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関連審決 不服2014-26743
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事件 平成 27年 (行ケ) 10194号 審決取消請求事件

原告 ザ・コールマン・カンパニー・ インコーポレイテッド
同訴訟代理人弁理士 鴨田哲彰 太田友幸 小山剛史
被告特許庁長官
同 指定代理人田村正明 根岸克弘
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2016/03/16
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2014-26743号事件について平成27年5月14日にした審決を取り消す。
事案の概要
1 1 特許庁における手続の経緯 ? 原告は,平成25年12月20日,指定商品を「第14類 時計,キーホルダー,身飾品」とする「COLEMAN」(標準文字)なる商標(以下「本願商標」という。)の登録出願(商願2013-100127号)をした(甲12,乙1)。
? 原告は,平成26年9月26日付けで拒絶査定を受けたので,同年12月26日,これに対する不服の審判を請求した。
? 特許庁は,これを,不服2014-26743号事件として審理し,平成27年5月14日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との別紙審決書(写し)記載の審決(以下「本件審決」という。)をし,同月26日,その謄本が原告に送達された。
? 原告は,同年9月18日,本件審決の取消しを求める本件審決取消訴訟を提起した。
2 本件審決の理由の要旨 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)のとおりである。要するに,本願商標は,別紙引用商標目録記載の商標(以下「引用商標」という。)と類似する商標であり,かつ,本願商標の指定商品と引用商標の指定商品とは,同一又は類似するものであるから,商標法4条1項11号に該当し,商標登録を受けることができない,というものである。
3 取消事由 本願商標が商標法4条1項11号に該当するとした判断の誤り
当事者の主張
〔原告の主張〕 本願商標と引用商標は,称呼に共通するものがあるとしても,その外観を全く異にする上,以下のとおり,類似の観念を生じるものでもないから,両者は容易に区別することができ,その商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるということはできない。よって,本願商標が商標法4条1項11号に該当するとした本件 2 審決の判断は,誤りである。
? 原告及び引用商標の商標権者の各ブランドについて ア 原告のブランドについて 原告は,1900年頃に創業したアウトドア・キャンプ用品の製造・販売を行う米国法人であり,日本においても,昭和51年に設立した日本法人であるコールマンジャパン株式会社を通じてアウトドア・キャンプ用品の製造・販売に携わり,近年,アウトドアレジャーの一般化等に伴って,デイパック等の日常的に使用される製品に関しても,需要者に広く知られるようになった。
本願商標と同一の文字列から構成される「COLEMAN」ブランドは,アウトドア・キャンプ用品の業界においては,そのトップリーダーである原告を指標するものとして著名である。加えて,現在では,「COLEMAN」ブランドの高い品質保証機能により,アウトドア・キャンプ用品のみならず,自転車やサングラス等の関連分野においても,原告の「COLEMAN」ブランドのライセンスによる使用が求められている。
本願商標及び引用商標は,共に時計を指定商品としているところ,現在,原告及びコールマンジャパンのいずれも,日本国内においては,時計の製造・販売を行っていない。しかし,原告は,米国において「COLEMAN」ブランドの腕時計を販売しており,日本国内においても,輸入販売会社やインターネットサイトを通じて上記腕時計を購入することができる。よって,原告の「COLEMAN」ブランドを付した時計は,日本の国内市場においても一定数流通しており,愛好者も存在する。
イ 引用商標の商標権者のブランドについて 引用商標の商標権者であるリズム時計工業株式会社(以下「リズム時計」という。)は,家庭用時計の製造・販売等を行っている日本法人であり,出資者であるシチズンホールディングスとの商標の相互使用契約に基づいて「CITIZEN」という商標を付した置き時計等の家庭用時計を多数販売しているほか,「コールマ 3 ン657」など自社ブランドの家庭用時計も相当数販売している。このように,リズム時計も,時計の分野において,「CITIZEN」ブランドとの結びつきや自社ブランドによって需要者に広く認知されており,その商号である「RHYTHM」又は「リズム」という商標により,原告のブランドと明確に区別できるブランドを確立しているということができる。
? 本願商標及び引用商標から生じる各観念について ア 本願商標の観念について 時計を含む原告の取扱製品は,アウトドア・キャンプ用品の業界に限られず,広く日本国内の需要者に知られているので,本願商標からは,アウトドア・キャンプ用品について著名な原告のブランドである「COLEMAN(コールマン)」との観念が生じる。
イ 引用商標の観念について (ア) 日本語においては,「ビジネスマン」 「ホテルマン」などのように,他の ,英語を語源とする言葉と「マン」との結合によって「〜する人」という意味合いの言葉が創られ,通用されている。
また,「コール」は,英語の「CALL」を語源とし,「大声で呼ぶ」「呼び起こ ,す」 「電話をかける」という意味合いを有する語として他の単語と結合し, , 「モーニングコール」「コールセンター」等の造語を構成する。
, したがって,指定商品である時計の取引分野においては,時計が備える目覚ましの機能ともあいまって,引用商標から,「呼び起こす」という意味合いの「コール」と「人」という意味合いの「マン」を結合させた造語「コールマン」として,目覚まし時計を想起させる「呼び起こす人」との観念が生じる。
(イ) 日本の需要者,特に時計に係る取引分野の需要者において,片仮名表記の「コールマン」からは,英語表記の「COLEMAN」と併用されていない場合,必ずしも原告のブランドである「COLEMAN(コールマン)」との観念が生じるとはいえない。
4 すなわち,原告のブランドである「COLEMAN」は,米国発祥であることから,原告の商品や商品カタログのブランドには,基本的に英語表記の「COLEMAN」が使用されている。原告は,その日本法人の名称のコールマンジャパン以外は,片仮名表記の「コールマン」を商標として積極的に使用していない。
確かに,本願商標から「コールマン」との称呼が生じるので,取引者において原告のブランドである「COLEMAN」を「コールマン」と片仮名で表記する場合もあり,また,片仮名表記の「コールマン」が原告のブランドである「COLEMAN」に係る商品の販売に当たって使用される事例は多数あるものの,基本的には英語表記の「COLEMAN」と併用され,原告のブランドである「COLEMAN」に係る商品であることが容易に理解される。
ウ したがって,本願商標と引用商標とは,観念において大きく相違する。
? 出所混同のおそれについて ア @原告の日本法人であるコールマンジャパンの売上高は,平成23年以降,100億円を超えていること,A前記?アのとおり,原告のブランドである「COLEMAN」は,自転車やサングラス等の関連分野においても,ライセンスによって広く使用されていること,B特に,「COLEMAN」ブランドの時計については,米国内外を問わず,多額の売上げがあることから,原告のブランドである「COLEMAN」は,原告の商品の主要な市場である日本において著名なものである。
したがって,時計に係る取引分野において,取引者,需要者が,本願商標が付された商品をリズム時計の商品と誤認するおそれも,引用商標が付された商品を原告の商品と誤認するおそれも,全くないということができる。
イ また,原告の商品又はその包装には,英語表記の「COLEMAN」又は「Coleman」ランタンロゴが付され,これらの欧文字から「コールマン」との称呼が生じ,全体として出所表示機能を発揮している。原告のアウトドア・キャンプ用品の関係で,取引上,片仮名表記の「コールマン」が使用されることはあるものの,これが出所機能を発揮するのは,英語表記の「COLEMAN」又は「C 5 oleman」ランタンロゴが商標として使用されて著名性を獲得しているからであり,大きなグッドウィルが化体しているのは,あくまでも英語表記の「COLEMAN」又は「Coleman」ランタンロゴの商標である。
他方,リズム時計が販売する時計自体には,英語表記の「RHYTHM」が商標として付されており,片仮名表記の「コールマン」の記載はない。また,いずれのオンライン販売サイトにおいても,リズム時計の時計は,「コールマン657」のように片仮名表記の「コールマン」を他の数字と組み合わせた名称のものとして販売されており,原告の著名な商標との抵触を避けるために,このように引用商標が使用されているものと考えられる。
以上の本願商標及び引用商標の使用状況からも,出所混同のおそれはないものということができ,現に,原告又はコールマンジャパンに対して出所混同に関する苦情は寄せられていない。
さらに,リズム時計は,時計に係る取引分野において既に一定の地位を築いていることから,原告の商標をフリーライド等の目的で使用することは考えられず,将来にわたっても,引用商標の使用に当たっては,上記取引分野における原告のブランドの周知性を考慮して引用商標の出所表示機能に留意し,本願商標と同様の観念が生じて類似と判断される態様の使用は避けるものと考えられる。したがって,本願商標と引用商標については,将来的にも出所混同のおそれはないものということができる。
ウ 本件審決の判断のとおり,本願商標と引用商標が類似するとしても,原告の商品の出所について誤認混同が生じることはない。
〔被告の主張〕 以下のとおり,本願商標は,商標法4条1項11号に該当し,同旨の本件審決の判断に誤りはない。
? 本願商標の指定商品と引用商標の指定商品の類否について 本願商標の指定商品中の「時計」は,引用商標の指定商品「時計,時計の部品お 6 よび附属品」とは,同一又は類似のものである。
? 本願商標について ア 本願商標は,「COLEMAN」の欧文字を標準文字で横書きして成るものであるが,特定の意味を有する既成の語として親しまれたものではない。
イ(ア) 「Coleman(COLEMAN)」の欧文字から成る標章(以下「Coleman文字標章」という。)は,日本において,遅くとも平成11年から平成27年までの間,原告の主要商品であるアウトドア・キャンプ用品に継続的に使用されており,本件審決時である平成27年5月頃には既に,日本におけるその種商品の取引者,需要者間において,相当程度広く知られるに至っていたということができる。
しかし,Coleman文字標章を使用した時計は,日本においては,輸入販売会社や米国のインターネットサイトを通じてのみ入手でき,国内における具体的な流通数量は,明らかではない。そして,アウトドア・キャンプ用品と時計とは,商品の用途が異なり,加えて,商品の製造及び販売部門も異なるのが通常であり,また,需要者層についても,その主要な範囲において重なることはないから,相互に強い関連性を有するものということはできない。
そうすると,Coleman文字標章は,日本において,アウトドア・キャンプ用品との関係においては,原告の業務に係る商品を表示するものとして認識されるものの,時計との関係においては,何人の業務に係る商品を表示するものであるか認識されることはないというべきであり,このことは,Coleman文字標章とつづりを共通にする本願商標についても当てはまる。
(イ) 前記(ア)によれば,本願商標は,本願商標の指定商品中の「時計」との関係においては,特定の意味合いを想起させることはない。
したがって,本願商標は,その構成文字に相応して,これを英語風に発音した「コールマン」との称呼を生じ,他方,特定の観念を生じない。
? 引用商標について 7 引用商標は,「コールマン」の片仮名をゴシック体で横書きして成るところ,各構成文字は,同じ書体及び大きさで,等間隔にまとまりよく一体的に表されていることから,視覚上,まとまりがある一体的なものとして看取・把握される。また,「コールマン」の片仮名は,特定の意味を有する既成の語ではなく,上記の構成態様とあいまって複数の既成の語を組み合わせたものとして理解されるものでもない。
以上に鑑みると,引用商標は,その構成全体をもって不可分一体の造語から成り,特定の意味合いを想起させることのないものといえる。
したがって,引用商標からは,「コールマン」との称呼が生じ,他方,特定の観念は生じない。
? 本願商標と引用商標との類否について 本願商標及び引用商標は,共に同一の「コールマン」との称呼を生じるものであり,また,いずれも特定の観念を生じないものであるから,観念において区別することはできない。
欧文字から成る本願商標と片仮名から成る引用商標は,外観において文字の種類が相違するものの,いずれも平易な書体であり,加えて,欧文字から成る商標をその読みに対応した片仮名で代替的に表記することは,取引上,一般に行われていることから,上記外観における差異は,取引者,需要者に対して特段印象付けられるものではない。
したがって,本願商標と引用商標とは,「コールマン」の称呼が同一であり,観念においては区別することができないものであって,外観における差異も特段印象付けられるものではないから,これらが取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すれば,本願商標と引用商標とを同一又は類似する商品(時計,時計の部品および附属品)に使用した場合,その商品の出所につき誤認混同を生じるおそれがあるというべきである。
そして,時計に係る取引分野において,上記の結論に影響を及ぼす取引の実情は,見いだされない。
8 したがって,本願商標は,引用商標と類似する商標である。
? 商標法4条1項11号該当性について 本願商標は,引用商標と類似する商標であり,かつ,本願商標の指定商品は,引用商標の指定商品と同一又は類似するものである。
したがって,本願商標は,商標法4条1項11号に該当する。
? 原告の主張について ア 原告は,時計を含む原告の取扱製品は,アウトドア・キャンプ用品の業界に限られず,広く日本国内の需要者に知られているので,本願商標からは,アウトドア・キャンプ用品について著名な原告のブランドである「COLEMAN(コールマン)」との観念が生じる旨主張する。
しかし,前記?イのとおり,アウトドア・キャンプ用品と時計とは,相互に強い関連性を有するものということはできない。しかも,日本の輸入品時計(ウオッチ)市場における原告のブランドを付した商品の市場占有率は,最大でも0.1%未満にとどまるものと推計される。よって,原告のブランドは,日本における時計の取引者,需要者間に広く知られるに至っているということはできず,時計との関係において本願商標から直ちに原告のブランドが想起されることはない。
イ 原告は,本願商標から著名な原告のブランドである「COLEMAN(コールマン)」との観念が生じるのに対し,引用商標からは「呼び起こす人」との観念が生じるとして,本願商標と引用商標とは,観念において大きく相違する旨主張する。
しかし,前記ア及び?イのとおり,本願商標から,時計との関係において,直ちに原告のブランドが想起されることはなく,特定の観念が生じるものではない。また,前記?のとおり,引用商標からも,特定の観念は生じない。したがって,原告の前記主張は,前提において誤りがある。
ウ 原告は,リズム時計の時計は,「コールマン657」のように片仮名表記の「コールマン」を他の数字と組み合わせた名称のものとして販売されており,原告 9 の著名な商標との抵触を避けるために,このように引用商標が使用されているものと考えられることなどから,出所混同のおそれはない旨主張する。
しかし,商標の登録要件の有無を判断する際は,指定商品ないし指定役務に係る取引分野における一般的,恒常的な取引事情を考慮すべきである。原告が挙げる引用商標の使用例は,個別事情にすぎず,これによって出所混同のおそれがないとはいい難い。そして,時計に係る取引分野において,本願商標と引用商標との類似性を否定すべき一般的,恒常的な取引事情は,みられない。
エ 原告は,現に,原告又はコールマンジャパンに対して出所混同に関する苦情は寄せられていない旨主張する。
しかし,商標法4条1項11号所定の商標,すなわち,他人の登録商標に類似する商標であって,その商標登録に係る指定商品について使用する商標は,商品の出所混同を生じるおそれがあるというべきであるから,原告が主張するとおり現に出所混同に関する苦情が寄せられていないとしても,そのことによって同号の適用の可否が左右されるものではない。
オ 原告は,リズム時計は,将来にわたっても,引用商標の使用に当たっては,本願商標と同様の観念が生じて類似と判断される態様の使用は避けるものと考えられる旨主張する。
しかし,原告が主張する内容は,前記ウのとおり商標の登録要件の有無を判断する際に考慮すべき指定商品ないし指定役務に係る取引分野における一般的,恒常的な取引事情ということはできない。
当裁判所の判断
1 取消事由(本願商標が商標法4条1項11号に該当するとした判断の誤り)について ? 商標の類否判断 商標法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決 10 すべきであるが,それには,そのような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に観察すべきであり,かつ,その商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする。
そして,商標の外観,観念又は称呼の類似は,その商標を使用した商品につき出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず,したがって,上記3点のうちその1点において類似するものでも,他の2点において著しく相違することその他取引の実情等によって,何ら商品の出所に誤認混同をきたすおそれの認め難いものについては,これを類似商標と解すべきではない(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。
そこで,以上の見地から,本願商標と引用商標との類否について検討する。
? 外観について 本願商標の外観は,前記第2の1?のとおり,アルファベットの大文字「COLEMAN」を標準文字で横書きして成る(甲12,乙1)。
引用商標の外観は,別紙引用商標目録記載のとおり,「コールマン」の片仮名をゴシック体で横書きして成る(甲13の1)。
? 称呼について 本願商標から一般的な英語の発音方法に従って「コールマン」との称呼が生じることは,当事者間に争いがない。
引用商標からは,その構成文字に相応して「コールマン」との称呼が生じる。
? 観念について ア COLEMANについて 後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下のとおり認められる。
(ア) 原告は,1900年代初頭に創業した米国法人であり,その正式名称の英語表記は,THE COLEMAN COMPANY,INC.である。原告は,現在に至るまで,米国内において,屋外用のアークランタン,キャンプ用ストーブ, 11 スチールベルトクーラー等のアウトドア・キャンプ用品の開発・製造・販売に携わっており,昭和51年には,日本国内においてアウトドア・キャンプ用品の販売を開始した。原告の日本法人であるコールマンジャパン株式会社は,平成4年頃に始業し,本件審決時現在,東京都,大阪市,名古屋市,福岡市及び札幌市内の営業所において,販売活動に携わっている(甲1の1〜3,甲2の3)。
(イ) コールマンジャパンは,日本において,「Coleman」の標章を付した屋外用のランタン,ストーブ,調理器具,折り畳み式の椅子,テントなどのアウトドア・キャンプ用品(甲2の1・2)のほか,傘,バンダナ,キャップなど日用品としても使用可能な商品(甲2の3)を販売しており,また,ライセンシーが「Coleman」の標章を付したポータブル家電,双眼鏡等のアウトドア・キャンプ用品や,靴,自転車,サングラス,タオルなど日用品としても使用可能な商品(甲2の4〜10)を販売している。また,それらの商品用の包装箱(甲8の3)にも「Coleman」の標章が付されている。
コールマンジャパンの年間売上高は,平成4年以降,おおむね数十億円単位で推移しており,平成23年から平成27年にかけては100億円を超えている。前記のとおりライセンシーにより「Coleman」の標章が付されたバイクやバッグ等の年間売上高も,平成24年から平成27年にかけて4億円を超えている(甲11の1・2)。
(ウ) コールマンジャパンが作成した平成18年商品カタログ(甲1の1,2の4),平成22年商品カタログ(甲2の7),平成24年商品カタログ(甲2の9)及び平成25年商品カタログ(甲2の10)の各表紙には「Coleman」の表記があり,本願商標と同一の構成文字から成る「COLEMAN」の表記はないが,平成11年商品カタログ(甲2の3),平成20年商品カタログ(甲2の5),平成21年商品カタログ(甲1の2,2の6),平成23年商品カタログ(甲1の3,2の8),平成26年商品カタログ(甲2の1)及び平成27年商品カタログ(Webカタログ。甲2の2)の各表紙には,「Coleman」の表記と共に,それ 12 ぞれ「COLEMAN OUTDOOR PRODUCTS」「COLEMAN2 ,008」 「COLEMAN2009」 「COLEMAN , , BOOK 2011」,「COLEMAN PRODUCTS 2014」「COLEMAN , PRODUCTS 2015」と,「COLEMAN」を含む表記がある。
これらのカタログには,コールマンジャパンが日本国内において販売している前記(イ)の商品が掲載されているところ,その大半には「Coleman」の標章が付されている。
(エ) また,コールマンジャパンの納品書(甲8の1)及び請求書(甲8の2の1・2)にも「Coleman」の標章が付されており,請求書(甲8の2の2)の冒頭には「COLEMAN JAPAN CO.,Ltd.」と記載されている。
(オ) 片仮名の「コールマン」に関して,前記(ウ)のコールマンジャパンが作成した商品カタログのいずれにも,「コールマン製品(又は「コールマンの製品」)の修理は,お買い求めの販売店にご依頼ください。」との記載があり,それ以外にも,原告の来歴や商品紹介等の欄において「コールマン・ブランド」(甲2の4)など,片仮名表記の「コールマン」を含む記載が多数存在する(甲1の1,2の1〜5,2の10)。
(カ) 加えて,インターネットの検索エンジンであるGoogle及びYahooにおいて片仮名表記の「コールマン」を検索すると,いずれの検索結果においても原告に関する内容が冒頭に示される(甲3の1・2)。
イ 時計について 後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下のとおり認められる。
(ア) 原告の時計は,日本国内においては,米国に輸出して販売する目的で製造されている一部を除き,原告及びコールマンジャパンのいずれにおいても,製造・販売されていない。
しかし,日本国内の取引者,需要者は,輸入販売会社やインターネットサイトを通じて,原告が米国において販売している腕時計や懐中時計を購入することは可能 13 であり,実際に購入している者も少なからず存在することが推認できる。これらの腕時計や懐中時計には,文字盤等に「Coleman」の標章が付されているものと本願商標である「COLEMAN」が付されているものとがある(甲5,6)。
(イ) また,原告の時計を紹介するインターネットサイト(甲6)においても,「ColemanコールマンMen’s40505アナログ」「他のコールマンの ,メンズ腕時計を見る」「COLEMANコールマン懐中時計オープンフェイスブロ ,ンズ」など,「Coleman」 「COLEMAN」及び「コールマン」の記載が ,相当数存在する。
(ウ) さらに,原告の時計に関するブログ(甲5)にも,「コールマンの小物(日本製・懐中時計) , 」 「コールマン ランタン 200 目覚まし時計」 「コー ,ルマンの腕時計」など,片仮名表記の「コールマン」を含む記載が複数存在する。
(エ) 引用商標の商標権者は,別紙引用商標目録記載のとおりリズム時計であり,同社は,掛け時計,置き時計,目覚まし時計などの家庭用時計等の製造・販売を行っている日本法人である(甲7の1)。
本件証拠上,同社において,その製造・販売する目覚まし時計の1つの名称を「コールマン657」とした以外に,引用商標である「コールマン」を使用していることは,認められない(甲7の2,9の1〜3)。
(オ) 前記ア(カ)のとおりインターネットの検索エンジンであるGoogle及びYahooにおいて片仮名表記の「コールマン」を検索した結果として本件に証拠提出されている甲第3号証の1・2には,リズム時計又は上記「コールマン657」を含むリズム時計が製造・販売する商品に関する情報は,表示されていない。
観念について (ア) 本願商標の観念について 本願商標に関する取引の実情等についてみると,@原告は,昭和51年に日本国内においてアウトドア・キャンプ用品の販売を開始しており,コールマンジャパンは,平成4年頃に始業し,本件審決時現在,東京都,大阪市,名古屋市,福岡市及 14 び札幌市内の営業所において,販売活動に携わっていること(前記ア(ア)),Aコールマンジャパンは,日本において,ライセンシーにより「Coleman」の標章が付された商品も含め,アウトドア・キャンプ用品のほか,傘,靴,自転車,タオルなど日用品としても使用可能な商品を販売していること(前記ア(イ)),Bコールマンジャパンの年間売上高は,平成4年以降,おおむね数十億円単位で推移し,平成23年から平成27年にかけては100億円を超えており,ライセンシーにより「Coleman」の標章が付されたバイクやバッグ等の年間売上高も,平成24年から平成27年にかけて4億円を超えていること(前記ア(イ)),Cコールマンジャパンの平成11年から平成27年にかけての商品カタログ,これらの商品カタログに掲載され,日本国内において販売されている商品,商品用包装箱,取引に使用する請求書及び納品書には,「Coleman」の標章が付されており,また,上記商品カタログの表紙及び請求書には「COLEMAN」を含む表記も見られること(前記ア(ウ),(エ))が認められる。
これらの事実から,「Coleman」の標章は,原告が昭和51年に日本国内においてアウトドア・キャンプ用品の販売を開始して以降,まず,アウトドア・キャンプ用品の業界において著名になったことが認められる。さらに,「Coleman」の標章が付された原告の商品及びライセンス商品には,日用品としても使用可能な商品も多く含まれ,コールマンジャパンがこれらの商品を販売していることから,「Coleman」の標章は,日用品の取引者,需要者の間でも著名な商標として周知されるに至っているものと認められる。
そして,本願商標は,「Coleman」の標章と同じアルファベットのつづりを全て大文字で表記したものであり,上記標章と共に商品カタログの表紙等に使用されていることから,上記標章と同様に,まず,アウトドア・キャンプ用品の業界において著名になり(この点は,当事者間に争いがない。,その後,日用品の取引 )者,需要者の間でも著名な商標として周知されるに至ったものということができる。
原告の時計は,日本国内においては,米国に輸出して販売する目的で製造されて 15 いる一部を除き,原告及びコールマンジャパンのいずれによっても,製造・販売されていないが,日本国内の取引者,需要者は,輸入販売会社やインターネットサイトを通じて,原告が米国において販売している腕時計や懐中時計を購入することは可能であり,実際に購入している者も少なからず存在することが推認できる。これらの腕時計や懐中時計には,文字盤等に「Coleman」の標章が付されているものと本願商標である「COLEMAN」が付されているものとがある(前記イ(ア))。
原告の時計に関する上記の事実及び前記のとおり本願商標が日用品の取引者,需要者の間でも著名な商標として周知されるに至っていることに鑑みれば,原告の時計がいまだアウトドア・キャンプ用品をはじめとする他の原告の取扱商品ほどは日本市場に浸透していないとしても,時計に係る取引者,需要者は,前記のとおり文字盤等に本願商標又は「Coleman」の標章が付された腕時計や懐中時計を見れば,原告が経営を多角化して時計の分野にも進出してきたものと捉え,原告の商品として認識するものということができる。
以上の本願商標に関する取引の実情等に加え,原告の名称の英語表記がTHECOLEMAN COMPANY,Ltd.であること(前記ア(ア))にも鑑みれば,本願商標からは,原告のブランドとの観念が生じるものというべきである。
(イ) 引用商標の観念について コールマンジャパンが作成した平成11年から平成27年にかけての商品カタログのいずれにも,修理に関する注意書及び原告の来歴や商品紹介等の欄において,「コールマン」を含む記載が多数存在していること(前記ア(オ))から,コールマンジャパンの取扱商品に関する取引においては「コールマン」が原告のブランドを示すものとして使用されているということができる。そして,「Coleman」の標章が付された商品が,アウトドア・キャンプ用品のみならず,日用品として使用可能な商品についても販売されていること(前記ア(イ))から,「コールマン」は,日用品の取引者,需要者の間で原告のブランドを示すものとしても,認識され 16 ていることが推認できる。
そうすると,日本国内の時計に係る取引者,需要者は,「コールマン」について,原告のブランドを示すものとしても認識するということができる。
以上の事実に鑑みれば,引用商標から,原告のブランドとの観念も生じるものということができる。
(ウ) 対比 以上のとおり,本願商標及び引用商標のいずれからも,原告のブランドとの観念が生じ,したがって,両商標からは同一の観念が生じる。
? 小括 以上のとおり,本願商標及び引用商標は,同一の称呼及び観念が生じるものである。そして,本願商標と引用商標の外観は,類似するとはいえないものの,その差異は,称呼及び観念の同一性をしのぐほどのものではない。
したがって,本願商標と引用商標とは,出所につき誤認混同を生ずるおそれがあり,両商標は類似するものということができる。
? 指定商品について 本願商標の指定商品が第14類の「時計,キーホルダー,身飾品」であるのに対し(甲12,乙1),引用商標の指定商品は別紙引用商標目録記載のとおり第14類の「時計,時計の部品および附属品」であり(甲13の1・2),本願商標の指定商品のうち「時計」は,引用商標の指定商品と同一又は類似のものである。
? 原告の主張について ア 原告は,日本の需要者,特に時計に係る取引分野の需要者において,片仮名表記の「コールマン」からは,英語表記の「COLEMAN」と併用されていない場合,必ずしも原告のブランドである「COLEMAN(コールマン)」との観念が生じるとはいえない旨主張する。
しかし,前記?ア(オ),(カ),イ(イ)及び(ウ)のとおり,コールマンジャパンが作成した商品カタログのいずれにも,「コールマン」を含む記載が多数存在し,ま 17 た,原告の時計を紹介するインターネットサイト及び原告の時計に関するブログにおいても,「コールマン」を含む記載が複数存在しており,上記ブログにおいては,「コールマン」を含む記載のうち,英語表記の「COLEMAN」と併用されていないものも,かなりある(甲5)。さらに,インターネットの検索エンジンにおいて片仮名表記の「コールマン」を検索すると,いずれの検索結果においても原告に関する内容が冒頭に示される。
以上によれば,引用商標の「コールマン」からは,英語表記の「COLEMAN」と併用されていない場合であっても,原告のブランドとの観念も生じるということができる。
イ 原告は,本願商標及びリズム時計による引用商標の使用状況からも,出所混同のおそれはないものということができ,現に,原告又はコールマンジャパンに対して出所混同に関する苦情は寄せられていない旨主張する。
しかし,商標法4条1項11号に係る商標の類否は,商標の登録の可否に関わる要件であるから,上記類否を判断する際に考慮すべき取引の実情は,特定の商品等に関わる個別的な事情や,一時的な事情ではなく,当該指定商品全般についての一般的,恒常的な取引の実情であると解すべきであるところ,原告の主張に係る本願商標及びリズム時計による引用商標の使用状況は,これに当たらない。また,原告又はコールマンジャパンに対して出所混同に関する苦情が寄せられていないとしても,現実に出所混同が生じることは商標法4条1項11号に該当する要件とされていないから,出所混同のおそれを否定することはできない。
ウ 原告は,リズム時計は,将来にわたっても,引用商標の使用に当たっては,本願商標と同様の観念が生じて類似と判断される態様の使用は避けるものと考えられるとして,本願商標と引用商標については,将来的にも出所混同のおそれはないものということができる旨主張する。
しかし,商標権の移転や使用権の許諾等によって第三者が引用商標を使用することも考えられ,原告主張の事実は,将来にわたる出所混同のおそれを否定するもの 18 ではない。
エ 原告は,本件審決のとおり,本願商標と引用商標が類似するとしても,原告の商品の出所について誤認混同が生じることはない旨主張する。
しかし,商標法が先願主義をとる以上,先に出願・登録された引用商標と類似する本願商標は,商標法4条1項11号に該当するものといわざるを得ない。
? 小括 したがって,本願商標は,商標法4条1項11号に該当し,同旨の本件審決の判断に誤りはないというべきである。
2 結論 以上によれば,原告主張の取消事由は理由がないから,原告の請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 部眞規子
裁判官 田中芳樹
裁判官 鈴木わかな
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