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事件 平成 25年 (ネ) 10101号 役務標章差止請求控訴事件
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裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2014/11/19
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
判例全文
判例全文
平成26年11月19日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成25年(ネ)第10101号 役務標章差止請求控訴事件

(原審・東京地方裁判所平成24年(ワ)第27475号)

口頭弁論終結日 平成26年10月29日

判 決



控 訴 人 株式会社KPG LUXURY HOTELS



訴 訟 代 理 人 弁 護 士 吉 田 大 地

補 佐 人 弁 理 士 藤 吉 繁



被 控 訴 人 株式会社DAIKICHI




被 控 訴 人 株 式 会 社 月 ケ 瀬



上記両名訴訟代理人弁護士 早 稲 田 祐 美 子

補 佐 人 弁 理 士 奥 野 貴 男

主 文

1 控訴人の当審における交換的変更に係る請求をいずれも棄却する。

2 当審における訴訟費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1 控訴の趣旨

1 被控訴人らは,その経営する別紙旅館目録記載の旅館の営業施設及び営業活

動について,別紙被控訴人標章目録1及び2記載の各標章を使用してはならな

い。



2 被控訴人らは,その経営する前項の旅館の営業施設及び営業活動について,

別紙被控訴人表示目録1ないし6記載の各表示を使用してはならない。

第2 事案の概要



件商標権」という。)の商標権者であり,かつ,「熱海 ふふ」との名称の旅

館(以下「控訴人旅館」という。)を経営する控訴人が,別紙被控訴人標章目

録1及び2記載の各標章(以下「被控訴人各標章」と総称し,それぞれを「被

控訴人標章1」,「被控訴人標章2」という。)は本件商標に類似する商標で

あり,また,別紙被控訴人表示目録1ないし6記載の各表示(以下「被控訴人

各表示」と総称し,それぞれを「被控訴人表示1」,「被控訴人表示2」など

という。)は,控訴人旅館の名称として周知である別紙控訴人表示目録1ない

し3記載の各表示(以下「控訴人各表示」と総称し,それぞれを「控訴人表示

1」,「控訴人表示2」などという。)と類似の商品等表示であるから,被控

訴人らが別紙旅館目録記載の旅館(以下「被控訴人旅館」という。)の営業施

設及び営業活動について被控訴人各標章を使用する行為は本件商標権の侵害

行為(商標法37条1号)に,被控訴人各表示を使用する行為は不正競争防止

法(以下「不競法」という。)2条1項1号の不正競争行為にそれぞれ該当す

る旨主張して,被控訴人らに対し,商標法36条1項に基づき,被控訴人各標

章の使用の差止めを,不競法3条1項に基づき,被控訴人各表示の使用の差止

めを求める事案である。

控訴人は,原審において,被控訴人らが被控訴人旅館の名称として使用す

る「雲風々 うふふ」又は「雲風々 ufufu」との標章(被告標章)が本件商

標に類似し,また,被控訴人らが被控訴人旅館の名称として使用する「月ヶ瀬

温泉 雲風々 うふふ」,「雲風々 うふふ 月ヶ瀬温泉」又は「tsukigase

spa ufufu 雲風々 うふふ」との表示(被告表示)が控訴人が控訴人旅館の

名称として使用する「熱海 ふふ」との表示(原告表示)にそれぞれ類似する



旨主張して,被控訴人らに対し,商標法36条1項及び不競法3条1項に基づ

き,その経営する別紙旅館目録記載の旅館の営業施設及び営業活動につい

て,「うふふ」又は「ufufu」なる標章の使用の差止めを求めたが,原判決は,

控訴人の請求をいずれも棄却した。

控訴人は,これを不服として控訴し,当審において,差止めを求める対象

を「うふふ」又は「ufufu」なる標章の使用から被控訴人各標章及び被控訴人

各表示の使用に変更する旨の訴えの交換的変更をした。

1 前提事実(証拠の摘示のない事実は,争いのない事実又は弁論の全趣旨によ

り認められる事実である。)

当事者

ア 控訴人は,国又は地方公共団体が委託する福利厚生施設の運営・維持管

理に関する業務,宿泊施設の経営及びホテルの経営等を目的とする株式会

社である。

イ 被控訴人株式会社DAIKICHI(以下「被控訴人DAIKICHI」

という。)は,菓子類の製造及び販売並びに不動産管理業務等を目的とす

る株式会社である。

被控訴人株式会社月ケ瀬(以下「被控訴人月ヶ瀬」という。)は,旅館,

ホテルの経営等を目的とする株式会社である。

控訴人の商標権

控訴人は,次のとおりの本件商標権を有している。

登録番号 商標登録第5162671号

出願日 平成19年7月13日

設定登録日 平成20年8月29日

指定役務 第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒

介又は取次ぎ,動物の宿泊施設の提供,保育所における

乳幼児の保育,会議・集会のための施設の提供」



登録商標

旅館の開業等

ア 控訴人は,平成19年12月,静岡県熱海市において,「熱海 ふふ」

との名称の控訴人旅館を開業した。

控訴人は,控訴人旅館の表示として,控訴人各表示を使用している(甲

4の1,2,甲5,9)

イ 被控訴人月ヶ瀬は,平成24年7月,静岡県伊豆市月ヶ瀬において,「雲

風々(うふふ)」との名称の旅館(被控訴人旅館。甲15の2)を開業し,

被控訴人旅館の表示として,被控訴人標章2及び被控訴人各表示を使用し

ている。

ウ 被控訴人旅館の建物及びその敷地は,被控訴人DAIKICHIの所有

に属し,被控訴人DAIKICHIがこれを被控訴人月ヶ瀬に賃貸してい

る。

2 争点

商標法に基づく請求

被控訴人らによる本件商標権の侵害(商標法37条1号

具体的には,以下のとおりである。

ア 被控訴人らによる被控訴人各標章の使用の有無

イ 本件商標と被控訴人各標章の類否

不競法に基づく請求



具体的には,以下のとおりである。

ア 被控訴人DAIKICHIによる被控訴人各表示の使用の有無

イ 控訴人各表示の周知性

ウ 控訴人各表示と被控訴人各表示の類否

エ 混同を生じさせる行為の有無



第3 争点に関する当事者の主張

1 いて

控訴人の主張

ア 被控訴人らによる被控訴人各標章の使用について

被控訴人月ヶ瀬が被控訴人旅館の表示として被控訴人標章2を使用し



被控訴人月ヶ瀬は,被控訴人旅館の表示として被控訴人標章1も使用

している。

被控訴人らは,この点に関し,被控訴人月ヶ瀬は,「雲風々〜うふふ〜」

又は「雲風々(うふふ)」の標章を使用しているが,被控訴人標章1の「雲

風々 うふふ」は使用していない旨主張する。

しかしながら,「雲風々〜うふふ〜」又は「雲風々(うふふ)」の標章と

被控訴人標章1は,実質的に考察した場合同等であり,文字の大小,意

味のない記号の表示の存在による差異は,旅館の名称の特定に当たり無

視できるものであり,「雲風々〜うふふ〜」又は「雲風々(うふふ)」の標

章の使用は,被控訴人標章1の使用と評価できるから,被控訴人らの主

張は理由がない。

被控訴人月ヶ瀬と被控訴人DAIKICHIは代表取締役が共通し,

被控訴人両名は,共同して被控訴人旅館を運営しているものと考えられ

るから,被控訴人DAIKICHIも,被控訴人月ヶ瀬と共に,被控訴

人各標章を使用しているものといえる。

イ 本件商標について

本件商標は,「 」の平仮名を横書きに書してなり,本件商標から「フ

フ」の称呼が生じる。

本件商標は,広い意味では創られた言葉であるから,造語であるが,正

確には「擬態語的造語」というべきものであり,ある一定の観念あるいは



イメージを連想させる機能を有している。すなわち,本件商標の「ふふ」

は,「女性のたおやかな笑顔と笑う仕草」をイメージあるいは連想させる

ものである。このことは,日常生活において「ふふっと笑う」,「ふふっ

と微笑む」などの言い方が広く行われていることからも明らかである。

したがって,本件商標から「女性のたおやかな笑顔と笑う仕草」の観念

が生じる。

ウ 本件商標と被控訴人標章1との類否について

被控訴人標章1は,別紙被控訴人標章目録1記載のとおり,「雲風々」

の漢字と「うふふ」の平仮名を横書きに書してなる。

被控訴人標章1を構成する「雲風々」は,一見して通常人はこれを読

むことができないものであり,そのように読むことができない文字につ

いては,通常人は無意識的に回避する傾向にあると考えられるから,識

別力はない。

一方で,「雲風々」に続く「うふふ」は,誰でも読むことができ,「ウ

フフ」の称呼が生じ,また,どのような意味であろうかと通常人をして

考え込ませる機能を有しているから,識別力がある。

このように被控訴人標章1を構成する「雲風々」の部分は,識別力

ないのに対し,被控訴人標章1を構成する「うふふ」の部分は,識別力

があり,それ自体需要者の注意を引く部分であるといえるから,被控訴

人標章1の要部に該当するものといえる。

本件商標は,「フフ」の称呼が生じ,被控訴人標章1は,その要部で

ある「うふふ」の部分から「ウフフ」の称呼が生じる。

そして,両者の称呼を発音記号で表記すれば,本件商標は[fufu

],被控訴人標章1は[ufufu]となり,被控訴人標章1において

語頭に配された[u]は,その後2回も繰り返し現れるので,語頭の[u

]の印象が希薄になることは必定であり,本件商標と被控訴人標章1と



は共通した母音と子音とが繰り返し現れる構成上の特異性により,取引

者に共通した印象を与えるから,称呼において類似する。

次に,被控訴人標章1の「うふふ」の部分は,「口をあまり開かない

で小さく笑う声」を意味し(広辞苑第六版),本件商標の「ふふ」は,

前記イのとおり,「女性のたおやかな笑顔と笑う仕草」をイメージある

いは連想させるものであるから,両者は,女性の控えめな笑いをイメー

ジさせる点において極めて強い共通性を有し,観念においても類似する。

以上によれば,本件商標と被控訴人標章1の要部である「うふふ」の

部分は,称呼及び観念において類似するものであり,被控訴人標章1を

本件商標の指定役務の「宿泊施設の提供」に使用したときは,その出所

について誤認混同を生じるおそれがあるといえるから,本件商標と被控

訴人標章1は,全体において類似する商標であるというべきである。

エ 本件商標と被控訴人標章2との類否について

被控訴人標章2は,別紙被控訴人標章目録2記載のとおり,「雲風々」

の漢字と「ufufu」の欧文字を横書きに書してなる。

そして,「ufufu」は,「うふふ」の欧文字における読みにすぎないか

ら,前記ウで被控訴人標章1について述べたのと同様の理由により,被控

訴人標章2を構成する「雲風々」の部分は,識別力がないのに対し,被控

訴人標章2を構成する「ufufu」の部分は,識別力があり,それ自体需要

者の注意を引く部分であるといえるから,被控訴人標章2の要部に該当す

るものといえる。

したがって,前記ウで被控訴人標章1について述べたのと同様の理由に

より,本件商標と被控訴人標章2は,全体において類似する商標であると

いうべきである。

オ 小括

以上によれば,被控訴人らが被控訴人旅館の営業施設及び営業活動につ



いて被控訴人各標章を使用する行為は,本件商標権の侵害(商標法37条

1号)を構成する。

したがって,控訴人は,被控訴人らに対し,商標法36条1項に基づき,

被控訴人各標章の使用の差止めを求めることができる。

被控訴人らの主張

ア 被控訴人らによる被控訴人各標章の使用について

被控訴人月ヶ瀬による被控訴人標章1の使用の事実はない。被控訴人

月ヶ瀬は,被控訴人旅館の表示として,「雲風々〜うふふ〜」又は「雲風

々(うふふ)」の標章を使用しているが,これらは,被控訴人標章1とは

異なる標章である。

すなわち,「雲風々〜うふふ〜」においては,「うふふ」の部分が「雲風

々」よりも文字の大きさが小さく,かつ,「雲風々」と「〜」でつながっ

ており,「雲風々」の読みを示しているから,「雲風々〜うふふ〜」は,被

控訴人標章1と異なる標章である。また,「雲風々(うふふ)」において

は,「うふふ」の部分が「( )」によって,「雲風々」と連結され,「雲

風々」の読みを示しているから,「雲風々(うふふ)」は,被控訴人標章

1と異なる標章である。

被控訴人DAIKICHIによる被控訴人各標章の使用の事実はない。

被控訴人DAIKICHIは,企業グループの資産を所有する会社であ

り,被控訴人旅館の建物及びその敷地を所有しているが,被控訴人旅館

の運営は行っていない。

イ 本件商標について

本件商標から「フフ」の称呼が生じることは認めるが,本件商標から「女

性のたおやかな笑顔と笑うイメージ」の観念が生じることは否認する。

本件商標の「ふふ」は,造語であって,特定の観念を生じない。

控訴人は,日常生活において「ふふっと笑う」,「ふふっと微笑む」な



どの言い方が広く行われている旨主張するが,控訴人の主張は,いずれ

も「ふふっと」という単語の観念であって,「ふふ」の観念ではない。

ウ 本件商標と被控訴人標章1との類否について

被控訴人らは,前記アのとおり,被控訴人標章1を使用していない。

この点を措くとしても,被控訴人標章1は,「雲風々」の漢字と「う

ふふ」の平仮名が併記され,「雲風々 うふふ」として一体となってい

る。「雲風々」は漢字であり,「うふふ」に比して格段に画数が多いこ

と,「雲風々」は「雲」と「風」という漢字からなる造語であることか

ら,被控訴人標章1のうち,「雲風々」の漢字は,インパクトが大きく,

外観上需要者の注意を最も引く部分である。

そして,「雲風々」の漢字の後に「うふふ」の平仮名が併記されてい

るため,「うふふ」は「雲風々」の読みであることを示している。

したがって,被控訴人標章1においては,「雲風々 うふふ」が構成

全体として一体不可分のものと観察されるべきものであり,「うふふ」

のみを要部として観察することはできない。

本件商標は,「ふふ」の平仮名2字のみからなるのに対し,被控訴人

標章1は,「雲風々 うふふ」からなるから,本件商標と被控訴人標章

1は外観が全く異なる。

次に,本件商標から「フフ」の称呼が生じ,被控訴人標章1から「ウ

フフ」との称呼が生じる。両者を対比すると,本件商標が「フフ」の2

音からなるのに対し,被控訴人標章1は,「ウフフ」の3音からなるも

のであり,短い音構成において本件商標より1音多い上,被控訴人標章

1においては「ウ」の音が称呼において識別上最も重要な要素を占める

頭音に位置することから,それぞれの称呼を一連に称呼した場合におい

ても,称呼全体の語調,語感が相違したものとなり,互いに紛れるおそ

れはない。



したがって,本件商標と被控訴人標章1は称呼において類似しない。

さらに,被控訴人標章1は,「雲が風に吹かれて悠々と流れていく様

をみて,ふと旅に出てみたくなった」という観念と「うふふという自然

にこぼれる微笑み」という観念の二つの観念を有するものであるの対し,

本件商標から特定の観念が生じないから,両者は,観念においても類似

しない。

以上によれば,本件商標と被控訴人標章1とは,外観称呼及び観念

のいずれにおいても類似しておらず,総合的に観察しても,本件商標と

被控訴人標章1は,類似する商標ではない。

エ 本件商標と被控訴人標章2との類否について

被控訴人標章2は,「雲風々」の漢字と「ufufu」の欧文字が併記さ

れ,「雲風々 ufufu」として一体となっている。「雲風々」は漢字であ

り,「ufufu」に比して格段に画数が多いこと,「雲風々」は「雲」と「風」

という漢字からなる造語であることから,被控訴人標章2のうち,「雲風

々」の漢字のインパクトが大きく外観上需要者の注意を最も引く部分であ

る。

そして,「雲風々」の漢字の後に「ufufu」の欧文字が併記されている

ため,「ufufu」は「雲風々」の読みであることを示している。

したがって,被控訴人標章2においては,「雲風々 ufufu」が構成全

体として一体不可分のものと観察されるべきものである。

本件商標は,これに対し,「ふふ」の平仮名2文字のみからなるが,被

控訴人標章2には平仮名の記載がなく,本件商標と被控訴人標章2は外観

が全く異なる。

そして,本件商標と被控訴人標章2は称呼及び観念において類似しない



以上によれば,本件商標と被控訴人標章2とは,外観称呼及び観念



いずれにおいても類似しておらず,総合的に観察しても,本件商標と被控

訴人標章2は,類似する商標ではない。

オ 小括

以上のとおり,被控訴人月ヶ瀬は被控訴人標章1を使用しておらず,被

控訴人DAIKICHIは被控訴人各標章をいずれも使用していない。

また,本件商標と被控訴人各標章は類似する商標ではない。

したがって,控訴人主張の被控訴人らによる本件商標権の侵害は成立し

ない。



いて

控訴人の主張

ア 被控訴人DAIKICHIによる被控訴人各表示の使用について

被控訴人月ヶ瀬が被控訴人旅館の表示として被控訴人各表示を使用し




しているものと考えられるから,被控訴人DAIKICHIも,被控訴人

月ヶ瀬と共に,被控訴人各表示を使用しているものといえる。

イ 控訴人各表示の周知性について

控訴人は,平成19年12月に開業して以来,控訴人各表示を控訴人

旅館の表示として使用している。

控訴人各表示は,テレビ,雑誌,インターネット上等で数多く紹介,

案内されており(甲39,40の1ないし66),平成20年から平成

24年間の5年間のデータ(甲35ないし38)によれば,控訴人旅館

の年間販売客室数,利用者数,年間売上高等の数字がおおむね右肩上が

りの伸びを示している。

日本最大の旅行代理店であるJTBのパンフレット「優雅 華やぎ」



の平成23年春夏号(甲22の1,2)において,「熱海 ふふ」(控

訴人旅館)が掲載され,同年秋〜平成24年冬号(甲23の1,2),

同年春夏号(甲24の1,2)及び同年秋〜平成25年冬号(甲25の

1,2)においても同様に掲載されている。

さらに,インターネット上の「旅館紹介サイト」である「一休.com」

において,「熱海 ふふ」(控訴人旅館)は,平成22年から平成24

年まで東日本エリアにおける旅館部門での販売額ランキングにおいて

連続して3位を獲得(甲26,27の1ないし4)している。

以上によれば,控訴人各表示は,平成24年7月時点において,静岡

県伊豆地方に所在する高級旅館である控訴人旅館の表示として,需要者

である顧客及び旅行業者の間に広く認識されており,周知の商品等表示

であるといえる。

ウ 控訴人各表示と被控訴人各表示の類否について

控訴人表示1のうち,「熱海」の部分は旅館の存在する温泉地名であ

り,商品等表示としての識別力はなく,他方,「ふふ」の部分は,大き

く記載されたロゴ文字であり,商品等表示としての識別力を有し,需要

者の注意を引く部分であるといえるから,控訴人表示1の要部に該当す

る。

控訴人表示2及び3についても,これと同様に,「ふふ」の部分が要

部に該当する。

被控訴人表示1には,大きな文字で「雲風々」とあるが,当該文字は

通常人が読むことができず,識別力が低いと考えられる。また,「月ヶ

瀬」は,旅館の存在する温泉地名であり,識別力はない。

結局,被控訴人表示1において,商品等表示としての識別力を有し,

要部に該当するのは,「―うふふ―」の部分である。

これと同様に,被控訴人表示2ないし4においては「うふふ」の部分



が,被控訴人表示5及び6においては「ufufu」の部分がそれぞれ要部

に該当する。



の理由により,控訴人表示1と被控訴人表示1とは称呼及び観念におい

て類似するから,類似の商品等表示である。

また,「ufufu」は,「うふふ」の欧文字における読みにすぎないこ

とからすると,控訴人表示1と被控訴人表示2ないし6は,称呼及び観

念においてそれぞれ類似するから,類似の商品等表示である。

これと同様に控訴人表示2及び3と被控訴人各表示は,称呼及び観念

においてそれぞれ類似するから,類似の商品等表示である。

エ 混同を生じさせる行為について

熱海市内の控訴人のカスタマーセンターあてコメントカード(甲28)

の末尾に「うふふの発展を祈念します」と記載されていた。

「うふふ」は,「熱海 ふふ」の系列旅館ですか,という類の混同事

例が数件以上発生している(甲29)。

カスタマーセンターへの電話等問合せにおいて,「うふふ」と間違え

て照会する顧客が増加している(甲41)。

「Rincoのブログ」(甲42の1ないし3)によれば,「雲風々

うふふ」に宿泊した顧客のコメントとして,「熱海 ふふ」と類似して

おり,被控訴人旅館が控訴人旅館の系列旅館との誤認が生じている。

ネットアンケート調査結果(甲45)によれば,「ふふ」と「うふふ」

の言葉の呼び名及びイメージが似ているとの回答結果が40%前後あ

り,「熱海 ふふ」と「雲風々 うふふ」が系列旅館のような関連性が

あると感じる人が30%を超えている。

控訴人は,近々,河口湖において「河口湖 ふふ」を開業する計画を

持っており(甲44),「ふふ」と「うふふ」の誤認の現実的可能性は



高い。

以上によれば,被控訴人らが被控訴人旅館の表示として被控訴人各表

示を使用した場合,需要者は,被控訴人旅館の営業主体と控訴人旅館の

営業主体が同一であると誤信し,あるいは両者の間に系列関係などの緊

密な営業上の関係を有するものと誤信するおそれがあるというべきで

あるから,被控訴人らによる被控訴人各表示の使用は,「混同を生じさ

せる行為」に該当する。

オ 小括

以上によれば,被控訴人らが被控訴人旅館の営業施設及び営業活動に

ついて被控訴人各表示を使用する行為は,不競法2条1項1号の不正競

争行為に該当する。

したがって,控訴人は,被控訴人らに対し,不競法3条1項に基づき,

被控訴人各表示の使用等の差止めを求めることができる。

被控訴人らの主張

ア 被控訴人DAIKICHIによる被控訴人各表示の使用について

被控訴人DAIKICHIによる被控訴人各表示の使用の事実はない。



資産を所有する会社であり,被控訴人旅館の敷地及び建物を所有している

が,被控訴人旅館の運営は行っていない。

イ 控訴人各表示の周知性について

控訴人は,旅館開業以降,さまざまなマスコミに登場している旨主張す

るが,旅館を紹介するマスコミ媒体数は非常に多く,また,マスコミに紹

介された旅館数も非常に多いから,これだけでは周知性の立証にはならな

い。

控訴人は控訴人各表示がJTBのパンフレットの掲載及び「一休.com」

の取扱いをもって周知である旨主張するが,それら以外の他のすべての旅



行代理店及び旅行サイトが控訴人各表示を掲載しているわけではなく,こ

れだけでは周知性を立証したことにはならない。

また,伊豆地方は日本を代表する温泉地であり,伊豆地方にある温泉地

は,「熱海温泉」,「稲取温泉」,「修善寺温泉」,「大川温泉」,「土

肥温泉」 「伊東温泉」 「下田温泉」 「伊豆長岡温泉」 「赤沢温泉」 「城
, , , , ,

ヶ崎温泉」,「熱川温泉」,「天城・湯ヶ島温泉」,「北川温泉」,「大

沢温泉」,「堂ヶ島温泉」等に分かれる。控訴人旅館は,このうちの「熱

海温泉」に,被控訴人旅館は「天城・湯ヶ島温泉」に所在する。そして,

伊豆半島にある旅館だけみても合計で500軒を数え,控訴人旅館は,そ

のうちの一つにすぎない。

したがって,控訴人旅館が,伊豆地方において,需用者である旅館宿泊

者に相当広く認識されているということはない。また,他の旅館には,多

数の旅行代理店のパンフレットに掲載されているものがあるが,控訴人旅

館は,一部の旅行代理店が扱っているにすぎない。

したがって,控訴人各表示は周知であるとはいえない。

ウ 控訴人各表示と被控訴人各表示の類否について

温泉地にある旅館の場合,取引者又は需要者は旅館を選択する際に当

該旅館がどの温泉地に所在するかという点を重視するため,インターネ

ット上の旅行サイトや旅行会社のパンフレットにおいては温泉地ごと

に分類して旅館を紹介している(甲23の2,24の2,25の2,乙

16,18,19,44の1,2,45の1,2,46の2)。控訴人

自身,控訴人表示1において,「熱海」の文字部分を「ふふ」に付して

表示しており,これは,控訴人が控訴人表示1において,「熱海」とい

う温泉地の表示が重要であると認識しているからにほかならない。

このような温泉地に所在する旅館における取引の実情及び控訴人自

身,「熱海」の文字部分を「ふふ」と常に一緒に表記していることを考



慮すれば,控訴人表示1の構成部分を全体として観察すべきであっ

て,「ふふ」の部分は要部に該当しない。

控訴人表示2及び3も,同様の理由により,「ふふ」の部分は要部に

該当しない。殊に,控訴人表示2は,「熱海」と「ふふ」が同じ大きさ

の同一書体で同じ列に併記されているため,控訴人表示1より一層構成

部分全体が一体化して観察されるから,構成部分を全体として観察すべ

きである。また,控訴人表示3は,「熱海」と「ふふ」が一体化して表

示されており,構成部分を全体として観察すべきである。

被控訴人表示1は,「雲風々」という漢字が草書体で中心に大きく

表記されており,「―うふふ―」及び「月ヶ瀬温泉」はその横に小さ

く表記されているにすぎない。「雲風々」は,「雲」と「風」という

漢字による造語であり,外観として非常にインパクトがあり,識別力

は高い。また,温泉地にある旅館の表示に温泉地名が記載されている

場合は,当該温泉地の表示も一体として観察すべきであることは,前



したがって,被控訴人表示1は,「雲風々」を中心に「―うふふ

―」,「月ヶ瀬温泉」が一体として記載されている表示であるから,

被控訴人表示1において「うふふ」の部分は要部に該当しない。

b 被控訴人表示2は,「月ヶ瀬温泉」という温泉地にある「雲風々」

という旅館の名称,及びその読みを表している「―うふふ―」という

平仮名が一列に表示されているから,「月ヶ瀬温泉 雲風々 ―うふ

ふ―」が一体として観察される。また,一体として観察する中で

は,「雲風々」という漢字が「雲」と「風」からなる造語であり,画

数も多いためインパクトが大きい。さらに,温泉地にある旅館の表示

に温泉地名が記載されている場合は,当該温泉地の表示も一体として





したがって,被控訴人表示2は,「雲風々」を中心に「―うふふ

―」,「月ヶ瀬温泉」が記載されている表示であるから,被控訴人表

示2において「うふふ」の部分は要部に該当しない。

c 被控訴人表示3は,「雲風々」という漢字の読みを欧文字と平仮名

で表しているものであるから,「雲風々 ―ufufu―(うふふ)」が

一体として観察される。また,一体として観察する中では,「雲風々」

という漢字が「雲」と「風」という漢字からなる造語であり,画数も

多いためインパクトが大きい。

したがって,被控訴人表示3は,「雲風々」を中心にその読みが記

載されている表示であるから,被控訴人表示3において「うふふ」の

部分は要部に該当しない。

d 被控訴人表示4は,「月ヶ瀬温泉 雲風々」を英文で「tsukigase

spa ufufu」と表しており,これに「雲風々」という漢字及び「〜う

ふふ〜」という読み仮名を併記しているものであるから,「tsukigase

spa ufufu 雲風々 〜うふふ〜」が一体として観察される。また,

一体として観察する中では,「雲風々」という漢字が「雲」と「風」

という漢字からなる造語であり,画数も多いためインパクトが大きい。

これに対し,「〜うふふ〜」は,「雲風々」のすぐ後に記載され「雲

風々」の読み仮名であることが示されている。さらに,温泉地にある

旅館の表示に温泉地名が記載されている場合は,当該温泉地の表示も



したがって,被控訴人表示4において「うふふ」の部分は要部に該

当しない。

e 被控訴人表示5は,「月ヶ瀬温泉 雲風々」を英文で「Tsukigase

Spa ufufu」と表しており,これに「雲風々」という漢字を同列に併

記しているものであるから,「Tsukigase Spa ufufu 雲風々」が



一体として観察される。また,一体として観察する中では,「雲風々」

という漢字が「雲」と「風」という漢字からなる造語であり,画数も

多いためインパクトが大きい。さらに,温泉地にある旅館の表示に温

泉地名が記載されている場合は,当該温泉地の表示も一体として観察



そして,被控訴人表示5には,「うふふ」という平仮名の記載がな

く,「ufufu」という欧文字も,「Tsukigase Spa ufufu」と一体化

して記載されているのであるから,被控訴人表示5において「ufufu」

の部分は要部に該当しない。

f 被控訴人表示6は,「月ヶ瀬温泉」を意味する「 Tsukigase Spa

ufufu」という英文を「雲風々」という大きな草書体の漢字の上に配

置しているものであるから,「Tukigase Spa ufufu 雲風々」が一

体として観察される。また,一体として観察する中では,「雲風々」

という漢字が草書体で大きく表示されていること,「雲」と「風」と

いう漢字からなる造語であること,画数が多いことからインパクトが

大きい。さらに,温泉地にある旅館の表示に温泉地名が記載されてい

る場合は,当該温泉地の表示も一体として観察すべきであることは,



そして,被控訴人表示6には,「うふふ」という平仮名の記載がな

く,「ufufu」という欧文字も,「Tsukigase Spa ufufu」と一体化

して記載されているのであるから,被控訴人表示6において「ufufu」

の部分は要部に該当しない。

控訴人表示1は,構成部分全体を観察すべきであるから,その称呼

は,「アタミフフ」である。これに対し,被控訴人表示1は,「―う

ふふ―」が「雲風々」の読み仮名であるため,「ウフフツキガセオン

セン」となり,両者の称呼が異なることは明らかである。また,仮に



控訴人表示1の称呼が「フフ」であり,被控訴人表示1の称呼が「ウ



り,「フフ」と「ウフフ」とは称呼において類似しない。

次に,控訴人表示1の観念は,「熱海 ふふ」であり,熱海に関連

する「ふふ」という造語であるから,熱海に関連する観念は生じるも

のの,特別な観念は生じない。また,仮に控訴人表示1の要部が「ふ

ふ」の部分であったとしても,「ふふ」は造語であって特定の意味を

有しないから,「女性のたおやかな笑顔と笑うイメージ」は生じない。

これに対し,被控訴人表示1のうち「雲風々 ―うふふ―」は,「雲

が風に吹かれて悠々と流れていく様をみて,ふと旅に出てみたくなっ

た」という観念と「うふふという自然にこぼれる微笑み」という観念

の二つを有するものである。そして,月ヶ瀬温泉にこの二つの観念

有する「雲風々」があるというのが被控訴人表示1の観念である。

したがって,控訴人表示1と被控訴人表示1とは観念も異なる。

さらに,控訴人表示1の外観は,「ふふ」というロゴ文字だけでな

く,「熱海」という漢字を含めた構成部分を一体不可分として観察す

べきである。これに対し,被控訴人表示1の外観は,「雲風々」が強

力なインパクトがあるものであって,全体的観察からも控訴人表示1

と被控訴人表示1の外観は全く異なる。

以上によれば,控訴人表示1と被控訴人表示1は類似しない。

これと同様に,控訴人表示2及び3と被控訴人表示1は,いずれも

類似しない。

b 控訴人表示1の称呼は,「アタミフフ」である。これに対し,被控

訴人表示2の称呼は,「―うふふ―」が「雲風々」の読み仮名である

ことが明らかであるから,「雲風々」と「―うふふ―」は称呼として

は一つであり,被控訴人表示2の称呼は「ツキガセオンセンウフフ」



となり,両者の称呼が異なることは明らかである。また,仮に控訴人

表示1の称呼が「フフ」であり,被控訴人表示2の称呼が「ウフフ」



り,「フフ」と「ウフフ」とは称呼において類似しない。

前記aと同様の理由により,控訴人表示1と被控訴人表示2とは観

念も異なる。

さらに,被控訴人表示2の外観は,「月ヶ瀬温泉 雲風々 ―うふ

ふ―」であるから,控訴人表示1とは全く異なる。

以上によれば,控訴人表示1と被控訴人表示2は類似しない。

これと同様に,控訴人表示2及び3と被控訴人表示2は,いずれも

類似しない。

c 控訴人表示1の称呼は,「アタミフフ」である。これに対し,被控

訴人表示3は,「―ufufu―」,「(うふふ)」が「雲風々」の読み

を表していることが明らかであるから,「雲風々」と「―ufufu―」

及び「(うふふ)」は称呼として一体化しており,被控訴人表示3の

称呼は「ウフフ」となり,両者の称呼が異なることは明らかである。

また,仮に控訴人表示1の称呼が「フフ」であったとしても,前記1



呼において類似しない。

前記aと同様の理由により,控訴人表示1と被控訴人表示3とは観

念も異なる。

さらに,控訴人表示1の外観は,「熱海 ふふ」であるのに対し,

被控訴人表示3の外観は,「雲風々」が強力なインパクトがあり,「―

ufufu―」,「(うふふ)」はその読み仮名を示しているにすぎず,

全体的観察からも全く異なる。

以上によれば,控訴人表示1と被控訴人表示3は類似しない。



これと同様に,控訴人表示2及び3と被控訴人表示3は,いずれも

類似しない。

d 控訴人表示1の称呼は,「アタミフフ」である。これに対し,被控

訴人表示4は,「ufufu」,「〜うふふ〜」が「雲風々」の読みを表

していることが明らかであるから,「雲風々」と「ufufu」及び「〜

うふふ〜」は称呼として一体化しており,被控訴人表示4の称呼は「ツ

キガセスパウフフ」となり,両者の称呼が異なることは明らかである。

また,仮に控訴人表示1の称呼が「フフ」であり,被控訴人表示4の



の理由により,「フフ」と「ウフフ」とは称呼において類似しない。

前記aと同様の理由により,控訴人表示1と被控訴人表示4とは観

念も異なる。

以上によれば,控訴人表示1と被控訴人表示4は類似しない。

これと同様に,控訴人表示2及び3と被控訴人表示4は,いずれも

類似しない。

e 控訴人表示1の称呼は,「アタミフフ」である。これに対し,被控

訴人表示5は,「ufufu」が「雲風々」の読みを表していることが明

らかであるから,「雲風々」と「ufufu」は称呼として一体化してお

り,被控訴人表示5の称呼は「ツキガセスパウフフ」となり,両者の

称呼が異なることは明らかである。また,仮に控訴人表示1の称呼

が「フフ」であり,被控訴人表示5の称呼が「ウフフ」であったとし



フフ」とは称呼において類似しない。

前記aと同様の理由により,控訴人表示1と被控訴人表示5とは観

念も異なる。

さらに,控訴人表示1の外観は,「熱海 ふふ」であるのに対し,



被控訴人表示5の外観は,「雲風々」が強力なインパクトがあ

り,「Tsukigase Spa ufufu」という欧文字と「雲風々」が一体化

されたものであって,そもそも平仮名の記載がないから,全体的観察

からも控訴人表示1とは全く異なる。

以上によれば,控訴人表示1と被控訴人表示5は類似しない。

これと同様に,控訴人表示2及び3と被控訴人表示5は,いずれも

類似しない。

f 控訴人表示1の称呼は,「アタミフフ」である。これに対し,被控

訴人表示6は,「ufufu」が「雲風々」の読みを表していることが明

らかであるから,「雲風々」と「ufufu」は称呼として一体化してお

り,被控訴人表示6の称呼は「ツキガセスパウフフ」となり,両者の

称呼が異なることは明らかである。また,仮に控訴人表示1の称呼

が「フフ」であり,被控訴人表示6の称呼が「ウフフ」であったとし



フフ」とは称呼において類似しない。

前記aと同様の理由により,控訴人表示1と被控訴人表示6とは観

念も異なる。

さらに,控訴人表示1の外観は,「熱海 ふふ」であるのに対し,

被控訴人表示6の外観は,草書体で中心に大きく配置された「雲風々」

が強力なインパクトがあり,「Tsukigase Spa ufufu」という欧文

字と「雲風々」が一体化されたものであって,そもそも平仮名の記載

がないから,全体的観察からも控訴人表示1とは全く異なる。

以上によれば,控訴人表示1と被控訴人表示6は類似しない。

これと同様に,控訴人表示2及び3と被控訴人表示6は,いずれも

類似しない。

エ 混同を生じさせる行為について



被控訴人各表示は,控訴人各表示と非類似であり,いずれも混同を生じ

るおそれはない。

また,控訴人旅館は熱海温泉に所在し,被控訴人旅館は天城・湯ヶ島温

泉に所在し,両旅館は,所在する温泉地を異にする。伊豆にある温泉と熱

海にある温泉は別の地域として分類されることが多く,交通面でも大きな

違いがある。そして,旅行宿泊者にとって,旅館を選択するに当たって重

視する点は,当該旅館がどの温泉地にあるかであるから,需要者が控訴人

旅館と被控訴人旅館を混同するおそれは認められない。

さらに,カスタマーアンケート,系列の問合せ,ブログの記載について

も仮にそれが事実であるとしても,単なる誤記あるいは勘違いにすぎない。

また,控訴人主張のアンケート調査結果(甲45)によれば,「熱海

ふふ」と「雲風々 うふふ」という名称の旅館について,称呼が似ている

かという質問(「Q2_1」)について,似ていると回答した者の割合が9.

8%,似ていないと回答した者の割合が90.2%であり,90%を超え

る者が似ていないと回答している。二つの旅館(「熱海 ふふ」と「雲風

々 うふふ」)が同じ伊豆地方にあるとして,「同一系列旅館」や姉妹店

のような何らかの関連性を感じるかという質問(「Q2_1」)についても,

感じると回答した者の割合が34%,感じないと回答した者の割合66%

であり,感じないと回答した者が感じると回答した者をはるかに上回るも

のである。

したがって,上記調査結果によっても,控訴人各表示と被控訴人各表示

混同を生じるおそれがないことは明らかである。

オ 小括

以上によれば,被控訴人月ヶ瀬による被控訴人各表示の使用は不競法2

条1項1号の不正競争行為に該当しない。

また,被控訴人DAIKICHIは,被控訴人各表示を使用していない。



したがって,控訴人主張の被控訴人らによる不正競争行為は成立しない。

第4 当裁判所の判断



被控訴人らによる被控訴人各標章の使用の有無について

ア 被控訴人標章1について

控訴人は,@被控訴人らは,被控訴人旅館の表示として,被控訴人標章

1を使用している,A被控訴人月ヶ瀬が被控訴人旅館の表示として使用し

ていることを認めている「雲風々〜うふふ〜」又は「雲風々(うふふ)」の標

章は,被控訴人標章1と同等であるから,被控訴人らは被控訴人標章1を

使用しているものと評価できる旨主張する

しかしながら,被控訴人標章1は,別紙被控訴人標章目録1記載のとお

り,「雲風々」の漢字3字と「うふふ」の平仮名3字を同一書体,同じ大

きさで横書きに書してなり,「雲風々」と「うふふ」の間には空白がある

が,本件証拠上,被控訴人らが被控訴人標章1そのものを使用しているこ

とを認めるに足りる証拠はない。

また,「雲風々〜うふふ〜」の標章(甲10の1)は,「雲風々」の漢字3

字と「うふふ」の平仮名3字を同一書体で横書きに書してなるものである

が,「雲風々」の各文字と「うふふ」の各文字の大きさが異なり,「雲風

々」と「うふふ」の間に空白はなく,「雲風々〜うふふ〜」と一連表記する

ものであるから,被控訴人標章1と外観が異なることは明らかであり,「雲

風々〜うふふ〜」の標章が被控訴人標章1と同一又は同等の標章であると認め

ることはできない。

同様に,「雲風々(うふふ)」の標章(甲15の2)は,「雲風々」の漢

字3字と「うふふ」の平仮名3字を同一書体で横書きに書してなるもので

あるが,「雲風々」と「うふふ」の間に空白はなく,「雲風々(うふふ)」

と一連表記するものであるから,被控訴人標章1と外観が異なることは明ら



かであり,「雲風々(うふふ)」の標章が被控訴人標章1と同一又は同等の標

章であると認めることはできない。

したがって,控訴人の上記主張は理由がない。

イ 被控訴人標章2について

被控訴人月ヶ瀬が被控訴人旅館の表示として被控訴人標章2を使用し



控訴人は,被控訴人月ヶ瀬と被控訴人DAIKICHIは代表取締役が

共通し,被控訴人両名は,共同して被控訴人旅館を運営しているものと考

えられるから,被控訴人DAIKICHIも,被控訴人月ヶ瀬と共に,被

控訴人各標章を使用しているものといえる旨主張する。

そこで検討するに,被控訴人旅館の建物及びその敷地は,被控訴人DA

IKICHIの所有に属し,被控訴人DAIKICHIがこれを被控訴人

月ヶ瀬に賃貸していることは,前

また,証拠(乙1,34の1,38,54)及び弁論の全趣旨によれば,

被控訴人DAIKICHIは,平成24年7月1日の時点までに,被控訴

人月ヶ瀬,株式会社グランバー及び株式会社グランバー東京ラスクの3社

とグループ会社を形成し,その代表取締役がいずれもXであること,被控

訴人月ヶ瀬の株主は被控訴人DAIKICHIだけであること,被控訴人

DAIKICHIは,「うふふ」の平仮名3字と,「ufufu」の欧文

字3字と,「雲風々」の漢字3字とを3段に横書きして書してなる登録商

標(商標登録第5540943号,出願日平成24年3月13日,設定登

録日同年12月7日)の商標権者であることが認められる。

しかしながら,被控訴人旅館の旅館業の営業許可(旅館業法3条1項

許可)は,被控訴人月ヶ瀬が,平成23年3月16日に設立された後,同

年5月25日付けで単独で申請し(申請時の営業施設の名称「湯亭 月ヶ

瀬」),同年6月15日にその許可を受け,その後,平成24年6月10



日付けで営業施設の名称を「雲風々(うふふ)」と変更する旨の届出をし

たこと(甲2の2,15の2,乙39,40),被控訴人DAIKICH

Iの従業員A作成の陳述書(乙51)中には,被控訴人DAIKICHI

が被控訴人旅館の敷地及び建物を購入する直前に,被控訴人旅館を運営す

るために被控訴人月ヶ瀬を設立した旨の供述があること,被控訴人DAI

KICHIが被控訴人旅館の敷地及び建物を購入したのは平成23年3

月22日であること(甲14の1,2)に照らすと,上記認定の各事実か

ら直ちに被控訴人DAIKICHIが被控訴人月ヶ瀬と共同して被控訴

人旅館を運営し,被控訴人標章2を使用しているものと認めることはでき

ない。他にこれを認めるに足りる証拠はない。

したがって,控訴人の上記主張は理由がない。

本件商標と被控訴人標章2の類否について

ア 本件商標について

本件商標は,「 」の平仮名2字を横書きに書してなる商標であり,

本件商標から「フフ」の称呼が生じる。

本件商標を構成する「ふふ」の語は,造語であり,特定の観念を生ず

るものとは認められない。

控訴人は,この点に関し,日常生活において,「ふふっと笑う」,「ふ

ふっと微笑む」などの言い方が広く行われているように,「ふふ」

は,「女性のたおやかな笑顔と笑う仕草」をイメージあるいは連想させ,

そのような観念が生じる旨主張する。

しかしながら,「ふふ」と「ふふっ」とでは,語尾の「っ」の有無に

より外観が及び称呼が異なるものである上,日常生活において,「ふふ

と笑う」,「ふふと微笑む」などの言い方を通常しないから,「ふふっ」

とから笑顔や笑う仕草をイメージあるいは想起させるとしても,そのこ

とは,「ふふ」の平仮名2字が単独で使用された場合に当てはまるもの



とはいえない。なお,雑誌「Z」3月号(2008年3月号)の控訴人

旅館の紹介記事(甲9)中には,記者が控訴人旅館のスタッフに「ふふ」

とは何のことかと質問したところ,「やわらかい,そんな意味合いをも

たせた造語ということだった。また,女性のたおやかな笑顔を象徴して

いるという…なるほど,と頷きながら宿を後にしたが,気がつくとこち

らまで口元がゆるんでいた。 (86頁3段目)
」 との記載部分があるが,

上記記載部分は,控訴人旅館の由来の説明を受けて初めて控訴人が主張

するような「女性のたおやかな笑顔と笑う仕草」のイメージと結びつけ

ることができることを示すにとどまり,「ふふ」の語から直ちに特定の

観念が生じることをうかがわせるものではない。

したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。

イ 被控訴人標章2について

控訴人は,被控訴人標章2において,被控訴人標章2を構成する「雲

風々」の部分は,識別力がないのに対し,被控訴人標章2を構成す

る「ufufu」の部分は,「うふふ」の欧文字における読みであって,識

別力があり,それ自体需要者の注意を引く部分であるといえるから,被

控訴人標章2の要部に該当する旨主張する。

そこで検討するに,被控訴人標章2は,別紙被控訴人標章目録2記載

のとおり,「雲風々」の漢字3字と「ufufu」の欧文字の小文字5字が

横書きに書してなり,「雲風々」の部分と「ufufu」の部分との間に空

白があるから,その外観上,「雲風々」の部分と「ufufu」の部分がそ

れを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可

分的に結合しているものとまでは認め難い。

しかるところ,被控訴人標章2の「ufufu」の部分から「ウフフ」の

称呼が自然に生じるのに対し,「雲風々」の部分は,これを音読みする

と「ウンフウフウ」,訓読みすると「クモカゼカゼ」となるが,いずれ



も馴染みのある称呼であるとはいえない。

一方で,旅館名を表示する場合,漢字名の名称にローマ字を併記して

その読みを表したり,外国人宿泊向けに英訳した名称を漢字名の名称に

併記することは普通に行われていることである。

そうすると,被控訴人標章2が本件商標の指定役務である「宿泊施設

の提供」に使用された場合,取引者,需要者は,「ufufu」の部分は,「雲

風々」の部分の読みが「ウフフ」であることを表したものと理解するの

が通常であるものと認められる。

加えて,被控訴人標章2を全体としてみた場合,漢字で構成される「雲

風々」の部分と欧文字の小文字で構成される「ufufu」の部分の文字の

大きさ及び配置に照らし,その外観上,「ufufu」の部分は取引者,需

要者に対し上記指定役務の出所を示す識別標識として強く支配的な印

象を与えるものと認めることはできない。かえって,「雲風々」の部分

の方がそのような支配的な印象を与えるものといえる。

以上を総合すると,被控訴人標章2において,「ufufu」の部分は,「雲

風々」の部分の読みが「ウフフ」であることを表したものであり,当該

部分が需要者の注意を引く要部であるものと認めることができない。

したがって,控訴人の上記主張は理由がない。

ufufu」の部分は「雲

風々」の部分の読みが「ウフフ」であることを表したものと認められる

から,被控訴人標章2全体から「ウフフ」の称呼が生じる。

また,被控訴人標章2の「雲風々」の部分から「雲」と「風」を想起

させるものといえるが,「雲風々」が一つの成語ないし熟語として特定

観念を生ずるものとは認められないから,被控訴人標章2は,特定の

観念を生ずるものとは認められない。

被控訴人らは,この点について,被控訴人標章2から,「雲が風に吹



かれて悠々と流れていく様をみて,ふと旅に出てみたくなった」という

観念と「うふふという自然にこぼれる微笑み」という観念の二つの観念

を生じる旨主張する。

しかしながら,上記のとおり,「雲風々」が一つの成語ないし熟語と

して特定の観念を生ずるものとは認められないし,また,被控訴人標章

2全体から「ウフフ」の称呼が生じるものの,その構成部分である「雲

風々」の外観から受けるイメージと「うふふという自然にこぼれる微笑

み」とを結びつけることには違和感があり,被控訴人標章2全体から「う

ふふという自然にこぼれる微笑み」という観念が生じるものとはいえな

い。

したがって,被控訴人らの上記主張は,理由がない。

ウ 本件商標と被控訴人標章2との類否について

前記ア及びイを前提に,本件商標と被控訴人標章2とを対比すると,

本件商標は,「 」の平仮名2字を横書きに書してなる商標であるの

に対し,被控訴人標章2は,別紙被控訴人標章目録2記載のとおり,「雲

風々」の漢字3字と「ufufu」の欧文字の小文字5字が横書きに書して

なる標章であり,その外観において共通点はなく,両者の外観は著しく

異なるものといえる。

本件商標から生じる「フフ」の称呼と被控訴人標章2から生じる「ウ

フフ」の称呼は,語頭における「ウ」の有無による差異がある。2音か

らなる「フフ」の称呼と3音からなる「ウフフ」の称呼における上記差

異は,両称呼を一連に称呼した場合,称呼全体の語調,語感において異

なる印象を与えるものといえるから,両称呼は,互いに紛れるおそれは

なく,類似しないものと認められる。

控訴人は,この点について,本件商標及び被控訴人標章2の称呼を発

音記号で表記すれば,本件商標は[fufu],被控訴人標章2は[u



fufu]となり,被控訴人標章2において語頭に配された[u]は,

その後2回も繰り返し現れるので,語頭の[u]の印象が希薄になるこ

とは必定であり,本件商標と被控訴人標章2とは,共通した母音と子音

とが繰り返し現れる構成上の特異性により,取引者に共通した印象を与

えるから,称呼において類似する旨主張する。

しかしながら,控訴人の主張は,称呼を発音記号で表記した場合の類

似性を根拠とするものにすぎず,その表記における類似性は,現実に本

件商標及び被控訴人標章2をそれぞれ一連に称呼した場合に取引者,需

要者に与える印象と必ずしも一致するものではなく,むしろ,上記のと

おり,本件商標及び被控訴人標章2は,称呼全体の語調,語感において

異なる印象を与えるものといえるから,控訴人の上記主張は採用するこ

とができない。



被控訴人標章2は,「雲」と「風」を想起させるものといえるが,特定



類似するところはない。

以上によれば,本件商標と被控訴人標章2とは,外観が著しく異なり,

称呼及び観念のいずれの点においても類似しないから,被控訴人標章2

を本件商標の指定役務である「宿泊施設の提供」に使用した場合,その

役務の出所について誤認混同を生じるおそれがあるものと認めること

はできない。

したがって,被控訴人標章2は本件商標と類似する商標(商標法37

条1号)に該当しないから,被控訴人月ヶ瀬が被控訴人旅館の表示とし

て被控訴人標章2を使用する行為は,本件商標権の侵害を構成するもの

ではない。

まとめ



以上によれば,控訴人主張の被控訴人らによる本件商標権の侵害は認めら

れない。



いて

被控訴人DAIKICHIによる被控訴人各表示の使用の有無について

被控訴人月ヶ瀬が静岡県伊豆市月ヶ瀬所在の被控訴人旅館の表示として



控訴人は,被控訴人月ヶ瀬と被控訴人DAIKICHIは代表取締役が共

通し,被控訴人両名は,共同して被控訴人旅館を運営しているものと考えら

れるから,被控訴人DAIKICHIも,被控訴人月ヶ瀬と共に,被控訴人

各表示を使用しているものといえる旨主張する。



IKICHIが被控訴人月ヶ瀬と共同して被控訴人旅館を運営し,被控訴人

各表示を使用しているものと認めることはできないから,控訴人の上記主張

は理由がない。

控訴人各表示の周知性について

控訴人が平成19年12月に静岡県熱海市において控訴人旅館を開業した

こと,控訴人が控訴人旅館の表示として控訴人各表示を使用していることは,



控訴人は,@控訴人各表示は,テレビ,雑誌,インターネット上等で数多

く紹介,案内されており,平成20年から平成24年までの5年間のデータ

によれば,控訴人旅館の年間販売客室数,利用者数,年間売上高等の数字が

おおむね右肩上がりの伸びを示していること,A日本最大の旅行代理店であ

るJTBのパンフレット「優雅 華やぎ」の平成23年春夏号において,「熱

海 ふふ」(控訴人旅館)が掲載され,同年秋〜平成24年冬号,同年春夏

号及び同年秋〜平成25年冬号においても同様に掲載されていること,Bイ



ンターネット上の「旅館紹介サイト」である「一休.com」において,「熱海

ふふ」(控訴人旅館)は,平成22年から平成24年まで東日本エリアにお

ける旅館部門での販売額ランキングにおいて連続して3位を獲得しているこ

とからすると,控訴人各表示は,平成24年7月時点において,静岡県伊豆

地方に所在する高級旅館である控訴人旅館の表示として,需要者である顧客

及び旅行業者の間に広く認識されており,周知の商品等表示である旨主張す

る。

そこで検討するに,甲35(控訴人作成の控訴人の財務データ)には,控

訴人の2008年度(平成20年度)における販売客室数が4167室,利

用者数が8450名,売上高が4億8363万6926円,2009年度(平

成21年度)における販売客室数が5769室,利用者数が1万1793名,

売上高が6億3617万9101円,2010年度(平成22年度)におけ

る販売客室数が6728室,利用者数が1万3755名,売上高が7億07

72万9022円,2011年度(平成23年度)における販売客室数が6

646室,利用者数が1万3494名,売上高が6億9855万5126円,

2012年度(平成24年度)における販売客室数が7141室,利用者数

が1万4425名,売上高が7億4319万6984円との記載がある。

甲35の上記記載によれば,2008年度ないし2012年度の5年間に

おける控訴人旅館の延べ利用者数は合計6万1917名となる。

しかしながら,控訴人旅館の上記利用者数等と全国の宿泊施設の利用者数

等との関係等に係る証拠は提出されていないことからすると,控訴人旅館の

上記利用者数等から直ちに控訴人各表示が平成24年7月時点において控訴

人旅館の表示として需要者である顧客及び旅行業者の間に広く認識されてい

るものと認めることはできない。

また,証拠(甲21,22ないし25の各1,2)によれば,JTBのパ

ンフレット「優雅 華やぎ」の平成23年春夏号,同年秋〜平成24年冬号,



同年春夏号及び同年秋〜平成25年冬号に控訴人旅館が「熱海 ふふ」ある
あ た み
いは「熱海 ふふ」として掲載されていることが認められるが,上記各パン
フレットには,他にも多数の宿泊施設が掲載されていることがうかがわれ,

控訴人旅館はその中の一つとして掲載されているにすぎないものといえる。

JTB以外の他の主な旅行代理店のパンフレットにおいて控訴人各表示が掲

載されていることをうかがわせる証拠は提出されていない。

さらに,証拠(甲8,26,27の1ないし4)によれば,「旅館紹介サ

イト」である「一休.com」において,「熱海 ふふ」(控訴人旅館)は,平

成22年から平成24年まで東日本エリアにおける旅館部門での販売額ラン

キングが3位であったことが認められるものの,ここでの調査対象は,そも

そも,「一休.com」のサイトを通じて申込みのあった範囲にとどまるもので

あり,しかも,宿泊施設であるホテルやリゾート施設を除く,「旅館」に限

られている。

以上によれば,控訴人が挙げる上記@ないしBの事情は,宿泊施設の需要

者において,控訴人旅館が一定程度知られていたことを示すものとはいえる

が,上記@ないしBの事情から控訴人各表示が平成24年7月時点において

需要者の間に広く認識されていたものとまで認めることはできない。他にこ

れを認めるに足りる証拠はない。

したがって,控訴人各表示が周知の商品等表示であるとの控訴人の上記主

張は,理由がない。

控訴人各表示と被控訴人各表示の類否について

本件の事案に鑑み,控訴人各表示と被控訴人各表示の類否についても,更

に検討することとする。

ある商品等表示が不競法2条1項1号にいう他人の商品等表示と類似の

ものに当たるか否かについては,取引の実情の下において,取引者又は需要

者が両表示の外観称呼又は観念に基づく印象,記憶,連想等から両者を全



体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否かを基準として判断す

るのが相当である(最高裁昭和58年10月7日第二小法廷判決・民集37

巻8号1082頁,最高裁昭和59年5月29日第三小法廷判決・民集38

巻7号920頁参照)。

ア 控訴人表示1について

控訴人は,控訴人表示1のうち,「熱海」の部分は旅館の存在する温

泉地名であり,商品等表示としての識別力はなく,他方,「ふふ」の部

分は,大きく記載されたロゴ文字であり,商品等表示としての識別力

有し,需要者の注意を引く部分であるといえるから,控訴人表示1の要

部に該当する旨主張する。

そこで検討するに,控訴人表示1は,別紙控訴人表示目録1記載のと

おり,「熱海」の漢字2字と「ふふ」の平仮名2字及び記号とを横書き

に書してなり,「ふふ」の各文字は,「熱海」の各文字と字体が異なる

特徴的な字体であり,しかも,文字の大きさが「熱海」の各文字よりも

はるかに大きく,また,文字の配置においても,「ふふ」の前に「熱海」

が付加された構成態様となっている。

そうすると,控訴人表示1では,「熱海」の部分と「ふふ」の部分と

がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど

不可分的に結合しているものとまではいえない。

そして,控訴人表示1の上記構成態様に加えて,控訴人表示1は,静

岡県熱海市所在の控訴人旅館の表示として使用されているものであ



地又は温泉地名を表すものと認識され,自他役務を識別する機能は弱い

ことに照らすと,控訴人表示1のうち「ふふ」の部分が,取引者,需要

者に対し自他役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるも

のと認められるから,控訴人表示1の要部に該当するものと認められる。



被控訴人らは,これに対し,温泉地にある旅館の場合,取引者又は需

要者は旅館を選択する際に当該旅館がどの温泉地に所在するかという

点を重視するため,インターネット上の旅行サイトや旅行会社のパンフ

レットにおいては温泉地ごとに分類して旅館を紹介していること,控訴

人自身,「熱海」の文字部分を「ふふ」と常に一緒に表記していること

からすると,控訴人表示1の構成部分を全体として観察すべきであっ

て,「ふふ」の部分は要部に該当しない旨主張する。

しかしながら,需要者が旅館を選択する際に何を重視するかという点

と需要者が旅館の表示においてどの部分に注意が引かれるかという点

は別個の問題であること,上記認定のとおり,控訴人表示1のうち「ふ

ふ」の部分が,取引者,需要者に対し自他役務の出所識別標識として強

く支配的な印象を与えるものと認められ,需要者の注意を引く部分であ

るといえることからすると,被控訴人らの上記主張は,理由がない。

控訴人表示1は,その要部である「ふふ」の部分から「フフ」の称呼

が生じ,また,控訴人表示1全体から「アタミフフ」の称呼が生じる。

「ふふ」の語は,造語であり,特定の観念を生ずるものとは認められ



イ 控訴人表示2について

控訴人は,控訴人表示2のうち「ふふ」の部分が需要者の注意を引く

部分であるといえるから,控訴人表示2の要部に該当する旨主張する。

そこで検討するに,控訴人表示2は,別紙控訴人表示目録2記載のと

おり,「熱海」の漢字2字と「ふふ」の平仮名2字を横書きに書してな

り,「熱海」の部分と「ふふ」の部分との間に空白があるから,その外

観上,「熱海」の部分と「ふふ」の部分がそれを分離して観察すること

が取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと

までは認め難い。



そして,控訴人表示2の上記構成態様に加えて,控訴人表示2は,静

岡県熱海市所在の控訴人旅館の表示として使用されているものであ



地又は温泉地名を表すものと認識され,自他役務を識別する機能は弱い

ことに照らすと,控訴人表示2のうち「ふふ」の部分が,取引者,需要

者に対し自他役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるも

のと認められるから,控訴人表示2の要部に該当するものと認められる。

これに反する被控訴人らの主張は,前記アで述べたのと同様に理由が

ない。

控訴人表示2は,その要部である「ふふ」の部分から「フフ」の称呼

が生じ,また,控訴人表示2全体から「アタミフフ」の称呼が生じる。

「ふふ」の語は,造語であり,特定の観念を生ずるものとは認められ



ウ 控訴人表示3について

控訴人は,控訴人表示3のうち「ふふ」の部分が需要者の注意を引く

部分であるといえるから,控訴人表示3の要部に該当する旨主張する。

そこで検討するに,控訴人表示3は,別紙控訴人表示目録3記載のと

おり,「熱海」の漢字2字と「ふふ」の平仮名2字を縦書きに書してな

り,「熱海」の部分と「ふふ」の部分は,2列に分けて,間隔をおいて

配置されているから,その外観上,「熱海」の部分と「ふふ」の部分が

それを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不

可分的に結合しているものとまでは認め難い。

そして,控訴人表示3の上記構成態様に加えて,控訴人表示3は,静

岡県熱海市所在の控訴人旅館の表示として使用されているものであ



地又は温泉地名を表すものと認識され,自他役務を識別する機能は弱い



ことに照らすと,控訴人表示3のうち「ふふ」の部分が,取引者,需要

者に対し自他役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるも

のと認められるから,控訴人表示3の要部に該当するものと認められる。

これに反する被控訴人らの主張は,前記アで述べたのと同様に理由が

ない。

控訴人表示3は,その要部である「ふふ」の部分から「フフ」の称呼

が生じ,また,控訴人表示3全体から「アタミフフ」の称呼が生じる。

「ふふ」の語は,造語であり,特定の観念を生ずるものとは認められ



エ 控訴人表示1と被控訴人各表示の類否について

被控訴人表示1について

a 控訴人は,被控訴人表示1には,大きな文字で「雲風々」とあるが,

当該文字は通常人が読むことができず,識別力が低いと考えられ,ま

た,「月ヶ瀬」は,旅館の存在する温泉地名であり,識別力はないか

ら,被控訴人表示1のうち「―うふふ―」の部分が,商品等表示とし

ての識別力を有し,要部に該当する旨主張する。

そこで検討するに,被控訴人表示1は,別紙被控訴人表示目録1記

載のとおり,「雲風々」の草書体の漢字3字,「―うふふ―」の平仮

名3字,「月ヶ瀬温泉」の漢字5字が縦書きに書してなり,「雲風々」

の部分,「―うふふ―」の部分及び「月ヶ瀬温泉」の部分が,3列に

分けて配置され,「雲風々」の部分は,大きく表記され,「―うふふ

―」の部分及び「月ヶ瀬温泉」の部分は,その左横下方に小さく表記

されている。

被控訴人表示1の上記構成態様に鑑みると,被控訴人表示1の外観

上,「―うふふ―」の部分と「雲風々」の部分及び「月ヶ瀬温泉」の

部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われ



るほど不可分的に結合しているものとまではいえないが,「―うふふ

―」の部分は,特に目立つものではなく,取引者,需要者に対し役務

の出所を示す識別標識として強く支配的な印象を与えるものとはい

えない。

また,被控訴人表示1のうち,「月ヶ瀬温泉」の部分は,「ツキガ

セオンセン」との称呼が自然に生じるのに対し,「雲風々」の部分は,

これを音読みすると「ウンフウフウ」,訓読みすると「クモカゼカゼ」

となるが,いずれも馴染みのある称呼であるとはいえないこと,大き

く表記された「雲風々」の部分の左横に「―うふふ―」の部分が小さ

く表記されていることからすると,取引者,需要者は,「―うふふ―」

の部分は,「雲風々」の部分の読みが「ウフフ」であることを表した

ものと理解するのが通常であるものと認められる。

以上によれば,被控訴人表示1において,「―うふふ―」の部分

は,「雲風々」の部分の読みが「ウフフ」であることを表したもので

あり,当該部分が需要者の注意を引く要部であるものと認めることが

できないから,控訴人の上記主張は理由がない。

b 前記aによれば,被控訴人表示1全体から,「ウフフ ツキガセオ

ンセン」の称呼が生じる。

また,被控訴人表示1は,静岡県伊豆市月ヶ瀬所在の被控訴人旅館



のうち「月ヶ瀬温泉」の部分は被控訴人旅館の所在地又は温泉地名を

表すものと認識されるものといえる。

一方で,「雲風々」の部分から「雲」と「風」を想起させるものと

いえるが,「雲風々」が一つの成語ないし熟語として特定の観念を生

ずるものとは認められないことからすると,被控訴人表示1全体とし

ては,特定の観念を生ずるものとは認められない。



被控訴人表示2について

a 控訴人は,被控訴人表示2においては,「うふふ」の部分が,商品

等表示としての識別力を有し,要部に該当する旨主張する。

そこで検討するに,被控訴人表示2は,別紙被控訴人表示目録2記

載のとおり,「月ヶ瀬温泉」の漢字5字,「雲風々」の漢字3字,「―

うふふ―」の平仮名3字が横書きに書してなり,「月ヶ瀬温泉」の部

分,「雲風々」の部分及び「―うふふ―」の部分との間にはそれぞれ

空白がある。

被控訴人表示2の上記構成態様に鑑みると,被控訴人表示2の外観

上,「―うふふ―」の部分と「月ヶ瀬温泉」の部分及び「雲風々」の

部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われ

るほど不可分的に結合しているものとまではいえない。

しかるところ,被控訴人表示2のうち,「月ヶ瀬温泉」の部分

は,「ツキガセオンセン」との称呼が自然に生じるのに対し,「雲風

々」の部分は,これを音読みすると「ウンフウフウ」 訓読みすると
, 「ク

モカゼカゼ」となるが,いずれも馴染みのある称呼であるとはいえな

いこと,「雲風々」の部分の右横に「―うふふ―」の部分が近接して

表記されていることからすると,取引者,需要者は,「―うふふ―」

の部分は,「雲風々」の部分の読みが「ウフフ」であることを表した

ものと理解するのが通常であるものと認められる。

加えて,被控訴人表示2を全体としてみた場合,漢字で構成され

る「雲風々」の部分と「―うふふ―」の部分の文字の大きさ及び配置

に照らし,その外観上,「―うふふ―」の部分は,特に目立つもので

はなく,取引者,需要者に対し役務の出所を示す識別標識として強く

支配的な印象を与えるものとはいえない。

以上によれば,被控訴人表示2において,「―うふふ―」の部分



は,「雲風々」の部分の読みが「ウフフ」であることを表したもので

あり,当該部分ないし「うふふ」の部分が需要者の注意を引く要部で

あるものと認めることができないから,控訴人の上記主張は理由がな

い。

b 前記aによれば,被控訴人表示2全体から,「ツキガセオンセン ウ

フフ」の称呼が生じる。

また,被控訴人表示2は,静岡県伊豆市月ヶ瀬所在の被控訴人旅館



のうち「月ヶ瀬温泉」の部分は被控訴人旅館の所在地又は温泉地名を

表すものと認識されるものといえる。

一方で,「雲風々」の部分から「雲」と「風」を想起させるものと

いえるが,「雲風々」が一つの成語ないし熟語として特定の観念を生

ずるものとは認められないことからすると,被控訴人表示2全体とし

ては,特定の観念を生ずるものとは認められない。

被控訴人表示3について

a 控訴人は,被控訴人表示3においては,「うふふ」の部分が,商品

等表示としての識別力を有し,要部に該当する旨主張する。

そこで検討するに,被控訴人表示3は,別紙被控訴人表示目録3記

載のとおり,「雲風々」の漢字3字,「―ufufu―」の欧文字の小文

字5字,「(うふふ)」の括弧書きの平仮名3字が横書きに書してな

るものである。

被控訴人表示3の上記構成態様に加えて,被控訴人表示3は,静岡

県伊豆市月ヶ瀬所在の被控訴人旅館の表示として使用されているこ



すると「ウンフウフウ」,訓読みすると「クモカゼカゼ」となるが,

いずれも馴染みのある称呼であるとはいえないこと,旅館名を表示す



る場合,漢字名の名称にローマ字を併記してその読みを表したり,外

国人宿泊向けに英訳した名称を漢字名の名称に併記することは普通

に行われていることに鑑みると,取引者,需要者は,「―ufufu―」

の部分及び「(うふふ)」の部分は,いずれも「雲風々」の部分の読

みが「ウフフ」であることを表したものと理解するのが通常であるも

のと認められる。

したがって,取引者,需要者は,被控訴人表示3全体をもって一つ

の表示として認識するものと認められ,被控訴人表示3の構成の一部

である「(うふふ)」の部分ないし「うふふ」の部分が,要部である

ものと認めることができないから,控訴人の上記主張は理由がない。

b 前記a認定のとおり,被控訴人表示3において,「―ufufu―」の部

分及び (うふふ) の部分は,
「 」 いずれも「雲風々」の部分の読みが「ウ

フフ」であることを表したものと認められるから,被控訴人表示3全

体から「ウフフ」の称呼が生じる。

また,被控訴人表示3の「雲風々」の部分から「雲」と「風」を想

起させるものといえるが,「雲風々」が一つの成語ないし熟語として

特定の観念を生ずるものとは認められないから,被控訴人表示3は,

特定の観念を生ずるものとは認められない。

被控訴人表示4について

a 控訴人は,被控訴人表示4においては,「うふふ」の部分が,商品

等表示としての識別力を有し,要部に該当する旨主張する。

そこで検討するに,被控訴人表示4は,別紙被控訴人表示目録4記

載のとおり,「tsukigase spa ufufu」の英文,「雲風々」の漢字

3字,「〜うふふ〜」の平仮名3字を横書きに書してなるものである。

したのと同様の理由により,取引者,需要者は,被

控訴人表示4のうちの「〜うふふ〜」の部分は「雲風々」の部分の読



みが「ウフフ」であることを表したものと理解するのが通常であるも

のと認められるから,「〜うふふ〜」の部分ないし「うふふ」の部分

を要部と認めることはできない。

したがって,控訴人の上記主張は理由がない。

b 被控訴人表示4においては,「tsukigase spa ufufu」の部分か

ら「ツキガセ スパ ウフフ」の称呼が生じ,また,「雲風々」の部

分及び「〜うふふ〜」の部分から一体として「ウフフ」の称呼が生じ

るものと認められる。

また,被控訴人表示4は,静岡県伊豆市月ヶ瀬所在の被控訴人旅館



の「tsukigase spa ufufu」の部分は,「雲風々」の部分の英訳を

示したものであること,「tsukigase spa」の語は「月ヶ瀬温泉」を

意味することに鑑みると,被控訴人表示4のうち「tsukigase spa」

の部分は被控訴人旅館の所在地又は温泉地名を表すものと認識され

るものといえる。

一方で,「雲風々」の部分から「雲」と「風」を想起させるものと

いえるが,「雲風々」が一つの成語ないし熟語として特定の観念を生

ずるものとは認められないことからすると,被控訴人表示4全体とし

ては,特定の観念を生ずるものとは認められない。

被控訴人表示5について

a 控訴人は,被控訴人表示5においては,「ufufu」の部分が,商品等

表示としての識別力を有し,要部に該当する旨主張する。

そこで検討するに,被控訴人表示5は,別紙被控訴人表示目録5記

載のとおり,「Tsukigase Spa ufufu」の英文と「雲風々」の漢字

3字を横書きに書してなるものである。

aで説示したのと同様の理由により,取引者,需要者は,被



控訴人表示5のうちの「ufufu」の部分は「雲風々」の部分の読みが「ウ

フフ」であることを表したものと理解するのが通常であるものと認め

られるから,「ufufu」の部分を要部と認めることはできない。

したがって,控訴人の上記主張は理由がない。

b 被控訴人表示5においては,その全体から「ツキガセ スパ ウフ

フ」の称呼が生じるものと認められる。



全体としては,特定の観念を生ずるものとは認められない。

被控訴人表示6について

a 控訴人は,被控訴人表示6においては,「ufufu」の部分が,商品等

表示としての識別力を有し,要部に該当する旨主張する。

そこで検討するに,被控訴人表示6は,別紙被控訴人表示目録6記

載のとおり,「Tsukigase Spa ufufu」の英文と「雲風々」の草書

体の漢字3字を2段に横書きに書してなるものである。



控訴人表示6のうちの「ufufu」の部分は「雲風々」の部分の読みが「ウ

フフ」であることを表したものと理解するのが通常であるものと認め

られるから,「ufufu」の部分を要部と認めることはできない。

したがって,控訴人の上記主張は理由がない。

b 被控訴人表示6においては,その全体から「ツキガセ スパ ウフ

フ」の称呼が生じるものと認められる。



全体としては,特定の観念を生ずるものとは認められない。

控訴人表示1と被控訴人表示1との類否について

a 控訴人表示1と被控訴人表示1とを対比すると,控訴人表示1は,

別紙控訴人表示目録1記載のとおり,「熱海」の漢字2字と「ふふ 」



の平仮名2字及び記号とを横書きに書してなるのに対し,被控訴人表

示1は,別紙被控訴人表示目録1記載のとおり,「雲風々」の草書体

の漢字3字,「―うふふ―」の平仮名3字,「月ヶ瀬温泉」の漢字5

字が縦書きに書してなるものであり,両者の外観は著しく異なるもの

といえる。

b 控訴人表示1の要部である「ふふ」から生じる「フフ」の称呼(前

ツキガセオンセン」



と認められる。

c 控訴人表示1の要部から特定の観念を生じるものではなく(前記ア




d 以上によれば,控訴人表示1と被控訴人表示1とは,外観が著しく

異なり,称呼及び観念のいずれの点においても類似しないから,相紛

らわしいものとは認められない。

したがって,取引者又は需要者は控訴人表示1と被控訴人表示1と

を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるものと認められ

ないから,被控訴人表示1は,控訴人表示1と類似の商品等表示(不

競法2条1項1号)に該当しない。

控訴人表示1と被控訴人表示2との類否について

a 控訴人表示1と被控訴人表示2とを対比すると,控訴人表示1は,

別紙控訴人表示目録1記載のとおり,「熱海」の漢字2字と「ふふ 」

の平仮名2字及び記号とを横書きに書してなるのに対し,被控訴人表

示2は,別紙被控訴人表示目録2記載のとおり,「月ヶ瀬温泉」の漢

字5字,「雲風々」の漢字3字,「―うふふ―」の平仮名3字が横書

きに書してなるものであり,両者の外観は著しく異なるものといえる。



b 控訴人表示1の要部である「ふふ」から生じる「フフ」の称呼(前

ウフフ」



と認められる。

c 控訴人表示1の要部から特定の観念を生じるものではなく(前記ア

2から特定の観念を生じるものではないか



d 以上によれば,控訴人表示1と被控訴人表示2とは,外観が著しく

異なり,称呼及び観念のいずれの点においても類似しないから,相紛

らわしいものとは認められない。

したがって,取引者又は需要者は控訴人表示1と被控訴人表示2と

を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるものと認められ

ないから,被控訴人表示2は,控訴人表示1と類似の商品等表示(不

競法2条1項1号)に該当しない。

控訴人表示1と被控訴人表示3との類否について

a 控訴人表示1と被控訴人表示3とを対比すると,控訴人表示1は,

別紙控訴人表示目録1記載のとおり,「熱海」の漢字2字と「 ふふ」

の平仮名2字及び記号とを横書きに書してなるのに対し,被控訴人表

示3は,別紙被控訴人表示目録3記載のとおり,「雲風々」の漢字3

字,「―ufufu―」の欧文字の小文字5字,「(うふふ)」の括弧書

きの平仮名3字が横書きに書してなるものであり,両者の外観は著し

く異なるものといえる。

b 控訴人表示1の要部である「ふふ」から生じる「フフ」の称呼(前




それはなく,類似しないものと認められる。



c 控訴人表示1の要部から特定の観念を生じるものではなく(前記ア



,両者は,観念において類似するところはない。

d 以上によれば,控訴人表示1と被控訴人表示3とは,外観が著しく

異なり,称呼及び観念のいずれの点においても類似しないから,相紛

らわしいものとは認められない。

したがって,取引者又は需要者は控訴人表示1と被控訴人表示3と

を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるものと認められ

ないから,被控訴人表示3は,控訴人表示1と類似の商品等表示(不

競法2条1項1号)に該当しない。

控訴人表示1と被控訴人表示4の類否について

a 控訴人表示1と被控訴人表示4とを対比すると,控訴人表示1は,

別紙控訴人表示目録1記載のとおり,「熱海」の漢字2字と「ふふ 」

の平仮名2字及び記号とを横書きに書してなるのに対し,被控訴人表

示4は,別紙被控訴人表示目録4記載のとおり,「tsukigase spa

ufufu」の英文,「雲風々」の漢字3字,「〜うふふ〜」の平仮名3

字を横書きに書してなるものであり,両者の外観は著しく異なるもの

といえる。

b 控訴人表示1の要部である「ふふ」から生じる「フフ」の称呼(前

スパ ウフフ」又

は「ウフフ」の称呼(前記

と同様の理由により,互いに紛れるおそれはなく,類似しないものと

認められる。

c 控訴人表示1の要部から特定の観念を生じるものではなく(前記ア





d 以上によれば,控訴人表示1と被控訴人表示4とは,外観が著しく

異なり,称呼及び観念のいずれの点においても類似しないから,相紛

らわしいものとは認められない。

したがって,取引者又は需要者は控訴人表示1と被控訴人表示4と

を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるものと認められ

ないから,被控訴人表示4は,控訴人表示1と類似の商品等表示(不

競法2条1項1号)に該当しない。

控訴人表示1と被控訴人表示5の類否について

a 控訴人表示1と被控訴人表示5を対比すると,控訴人表示1は,別

紙控訴人表示目録1記載のとおり,「熱海」の漢字2字と「ふふ 」

の平仮名2字及び記号とを横書きに書してなるのに対し,被控訴人表

示5は,別紙被控訴人表示目録5記載のとおり,「Tsukigase Spa

ufufu」の英文と「雲風々」の漢字3字を横書きに書してなるもので

あり,両者の外観は著しく異なるものといえる。

b 控訴人表示1の要部である「ふふ」から生じる「フフ」の称呼(前

スパ ウフフ」の



認められる。

c 控訴人表示1の要部から特定の観念を生じるものではなく(前記ア




d 以上によれば,控訴人表示1と被控訴人表示5とは,外観が著しく

異なり,称呼及び観念のいずれの点においても類似しないから,相紛

らわしいものとは認められない。

したがって,取引者又は需要者は控訴人表示1と被控訴人表示5と

を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるものと認められ



ないから,被控訴人表示5は,控訴人表示1と類似の商品等表示(不

競法2条1項1号)に該当しない。

控訴人表示1と被控訴人表示6の類否について

a 控訴人表示1と被控訴人表示6を対比すると,控訴人表示1は,別

紙控訴人表示目録1記載のとおり,「熱海」の漢字2字と「ふふ 」

の平仮名2字及び記号とを横書きに書してなるのに対し,被控訴人表

示6は,別紙被控訴人表示目録6記載のとおり,「Tsukigase Spa

ufufu」の英文と「雲風々」の草書体の漢字3字を2段に横書きに書

してなるものであり,両者の外観は著しく異なるものといえる。

b 控訴人表示1の要部である「ふふ」から生じる「フフ」の称呼(前

スパ ウフフ」又



似しないものと認められる。

c 控訴人表示1の要部から特定の観念を生じるものではなく(前記ア




d 以上によれば,控訴人表示1と被控訴人表示6とは,外観が著しく

異なり,称呼及び観念のいずれの点においても類似しないから,相紛

らわしいものとは認められない。

したがって,取引者又は需要者は控訴人表示1と被控訴人表示6と

を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるものと認められ

ないから,被控訴人表示6は,控訴人表示1と類似の商品等表示(不

競法2条1項1号)に該当しない。

オ 控訴人表示2と被控訴人各表示の類否について

控訴人表示2と被控訴人表示1との類否について

控訴人表示2と被控訴人表示1とを対比すると,控訴人表示2は,別



紙控訴人表示目録2記載のとおり,「熱海」の漢字2字と「ふふ」の平

仮名2字を横書きに書してなるのに対し,被控訴人表示1は,別紙被控

訴人表示目録1記載のとおり,「雲風々」の草書体の漢字3字,「―う

ふふ―」の平仮名3字,「月ヶ瀬温泉」の漢字5字が縦書きに書してな

るものであり,両者の外観は著しく異なるものといえる。

と同様の理由により,控訴人表

示2と被控訴人表示1とは,称呼及び観念のいずれにおいても類似しな

い。

そうすると,控訴人表示2と被控訴人表示1とは,外観が著しく異な

り,称呼及び観念のいずれの点においても類似しないから,相紛らわし

いものとは認められない。

したがって,取引者又は需要者は控訴人表示2と被控訴人表示1とを

全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるものと認められない

から,被控訴人表示1は,控訴人表示2と類似の商品等表示(不競法2

条1項1号)に該当しない。

控訴人表示2と被控訴人表示2との類否について

控訴人表示2と被控訴人表示2とを対比すると,控訴人表示2は,別

紙控訴人表示目録2記載のとおり,「熱海」の漢字2字と「ふふ」の平

仮名2字を横書きに書してなるのに対し,被控訴人表示2は,別紙被控

訴人表示目録2記載のとおり,「月ヶ瀬温泉」の漢字5字,「雲風々」

の漢字3字,「―うふふ―」の平仮名3字が横書きに書してなるもので

あり,両者の外観は著しく異なるものといえる。



示2と被控訴人表示2とは,称呼及び観念のいずれにおいても類似しな

い。

そうすると,控訴人表示2と被控訴人表示2とは,外観が著しく異な



り,称呼及び観念のいずれの点においても類似しないから,相紛らわし

いものとは認められない。

したがって,取引者又は需要者は控訴人表示2と被控訴人表示2とを

全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるものと認められない

から,被控訴人表示2は,控訴人表示2と類似の商品等表示(不競法2

条1項1号)に該当しない。

控訴人表示2と被控訴人表示3との類否について

控訴人表示2と被控訴人表示3とを対比すると,控訴人表示2は,別

紙控訴人表示目録2記載のとおり,「熱海」の漢字2字と「ふふ」の平

仮名2字を横書きに書してなるのに対し,被控訴人表示3は,別紙被控

訴人表示目録3記載のとおり,「雲風々」の漢字3字,「―ufufu―」

の欧文字の小文字5字,「(うふふ)」の括弧書きの平仮名3字が横書

きに書してなるものであり,両者の外観は著しく異なるものといえる。



示2と被控訴人表示3とは,称呼及び観念のいずれにおいても類似しな

い。

そうすると,控訴人表示2と被控訴人表示3とは,外観が著しく異な

り,称呼及び観念のいずれの点においても類似しないから,相紛らわし

いものとは認められない。

したがって,取引者又は需要者は控訴人表示2と被控訴人表示3とを

全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるものと認められない

から,被控訴人表示3は,控訴人表示2と類似の商品等表示(不競法2

条1項1号)に該当しない。

控訴人表示2と被控訴人表示4との類否について

控訴人表示2と被控訴人表示4とを対比すると,控訴人表示2は,別

紙控訴人表示目録2記載のとおり,「熱海」の漢字2字と「ふふ」の平



仮名2字を横書きに書してなるのに対し,被控訴人表示4は,別紙被控

訴人表示目録4記載のとおり,「tsukigase spa ufufu」の英文,「雲

風々」の漢字3字,「〜うふふ〜」の平仮名3字を横書きに書してなる

ものであり,両者の外観は著しく異なるものといえる。



示2と被控訴人表示4とは,称呼及び観念のいずれにおいても類似しな

い。

そうすると,控訴人表示2と被控訴人表示4とは,外観が著しく異な

り,称呼及び観念のいずれの点においても類似しないから,相紛らわし

いものとは認められない。

したがって,取引者又は需要者は控訴人表示2と被控訴人表示4とを

全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるものと認められない

から,被控訴人表示4は,控訴人表示2と類似の商品等表示(不競法2

条1項1号)に該当しない。

控訴人表示2と被控訴人表示5との類否について

控訴人表示2と被控訴人表示5とを対比すると,控訴人表示2は,別

紙控訴人表示目録2記載のとおり,「熱海」の漢字2字と「ふふ」の平

仮名2字を横書きに書してなるのに対し,被控訴人表示5は,別紙被控

訴人表示目録5記載のとおり,「Tsukigase Spa ufufu」の英文と「雲

風々」の漢字3字を横書きに書してなるものであり,両者の外観は著し

く異なるものといえる。



示2と被控訴人表示5とは,称呼及び観念のいずれにおいても類似しな

い。

そうすると,控訴人表示2と被控訴人表示5とは,外観が著しく異な

り,称呼及び観念のいずれの点においても類似しないから,相紛らわし



いものとは認められない。

したがって,取引者又は需要者は控訴人表示2と被控訴人表示5とを

全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるものと認められない

から,被控訴人表示5は,控訴人表示2と類似の商品等表示(不競法2

条1項1号)に該当しない。

控訴人表示2と被控訴人表示6の類否について

控訴人表示2と被控訴人表示6とを対比すると,控訴人表示2は,別

紙控訴人表示目録2記載のとおり,「熱海」の漢字2字と「ふふ」の平

仮名2字を横書きに書してなるのに対し,被控訴人表示6は,別紙被控

訴人表示目録6記載のとおり,「Tsukigase Spa ufufu」の英文と「雲

風々」の草書体の漢字3字を2段に横書きに書してなるものであり,両

者の外観は著しく異なるものといえる。



示2と被控訴人表示6とは,称呼及び観念のいずれにおいても類似しな

い。

そうすると,控訴人表示2と被控訴人表示6とは,外観が著しく異な

り,称呼及び観念のいずれの点においても類似しないから,相紛らわし

いものとは認められない。

したがって,取引者又は需要者は控訴人表示2と被控訴人表示6とを

全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるものと認められない

から,被控訴人表示6は,控訴人表示2と類似の商品等表示(不競法2

条1項1号)に該当しない。

カ 控訴人表示3と被控訴人各表示の類否について

控訴人表示3は,別紙控訴人表示目録3記載のとおり,「熱海」の漢字

2字と「ふふ」の平仮名2字を縦書きに書してなるものである。





れぞれ説示したのと同様の理由により,控訴人表示3と被控訴人各表示と

は,外観が著しく異なり,称呼及び観念のいずれの点においても類似しな

いから,相紛らわしいものとは認められない。

したがって,取引者又は需要者は控訴人表示3と被控訴人各表示とを全

体的に類似のものとして受け取るおそれがあるものと認められないから,

被控訴人各表示は,控訴人表示3と類似の商品等表示(不競法2条1項

号)に該当しない。

キ 小括

以上のとおり,被控訴人各表示は,いずれも控訴人各表示と類似の商品

等表示(不競法2条1項1号)に該当しない。

まとめ

以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,控訴人主張の被

控訴人らによる不競法2条1項1号の不正競争行為は認められない。

3 結論

以上の次第であるから,控訴人の当審における交換的変更に係る請求はいず

れも理由がない。

したがって,控訴人の上記請求をいずれも棄却することとし,主文のとおり

判決する。



知的財産高等裁判所第4部



裁判長裁判官 富 田 善 範




裁判官 大 鷹 一 郎





裁判官 柵 木 澄 子





(別紙) 旅館目録



所在地 静岡県伊豆市月ヶ瀬499−1

旅館名 「雲風々」(うふふ)





(別紙) 被控訴人標章目録





雲風々 うふふ





雲風々 ufufu





(別紙) 控訴人表示目録










熱海 ふふ
















(別紙) 被控訴人表示目録










月ヶ瀬温泉 雲風々 ― うふふ ―





雲風々 − ufufu −(うふふ)





tsukigase spa ufufu 雲風々 〜うふふ〜




Tsukigase Spa ufufu 雲風々






Tsukigase Spa ufufu