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関連審決 不服2013-18640
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事件 平成 26年 (行ケ) 10267号 商標登録取消審決取消請求事件

原告株式会社太鼓亭
訴訟代理人弁護士清原直己 弁理士清原義博 北本友彦 西村直也 今岡大明
被告特許庁長官
指定代理人土井敬子 田中敬規
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2015/06/18
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の求めた裁判
特許庁が不服2013-18640号事件について平成26年10月21日にした審決を取り消す。
事案の概要
本件は,商標登録出願拒絶査定に対する不服審判請求を成り立たないとした審決の取消訴訟である。争点は,商標法4条1項8号該当性の有無である。
1 特許庁における手続の経緯 原告は,平成24年2月9日,下記商標(以下「本願商標」という。)について,指定商品及び指定役務を,第29類「カレーうどんのもと,油揚げ,魚介類の天ぷら,かつお節,干しえび,焼きのり」,第30類「うどんのめん,その他穀物の加工品,めんつゆその他の調味料,香辛料」及び第43類「飲食物の提供」として,商標登録出願をした(甲1)が,平成25年6月24日付けで拒絶査定を受けた(甲140)ことから,同年9月26日,不服審判請求をした(甲141,143。不服2013-18640号)。
特許庁は,平成26年10月21日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,同年11月5日に原告に送達された。
【本願商標】 2 審決の理由の要点 審決は,次のとおり,本願商標は,商標法4条1項8号に該当すると判断した。
(1) 本願商標の構成について 本願商標は,前記1のとおり,「金比羅製麺」の文字からなるところ,「金比羅」の語は, 「仏法の守護神の一つ,香川県の金刀比羅宮(ことひらぐう)のこと。」を,また,「製麺」の語は,「麺類を製造すること。(ともに,広辞苑第六版)をそれぞ 」れ意味する語であることが認められる。
(2) 「金比羅」の著名性について ア 「金刀比羅宮」について 香川県仲多度郡琴平町所在の「宗教法人金刀比羅宮」が,古くから「こんぴら(金毘羅・金比羅)」に敬称を付して「金毘羅さま」「こんぴらさん」等と親しみを込め ,称されてきたことは,一般に広く知られているといえる。
イ 「金比羅」について 上記アの事実に加え,上記(1)のとおり「金比羅」の文字が「香川県の金刀比羅宮(ことひらぐう)」を意味する語として広辞苑に掲載され,また,広辞苑以外の一般的な辞書にもその意味が掲載されていること, 「金刀比羅宮に参詣すること」を「金比羅参り」と称していることから,本願商標の構成中の「金比羅」の文字は, 「宗教法人金刀比羅宮」の略称として,本願商標の出願時において全国的に知られ,その状態が現在も継続しているものと認められる。
(3) 原告は,「宗教法人金刀比羅宮」から「他人の承諾」を得たものとは認められない。
(4) そうすると,本願商標は,他人の名称(宗教法人金刀比羅宮)の著名な略称(金比羅)を含む商標であって,かつ,当該他人の承諾を得ているものとは認められないものであるから,商標法第4条第1項第8号に該当する。
原告主張の審決取消事由
以下のとおり,「金比羅」は,「宗教法人金刀比羅宮」の著名な「略称」に該当するものではないのに,これに該当するとした審決の判断は,誤りである。
1 商標法4条1項8号は,他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著 「名な雅号,芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。」については,商標登録を受けることができない旨を )規定し,それ以上に何らの要件も規定していない。このことから見て,本号の規定には,誤認混同防止という趣旨はなく,私益である人格的利益を保護する規定である。
そうすると,私益の拡大的保護を排する趣旨から,当該「略称」が他人の名称を表示するものとして「著名」であるときに限り,登録を受けることができ,また「略称」以外の通称,俗称,愛称は,著名であるか否かにかかわらず,私益保護の拡大を排する趣旨から保護されないというべきである。
法人の場合には, 「株式会社」「有限会社」「財団法人」等を含めた名称が同号に , ,いう「他人の名称」に当たり,株式会社等の文字を除いた部分が「他人の名称の略称」に当たる。そうすると, 「宗教法人金刀比羅宮」の「略称」は「金刀比羅宮」のみであり,「金比羅」は,「宗教法人金刀比羅宮」の「略称」の略称,すなわち,俗称,通称,愛称にすぎない。
したがって,「金比羅」は,「宗教法人金刀比羅宮」の「略称」には該当しない。
2(1) 神社等を略称する場合,必ず「さん(様)」等の敬称を付するものであり,「宗教法人金刀比羅宮」を略称する場合には,「金比羅」と呼び捨てでは使用せず,敬称を付して「金比羅さん(様), 」「金比羅宮」等のように使用するのが通常である。
このことは,三重県伊勢市宇治館町所在の伊勢神宮を「お伊勢さん」,愛知県名古屋市熱田区所在の熱田神宮を「熱田さん」長野県諏訪郡下諏訪町所在の諏訪大社を , 「お諏訪さま」「お諏訪さん」 , ,大阪市住吉区所在の住吉大社を「すみよっさん」「住吉 ,さん」と略称することからも明らかである。
そして,敬称等を付さず,「金比羅」と単独で用いる場合には,「香川県仲多度郡琴平町を含む,その周辺地域を示す地名」 「山口県下関市金比羅町を示す地名」又 ,は「福岡県北九州市戸畑区金比羅町を示す地名」をはじめとする,全国各地に存在する「地名」である「金比羅」「金毘羅」「こんぴら」として認識されるものであ , ,る。このことは,上記について, 「伊勢」「熱田」「諏訪」「住吉」などと単独で用 , , ,いた場合には,各神社所在地の周辺地方において,地方を表す地名として認識されていることにも裏付けられる。
このように, 「金比羅」を単独で用いた場合,本願商標における「金比羅」の文字 は地名として認識される。ところが,商標法4条1項8号は人格的利益の保護を目的としたものであるため,地名として認識されるものにまでその範囲は及ばないから,本願商標が同号に該当することはない。
(2) 仮に, 「金比羅」の語が, 「宗教法人金刀比羅宮」を指し示すものであるとしても,被告は, 「金比羅」の語が「宗教法人金刀比羅宮」のみを指し示すことを何ら立証していない。
「金比羅」の語が, 「宗教法人金刀比羅宮」を指し示すとしても,「地名」をも表すことになるため,2つの観念が混在する語であるから,どちらか一方の観念のみに限定して解釈するのは誤りである。
(3) 被告は,一般に使用される辞書において, 「金比羅」の語は, 「金刀比羅宮」を指し示すものと記載されている旨主張する。
確かに,「こんぴら【金比羅・金毘羅】」の見出しの下に「金刀比羅宮」との記載は存するが,その一方「金刀比羅宮」の見出しの下には, 「こんぴらさん」の記載はあるものの,「金比羅」は記載されていない。「金比羅」と「金刀比羅宮」がそれぞれ互いを指し示す語であれば,一般的な辞書において双方の見出しの下に双方の意味合いが記載されるべきであるから, 「金比羅」は,必ず「金刀比羅宮」のみを指し示す語とはいえない。
被告の反論
1 原告の主張1に対し (1)ア 一般に利用されている辞書において, 「金比羅」の語は, 「こんぴら【金毘羅・金比羅】」の見出しの下,「香川県の金刀比羅宮のこと。, 『金刀比羅宮』の 」「異称。こんぴらさま。, 」「四国,讃岐(香川県)の金刀比羅宮の俗称。」と記載されている。
また,「金刀比羅宮」については,「ことひらぐう【金刀比羅宮】」の見出しの下,「香川県仲多度郡象頭山(琴平山)の中腹にある元国幣中社。
・・・もともとは金毘羅を祀り,船人に尊崇された。・・・金毘羅宮。金毘羅さま。, 」「琴平神社。こんぴ らさん。, 」「香川県仲多度郡琴平町にある旧国幣中社。 ・ ・ ・江戸時代は神仏習合で,象頭山金毘羅大権現と称したが,明治初頭に神社となり金刀比羅宮と改めた。航海の守護神として崇敬されるほか,室町時代以降は伊勢参りとともに,金毘羅参りが庶民の間に流行した。金毘羅さま。, 」 「金毘羅様。金毘羅宮。」の記載がある。
上記各辞書における記載からすると,「金比羅」は,「こんぴら」とも読まれ「金毘羅」とも表示される「金刀比羅宮」を指すものであり, 「こんぴらさま」「金毘羅 ,さま」「こんぴらさん」とは同義の語といえる。
, イ そして, 「金比羅」の文字が「金刀比羅宮」を指すものとして,次のように使用されている。
地方自治体のウェブサイト,観光情報サイト等において「金比羅」が使用されているほか,四国各地から「金刀比羅宮」をめざす道が「金比羅みち」「金比羅(五) ,街道」「金比羅往来」 , ,金刀比羅宮に参詣することを「金比羅参(詣)り」「金比羅 ,詣で」「金比羅参詣」などとして,新聞記事,観光情報サイト,食品の通販サイト, ,テレビ番組の内容紹介記事等において, 「金刀比羅宮」についての記述に使用されている。
また, 「金刀比羅宮」は, 「金比羅」の文字に敬称を付して, 「金比羅さん」と称されて,新聞記事等に広く使用されている。そして,敬称が付された者は,一般に,敬称が省略されても全く別の者が特定され認識されるものではなく,いずれの表示も同一人を表すものとして理解されるから,「金比羅さん」の文字は,「金比羅」の文字により「金刀比羅宮」を指すものである。
ウ したがって,「金比羅」は,「宗教法人金刀比羅宮」の「著名な略称」に該当するとした審決の判断に誤りはない。
(2) 「略称」は,「省略して呼ぶ名前」をいうのであって,法人の略称は,その法人の種類を表す株式会社等の名称以外の部分であるというような,特定の方式のみにより決定されるものではない。したがって, 「宗教法人金刀比羅宮」の略称が「金刀比羅宮」のみでなければならない理由はないから, 「金刀比羅宮」が略称であ るとしても,「金比羅」も同様に略称であることを妨げない。
また,商標法4条1項8号は,氏名等に加え,略称も保護の対象としているところ,その理由は,氏名と同様に特定人の同一性を認識させる機能があるからであり,人格権保護の規定としてはこれを保護することが妥当であると考えられるからである。
よって,名称と同様に特定人を指し示すものであって,特定人との同一性を認識させる程度に広く知られているものは,同号の趣旨からして,それに規定されている「著名な略称」に当たり,又はそれと同等のものとし,人格権の保護を目的とする同号が等しく適用されるべきものである。
したがって,「こんぴら(金毘羅・金比羅)」が「金刀比羅宮」を特定していることは,一般的に使用されている辞書の記載等からも明らかであり, 「金比羅」の文字が「金刀比羅宮」を指し示す表示として広く使用されて,知られていることから,「金比羅」の文字は, 「宗教法人金刀比羅宮」の略称というべきであって,同号にいう「著名な略称」に該当する。
2 原告の主張2に対し 原告は,名称に地名を含む神社を省略する場合,必ず敬称を付して「金比羅さん」や「金比羅様」のように使用するのが通常であると主張するが,一般的な辞書にも記載があるとおり,「金比羅」の文字は,「金刀比羅宮」を指し示して使用されているものである。また,寺院・神社は,信仰の対象となるものであって,一般に敬意をもって接するものであるから,「さん」や「様(さま)」などの敬称が用いられる場合があるが,誰を指し示しているかは,敬称以外の部分によるのであり,敬称を付して使用された場合であっても「金比羅」が「金刀比羅宮」の略称といえることが否定されるものではない。
また,「金比羅」の文字が地名を表す場合があったとしても,そのことによって,直ちに,略称であることが妨げられるものではない。なお,原告の提出した証拠に よっても, 「金比羅」が,特定の地域を表すものとして使用されている事実は窺われるものの, 「宗教法人金刀比羅宮」を認識させる以上に,地名としてのみ認識させるような事情は窺われない。
当裁判所の判断
1 商標法4条1項8号が,他人の肖像又は他人の氏名,名称,著名な略称等を含む商標は,その他人の承諾を得ているものを除き,商標登録を受けることができないと規定した趣旨は,人(法人等の団体を含む。以下同じ。)の肖像,氏名,名称等に対する人格的利益を保護することにあると解される。略称についても,一般に氏名,名称と同様に本人を指し示すものとして受け入れられている場合には,本人の氏名,名称と同様に保護に値すると考えられる。そうすると,人の名称等の略称が同号にいう「著名な略称」に該当するか否かを判断するについても,その略称が本人を指し示すものとして一般に受け入れられているか否かを基準として判断されるべきものということができる(最高裁平成16年(行ヒ)第343号同17年7月22日第2小法廷判決・集民217号595頁)。
そこで, 「金比羅」が「宗教法人金刀比羅宮」の「著名な略称」に当たるか否かについて見るに, 「こんぴら【金毘羅,金比羅】」の見出しの下に,広辞苑第6版には,「香川県の金刀比羅宮ことひらぐうのこと。(乙2) 」 ,大辞林(増補・新装版)には,「金刀比羅宮ことひらぐうの異称。こんぴらさま。(乙4) 」 ,国語大辞典(新装版)には,「四国,讃岐(香川県)の金刀比羅宮の俗称。(乙5) 」 ,精選版日本国語大辞典第1巻には, 「四国,讃岐(香川県)の金刀比羅宮の俗称」 (甲181),新世紀ビジュアル大辞典及び日本語大辞典には,それぞれ「金刀比羅宮ことひらぐうの俗称」(甲182,183)と記載されている。一方, 「ことひらぐう【金刀比羅宮】」の見出しの下に,広辞苑第6版には, 「香川県仲多度郡象頭山(琴平山)の中腹にある元国幣中社。・・・もともとは金毘羅を祀り,船人に尊崇された。・・・金毘羅宮。金毘羅さま。(乙6) 」 ,国語大辞典(新装版)には,「香川県仲多度郡琴平町にある旧国幣 中社。
・・・江戸時代は神仏習合で,象頭山金毘羅大権現と称したが,明治初頭に神社となり金刀比羅宮と改めた。航海の守護神として崇敬されるほか,室町時代以降は伊勢参りとともに,金毘羅参りが庶民の間に流行した。金毘羅さま。(乙8) 」 ,大辞林第3版には「香川県琴平町の琴平山にある神社。・・・。金毘羅こんぴら様。金毘羅宮。旧称,金比羅大権現」 (乙9),精選版日本国語大辞典第1巻には, 「香川県仲多度郡琴平町にある神社。
・・・金比羅さま。讃岐の金比羅さん。(甲181)と 」の記載がある。また,精選版日本国語大辞典第1巻には, 「こんぴらさま【金毘羅様】(さまは接尾語)」として, 「金毘羅を敬っていう語。こんぴらさん」 (甲181)と記載されている。そして,原告は, 「金比羅さん」が「金刀比羅宮」の「著名な略称」に該当することについては認めている。
以上の事実に加え,敬意や親愛の気持ちを示すために,名称や略称等に「さん」,「様(さま)」などの接尾語を付する場合があり,これにより当該名称等との同一性が失われるものではないことは明らかであるから,接尾語である「さん」を付した「金比羅さん」とともに,「金比羅」の語は,「金比羅宮」「金刀比羅宮」を意味す ,ると認められ,これを法人格の主体として称するときには,「宗教法人金刀比羅宮」を指し示すものとして,一般に受け入れられていると認められる。
そうすると, 「金比羅」を「宗教法人金刀比羅宮」の「略称」と認め,本願商標が,「他人の名称」の「著名な略称」を含むと判断した審決に誤りはない。
2 原告の主張について (1) 原告は, 「宗教法人金刀比羅宮」の「略称」は, 「金刀比羅宮」又は「金比羅さん」のみであって,「金比羅」は,「宗教法人金刀比羅宮」の「略称」の略称,すなわち,俗称,通称,愛称にすぎないから,商標法4条1項8号の「他人の名称」の「略称」に該当しない旨主張する。
しかし,前記1において述べたとおり,同号の趣旨からすれば,人の名称等の略称が同号にいう「著名な略称」に該当するか否かを判断するには,その略称が本人 を指し示すものとして一般に受け入れられているか否かを基準とすべきものである。
そして,商標法上「略称」を定義する規定はなく,一般的な意義に従うべきであるところ,略称とは,広辞苑第6版によれば「名前を省略して呼ぶこと。また省略して呼ぶ名前。(乙39)を指す。そうすると, 」 「宗教法人金刀比羅宮」の「略称」は,「金刀比羅宮」のみに定まるものではなく,仮に,俗称,通称,愛称に該当するものであっても, 「宗教法人金刀比羅宮」を指し示すものとして一般に受け入れられている呼称については略称に当てはまるものである。そして,前記1に述べたとおり,「金比羅」は, 「宗教法人金刀比羅宮」を指し示すものとして一般に受け入れられているものである以上「著名な略称」に該当する。したがって,原告の上記主張は採用できない。
(2) 原告は,名称に地名を含む神社を省略する場合,必ず敬称を付して「金比羅さん」や「金比羅様」のように使用するのが通常であり,敬称を付さない場合には,単に地名を示すものと認識される旨主張する。
しかし,前記1のとおり, 「金比羅」の語は,多数の辞書,辞典において「金刀比羅宮」を意味するものと説明されている上,「ことひらぐう【金刀比羅宮】」の見出しの下に,精選版日本国語大辞典第1巻に,「こんぴらさま【金毘羅様】(さまは接尾語)「金毘羅を敬っていう語。(甲181) 」 」 ,広辞苑第6版の「こんぴらぶね【金毘羅船】」の項に「金毘羅の参詣客のための乗合船」(乙2)とあるなど,接尾語を使用せず「金毘羅」との語のみで「金刀比羅宮」を指し示すことは明らかである。
しかも,地名としてではなく,宗教法人あるいは宗教団体・財産としての「金刀比羅宮」を指し示す意味で「金比羅」又は「金毘羅」と用いられたと認められる例として, 「金比羅がこれほど有名になったのは,幕府から人名(にんみょう)の特権を与えらていた塩飽船の水夫(かこ)たちが,寄港地で金比羅大権現のごりやくを大いにPRしたためという。だが,金比羅ブームの背景はほかにもある。」 (乙12),(高い木造灯籠が) 「金比羅を目指して歩く人々にも重要な目印となっていた・ ・。
・高灯籠は昔から金比羅へ導くすごい役割をもっていた」 (乙16)「金刀比羅宮(金 , 比羅・金毘羅)とも言う」 (乙17)「金比羅に詣るルート」「金比羅に向かう人々 , ,の流れ」 (乙20)などがある。また,金刀比羅宮に参詣することを「金比羅参(詣)り」 (乙12,19〜29), 「金比羅詣で」 (乙30,31)「金比羅参詣」 , (乙15,32)などというほか,辞書においても, 「金刀比羅宮」を意味する「こんぴら(金比羅,金毘羅)」が用いられたものとして, 「こんぴらまいり【金毘羅参】, 」「こんぴらまつり【金毘羅祭】(甲181,乙5)などがある。
」 以上のように,地名としてではなく, 「金刀比羅宮」を示すものとして「金比羅(金毘羅)」が用いられる例が多数存在する。
そうすると,接尾語「さん」「様(さま) , 」などを付さずに「金比羅」と用いる場合であっても,必ずしも地名を意味するものではなく,原告主張のように「金比羅」が地名を指す場合があるとしても,そのことは, 「金比羅」 「宗教法人金刀比羅宮」 がの略称に該当することを排斥するものではない。
(3) 原告は,仮に, 「金比羅」の語が, 「宗教法人金刀比羅宮」を指し示すものであるとしても,被告は, 「金比羅」の語が「宗教法人金刀比羅宮」のみを指し示すことを何ら立証していないと主張する。
しかし,商標法4条1項8号は, 「他人の名称」等について,その「他人」が「名称」等について排他的な独占を有することを要件としておらず,同じ名称を複数人が有する場合や,他の意味合いをも併有する場合においても,その該当性を否定するものではない。本件で,例えば, 「金比羅」が「地名」のみしか認識し得ないために,宗教法人金刀比羅宮の「略称」であり得ないという場合であれば格別,本件においてはそのような事情はなく,「金比羅」は,「宗教法人金刀比羅宮」を指し示すものとして一般に受け入れられていると認められるのであるから,原告の上記主張は失当である。
なお,原告は, 「金比羅」が仮に「地名」だけでなく宗教法人「金刀比羅宮」を表すとしても,2つの観念が混在する語であるから,どちらか一方の観念のみに限定して解釈するのは誤りであると主張するが,審決及び被告は, 「金比羅」が「宗教法 人金刀比羅宮」の略称に該当することを述べるのみであって,地名の観念が生ずることを否定しているわけではなく,どちらか一方の観念のみに限定して解釈したものではないから,原告の主張は,審決等を正解しないものであって,採用できない。
結論
以上によれば,審決のした商標法4条1項8号の判断に誤りがないから,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 清水節
裁判官 中村恭
裁判官 中武由紀
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