった新たな資料も補充して,

審査官の判断の当否が決定されることになる。

その上,続審であることからすれば,審判において,査定時における処分の理由

とは異なる理由により判断することも,拒絶理由通知等の手続的要件を履行する限

りにおいて,可能であるというべきである。
これを,本件についてみると,特許庁における手続の経緯は,次のとおりである。

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本願に対して,審査官は起案日を平成24年5月10日,発送日を同月18日と

する拒絶理由通知(甲2)を発した。その拒絶の理由は,東京維新の会を本願の指

定役務(第41類技芸・スポーツ又は知識の教授等)に使用した場合には,一私人

である出願人が政治団体と何らかの関係があるが如く需要者が誤認をするおそれが

あり,かつ,商取引の秩序を害するおそれがあるから,本願商標は,商標法4条

項7号に該当するというものであった。同年8月16日起案,同月24日発送の拒

絶査定における理由も同様であった(甲4)。

そこで,原告が不服審判を申し立てたところ,審判体は,平成25年4月9日を
起案日,同月12日を発送日とする拒絶理由通知を発し(商標法55条の2,15

条の2。甲6),拒絶の理由は,本願商標は商標法4条1項6号に該当するという

ものであった。これに対し,原告は,同年5月21日,意見書を提出したが(甲7),

本件審決に至った。

この手続の経緯からみれば,審査官は商標法4条1項7号の拒絶理由通知を発し

ていたのに対し,審判体は同条1項6号という拒絶査定の理由とは異なる新たな拒

絶の理由を発見し,新たな拒絶理由通知を発した上で,異なる拒絶の理由に基づい
て審決をしたものである。

そうすると,審査官においては商標法4条1項6号の拒絶理由の存否については

全く判断をしておらず,審決において初めて同号の拒絶理由の存否について判断し

たものであるから,このような場合,審査官の拒絶査定において全く判断の対象と

ならなかった商標法4条1項6号の判断について,査定時を判断の基準時とする合

理性はない。むしろ,同号について初めて特許庁としての判断が示された審判時を

もって,判断の基準時とするのが合理的である。

そうすると,審査と拒絶査定不服審判とは続審の関係にあり,本件のように審判

において新たな拒絶理由通知が発せられ,審査とは異なる拒絶理由について判断さ

れることもあることを考慮すると,拒絶査定不服審判の審決における商標法4条
項6号の判断の基準時は審決時となるというべきである。本件において審決時を基

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準時とすべきであるとした審決の判断に誤りはない。

2 商標法4条1項6号該当性について

(1) 事実関係

証拠(甲9,乙4〜12)によれば,以下の事実が認められる。

Aら当時の東京都議会議員3名は,平成24年9月10日,東京都議会の新会派

として東京維新の会を設立し,議員改革や脱原発依存などを目指すとした「東京都

版維新八策」を公表した。設立会見には,大阪市特別顧問で,当時日本維新の会の

次期衆議院議員選挙の候補と目されていたD前杉並区長も出席し,大阪維新の会と
の連携の深さもにじませているものと報道された。

同会派のA都議らは,同月27日,地域政党東京維新の会を立ち上げ,東京都選

挙管理委員会に届け出るとともに,大阪維新の会とも連携し,日本維新の会の傘下

に入って,その東京支部として次期衆議院議員選挙に向けた政治活動をすると報じ

られた。

そして,東京維新の会の東京都選挙管理委員会へ政治団体としての届出が,同年

10月31日発行の東京都公報において公示された。
東京維新の会は,同年11月に,D前杉並区長(同年12月,日本維新の会所属

として第46回衆議院議員選挙に当選)が代表に就任し,日本維新の会と選挙協力

を進める協定書を締結し,同党の友好団体として協力関係を築いた。平成25年1

月21日には,D代表が日本維新の会の東京都支部長となり,東京維新の会所属の

都議会議員2名が同年夏の東京都議会議員選挙における日本維新の会の候補として

公認されることとなった。

また,同年3月28日には,東京維新の会所属の都議会議員数は,民主党を離党

したE都議が東京維新の会に入会したことにより3名となった。

以上のような東京維新の会の活動状況は,朝日新聞,読売新聞,産経新聞といっ

た全国紙において,たびたび報じられていた。
しかし,同年12月2日,東京維新の会は解散し,平成26年3月17日,東京

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都公報にその旨が掲載された。

(2) 判断

以上の事実関係に基づいて,商標法4条1項6号該当性について判断する。

前記1で判断したとおり,商標法4条1項6号の判断基準時は,本件においては

審決時というべきである。

日本維新の会が多数の国会議員を擁する全国政党であることは公知の事実である

が,東京維新の会は,日本維新の会の友好団体として協力関係を築いていた政党で

あると認められる。そして,東京維新の会は,地域政党であって,東京都議会議員
を擁し,代表者であるDは日本維新の会の東京都支部長を務めており,政治団体と

して東京都選挙管理委員会へ届け出ており,その活動状況は新聞各紙においてたび

たび報じられていたのであるから,東京維新の会は,少なくとも東京都においては

著名性を有する団体であったと認められる。

審決時である平成26年2月25日の時点において,東京維新の会は解散してい

たものと認められるが,その旨が東京都公報に掲載されたのは,審決後の平成26

年3月17日のことであり,また,上記のような東京維新の会と日本維新の会との
関係を考えるならば,「東京維新の会」の標章は,東京維新の会の解散後において

も,当面は,その出所の混同を防止するために,同一又は類似の商標の登録を妨げ

るべき事由となるべきものである。

以上によれば,「東京維新の会」の標章は,公益に関する団体であって営利を目

的としないものであり,かつ著名性を有する政治団体である東京維新の会を表示す

るものと認められるから,本願商標が商標法4条1項6号に該当するものとした審

決の判断に誤りはないものというべきである。

3 結論

以上のとおり,原告の請求には理由がないから,これを棄却する。

知的財産高等裁判所第1部



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裁判長裁判官 設 樂 一




裁判官 大 須 賀 滋




裁判官 大 寄 麻 代




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