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事件 平成 28年 (ワ) 8027号 商標権侵害行為差止等請求事件

原告株式会社グロービア
同 訴訟代理人弁護士久保原和也
同 優介
被告 合同会社ナチュラルビューティー
同 訴訟代理人弁護士鈴木康元
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2016/10/12
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
1 被告は,別紙被告商品目録記載の各商品の包装に,別紙被告標章目録記載の各標章を付してはならない。
2 被告は,別紙被告商品目録記載の各商品の包装に別紙被告標章目録記載の各標章を付したものを販売若しくは販売のために展示してはならない。
3 被告は,別紙被告標章目録記載の各標章を付した包装を廃棄せよ。
4 被告は,別紙ウェブサイト目録記載のインターネット上の各ウェブサイトから,別紙被告標章目録記載の各標章を抹消せよ。
5 被告は,原告に対し,385万2459円及びこれに対する平成28年3月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
1 1 本件は,「フェルガード」と標準文字で書してなる商標(以下「本件商標」という。)に係る商標登録第5059677号の商標権(以下「本件商標権」という。)を有する原告が,被告が別紙被告標章目録記載の各標章(以下,同目録の番号に応じて「被告標章1」などといい,これらを併せて「被告各標章」という。)を包装に付した別紙被告商品目録記載の各健康補助食品(以下,同目録の番号に応じて「被告製品1」などといい,これらを併せて「被告各商品」という。)を販売し,販売のためにインターネット上のウェブサイト等に展示することは,本件商標権を侵害するものとみなされる行為(商標法37条1号)である旨主張して,被告に対し,@商標法36条1項に基づき,被告各標章の使用(被告各商品の包装に被告各標章を付すこと,被告各商品の包装に被告各標章を付したものを販売し又は販売のために展示すること)の差止めを求め,A同条2項に基づき,被告各標章の付された包装の廃棄及びインターネット上のウェブサイトからの被告各標章の抹消を求めるとともに,B商標権侵害の不法行為による損害賠償請求権(損害賠償の対象期間は,平成26年4月8日から平成28年3月11日までである。)に基づき,損害賠償金385万2459円及びこれに対する不法行為後の日である平成28年3月28日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
2 前提事実等(当事者間に争いがないか,後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実等。なお,特に断りのない限り,証拠番号のうち枝番号の標記を省略する。) (1) 当事者 ア 原告は,サプリメント,健康補助食品の製造,販売等を業とする株式会社である。
イ 被告は,健康食品,化粧品の販売等を業とする合同会社である。
(2) 本件商標権 原告は,次の内容の本件商標権の商標権者である(甲1,2)。
2 登 録 番 号 商標登録第5059677号 出 願 日 平成18年10月11日 登 録 日 平成19年7月6日 登 録 商 標 フェルガード(標準文字) 商品及び役務の区分 第29類 指 定 商 品 フェルラ酸とガーデンアンゼリカを主成分とする 粉末及びカプセル状の加工食品 (3) 被告の行為 被告は,遅くとも平成26年4月8日以降現在に至るまで,被告標章1及び同2を包装に付した被告商品1並びに被告標章3及び同4を包装に付した被告商品2を,代理店やインターネットを通じて販売し,また,販売のために別紙ウェブサイト目録記載の各ウェブサイトに展示している(甲3ないし6)。
被告各商品は,少なくともフェルラ酸とガーデンアンゼリカを主成分とする粉末状の健康補助食品である(甲3)。
3 争点 (1) 被告各標章は本件商標に類似するか(争点1) (2) 原告が受けた損害の額(争点2) 4 争点に対する当事者の主張 (1) 争点1(被告各標章は本件商標に類似するか)について 【原告の主張】 ア 被告各標章の要部について 被告標章2は,「フェルゴッド」とのカタカナ文字からなる標章であり,「フェルゴッド」とのカタカナ文字部分全てを要部とするものである。
被告標章1は, 「フェルゴッド」とのカタカナ文字の上部に三本の半円形の線を,下部に「Feru-God」とのアルファベット文字をそれぞれ配した結合標章であるが,被告商品1の商品名は「フェルゴッド」であること,「フェルゴッド」とのカタカ 3 ナ文字が中心部に配置されていること,三本の半円形の線はありふれたものであること,「Feru-God」は単に「フェルゴッド」をローマ字読みしたにすぎないことなどからして,被告標章1は「フェルゴッド」とのカタカナ文字部分を要部とするものである。
被告標章4は,「フェルゴッドEX」との文字からなる標章であるが,「EX」が「エキスパート」「エクストラ」などを意味する単語の省略形でありふれた標記であることからして,被告標章4は「フェルゴッド」とのカタカナ文字部分を要部とするものである。
被告標章3は,「フェルゴッド」の下に「EX」と書してなる二行の文字の上部に三本の半円形の線を,下部に「Feru-God EX」とのアルファベット文字をそれぞれ配した結合標章であるが,被告標章1及び同4について述べたところと同一の理由により,被告標章3は「フェルゴッド」とのカタカナ文字部分を要部とするものである。
以上のとおり,被告各標章の要部は,いずれも「フェルゴッド」とのカタカナ文字部分であるから,本件商標と被告各標章との類否を判断するに際しては,「フェルガード」と「フェルゴッド」とを対比すべきものである。
イ 本件商標と被告各標章とは外観が類似すること 「フェルガード」と「フェルゴッド」とは,カタカナ2文字分が異なり,残りの4文字が共通している。さらに,異なる「ガー」と「ゴッ」の文字のうち,「ガ」と「ゴ」は,いずれも右上部を頂角とした直角線に濁点が付された文字であり,その限りにおいて共通している。
したがって,本件商標と被告各標章とは,外観において類似している。
ウ 本件商標と被告各標章から生じる観念が同一であること 被告各標章からは,いずれも「フェルラ酸を用いた健康補助食品」であるとの観念を生ずる。他方,本件商標(フェルガード)からも,「フェルラ酸を用いた健康補助食品」であるとの観念を生じる。
4 したがって,本件商標と被告各商標から生じる観念は同一である。
エ 本件商標と被告各標章の称呼が類似すること 本件商標の称呼は「フェルガード」であり,被告各標章の称呼はいずれも「フェルゴッド」である。両者は共に6音からなるが,5音目である「ー」と「ッ」はいずれも1つの音節として数えるものではないから,実質的に5音からなるものであり,うち4音を共通にしている。また,相違する第4音である「ガ」と「ゴ」は,いずれも子音を同じくする濁音である。
したがって,本件商標と被告各標章の称呼は類似している。
取引の実情等について (ア) 本件商標が周知,著名であること 本件商標を付した健康補助食品「フェルガード」(以下「原告商品」という。)は,フェルラ酸を使用した認知症サプリメントの先駆け的な商品であり,「フェルラ酸含有食品」といえばまず本件商標を想起するというほど,本件商標は,医師,認知症患者及びその家族のみならず,全国的に周知された著名な商標である(甲10ないし14)。
(イ) 原告商品と被告各商品の販売形態が類似していること 原告商品と被告各商品は,共にビニル袋に包装された複数の商品をクリーム色の正方体の外箱に梱包してひとつのパッケージとして販売している。外箱の構成も,正面に商品名,側面に成分表示と商品名を掲載するなど著しく類似している。
原告商品と被告各商品は,共にインターネット等を通じて通信販売されているところ,被告各商品は,「フェルガードに替わる」などと宣伝されているものもある(甲6の1)。
(ウ) 需要者の判断能力,記憶能力が低下していること 原告商品も被告各商品も,共に認知症患者向けのサプリメントであるが,認知症患者は,判断能力や記憶能力が低下しており,一般人よりも商品名を誤認混同するおそれが強い。現に,原告商品を購入しようとして誤って被告各商品を購入した者 5 が存在するところである(甲9)。
(エ) 被告各商品は,原告商品に故意に似せて作られたものであること 被告各商品は,かつて原告と取引関係にあり,原告商品を販売していた株式会社サンユーコーポレーション(以下「サンユー」という。)の関係者が,原告との取引解消直後に,関連会社をして「フェルゴッド」との文字からなる商標に係る商標権を取得させ,さらに,被告を設立してこれを販売元として販売を開始しているのであって,原告商品又は本件商標の有するブランド力を利用する目的で作られたことが明らかである。
カ 小括 上記のとおり,本件商標と被告各標章とは,これらから生じる観念が同一であり,外観及び称呼が類似するほか,フェルラ酸を使用した認知症サプリメントの需要者の判断能力,記憶能力が低下しているところに,周知の商標である本件商標のブランド力を利用する目的を持って,敢えて外箱や販売形態を似せて作られた被告各商品に使用されていることからして,商品の出所について誤認混同が生じている,又は生じるおそれがあるといえるから,被告各標章は,いずれも本件商標に類似するものというべきである。
【被告の主張】 ア 被告各標章の要部について 被告各標章の要部が「フェルゴッド」とのカタカナ文字部分にあることは争わない。
外観について 本件商標と被告各標章とは,「フェル」との部分については一致するものの,「ガード」と「ゴッド」の部分は明らかに相違しているから,外観において類似していない。
観念について 本件商標及び被告各標章から「フェルラ酸を用いた健康補助食品」との観念が生 6 ずるとの原告の主張は,争う。
「フェルファイト」「フェルラン」「フェルメイト」「フェルアクト」など,「フェル」から始まる登録商標について,フェルラ酸が用いられていない事例も多数存するところであって(乙1),「フェルガード」又は「フェルゴッド」から,「フェルラ酸を用いた健康補助食品」との観念は生じないというべきである。
称呼について 本件商標から生じる称呼は「フェルガード」,被告各標章から生じる称呼は「フェルゴッド」であって,第1音から第3音までの称呼は共通するが,第4音以降の称呼は明らかに異なっており,一連の称呼としては明瞭に聴別できるから,両者の称呼も類似していないというべきである。
取引の実情等について (ア) 本件商標の周知,著名性について 原告は,本件商標が医師,認知症患者及びその家族のみならず,全国的に周知された著名な商標であると主張するが否認する。そもそも原告の提出する証拠(甲10ないし14)では,いつの時点で周知となったと主張しているのか判然としないが,その点を措くとしても,いずれの証拠も単なる宣伝広告であり,原告から依頼された医師が記載したにすぎないと考えられる。原告商品の売上高,市場占有率又は広告宣伝費等も示されておらず,本件商標が周知された著名な商標であるとは認められないというべきである。
(イ) 販売形態の類似性について 被告各商品の外箱は,原告商品のそれと異なり,三重の円弧が施されているから,外箱が著しく類似しているということはない。
(ウ) 需要者の判断能力,記憶能力について 原告は,原告商品及び被告各商品の需要者が認知症患者であり,判断能力や記憶能力が低下しているから,一般人よりも商品名を誤認混同するおそれが強いなどと主張するが,一般に認知症患者の受診やサプリメントの購入等は,その家族が行う 7 のが通常であるから,原告の主張は取引の実情とはかけ離れた主張というべきである。
(エ) 被告各商品が原告商品に故意に似せられたとの点について 原告は,「フェルゴッド」との文字からなる商標に係る商標権が取得された経過などを主張するものの,被告としては関知しないところである。
カ 小括 上記のとおり,本件商標と被告各標章とは,外観及び称呼において異なっており,取引の実情を考慮したとしても,両者は類似していないというべきである。
(2) 争点2(原告が受けた損害の額)について 【原告の主張】 被告は,平成26年4月8日から平成28年3月11日までの間,被告各商品を販売して合計1926万2295円の売上をあげ,その20パーセントに当たる385万2459円の利益を受けた。
したがって,商標法38条2項の規定により,同額が,原告が受けた損害の額と推定される。
【被告の主張】 原告の主張は,否認し,争う。
当裁判所の判断
1 争点1(被告各標章は本件商標に類似するか)について (1) 類否の判断について 商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであり(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照),複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標 8 そのものの類否を判断することは,原則として許されないというべきであるが,他方で,商標の構成部分の一部が取引者又は需要者に対し,商品又は役務の出所識別機能として強く支配的な印象を与える場合や,それ以外の部分から出所識別機能としての称呼,観念が生じない場合などには,商標の構成部分の一部だけを取り出して,その類否を判断することが許されるものと解される(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁,最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・集民228号561頁参照)。
(2) 本件商標について ア 本件商標は,標準文字で「フェルガード」と書してなる商標であり,「フェルガード」との称呼を生じる。
イ 本件商標からは,特段の観念が生ずるものとは認められない。
この点について,原告は,本件商標から「フェルラ酸を用いた健康補助食品」との観念が生ずると主張する。確かに,本件商標には「フェル」との文字列が含まれており,証拠(甲22)によれば,他にもフェルラ酸を含有する「フェルガーデン」「フェルライト」と呼ばれる商品が存在することが認められるが,他方で,証拠(乙1)によれば,「フェル」との文字列を含む登録商標として,「フェルファイト」「フェルラン」「フェルメイト」「フェルアクト」などが存在していることが認められるところ,これらの登録商標がフェルラ酸を用いた健康補助食品に用いられているといった事情はうかがわれない。また,証拠(甲7,12)によれば,フェルラ酸とは,米ぬかから抽出されるポリフェノールの一種で,アルツハイマー型認知症の発症の原因となるβアミロイドの凝集を抑制する効果があると考えられているということであるが,このようなフェルラ酸の名称や効果が一般に広く認知されていると認めるに足りる的確な証拠はないし,フェルラ酸を「フェル」と略称することが一般的であるとも認め難い。したがって,「フェル」との文字から始まる商標 9 であることをもって,あるいは「フェルガード」との本件商標それ自体から,「フェルラ酸を含有する健康補助食品」との観念が生ずると認めることは困難であり,原告の主張を採用することはできない。
(3) 被告各標章について ア 被告標章1の外観は,「フェルゴッド」との太字ゴシック調カタカナ文字の上部に三本の半円形の線を,下部に「Feru-God」とのゴシック調アルファベット文字をそれぞれ配してなる。
被告標章1は,上記の構成要素からなる結合商標と認められるところ,「フェルゴッド」とのカタカナ文字部分が一際大きく配されているほか,上部に配された三本の線からは出所識別機能としての称呼観念が生じず,下部に配された「Feru-God」は「フェルゴッド」との称呼をアルファベット標記したにすぎないことなどからすれば,「フェルゴッド」とのカタカナ文字部分が,被告標章1の中で,取引者又は需要者をして強く支配的な印象を与える部分ということができる。
そして,被告標章1のうち,上記強く支配的な印象を与える部分からは,「フェルゴッド」との称呼が生じるが,特段の観念が生ずるものとは認められない。
イ 被告標章2の外観は,「フェルゴッド」とのゴシック調カタカナ文字からなる。
被告標章2からは,「フェルゴッド」との称呼が生じるが,特段の観念が生ずるものとは認められない。
ウ 被告標章3の外観は,「フェルゴッド」「EX」との二行からなる太字ゴシック調カタカナ文字の上部に三本の半円形の線を,下部に「Feru-God EX」とのゴシック調アルファベット文字をそれぞれ配してなる。
被告標章3は,上記の構成要素からなる結合商標と認められるところ,「フェルゴッド」「EX」とのカタカナ文字部分が一際大きく配されているほか,上部に配された三本の線からは出所識別機能としての称呼観念が生じず,下部に配された「Feru-God EX」は「フェルゴッドEX」との称呼をアルファベット標記したにすぎ 10 ないこと,「EX」との文字は,通常,何らかの商品名に付されて「特別である」「優れている」などの意味を持たせる慣用的な表現であって,出所識別機能としての観念称呼を生ずるものとは認め難いことなどからすれば,「フェルゴッド」とのカタカナ文字部分が,被告標章3の中で,取引者又は需要者をして強く支配的な印象を与える部分ということができる。
そして,被告標章3のうち,上記強く支配的な印象を与える部分からは,「フェルゴッド」との称呼が生じるが,特段の観念が生ずるものとは認められない。
エ 被告標章4の外観は,「フェルゴッドEX」とのゴシック調カタカナ文字からなる。
被告標章4のうち,「EX」との文字は,上記ウのとおり,出所表示機能としての観念称呼を生ずるものとは認め難く, 「フェルゴッド」とのカタカナ文字部分が,被告標章4の中で,取引者又は需要者をして強く支配的な印象を与える部分ということができる。
そして,被告標章4のうち,上記強く支配的な印象を与える部分からは,「フェルゴッド」との称呼が生じるが,特段の観念が生ずるものとは認められない。
(4) 取引の実情等 ア 原告商品について 証拠(甲7,8,12)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,認知症患者を対象とした,フェルラ酸とガーデンアンゼリカとを主成分とするサプリメントを開発し,これに本件商標を付した原告商品を平成19年頃から販売を開始したこと,現在の販売方法は,医師が患者又はその家族に購入を勧め,患者又はその家族が原告から通信販売等で購入するというものであることが認められる。また,原告商品の単価は税込5500円ないし9000円であり,白色又はクリーム色の外箱に「NewフェルガードLA」「フェルガード100M」「フェルガードB」などの商品名を印刷した包装を用いている。
証拠(甲10ないし13)及び弁論の全趣旨によれば,原告商品は,名古屋フォ 11 レストクリニック院長の河野和彦医師が提唱する認知症治療法において有効な健康補助食品として,同医師の書籍(8冊)で紹介されているほか,田平武医師の書籍(2冊),「BPSD症例から学ぶ治療戦略」,「Diet and Nutrition in Dementia and Cognitive Decline」,「OTCメディケーション虎の巻〔第3版〕」,「紙とペンでできる認知症診療術」,「MCIを知れば認知症にならない!」,「認知症家族を救う対策集」,「認知症の薬をやめると認知症がよくなる人がいるって本当ですか?」などの書籍,京都医学界雑誌第57巻第1号及び「Geriatrics Gerontology International」誌第11巻での論文,「クリニックばんぶう」誌2009年12月/2010年1月合併号,「Medical Practice」誌2014年7月号,「日経メディカル」誌2010年7月号及び2011年10月号,「家庭画報」誌2015年7月号,「NHKウィークリーステラ」誌平成24年9月号,「週刊ポスト」誌平成23年10月28日号,「高齢者住宅新聞」平成22年6月5日号,「健康情報新聞」平成19年9月18日号での各紹介記事,「East Asia Conference onStandardization of Rice Function」「第54回日本児童青年精神医学会総会」などの会議での発表において,原告商品が紹介されており,また,インターネット上のブログなど少なくとも8つのウェブサイトにおいて,原告商品が紹介されていることが認められる。なお,上記「高齢者住宅新聞」平成22年6月5日号には,原告商品について,「現在診療所を中心に160の医療機関が採用。1週間に1件ほどのペースで採用する医療機関が増えている。販売数は月間7000〜8000箱。
診療所経由で患者に周知された影響でこの1年で販売数は約50%増加した。利用者数は5000〜6000人にのぼる。」との記載がある。
イ 被告各商品について 証拠(甲3ないし5)及び弁論の全趣旨によれば,被告各商品について,次の事実が認められる。
被告各商品は,フェルラ酸,ガーデンアンゼリカ抽出物及びカジメ等を原材料とする健康補助食品であって,外箱は白色で被告各標章が印刷されており,価格は税 12 別6000円(被告商品1)又は1万円(被告商品2)である。
被告各商品は,被告が運営する本件各ウェブサイトにおいて通信販売に供されているほか,被告以外の販売小売店が運営するインターネット上のウェブサイトにおいて,通信販売に供されている。被告以外の販売小売店のうち一部の者は,被告各商品を,「フェルガードに替わるフェルラ酸含有食品」と記載して紹介している。
(5) 本件商標と被告各標章の類否 前記(2)ないし(4)を前提に,本件商標と,被告各標章のうち強く支配的な印象を与える部分である「フェルゴッド」とを対比する。
まず,本件商標と被告各標章「フェルゴッド」との部分からは,いずれも特定の観念を生じないものである。
次に,本件商標からは「フェルガード」の称呼を生じ,被告各標章の「フェルゴッド」の部分からは「フェルゴッド」の称呼を生じるところ,両称呼は,「フェル」で始まり「ド」で終わるとの点において共通するが,両称呼を一連に称呼した場合には,称呼全体の語調,語感において異なる印象を与えるものというべきである。
さらに,本件商標と被告各標章の「フェルゴッド」の部分の外観についてみても,同様に「フェル」で始まり「ド」で終わるとの点において共通するが,本件商標は「フェルガード」(標準文字)から成り,「フェル」や「ド」の部分が特に強調されているということもなく,この点は被告各標章の「フェルゴッド」の部分についても同様であるから,本件商標と被告各標章の「フェルゴッド」の部分とを一体的に観察すれば,両者の外観は異なる印象を与えるものというべきである。
以上によれば,本件商標が付された原告商品と被告各標章が付された被告各商品とがいずれもフェルラ酸とガーデンアンゼリカを主成分とする健康補助食品であり,いずれも白色系統色を基調とする外箱を包装とする点,通信販売により販売されている点,認知症の患者及びその家族を需要者とする点などにおいて共通すること,本件商標が付された原告商品について紹介する書籍,論文,記事等が複数存在することを考慮しても,なお,本件商標と被告各標章とを対比したときに,需要者にお 13 いて,商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあると認めることはできないから,被告各標章は,本件商標に類似しないというべきである。
(6) 原告の主張について ア 原告は,本件商標を付した原告商品が,フェルラ酸を使用した認知症サプリメントの先駆け的な商品であって,「フェルラ酸含有食品」といえばまず本件商標を想起するというほど,本件商標は,医師,認知症患者及びその家族のみならず,全国的に周知された著名な商標であると主張する。
そこで検討するに,前記4(ア)のとおり,確かに,原告商品を紹介する書籍,論文,記事等が複数存在することが認められる。しかしながら,上記各書籍の発行部数等は明らかではないし,論文や会議での発表についてはその対象が相当程度限定されたものであることが推認できるほか,上記雑誌等の紹介記事をもっても,本件商標が具体的にどの程度認知されているのかは判然としないというほかはない。現に,原告自身が提出する証拠によっても,原告商品の利用者数は5000人ないし6000人というのであって,我が国の人口や,そのうち認知症に罹患していると推定される患者数やその家族の人数との比較からしても,本件商標が全国的に周知された著名な商標であるとは認め難いというほかはない。よって,本件商標の周知性,著名性を前提として本件商標と被告各標章との対比を行うべきかのような原告の主張は採用することができない。
イ 原告は,原告商品及び被告各表品が,共に認知症患者向けのサプリメントであり,認知症患者は判断能力や記憶能力が低下していることから,一般人よりも商品名を誤認混同するおそれが強いと主張する。
そこで検討するに,確かに,原告商品及び被告各商品のいずれも,認知症の患者及びその家族を需要者としているものと認められるが,このことを前提としても,本件商標と,被告各標章のうち「フェルゴッド」の部分とは,需要者に対して,称呼全体の語調,語感において異なる印象を与え,外観においても異なる印象を与えることに変わりはないというべきである。また,一般に認知症に罹患した患者の判 14 断能力,記憶能力が一般人よりも低下しているとしても,その治療に用いるサプリメント等をインターネットなどによる通信販売の方法によって購入するに際しては,家族等の介助者の補助を受けてするものと合理的に推認されるのであるから(現に,原告が証拠として提出するAmazon.co.jpにおける被告商品1の販売ページ〔甲4〕の「カスタマーレビュー」欄には,「92歳の祖母の物とられ妄想や被害妄想が抑えられるかしらと思ってすがる思いで試しに購入」「私の母も薬剤過敏性が強かったので・・・この成分量に変えました」などの記載が認められるところである。),認知症患者を商品の主要な対象層としていることをもって,商標の類否の判断において需要者の認知能力を殊更に低いものと見積もって対比することは相当とは言い難く,原告の主張を採用することはできない。
2 結論 以上のほか,原告は,サプリメントは特許権を取得することが困難である一方で,人の健康に影響を及ぼす効能を有しており,需要者が誤って商品を購入するとなれば,企業の信用を失墜させ,需要者の生命や身体に多大な影響を及ぼすことにもなりかねないから,商標法による保護が一層重要になるとか,被告各商品は,原告のかつての取引先であるサンユーが原告商品又は本件商標の有するブランド力を利用する目的で作られたものであるなどと主張するが,いずれも原告の請求を認容すべき理由となるものとは認められず,採用することができない。
以上によれば,その余の争点(原告の受けた損害の額)について検討するまでもなく,原告の請求にはいずれも理由がないからこれらを棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 15
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