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関連審決 取消2013-300750
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事件 平成 26年 (ワ) 7132号 損害賠償請求事件
東京都渋谷区<以下略>
原告スタイリンク株式会社
同訴訟代理人弁護士 松田純一
同 岡本明子
同 夏苅一
同 西村公芳
同 岩月泰頼
同 若山太郎
同訴訟復代理人弁理士 飯村重樹 東京都中央区<以下略>
被告 ルコライン・ジャパン株式会社
同訴訟代理人弁護士 柴野相雄
同 梅田宏康
同訴訟代理人弁理士 石田昌彦
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2015/02/27
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告は,原告に対し,63万6828円及びこれに対する平成26年3月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は,これを20分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
1事 実 及 び 理 由第1 請求の趣旨1 被告は,原告に対し,1062万3810円及びこれに対する平成26年3月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
第2 事案の概要1 本件は,原告が,被告に対し,被告は,スニーカー等の履物に別紙被告標章目録記載1及び2の標章を使用したことにより,原告の商標権を侵害したとして,商標権侵害の不法行為に基づく損害賠償金1062万3810円(商標法38条3項に基づく損害966万3810円と弁護士費用96万円の合計)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成26年3月30日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
2 前提事実(争いのない事実以外は,証拠等を末尾に記載する。)(1) 当事者ア 原告は,衣料品の縫製及び加工販売,並びに日用品雑貨の販売及び輸出入等を業とする株式会社である(弁論の全趣旨)。
イ 被告は,靴及びアクセサリーの輸出入及び販売等を業とする株式会社である。
(2) 原告の商標権ア 原告は,別紙商標目録記載の商標(以下「本件商標」という。)につき,次の商標権(以下「本件商標権」という。)を有していた(甲1,2)。
登録番号 第4862059号出 願 日 平成16年1月30日登 録 日 平成17年5月13日登録商標 別紙商標目録記載のとおり2商品区分 第25類指定商品 被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物イ 被告は,平成25年9月3日,継続して3年以上日本国内において商標権者である原告,専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが指定商品「第25類 履物」につき本件商標を使用していないことを理由として,商標法50条に基づき,本件商標権に係る商標登録の指定商品中,「第25類 履物」についての登録を取り消す旨の審判(取消2013−300750)を請求し,同月26日,商標権一部取消し審判の 予告登録がされた(以下,同日を「本件予告登録日」という。 )。特許庁は,平成26年4月25日,本件商標権に係る商標登録の指定商品中,「履物」について,その登録を取り消す旨の審決をした(甲1,乙1)。なお,同審決は,既に確定している。
(3) 被告は,平成24年8月より,別紙被告標章目録1又は2記載 の 標 章(以下,同目録の番号に対応して「被告標章1」などといい,これらの標章を併せて「被告各標章」という。)を付したスニーカー等(以下「被告履物」という。)の販売を開始した。
(4) 被告は,平成24年8月から平成25年9月26日(本件予告登録日)までの間に合計1万0346足の被告履物を販売し,その売上高は,合計1億9327万6200円であった。
(5) 株式会社帝国データバンクが行った平成21年の調査によれば,被服及び履物に関する7件の商標につき,正味販売高に対する使用料率の最大値は7.5%,最小値は0.5%であり,平均は4.9%(標準偏差2.5)であった(甲11,乙21)。
3 争点(1) 本件商標と被告各標章との類否(2) 損害不発生の抗弁の成否3(3) 損害額第3 争点に対する当事者の主張1 争点(1)(本件商標と被告各標章との類否)について(原告の主張)(1) 本件商標について本件商標は,横書きの「Agile」という欧文字の大文字1文字及び小文字4文字と,その上に当該文字よりも小さく横書きされた「アジル」という片仮名の組合せである。本件商標のうち「アジル」の部分は,「Agile」の英語又はフランス語での発音を小さく付記したものにすぎず,「Agile」の部分が印象的な語として認識されるものであるから,同部分が本件商標の要部に当たる。
(2) 本件商標と被告標章1との対比ア 外観被告標章1は,「agile」という欧文字の小文字5文字を横書きしたものである。本件商標の要部と被告標章1は,冒頭の欧文字が大文字であるか小文字であるか,文字の間隔及び書体の点で異なるが,一般的な英語表記において,冒頭の文字は大文字でも小文字でも書かれ得ること,文字の間隔に特別な意味はないこと,本件商標及び被告標章1のいずれの書体も何ら特殊なものではないことからすれば,需要者及び取引者において受ける印象に差はなく,本件商標の要部と被告標章1は外観が類似している。
称呼本件商標の要部と被告商標1は欧文字の綴りが一致しており,称呼は同一である。被告は,日本において「agile」の発音は周知されておらず,一般の需要者はローマ字読みの「アギレ」と呼ぶことが通常であるし,被告標章1に「アージレ」と併記することもあるから,被告標章1は本件4商標と称呼において類似しないと主張する。しかし,必ずしもローマ字読みをすることが通常であるとはいえず,被告標章1の称呼として英語やフランス語の「アジル」が生じることは否定できない。また,被告標章1に「アージレ」の文字が含まれていない以上,被告標章1から「アージレ」という称呼は導かれないし,仮に被告標章1の構成に「アージレ」の文字が含まれていたとしても,「agile」の部分からは「アジル」という自然な称呼が生じる。
観念本件商標の要部と被告商標1は欧文字の綴りが一致しており,観念も同一である。「本件商標の要部の上には「アジル」との片仮名が付記されているが,「Agile」が英語及びフランス語で「機敏な」という意味を持つところ,日本において「アジル」は「俊敏,機敏な」の意味としてとらえられているから,観念の同一性に影響はない。
エ したがって,被告標章1は本件商標と類似している。
(3) 本件商標と被告標章2との対比被告標章2は,被告標章1に「by」と「RUCOLINE」を組み合わせたものであるところ,「by」は「a」の下,「g」の下部左側に,「RUCOLINE」は「ile」の下,「g」の下部右側に,「l」の文字の6分の1から7分の1程度の高さでそれぞれ書かれている。このような文字の大きさに加え,「RUCOLINE」との名称が日本の消費者に広く知られたものではないことを考慮すれば,被告標章2の要部は「agile」の部分である。同部分は被告標章1と同一であり,本件商標と被告標章1は類似しているから,被告標章2も本件商標と類似しているといえる。
(4) 誤認混同のおそれ指定商品中,「履物」につき本件商標が使用されていなかったからといって,出所の誤認混同のおそれがなくなるわけではない。また,被告標章2の5「by」及び「RUCOLINE」の存在は,本件商標との類否判断を左右しない。
(5) 以上によれば,本件商標と被告各標章は類似する。そして,被告は ,平成25年9月26日(本件予告登録日)まで,被告各標章を本件商標権に係る商標登録の指定商品中,「第25類 履物」に使用することにより,本件商標権を侵害したものである。
(被告の主張)(1) 本件商標について本件商標のうち「アジル」と「Agile」はほぼ同一の大きさの文字で表記されており,いずれか一方が強調されているものではないから,外観上「Agile」のみが印象的な語として認識されるとはいえない。また,「agile」という単語及びその正確な発音は日本国内において周知されているとはいえないから,一般の需要者はまず「Agile」よりも「アジル」の部分に接し,その後,「Agile」の部分の称呼が「アジル」であると認識するのであり,「アジル」の部分はそれ自体需要者の注意を引く印象的な語であるといえる。したがって,「Agile」の部分は本件商標の要部ではなく,類似の判断においては本件商標全体を観察する必要がある。
(2) 本件商標と被告標章1との対比ア 外観被告標章1は欧文字のみから構成されており,片仮名の「アジル」を含む本件商標とは外観上明らかに異なる上,被告標章1の書体は丸みを帯びているのに対して,本件商標の文書の作成等に広く用いられる平凡な書体であるから,デザイン性においても被告商標1は本件商標と比べて優れている。したがって,本件商標と被告標章1は外観において類似しない。
称呼本件商標の称呼は「アジル」であるところ,「agile」の発音は日6本において周知されておらず,一般の需要者はローマ字読みで「アギレ」と呼ぶことが通常であるし,被告は,被告標章1を付した履物の広告宣伝において,イタリア語の称呼である「アージレ」を併記することもあることから,称呼においても本件商標と被告標章1は類似しない。
観念「agile」は日本において広く周知された単語ではなく,その意味は周知されておらず,「アジル」の意味も周知されてはいないから,一般の需要者において,本件商標及び被告標章1から特定の観念を想起するものではなく,本件商標と被告標章1は観念においても類似しない。
(3) 本件商標と被告標章2との対比ア 被告標章2の「by」及び「RUCOLINE」の部分に接した一般の需要者は,「RUCOLINE」が「agile」の提供主体であることを認識するのであり,「by」及び「RUCOLINE」の部分も注意を引く部分であるといえる。また,被告は,直営店や著名な百貨店において,「RUCOLINE」の標章を付した履物を販売してきたことから,「RUCOLINE」は被告の販売する履物の出所識別機能を有しており,「agile」に比して支配的な印象を与える。したがって,本件商標と被告標章2の類否の判断においては,被告標章2を全体として観察する必要がある。
イ 被告標章2は,被告標章1である「agile」に,「by」及び「RUCOLINE」との特徴的な文字が付加されており,外観において,被告標章1よりも一層本件商標と類似しない。また,称呼の点においても,被告標章2には,「バイ」及び「ルコライン」が追加されていることから,本件商標とは類似しない。さらに,被告標章2に接した一般需要者は,「by」及び「RUCOLINE」の文字により,ルコラインが被告標章2の付された商品の提供主体であるとの観念を想起することから,特定の7観念を想起することができない本件商標とは,観念においても類似しない。
(4) 誤認混同のおそれ本件商標権に係る商標登録の指定商品中,「第25類 履物」についての登録は,不使用を理由に取り消された。したがって,本件商標が実際に使用されていない以上,商品の出所につき誤認混同が生じるおそれはない。
また,被告は,基本的に被告標章2を使用しているところ,被告標章2では「by」及び「RUCOLINE」の部分の出所識別力が大きいから,具体的な使用状況に照らしても,出所の誤認混同が生じるおそれはない。
(5) 以上によれば,本件商標と被告各標章は類似しない。よって,本件商標権の侵害はない。
2 争点(2)(損害の不発生の抗弁の成否)について(被告の主張)本件商標権に係る商標登録の指定商品中,「第25類 履物」についての登録が継続して3年以上使用していないことを理由に取り消されたことからすれば,本件商標に顧客吸引力がないことは明らかであるとともに,本件商標に類似する標章を使用することが第三者の商品の売上げに全く寄与しないことも自明である。
したがって,被告による被告各標章の使用により,原告には,商標法38条3項所定の損害(使用料相当額)は,およそ発生していないというべきである。
(原告の主張)争う。
損害が不発生であるというためには,本件商標権に係る商標登録の指定商品中,「第25類 履物」についての本件商標の不使用だけではなく,被告履物の売上げが専ら被告の営業努力及び被告履物の高品質に起因するものであって,被告各標章の使用が売上げに全く寄与していないことや,被告各標章の使用により原告が本件商標を第三者に使用許諾して使用料を得る可能性を害されたと8いった事情を認める余地がないことを主張,立証しなければならないが,被告は,これらの事実につき一切主張,立証を行っていない。
3 争点(3)(損害額)について(原告の主張)「履物」は,第25類に分類される商品であり,同類に分類される商品に係るライセンス料率は,売上高の5%が相当である。平成24年8月から平成25年9月26日までの被告履物の売上高は1億9327万6200円であるから,原告には商標法38条3項に基づく966万3810円の損害及び弁護士費用相当額96万円の損害が発生している。
本件商標権に係る商標登録の指定商品中,「第25類 履物」について本件商標を使用していなかったからといって,本件商標の顧客吸引力が皆無であるはずはない。また,本件商標は,被服について使用実績があり,履物と被服が現実の商取引において密接に関連することからすれば,本件商標が被服についての使用実績で獲得した顧客吸引力は,履物にも波及している。そうすると,履物についての本件商標の不使用を考慮しても,相当な使用料率が1.5%を下回ることはない。
(被告の主張)使用料率に関する原告の主張は,否認し又は争う。
被告履物の売上げは,専ら「RUCOLINE」及び「ルコライン」の標章の著名性,その宣伝広告及び顧客吸引力並びに被告による品質向上の努力によってもたらされたものであり,被告各標章のうち「agile」の部分は,被告履物の売上げに全く寄与していないことは明らかである。そして,本件商標が履物に使用されたことがないことからすれば,本件商標には業務上の信用も顧客吸引力もない。したがって,本件商標の相当な使用料率は,多くとも0.1%を下回るものというべきである。
第4 当裁判所の判断91 争点(1)(本件商標と被告各標章の類否)について(1) 商標の類否は,同一又は類似の商品に使用された商標が外観観念称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべきであり,かつ,その商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものである。上記のとおり,商標の外観観念又は称呼の類似は,その商標を使用した商品につき出所を誤認混同するおそれを推測させる一応の基準にすぎず,したがって,上記3点のうち類似する点があるとしても,他の点において著しく相違するか,又は取引の実情等によって,何ら商品の出所を誤認混同するおそれが認められないものについては,これを類似商標と解することはできないというべきである(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁,最高裁平成6年(オ)第1102号同9年3月11日第三小法廷判決・民集51巻3号1055頁参照)。
(2) 本件商標についてア 外観本件商標は,下段に横書きの「Agile」という頭文字を大文字にした欧文字を配し,上段に,当該文字よりもやや小さく,横書きの「アジル」という片仮名を配し,両者を上下二段に組み合わせて成るものである。
原告は,欧文字部分のみが要部であると主張するが,欧文字部分のみが支配的な印象を与えるとか,片仮名部分が出所識別機能を有しないとかいうことはできないから,欧文字部分のみを要部として分離観察することはできず,本件商標と被告各標章の対比に当たっては,本件商標全体を対象として両者を比較すべきである。
称呼本件商標から「アジル」との称呼が生じることは争いがない。
観念10「Agile」及び「アジル」の語は,いずれも,日本においてその意味が周知された単語ではないから,本件商標は,特段の観念を生じない。
原告は,「Agile」が英語及びフランス語で「機敏な」という意味を持つことから,本件商標は「俊敏,機敏な」との観念を想起すると主張する。しかし,「Agile」が日本において広く知られた単語であるとか,一般的な取引者及び需要者が,「Agile」から英語又はフランス語の「機敏な」という意味を認識すると認めるに足りる証拠はなく,「アジル」ないし「Agile」の部分から特定の観念が生ずると認めることはできない。この点,原告は,「アジル」が,平成10年時点で,「最近では企業間の競争を左右するキーワードになりつつある。」と説明されていること,及びインターネットの検索エンジンで「アジル」を検索すると,30万件以上のウェブサイトが見つかり,その上位に並ぶウェブサイトに関する企業の多くが「アジル」(agile)を社名に採り入れていることから,日本において相当程度認識された語であると主張する。しかし,証拠(甲14)によれば,企業の広報誌において,慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授である奥村昭博氏により上記説明がなされていることが認められるものの,上記説明は一企業の広報誌に記載されたものであり,この広報誌は同企業のホームページで公開されているとはいえ,広く一般に読まれているとまでは認められず,また,上記説明に客観的な裏付けはなく,個人的見解を超えて共通の認識となっていたものと認めることもできないから,上記説明をもって,日本において相当程度認識されていると認めることはできない。また,証拠(甲15)によれば,「アジル」が社名等に使用されていることが認められるものの,「アジル」ないし「agile」を社名等に使用しているからといって,直ちにその使用者が英語又はフランス語の意味を認識した上で使用しているとまで認めることはできないから,原告の主張は採用することができない。
11(3) 本件商標と被告標章1の対比ア 外観本件商標と被告標章1は,@本件商標には片仮名部分が加わっていること,A本件商標の欧文字部分は頭文字が大文字であること及びB英文字の書体の3点において相違する。
しかし,本件商標の欧文字部分と被告標章1は,文字列として同一であり,その書体はいずれも殊更に特別なものとは認められないから,上記3点の相違を考慮しても,本件商標と被告標章1は外観において類似しているというべきである。
称呼被告標章1は,欧文字の「agile」であり,英語読みすれば「アジル」であるから,「アジル」の称呼を生じ,本件商標と称呼において同一である。
被告は,「agile」の発音は日本において周知されていないことから,一般の需要者は「あぎれ」とローマ字の読み方をすることが通常であると主張する。確かに,「agile」の発音が日本において周知されていると認めるに足りる証拠はないものの,「agile」という単語を知らないとしても,これを英語ととらえ,「アジル」との読み方をする取引者及び需要者も一定程度存在するものと認めるのが相当であり,「agile」を見た一般の取引者又は需要者が,これを直ちに「あぎれ」と読むことが通常であると認めることはできない。
また,被告は,被告履物を販売する際に「アージレ」を併記することがあったことから,本件商標と称呼が異なると主張する。証拠(甲5)によれば,被告が,被告のホームページ等において,イタリア語の称呼である「アージレ」を使用していたことが認められるものの,一方で,被告履物自体や,その包装紙,箱,布袋には,被告標章1又は被告標章2のみが記12載されていることが認められるから(甲4),かかる被告各標章の使用態様に鑑みれば,一般の取引者及び需要者が被告標章1について必ずしもイタリア語の読み方をするものと認めることはできない。
観念本件商標及び被告標章1は,いずれも特定の観念を生じないから,観念の類否は問題とならない。
エ 本件商標と被告商標1は,いずれも特定の観念を生じず,外観において類似し,称呼は同一であるから,被告標章1は本件商標と類似する。被告は,本件商標権に係る商標登録の指定商品中,「履物」についての本件商標の不使用を理由に,本件商標と被告標章1について誤認混同のおそれがないと主張するが,証拠(甲17)によれば,本件商標は他の指定商品である「被服」に使用されていたことが認められるところ,「被服」と「履物」が同じ第25類という商品区分に分類されており,日常取引において少なからず関連性を有すると認められることに鑑みると,本件商標が「履物」に使用されていなかったからといって,直ちに被告標章1との誤認混同のおそれがなかったと認めることはできない。
(4) 本件商標と被告標章2の対比ア 外観被告標章2は,被告標章1の下部に,「agile」の文字よりもかなり小さな文字で「by」「RUCOLINE」の欧文字を配して成るものである。
被告標章2中の「by」 は「agile」の「a」の部分の右下に,「RUCOLINE」の部分は「agile」の「ile」の部分の下に,いずれも「agile」の部分の大きさと比較すると非常に小さく記載されており,証拠(甲4)からうかがえる被告履物又はその包装紙等における被告標章2の実際の使用態様に鑑みても,被告標章2中「agile」13の部分が際立っており,被告履物に付された被告標章2を実際に見た一般の取引者及び需要者は,専ら「agile」の部分を認識するものと認めるのが相当である。
被告は,被告による「RUCOLINE」との標章を付した履物の販売実績に鑑みれば,被告標章2の「by」及び「RUCOLINE」の部分が,出所識別機能を有しており,「agile」の部分に比して支配的な印象を与えると主張する。証拠(乙7ないし9)によれば,平成26年9月時点において,「RUCOLINE」(ルコライン)が,「ELLE」や「VOGUE」など複数の雑誌において紹介されていたことが認められるものの,「RUCOLINE」の標章を付した履物について,上記認定を覆すに足りるほどの販売実績があったことを認めることはできない。したがって,被告標章2のうち「agile」の部分が支配的な印象を与える要部であるといえ,本件商標と被告標章2の類否を判断するに当たっては,被告標章2のうち「agile」の部分と本件商標を比較すべきである。
そして,「agile」の部分が本件商標と外観において類似することは,被告標章1について判断したとおりである。
称呼被告標章2の要部が「agile」の部分であること,同部分から「アジル」の称呼が生じることは前記のとおりであるから,被告標章2からは「アジル・バイ・ルコライン」「アージレ・バイ・ルコライン」等の称呼のほか「アジル」の称呼も生じると認められ,被告標章2と本件商標は,「アジル」の称呼を生じる点において同一である。
観念本件商標及び被告標章2は,いずれも特定の観念を生じないから,観念の類否は問題とならない。
14エ 以上を前提に本件商標と被告標章2の類否を検討するに,被告標章2は,いずれも特定の観念を生じず,外観において類似し,称呼は同一であるから,本件商標と類似する。
被告は,本件商標権に係る商標登録の指定商品中,「履物」についての本件商標の不使用,並びに被告標章2中の「by」及び「RUCOLINE」の部分の出所識別力を理由に,誤認混同が生じるおそれがないと主張する。しかし,上記アで説示したとおり,被告標章2中の「by」及び「RUCOLINE」の記載は,誤認混同の有無に影響せず,また,「履物」についての本件商標の不使用により,誤認混同のおそれが否定されないことは,上記(2)説示のとおりである。
(5) 以上によれば,本件商標と被告各標章は類似するというべきであり,その他,商品の出所を誤認混同するおそれを否定する取引の実情等は認められない。
そして,前記前提事実(4)のとおり,被告は,平成24年8月から平成25年9月26日(本件予告登録日)までの間,被告履物を販売しており,被告履物は本件商標権に係る商標登録の指定商品であった「履物」と同一であるから,被告は,本件商標権を侵害したものといえる。
2 争点(2)(損害の不発生の抗弁の成否)について被告は,本件商標権に係る商標登録の指定商品中,「履物」についての登録が不使用を理由に取り消されたことからすれば,本件商標に顧客吸引力はなく,被告履物の売上げに全く寄与しないことは自明であると主張する。
しかし,本件商標が履物に使用されていなかったからといって,直ちに本件商標の顧客吸引力が皆無であるとまではいえず,上記1(3)で認定したとおり,本件商標が被服に使用されていたことに鑑みても,本件商標には幾分かの顧客吸引力があり,被告履物の売上げに寄与したものと認めるのが相当である。
したがって,被告の主張は採用することができない。
153 争点(3)(損害額)について前記前提事実(4)記載のとおり,平成24年8月から平成25年9月26日(本件予告登録日)までの間に販売された被告履物の売上高は,1億9327万6200円である。
原告は,商標法38条3項に基づく損害を算定するに当たって基礎となる本件商標の使用料率につき,売上高の5%が相当であると主張する。しかし,本件商標が平成25年9月26日から遡って3年間,「履物」に使用されていなかったことからすれば,本件商標の顧客吸引力は必ずしも高いものとはいえず,また,本件商標と被告各標章の称呼は同一であるものの,被告各標章から「アジル」以外の称呼も生じ得ること,並びに平成21年度の調査における被服及び履物に係る商標の正味販売高に対する使用料率の最小値が0.5%であったことにも鑑みれば,本件商標の被告履物の売上高に対する適正な使用料率は0.3%と認めるのが相当である。
以上によれば,被告が被告各標章を付した被告履物を販売したことによる原告の商標法38条3項の損害は,上記売上高に上記使用料率0.3%を乗じて算定され,57万9828円となる。加えて,本件商標権の侵害と相当因果関係のある弁護士費用として5万7000円を相当と認める。
第5 結論以上によれば,原告の請求は,損害賠償金63万6828円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成26年3月30日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,これを認容し,その余の部分は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第29部16裁判長裁判官嶋 末 和 秀裁判官西 村 康 夫裁判官本 井 修 平17(別紙)商標目録以上18(別紙)被告標章目録12以上19
事実及び理由
全容
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