運営:アスタミューゼ株式会社
  • ポートフォリオ機能


追加

関連審決 審判1999-20918
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成16行ケ85審決取消請求事件 判例 商標
平成16行ケ168審決取消請求事件 判例 商標
平成19行ケ10383商標登録取消決定取消請求事件 判例 商標
平成16行ケ335商標登録取消決定取消請求事件 判例 商標
平成17行ケ10270商標登録取消決定取消請求事件 判例 商標
関連ワード 識別力 /  出所表示機能 /  識別機能 /  指定商品 /  指定役務 /  周知商標 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  広義の混同 /  4条1項10号 /  4条1項11号 /  4条1項15号 /  著名商標 /  顧客吸引力(グッドウィル) /  ただ乗り(フリーライド) /  希釈化(ダイリュージョン) /  類似性(類否判断) /  結合商標 /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  取引の実情 /  出所の混同 /  国内 /  外国 /  継続 /  有名ブランド /  ハウスマーク / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 16年 (行ケ) 33号 審決取消請求事件
原告 ユーエスピーエープロパティーズ インク
同訴訟代理人弁理士 広瀬文彦
被告 特許庁長官今井康夫
同指定代理人 高野義三
同 大橋信彦
同 涌井幸一
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2004/05/27
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 (1) 特許庁が、平成11年審判第20918号事件について、平成15年9月9日にした審決を取り消す。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文第1、2項と同旨
当事者間に争いがない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は、平成7年6月23日、「U.S.POLO」とこれよりやや小さな「ASSOCIATION」の文字とを上下二段に横書きしてなり、商標法施行令1条別表第18類の「原革、原皮、なめし皮、毛皮、革ひも、かばん類、袋物、携帯用化粧道具入れ、かばん金具、がま口口金、傘、ステッキ、つえ、つえ金具、つえの柄、
乗馬用具、愛玩動物用被服類」を指定商品(以下「本願指定商品」という。)とする商標(以下「本願商標」という。)について、商標登録出願をした(平成7年商標登録願第62424号)が、平成11年9月13日付けで拒絶査定を受けたので、同年12月27日、これに対する不服審判の請求をした。
特許庁は、同請求を平成11年審判第20918号事件として審理した上、
平成15年9月9日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同月29日、原告に送達された。
2 本件審決の理由の要点 本件審決は、別紙審決書写し(以下「審決書」という。)記載のとおり、@アメリカ合衆国在住のデザイナーであるラルフ・ローレンのデザインに係る一群の商品には、横長四角形中に記載された「Polo」の文字、「by RALPH LAUREN」の文字及び馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形の各商標(審決書別掲参照、以下「引用商標」という。)が結合して又は単独で用いられ、これらは「ポロ」の略称でも呼ばれているところ、引用商標は、ラルフ・ローレンのデザインに係る被服類及び眼鏡製品に使用する標章として、本願商標の登録出願時には、我が国において取引者・需要者の間に広く認識されていたものと認められる、A本願商標は、前記の構成よりなるところ、全体として親しまれた熟語的意味合いを有するものではなく、特定の団体名称を表示するものとして我が国において広く知られているともいえないものであって、引用商標の周知著名性を前提にすれば、本願商標をファッション関連商品に使用した場合、これに接する取引者・需要者は、その構成中の「POLO」の文字に着目して、周知著名となっている引用商標を連想、想起し、該商品がラルフ・ローレン又は同人と組織的、経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、その商品の出所について混同を生ずるおそれがある、
Bしたがって、本願商標は、商標法4条1項15号(以下「本号」という。)に該当する、というものである。
原告主張の本件審決の取消事由の要点
本願商標に接する取引者・需要者は、その構成中の「POLO」の文字を殊更に分離抽出して注目することはなく、本願指定商品がラルフ・ローレン又は同人と経済的・組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのごとく、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないのであるから、本願商標が本号に該当するとした本件審決の認定判断は誤りであり、本件審決は取り消されるべきである。
1 原告の由来 原告は、米国ポロ協会「United States Polo Association」の知的財産権の管理部門であり、長年に亘り同協会の商標を含む知的財産権の管理を行っている法人であるところ、米国ポロ協会は、1890年の創立以来、ポロ競技の育成と発展に努めてきたアメリカ合衆国の最も権威と歴史のあるポロ競技に関する組織であり、
その名称の中に「POLO」が入るのは必然的であり、ラルフ・ローレンが商標として「POLO」を採用する遥か以前から使用を継続してきた名称である(甲6〜9)。
2 「POLO」の文字の分離不可能性 (1) 本願商標の外観及び観念の一体性 本願商標は、上段に「U.S.POLO」の文字を配し、下段に「ASSOCIATION」の文字を配して構成されるが、これらの文字は同一の書体で表されており、かつ、上下段の文字部分は同じ長さで、各々の前後端を同じ位置にそろえて配置されているので、本願商標は、二段からなる極めてバランスのよい一体的な商標である。また、上下段の文字を連続して認識する場合の「U.S.POLO ASSOCIATION」の語からは、上述した「米国ポロ協会」というまとまった意味合い(団体名)が生じる。したがって、本願商標は、外観及び観念において一体性を有しているので、「POLO」の文字のみが抽出されて認識されることは考えられない。このことは、東京高等裁判所平成11年(行ケ)第196号事件判決(甲18、以下「引用判決1」という。)の判旨に照らしも明らかである。
(2) 称呼上の一体性 本願商標から生じる称呼は、「ユーエス」と「ポロ」と「アソシエーション」とに三区分されて途切れるように称呼されるというよりも、一気一連に淀みなく「ユーエスポロアソシエーション」と称呼されるものである。このように本願商標が一連に称呼されるのは、上下二段からなる商標であっても、一連に称呼されるのが普通であるとともに、上述した上部団体である「米国ポロ協会」という一体的な観念が生じることに対応するからである。したがって、本願商標は、外観及び観念上の一体性のみならず、称呼上の一体性をも併有しているので、「POLO」の文字のみが分離されて認識されるとは到底考えられない。
(3) 本願商標のハウスマークとしての一体性 本願商標は、上述した上部団体である「米国ポロ協会」を指称する「ハウスマーク」である。したがって、本願商標中の「POLO」の文字が分離されるか否かを判断するに当たっては、上述した本願商標の一体性に加えて、この点も十分に考慮されるべきである。特に、「ハウスマーク」は、商品の種類毎に使用されるいわゆる「ペットマーク」とは異なり、「社標」として取引に使用されるため、全体として極めて強い出所表示力を発揮するものである。すなわち、本願商標は、商品の出所が「米国ポロ協会」であることを明示する商標であり、一体としてのみ出所表示機能を果たすものである。したがって、本願商標から「POLO」の文字のみが何の脈絡もなく取り出されて注目されることはない。
この点につき、本件審決は、「本願商標は全体として親しまれた熟語的意味合いを有するものとして我が国において広く知られているともいえない」(4頁)と認定している。確かに、本願商標は、一般的な熟語ではなく、また、その特定の団体名が我が国で一般的に熟語のように広く認識されていないとしても、我が国の英語教育の普及度に照らせば、「アメリカにおけるポロの協会」「アメリカポロ連盟」といった程度の総合的な意味合いは容易に理解できると考えられ、本願商標を「POLO」の商標と誤解する取引者・需要者は皆無といえる。
また、競技としての「POLO」は、一般に広く認識されており、本願商標がそれに関するアメリカ合衆国の統括団体の名称であることは容易に理解されると考えられる。ラルフ・ローレン及びその設立した会社(以下「ラルフ・ローレン社」という。)の「POLO」ブランドの存在を知っている程度の知識を有する者にとっては、本願商標をPOLO競技の団体名であることを理解することは極めて容易なことと考えられる。また、「ASSOCIATION」を含めた本願商標の全体を直訳した意味合いが「POLO」そのものではないことは、万人に理解できるので、ファッション関連のラルフ・ローレン社とは別異の団体であることも極めて容易に認識される。ラルフ・ローレン社は、競技としてのPOLOとは無関係であり、ポロ競技には関与していないので、ポロ競技団体名である本願商標とは関連性を全く感じさせないところから、引用商標と混同を生じないことは明らかである。
しかも、「CAMBRIDGE UNIVERSITY/POLO CLUB」商標に関する東京高等裁判所平成12(行ケ)430号事件判決(甲23、以下「引用判決2」という。)では、「POLO」がスポーツ競技の一種であることが広く認められていること、スポーツ競技の名称であることから、ラルフ・ローレンの「POLO」商標は商品の出所表示機能がある程度減殺されていること、上記商標中「POLO」は、商標全体の中に溶け込み「POLO」だけが看者の注意をひいて「ポロ」と略称されることがないこと、「ケンブリッジ大学」の名称との関係で、ラルフ・ローレンと営業上の関係があることを想起し難いことが判示されており、米国ポロ協会は、
我が国においてそれほど認識されていない可能性があるとしても、上記判決の趣旨は、100年を超える歴史を誇り、全米のポロ競技を統括する同協会の名称である本願商標についても適用され、十分に尊重されるべき判断である。
3 現実の出所混同の不存在 本願商標を使用した商品は、既に市場に大量に販売されており、他のポロ関連商品と併存して販売されているが(甲19〜21)、ラルフ・ローレン社の商標と混同を生じた事実はない。ラルフ・ローレン社は、自己の商品を「Polo By Ralph Lauren」と表示していたものであり、現在も、ラルフ・ローレン社の商品を表わす場合には、括弧書きで(ラルフ ローレン)と表示されている(甲11の1〜7)。
本件審決は、現実に出所の混同は生じていないという事実を考慮しないでなされた結論であり、極めて妥当性を欠くものである。
4 諸外国の事情等 (1) 各国の登録例 本件審決は、引用商標が「被服類及び眼鏡製品」について著名であると認定しており(3〜4頁)、そのことは認めるが、アメリカ合衆国では、「第18類 かばん類」「第25類 被服」等を指定商品として、「米国ポロ協会」の「ハウスマーク」である「UNITED STATES POLO ASSOCIATION」の商標と、
引用商標の文字商標に対応する「Polo by RALPH LAUREN」の商標とが並存して登録されている(甲24、25)。
アメリカ合衆国において、このように両商標が並存して登録されているのは、両商標に係る商品の関連性を考慮した上で、「UNITED STATES POLO ASSOCIATION」の「POLO」の文字からラルフ・ローレン社が想起・観念されることはなく、その結果、これらの商標が混同を生じさせることはないと判断されている証左である。両商標が原告とラルフ・ローレン社の本国であるアメリカ合衆国において並存している事実は、我が国において、本願商標と引用商標との間で商品の出所の混同を生ずるおそれがあるか否かを判断するに際しても、
十分に尊重されなければならない。しかも、アメリカ合衆国以外の国々でも、米国ポロ協会の商標は登録されている(甲4)。
したがって、世界の貿易が自由になり、他国における著名商標までも保護しようとする現在の審査体制にあって、日本だけが特異な判断に固執する理由は全くない。
(2) 並存の合意 「ポロ ラルフ ローレン ユーエスエー ホールディング インク(PRL USA HOLDING、INC.)」(原告)と、米国ポロ協会等(被告)との間で発生したアメリカ合衆国の商標権侵害訴訟に関する陳述書(甲26、以下「本件陳述書」という。)によれば、ラルフ・ローレン社自身が、米国ポロ協会のハウスマークとの並存を地域的に容認しているものと認められ、世界各国と同様に、我が国においても、同協会のハウスマークである本願商標は、引用商標と混同のおそれがないものとして登録されるべきである。
(3) 世界的な流通秩序の維持 著名商標は、その所有者の努力により形成された多大なる業務上の信用が化体しているので、十分に保護されなければならないが、それはひとえに世界の流通秩序維持の観点からであり、商品流通秩序を阻害することのない商標についてまでその登録を無効にできるとするのは、著名商標に対する過度な保護といわざるを得ない。そして、原告の上部団体である「米国ポロ協会」は、前記のとおり、そのハウスマーク「U.S.POLO/ASSOCIATION」を、1890年から採用し、ラルフ・ローレン社が「POLO」ブランドを採用し使用を始めた1960年〜70年代より遥か以前から使用しており、引用商標の著名性にフリーライドする意思が全くないことは、明らかである。
したがって、引用商標に対するフリーライド的な要素が全くなく、かつ、
商品流通秩序を阻害することのない本願商標について、引用商標と混同を生ずるおそれがあることを理由に、その登録を認めないのは妥当ではなく、世界的な商品流通秩序の維持の観点から、上記諸外国と同様に、本願商標の登録を認めるべきである。
(4) 審査基準について 特許庁が平成11年6月14日に公表した「周知・著名商標の保護等に関する審査基準の改正」において、商標法第4条1項15号の規定については、「他人の著名な商標と結合した商標は原則として出所混同を生ずるおそれがあるものと推認して取扱うものとする」とされている(甲27、以下「本件改正審査基準」という。)。
しかし、世界の統一的な審査基準とされるWIPOによる 「PROTECTION OF WELL-KNOWN MARKS(周知商標の保護規則に関する協同勧告)」(甲28、以下「WIPO勧告」という。)では、「混同を生ずるおそれがあるものと推認する」ところまで保護を拡大することを要請していない。本件改正審査基準は、
「ただし、その他人の登録商標の部分が既成の語の一部となっているもの、又は、指定商品若しくは指定役務との関係において出所の混同のおそれのないことが明白なものを除く」と制限を付加して、WIPO勧告の要請する保護の基準と整合させようとしているが、ただし書の前にある前記文言は、WIPO勧告の要請とは明確な齟齬がある。同基準では、「出所混同のおそれのないことが明白なもの」だけを除けばよいとしているが、出所混同のおそれが明白に証明されてないものについては、当然、出所混同が付帯するかのような厳しい判断となる可能性がある。実際に、本件では、現実の出所混同がないことが明白であるにもかかわらず、著名商標権者に一方的に有利に適用されている。
被告の反論の要点
1 原告の由来については、争わない。
2 「POLO」の文字の分離不可能性について (1) 本願商標の外観及び観念の一体性について 1個の商標から、2個以上の称呼観念の生ずることがあることは取引の経験則上明らかである。そして、本願商標の構成は、「U.S.POLO」とこれに比して小さく「ASSOCIATION」の文字とを二段に書したものであるところ、
これが、我が国の一般の取引者・需要者にとって、全体として特定の熟語や特定の団体名称を表わすものとしてよく知られているものとは認められない。また、本願指定商品である「かばん類、袋物」等は、その主たる需要者が、ブランドに精通した者に限らず、一般家庭の主婦を始めとする若者から老人までを含む一般世人であって、このような需要者に購買され日常生活の場で消費される商品である以上、その需要者の払う注意力はさほど高いものでなく、商標の一部に著名性が高い文字部分が含まれる場合には、その著名性の高い部分に需要者の注意が集中し、その他の細部にまでは十分に注意が向けられないままに商品の選択・購入がなされることが多いというべきである。
なお、引用判決1は、商標法50条の規定による商標登録取消審判についてのものであり、構成中に他人の周知著名商標である「POLO」の文字を有する本願商標と引用商標との混同可能性を判断すべき本件事案に直接当てはまるものではない。
(2) 称呼上の一体性について 本件審決は、本願商標の構成から、必ずしも「ユーエスポロアソシエーション」の一連の称呼が生ずることを否定するものではないが、本願商標は、全体として親しまれた熟語的意味合いを有するものではなく、また、特定の団体名称を表示するものとして我が国において広く知られているともいえないものであって、引用商標の周知著名性を前提にすれば、これをファッション関連商品ともいえる本願指定商品について使用した場合、これに接する取引者・需要者は、その構成中の「POLO」の文字に着目して、周知著名となっている引用商標を連想、想起し、該商品がラルフ・ローレン又は同人と組織的、経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである、と認定判断したものである。
(3) 本願商標のハウスマークとしての一体性について 本願商標は、我が国において「ハウスマーク」(代表的出所標識)と認識されているものではなく、その使用態様(甲10)も多種多様であって、必ずしも本願商標と同一といえるものでなく、本願商標と構成を同じくする表示をしたもの(甲19〜21)によっても、本願商標を「ハウスマーク」とは認めることできないし、「社標」についても同様である。したがって、我が国において、本願商標が、「ハウスマーク」ないし「社標」として使用された結果、引用商標との間にその出所の混同のおそれがない程に機能している事実は認められない。
また、本願商標の構成文字中、「U.S」の文字が「米国(製)」、「POLO」の文字が「ポロ(商標)」と容易に理解され、「ASSOCIATION」の文字は「団体、
協会、組合」の意味を理解するとみて差し支えない。そして、本願指定商品の一般需要者の払う注意力はさほど高いものでなく、本願商標が特定の団体名称として認識できない以上、これに接する需要者は、その構成中の「POLO」の文字部分に着目して、ラルフ・ローレンに係る「ポロ(POLO)」と呼ばれるブランド名を連想する場合が決して少なくない。
さらに、本件審決は、「POLO」の語がスポーツ名を表す一般用語であることを否定するものでなく、我が国においては馴染みの薄いスポーツであるとしたものであって、例えば、野球やサッカー等のように一般に馴染まれたスポーツと、
全く馴染みの薄いスポーツとでは、自ずと当該スポーツ名称からなる商標に接する取引者・需要者の印象は異なるとみるべきであるから、「POLO」の文字を有する本願商標にあっては、これをその指定商品に使用した場合、紳士服、婦人服、眼鏡等の商標として周知著名性が確立したラルフ・ローレンに係る「POLO」と認識されること明らかである。
そして、本願指定商品である「かばん類、袋物」等のファッション関連商品は、その需要者が老人から若者までを含む一般大衆であって、その商品等に係る商標やブランドについて、詳しくない者や中途半端な知識しか持たない者も多数含まれているところである。そうすると、「ポロ競技」の我が国での国内事情とラルフ・ローレンに係る「POLO」(ポロ)商標の周知著名性及び取引の実情における需要者の注意力とを勘案すれば、本願商標が実在の団体名を表示するものであるとしても、これが我が国で商品に使用されることによって、特定のポロ競技団体名として広く一般に知られ、出所の混同のおそれがない程に自他商品識別標識として機能している事実は認められないから、本願商標がポロ競技団体の名称であることは、混同のおそれの判断にあたって考慮できないというべきである。
しかも、「ポロ競技」自体馴染みの薄い我が国の国内事情にあって、当該団体(協会)の設立、組織等その存立に係わる事情をもって、引用商標との関係で出所の混同のおそれがないものとはできないから、本願商標が、当該統括団体名の略称であるとしても、本号の適用があるというべきである。
3 現実の出所混同の不存在について 原告提出の証拠によれば、本願指定商品中の小銭入れ、札入れ、ポーチ等の商品について、本願商標と同一構成といえる商標の使用を認めることはできるとしても、これ以上に当該商品が市場に大量に販売されているとまで認めることはできず、また、上記使用された商品とラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、婦人服、眼鏡等の各商品とが、明確に区別されているとはいえない。
そうすると、上記使用の実態によっては、使用商標とその商品の出所について混同のおそれはなかったというような商取引の実情を具体的に示すものとは認め難い。むしろ、本願商標がその指定商品に単独で使用された場合、需要者は著名な「POLO(ポロ)」ブランドないしその兄弟ブランドであるなどと誤認している可能性もあるといえる。
また、原告提出の証拠(甲11の2ないし7)によれば、引用商標とともに、
片仮名で「ラルフローレン」又は「ポロラルフローレン」と併記していることは認めることができるけれども、これらの証拠は、いずれも期間ないし場所を限定し販売されるディスカウント商品のチラシであって、「ラルフローレン」の表示以外にも他の有名ブランド品にも同様の片仮名併記が認められ、販売する側がファッション関連商品に係る商標やブランドについて、詳しくない者や中途半端な知識しか持たない者にも明確に把握させるために付加した程度のものといえるものであり、ラルフ・ローレンのデザインに係る商品を表示するものとして、全ての商品にわたりこれが恒常的にされているとまで認めることはできない。
4 諸外国の事情等 (1) 各国の登録例 我が国における商標法と各国における商標法とは、法体系が同一でないばかりか、ラルフ・ローレンの「POLO(ポロ)」商標についての著名性の内容・程度についても各国毎に差異があり、また、「POLO(ポロ)」の語について各国の国民の理解・認識には相違があるというべきであって、その他取引の実情も各国毎に様々であることからすれば、商標間の混同のおそれについての判断に当たっては、各国の登録状況を参酌する必要はないというべきある。
原告の主張する外国の諸事情は、我が国における「ポロ」の略称でも呼ばれる引用商標に係る需要者の認識と直接関わりがなく、また、我が国における引用商標の周知著名性及びこれに便乗した偽ブランドの横行する状況等の実情は、我が国での固有の取引事情というべきものである。
(2) 並存の合意 原告主張の諸事情は、本件審決の認定を左右するものでない。そもそも、
本号の適用の判断において、混同の主体とされるのは、あくまで当該取引者・需要者であるから、仮にラルフ・ローレン社が米国ポロ協会のハウスマークの並存を容認していたとしても、そのことは、本号の適用において優先的に考慮されるべきものではない。
(3) 世界的な流通秩序の維持 本件審決は、原告の上部団体が、ポロ競技に関してその名称又はその略称といえる本願商標を使用すること自体について、何ら問題とするものでない。そして、ラルフ・ローレンのデザインに係る被服等について使用される標章を模倣した偽物ブランドが市場に出回っており、「ポロ」と略称して認識されている引用商標の顧客吸引力に便乗した、偽「POLO」ブランド商品を販売する者も絶えないといったような状況を前提にした場合、本願商標の出願自体がこれを意図するものでないとしても、現実には、原告の提出した証拠(甲10の2〜6)によっても、本願商標に関連する標章の使用態様は多様であり、その使用者が必ずしも一定でない状況からして、原告主張の事情が、引用商標との混同可能性を否定する根拠になるものではない。
(4) 審査基準について WIPO勧告は、周知商標を保護する可能性につき注意を喚起することを勧告するものであって、我が国の周知商標に関する規定である商標法4条1項10号のほか、 周知商標(需要者の間に広く認識されている商標)であるか否かを考慮して審査される同法4条1項11号、19号の規定にも関連している。そして、当該勧告が本号により運用すべきことまで規則を定めるものでなく、本件改正審査基準についての原告の見解は、いずれも独自の見解であり妥当性がない。
当裁判所の判断
1 原告は、本願商標が本号に該当するものであるとした本件審決の認定判断が、誤りである旨主張する。
ところで、本号の規定は、周知表示又は著名表示へのただ乗り及び当該表示の希釈化を防止し、商標の自他識別機能を保護することによって、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護することを目的とするものであるから、本号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には、当該商標をその指定商品等に使用したときに、当該商品等が他人の業務に係る商品等であると誤信されるおそれがある商標のみならず、当該商品等が上記の他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品提供事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれ、すなわち、広義の混同を生ずるおそれがある商標を含むものと解するのが相当である。そして、この場合、本号にいう「混同を生ずるおそれ」があるかどうかは、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の我が国における周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の我が国における実情等に照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断すべきである。
そこで、上記の観点から、本願商標が本号に該当するものであるか否かについて、以下検討する。
2(1) 引用商標である横長四角形中に記載された「Polo」の文字、「by RALPH LAUREN」の文字及び馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形の各商標が、ラルフ・ローレンのデザインに係る被服類及び眼鏡製品に使用する標章として、本願商標の出願時に我が国の取引者・需要者間において周知著名であることは、本件審決が認定した(3頁)とおり、当事者間に争いがない。
また、原告が、米国ポロ協会「United States Polo Association」の知的財産権の管理部門であり、同協会が、1890年の創立以来、ポロ競技の育成と発展に努めてきたアメリカ合衆国のポロ競技に関する組織であって、同協会の名称が、
ラルフ・ローレンが商標として「POLO」を採用する以前から継続使用されてきたことも、当事者間に争いがない。
(2) 原告は、本願商標が、上下二段からなる極めてバランスのよい一体的な商標であり、また、「U.S.POLO ASSOCIATION」の語から、前記「米国ポロ協会」というまとまった意味合い(団体名)が生じるので、外観及び観念において一体性を有しているとして、「POLO」の文字のみが抽出されて認識されることはないと主張する。
そこで、検討するに、本願商標は、「U.S.POLO」とこれよりやや小さい「ASSOCIATION」の欧文字とを二段に横書きした構成であり、その外観上、「U.S.」「POLO」「ASSOCIATION」の平易な英単語を組み合わせた結合商標と認められる。そして、本願指定商品の取引者・需要者を含む我が国の一般国民の通常の英語読解力を前提にすれば、「U.S.」及び「ASSOCIATION」の欧文字は、前者が、「アメリカ合衆国」又は「アメリカ合衆国の」、後者が、「団体」、「協会」、「組織」などを意味するものと容易に理解されると認められる。また、
「POLO」の部分については、スポーツしての「ポロ競技」が理解されるとともに、
前示の周知著名な引用商標「Polo」と極めて類似することから、「ラルフ・ローレンのデザインに係る商品」の観念が生じるものと認められる。
そして、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合していると認められない商標は、常にその構成部分全体の名称によってのみ称呼観念されるものではなく、しばしば、その一部の構成部分だけによって簡略に称呼観念され、1個の商標から2個以上の称呼観念を生ずることは経験則の示すところである。本件の場合、前記のような引用商標の周知著名性、とりわけ、横長四角形中に記載された「Polo」の商標が、被服類及び眼鏡製品の商品分野において、当該取引者・需要者間にとってラルフ・ローレンのデザインに係るものとして周知著名であり、その結果、引用商標が、強い自他商品識別力及び顧客吸引力を獲得していたことを考慮すると、上記取引者・需要者は、
本願商標の二段書きされた構成のうちでも、特に、「POLO」の欧文字部分に着目して認識するものといわなければならない。なお、我が国において一般に使用されている英和辞典類には、「U.S.POLO ASSOCIATION」の記載はないから、上記取引者・需要者は、常に本願商標を全体として一個不可分の既成の観念を示すものと認識するものではなく、また、仮に原告が主張するように、本願商標から、前記「米国ポロ協会」という意味合いを認識する者がいるとしても、それのみが認識されると解すべき合理的な根拠はない。
したがって、原告の上記主張は、採用することができない。なお、引用判決1は、商標法50条の規定に基づく商標登録取消請求に係る事案であって、本願商標と同一の構成の商標の使用が取消請求の対象とされた商標の使用と認められるか否かが判断されたにすぎず、本号の出所の混同のおそれを判断する前提として、
構成中に他人の周知著名商標である「POLO」の欧文字を有する本願商標がどのように認識されるかを直接判示するものではないから、本件事案において参照されるべき筋合いのものではない。
(3) また、原告は、本願商標から生じる称呼について、「ユーエス」、「ポロ」、
「アソシエーション」と三区分されて途切れるように称呼されるよりも、一気一連に淀みなく「ユーエスポロアソシエーション」と称呼されるものであって、この点からも、本願商標は、「POLO」の文字のみが分離されて認識されるとは考えられないと主張する。
しかしながら、原告が主張するように、本願商標の欧文字全体の構成に即して、「ユーエスポロアソシエーション」と称呼されることがあるとしても、簡易迅速が要請される取引の場面において、本願商標からこのような冗長な呼称のみが生じ、他の称呼が生じないと解すべき合理的根拠はなく、前記のような、「Polo」の商標の周知著名性を考慮すれば、「ポロ」と称呼される場合があることは、否定できるものではない。
したがって、この点に関する原告の主張も、採用することができない。
(4) さらに、原告は、本願商標が、前記の「米国ポロ協会」を指称する「ハウスマーク」であるから、「社標」として極めて強い出所表示力を発揮するものであり、本願商標から「POLO」の文字のみが取り出されて注目されることはないと主張する。
しかしながら、本件審決が正当に認定判断するとおり、「本願商標は全体として親しまれた熟語的意味合いを有するものではなく、また、特定の団体名称を表示するものとして我が国において広く知られているともいえない」(4頁)ものである以上、原告が主張するように、本願商標が「米国ポロ協会」を指称する「ハウスマーク」として認識する者がいるとしても、本願指定商品の需要者・取引者が、常に本願商標を「米国ポロ協会」の「ハウスマーク」としてのみ認識するとは、到底解することができないから、本願商標から「POLO」の文字のみが注目されることはないという原告の主張は、その前提を欠き、採用することができない。
また、原告は、ラルフ・ローレン社がポロ競技には関与していないので、
ポロ競技団体名である本願商標とは関連性を感じさせず、引用商標と混同を生じないと主張するが、本願商標が常にポロ競技団体名と認識できるものでないことは、
以上の説示に照らして明らかであるから、この主張も採用することができない。
なお、引用判決2(甲23)は、「CAMBRIDGE UNIVERSITY/POLO CLUB」の商標に関するものであり、当該商標中の「POLO」以外の部分、すなわち、「CAMBRIDGE UNIVERSITY」が、著名な「ケンブリッジ大学」の名称を容易に想起させる点で、本願商標とは事案を異にすることが明らかである。
3 原告は、本願商標を使用した商品が、既に市場に大量に販売されており、
他のポロ関連商品と併存して販売されているが(甲19〜21)、ラルフ・ローレン社の商標と混同を生じた事実はなく、また、ラルフ・ローレン社は、自己の商品を「Polo By Ralph Lauren」と表示し、あるいは、ラルフ・ローレン社の商品を表わす場合には、括弧書きで(ラルフ ローレン)と表示されている(甲11の1〜7)から、現実に出所の混同は生じていないと主張する。
しかしながら、本願商標を使用した商品が、本願指定商品中のかばん類の分野において一定程度販売されている事実は認められる(甲19〜21)ものの、それ以上にラルフ・ローレン社の商標と混同を生じていないことを認めるに足りる的確な証拠はない。また、いわゆるディスカウントショップの商品広告において、ラルフ・ローレン社の商品を示す場合に括弧書きで(ラルフ ローレン)等と表示されている事実は認められる(甲11の2〜7)ものの、ラルフ・ローレン社自身による広告や一般的な百貨店などの広告において、引用商標とともに上記括弧書きがなされていることを認めるに足りる証拠もない。そして、前示のとおり、引用商標、とりわけ、横長四角形中に記載された「Polo」の商標が、被服類及び眼鏡製品の商品分野において、当該取引者・需要者間にとってラルフ・ローレンのデザインに係るものとして周知著名であることを考慮すると、構成中に「POLO」の欧文字を有する本願商標に接した上記取引者・需要者において、商品出所の混同を生じていないとは、到底認めることができないから、原告の主張は、採用することができない。
4(1) 原告は、アメリカ合衆国では、「第18類 かばん類」「第25類 被服」等を指定商品として、「米国ポロ協会」の「ハウスマーク」である「UNITED STATES POLO ASSOCIATION」の商標と、引用商標の文字商標に対応する「Polo by RALPH LAUREN」の商標とが並存して登録されており(甲24、25)、米国以外の国々でも米国ポロ協会の商標は登録されている(甲4)から、これらの事実は、我が国において本願商標と引用商標との間で、商品の出所の混同を生ずるおそれがあるか否かの判断に際して尊重されなければならないと主張する。
しかしながら、本号にいう「混同を生ずるおそれ」があるかどうかは、前示のとおり、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情等に照らして客観的に判断されなければならない。そして、本願商標と他人の表示である引用商標との類似性の程度は、我が国における当該商品の取引者・需要者の一般的認識及び理解の程度を前提として判断すべきものであり、本件の場合も、前示のとおり、その前提に立って、本願商標の全体的構成及びその構成中の「POLO」の語並びに引用商標の「Polo」の語について検討したものである。また、引用商標を含むラルフ・ローレンの「POLO(ポロ)」商標についての周知著名性の程度も、我が国における当該商品の取引者・需要者の一般的認識を前提として判断すべきものであり、このような認識が各国において差異があることは当然のことといわなければならない。その他当該商品の取引が、我が国の実情に即して具体的に認定判断されなければならないことも当然である。
したがって、本号にいう混同のおそれについての判断に当たっては、我が国における当該商品の取引者・需要者の一般的認識等や当該商品取引の実情を重視すべきであり、アメリカ合衆国を含む各国の登録状況が全く無関係ではないとしても、これを尊重すべき筋合いのものではないから、原告の上記主張は、採用することができない。
(2) 原告は、「本件陳述書」(甲26)によれば、ラルフ・ローレン社自身が、米国ポロ協会のハウスマークとの並存を地域的に容認しているものと認められ、世界各国と同様に、我が国においても、同協会のハウスマークである本願商標は、引用商標と混同のおそれがないものとして登録されるべきであると主張する。
しかしながら、本件陳述書によっても、ラルフ・ローレン社が米国ポロ協会のハウスマークとの並存をアメリカ合衆国においてどのように容認しているかは、必ずしも明らかでない上、本号にいう「混同を生ずるおそれ」があるかどうかは、前示のように、我が国における当該商品の取引者・需要者を主体として客観的に判断されるべきものであるから、仮にラルフ・ローレン社が米国ポロ協会のハウスマークとの並存を一定範囲で容認していたとしても、そのことに基づいて本願商標の商標登録が肯定されるべきものではなく、原告の上記主張も採用することができない。
(3) 原告は、原告の上部団体である「米国ポロ協会」が本願商標をハウスマークとして1890年から採用して使用しており、引用商標に対するフリーライド的な要素が全くなく、かつ、商品流通秩序を阻害することのない以上、世界的な商品流通秩序の維持の観点から、上記諸外国と同様に、本願商標の登録を認めるべきであると主張する。
しかしながら、本号にいう「混同を生ずるおそれ」があるかどうかは、前示のように、当該商品の取引者・需要者を主体として客観的に判断されるべきであるから、原告に引用商標にフリーライドするような主観的意思がないとしても、そのことに基づいて本願商標の商標登録が肯定されるべきものではない。また、諸外国における本願商標の登録の実情によって、我が国における商標登録の可否が左右されるものでないことも、前示のとおりであるから、いずれにしても原告の上記主張は、採用することができない。
(4) 原告は、「他人の著名な商標と結合した商標は原則として出所混同を生ずるおそれがあるものと推認して取扱うものとする」とした本件改正審査基準(甲27)が、WIPO勧告(甲28)と明確に齟齬しており、同基準では「出所混同のおそれのないことが明白なものを除く」と制限を付加しているが、実際には、本件のように、
現実の出所混同がないことが明白であるにもかかわらず、著名商標権者に一方的に有利に適用されていると主張する。
しかしながら、本件改正審査基準がWIPO勧告(甲28)と齟齬するとの主張は、合理的根拠のない原告の独自の見解であり、しかも、本件改正審査基準の規定の内容にかかわらず、本願商標が引用商標との関係で出所の混同を生じるおそれがあることは、前示のとおりであるから、原告の上記主張を採用する余地はない。
5 上記に検討したとおり、引用商標は、その略称である「ポロ」や「Polo」等の語が語源的には普通名詞であることから、その独創性は必ずしも高いとはいえないが、ラルフ・ローレンのデザインに係る被服類等の商品を表示するものとして、周知著名性の程度が極めて高いところ、本願商標は、その引用商標「Polo」とほぼ同一の「POLO」をその構成部分に含む商標であり、当該構成部分がその余の部分から分離して認識され得るものであって、引用商標と称呼外観観念上類似していると認められる。また、本願指定商品のうち「かばん類、袋物」などは引用商標が周知著名である被服類などのファッション関連商品と繋がりが深い上、両者の取引者・需要者も共通する場合が多く、その需要者は、通常、特別の専門知識を有するものでない一般消費者である。これらの事情を総合的に勘案すれば、本願商標を本願指定商品に使用する場合には、これに接した取引者・需要者に対し、引用商標を想起させて、その商品が上記ラルフ・ローレンのデザインに係る商品であるかのように、その出所につき誤認を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。
そうすると、本願商標は、本号にいう「混同を生ずるおそれのある商標」に該当すると判断するのが相当であり、これに反する原告の前記主張は採用の限りではない。
6 以上によれば、原告主張の取消事由は理由がなく、その他本件審決にこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって、原告の本件請求は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 北山元章
裁判官 清水節
裁判官 上田卓哉