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関連審決 不服2015-13533
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事件 平成 28年 (行ケ) 10109号 審決取消請求事件

原告X
同訴訟代理人弁理士 中川邦雄
被告特許庁長官
同 指定代理人松浦裕紀子 土井敬子 冨澤武志
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2016/10/12
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2015-13533号事件について平成28年3月29日にした審決を取り消す。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等 (1) 原告は,平成26年10月15日,別紙のとおりの構成からなり,第30類「バウムクーヘン」を指定商品とする商標(以下「本願商標」という。)の登録出願(商願2014-86622号)をした(甲22)。
(2) 原告は,平成27年3月12日付けの手続補正書により,指定商品を第30類「鉾田市産のバウムクーヘン」と補正した(甲25)。
1 (3) 原告は,平成27年5月1日付けで拒絶査定を受けたので,同年7月16日,これに対する不服の審判を請求した(甲26,27)。
(4) 特許庁は,これを,不服2015-13533号事件として審理し,平成28年3月29日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との別紙審決書(写し)記載の審決(以下「本件審決」という。)をし,同年4月8日,その謄本が原告に送達された。
(5) 原告は,平成28年5月7日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。
2 本件審決の理由の要旨 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)のとおりである。要するに,本願商標は,商標法3条1項3号に該当するから,登録を受けることができない,というものである。
3 取消事由 本願商標が商標法3条1項3号に該当するとした判断の誤り
当事者の主張
〔原告の主張〕 1 本願商標の商標法3条1項3号該当性について (1) 本願商標の構成態様について 本願商標の称呼は,「ホコタバウム」という6音数の構成であって,よどみなく容易に一気に称呼できる語呂,音数である。
また,本願商標の外観は,「HOKOTABAUM」と欧文字の大文字10文字からなり,同一フォント,同一ポイントの各文字を一連に横書きしたものであって一体不可欠のものである。また,全体としてやや太字で,ゴジック体調の文字であり極めて特徴のある書体であって,「HOKOTA」の文字と「BAUM」の文字との間にはスペースも存在しない。
さらに,本願商標は造語であるから,産地や販売地を直感させるものではなく, 2 特定の観念が生じることもない。
加えて,本願商標のように,「HOKOTA」の文字と別の文字とがスペースなく結合した標章や,地域名を認識させる文字部分及び「バウム」の文字部分に照応する各文字が全て欧文字表記された標章はない。
したがって,本願商標は「HOKOTA」と「BAUM」に分離して観察すべきではない。
(2) 「HOKOTA」から生じる認識について 日本には少なからず鉾田姓も存在するから,需要者は,「HOKOTA」の文字部分から「鉾田姓」も連想し,本願商標全体が鉾田市を産地又は販売地とするバウムクーヘンであることを表したものと認識されることはない。
(3) 取引状況について 鉾田市は,バウムクーヘンの産地,販売地として知られている地域では全くなく,当該地名が本願商標の指定商品の産地又は販売地として,取引者,需要者に認識されているとはいえない。
(4) 商標登録例について 「和バウム」 「グレースバウム」 「HOTBAUM」 「仙台伊達バウム」や, , , ,「重信バーム」「不来方バウム」「LINDENBAUM\リンデンバウム」「北 , , ,アルプスバーム」「niitsuバウム」「はりまや橋バウム」などと品質,産地, , ,販売地を表示する本願商標と構成態様が極めて似ている商標が多数登録されていることからすれば,本願商標は当然に登録されるべきである。
2 使用による識別力の獲得について 本願商標の指定商品は,「モンドセレクション」などの世界三大大会等で受賞した評判の商品で,国際的品評会でも高い評価を得ているとともに,国内でも取引に使用されており,極めて著名であるほか,本願商標を使用した商品の販売期間,販売量,受賞歴,マスメディアに取り上げられた回数等によれば,本願商標は,商品の出所が十分に認識されるほどの識別力を獲得している。
3 3 結論 以上によれば,本願商標は,商標法3条1項3号に該当するものではなく,仮に同号に該当したとしても,識別力を獲得しているから,商標登録を受けることができる。
〔被告の主張〕 1 本願商標の商標法3条1項3号該当性について(1) 本願商標について ア 本願商標は,全体として,ややデザイン化された書体で表されているものの,いまだ普通に用いられる方法の域を脱しない方法で表示するものである。
また,本願商標は,その構成中に「BAUM」の文字を含んでなるところ,菓子業界においては,当該文字及びその片仮名表記である「バウム」の文字を用いた「○○BAUM」や「○○バウム」の表示をもって,その商品が「バウムクーヘン」であることを表わしている事実がある。
そうすると,本願商標をその指定商品について使用した場合,これに接する取引者,需要者は,その構成中の「BAUM」の文字部分を商品「バウムクーヘン」を表したものと理解し,これに「HOKOTA」の文字を冠したものと認識するといえる。
イ そして,当該「HOKOTA」の文字は,「ほこた」の読みが自然に生じるものであり,その読みに照応する語としては,茨城県の市(自治体)を意味する「鉾田」がある。
また,欧文字表記の「HOKOTA」 「Hokota」 ( )は,茨城県の鉾田市を指す語として使用されている事実がある。
さらに,菓子業界において,生産又は販売される地域名等と「バウム」の商品名とを組み合わせた「○○バウム」の標章が用いられている事実がある。
ウ そうすると,本願商標は,商品の生産又は販売が茨城県の鉾田市であることを指す「HOKOTA」の文字と商品がバウムクーヘンであることを表す「BAU 4 M」の文字とを組み合わせてなるものとして認識されるといえる。
(2) 以上によれば,本願商標は,ややデザイン化された文字により表されているものの,いまだ普通に用いられる方法の域を脱しない方法で表示する標章のみからなるものであり,また,その構成全体をもって「茨城県の鉾田市で生産又は販売されるバウムクーヘン」ほどの意味合いを容易に想起させるものである。
そうすると,本願商標をその指定商品について使用した場合,これに接する取引者,需要者は,「鉾田市を産地又は販売地とするバウムクーヘン」であることを表してなるものと認識するにとどまるというべきである。
したがって,本願商標は,その指定商品との関係において,商品の産地,販売地,品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標といえるから,商標法3条1項3号に該当する。
(3) 原告の主張に対する反論 ア 本願商標の構成態様について 原告は,本願商標の構成態様からは,「HOKOTA」と「BAUM」に分離して観察されることはない旨主張する。
しかし,本願商標を構成する「HOKOTA」の文字及び「BAUM」の文字の意味や使用状況,取引の実情等に照らすと,本願商標に接する取引者,需要者は,これを商品の生産又は販売が茨城県の鉾田市であることを指す「HOKOTA」の文字と,商品「バウムクーヘン」を表す「BAUM」の文字とを組み合わせてなるものとして看取,把握するといえる。
イ 「HOKOTA」から生じる認識について 原告は,日本には少なからず鉾田姓も存在するから,本願商標から「鉾田市」との観念が生じることはない旨主張する。
しかし,たとえ,姓としての「鉾田」が存在するとしても,「鉾田」は,姓として広く一般に馴染まれたものともいい難く,また,「鉾田」姓が存在することにより,「HOKOTA」の文字から茨城県の鉾田市の意味が生じることが否定される 5 わけではない。
ウ 取引状況について 原告は,鉾田市が本願商標の指定商品の産地又は販売地として,取引者,需要者に認識されているとはいえない旨主張する。
しかし,商標法3条1項3号は,取引者,需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る表示態様の商標につき,それゆえに登録を受けることができないとしたものであって,当該表示態様が,商品の品質等を表すものとして必ず使用されるものであるとか,現実に使用されている等の事実は,同号の適用において必ずしも要求されない。
エ 商標登録例について 原告は,本願商標と構成態様が極めて似ている商標が多数登録されていることからすれば,本願商標は当然に登録されるべきである旨主張する。
しかし,登録出願に係る商標が商標法3条1項3号に該当するものであるか否かは,当該登録出願の査定時又は審決時において,その商標が使用される商品の取引の実情等に基づいて,個別具体的に判断されるべきものであるところ,原告の挙げる登録商標例は,いずれも本願商標と構成態様が異なるものであるから,本願商標の同号該当性の判断に影響するものではない。
2 使用による識別力の獲得について 原告は,本願商標の指定商品は,商品の出所が十分に認識されるほどの識別力を獲得している旨主張する。
しかし,本願商標を使用した商品の販売期間,販売量,マスメディアに取り上げられた回数等の具体的な主張,立証はされておらず,本願商標をその指定商品について使用した結果,原告の業務に係る商品であることを取引者,需要者が認識できるものとなっていると認められる事実までは見いだせない。
当裁判所の判断
1 商標法3条1項3号について 6 商標法3条1項3号は,「その商品の産地,販売地,品質,原材料,効能,用途,形状(包装の形状を含む。…),生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴,数量若しくは価格又はその役務の提供の場所,質,提供の用に供する物,効能,用途,態様,提供の方法若しくは時期その他の特徴,数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は,商標登録を受けることができない旨を規定し,同条2項は,「前項第3号から第5号までに該当する商標であっても,使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては,同項の規定にかかわらず,商標登録を受けることができる」旨を規定している。
その趣旨は,商標法3条1項3号に該当する商標は,特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに,一般的に使用される標章であって自他商品識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないものとして,商標登録の要件を欠くが,使用をされた結果,自他商品識別力を獲得するに至った場合には,商標登録を受けることができるものとしたものである。
そして,商標登録出願に係る商標が商標法3条1項3号にいう「商品の産地又は販売地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に該当するというためには,必ずしも当該指定商品が当該商標の表示する土地において現実に生産され又は販売されていることを要せず,需要者又は取引者によって,当該指定商品が当該商標の表示する土地において生産され又は販売されているであろうと一般に認識されることをもって足りるというべきである(最高裁昭和60年(行ツ)第68号同61年1月23日第一小法廷判決・裁判集民事147号7頁)。
2 本願商標の商標法3条1項3号該当性 (1) 本願商標の構成態様について ア 本願商標は,別紙のとおりの構成からなり,「鉾田市産のバウムクーヘン」を指定商品とするものである。
イ まず,本願商標には,「BAUM」の欧文字が含まれている。
7 そして,証拠(乙1〜14)によれば,菓子業界においては,取扱商品としてバウムクーヘンを表示するに際し,「URUOIBAUM」 「HITOTSUGI ,BAUM」「PREMIUM , BAUM」「This , IZU BAUM」「KO ,YAMA´S BAUM」「WHISKY , BAUM」「WHITE , BAUM」,「EUCALY BAUM」 「ねこバウム」 「TERABAUM」などと, , , 「BAUM」との文字部分,又はその片仮名表記である「バウム」との文字部分と,その他の文字部分を組み合わせた標章を用いることが少なからずあると認められる。
そうすると,本願商標のうち「BAUM」の部分は,需要者又は取引者にバウムクーヘンを認識させるということができる。
ウ また,本願商標には,「HOKOTA」の欧文字が含まれている。
そして,「HOKOTA」の文字部分は,「ほこた」との称呼が自然に生じるところ,証拠(乙15〜17)によれば,「ほこた」との称呼を有する地方自治体である鉾田市が茨城県に所在することが認められる。また,証拠(乙18〜25)によれば,鉾田市を表示するに際し,「HOKOTA」又は「Hokota」との欧文字を用いることが少なからずあると認められる。
そうすると,本願商標のうち「HOKOTA」の部分は,需要者又は取引者に茨城県所在の鉾田市を認識させるということができる。
エ 以上のとおり,本願商標は,需要者又は取引者に,「BAUM」の部分は,バウムクーヘンを認識させ,「HOKOTA」の部分は,鉾田市を認識させるものである。
そして,証拠(乙26〜33)によれば,菓子業界においては,取扱商品を表示するに際し,「遠野バウム」 「広島バウム」 「箕面バウム」 「琉球バウム」 「原宿 , , , ,バウム」「御影バウム」と,その商品の生産又は販売がされる地域名と商品名であ ,る「バウム」を組み合わせた標章を用いることが少なからずあると認められる。
したがって,本願商標が指定商品に使用された場合,本願商標は,その全体から,鉾田市を産地又は販売地とするバウムクーヘンという意味を有するものとして,需 8 要者又は取引者に認識されるものということができる。
(2) 普通に用いられる方法について 本願商標は,「HOKOTABAUM」という欧文字を,ゴジック体の太字で表し,さらに,全体的に若干丸みを帯びるようにデザイン化させている。
そして,商取引において標章のデザイン化は一般に広く行われるものであるほか,証拠(乙5〜9,11)によれば,菓子業界においては,欧文字で表した標章を,全体的に若干丸みを帯びるようにデザイン化させることもあると認められる。
そうすると,本願商標は,特殊なものとはいえず,「HOKOTABAUM」の欧文字を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものということができる。
(3) 原告の主張について ア 本願商標の構成態様について 原告は,本願商標の構成態様からは,「HOKOTA」と「BAUM」に分離して観察すべきではない旨主張する。
しかし,本願商標が指定商品である「鉾田市産のバウムクーヘン」に使用された場合,「HOKOTA」の文字部分は「鉾田市」を意味し,「BAUM」の文字部分は「バウムクーヘン」の意味を有するために,需要者又は取引者に対し,商品の出所識別標識としての印象を与えないものである。
そして,本願商標を構成する「HOKOTA」の文字部分及び「BAUM」の文字部分の意味や使用状況,菓子業界における取引の実情に照らすと,本願商標に接する需要者又は取引者は,本願商標を,商品の産地又は販売地が鉾田市であることを指す「HOKOTA」の文字部分と,商品「バウムクーヘン」を表す「BAUM」の文字部分とを組み合わせてなるものとして認識するというべきである。
したがって,本願商標は「HOKOTA」と「BAUM」の各文字部分に分離して観察することができるものということができる。
イ 「HOKOTA」から生じる認識について 9 原告は,日本には少なからず鉾田姓も存在し,「HOKOTA」の文字部分は鉾田姓も連想させるから,本願商標から,鉾田市が商品の産地又は販売地として認識されるものではない旨主張する。
しかし,本願商標が指定商品である「鉾田市産のバウムクーヘン」に使用された場合,「HOKOTA」の文字部分が「鉾田市」を意味するものと認識されることは明らかである。また,証拠(甲56,乙34〜36)によれば,日本人の姓として「鉾田」は,広く一般に存在するものではないと認められる。加えて,日本人の姓として「鉾田」が存在するとしても,前記のとおり,「ほこた」との称呼を有する地方自治体である鉾田市が茨城県に所在し,さらに,鉾田市を表示するに際し,「HOKOTA」又は「Hokota」との欧文字を用いることが少なからずあると認められる。
そうすると,本願商標のうち「HOKOTA」の部分は,需要者又は取引者に,茨城県所在の鉾田市を表示するものと容易に認識させるものということができ,さらに菓子業界の取引の実情を考慮すれば,鉾田市が商品の産地又は販売地であろうと一般に認識されるものということができる。
ウ 取引状況について 原告は,鉾田市が本願商標の指定商品の産地又は販売地として,需要者又は取引者に認識されているとはいえない旨主張する。
しかし,前記のとおり,商標法3条1項3号にいう商標に該当するというためには,必ずしも当該指定商品が当該商標の表示する土地において現実に生産され又は販売されていることを要せず,需要者又は取引者によって,当該指定商品が当該商標の表示する土地において生産され又は販売されているであろうと一般に認識されることをもって足りるというべきである。
したがって,鉾田市が本願商標の指定商品の産地又は販売地として,需要者又は取引者に認識されているか否かは,本願商標の商標法3条1項3号号該当性の判断を左右するものではない。
10 エ 商標登録例について 原告は,本願商標と構成態様が極めて似ている商標が多数登録されていることから,本願商標は当然に登録されるべきである旨主張する。
しかし,登録出願に係る商標が商標法3条1項3号や同条2項に該当するものであるか否かは,当該登録出願の査定時又は審決時において,その商標が使用される商品の取引の実情等に基づいて,個別具体的に判断されるべきものである。
したがって,本願商標と構成態様が類似する商標が多数登録されているとしても,このことは本願商標の商標法3条1項3号該当性の判断を左右するものではない。
(4) 小括 以上によれば,本願商標は,需要者又は取引者によって,当該指定商品が当該商標の表示する土地において生産され又は販売されているであろうと一般に認識されるものであるから,商標法3条1項3号に該当する。
3 使用による識別力の獲得について 原告は,本願商標の指定商品は,商品の出所が十分に認識されるほどの識別力を獲得している旨主張する。
確かに,証拠(甲18〜20)によれば,「HOKOTABAUM」などの標章が付された原告の商品であるバウムクーヘンが,いくつかの品評会で受賞したことは認められる。
しかし,本願商標を使用した商品の販売期間,販売量,マスメディアに取り上げられた回数等は明らかではなく,本願商標について,使用をされた結果,自他識別力を獲得するに至ったと認めることはできない。
4 結論 以上のとおり,本願商標は,商品の産地,販売地を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として,商標法3条1項3号に該当するというべきである。そして,本願商標が使用による自他商品識別力を獲得するに至ったとの事実も認められないから,同条2項は適用されない。
11 よって,原告の請求は棄却されるべきものである。
裁判長裁判官 部眞規子
裁判官 柵木澄子
裁判官 片瀬亮
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