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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服201513171 審決 商標
異議2014900275 審決 商標
不服201411133 審決 商標
不服201516548 審決 商標
不服20177137 審決 商標
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事件 平成 27年 (行ケ) 10085号 審決取消請求事件

原告佐藤水産株式会社
同訴訟代理人弁理士 佐藤英昭
同 丸山亮
同 林晴男
被告特許庁長官
同 指定代理人林栄二
同 真鍋伸行
同 根岸克弘
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2015/09/17
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2014-2226号事件について平成27年3月24日にした審決を取り消す。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等 (1) 原告は,平成25年4月23日,「雪中熟成」の文字を標準文字で表してなる商標(以下「本願商標」という。)について,指定商品を第29類「加工 水産物,食用魚介類(生きているものを除く。)」(以下「本件指定商品」という。)として,商標登録出願をした(商願2013-030708号)。
(2) 原告は,上記商標登録出願に対して,平成25年11月5日付けで拒絶査定を受けたので,平成26年2月5日,拒絶査定に対する不服の審判を請求した。
(3) これに対し,特許庁は,原告の請求を不服2014-2226号事件として審理し,平成27年3月24日,「本件審判の請求は,成り立たない。」とする別紙審決書(写し)記載の審決(以下「本件審決」という。)をし,同年4月7日,その謄本は原告に送達された。
(4) 原告は,平成27年5月7日,本件審決の取消しを求めて本件訴訟を提起した。
2 本件審決の理由の要旨 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)のとおりである。要するに,本願商標を本件指定商品に使用するときは,これに接する取引者,需要者は,全体として「雪の中で熟成された商品」であることを容易に想起,認識するというのが相当であって,本願商標は,本件指定商品との関係において,商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから,商標法3条1項3号に該当し,登録することができない,というものである。
3 取消事由 本願商標の商標法3条1項3号該当性の判断の誤り
当事者の主張
〔原告の主張〕 (1) 本件審決は,以下の@〜Bを根拠として,本願商標を本件指定商品に使用するときは,これに接する取引者,需要者は,全体として「雪の中で熟成された商品」であることを容易に想起,認識するというのが相当であって,本願商標は,本件指定商品との関係において,商品の品質を普通に用いられる方法で表示 する標章のみからなる商標であるから,商標法3条1項3号に該当し,登録を受けることができない,と認定・判断した。
@ 「雪中」及び「熟成」の文字は,「雪が降る中。雪の積もった中」及び「蛋白質・脂肪・炭水化物などが,酵素や微生物の作用により,腐敗することなく適度に分解され,特殊な香味を発すること。なれ。」等を意味する語として,いずれも広く知られていること。
A 本件審決の別掲2によれば,「魚肉を低温で熟成すること」が一般に行われている実情があること。
B 本件審決の別掲1によれば,「雪の中で熟成すること」が,アルコール飲料・果物・野菜・コーヒー等の食品を対象として行われており,その熟成に際し,「雪の中」の意味を表すものとして「雪中」の文字が使用されている事実があること。
(2) しかし,前記(1)Bについては, 「アルコール飲料・果物・野菜・コーヒー」についての「雪中」の語の使用例であり,本件指定商品である「加工水産物,食用魚介類(生きているものを除く。)」に関する使用例や取引の実情ではない。
したがって,本件指定商品ではない商品に関する使用例について,何らの根拠・理由をも示すことなく,それが本件指定商品にも当てはまるものであるとして,本件商標の自他商品識別力を否定する本件審決には,本件指定商品との関係における検討について,明らかに不備又は不尽があり,誤りである。
本件審決は,この点について,別掲1に引用する使用例は,本件指定商品と取引者,需要者を共通にする場合も少なくない飲食物関連の分野に関するものであるから,取引の実情を認定する根拠となり得る旨判断した。しかし,別掲1の「飲食物関連の分野」の使用例において,清酒やビール,ワイン等は,そもそも麹菌や酵母の力による発酵によって生成される飲料であり,それらが一定期間熟成されて良い品質のものになることが知られている。これに対して,本件指定商品の「加工水産物,食用魚介類(生きているものを除く。)」は,一般には鮮度が最 も重要視される類の商品であるから,そのように性質や特性の異なる商品を「飲食物関連」という大雑把なくくりによって,あたかも本件指定商品取引の実情としてしんしゃくすることは,許されない。
(3) 本件指定商品である「加工水産物,食用魚介類(生きているものを除く。 」 )は,一般には冷蔵庫保管をしないと1〜2日程度で腐敗し始め,食品としては食することができなくなる商品である。このような「加工水産物,食用魚介類(生きているものを除く。)」を腐敗させることなく熟成させるには,温度と時間とを厳密に管理しなければならないことは,一般の取引者,需要者も容易に理解できる。そうすると,そのような本件指定商品について「雪中熟成」との本願商標を使用しても,一般の取引者,需要者は,「加工水産物,食用魚介類(生きているものを除く。)は足が速い食品であるから,雪の中で熟成といっても無理がある。何か特別な商品なのだろう」と認識・理解するのが一般的であり,そのような意味において,本願商標は,本件指定商品に関して十分な自他商品識別機能を有する商標である。
したがって,本件指定商品は,その性質上,「雪の中で熟成する」ということが一般には考え難く,本願商標から「雪の中で熟成された商品」であることを容易に想起・認識することはできない。
(4) 商標の自他商品識別力の有無は,その指定商品との関係において判断されるべきである。例えば,「二段熟成バナナ」の文字からなり,第31類の「バナナ」を指定商品とする商標登録出願に対し,特許庁の審決(不服2011-009797)において,その構成文字全体からは,「二段階に熟成させたバナナ」程度の意味合いを認識させる場合があるとしても,バナナの熟成加工において,二段階に熟成させる方法が行われている事実は認められず,これが直ちに,指定商品「バナナ」との関係において,その品質,加工方法等を直接的又は具体的に表示するものとして,一般に理解・認識されているものとはいい難く,また,「二段熟成バナナ」の文字が,「バナナ」の品質,加工方法を表示するものとして, 取引上普通に使用されている事実も見いだせなかったことからすれば,上記商標は,これをその指定商品に使用しても,その商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標とはいえず,自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものであって,商標法3条1項3号に該当しない旨認定・判断した。
本願商標についても,「雪中熟成」の文字が「加工水産物,食用魚介類(生きているものを除く。)」の品質,加工方法を表示するものとして,取引上普通に使用されている事実はない(本件審決の別掲2の使用例中には「雪中熟成」の文字を使用しているものは存在しない)から,その商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標とはいえず,自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものである。
(5) 「雪中熟成豚」の文字からなる商標は,指定商品を第29類「豚肉」として,商標登録されている(登録第5305453号)。上記登録例の指定商品「豚肉」も,本件指定商品と同様に腐敗させることなく熟成させるには,温度と時間とを厳密に管理しなければならない性質の商品であるからこそ,一般の取引者,需要者は「豚肉は足が速い食品であるから,雪の中で熟成といっても無理がある。何か特別な商品なのだろう」と認識・理解するのが一般的であり,かかる意味において,上記登録商標は,その指定商品「豚肉」に関して十分な自他商品識別機能を有する商標として商標登録されたものである。
そうすると,本願商標と上記登録商標「雪中熟成豚」とは,商標自体の構成及び指定商品の特性が類似し,「雪中熟成豚」が商標登録され,本願商標が登録を拒絶されるべき合理的理由を見いだせないのであって,本件審決が本願商標の登録を認めないのは,商標登録という行政行為の平等原則からして不当である。
(6) 以上のとおり,本件審決は,本願商標の自他商品識別力の有無の検討に当たり,本件指定商品との関係における考察から乖離し,清酒やビール・ワイン等の麹菌や酵母の力による発酵によって生成される飲料であって,「熟成」の語が商品の品質表示として広く使用されている商品に関する使用例(本件審決の別 掲1)と,魚肉などを腐敗させることなく温度と時間とを厳密に管理して熟成させる使用例(同別掲2)という全く異なる使用例を,あたかも本願商標に全て当てはまるかのように採り上げ,その上でそれらを大雑把に「飲食物関連」という一くくりにして本願商標の自他商品識別力を否定した。
このような,本件指定商品との関係から乖離した本願商標の自他商品識別力の有無の検討は,明らかに失当であって,誤りである。本願商標は,本件指定商品との関係において十分な自他商品識別機能を有する商標であるから,これが商標法3条1項3号に該当するとした本件審決の認定判断には誤りがあり,違法として取り消されるべきである。
(7) 被告の主張(2)について アルコール及び味噌については,発酵食品はその性質上,発酵を促すために適当な温度の下に貯蔵し,熟成させることが一般的に行われており,果物や野菜についても,0℃に近い環境下で自身の持つアミノ酸を糖分に分解し凍結しないようにするために糖度が増すことが知られており,一般には「越冬野菜」等と称され珍重されている。牛肉については,近年「熟成肉」の名称でもてはやされている実情がある。これに対して,本件指定商品である水産物は,一般には鮮度が最も重要視される類の商品であって,牛肉等の畜肉と比較して,鮮度が落ちやすく,腐りやすい特性を持つことから,その熟成については,塩・粕・みそ漬け等の調味や乾燥等の調理を加えて熟成することが一般に行われ,その熟成が管理された雪室(雪を敷き詰めた冷蔵庫)・冷蔵庫・冷蔵施設において低温の下で行われている。したがって,発酵食品や果物・野菜・食肉は,本件指定商品である加工水産物,食用魚介類とは性質及び特性が全く異なる商品であるから,「需要者を共通にする」という理由で,あたかも本件指定商品取引の実情であるかのようにしんしゃくすることは許されない。
また,本願商標は,辞書に記載の意味からは,「雪が降る中,雪の積もった中で,食物が腐敗することなく適度に分解され,特殊な香味を発すること。」と認 識される。そして,「晩秋に収穫した野菜を畑に放置し,冬季に雪に埋もれた野菜を掘り出す方法で,寒い地方ならではの保存方法」である「越冬野菜」の語が広く知られている実情があるから,この「越冬野菜」から印象・記憶・連想が働き,本願商標からは「冬季に雪が降り,雪が積るという自然の作用による熟成」という観念が想起される。そうすると,上記のとおり,本件指定商品については,塩・粕・みそ漬け等の調味や乾燥等の調理を加えて熟成することが一般に行われており,その熟成が管理された雪室(雪を敷き詰めた冷蔵庫)・冷蔵庫・冷蔵施設において「人の手が加わった低温での熟成」が行われているのが実情であって,「冬季に雪が降り,雪が積るという自然の作用による熟成」という観念が想起される本願商標を,畜肉に比べて格段に腐敗しやすい本件指定商品に使用したとしても,一般の取引者,需要者がその商品の品質を表示するものと認識することはなく,本願商標の自他商品識別力を否定することはできない。
〔被告の主張〕 (1) 本願商標は,「雪中熟成」の文字を標準文字で表してなるから,普通に用いられる方法で表示してなるものといえる。
本願商標を構成する「雪中」及び「熟成」の各語については,「雪中」の文字が「雪が降る中。雪の積もった中。」を,また,「熟成」の文字が「蛋白質・脂肪・炭水化物などが,酵素や微生物の作用により,腐敗することなく適度に分解され,特殊な香味を発すること。なれ。」を意味する語としていずれも広く知られている。
そして,牛肉,豚肉,野菜,味噌,アルコール飲料,コーヒー豆等の幅広い飲食物関連の分野において,雪の中で熟成させた商品が製造,販売されており,その熟成について「雪中」又は「雪中熟成」の文字が使用されている事実があるところ,これらの商品と本件指定商品である「加工水産物,食用魚介類(生きているものを除く。)」とは,いずれも一般家庭向けの飲食料品や生鮮食料品を含んでいることなどから,その用途や需要者を共通にすることが多いものといえる。
また,本件指定商品の分野においても,魚肉を熟成することが一般に行われており,その熟成が低温の下で行われている実情もあるのみならず,魚肉を雪室(雪中貯蔵庫)で熟成することなどが行われている実情も見受けられる。
以上のとおり,上記の「雪中」及び「熟成」の各語の意味合いに,上記のとおりの取引の実情並びに「雪中」及び「雪中熟成」の文字の使用状況をも踏まえれば,本願商標を本件指定商品に使用した場合には,取引者,需要者は,全体として「雪の中で熟成された商品」であることを容易に認識するものであるから,本願商標は,その商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標といえ,商標法3条1項3号に該当する。
したがって,本願商標が商標法3条1項3号に該当するとした本件審決の認定・判断に違法はない。
(2) 原告の主張(2)及び(3)について 前記(1)のとおり,牛肉,豚肉,野菜,味噌,アルコール飲料,コーヒー豆等の幅広い飲食料品において,雪の中で熟成させた商品が製造,販売されており,その熟成について「雪中」又は「雪中熟成」の文字が使用されている事実もあること,これらの飲食料品と本件指定商品とは,いずれも一般家庭向けの飲食料品や生鮮食料品を含んでいることなどから,その用途や需要者を共通にすることが多いものといえること,また,本件指定商品の分野においても,魚肉を熟成することが一般に行われており,その熟成が低温の下で行われている実情もあるのみならず,魚肉を雪室(雪中貯蔵庫)で熟成することなどが行われている実情も見受けられること,さらに,これらの商品を紹介し,販売するに当たって,需要者にその商品の品質が優れていることを伝えるために熟成の方法が強調して紹介されていることからすれば,これらの取引の実情や使用状況は,本願商標が自他商品の識別力を有するか否かを判断するに当たり,いずれも十分に参酌すべきものである。
そうとすれば,本願商標の指定商品の取引者,需要者は,雪の中でする保存, 熟成方法や熟成された魚肉等の食品にも馴染みがあるというべきであって,本願商標について「雪の中で熟成といっても無理がある。 などと考えることはなく, 」何ら違和感を持つことなく「雪の中で熟成された商品」であることを表すものとして認識するとみるのが自然である。
したがって,原告の主張はいずれも失当である。
(3) 原告の主張(4)について 商標法3条1項3号により商標登録できないとされる商品の品質を表示する標章とは,取引者,需要者が品質を表示する標章として認識するものであれば足り,その標章が我が国において現に使用されていることを必要としないから,本願商標の指定商品について「雪中熟成」の文字が品質表示として使用されている事実が示されていないことをもって本件審決を誤りとする原告の主張は失当である。
また,原告主張の「二段熟成バナナ」に係る審決は,本願商標とは,商標及び指定商品が異なるなど,事案を異にし,上記審決をもって本願商標を登録しなければならない理由はないから,かかる観点からも,原告の主張は失当である。
(4) 原告の主張(5)について 商標登録の可否は個別具体的に判断すべきであるところ,「雪中熟成豚」の登録商標が原告主張のとおりの理由によって商標登録されたものであるのかは定かでないが,本願商標については,前記(2)のとおり,取引者,需要者が「雪の中で熟成といっても無理がある。」などと考えることはなく,何ら違和感を持つことなく「雪の中で熟成された商品」であることを表すものとして認識するものであって,商品の品質を表示するものといえるから,原告の主張は失当である。
当裁判所の判断
1 商標法3条1項3号が,「その商品の産地,販売地,品質,原材料,効能,用途,形状,生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴」等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標について商標登録の要件を欠く と規定しているのは,このような商標は,指定商品との関係で,その商品の産地,販売地,品質,原材料,効能,用途,形状,生産又は使用の方法又は時期その他の特徴を表示記述する標章であって,取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから,特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに,一般的に使用される標章であって,多くの場合自他商品の識別力を欠くものであることによるものと解される。
そうすると,本件審決時において,本願商標がその指定商品に使用された場合に,将来を含め,指定商品の取引者,需要者によって商品の産地,販売地,品質,原材料,効能,用途,形状,生産又は使用の方法又は時期その他の特徴を表示したものと一般に認識されるものであり,特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないと判断されるときは,本願商標は商標法3条1項3号に該当するものと解するのが相当である。
2 本願商標について (1) 本願商標の構成 本願商標は,前記第2の1(1)のとおり,「雪中熟成」の文字を標準文字で表してなる商標であり,「雪中」の文字と,「熟成」の文字とを結合して一連表記した商標である。
そして,本願商標は,上記のとおりの外観を有することから,普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものということができる。
(2) 「雪中」「熟成」の語義 本願商標を構成する「雪中」の語義について, 乙1の1(広辞苑第六版)には,「雪が降る中。雪の積もった中」と記載されていることが認められる。また,本願商標を構成する「熟成」の語義については,乙1の2(広辞苑第六版)には,「蛋白質・脂肪・炭水化物などが,酵素や微生物の作用により,腐敗することなく適度に分解され,特殊な香味を発すること。なれ。」と,乙3の1(大辞泉増補・新装版)には,「魚肉・獣肉などが酵素の作用により分解され,特殊な風味・ うま味が出ること。発酵を終えたあとそのままにし,さらに味をならすこともある。なれ。」と,それぞれ記載されていることが認められる。
(3) 本件指定商品の業界分野における用例 ア 東京新聞(平成26年9月14日付け)(以下,下線部は本判決において記載した。) 「アンテナ@首都圏 いわて銀河プラザ(岩手県)南部鼻曲鮭に舌鼓」,「鮭の腎臓(背わた)を塩で漬け込み長時間かけて熟成させた珍味だ。」(乙3の2) イ 毎日新聞(平成26年2月6日付け)「大新潟展:名産品がそろう 三越千葉店で開幕」 「日本海の寒風にさらし, ,乾燥・熟成した塩引きサケで,会場内につるして切り売りする」(乙3の3) ウ 毎日新聞(平成25年12月4日付け) 「究極のお土産:「塩麹と酒粕の北海道二段仕込み」観光庁選定 魚の切り身を熟成,漬け込む――旭川の老舗「くまだ」」,「脂の乗ったつぼ鯛(だい)や時鮭(ときしらず),めぬき,銀だらの切り身を塩麹で一晩熟成させ,酒粕にもう一晩漬け込んだ。」(乙3の4) エ 日本食糧新聞(平成27年3月6日付け) 「カナカン新潟支店,総合展示会で「雪室」熟成商品を提案 贈答用中心に堅調」,「カナカン新潟支店は2月25日開催の総合展示会で,新潟の厳選素材を「雪室(ゆきむろ)」でじっくり熟成させたこだわり商品を,生鮮品から加工食品まで多数提案。現在は百貨店などの贈答需要を中心に堅調に推移しており,他の流通も高い関心を示していた。雪室とは,室の中に雪を敷き詰めることで作り出す天然の冷蔵庫で,雪国では古来食品保存に活用してきた。これまでも県内のコメ,茶,味噌,肉,魚などを加工販売する地元企業はそれぞれ雪室熟成商品を販売してきたが,12年1月,その地元企業など二十数社で「にいがた雪室ブランド事業協同組合」を設立し,「越後雪室屋」ブランドとして,…販売している。
雪室の特徴は,その構造によって0度Cや5度Cなど,温度変化がなく通年を通 して温度が一定であること,さらに湿度は90%以上なので乾燥を防ぎ鮮度を維持し,食品を雪室で保存すると野菜は糖度が増し,茶やコーヒーなどはカドが取れてまろやかになるという。」(乙3の5) オ ぎょゆう(遠江企画運営)のウェブサイト (平成26年11月12日印刷)「低温熟成で旨みも栄養も上昇」,「私たちが独自で開発した「低温熟成」という技術は,それぞれのマグロの身質を見極めた上,最適な温度と時間を調整しながら管理し,1〜3日程かけて熟成解凍する方法です。」(乙3の6) カ 株式会社北のグルメのウェブサイト(平成26年10月21日印刷) 「塩紅鮭 熟旨とは?」,「熟旨(じゅくうま)とは,氷蔵藁(ひぞうわら)製法。チルド冷蔵(0℃〜5℃)で保たれた氷の蔵で,魚を熟成させ旨みを引き出す方法です。」(乙3の7) キ 美味いっしょ北海道(一般社団法人北海道商工会議所連合会運営)のウェブサイト(平成26年11月12日印刷)「ピチピチ造り 真ほっけ」,「次に,“低温熟成製法”が決め手の「ピチピチ造り」は,ピチットシートに包み,低温(約2℃)で最低12時間かけて熟成させます。」(乙3の8) ク 子どもに伝えたい日本の朝ごはん(三徳商事株式会社)のウェブサイト(平成26年11月11日印刷)「博多ひとしお」,「博多長浜の魚市場に水揚げされたばかりの新鮮な魚に薄塩をして一晩低温熟成させました。」(乙3の9) ケ 関西食文化研究会のウェブサイト(平成26年11月12日印刷)「イベントレポート/熟成講座」,「マグロの赤身を次のような3種類用意した。(1)生(2)塩をして1時間半程たったもの(3)10日間ドライエイジング(乾燥熟成)したもの。」,「食品の長期保存や熟成ができる「氷感庫」に入れておくと,低温熟成ができる。」(乙3の10) コ パナソニック株式会社ホームページの「冷蔵庫」のウェブサイト(平成26年10月21日印刷) 「熟成冷凍」,「熟成冷凍の温度は,約-10℃で,調理のプロが使う,かくし技の温度です。冷凍保存しながら食品を熟成させ,肉や魚(みそ漬け等の発酵食品)のうまみがアップ。」(乙3の11) サ 「カネキタ北釧水産株式会社」の楽天市場のウェブサイト 「お歳暮・お正月特集…釧路近海産「旨塩秋鮭」【低温旨み熟成仕上げ】切り身5切入…販売期間2014年11月07日10時00分〜2014年12月01日08時00分」(乙4の9) シ 以上のように,本件指定商品の業界分野においては,本件審決時(平成27年3月24日)までに,魚肉を熟成することが一般に行われ(乙3の2〜4),殊にその熟成が,低温下(乙3の6,8〜11,乙4の9) 氷の蔵 , (乙3の7),寒風(乙3の3)又は雪室(乙3の5)で行われており,「低温熟成」の語が低温で熟成することの,「雪室熟成」の語が雪室で熟成することの,各意味合いで用いられていることが認められる。このように「低温熟成」や「雪室熟成」の語が,その製造・販売に係る商品の品質又は生産の方法を示すものとして,低温や雪室で熟成させた商品との前記意味合いを有するものとして用いられている。
(4) 飲食料品における用例 ア 北海道新聞(平成26年4月3日付け)「100日雪中熟成 味わい柔らか*高砂酒造*美瑛で取り出し,来月販売」,「高砂酒造(旭川)は2日,町内新星1の雪の中のタンクに約100日間貯蔵し,熟成させた日本酒の取り出し作業を行った。…同社によると,タンク内は氷点下2度前後と安定した状態のため,ゆっくりと熟成され,味がまろやかになるという。」(乙2の1) イ 河北新報(平成26年2月5日付け) 「雪が育む熟成野菜/新庄・産直施設で販売」,「新庄市の産直施設「まゆの 郷」は4日,雪の中で2カ月以上保存した大根,ニンジン,白菜,キャベツを「雪の下野菜」と名付け,販売を始めた。100%近い湿度と低温で糖度が増して味が濃くなり,みずみずしさが保たれるという。」(乙2の2) ウ 日本農業新聞(平成26年2月2日付け) 「「雪中キャベツ」最盛 熟成,うま味たっぷり/岩手県西和賀町」,「【いわて花巻】雪の中で熟成させる「雪中キャベツ」が,日本屈指の豪雪地帯の西和賀町で出荷最盛期を迎えている。雪中で熟成されうま味をたっぷり蓄えたキャベツは甘味が強く,この時期にしか食べられない雪国の逸品として人気だ。」(乙2の3) エ 朝日新聞 東京地方版(平成25年1月30日付け) 「清酒の味わい,今年は? 大町で5月まで雪中熟成/長野県」,「清酒を約4カ月間,雪の中で熟成させる「雪中埋蔵」の作業が29日,大町市平であった。
市内の酒造会社が1996年から続けている。」(乙2の4) オ 山形新聞(平成23年1月28日付け)「西川町 地ビールの雪中コンテナ搬入作業 2カ月熟成,すっきりした味わいに」,「地ビールを製造・販売している西川町の第三セクター西川町総合開発は,昨年に引き続き,雪の中で地ビールを熟成させる「地ビール月山 雪囲(ゆきがこい)熟成」を3月下旬に発売する。…温度0度前後のコンテナ内で「ピルスナー」を約2カ月熟成させることで,すっきりした味わいになるという。 (乙 」2の5) カ 読売新聞 東京朝刊(平成19年5月20日付け) 「甘くておいしい! 青森の園児ら,雪中熟成リンゴに大喜び=青森」,「八甲田の雪の中で熟成したリンゴを子どもたちに味わってもらおうと,NPO法人「北国のくらし研究会」と酸ヶ湯温泉は18日(判決注:平成19年5月18日),…園児にリンゴ180個を贈った。雪の有効活用に取り組む同研究会は,リンゴを雪の中で熟成させる技術を5年前から研究している。今回贈ったリンゴは, 酸ヶ湯温泉と共同で,約3メートルの高さに盛った雪の中で昨年11月から保存・熟成させていたもの。同研究会によると,冷蔵庫で保存した場合よりも甘みが強くなるという。」(乙2の6) キ 日本農業新聞(平成19年4月3日付け) 「[売り込め特産](2)雪中熟成ワイン/うま味 雪がはぐくむ」,「新潟県南魚沼市(旧大和町)の第三セクター(株)アグリコア 越後ワイナリーは,雪中貯蔵庫のあるワイナリーで自然に優しい雪国ならではのワイン造りを行っている。最大250トンの雪を地上2階,地下1階に貯蔵。二酸化炭素を排出し,クリーンエネルギーで夏でも気温5度の冷気によりワインを熟成させる雪氷室(ゆきひむろ)の施設は2000年に完成。雪がはぐくみ,雪が醸すワインとして好評を得ている。」(乙2の7) ク 日本経済新聞 地方経済面 新潟(平成23年3月1日付け) 「食肉卸売業のウオショク(新潟市,宇尾野隆社長)は,雪の冷気で熟成させた新潟県産食肉の販売に乗り出す。」,「雪を貯蔵した「雪室」で保存した県産豚を「雪室熟成豚」と銘打って発売する。」(乙4の5) ケ 那須高原ビール株式会社のウェブサイト(平成26年8月15日印刷) 「雪中熟成深山ピルスナー 内容量:330ml(アルコール度数5%)」,「那須深山の大地から溢れ出る雪溶け水で仕込んだすばらしい香りを醸し出した苦味のきいた淡色のラガービールです。ひと冬深山の雪の中で熟成しました。」(乙2の8) コ 増井酒店のウェブサイト(平成26年8月15日印刷) 「岩の原ワイン 雪室熟成2008 赤 720ml」,「2年の樽熟成後,低温の雪室の中でゆっくりと雪中熟成したワインです。」(乙2の9) サ 大阪府中央卸売市場ネットショップのウェブサイト(平成26年8月15日印刷)「80日間,雪の中の熟成でうまみ増す/青森県産雪室りんご」(乙2の10) シ 株式会社新日本青果のウェブサイト(平成26年8月15日印刷) 「弊社では雪の中で熟成された春のりんご「雪蔵りんご」をインターネットショッピングサイト「本物倶楽部」と青森駅近くにオープンいたしましたA-FACTORYのFood Marche’内にて販売いたします。」(乙2の11) ス 全国有機農法連絡会のウェブサイト(平成26年8月15日印刷)「雪中甘熟野菜」,「「雪中甘熟野菜」シリーズは,大根や白菜などを雪の中で熟成させた越冬野菜です。」(乙2の12) セ 新興エコファームの最新情報発信局のウェブサイト(平成26年8月15日印刷)「雪の中で熟成された大根の掘り出しです。」,「先日(2月1日)は久々の好天でしたので,雪の中から大根を掘り出しました。雪の中で熟成すること約60日です。糖度も相当高くなっているかと思います。」(乙2の13) ソ 越後「みそ西」西本町店のウェブサイト(平成26年8月15日印刷)「無添加生みそ 極上みそ雪室そだち」,「雪室とは,雪が多いからこそできる天然の冷蔵庫のようなものです。毎年,地元の酒蔵さんのお酒やお米などと一緒に,この中へ味噌を仕込み入れます。雪の中でゆっくりゆっくり低温熟成された生味噌は,くもりのない純粋な味と香りをお楽しみいただけます。」(乙2の14) タ 「山吹味噌-信州味噌株式会社」のウェブサイト「2014年1月16日 雪中熟成味噌,無事に埋め終わりました!」,「1年ほど熟成したお味噌はこのままでも充分美味しいのですが,これから3ヶ月近く雪の中で最後の熟成を重ねることによって,さらにうま味とあま味が増します。」(乙4の1) チ 「G-Call」のウェブサイト「2014年08月26日 内山肉店 八海山雪室熟成にいがた和牛取扱開始 しました。」,「今回お取扱い開始をしました,内山肉店さんの”雪温熟成にいがた和牛”は,「厳選にいがた和牛」をさらに,清酒八海山で有名な八海醸造株式会社の巨大な雪室で雪温熟成させました。」,「雪室で熟成されたお肉は,他では味わえない格別な味わいになります。」(乙4の3) ツ 「株式会社ウオショク」のウェブサイト「2014年1月2日 日本テレビ 「ぐるぐるナインティナイン ゴチになります」 雪室熟成豚紹介 【メニュー】雪室熟成豚の炭火焼,雪室」(乙4の4) テ tenki.jpのウェブサイト 「雪国ならではの知恵の宝庫。天然の冷蔵庫「雪室」とは?」,「真夏でも真冬でも約5℃,湿度90%前後の低温・高湿度が維持される雪室は,電気冷蔵庫に比べ,温度の揺らぎが少ないため食品の細胞が傷みにくく,おいしさもしっかり維持できるすぐれもの。…食品の旨みを増す低温熟成に最適の環境といわれています。」,「雪中貯蔵庫である雪室で貯蔵された食品は,その美味しさが全国のグルメの間で評判となり「雪室ブランド」は高い人気を誇っています。」(乙2の19) ト 以上のとおり,果物,野菜,食肉,味噌,アルコール飲料等の飲食料品関連の業界分野においては,本件審決時(平成27年3月24日)までに,新聞やインターネットのウェブサイトにおいて,本願商標と同じ「雪中熟成」の語や,本願商標を構成する文字のうち「雪中」又は「熟成」や,これと同義の「雪の中」又は「雪の中で熟成」等の語について,その製造・販売に係る商品の品質又は生産の方法を示すものとして,雪の中又は雪氷室ないし雪室で熟成させた商品との意味合いで用いられていることが認められる。
そして,果物,野菜,食肉,味噌,アルコール飲料等の飲食料品関連の業界分野と,本件指定商品である「加工水産物,食用魚介類(生きているものを除く。 」 )を取り扱う業界分野とは,いずれも飲食料品ないし生鮮食料品を取り扱う業界分 野であることから,その取引者,需要者を共通にする場合も多いことが推認できる。
3 本願商標の商標法3条1項3号該当性 (1) 前記2で認定した事実によれば,本願商標を構成する「雪中熟成」の語は,本件審決当時,「雪の中で熟成すること」等の意味合いを有する語として,本件指定商品の取引者,需要者によって一般に認識されるものであったことが認められる。したがって,本件審決当時,本願商標は,本件指定商品に使用されたときは,「雪の中で熟成された商品」といった商品の品質又は生産の方法を表示するものとして,取引者,需要者によって一般に認識されるものであり,特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないと判断されるものであり,自他商品の識別力を欠くものというべきである。
そして,本願商標は,前記2(1)のとおり,「雪中熟成」の文字を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるということができる。
以上によれば,本願商標は,商標法3条1項3号に該当するものと認められる。
(2) 原告の主張について ア 原告は,アルコール及び味噌については,発酵食品はその性質上,発酵を促すために適当な温度の下に貯蔵し,熟成させることが一般的に行われ,果物や野菜についても,0℃に近い環境下で自身の持つアミノ酸を糖分に分解し凍結しないようにするために糖度が増すことが知られており,牛肉についても, 「熟 近年成肉」の名称でもてはやされている実情があるのに対して,本件指定商品である水産物は,一般には鮮度が最も重要視される類の商品であって,牛肉等の畜肉と比較して,鮮度が落ちやすく,腐りやすい特性を持つことから,その熟成については,塩・粕・みそ漬け等の調味や乾燥等の調理を加えて熟成することが一般に行われ,その熟成が管理された冷蔵庫・冷蔵施設等において低温の下で行われているのであって,発酵食品や果物・野菜・食肉は,本件指定商品である加工水産物,食用魚介類とは性質及び特性が全く異なる商品であるから,「需要者を共通 にする」という理由で,あたかも本件指定商品取引の実情としてしんしゃくすることは許されない旨主張する。
しかし,前記2(4)のとおり,果物,野菜,食肉,味噌,アルコール飲料等の飲食料品関連の業界分野と,本件指定商品である「加工水産物,食用魚介類(生きているものを除く。)」を取り扱う業界分野とは,いずれも飲食料品ないし生鮮食料品を取り扱う業界分野であることから,その取引者,需要者を共通にする場合も多いことが推認できる。アルコール飲料及び味噌について,発酵を促すために適当な温度の下で一定期間熟成させることが一般的に行われ,果物や野菜について,0℃に近い環境下で保存することによって糖度が増すことが知られ,牛肉について「熟成肉」の名称で一定期間熟成させたものが知られていて,これに対して,本件指定商品が一般には鮮度が最も重要視される類の商品であるからといって,各業界分野において取引者,需要者を共通にする場合が多いとの上記推認が覆るものではない。
加えて,一般に鮮度が重要であるとされる,果物,野菜,食肉についても,前記2(4)イ,ウ,カ,ク,シ,ス,チのとおり,一定期間,雪の中で熟成させた上で出荷されるものがあり,同様に,本件指定商品中,魚肉についても,前記2(3)のとおり,一定期間熟成させた上で商品化されるものがあるというのが取引の実情であって,いずれも一定期間熟成されてうま味が出るなど,品質がよくなるような性質や特性を有することが知られているという点では共通するから,この点において,果物・野菜・食肉と,本件指定商品である加工水産物,食用魚介類とは,性質及び特性が全く異なるものであるということはできない。
イ 原告は,本件指定商品である「加工水産物,食用魚介類(生きているものを除く。)」は,一般には冷蔵庫保管をしないと1〜2日程度で腐敗し始め,食品としては食することができなくなる商品であって,このような「加工水産物,食用魚介類(生きているものを除く。 」 ) を腐敗させることなく熟成させるには,温度と時間とを厳密に管理しなければならないことは,一般の取引者,需要者も 容易に理解できるから,本件指定商品について「雪中熟成」との本願商標を使用しても,一般の取引者,需要者は,「加工水産物,食用魚介類(生きているものを除く。)は足が速い食品であるから,雪の中で熟成といっても無理がある。何か特別な商品なのだろう」と認識・理解するのが一般的であり,そのような意味において本願商標は本件指定商品に関して,十分な自他商品識別機能を有する商標であって,本願商標から「雪の中で熟成された商品」であることを容易に想起・認識することはできない旨主張する。
しかし,本件指定商品中,魚肉については,前記2(3)ア,ケのとおり,長時間かけて熟成させる商品も存在し,殊に前記2(3)エ,カのとおり,雪室で熟成させた商品や,氷の蔵で熟成させた商品が製造・販売されていること,本件指定商品とその取引者,需要者を共通にすることが多いと推認される果物,野菜,食肉,味噌,アルコール飲料等の飲食料品関連の業界分野においては,前記2(4)のとおり,「雪中熟成」,「雪中」又は「熟成」,「雪の中」又は「雪の中で熟成」等の語について,その製造・販売に係る商品の品質又は生産の方法を示すものとして,雪の中又は雪氷室ないし雪室で熟成させた商品との意味合いで用いられていることからすれば,本件指定商品の取引者,需要者は,「加工水産物,食用魚介類(生きているものを除く。)は足が速い食品であるから,雪の中で熟成といっても無理がある。」と考えるとは認め難く,本願商標が本件指定商品に使用された場合には,「雪の中で熟成された商品」等の意味合いを持つ語として自然に認識するものというべきである。
ウ 原告は,「二段熟成バナナ」の文字からなる指定商品を第31類「バナナ」とする商標登録出願に対する特許庁の審決が,バナナの熟成加工において,二段階に熟成させる方法が行われている事実は認められないこと,「二段熟成バナナ」の文字が,「バナナ」の品質,加工方法を表示するものとして,取引上普通に使用されている事実も見いだせなかったことから,上記商標は,その指定商品に使用しても,自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものであって, 商標法3条1項3号に該当しない旨認定・判断したことを引用した上で,本願商標についても,「雪中熟成」の文字が「加工水産物,食用魚介類(生きているものを除く。)」の品質,加工方法を表示するものとして,取引上普通に使用されている事実はない(本件審決の別掲2の使用例中には「雪中熟成」の文字を使用しているものは存在しない)から,その商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標とはいえず,自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものである旨主張する。
しかし,前記1で説示したとおり,本件審決時において,本願商標がその指定商品との関係で,指定商品の取引者,需要者によって商品の産地,販売地,品質,原材料,効能,用途,生産又は使用の方法又は時期その他の特性を表示記述するものと一般に認識されるものであれば,取引上現実に使用されていた事実があったか否かにかかわらず,商標法3条1項3号に該当するというべきである。そして,本願商標が自他商品の識別力を欠くものであることは,前記(1)のとおりである。
また,登録出願に係る商標が商標法3条1項3号に該当するものであるかどうかの判断は,当該商標の構成態様と指定商品とに基づいて,個別具体的に検討・判断されるべきものであって,原告主張に係る商標登録例が存在するからといって,本願商標についての同号該当性の判断が,左右されるものではない。
エ 原告は,「雪中熟成豚」の文字からなる指定商品を第29類「豚肉」とする商標登録の例を挙げ,上記登録商標はその指定商品「豚肉」に関して,十分な自他商品識別機能を有する商標として商標登録されたものであるところ,本願商標と上記登録商標「雪中熟成豚」とは,商標自体の構成及び指定商品の特性が類似し,「雪中熟成豚」が商標登録され,本願商標が登録を拒絶されるべき合理的理由を見いだせないのであって,本件審決が本願商標の登録を認めないのは,商標登録という行政行為の平等原則からして不当である旨主張する。
しかし,登録出願に係る商標が商標法3条1項3号に該当するものであるか どうかの判断は,当該商標の構成態様と指定商品とに基づいて,個別具体的に検討・判断されるべきものであることは,前記ウに判示したとおりである。
オ したがって,原告の主張は,いずれも採用することはできない。
4 結論 以上の次第であるから,原告主張の取消事由は理由がなく,原告の本訴請求は棄却されるべきものである。
よって,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 部眞規子
裁判官 田中芳樹
裁判官 柵木澄子