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事件 平成 26年 (行ケ) 10094号 審決取消請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2014/10/29
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
判例全文
判例全文
平成26年10月29日判決言渡

平成26年(行ケ)第10094号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 平成26年9月25日

判 決




原 告 モンスター エナジー カンパニー



訴訟代理人弁理士 柳 田 征 史

佐 久 間 剛

中 熊 眞 由 美



被 告 特 許 庁 長 官

指 定 代 理 人 浦 辺 淑 絵

酒 井 福 造

堀 内 仁 子

山 田 和 彦

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を

30日と定める。



事 実 及び 理 由

第1 原告の求めた裁判

特許庁が不服2013−10282号事件について平成25年12月2日にした





審決を取り消す。



第2 事案の概要

本件は,商標登録出願に対する拒絶査定不服審判請求を不成立とした審決の取消

訴訟である。争点は,本願商標と引用商標との類否(商標法4条1項11号)であ

る。

1 特許庁における手続の経緯

原告は,平成24年5月31日,下記本願商標につき,平成23年12月1日に

アメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づきパリ条約4条による優先権を主

張して,商標登録出願(商願2012−43563号)をしたが(甲13),平成

25年2月28日付けで拒絶査定を受けたので(甲16),同年6月4日,これに

対する不服の審判請求をした(不服2013−10282号,甲17)。

特許庁は,同年12月2日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以

下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月17日に原告に送達された。



【本願商標】(甲13)
指定商品

第30類

缶・びん・ペットボトル・紙容器入りのコーヒー・

アイスコーヒー・コーヒー飲料,缶・びん・ペットボ

トル・紙容器入りの香りづけしたコーヒー・アイスコ

ーヒー・コーヒー飲料,香りづけしたコーヒー・アイ

スコーヒー・コーヒー飲料,コーヒー,アイスコーヒ

ー,コーヒー飲料





2 本件審決の理由の要点

【引用商標】(甲12の1,2)




@登録番号 商標登録第5114122号

A登録出願日 平成19年7月13日

B設定登録日 平成20年2月29日

C指定商品

第30類

コーヒー,コーヒー豆

D商標権者 特定非営利活動法人ピースウィンズジャパン(以下「引

用商標権者」という。)

? 本願商標について

ア 本願商標は,その構成中,上段に大きくやや図案化して表された「PE

ACE」の欧文字(以下「本願上段文字」ともいう。)及び下段に大きく表された

「COFFEE」の欧文字(以下「本願下段文字」ともいう。)の両文字部分(以

下「本願上下段文字部分」ともいう。)が,取引者,需要者に対し,商品の出所識

別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められることから,本願上下段文

字部分を分離,抽出して取引に資されるといい得る。

また,本願商標は,その構成中の本願上段文字部分を分離,抽出して取引に資さ

れることも十分にあり得る。

イ したがって,本願商標は,その構成中,@本願上段文字及び本願下段文

字の両文字(以下「本願上下段文字」ともいう。)に相応して,「ピースコーヒー」

称呼及び「平和のコーヒー」の観念が生ずるものであり,また,A本願上段文字

に相応して,「ピース」の称呼及び「平和」の観念をも生ずるものといえる。

(2) 引用商標について





引用商標は,その構成文字全体に相応して,「ピースコーヒー」の称呼及び「平

和のコーヒー」の観念が生ずるものであり,また,その構成中の「ピース」及び「P

EACE」の文字に相応して,「ピース」の称呼及び「平和」の観念をも生ずるも

のである。

(3) 本願商標と引用商標との類否について

本願商標と引用商標とは,全体の外観において差異を有するものの,「PEAC

E」及び「COFFEE」の両文字部分の比較においては,外観上,その文字のつ

づりを共通にし,「ピースコーヒー」の称呼及び「平和のコーヒー」の観念を共通

にする。また,「PEACE」の文字部分の比較においても,外観上,その文字の

つづりを共通にし,「ピース」の称呼及び「平和」の観念を共通にする。

そこで,両商標について,これらの外観称呼観念によって取引者,需要者に

与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察してみれば,両商標は,相紛れ

るおそれのある類似の商標というのが相当である。

そして,本願の指定商品(以下「本願指定商品」という。)は,引用商標の指定

商品と同一又は類似するものである。

したがって,本願商標は,商標法4条1項11号に該当する。



第3 原告主張の審決取消事由

1 本願商標について

? 以下のとおり,本件審決が,本願上下段文字部分又は本願上段文字部分に

つき,分離,抽出して取引に資されることもある旨判断したのは,誤りである。

外観について

(ア) 本件審決は,外観上,本願上下段文字部分が看者に強い印象を与える

部分である旨認定する。

(イ) しかしながら,@「PEACE ICED COFFEE」の文字部分

(以下「本願文字部分」ともいう。)の外形と灰色地の図形部分(以下「図形部分」





という。)の外形とは密接しており,全体が一体化した薄い厚みの立体形状として

看取されること,A本願文字部分及び図形部分には,黒,白及び灰色の色彩で地色

と影になる部分とを塗り分けて立体的に表現するいわゆるシャドウ体の技法が用い

られており,構成全体にモノトーンの濃淡による統一感,一体感が認められること,

B本願商標の構成全体の面積の多くを占める本願上下段文字部分の地色及び灰色地

の図形部分の影になる部分に同色の黒を用いており,図形部分は単なる「背景」で

はなく,文字全体を融合した図形として見られることなどから,本願商標は,一部

の文字部分や図形部分を抽出して把握することが困難な程度まで,後記ピースマー

クを含む本願文字部分,図形部分及び黒,白,灰色の色彩を融合させた一体的なロ

ゴマークとして看取されるものといえる。

特に,ロゴマークは,瞬時に看者の視覚をひきつけ,一瞬にして全体を理解させ

るものであり,この点も併せ考えれば,本願商標は,構成全体が一体不可分の商品

出所識別標識として認識,理解されるものであり,本願上下段文字部分が,強く支

配的な印象を与えるものということはできない。

イ 各構成部分の出所識別力について

(ア) 本願上段文字部分について

本件審決は,本願上下段文字部分が,取引者,需要者に対し,商品の出所識別標

識として強く支配的な印象を与える旨認定しているが,「PEACE」の文字は,

「平和」を意味する外来語「ピース」として一般に親しまれているものであって,

商品の出所識別標識として格別に強い印象を与えるものではない。

(イ) 「ICED」の文字部分について

a 本件審決は,本願商標の構成中,白抜きの「ICED」の文字(以

下「白抜き文字」ともいう。)部分につき,外観上,さほど強く印象付けられると

はいい難く,かつ,「ICED」の文字は,「氷で冷やした」という意味を有する

英語であり,本願指定商品の品質を表示するものであるから,商品の出所識別標識

としての機能を有しない旨認定する。





しかしながら,白抜き文字部分は,地色が白く,灰色地の図形部分の中央に配置

されており,看者の視覚を瞬時にとらえる顕著な存在といえる。また,我が国にお

いて,「凍らせた/氷で冷やした/冷蔵したコーヒー」は,「アイスコーヒー(i

ce coffee)」と呼ばれて一般に親しまれているが,これを「アイスト・

コーヒー(iced coffee)」と呼ぶことはないから,上記文字部分は,

必ずしも本願指定商品の品質表示として直感されるものとはいえない。

以上によれば,白抜き文字部分は,商品出所識別標識として,取引者,需要者に

印象付ける役割を十分に果たしている。

b 仮に,白抜き文字部分が本願指定商品の品質表示として認識される

場合があるとしても,本願指定商品が含まれる飲料及び食品の分野においては,当

該商品の普通名称や品質表示等に該当し,一般には出所識別力が弱いと考えられる

文字部分についても,同文字部分を含めた構成文字全体が商標(製品名)として機

能し,認識されている例が多く見受けられ,殊更に一部の文字部分を捨象したもの

が商品出所識別標識として認識される場面は,想定し難い。この理は,本願商標に

ついても当てはまるといえる。

? 本願商標が「ピースコーヒー」又は「ピース」の称呼を生じるという本件

審決の認定は,誤りである。

すなわち,前記のとおり,本願商標は,構成全体が一体不可分の出所識別標識と

して認識されるものであるから,本願文字部分全体,すなわち,「PEACE I

CED COFFEE」から,「ピースアイストコーヒー」の称呼が生じる。

? 本願商標が「平和のコーヒー」又は「平和」の観念を生じるという本件審

決の認定は,誤りである。

「PEACE ICED COFFEE」は,既成語ではないが,英語で「PEA

CE」が「平和」を,「ICED」が「凍らせた,氷で冷やした,冷蔵した」等を,

「COFFEE」が「コーヒー」を,それぞれ意味する語に通じるものであること

から,本願商標については,上記各語の意味に基づき,「平和の凍らせたコーヒー」





又は「平和の氷で冷やしたコーヒー」といった観念が想起される。また,後記ピー

スマークから,「ピースマークによって表現される平和」の観念も生じ得る。



2 本願商標と引用商標との類否について

以下のとおり,本件審決が,本願商標と引用商標とは,類似の商標である旨判断

したことは,誤りである。

? 外観について

ア 本願商標の外観は,以下のとおり,顕著な特徴を有するものである。

(ア) 「PEACE」の冒頭の「P」の文字のうち,字形の丸い部分は,同

色の太線で描いた鳥の足形のような線状の模様の図形を有している。この図形は,

「ピースマーク」又は「ピースシンボル」と呼ばれるシンボルマークに対応する図

柄(以下「ピースマーク」という。)である。

ピースマークは,多くの辞書等に「平和・反戦を表す印」などとして紹介される

など,平和運動や反戦運動の象徴,シンボルとして一般に浸透しており,広く認識

されている。このことから,上記のとおり「PEACE」の文字に取り込まれたピ

ースマークの存在は,本願商標の外観に独自性,特異性を与え,看者の視線を最も

強くひきつけて印象付ける重要な構成要素といえる。

(イ) しかも,上記ピースマークは,独特の書体のデザイン文字及びフォン

トサイズの調整によって,視覚的に強調されている。

すなわち,「PEACE ICED COFFEE」の文字部分には,手書きでデ

ザインされた独特の書体が用いられており,ピースマークを組み込んだ冒頭の「P」

の文字は,円形の丸みが印象的であるのに対し,その余の文字はすべて,直線的で

角張った形状を特徴としている。また,上記「P」の文字は,他の文字に比べて圧

倒的に大きく,本願商標の構成全体の面積の約4分の1を占めているのに対し,同

文字に続く「E」及び「A」の文字は,縦方向に3分の1程度圧縮され,上記「P」

の文字のうち円形部分の弧の下にまとまって収まっている。また,「COFFEE」





の冒頭の「C」の文字は,上記「P」の文字の大きさとバランスをとるために,や

や大きめのフォントで表されている。

「PEACE」の文字は,誰もが一見して容易に「PEACE」と認識できると

は必ずしもいえないほど高度にデフォルメされたレタリング方法で表現されてお

り,看者の中には,ピースマークを組み込んだ冒頭の「P」を文字と解することが

できず,その下から始まる「EACE」の文字を見て,同文字を容易に発音できな

い意味不明なものとして受け止め,本願商標の全体的なデザインの外観のみを漠然

ととらえて商標として認識する者も少なくないといえる。その場合,本願商標から

は,称呼観念も生じないので,外観のみが看者の記憶にとどめられることになる。

(ウ) 色彩は,取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等に大きな影響を

及ぼすものであるから,前述したとおり本願商標を塗り分けている黒,白及び灰色

の色彩が及ぼす影響は,看過できない大きなものといえる。

イ 他方,引用商標は,通常の活字体の片仮名文字で「ピースコーヒー」と

横書きしたものを上段に,通常の活字体の英文字で「PEACE COFFEE」と

横書きしたものを下段に,それぞれの語頭及び語尾をそろえて平行に配置したもの

である。

ウ 前述したとおり,本願商標の外観が顕著な特徴を有するのに対し,引用

商標は通常の書体の片仮名文字及び英文字のみで構成されており,両商標の外観

ついては,取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等において大きな差異がある

ことは明らかといえる。

そして,@人間が五感から得る情報の8割以上が視覚によるものといわれている

こと,A本願指定商品の分野においては,商標をパッケージ正面に大きく目立つよ

うに表示することが一般的に行われており,取引者,需要者は,商標の外観に着目

して商品を選択しているものと容易に推認できることから,外観は,商品出所識別

標識として重要な役割を担っているといえる。この点に鑑みれば,両商標の外観

ついて上記のとおり大きな差異があることは,類否判断において重視すべきである。





? 称呼について

ア 本願商標は,前記のとおり,「ピースアイストコーヒー」の称呼を生じ

る。

他方,引用商標は,「ピースコーヒー」及び「PEACE COFFEE」の文字

全体を一連一体に発音した「ピースコーヒー」の称呼を生じる。

イ 「ピースアイストコーヒー」と「ピースコーヒー」とは,語頭の「ピー

ス」の音及び語尾の「コーヒー」の音においては共通するが,長音「ー」を含む全

体の構成音数は,前者が11音であるのに対し,後者は7音であり,著しく異なる。

また,前者は,「ピース」の音と「コーヒー」の音との間に「アイスト」の4音を

含む点において,後者とは,語調,語感が明らかに異なり,聞き誤るおそれはない。

したがって,本願商標と引用商標とは,称呼において非類似というべきである。

? 観念について

ア 本願商標は,前記のとおり,「平和の凍らせたコーヒー」,「平和の氷

で冷やしたコーヒー」,「ピースマークによって表現される平和」の観念を生じる。

他方,引用商標は,構成文字「ピースコーヒー」,「PEACE COFFEE」

に基づいた観念を生じるところ,当該構成文字は既成語ではないが,前述した「P

EACE」及び「COFFEE」の各英語の意味に基づき,「平和のコーヒー」と

いう観念が想起される。

イ(ア) 本願商標から生じる観念のうち「平和の凍らせたコーヒー」,「平和

の氷で冷やしたコーヒー」と,引用商標から生じる「平和のコーヒー」という観念

とを比較すると,「平和」及び「コーヒー」は共通するが,本願商標の観念は,「凍

らせた」,「氷で冷やした」という観念を含む点において,引用商標から生じる観

念とは異なり,両者が相紛れるおそれはない。

(イ) 本願商標は,「ピースマークによって表現される平和」という観念

生じるところ,ピースマークから想起される平和の観念は,ピースマークの他に「平

和」の象徴,シンボルとして一般に広く認識されている「鳩」や「オリーブの枝」





から想起される平和の観念とは, 取引者や需要者に与える印象,記憶,連想等にお

いて異なる。

そして,本願商標は,「平和」を意味する「PEACE」の文字に,「平和」の

象徴であるピースマークを組み込み,「平和」のコンセプトを2つ掛け合わせて重

ねて表現したものであり,その掛詞的な趣向の面白さは,取引者,需要者に対し,

独創的でユニークな印象,記憶,連想等を与えるものである。

このことから,仮に,引用商標の「PEACE」の文字部分から「平和」の観念

が想起されることがあるとしても,本願商標の構成中の「PEACE」の文字に組

み込んだピースマークによって表現される平和の観念とは異質のものであり,両者

が誤認混同されるおそれはない。

ウ 以上によれば,本願商標と引用商標とは,観念においても,非類似のも

のといえる。

? 取引の実情について

以下の点に鑑みれば,本願商標と引用商標が各指定商品に使用されても,その出

所について誤認混同を生じるおそれはない。

ア 引用商標の使用態様

引用商標は,鳩の図柄を伴ったロゴマークの形でコーヒー製品のパッケージに表

示されており,引用商標の文字,鳩の図柄,背景の地色などにつき,緑,茶等のア

ースカラーを用い,互いのコントラストが強い配色が施されている。

このように鳩の図柄を伴って使用されている引用商標は,その配色等の使用態様

に加え,前述のとおり,本願商標におけるピースマークから想起される平和の観念

が「鳩」から想起される平和の観念とは異なるものであることから,本願商標とは

一見して明らかに異なる印象,記憶,連想等を与えるものといえる。

イ 取引上の競合の不存在

引用商標権者は,自然災害等の人為的要因によって生命や生活の危機にさらされ

た人々の支援を事業内容とする特定非営利活動法人であるところ,そのウェブサイ





トには,フェアトレード商品であるコーヒー及びコーヒー豆を取り扱っている旨が

掲載されており,そのコーヒーの主な販売場所は,同法人の通販,同法人の経営す

る店舗又は関連店舗である。

他方,本願商標を使用したコーヒー飲料はいまだ販売されていないが,原告が製

造,販売したエナジードリンクは,アサヒ飲料の通販,コンビニ等で広く販売され

ている。また,原告は,米国において,若年層を対象にした低カロリー飲料「PE

ACE TEA」を販売しており,本願商標使用に係るコーヒーについても,同様

の商品イメージのマーケティング戦略による市場展開を実施する可能性がある。

以上によれば,原告が取り扱うコーヒーと引用商標権者が取り扱うコーヒーとの

間には,商品コンセプトの相違が存在し,流通経路,販売場所,主たる需要者の範

囲も異なることが予想される。



第4 被告の反論

1 本願商標について

? 以下のとおり,本件審決が,本願上下段文字部分又は本願上段文字部分に

つき,分離,抽出して取引に資されることもある旨判断したことに誤りはない。

外観について

(ア) 本願商標中,本願上段文字は,大きくやや図案化して表された,「平

和」の意味を有する一般に親しまれた英語「PEACE」の黒色の欧文字であり,

本願下段文字は,本願上段文字とほぼ同様の大きさ及び態様をもって表された,
「コ

ーヒー」の意味を有する一般に親しまれた英語「COFFEE」の黒色の欧文字で

ある。

本願上段文字部分と本願下段文字部分との間には,小さく白抜きで表された,
「氷

で冷やした」の意味を有する英語「ICED」の白抜き文字が配置され,これらの

構成文字全体の外形に沿うように影付きの薄灰色の図形部分が表されている。

(イ) そして,図形部分は,構成文字全体を単に囲むようにデザインされて





いると認識されるにすぎない。

本願上下段文字部分は,高さにして白抜き文字の6倍程度の黒色のゴシック体風

の文字が白色の影付きで表されており,本願商標の大半を占めている。この大きさ

及び態様に鑑みれば,本願上下段文字部分は,本願商標の構成中,視覚上顕著に表

された部分として強く印象付けられるものである。

イ 各構成部分の出所識別力について

(ア) 白抜き文字部分について

本願指定商品を取り扱う業界において,「ICED」は,その商品が冷やしたも

のであることを表す用語として広く使用されていることから,白抜き文字部分は,

商品の品質を表すものとして直ちに理解される部分といえ,商品の出所識別標識と

しての機能を有するものではない。

(イ) 本願上段文字部分について

商品の出所識別標識としての機能は,その指定商品との関係において検討すべき

である。

そして,「PEACE」の文字は,一般に親しまれた平易な用語であったとして

も,本願指定商品との関係においては,品質表示等の関連性を見出せないものであ

るから,独創性を備えた用語とはいえないものの,自他商品の識別力が弱いという

ことはできない。

称呼について

本願商標を称呼する場合,本願上段文字は「ピース」 白抜き文字は
, 「アイスト」,

本願下段文字は「コーヒー」と,それぞれ自然に読まれるものであるところ,後記

のとおり構成文字全体から生じる「ピースアイストコーヒー」の称呼は,長音も含

めて11音であり,やや冗長なものといえる。

エ 小括

以上によれば,本願商標は,本願上下段文字部分と白抜き文字部分とを分離して

観察することが,取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているもの





ということはできない。

そして,本願商標の構成中,本願上段文字と本願下段文字は,同様の態様で視覚

上顕著に表されており,看者の注意をひき,強く支配的な印象を与える部分である

といえるから,取引者,需要者が,上記文字部分に着目して取引に資する場合も決

して少なくないものと判断すべきである。

オ 原告の主張に対し

(ア) マーケティング上の必要性から工夫されたロゴマークやその色彩等

が需要者に対して一定の印象を与えることはあるとしても,需要者は,その印象に

よって自他商品を識別するものではないから,商品の出所に係る誤認混同のおそれ

の有無の判断に当たり,マーケティングにおけるロゴマークの外観の重要性が,直

ちに結論に結びつくということはできない。

また,簡易迅速を尊ぶ商取引の場においては,一定のデザインが施されたマーク

であり,外観上まとまりよく表されているものであっても,常に一体不可分のもの

として理解されるとは限らず,顕著な特徴を有する部分をもって記憶される場合も

少なくないというべきである。

(イ)a 白抜き文字部分は,冷やした商品であることを認識させるものであ

り,本願指定商品の品質を強調するものにすぎない。

b 商標権者が,自身の広告においては当該商標の構成文字を略するこ

となく使用していても,簡易迅速を尊ぶ取引の実際の場面においては,一部の構成

文字を略して当該商標を使用することもあり得る。

?ア(ア) 本願商標は,その構成全体に相応して,「ピースアイストコーヒー」

称呼及び「平和の冷やしたコーヒー」の観念を生じるものである。

また,前記のとおり,取引者,需要者が本願上下段文字部分に着目して取引に資

する場合も決して少なくないといえるから,本願上下段文字に相応して,「ピース

コーヒー」の称呼及び「平和のコーヒー」の観念を生ずる。

(イ) さらに,本願下段文字は,本願指定商品の分野においては商品の普通





名称を表したものとして理解され,上記文字のみから商品の出所識別標識としての

観念称呼を生じるものではない。

このことから,本願商標は,本願上段文字に相応して,「ピース」の称呼及び「平

和」の観念をも生ずるというべきである。

イ 原告の主張に対し

「ICED COFFEE」の文字は,平易な英語である上,一般の消費者向け

にも販売されている本願指定商品において「アイスコーヒー」を表すものとして広

く使用されていることから,取引者,需要者は,本願商標の構成中,「ICED」

の文字を,商品の品質を表示するものとして容易に認識するといえる。

本願商標の構成全体から生じる称呼がやや冗長であることも併せ考えると,本願

商標は,その構成中,外観上において強く支配的な印象を与える部分である「PE

ACE」及び「COFFEE」の文字から,商品の出所識別標識としての観念及び

称呼を生じるというべきである。



2 本願商標と引用商標との類否について

以下のとおり,本願商標は,引用商標と類似の商標といえ,本件審決が同旨の判

断をしたことに誤りはない。

? 外観について

ア 本願商標と引用商標とは,構成全体の外観は異なるものである。

しかしながら,本願上下段文字及び引用商標の下段の文字は,いずれも「PEA

CE」及び「COFFEE」という同一の単語から構成されており,この事実は容

易に認識され得るものであるから,両商標は,外観において近似した印象を与える

ものといえる。

イ 原告の主張に対し

(ア) 本願上段文字部分中,「P」の文字の2筆目に当たる部分は,円形で

表されており,その内部も同じ太さの描線により表されている。この外観によれば,





ピースマークの図形は,上記文字の一部として構成されているといえ,同文字全体

の外形から,欧文字「P」が容易に認識される。

そして,「P」の文字と一体的に表されて同文字に続くものと看取される「EA

CE」の文字と併せみれば,本願上段文字部分は,やや図案化されているものの,

本願商標の取引者,需要者においても広く親しまれた「PEACE」の平易な英単

語を表したものと容易に認識できる。

(イ) 本願指定商品及び引用商標の指定商品を含む飲料及び食品を取り扱

う業界において,商品に付された文字の一部を図案化すること,影付きの文字を用

いること,文字と共に背景図形を用いることなどは,広く一般に行われている。

本願商標の図形部分は,やや立体的に表されているとしても,構成中の文字の輪

郭に沿って描かれているものであり,その他,色彩等を含めても,本願商標の図案

化は,上記業界において一般的に行われる程度のものにすぎないといえる。

? 称呼及び観念について

ア(ア) 引用商標の構成中,「ピース」の片仮名文字及び「PEACE」の欧

文字は,いずれも「平和」の意味を有する一般に親しまれた語であるから,引用商

標は,その構成文字全体に相応して,「ピースコーヒー」の称呼及び「平和のコー

ヒー」の観念を生ずるものである。

(イ) また,引用商標の構成中,「コーヒー」の片仮名文字及び「COFF

EE」の欧文字は,その指定商品との関係において商品の普通名称を表したものと

して理解され,当該文字のみからは,商品の出所識別標識としての観念称呼を生

じない。

したがって,引用商標は,その構成中の「ピース」及び「PEACE」の文字に

相応して,「ピース」の称呼及び「平和」の観念をも生ずるものである。

なお,引用商標が,原告主張のとおり,鳩の図柄を伴ったロゴマークの形で実際

に使用されているとしても,この点は,本願商標と引用商標との類否の判断に影響

するものではない。





(ウ) 他方,前述のとおり,本願商標は,@本願上下段文字に相応して,「ピ

ースコーヒー」の称呼及び「平和のコーヒー」の観念を生じ,また,A本願上段文

字に相応して,「ピース」の称呼及び「平和」の観念をも生ずるといえることから,

引用商標と比較すると,両者は,「ピースコーヒー」の称呼及び「平和のコーヒー」

観念並びに「ピース」の称呼及び「平和」の観念を同一にするものである。

イ 本願商標の構成全体から生じる「ピースアイストコーヒー」の称呼及び

「平和の冷やしたコーヒー」(又は「平和の凍らせたコーヒー」)の観念と,引用

商標から生じる「ピースコーヒー」の称呼及び「平和のコーヒー」の観念とを,そ

れぞれ比較しても,前述したとおり,「ICED COFFEE」の文字は,「ア

イスコーヒー」を表すものとして一般に使用されていることから,両商標の相違は,

当該商品を「アイスコーヒー」と認識させるか否かの違いにすぎない。

さらに,商品に使用される文字商標は,時代の変遷に伴い,付記的な記載やデザ

インに変更が施されることも少なくないといえることから,本願商標及び引用商標

は,いずれも「PEACE」に係るコーヒーとして理解され得るものであり,商品

の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるというべきである。

? 取引の実情について

本願指定商品及び引用商標の指定商品は,一般の食品であり,その取引者,需要

者には,これらの商品を取り扱う業者の他,広く一般の消費者が含まれ,その商品

に対する注意力は,決して高いものとはいえない。加えて,これらの商品は,日常

的に消費されるものであり,通常,安価に購入できる。

このことから,需要者は,必ずしも商標の構成を細部にわたり正確に記憶して取

引するとは限らず,商標全体の主たる印象によって商品の出所を識別する場合も少

なくないといえる。

上記の点に鑑みると,簡易迅速性を重んじる取引において,本願商標に接する取

引者,需要者は,前記のとおり,本願商標の構成中,視覚上顕著に表された部分と

して強く印象付けられる本願上下段文字部分を記憶するとみるのが自然であり,上





記部分から生ずる称呼及び観念をもって取引に当たる場合も少なくないものという

べきである。



第5 当裁判所の判断

1 本願商標について

? 外観について(甲19)

ア 本願商標は,前記第2の1のとおりの外観であって,@本願上段文字,

すなわち,「PEACE」の文字,A本願下段文字,すなわち,「COFFEE」

の文字,B白抜き文字,すなわち,「ICED」の文字及びC図形部分を組み合わ

せた結合商標である。本願商標は,全体的に若干左に傾いている。

(ア) その構成中,本願上段文字は,黒い太字で表されたアルファベットの

大文字「P」,「E」,「A」,「C」及び「E」の5文字から成り,これらが横

一列に近接して並んでおり,各文字の下端は,ほぼそろっている。本願上段文字部

分は,本願商標全体の半分近くの面積を占めている。

冒頭の「P」の文字は最も大きく,上部の円形に近い形をした部分(以下「Pの

円形部分」という。)の中には,文字と同じ太さ及び色の黒線で「?」という図が描

かれている。上記文字に続く「E」及び「A」の文字は,いずれも「Pの円形部分」

の下方に配置されており,各文字の高さは,本願上段文字の下端と「Pの円形部分」

の下端との間に,幅は,2文字合わせて「P」の文字の縦線部分と「Pの円形部分」

の右端との間に,それぞれちょうど収まる程度である。さらに,上記「E」及び「A」

の文字の上部は,「Pの円形部分」の下方の弧に沿うように,わずかに凹んでいる。

一見すると,大きな「P」の文字の傘下に,「E」及び「A」の文字が収まってい

るような印象を受ける。

これらの文字の右方に,「P」よりは小さいものの,上記「E」及び「A」の文

字よりは大きい「C」及び「E」の文字が並んでいる。

(イ) 本願下段文字は,黒い太字で表されたアルファベットの大文字「C」,





「O」,「F」,「F」,「E」及び「E」の6文字から成り,これらが横一列に

近接して並んでおり,各文字の下端は,ほぼそろっている。本願下段文字部分は,

本願商標全体の半分近くの面積を占めている。

冒頭の「C」の文字は,本願上段文字の「C」の文字とほぼ同じ大きさであり,

その余の5文字はそれよりもやや小さいが,本願上段文字中,「Pの円形部分」の

下方にある「E」及び「A」の文字よりは大きい。

(ウ) 白抜き文字は,白い線で表された同じ大きさのアルファベットの大文

字「I」,「C」,「E」及び「D」の4文字から成り,これらが横一列に近接し

て並んでおり,各文字の下端は,ほぼそろっている。

上記4文字は,本願上下段文字よりも相当に小さく,これらの文字のうち最も小

さい「Pの円形部分」の下方にある「E」及び「A」の文字と比べても,高さ,幅

ともおおむね半分程度にすぎない。上記「E」及び「A」の文字以外の本願上下段

文字は,高さにおいて,白抜き文字の約5倍以上である。また,白抜き文字は,本

願上下段文字よりも,細い線で書かれている。

(エ) 図形部分は,灰色であり,本願文字部分全体の外形に沿い,背景のよ

うな印象を与える。図形部分の右側及び下側の外延には,黒色の影が付いており,

立体感を出している。

イ(ア) 以上によれば,本願商標のうち,本願上段文字部分及び本願下段文字

部分は,それぞれ本願商標全体の面積の約半分近くを占め,黒い太字で表されてい

るのに対し,白抜き文字部分は,本願上段文字部分と本願下段文字部分との間に挟

み込まれるように配置されており,しかも,これらの文字よりも相当に小さく,細

い白線で表されていることから,あまり目立たず,本願上下段文字の中に埋没して

いるような印象も否定し難いところである。

また,図形部分は,本願文字部分全体の外形に沿い,背景として全体に一体感を

与えているとみる余地もあるものの,色は灰色でそれほど目立つものではなく,黒

色の影によって立体感が出ているとはいえ,顕著な特徴とまではいい難く,強い印





象を与えるものとはいえない。本願上下段文字は,図形部分の上に力強く浮き上が

っている印象がある。

(イ) 以上の点から,結合商標である本願商標を構成する本願上段文字部

分,本願下段文字部分,白抜き文字部分及び図形部分は,外観上,常に一体不可分

のものとして認識されるものとまではいえず,分離して看取し得るものといえ,構

成部分のうち,本願上段文字部分及び本願下段文字部分が,白抜き文字部分及び図

形部分よりも,相当に強く看者の注意を引くものと認められる。

? 各構成部分について

ア 本願上段文字部分からは,その構成文字と同一の英文字から成る英単語

の「peace」に相応した「ピース」の称呼及びその和訳である「平和」の意味

合いを生じる(乙1)。

なお,上記英単語については,英和辞典(乙1)のみならず,国語辞典である「広

辞苑 第六版(第一刷)」(平成20年1月株式会社岩波書店発行,乙9)におい

ても,「ピース【peace】@平和。」と掲載されていることから,上記称呼

び意味合いとも,我が国において日常使用する外来語として一般に定着しているも

のと認められる。

イ 本願下段文字部分からは,その構成文字と同一の英文字から成る英単語

の「coffee」に相応した「コーヒー」の称呼及び飲料の一種であるコーヒー

の意味合いを生じる(乙2)。上記英単語も,我が国において日常使用する外来語

として一般に定着していることが明らかである。

ウ 白抜き文字部分からは,その構成文字と同一の英文字から成る英単語「

iced」に相応した「アイスト」の称呼及びその和訳である「氷で冷やした」の

意味合いを生じる(甲145,乙3)。

エ 図形部分については,称呼は生じず,また,それ自体としても,本願文

字部分のいずれか1つ又は複数と組み合わせても,特に何かを連想させるものとは

いえない。





オ 上記アからエに鑑みると,本願商標において,本願上下段文字部分,白

抜き文字部分及び図形部分を常に一体不可分のものとして認識しなければならない

ような称呼上の理由及び意味合い上の関連性は,見出し難いというべきである。

? 各構成部分の出所識別力について

ア 本願下段文字部分から生じる「コーヒー」の称呼及び飲料の一種である

コーヒーの意味合いは,本願指定商品(甲13)に含まれる「コーヒー」の商品名

を表す普通名詞に他ならず,本願指定商品との関係においては,出所識別力を有し

ない。

白抜き文字部分から生じる前記称呼及び意味合いも,商品の品質を表示するもの

として理解され,出所識別力は弱いものといえる。

イ 本願上段文字部分から生じる「ピース」の称呼及び「平和」の意味合い

は,前述したとおり,日常使用する外来語として一般的に定着しており,それ自体

はありふれた用語といえるが,飲料である本願指定商品の商品名,品質,性状に関

わるものではなく,通常,飲食物を示す用語と共に用いられることは,ほぼないも

のと考えられるから,本願上段文字部分は,本願下段文字部分及び白抜き文字部分

と比較すると,本願指定商品との関係においてより出所識別力を有するものと認め

られる。

? 原告の主張について

ア(ア) 原告は,本願商標は,ピースマークを含む本願文字部分,図形部分及

び黒,白,灰色の色彩を融合させた一体的なロゴマークとして看取されるものであ

り,構成全体が一体不可分の商品出所識別標識として認識,理解されるものであり,

本願上下段文字部分が,強く支配的な印象を与えるものということはできない旨主

張する。

(イ)a ロゴマークとは,企業や商品の名前を図案化したロゴタイプ,企業

や商品のイメージをデザインしたシンボルマーク及びこれらを組み合わせたものを

意味するところ(甲30),本願商標は,前述したとおり,本願上段文字冒頭の「P





の円形部分」内に「?」の図が描かれているなど図案化されており,ロゴマークに該

当するものといえる。そして,一般に,ロゴマークには,その趣旨を看者に瞬時に

理解させるという特質を有するものといわれている(甲30から甲32)。

b しかしながら,ロゴマークに該当する商標がすべて,外観上,常に

一体不可分のものとして認識されるとは限らない。前述したとおり,本願商標にお

いては,本願上段文字及び本願下段文字が,それぞれ,白抜き文字よりも相当に大

きく,線も太く,本願商標の面積の半分近くを占めており,白抜き文字に比して強

い存在感を醸し出すものといえる。また,本願上段文字及び本願下段文字は,図形

部分の上に力強く浮き上がっている印象を与える。

以上に鑑みると,本願上下段文字部分は,本願商標のその余の構成部分である白

抜き文字部分及び図形部分に比して,外観上,顕著なものであり,強く看者の注意

を引くものといえることから,本願商標の構成中,突出して強く支配的な印象を与

えることは否定し難いというべきである。この結論は,図形部分の一部に黒色の影

が付いており,いわゆるシャドウ体(影を付けて立体的な表現を取ったもの〔甲4

0〕)が用いられていることなど原告指摘の点を考慮しても,左右されるものでは

ない。

したがって,原告の前記主張は採用できない。

イ 原告は,「PEACE」の文字は,「平和」を意味する外来語「ピース」

として一般に親しまれているものであり,商品の出所識別標識として格別に強い印

象を与えるものではない旨主張する。

しかしながら,出所識別力の有無は,当該指定商品又は役務との関係において考

えるべきであり,前記のとおり,本願商標中,本願上段文字部分の「PEACE」

の文字から生じる称呼及び意味合いは,ありふれたものであるが,本願指定商品

品質等に関わるものではないことなどから,同商品については,一定の出所識別力

を有するものと認められ,原告の上記主張は採用できない。

ウ(ア)a 原告は,白抜き文字部分につき,@その地色及び配置から,看者の





視覚を瞬時にとらえられる顕著な存在といえること,A我が国においては,「アイ

スコーヒー(ice coffee)」という呼び方が一般に親しまれており,こ

れを「アイスト・コーヒー(iced coffee)」と呼ぶことはないことか

ら,上記文字部分は,必ずしも本願指定商品の品質表示として直感されるものとは

いえない旨主張する。

b しかしながら,確かに,白抜き文字は,地色が白く,図形部分の中

央辺りに存在するものの,前記のとおり,上記文字よりも相当に大きく,より太い

黒線で書かれた本願上段文字と本願下段文字との間に挟み込まれるように配置され

ていることから,あまり目立つとはいえず,看過される可能性も否定しきれない。

また,辞典類には,外来語である「アイスコーヒー」につき,「ice cof

fee」と表記するもの(甲41から甲43)があるものの,他方,後述するとお

り,「ICED COFFEE」等の文字を「アイスコーヒー」という文字と併記

するコーヒー飲料の宣伝広告も存在する。加えて,「iced」は,それ自体,「凍

らせた」を意味する比較的平易な英単語であり,また,本願指定商品はコーヒーに

関する飲料類であるから,白抜き文字,すなわち,「ICED」の文字に接した取

引者,需要者は,直ちに上記英単語を想起し,冷たい飲料類を連想するものと推認

できる。

以上によれば,白抜き文字部分は,本願指定商品の品質を表示するものとして理

解されるといえ,原告の前記主張は採用できない。

(イ) また,原告は,仮に,白抜き文字部分が本願指定商品の品質表示とし

て認識される場合があるとしても,本願指定商品が含まれる飲料及び食品の分野に

おいては,商品の普通名称や品質表示等に該当し,一般には出所識別力が弱いと考

えられる文字部分についても,同文字部分を含めた構成文字全体が商標(製品名)

として機能し,認識されている例が多く見受けられ,殊更に一部の文字部分を捨象

したものが商品出所識別標識として認識される場面は,想定し難く,この理は,本

願商標についても当てはまる旨主張する。





しかしながら,原告が掲げる実例(甲134から甲144)を参照しても,本願

商標のように,視覚上分離して看取され得るものであり,称呼及び観念においても,

常に全体が一体不可分のものとして認識されるものとはいえない結合商標につき,

外観上,文字の大きさ,配置等により他の構成部分に比して明らかに印象の弱い構

成部分まで含め,常にすべての構成部分が一体のものとして認識されるとは限らな

い。特に,後述するとおり,本願指定商品の分野における取引者,需要者には,広

く一般の消費者も含まれており,また,簡易,迅速な取引が求められることに鑑み

ると,本願商標に接する取引者,需要者は,その構成中,強く看者の注意を引く本

願上下段文字部分又は本願上段文字部分をもって,取引に当たる場合も少なくない

ものというべきである。

以上によれば,原告の前記主張は,採用できない。

? 小括

以上に鑑みると,本願商標に接する取引者,需要者は,本願上下段文字部分及び

白抜き文字部分を常に一体的に認識するだけでなく,外観上,強く看者の注意を引

く本願上下段文字部分,又は,そのうち出所識別力を有する本願上段文字部分をも

って,商品の出所識別標識としてとらえる場合もあるものと認められ,したがって,

本願上下段文字部分又は本願上段文字部分が,取引者,需要者に対し,商品の出所

識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められるから,本願上下段文字

部分又は本願上段文字部分を本願商標の要部として抽出し,他人の商標と比較して

類否を判断することができるというべきである。

以上によれば,本件審決が,本願商標と引用商標との類否判断に当たり,上記と

同旨の判断をして分離観察したことに誤りはない。

? 称呼及び観念について

ア(ア) まず,本願商標を全体的に観察し,本願文字部分,すなわち,「PE

ACE ICED COFFEE」を一連のものとしてみると,「PEACE」,

「ICED」及び「COFFEE」の構成文字と同一の英文字から成る3語の英単





語,すなわち,「peace」,「iced」及び「coffee」に相応した「ピ

ースアイストコーヒー」の称呼を生じる。

また,「iced coffee」は,冷やしたコーヒーを意味する英語の慣用

句であり,正しくは「アイストコーヒー」と発音するが,我が国においては「アイ

スコーヒー」という呼び名が一般に定着しており,乙4号証から乙8号証によれば,

コーヒー飲料の宣伝広告に「ICED COFFEE」や「Iced Coffe

e」という文字が「アイスコーヒー」という文字と併記されており,これらが同義

であることは,周知されているものと推認できることから,本願文字部分は,「ピ

ースアイスコーヒー」の称呼も生じるものといえる。

(イ) 本願文字部分を一連のものとしてみた場合,上記3語の英単語に相応

して「平和の(氷で)冷やしたコーヒー」の観念を生じるものと認められる。

イ また,本願商標については,前述したとおり,@本願上下段文字部分又

はA本願上段文字部分を要部と解することができ,@前者の場合においては,「ピ

ースコーヒー」の称呼及び「平和のコーヒー」との観念を生じ,A後者の場合にお

いては,「ピース」の称呼及び「平和」との観念を生じる。



2 本願商標と引用商標との類否について

? 本願商標について

外観の構成は,前記1?のとおりである。称呼及び観念については,本願上下段

文字及び白抜き文字に相応した一連の称呼及び観念が生じるだけでなく,その構成

中,要部と認められる本願上下段文字部分又は本願上段文字部分から,前者につい

ては「ピースコーヒー」の称呼及び「平和のコーヒー」との観念を生じ,後者につ

いては「ピース」の称呼及び「平和」との観念を生じる。

? 引用商標について

引用商標(甲12の1)は,前記第2の2のとおりの外観であって,普通の書体

で書かれた片仮名の「ピースコーヒー」の文字及びアルファベットの大文字「PE





ACECOFFEE」が,それぞれ,上段,下段に配置されている。

引用商標からは,「ピースコーヒー」の称呼及び「平和のコーヒー」との観念

生じるものと認められる。

? 本願商標と引用商標との比較

本願商標と引用商標とは,その全体の外観構成において相違するものの,本願商

標の要部である本願上下段文字部分と引用商標の下段文字部分は,いずれもアルフ

ァベットの大文字「P」,「E」,「A」,「C」,「E」,「C」,「O」,「F」,

「F」,「E」及び「E」の11文字から成り,外観上,文字のつづりが共通して

いる。

また,本願商標の要部である本願上下段文字部分と引用商標とは,「ピースコー

ヒー」の称呼及び「平和のコーヒー」との観念を同一にしてしている。

? 取引の実情について

本願指定商品は,食品に含まれるものであるから,取引者,需要者には,同商品

を取り扱う専門業者のみならず,広く一般の消費者も含まれる。また,同商品は,

日用の食品として頻繁に売買されることから,簡易,迅速な取引が要請されるもの

と考えられる。

以上の点に鑑みると,本願商標に接する取引者,需要者は,同商標の細部まで詳

細に観察することなく,その構成中,強く看者の注意を引く本願上下段文字部分又

は本願上段文字部分をもって取引に当たる場合が少なくないものと推認できる。

? 原告の主張について

ア(ア) 原告は,@本願上段文字冒頭の「P」の文字には,ピースマークが取

り込まれており,同マークの存在は,本願商標の外観に独自性,特異性を与え,看

者の視線を最も強くひきつけて印象付ける重要な構成要素といえること,A上記ピ

ースマークは,独特の書体等によって視覚的に強調されており,また,同マークを

含む本願上段文字は,誰もが一見して容易に「PEACE」と認識できるとは必ず

しもいえないほど高度にデフォルメされたレタリング方法で表現されていること,





B本願商標を塗り分けている黒,白及び灰色の色彩が及ぼす影響は,看過できない

大きなものといえることを掲げ,本願商標の外観は,このように顕著な特徴を有し

ており,引用商標との外観とは,大きな差異がある旨主張する。

(イ)a 確かに,前記のとおり,本願上段文字冒頭の「P」の文字において

は,「Pの円形部分」の中に文字と同じ太さ及び色の黒線で「?」という図が描かれ

ているところ,この部分は,「?」,すなわち,ピースマーク(甲1)を連想させ

るものである。そして,ピースマークは,平和や反戦の象徴として広く国際的に周

知されているものと認められる(甲1,甲2,甲20から甲29)。「平和」の意

味合いを有する本願上段文字,すなわち,「PEACE」の文字の冒頭にある「P」

の字に,平和や反戦の象徴であるピースマークを組み込んだデザインは,本願商標

外観を特徴付けるものといえる。

b しかしながら,本願商標におけるピースマークは,前述したとおり,

「Pの円形部分」の中に,文字と同じ太さ及び色の黒線で「?」の図が描かれている

というものであることから,視覚上,強調されているとはいい難く,「P」の文字

の一部分という印象を与えるものといえ,しかも,「P」の文字の他の部分から際

立った外観を呈しているともいえない。そして,ピースマークが組み込まれた「P」

の字も含む本願上段文字は,ある程度図案化された書体で表わされているものの,

文字の識別に支障を来すほどデフォルメされたものはなく,一見して容易に「PE

ACE」の文字として認識できる。また,色彩は,一般に看者に対して強い印象を

与えるものといえるが(甲32から甲37),本願商標は,黒い影付きの灰色の図

形部分を背景とし,黒い本願上下段文字及び白抜き文字から成り,これらの色は,

いずれも人目を引くものではなく,配色についても,格別特徴的な点は見受けられ

ない。これらのことから,本願商標の色彩は,必ずしも看者に対して強い印象を与

え,その認識に大きな影響を及ぼすものとはいえない。他に,本願商標の外観につ

き,特に顕著な特徴というべき点は,見られない。

以上によれば,本願商標の外観は,それほど顕著な特徴を有するものとはいえず,





本願商標と引用商標との類否の判断において,類似性を否定する方向に働く強い要

素とまではいえないとみるべきであり,原告の前記主張は採用できない。

イ また,原告は,仮に,引用商標の「PEACE」の文字部分から「平和」

観念が想起されることがあるとしても,本願商標の構成中の「PEACE」の文

字に組み込んだピースマークによって表現される平和の観念とは異質のものであ

り,両者が誤認混同されるおそれはない旨主張する。

しかしながら,「平和」という用語の意味が,「ピースマークから想起される平

和」,「鳩から想起される平和」などと複数種類あって,しかも,それらが異質の

ものであり,互いに識別し得るものであることは,本件証拠上,認められず,また,

そのような公知の事実が存在すると認めることもできない。

したがって,原告の上記主張は,採用できない。

ウ(ア) さらに,原告は,取引の実情に関し,@鳩の図柄を伴ったロゴマーク

の形で使用されている引用商標は,その配色等の使用態様に加え,本願商標におけ

るピースマークから想起される平和の観念が「鳩」などから想起される平和の観念

とは異なるものであることから,本願商標とは明らかに異なる印象等を与えるもの

といえる,A原告の取り扱うコーヒーと,引用商標権者の取り扱うコーヒーとの間

には,商品コンセプトの相違が存在し,主たる需要者の範囲も異なり,取引の競合

は生じないことが予想される,として,本願商標と引用商標が各指定商品に使用さ

れても,その出所について誤認混同を生じるおそれはない旨主張する。

(イ) しかしながら,@の点については,商標の類否判断は,原則として当

該商標自体を比較して決すべきであり,引用商標が鳩の図柄を伴って使用されてい

ることが,直ちに類否判断に影響するとはいえない。加えて,前述のとおり,「平

和」という用語の意味が複数種類あって,それらが異質のものであり,互いに識別

可能なものであることは,証拠上認められず,そのような公知の事実の存在も認め

られない。

Aの点については,たとえ原告と引用商標権者との間に商品コンセプトの相違が





あり,それぞれ想定している顧客層や販売地域等が異なるとしても,本件証拠上,

引用商標権者において会員限定販売など取引相手を明確に限定していることは認め

られず,原告においてもそのような限定を付する予定をしている事実はうかがわれ

ない以上,原告と引用商標権者との間で本願指定商品における取引の競合が生じる

可能性は否定しきれない。

以上によれば,原告の前記主張は,採用できないというべきである。

? 小括

以上によれば,本願商標と引用商標とは,同一又は類似の商品に用いられた場合

には,商品の出所につき混同誤認を生ずるおそれがある類似の商標であると認めら

れ,同旨の認定をして,本願商標が商標法4条1項11号に該当するとした本件審

決の判断に,誤りはないというべきである。



第7 結論

以上によれば,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判

決する。



知的財産高等裁判所第2部




裁判長裁判官

清 水 節




裁判官

新 谷 貴 昭





裁判官

鈴 木 わ か な






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