• この表をプリントする
  • ポートフォリオ機能


追加

元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 27年 (ワ) 7787号 損害賠償等請求事件

原告学校法人夙川学院
同訴訟代理人弁護士 橋口玲
同 片岡力
被告学校法人追手門学院
同訴訟代理人弁護士 井川一裕
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2017/04/10
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告は,原告に対し,別紙物件目録記載の動産を引き渡せ。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は原告の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
1 被告は,原告に対し,4566万0821円及びこれに対する平成27年9月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 主文第1項と同旨。
事案の概要
1 請求の要旨 (1) 原告の請求 原告は,「観光甲子園」との登録商標に係る別紙商標権目録記載の商標権を有し,その名称を使用して,高校生が参加する「観光プランコンテスト」を第1回から第6回まで共催校として開催してきたところ,被告が,共催校を承継したとして,原 1 告に無断で,ホームページにおいて同登録商標を使用して同商標権を侵害するとともに,後継の大会として第7回の同コンテストを宣伝,開催することにより本件商標権の価値を毀損したことが不法行為を構成すると主張して,被告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害金5572万3203円の一部である4566万0821円及びこれに対する不法行為の日の後であり,訴状送達の日の翌日である平成27年9月4日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。
また,原告は,被告が原告の所有する同コンテストの別紙物件目録記載の優勝旗及び優勝杯を占有しているとして,被告に対し,所有権に基づき,これらの引渡しを求めた。
(2) 被告の反論の概要 これに対し,被告は,@不法行為による損害賠償請求について,原告が,被告に対し,同登録商標を使用して後継の大会として同コンテストを宣伝,開催することを許諾し(争点1),被告の行為には違法性又は過失がなく(争点2),原告の請求が権利濫用に当たる(争点3)と主張して,不法行為の成立を争うほか,損害の発生の有無及び額を争い(争点4),A所有権に基づく優勝旗等の引渡請求について,原告が被告に対して優勝旗等を無償で譲渡した(争点5)と主張した。
2 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲証拠により明らかに認められる。) (1) 当事者 原告は,兵庫県西宮市に主たる事務所を有する学校法人であり,神戸夙川学院大学(以下「原告大学」という。)を設けていた。
被告は,大阪市に主たる事務所を有する学校法人であり,追手門学院大学(以下「被告大学」という。)を設けている。
(2) 原告の商標権原告は,別紙商標権目録記載の商標権(以下「本件商標権」といい,この商標権に係る登録商標を「本件商標」という。なお,本件商標の色彩は,省略する。)を有 2 している。
(3) 第1回から第6回までの観光プランコンテストの開催「観光プランコンテスト」 (以下,回数を特定しない場合に,単に「大会」ということがある。)は,全国の高校生が地元の観光プランを企画,応募し,プレゼンテーション等で競い合うことを通じて,地元地域の魅力を広く発信し,地域の観光振興等に貢献するとともに,観光に関する教育的効果も期待した事業であり,文部科学省,観光庁,地方公共団体その他多くの公益的団体等が後援している(以下,同コンテストに関する事業を「本件事業」という。 。
) 同コンテストは,平成21年度から実施,開催され,全国大会組織委員会(以下「大会組織委員会」という。)が主催し,平成21年度の第1回観光プランコンテスト(以下「第1回大会」という。)から平成26年度の第6回観光プランコンテスト(以下「第6回大会」という。)まで,原告大学が,共催校として,会場を提供し,経費を負担し,その庶務等を担当するなど,運営事務局となって実施された。また,同コンテストには「観光甲子園」との通称が用いられ,原告は,第1回大会の開催時から,本件商標を登録していた。
原告は,平成26年3月頃,原告大学の平成27年度以降の学生募集を停止することを決定し,平成26年4月以降,被告等に対し,学生の受入れ及び学科の承継を検討するよう依頼した。その後,第6回大会が,同年8月24日,原告大学において,同大学の共催により開催された。
(4) 第7回観光プランコンテストの開催 被告は,平成27年2月25日,ホームページにおいて,本件商標と同一ないし類似の標章を使用し(以下,単に「本件商標の使用」などという。 ,第7回観光プ )ランコンテスト(以下「第7回大会」という。)の告知を始めた(甲3)。
これに対し,原告が,被告に対し,同年5月7日,本件商標権の買取りを申し入れ,同年6月6日,本件商標の使用をやめるよう求めたところ(甲4),被告は,同月,本件商標の使用をとりやめた。その上で,被告は,ホームページにおいて,観 3 光プランコンテストについて,第1回大会から第6回大会までの実績を「過去の観光プランコンテスト」として掲載した(甲5)。
その後,第7回大会が,同年8月23日,被告大学において,同大学の共催により開催された。
(5) 大会の優勝旗及び優勝杯の所在 原告は,別紙物件目録記載1の優勝旗及び同記載2の優勝杯(以下「本件優勝旗等」という。)を購入し(甲6ないし8),第1回大会から第6回大会まで使用し,現在,被告が本件優勝旗等を保管して占有している。
3 争点 (1) 被告が本件商標を使用し,後継の大会として第7回大会を宣伝,開催した行為に係る不法行為による損害賠償請求関係 ア 原告は,被告に対し,本件商標を使用し,後継の大会として第7回大会を宣伝,開催することを許諾したか(争点1) イ 違法性及び過失の有無(争点2) ウ 原告の請求が権利濫用に当たるか(争点3) エ 損害の発生の有無及び額(争点4) (2) 所有権に基づく本件優勝旗等の引渡請求関係 原告は,被告に対し,本件優勝旗等を無償で譲渡したか(争点5)
争点に関する当事者の主張
1 争点1(原告は,被告に対し,本件商標を使用し,後継の大会として第7回大会を宣伝,開催することを許諾したか)について 【被告の主張】 以下のとおり,原告は,被告に対し,本件商標を使用し,後継の大会として第7回大会を宣伝,開催することを許諾した。
(1) 大会組織委員会及び全国大会実行委員会(以下「大会実行委員会」という。)の権限に基づいて,原告の許諾が認められること 4 平成26年8月24日に大会組織委員会及び大会実行委員会が開催され,第7回大会以降の共催校を被告大学とすることが決定された。
本件事業を主催するのは大会組織委員会であり,同委員会は,本件事業全般の企画,管理,運営を行い,運営に関する基本方針の決定等を行う。同委員会の下には,大会実行委員会が設けられ,同委員会は,大会組織委員会の決定した運営に関する基本方針の下で大会の運営等を行い,その実務を担う事務局を置くことになっており,その事務局(大学)が,経費を負担したり開催会場を提供したりして本件事業の共催校となる。したがって,本件事業を運営する上での実務等を担う事務局(共催校)を決定する権限を有するのは,大会組織委員会ないし大会実行委員会である。
そして,本件事業を創業し,6年間にわたって本件事業の実務を担い,実質的に本件事業を運営,遂行してきた原告も,そのことを理解し,了解している。
ところで,原告が本件商標権を有するとしても, 「観光甲子園」というのは本件事業の通称で,本件事業と不可分一体の関係にあり,本件商標は他の団体等が「観光甲子園」という標章を使えないようにして本件事業の円滑な運営が妨げられないようにする目的で登録されたにすぎないため,本件事業の主催者である大会組織委員会ないし大会実行委員会は,本件商標を通称として使用して本件事業を運営等することができ,原告もそのことを許諾している。そうすると,大会実行委員会に置かれ,本件事業の開催に向けた実務等を遂行する事務局(共催校)は,その実務等に当たって本件商標を使用でき,原告はそのことも許諾している。
したがって,大会組織委員会及び大会実行委員会によって第7回大会以降の事務局,共催校とされた被告大学が,本件事業を「第7回全国高校生観光プランコンテスト」として遂行し,その準備に伴って本件商標を通称として使用したことについて,原告は許諾している。
なお,原告は,原告大学を廃止し,平成27年度以降は本件事業を開催,運営できなくなり,原告が本件事業を開催,運営しないからといって,事業費用等の負担から免れこそすれ,不利益等を受けるものではないこと,本件事業や本件商標権に 5 財産的価値がないこと等から,被告大学が,本件事業を「第7回全国高校生観光プランコンテスト」として遂行し,その準備に伴って本件商標を使用することについて,原告の理事会の決議を要するものではなかった。
(2) 原告代表者及び原告の理事の認識に基づいて,原告の許諾が認められること 被告大学が平成26年10月以降に第7回大会の準備等を遂行し,平成27年8月に開催するに至った経緯,特に,平成26年8月24日に大会組織委員会及び大会実行委員会が第7回大会以降の共催校を被告大学に決定し,その場に原告大学の学長等も参加していたこと,同月27日に同大学の教授会が,同年10月1日に同大学の観光教育研究所が,それぞれ,第7回大会以降の事務局,共催校が被告大学に承継された旨の報告を受けていること,同月から原告の事務局と被告の事務局等が本件事業について引継ぎを行っていることなどから,原告代表者や原告の理事は,被告大学が本件事業の第7回大会以降の共催校の地位を承継していることや,同月頃から準備を進めていること等を知っていた。
また,原告は,6年間にわたり本件事業を共催校として運営し,大学の保護者説明会においても本件事業について言及し,学校法人神戸山手学園(以下「神戸山手学園」という。 との合意の中で本件事業の今後のことについて規定していることか )ら,本件事業の行く末に大きな関心を持っていた。さらに,本件事業については,同年4月4日以降,原告代表者等が被告に対して共催校を承継するよう依頼し,被告は原告に対し同年10月以降に共催校を承継する旨を伝え,本件商標の移転登録手続をするよう要請し,原告側からは平成27年3月の理事会の開催後に手続を迅速に行う旨回答がなされており,原告代表者や原告の理事が,被告大学が第7回大会から共催校の地位を承継したことや,平成26年10月頃から準備を進めていること等を知っていた。
そして,原告は被告に対して異議申立て等を行わなかったから,被告大学が,本件事業を「第7回全国高校生観光プランコンテスト」として遂行し,その準備に伴 6 って本件商標を使用することについて,原告は許諾していた。
さらに,同年8月24日に大会組織委員会及び大会実行委員会において被告大学が本件事業を承継することが決定された後,被告が第7回大会に向けて各種の準備を行わなければならず,その際に本件商標を使用しなければならず,被告による本件商標の利用は認められていた。また,本件商標は,財産的価値がなく,本件事業の円滑な遂行のため,その使用が妨げられないようにするために登録されたにすぎないから,被告が本件事業を承継する以上,本件商標も被告へ移管されるべきものであった。そして,その対価に関する条件が提示されたこともなく,無償で移管されることが前提となっていた。したがって,被告は本件商標の移管のために原告に対して形式的に書類への押印を求めていただけであり,その押印等がなければ本件商標を使用できないという認識を持っていたものではない。
(3) 原告と神戸山手学園との合意に基づいて,原告の許諾が認められること 原告は,平成26年5月頃,一般社団法人観光教育推進機構(以下「観光教育推進機構」という。)を設立し,原告大学観光文化学部の教授で大会実行委員長であったP1をその代表理事に就任させ,その後,神戸山手学園との間で,本件事業の「今後のこと」については,観光教育推進機構と神戸山手学園が決定する旨合意した。
その抽象的・包括的な表現や,通常の意味内容,本件事業にとって,どこが共催校を担うかが重要な事項の1つであること,本件事業と本件商標の不可分一体の関係等から,本件事業の「今後のこと」とは,第7回大会の共催校をどの大学が承継,担当するかや,共催校の承継校が本件事業を準備,開催するに当たって本件商標を使用すること等の趣旨を含む。
そして,P1は,同年6月10日頃,被告大学の教授であり,社会学部長を務めるP2より,同大学が本件事業の共催校を承継する旨の通知を受け,観光教育推進機構の代表理事として,同大学を本件事業の共催校とすることを決定した。また,P1は,同年8月19日,神戸山手学園の理事長及び事務局長に対し,同大学が第7回大会から本件事業の共催校となることを報告してその同意を得た。
7 こうして,観光教育推進機構と神戸山手学園は,双方の合意に基づき,被告大学を本件事業の共催校とすることを決定した。もとより,同機構と同学園は,同大学が本件事業の共催校を承継して第7回大会に向けて準備等を進める上で,同大学が本件商標を使用することについても,合意した。
したがって,原告は,第7回大会からの共催校となった被告大学が,平成27年度に本件事業を「第7回全国高校生観光プランコンテスト」として遂行し,その準備に伴って本件商標を使用することについて,許諾したことになる。
【原告の主張】 以下のとおり,原告は,被告に対し,本件商標を使用し,後継の大会として第7回大会を宣伝,開催することを許諾していない。
(1) 共催校を変更する権限が原告にあったこと ア 原告が本件事業を立ち上げ,運営していたこと そもそも,本件事業が立ち上げられたのは,原告大学の学長が, 「観光甲子園」のアイデアに賛同したためであり,同大学の職員がその事務局として,大会の応募書類,チラシの作成,大会広報,協賛金の募集,会場の設営,本大会の運営等の実務作業を行い,第1回大会が開催された。このように,意思決定や具体的な実務作業を行って大会を開催していたのは,実質的には同大学であった。
イ 共催校の変更には,原告の理事会の決議が必要であること 大会を実質的に主催し,開催してきたのは,原告大学であり,原告は,本件商標を登録し,自己の財産として管理してきた。共催校を変更し,同大学が本件事業に関与しなくなることは,本件商標を含め,同大学の重要な財産を他者に譲り渡すことを意味し,原告の理事会の決議が必要であるところ,原告の理事会の決議はなされていない。
ウ 大会組織委員会,大会実行委員会及び観光教育研究所には,共催校の変更を決定する権限がないこと 文部科学省や観光庁等から後援を受けるに当たり,大会組織委員会及び大会実行 8 委員会が組織され,大会組織委員会を主催者とされたが,大会組織委員会は年1回,大会実行委員会は年3,4回,開催されるにすぎず,両委員会は,大会の開催,運営について具体的な意思決定をすることもほとんどなければ,開催,運営の実務を担当することもなく,それらの役割は,原告大学が担っていた。そして,大会組織委員会の任務や大会実行委員会の審議事項には,共催校の変更のような重要事項は挙げられていない。
また,観光教育研究所は,原告に設置された常設委員会の1つであり,その目的は,観光教育における教授法,教育課程,教育評価等,教授システムに関する実践的研究を行うことであり,共催校の変更の権限はない。
(2) 被告が原告に対して正式に本件事業を承継する旨の返答をしていないこと 原告は,被告から正式には本件事業の承継に関する回答や申込みを受けていない。
原告が本件商標に関する費用について協議しなかったのも,被告が本件事業を承継するか不明であったからであり,無償で本件商標を使用し,本件事業を承継することを許諾していたからではない。
平成26年4月における原被告間の協議内容は,学生の受入れ及び学科の承継が主題である一方,同年7月における協議内容は原告と被告の合併であり,本件事業の承継について協議がされることはなかった。
(3) 原告が本件事業の承継や本件商標の使用を黙認しなかったこと P1が被告との間でほとんどのやり取りをしていたところ,P1や大会組織委員会,大会実行委員会に,本件事業の承継先を決定する権限はなく,P1や両委員会の言動により,被告が本件事業の承継先となったとはいえない。同様に,P1や両委員会に,本件商標の使用を許諾する権限はなく,P1や両委員会の言動により,被告に本件商標の使用が許諾されていたとはいえない。また,P1や両委員会のいずれも,原告に対し,本件事業の承継や本件商標の使用に関し,報告等をせず,原告がP1や両委員会の言動を認識することもなかった。そのため,原告が,本件事業の承継や本件商標の使用を黙認していたこともない。
9 さらに,本件商標権という財産権の譲渡に関しても,学校法人間で承継等の合意がされるのであれば,協定書や合意書といった文書が作成されるのが通常であるところ,そのような文書は作成されていない。このことは,原告が本件商標権の譲渡や,それに伴う本件事業の承継について認識していなかったことを示し,原告は本件商標の使用を黙認していない。
(4) 観光教育推進機構及びP1に,本件事業及び本件商標の承継,移転を決定する権限がなかったこと 原告は,神戸山手学園との間の合意において,同学園が原告大学の教育資産を引き継ぐことを前提とし,その上で「今後のこと」を,観光教育推進機構と同学園が協議することとしている。そうすると, 「今後のこと」とは,同学園が本件事業を引き継ぐか否か,引き継ぐのであればその詳細を協議するという意味でしかなく,同機構に本件事業の引継ぎの決定について権限を与えていたとはいえず,P1に本件事業の承継先を決定する権限があったともいえない。また,上記の合意や同機構の設立概要において,原告の財産である本件商標権の移転に関して,同機構に権限が与えられた旨は定められておらず,同機構が,本件商標権の移転を決定する権限を有していたともいえない。そして,上記の合意には,本件事業や本件商標権を同学園に承継する旨は定められておらず,原告から同学園に対して,本件事業や本件商標権が承継されたとはいえない。
むしろ,原告は,本件事業の承継について同学園と上記の合意をするに当たって,合意書を作成し,理事会の決議を経ているのに対し,原被告間では,合意の文書が作成されておらず,本件事業の承継について,原告の理事会の決議も経なかったため,原告は被告による本件事業の承継を認識していなかったといえる。
2 争点2(違法性及び過失の有無)について 【原告の主張】 原告は,原告大学の学生募集の停止を決定したため,平成26年7月18日,被告に対し,本件事業の引継ぎを依頼したが,被告は何らの回答もせず,原告が,被 10 告に対し,平成27年1月頃,本件商標権の譲渡には原告の理事会の決議を要する旨伝えたにもかかわらず,被告は,原告の理事会の決議を待たずに,同年2月25日,ホームページにおいて,本件商標を使用し,第7回大会の開催を告知した。そして,被告は,原告から同年6月4日に本件商標の無断使用を指摘されると,大会の名称を「観光プランコンテスト」とし,原告の承諾なく,原告が行ってきた6回の大会を引き継いだとして,第7回大会を宣伝し,開催した。
このように,被告は,本件商標権を移転するためには原告の理事会の決議及び委任状が必要であることを認識していたにもかかわらず,原告の理事会の決議を待たずに本件商標を使用した。この点,被告は,原告が本件商標権を有していることを知っており,本件商標の価値が失われるような行為を行わない義務を負っていたところ,被告の行為は,同義務に違反する。
また,本件商標の移転登録は本件商標の使用の前提であり,本件商標の移管と切り離されて,第7回大会における本件商標の使用が認められることはない。そのため,被告は,本件商標の移管だけでなく本件商標の使用についても原告の理事会の決議が必要であると認識していた。
したがって,被告に違法性及び過失があったと認められる。
【被告の主張】 被告大学が平成26年10月以降に第7回大会の準備等を遂行し,平成27年8月に開催するに至った経緯,特に,本件事業の承継に伴い,平成26年7月11日,同大学のP2等が原告大学で開催された第6回大会の選考委員会に招聘されたこと,同年8月24日に大会組織委員会及び大会実行委員会が第7回大会以降の本件事業の共催校を被告大学に決定したこと,これを受けて,原告の事務局が文部科学省や関係委員に対して同大学が第7回大会以降の共催校となる旨を通知したこと,原告の事務局が被告の事務局と打合せを繰り返し,本件事業の引継ぎを行ったこと,同大学が第7回大会開催のための準備作業等をほとんど終えるまで,原告から同大学に対して本件商標の使用について異議申立て等がなかったこと,本件事業を「第7 11 回全国高校生観光プランコンテスト」として遂行,開催することについて本件訴訟に至るまで異議申立て等がなかったこと等からすれば,同大学が本件事業を「第7回全国高校生観光プランコンテスト」として遂行,開催し,その準備に伴って本件商標を使用したことについては,違法性がなく,少なくとも過失がない。
また,被告は,平成27年6月4日に原告側から本件商標を無断で使用している旨の通知を受け,第7回大会に応募する高校生等を紛争に巻き込むなどして迷惑や失望感等を与えてはならないと判断し,原告に対し,被告が本件事業を承継しており,その通称であった「観光甲子園」 (本件商標)を使用して準備を進めることは許諾されていたなどと回答した上で,本件商標の使用を停止し,ホームページ等において, 高校生観光プランコンテスト」 「 との正式名称だけを用いることにし,その際,原告が行ってきた大会を継承したなどと表現してはいない。
仮に,被告が原告の行ってきた大会を継承したことを示すような対応をとっていたとしても,本件事業を承継した被告は,正式名称を用いて,第1回から第6回までの大会に続く「第7回高校生観光プランコンテスト」を開催しようとし,単に「観光甲子園」という通称の使用をとりやめたにすぎないから,被告が準備を進めていた第7回大会が過去の大会を継承していることを示す対応をとったとしても,問題はない。
さらに,被告は,原告から平成26年10月に本件事業のデータ等の引継ぎを受け,イベント業者と委託契約を締結するなどして,第7回大会に向けて「観光甲子園」という従来からの通称も使用しながら様々な準備を進め,高校生からの参加申込み等がなされていた中で,平成27年6月に「観光甲子園」という通称の使用をとりやめることになったので,高校生等に違和感等を与えないようにするためにも,原告が行ってきた過去の第1回から第6回までの大会に続く大会とすることに,問題はない。
この点において,被告は,違法性及び過失を争う。
3 争点3(原告の請求が権利濫用に当たるか)について 12 【被告の主張】 神戸山手学園は,原告から,原告大学に係る教育資源の全てを,平成27年4月1日をもって継承し,原告はその教育資源の全てを譲渡して保有しないことになった。その「教育資源」の中には,本件事業や,本件事業の通称として不可分一体の関係にある本件商標権も含まれている。したがって,原告は,同日以降,本件事業に関する権利・地位や,本件商標権等を有していない。
また,被告が本件事業を「第7回全国高校生観光プランコンテスト」として遂行したり,その準備に伴って本件商標を使用したりしたからといって,原告は,損害を被ったと主張できる権利,地位はない。
したがって,被告が本件事業を「第7回全国高校生観光プランコンテスト」として遂行したり,その準備等に伴って本件商標を使用したりすることについて,原告がその違法性等を主張したりすることは,権利濫用に当たる。
【原告の主張】 原告と神戸山手学園の間で締結された合意において,本件事業を含め,原告が原告大学で実施していた事業に関する事項が定められ, 「観光甲子園」に関しては, 「今後のことを決定する」との記載にとどまっており,同学園が承継,実施するとの記載はなく,本件事業が同学園に引き継がれた事実も,本件商標権が同学園に移った事実もない。
したがって,原告の主張は,権利濫用には当たらない。
4 争点4(損害の発生の有無及び額)について 【原告の主張】 (1) 被告が本件商標を使用したこと及び名称を「観光プランコンテスト」と変更した上で「観光甲子園」と同内容の大会を開催したことにより,本件商標の価値が損なわれ,本件商標を取得する際に投下した費用及び大会の開催に必要であった費用が無駄となった。被告の本件商標の使用及び第7回大会の開催は,実質的には原告が開催していた「観光甲子園」の継続であり,被告がそのような形で「観光プ 13 ランコンテスト」を開催した以上, 「観光甲子園」が「観光プランコンテスト」であると誤解され, 観光甲子園」 「 の名を冠した大会を開催することは今後不可能になり,本件商標の価値は失われた。原告が「観光甲子園」の開催のために支出した費用は,合計4566万0821円であり,被告は原告がこの費用をかけて育て上げたブランドを棄損した。したがって,原告は,被告の本件商標の使用及びその後の第7回大会の開催により,4566万0821円の損害を被った。
(2) 本件事業は,他の大学,専門学校との差別化としての意味があり,受験生が原告大学に進学する動機になり,本件商標は,被告にとっても学生募集やそれに伴う収入の増加に役立ち,財産的価値がある。また,本件事業は同大学の名前を観光に関心のある全国の高校生に認識させることができるという意義を有し,「甲子園」という名称は高校生を引き付ける力を有しているのであり,このことは,被告が設立したばかりの地域創造学部の学生を募集する上で利点となり,収入の増加につながる。
このような事情も考慮して本件商標の価値を評価すると,5572万3203円になる。したがって,原告には5572万3203円の損害が生じ,原告は,一部請求として4566万0821円の損害賠償を請求する。
(3) 原告が原告大学の学生募集を停止するとしても,本件事業を行うことは可能であり,他の大学が引き継ぐのであれば,その大学との間で本件商標権の対価について協議することはあり得る。そのため,原告大学の学生募集の停止によって,本件事業や本件商標の経済的価値が失われるものではない。
また,原告が本件商標権を有するのも,原告が経費を負担し,実質的に大会を開催していたからである。原告は,本件商標に価値があるからこそ,本件商標を登録し,費用及び労力を提供し,実質的に大会を開催してきたのであり,原告が便宜的,形式的に商標権者とされたものではない。
【被告の主張】 本件事業は,公共的,公益的,教育的な性格のものであり,私的,経済的利益を 14 目的とするようなものではなく,本件事業の遂行には多額の経費等がかかり,学生が志望大学を決定する動機は,本件事業を行っているかどうか等の点にはなく,実際に,本件事業に参加する高校生は日本全国に散らばっており,観光に関する大学や専門学校等も多く存在し,大会に参加した高校生もほとんど原告大学に入学した実績がない。そもそも,原告は同大学を廃止したことにより,本件事業を遂行,開催することもできない状態になった。このように,本件事業そのものやこれを遂行,開催することには経済的価値はない。
そして,本件商標は本件事業の単なる通称にすぎず,本件商標も公共的,公益的な性格のものであり,私的・経済的利益のためのものではない。また,大会に参加した高校生がほとんど原告大学に入学した実績がなく,本件商標には入学者の獲得等の効果,機能もない。さらに,本件事業において円滑に通称を使えるようにするために,経費を負担していた原告が,便宜的,形式的に本件商標の登録主体となったにすぎず,原告の会計書類の1つである財産目録には,本件商標権の保有が記載,計上されていない。そして,原告は,同大学の廃止により,本件事業を遂行,開催できない状態になり,本件商標を使用する余地もなくなった。このように,本件商標権にも何ら経済的価値はない。
したがって,被告大学が「第7回全国高校生観光プランコンテスト」を遂行,開催し,その準備等に伴って本件商標を使用したからといって,原告には損害が発生していない。
5 争点5(原告は,被告に対し,本件優勝旗等を無償で譲渡したか)について 【被告の主張】 原告は,本件事業を遂行することができなくなり,被告に対し,本件事業を承継させ,平成26年10月に本件優勝旗等を含む本件事業の書類,データ,備品等の全てを交付して引き継いだこと,被告が交付を受けた本件優勝旗等には「観光甲子園」のロゴや「『観光甲子園』大会組織委員会」の表示はあるものの,原告や「原告大学」などといった表示がないこと,それらの承継に当たり,対価や返還等に関す 15 る条件が提示されなかったこと,同月以降,被告において優勝旗等を含む引継ぎ物件を使用する必要がある一方で,原告において本件事業を遂行することはなく,本件優勝旗等を使用する余地もなかったこと等から,原告は被告に対し本件事業の承継に伴い,本件優勝旗等を無償で譲渡したと認められる。
【原告の主張】 原告は,第1回大会の際に,合計15万4600円の費用をかけて本件優勝旗等を製作して所有するところ,被告は,本件優勝旗等を占有している。
被告は原告に本件事業の承継を申し入れたこともなく,原告の理事会が被告への本件商標権の譲渡を決議したこともない。そうすると, 「観光甲子園」のロゴが付された物品に関する所有権は,商標権者である原告にあり,被告は,本件優勝旗等の返還義務を負う。
仮に,原告が平成27年度以降の大会を開催しないとしても,本件事業の承継先を見つけ,共催校を新たに追加するなど,本件事業を継続する場合には,本件優勝旗等を使用するのであり,平成26年10月以降,原告が本件優勝旗等を使用する余地はあった。
したがって,原告は,被告に対し,所有権に基づいて,本件優勝旗等の引渡しを求める。
当裁判所の判断
1 認定事実 前提事実,証拠(甲21ないし24,26,乙35,36,後掲のもの)及び弁論の全趣旨によると,次の事実を認めることができる。
(1) 大会組織委員会及び大会実行委員会と本件事業との関わり ア 本件事業は,当時の原告大学の学長が発案者の提案に賛同して立ち上げられ,同大学が事務局を設け,主催を大会組織委員会,共催を同大学とし,文部科学省,観光庁,兵庫県,神戸市,社団法人日本観光協会,社団法人日本旅行業協会及び社団法人全国旅行業協会等による後援や,多数の企業等による協賛を得て,第 16 1回大会が開催された(甲9添付の第1回大会のパンフレット,証人P1・2頁)。
イ 「観光プランコンテスト(通称『観光甲子園』)全国大会規程」(乙1)においては,年1回開催する全国大会のために大会組織委員会及び大会実行委員会を設け(第3条),大会組織委員会の任務は,@全国大会全般の企画,管理,運営,収支管理を行うこと,A大会実行委員長を選任すること,B全国大会の運営に関する基本方針を決定することとされ(第4条),大会実行委員会は,大会組織委員会の方針に基づき,全国大会の目的達成のために,高校生の全国大会にふさわしい企画を立案して実施し(第11条),全国大会を実施するために,大会実行委員会に事務局を置くこととされた(第13条)。
また,「観光プランコンテスト(通称『観光甲子園』)大会実行委員会運営規程」(乙2)においては,大会実行委員会は, 「観光甲子園」大会の円滑な実施及び運営を図ることを目的とし(第2条),同大会の運営,企画,実施,募集,審査,発表,表彰等の事業を行い(第3条,第4条),@事業計画に関すること,A予算及び決算に関すること,B役員の選任に関すること,C会則の制定及び改廃に関すること,Dその他重要事項に関することを審議,決定し(第9条),委員会の事務を処理するために事務局を置くこととされた(第14条)。事務局は,当初は原告大学に置くものとされたが,本件の経緯の中で,被告大学に置くものと改められた。
ウ 大会組織委員会は,年に1回,2月頃に原告大学で開催され,募集要項や大会の概要を決めていた(証人P3・1,2頁)。
また,大会実行委員会は,年に2,3回,同大学で開催され,10月頃に次回に向けての改善点,要望等を協議し,2月頃に大会組織委員会と同日に開催し,同委員会と同じ内容を協議し,さらに必要があれば,予選後の7月末か8月初めに予選の結果を報告して本選の進め方を協議していた(証人P3・3,4頁)。
(2) 原告と本件事業との関わり ア 原告の寄附行為(甲11)では,原告が原告大学を設置し,同大学は,観光文化学科及び観光マネジメント学科から成る観光文化学部によって構成され 17 (第4条),理事会が学校法人の業務を決し(第18条),寄附行為の施行についての細則その他原告及び原告の設置する学校の管理及び運営に関し必要な事項は理事会が定めるものとされ(第47条),これを受けて,原告の寄附行為施行細則(甲12)では,原告及び原告が設置する学校の組織及び運営に関する基本方針,基本財産の処分に関する事項,その他の「重要又は異例にわたる事項」は理事会が決定する旨が定められている(第2条第1項(1),(2),(10))。
イ 原告大学は,共催校として,事務局を設けて大会を運営し,会場を提供し,費用を負担し,広報,協賛金の勧募を行う役割を果たしており,大会組織委員会等における諸手続は,全て事務局たる原告が原案を作成して委員会が承認するというものであった(証人P4・18,19頁,証人P3・1,2,5頁,証人P1・2,3,22頁)。原告が第1回大会から第6回大会までに負担した経費は,合計3966万円余である(甲9の16頁)。
原告大学の観光文化学部の教授であったP1は,第1回大会から本件事業に関わり,第3回大会から第6回大会まで,大会実行委員長を務め, 同大学の常設委員会の1つである観光教育研究所には観光甲子園推進部会が設けられ,P1はその所長に就いていた(甲13,14,証人P1・1,21頁)。なお,P1は,平成25年12月頃,被告代表者及び被告大学の学長との間で,同大学に移ることが決まり,平成27年3月まで,原告大学の教授を務めた後,同年4月に被告大学の社会学部教授に就任し,第7回大会の大会実行委員長も務めた(証人P1・1,23頁)。
原告には法人事務局と大学事務局があり,そのうち大学事務局には総務部,教務部,学生部,就職部があり,約20人の規模であった。本件事業の事務局としての業務は,定型的なものであったため,それらの部局の所掌業務とはされておらず,原告では,実質的には,P1及び事務職員であるP3が本件事業を担当し,P3は,第3回の大会以降,事務局としての業務をほぼ1人で担当し,大会組織委員会及び大会実行委員会の開催に合わせて,議案や資料を作成し,運営等で困った場合には専らP1に相談していた。
(証人P4・34,35頁,証人P3・1ないし4,12, 18 38ないし41頁) また,原告の理事であり,事務局長を務めるP4は,法人事務局と大学事務局の事務局長を兼務していた。第6回大会の当時,本件事業について,P4が事務職員や教授会から報告を受けることはなく,原告の理事会は予算について決議をするのみで,大会の運営についてまで報告を受けて決議をすることはなかった。(証人P4・14ないし17,19,34,35頁) (3) 本件の経緯1(当初の原被告間の代表者及び理事の間のやり取り) ア 原告は,入学者減少に歯止めがかからず,経営が破綻する可能性が高いと判断し,平成26年3月27日,理事会において,平成27年度から原告大学観光文化学部観光文化学科の募集を停止することを決議し(原告の平成28年3月16日付け上申書添付の資料1),平成26年4月17日,文部科学省に対し,同学科の募集停止を報告した(乙24の配布資料5)。これに伴い,原告大学が大会を開催することができなくなったことから,原告では,事業の承継先が見つかるとよいと考えていた(証人P4・21頁,原告代表者4,5頁)。
原告は,学生の募集停止に伴い,学生の転学先や,観光文化学科の教育資源の承継先を探す必要が生じ,被告が候補先の1つとして挙がった。また,原告による本件事業の実施が困難となり,共催校の承継先を探す必要もあったが,検討課題としては,学生の転学先や学科の承継先の確保が優先した。
(証人P4・1,2,4,21,28頁,証人P1・3頁,原告代表者1,2頁) イ 原告代表者及びP4は,平成26年4月4日,被告を訪問し,被告代表者及び常務理事のP5等と面会し,学生の募集停止を伝え,学生の転学,学科の承継,教員の転職を依頼するとともに,本件事業について説明し,その承継先が見つかるとよいと考えている旨伝えた(証人P4・2,3頁,原告代表者2,3頁)。
P5は,同月11日,P4に対し,電子メールにより,同日に被告の常任理事会において,原告大学の在学生の受入れを第一に考えて対処し,原則として,全学部で受け入れる方針をとるが,受入れの人数,基準,時期,入学年度等の詳細は各部 19 署で検討することとした旨報告した。この報告の中では学科の承継への言及がなかったため,P4は,P5に対し,電子メールを返信し,同大学のカリキュラム,教員スタッフを被告大学の学科に引き継ぐことができるかを尋ね,検討を依頼した。
(甲15,証人P4・3,4頁) P5は,同月12日,P4に対し,電子メールにて,カリキュラム及び教員の承継の趣旨を尋ね,これに対し,P4は,返信の電子メールにおいて,その趣旨を説明し,再度,学科及び教員の承継の検討を依頼した(甲16,証人P4・4頁)。
その後,P4及び原告の理事であるP6が,同月末,被告を訪問し,学科の継承ができない旨の回答を受けた(証人P4・4頁)。
ウ 原告は,神戸山手学園にも学科の承継等を依頼していたが,同学園は,平成26年5月中旬,原告に対し,平成27年4月に神戸山手大学現代社会学部に観光文化学科(仮称)を新設し,学生及び教員を継承する用意がある旨を申し出た。
(乙24の配布資料5)。
(4) 本件の経緯2(平成26年8月24日の大会組織委員会及び大会実行委員会において共催校の変更が承認されるまでの経緯) ア P1は,原告が学生募集の停止を決めた後の平成26年4月19日,北海道大学の教授であり,大会組織委員長であるP7に対し,電子メールにより,原告が,平成27年度以降,原告大学観光文化学部の学生募集を停止すること,第7回大会以降の継続開催に向けて,一般社団法人の設立を検討していることを報告した(乙17)。
イ 原告は,平成26年5月1日,「観光甲子園」の企画運営等を目的とし,原告大学内を主たる事務所として,観光教育推進機構を設立し,P1が代表理事に,同大学の准教授であり,学部長として本件事業の事務局長を務めていたP8,同大学の准教授であり,本件事業の委員を務めていたP9,P3が理事に,P6が監事に就いた。同機構は,学生募集の停止に伴い,同大学の事務局に代わって協賛金を募りやすくするために設立されたものであったが,共催校となるだけの資金も要員 20 もなく,共催校の決定について,原告と合意をしたり,原告から委任を受けたりしたことはなかった(なお,同機構は,その後の平成27年6月15日に解散し,P3が代表清算人に就き,同年9月1日,清算が結了している。 。
)(乙19,32,33,証人P3・5,6頁,証人P4・29頁,証人P1・3ないし6,25,27,31頁) ウ その上で,P1は,平成26年4月末,被告大学の社会学部長であったP2に対し,本件事業の承継を申し入れ,被告では,平成27年4月に開設予定の地域創造学部が本件事業の運営の役割を担うことが検討され,同学部設置の部会長であるP2が調整役となった(証人P2・2頁,証人P1・8頁)。P1は,平成26年5月中旬,P3とともに被告大学の施設を視察し,P2等から説明を受けた(証人P3・19頁,証人P1・8頁)。
エ 他方,原告から学生及び教員を承継する方針を申し出ていた神戸山手学園は,本件事業については,同月頃,P1に対し,経費を要することから承継しない旨を表明していた(証人P4・10頁,証人P1・5頁) オ P1は,P2に対し,他の大学からも本件事業の承継を検討する旨の申出があり,同年6月中旬までに意向を明らかにするよう伝えており,これを受けて,P2は,同月4日,被告の理事長,学長,専務理事,常務理事が出席する執行部会において,本件事業の承継を提案し,承認された。その際,P2は, 「検討文書」を作成し,他に大阪成蹊大学,流通科学大学が本件事業の承継を申し出ているのに対し,神戸山手大学には本件事業を実施する考えがないところ,同月中旬には被告の意思表示が求められており,本件事業を実施する場合には,同年8月24日開催の第6回大会を踏まえて,早急に取組を開始する必要がある旨を報告した。また,同年6月23日に被告の地域創造学部開設プロジェクト会議においても本件事業の承継が承認された。
(乙16,18,証人P2・4,5,18,19頁,証人P1・24頁) P2は,同月5日,P1に対し,被告が本件事業を承継する旨の方針を連絡し(証 21 人P2・6頁,証人P1・9頁),P1は,同月10日,大会組織委員長であるP7に対し,電子メールにより,第7回大会以降は,被告大学が本件事業を承継することになり,今後,大会会場,事務局の移管による組織体制の見直しを協議する予定であることを報告した(乙17,証人P1・9頁)。また,P1は,同月5日の翌週の頃,大阪成蹊大学及び流通科学大学に対し,被告大学が本件事業を承継する意向である旨を報告した(証人P1・35頁)。
カ 神戸山手学園関係では,同月29日,原告大学の学生の保護者への説明会が開催され,同大学の理事であり学長を務めるP10,副学長であるP11,P8,P6,P4,神戸山手学園の理事長,学長,学部長が出席して,神戸山手学園への学生の転学及びカリキュラムの承継について説明し,その際,P11は,本件事業について,大会組織委員会が大会の開催を決定するが,平成27年度以降は未定である旨説明した(乙24)。
キ 原告代表者及び原告の理事であるP12は,同年7月4日及び同月11日,被告を訪問し,法人の合併について話し合い,これを受けて,P4は,同月中旬,合併について協議するために被告を訪問し,資金援助を依頼したが,資金援助に応じられないとの回答を受け,合併の話は進まなかった(証人P4・5頁,原告代表者3,4頁)。なお,P4は,その後の同年8月初め頃にも被告を訪問し,転学のための入試制度等を協議したが,その後に被告と協議することはなかった(証人P4・5頁)。
ク P2は,P1から,同年7月11日に原告大学で開催された第6回大会の本選出場校の選考委員会(予選会)に招かれ,被告の理事長室経営戦略課長であるP13,同課のP14とともに参加した(乙23,証人P2・7頁,証人P1・10頁)。
ケ 同年7月30日,被告の執行部会において,本件事業の承継について協議がなされた。その際,P2は,資料を作成し,神戸山手大学が原告大学の観光文化学部の教職員及び学生を受け入れることとなり,神戸山手大学が同年6月末に文 22 部科学省に観光文化学科の設置を申請し,同年8月下旬に認可される予定であることを報告し,本件事業について,同年6月4日の執行部会での説明に加え,実施経費が,第5回大会が472万3522円,第6回大会が498万3370円であることを報告した。(乙18,証人P2・5,6頁) コ 他方,神戸山手学園関係では,同年7月25日,原告の理事会が開催され,神戸山手学園が同年6月末に文部科学省に観光文化学科の新設及び収容定員増を申請したことが説明され,同年7月30日に同学園との間で,観光文化学科の事業承継に関する合意をすることが承認された(乙34の2)。
原告と同学園は,同年7月30日, 「原告大学観光文化学部観光文化学科教育資源の継承に関する合意」 (乙34の1)を締結し,原告大学観光文化学部観光文化学科の募集停止に伴い,同学園が設置する神戸山手大学現代社会学部に,平成27年4月1日,新たに観光文化学科を設置し,同大学が原告大学の教育資源(教職員,カリキュラム,情報,ノウハウ,図書等)を継承するとともに,平成26年7月1日現在で在籍する学生を受け入れることを合意した。その中で,教育資源を継承する時期は平成27年4月1日とされ(第2),教育資源を継承するに当たり,その対価は支払われないこととされ(第3)「観光甲子園は, , 『一般社団法人観光教育推進機構』と乙(神戸山手学園)が協議の上,今後のことを決定する。なお来年度(平成27年度)の開催場所は未定である。 (第4(5)ウ)と定められた。
」 これを受けて,P11は,P1に対し,本件事業の方向性については,神戸山手学園との間で協議をして確認しておくよう指示した。そのため,以後,P1は,P11に対しては,本件事業を被告が承継することについての状況を報告していた。
(証人P1・29,33,35,36頁) サ 同年7月末日付けで,大会組織委員長のP7及び大会実行委員長のP1の名義で,各委員に対し,同年8月24日の第6回大会終了後の大会組織委員会及び大会実行委員会の開催が通知され,その中で,原告が原告大学観光文化学部の平成27年度以降の学生募集を停止し,第7回大会以降は共催大学を変更して継続し 23 て開催し,平成26年10月以降に現行の組織体制を一部変更して運営を執り行うことが報告された(乙25)。
シ P1は,上記の本大会後の大会組織委員会で共催大学の変更を承認することを予定していたことから,それに先立つ同年8月19日,神戸山手学園の理事長,事務局長と面会し,被告が本件事業を継承することを報告し,承認を得た(乙23,証人P1・9頁)。その後,同学園は,同月頃,原告に対し,本件事業を継承しない旨を連絡した(証人P4・10,32頁)。
ス 同年8月24日,第6回大会が原告大学で開催され,大会終了後に大会組織委員会及び大会実行委員会が開催され,共催大学が被告大学に変更されることが審議され,承認された。同日の大会組織委員会には,委員長のP7,副委員長のP10のほか,公益社団法人日本観光振興協会や一般社団法人日本旅行業協会の委員が出席した。また,大会実行委員会には,委員長のP1のほか,兵庫県や神戸市の職員,高等学校の校長,株式会社の会長等の委員が出席した。また,被告からも,P2,P13,P14が,オブザーバーとして同委員会に出席した。なお,P10は,同年7月1日,適応障害により入院加療中のため就労が困難であると診断され,同日,原告代表者に対し,休職願いを届け出ていた。
(甲27の1,27の2,乙19,証人P2・8,9頁,証人P1・11頁) これら委員会後に,P7,両委員会の委員,P1,P2,P13,P14等は,ミーティングを行い,原告が登録している本件商標権の移管について,同年9月下旬から同年10月上旬にかけて協議することを打ち合わせ,本件優勝旗等,ホームページ等の引継ぎも行うこととされたが,その際に対価の支払が話し合われることはなかった(乙20の1,20の2,証人P2・9,14,15頁,証人P1・11,12,14,15,22,23頁)。
また,P3は,この委員会後に,P1から,第7回大会から共催大学が被告大学に変更される旨を聞かされた(証人P3・17頁)。
(5) 本件の経緯3(第6回大会後,被告によるホームページでの本件商標使用 24 に至る経緯) ア 平成26年8月27日,原告の教授会が開催され,観光教育研究所の所長であるP1から,同年10月1日以降,大会の事務局が被告大学に移管されることが報告された(乙37)。
また,同年8月27日付けで,大会組織委員長のP7及び大会実行委員長のP1の名義により,本件事業の後援者等の関係者に宛てて, 「観光甲子園大会の御礼とご挨拶」(乙4)及び「観光甲子園大会の御礼とお知らせ」(乙5)が送付され,それらの中では,原告大学観光文化学部の平成27年度以降の学生募集の停止に伴い,大会組織委員会及び大会実行委員会において第7回大会以降の共催大学を被告大学に変更することが承認され,平成26年10月以降は共催大学が同大学に変更される旨が報告された(証人P3・20,38頁)。
その後,P1は,同年9月17日,文部科学省及び観光庁に赴き,共催大学を変更して,第7回大会を被告大学で開催する旨報告した(乙23,証人P1・11頁)。
また,同年10月1日,原告の観光教育研究所において,第6回大会の収支として,支出(総経費)が440万円,収入(協賛金)が141万円であることや,共催大学の変更が報告され,「行動予定」(乙23)が報告され,同月及び同年11月に移管作業を行い,同年12月に大会組織委員会を行うことが報告された(乙38)。
第6回大会の事務の最後として,P3は,大会組織委員会の名義で,文部科学大臣宛ての同年10月10日付け「後援事業実施報告書」 (乙3)を作成して同省に提出し,その中で,第7回大会以降の共催大学を被告大学に変更する旨を報告した(証人P3・20,37,38頁)。
イ 同年9月26日,被告の常任理事会において,被告が本件事業を承継することが承認された。その際,P2は,資料を作成し,実施体制について,P2が実行委員長に就き,理事長室経営戦略課が事務局を担当し,同年10月に事務局を発足させ,平成27年3月頃に募集を開始し,同年6月に応募を締め切り,同年8月23日に本選(上位10校によるプレゼン,表彰)を実施し,予算が800万円 25 の見込みであることを報告した。また,平成26年7月30日の執行部会と同様の資料を作成し,同年8月末に神戸山手学園における観光文化学科の設置が文部科学省に認可された旨を付け加えて報告した。もっとも,その後に被告代表者や被告の理事が原告代表者や理事に対して本件事業の承継を申し出ることはなかった。 乙2 (1,証人P2・10,21,22頁) また,同年10月20日,被告の大学教育研究評議会において,平成27年度以降に本件事業を被告大学が承継することになったことが報告され,被告大学の各学部,機構教授会においても,同様の報告をすることとされた。その際,P2は,平成26年9月26日の常任理事会と同様の資料を作成し,予算が828万4000円の見込みであることを付け加えて報告した。(乙22) ウ 同年9月及び同年10月,P2,P13,P14とP1,P3の間で,第7回大会に向けた事務の引継ぎが行われ,本件商標のロゴのデータを含め,資料,データが引き渡された(証人P2・9,10頁,証人P1・13頁)。
具体的には,同月10日,P1,P13,P14の間で,本件事業の引継ぎのためのミーティングが行われ,本件商標を原告から被告へ移管することとし,被告側が弁理士に確認して手続を進め,同月中に完了することを目標とし,同月20日,原告大学においてデータ類の引継ぎを行うこととされ,準備の日程が協議された。
(乙26,証人P1・12頁) P14らは,同年10月27日,原告を訪問し,P3と本件事業の引継ぎの打合せを行い,P3から資料を渡され,準備の日程を協議した(乙27)。
P3は,同月28日,P14と電子メールによるやり取りを行い,同月27日に渡した資料のファイルデータ及び第5回大会の映像をDVDで送付することを伝えた(乙6,7)。ファイルデータの内容は,「応募プラン」 「審査シート」 「大会規 , ,程・書式」や第6回大会の過程で作成した諸文書等を含むものであり,P3は,自らの判断で,被告や,被告から本件事業の業務委託を受けた株式会社バードランド(以下「バードランド」という。)の担当者に対し,本件商標のロゴやデザインのデ 26 ータを含む資料を渡し,その際,P1に確認をとることはあったが,上司や理事の確認や承諾はとらず,そのことについて,原告内では問題にならなかった(乙28,証人P3・6,7,22ないし24,35,36頁)。
エ P14は,同年10月末,P3に対し,本件商標の移転登録のための承諾書及び委任状を送付し,その作成を依頼した。これに対し,P3は,本件商標を使用するのは募集開始の平成27年4月1日以降であり,同年3月下旬の理事会で決議されれば間に合うと考え,上司に相談することもなく,3,4か月の間,委任状等を手元に持っていた。(甲17,証人P3・25ないし32頁) P3は,同年1月頃,被告の広報課の職員であるP15に,電話にて,本件商標権の譲渡に関する決定は,原告の理事会で決議されなければならない旨,理事会は例年であれば同年3月頃に開催される旨伝えた(証人P3・29ないし31頁)。
P15は,同年2月5日,P3に対し,電子メールにて,P1から,本件商標の移転登録のための委任状の作成には理事長印が必要であり,理事会での承認を要する旨を聞いており,既に予算執行をしているため,次回の理事会の開催日及び委任状の返送の見通しを知りたい旨伝えた。これに対し,P3は,同日,P15に電子メールを返信し, 次回の理事会は予算承認がございますので 「 例年であれば3月下旬に開催しております。 その後の事務手続きにつきましては 迅速に手配させていただく所存です。」と回答した。(甲17,乙8) オ 平成26年12月25日以降,原告から交付された資料を踏まえて,バードランドにより「業務内容一覧」 (乙12ないし14)が作成された。そこでの予定では,例年と同じく,平成27年1月に第7回大会の準備を本格的に開始し,後援依頼,役員就任依頼等,外部への依頼を行い,同年2月,大会組織委員会及び大会実行委員会を開催し,大会募集要項を確定するなどし,同年3月,全国の高等学校へ募集要項を発送し,ホームページに募集要項を掲載し,同年4月,募集を開始し,文部科学省,観光庁等にパンフレットの原稿作成や大会への出席を依頼し,前年度グランプリ校に本件優勝旗等の返還を依頼するなどし,同年7月に募集を締め 27 切って,予選審査を行い,同年8月に本選を実施するなどとされた。
(6) 本件の経緯4(被告によるホームページでの本件商標使用後の経緯) ア 被告は,上記のスケジュールに沿って第7回大会の準備を進め,平成27年2月25日,ホームページにおいて,本件商標を使用し,第7回大会の告知を掲載し,その中で,「第7回 観光甲子園の開催について」と題し,主催を「観光甲子園」大会組織委員会,共催を被告大学地域創造学部とし,開催日程が同年8月23日である旨を告知し,添付したチラシ及び募集要項においても本件商標を使用し,文部科学省及び観光庁の後援を申請中であり,応募期間を同年4月1日から同年7月1日までとする旨を告知した。同チラシにおいて,後援として,その他に,株式会社毎日放送等の報道機関,公益社団法人日本観光振興協会,一般社団法人日本旅行業協会,一般社団法人全国旅行業協会,一般社団法人日本ホテル協会,茨木市等が挙げられ, 「協力」として「神戸山手大学 現代社会学部 観光文化学科」とされていた。(甲3) 被告大学内の「観光甲子園」大会組織委員会は,同年3月9日付けで,文部科学大臣に宛てて,文部科学省後援名義の使用許可及び文部科学大臣賞の交付を申請し,文部科学事務次官は,同年4月1日付けで許可した(乙29,30)。また,同大会組織委員会は,同年3月5日付けで,観光庁長官に対し,第7回大会における観光庁名義の使用及び観光庁長官賞の交付を申請し,観光庁長官は,同月17日付けで許可した(乙31)。
バードランドは,同月13日に被告との間で正式に業務委託契約を締結し(乙11),同年4月10日, 「業務スケジュール」 (乙15)を作成し,その内容は,以前に作成された「業務内容一覧」 (乙12ないし14)と同様であったが,各業務タスクの日程を定めた,より詳細なものであった。
イ この間,原告側は,第7回大会に向けた準備を特にしていなかったところ,同年2月ないし3月頃に上記の被告のホームページの掲載を知ったが,その当時,原告代表者及びP4は,大会組織委員会及び大会実行委員会において共催校の 28 変更が承認され,その後に事務の引継ぎがされていることを知らなかった(証人P4・6,7,9,12,13,21ないし24頁,原告代表者5,6,9頁)。
そこで,同年3月28日,原告の理事会では,上記ホームページにおける本件商標の使用に対する対応について協議し,そこでは,高校生への影響を考慮して第7回大会の開催自体は否定しないものの,被告のホームページで本件商標が無断で使用されていることから,被告への本件商標権の売却を検討することとし,この件をP4に一任することとされた(原告の平成28年3月16日付け上申書添付の資料4,証人P4・7頁)。
そこで,P4は,平成27年5月7日,被告を訪問し,本件商標権の1億円での買取りを提案したが,その後,電話で拒否された(証人P4・7頁,証人P2・30,31頁,証人P1・15頁)。
ウ 原告訴訟代理人は,被告に対し,同年6月6日, 「ご連絡」と題する内容証明郵便を送付し,被告がホームページで「観光甲子園」のロゴを用いて観光甲子園大会の告知をしていることを指摘し,本件商標の使用をやめるよう求め,本件商標権の譲渡に向けた話合いを提案した(甲4)。
これを受け,被告は本件商標の使用をとりやめ,同月18日の時点のホームページでは,「第7回 全国高校生 観光プランコンテスト」について,「過去の全国高校生『観光プランコンテスト』」として,第1回大会から第6回大会までの文部科学大臣賞及び観光庁長官賞の受賞校を掲載した(甲5,乙10,証人P2・13,14頁)。
また,被告訴訟代理人は,同月19日,原告訴訟代理人に対し, 「回答書」と題する内容証明郵便(乙9)を送付し,本件商標の使用に至る経過をたどると,原告による本件商標の使用の差止め,使用料,許諾料,譲渡対価等の請求には理由がないものの,第7回大会に向けて応募,参加しようしている高校生の心情を考慮し,原告との紛争が本件事業の公益的な意義等を失わせることを憂慮し,本件商標の使用を停止することを決意した旨回答した。
29 エ その後,被告は,同年8月23日,第7回大会として観光プランコンテストを開催した。
原告の事務局は前年の第6回大会当時に本件優勝旗等を優勝校へ送っており,その後,優勝校は本件優勝旗等を被告に返還したが,被告は第7回大会において新たに優勝旗等を製作して使用し,本件優勝旗等は保管している(証人P3・33ないし35頁)。
オ 原告は,同年8月6日,本件訴訟を提起し,訴状において,被告による本件商標の使用のほか,被告が,原告が開催してきた大会を承継したとして,第7回大会を宣伝,開催した行為が問題であるとの趣旨を主張した。その訴状は,同月28日付け訴状訂正申立書とともに同年9月3日に被告に送達された。
2 被告が本件商標を使用し,後継の大会として第7回大会を宣伝,開催した行為に係る不法行為による損害賠償請求について (1) 争点1(原告は,被告に対し,本件商標を使用し,後継の大会として第7回大会を宣伝,開催することを許諾したか)について ア ホームページにおける本件商標の使用について (ア) 前記認定に係る被告のホームページにおける「観光甲子園」の使用は,本件商標の指定役務の広告に本件商標を使用するものであるから,特段の事情のない限り,本件商標権の侵害行為を構成する。この点について,被告は,原告が被告に対して本件商標の使用を許諾したと主張するので,以下,被告の主張について検討する。
(イ) まず,被告は,大会組織委員会ないし大会実行委員会が本件事業の共催校を決定する権限を有し,両委員会及び共催校は本件商標を使用でき,原告もそのことを許諾していたところ,両委員会によって被告への共催校の変更が承認されたことから,被告による本件商標の使用は原告により許諾されたものであるとの趣旨を主張する。
確かに,大会の主催者は,大会組織委員会であり,同委員会は全国大会全般の企 30 画,管理,運営,収支管理を行う任務を有するから,共催校の指定もその任務に入ることになる。したがって,共催校の変更には,大会組織委員会の決議が必要であると解される(他方,大会実行委員会はこのような任務を有するとは認められない。 。
) しかし,本件事業は,原告大学が事務局を引き受け,原告が本件商標を登録することによって立ち上げられ,第1回大会から第6回大会に至るまで一貫して,共催校である同大学が事務局となり,文部科学省等の後援や多数の企業等の協賛を得て,自ら事務と経費を負担し,会場を提供することによって,開催されてきている。これらからすると,本件事業は,実質的には原告が主体となって行ってきたものであるといえるから,大会組織委員会において共催校について協議されたとしても,同委員会のみで共催校の変更を決定することはできず,原告の意思決定をも要するものと解するのが相当である。
また,原告が共催校を被告に変更する意思決定をしたか否かの前提として,原告において共催校の変更を決定する権限の所在についてみると,原告の寄附行為施行細則では,理事会が基本財産の処分に関する事項その他の重要又は異例にわたる事項を決定する旨が定められているところ,共催校の変更は,原告が6回にわたり経費を投じて実施してきた本件事業の共催校たる地位を放棄することになることや,実際にも,原告は,被告のホームページでの本件商標の使用についての善後策を理事会において協議していることからすると,原告にとって「重要又は異例にわたる事項」に該当するといえ,理事会決議を要するものと認めるのが相当である。そして,本件においては,結局,原告の理事会において共催校を被告に変更することが承認されていないから,原告が共催校を変更する有効な意思決定をしたとは認められない。
したがって,被告の上記主張は,共催校を変更する権限が大会組織委員会や大会実行委員会にのみあり,本件で有効な共催校の変更が行われたことを前提とする点で採用できない。
(ウ) 次に,被告は,原告代表者及び原告の理事が,被告が本件事業の共催 31 校の地位を承継して第7回大会に向けて準備を進めていること等を知りながら,被告に対して異議を申し立てなかったことから,原告は被告が第7回大会の共催校となり,本件商標を使用することを許諾していた旨主張する。
a しかし,まず,原被告の代表者及び理事の間の直接の協議内容をみると,平成26年4月4日の最初の協議を踏まえた上での同月11日及び同月12日のP4及びP5の電子メールのやり取りは,いまだ被告が本件事業の承継を決めていない時期になされたものである。また,被告が同月末に学科を承継できない旨回答した後は,同年7月に法人の合併について協議され,その後,同年8月に転学のための入試制度等について協議されるにとどまり,原被告の代表者及び理事の間で,直接に本件事業の承継に関する協議はなされておらず,被告代表者又は被告の理事が原告側に対して本件事業の承継を申し入れたことはなかった。そのため,原告代表者及び原告の理事が,被告側から本件事業を承継する意向であることを直接に示されていたとは認められない。
この点,証人P2は,同年7月11日に原告代表者が被告を訪問した際に,被告側は,原告代表者に対して,本件事業を承継する意向であることを伝えたと証言する(4頁)が,原告代表者はそのことを否定しており(5,7頁),特段裏付ける証拠もないことから,採用することはできない。
また,証人P2は,同日に第6回大会の選考委員会に招かれて原告を訪問した際,原告代表者,P4,P6に挨拶し,本件事業を承継する意向を伝えた旨証言する(7頁) これを裏付ける証拠はない上, が, 仮にそのような趣旨の挨拶をしたとしても,選考委員会の見学の際に立ち寄った単なる挨拶にとどまるから,それをもって被告が原告に対して本件事業を承継する意向を伝えたと認めることはできない。
b 次に,共催校の変更をめぐる原告側の動きを見ると,原告では,平成26年8月27日に教授会において,同年10月1日に観光教育研究所において,それぞれ,大会の共催校や事務局が被告大学に移管されることが報告されており,また,同年8月24日に原告大学で開催された大会組織委員会及び大会実行委員会 32 では,共催校を被告に変更することが承認され,そこには原告の理事でもあるP10や事務局担当者も出席しており,その後も,後援者や文部科学省等に対して共催校を被告に変更する旨の文書を原告の事務局から送付し,さらに,原告の事務局は被告側に関係資料の引継ぎを行っている。また,被告側と連絡協議をしていたP1は,P11に対しては,被告が本件事業を承継する旨の報告を行っている。
しかし,まず,原告の事務局内では,大会の準備,運営等の事務は,原告に設けられたどの部局の所掌事項ともされておらず,実際には,P3が事務局の業務系統とは関係なくほぼ1人で事務的な作業を行い,相談を要する場合は,所属部署の上司ではなく専らP1の指示を仰ぐのみで,原告代表者及び原告の理事が,大会の事務局から報告を受けることはなかった。実際に,P3は,被告の事務職員やバードランドに対して本件商標のロゴのデータを含む資料を渡した際に,原告の理事の確認や承諾をとらず,同年10月末に被告から送付された本件商標の移転登録のための承諾書及び委任状を3,4か月の間,手元に持ったままにしていた。これらの点からすると,原告の事務局内では,本件事業に関する限り,担当者のP3に入った連絡が組織の上部まで伝達される状況になかったというべきであり,原告代表者及び原告の理事が事務局から報告を受けて,被告が本件事業を承継する手続が進められていることを認識していたとまでは認められない。確かに,証人P3は,原告大学の事務局は約20人の規模であり,被告大学が引き継ぐことを全員が知らないことはあり得ない旨証言する(20ないし22頁)が,それは同人の推測にすぎない上,同人は,上司や事務局長等に対して確認や報告をしていない旨をあからさまに証言しており(7,21頁),それによれば,原告代表者及び原告の理事は,被告が本件事業を承継する手続が進められていることにつき,報告を受けていなかったと認めるのが相当である。
また,教授会には事務局の者も出席するものの,その内容は,議事録が共有サーバー内に掲載されるにすぎず,逐一P4に報告されるわけではない(証人P4・35頁)。
33 さらに,原告の理事であるP10が同年8月24日の大会組織委員会及び大会実行委員会に出席していたことについても,同学長は既に同年7月1日の時点で就労が困難であると診断され,休職願いを届け出ていたため,同学長が同委員会での承認を原告代表者や原告の他の理事に報告しなかったことも十分あり得ることである。
なお,P11は,P1から報告を受けていたが,同副学長が理事長等に報告をしたのか否かは定かではない。
以上からすると,本件事業に関する限り,原告組織内での連絡報告体制は甚だ不備であったといわざるを得ないが,だからといって,原告代表者及び原告の理事が,被告が本件事業の共催校の地位を承継して第7回大会に向けて準備を進めること等を知っていたとまでは認められないというべきである。
c したがって,被告の前記主張は採用できない。
(エ) 被告は,原告が神戸山手学園との間で本件事業の「今後のこと」について,観光教育推進機構と同学園が決定する旨合意することにより(乙34の1),共催校の決定が両者に委ねられ,その上で,同機構と同学園は,被告大学が本件事業の共催校となり,本件商標を使用することを決定したことから,被告は本件商標の使用許諾を受けたとの趣旨を主張する。
しかし,観光教育推進機構は,代表理事及び理事が原告の役員ではなく,原告の教員や事務職員で本件事業の実務に携わる者によって構成されているにすぎないことからすると,理事会決議を要すると認められる共催校の変更の権限を原告から授与されたとは考え難く,原告大学の学生募集の停止に伴い,協賛金の受入れ主体とするため(証人P3・5頁)や,本件事業の事務作業の担い手とするため(証人P4・29頁)に設立されたものと認めるのが相当である。
このことに加え,神戸山手学園が既に平成26年5月頃の時点で本件事業を承継しない意向を示していたことに鑑みると,同機構と同学園が「協議の上,今後のことを決定する」との条項は,証人P4(10頁)が証言するとおり,同学園が本件事業を承継しないことを明らかにした場合にそれに不満を持つ学生等が同学園への 34 転学に反対する懸念があったことから,その対策として設けられたものであるにすぎず,せいぜい同学園が仮に本件事業を承継するような場合には同機構との間で事業の詳細を協議,決定するという程度の意味にすぎず,この条項が,両者のみによって本件事業の共催校の変更を決定することを含むと解することはできない。
これに対し,証人P1は,共催校変更の権限は大会組織委員会及び原告大学にあったが,同年7月30日,原告と神戸山手学園との間の上記合意により,同機構の代表理事である自らに権限を与えられ,同年8月初め,P11から同学園と協議して今後のことを決めるよう託された旨証言する(証人P1・4,17,18,29頁)。しかし,P11は,原告の理事ではなく(証人P1・32頁),仮にP11からそのように言われたとしても,同機構やP1が原告の理事会から委任を受けたとはいえず,共催校変更の権限を与えられたとは認められない。
したがって,原告と神戸山手学園との合意に基づいて,観光教育推進機構及び神戸山手学園が,被告が共催校となり,本件商標を使用することを決定した旨の被告の主張は,採用できない。
(オ) 以上によると,被告は,原告の許諾なく,ホームページにおいて本件商標を使用したと認められるから,これは本件商標権の侵害行為となる。
イ 後継の大会として第7回大会を宣伝,開催したことについて 以上からすれば,被告が原告の許諾なく後継の大会として第7回大会を宣伝,開催した場合に,不法行為を構成するかはさておき,少なくとも,そのことについて,原告の許諾があったとは認められない。
(2) 争点2(違法性及び過失の有無)について ア ホームページにおける本件商標の使用について (ア) 被告がホームページで本件商標を使用した行為については,前記のとおり,商標権侵害を構成するから,過失が推定される(商標法39条,特許法103条)。
ところで,商標権侵害について過失が推定されることとされた趣旨は,商標権の 35 内容については,商標公報,商標登録原簿等によって公示されており,何人もその存在及び内容について調査を行うことが可能であること等の事情を考慮したものと解される。このことに鑑みると,侵害行為をした者において,商標権者による当該商標の使用許諾を信じ,そう信じるにつき正当な理由がある場合には,過失がないと認めるのが相当である。
(イ) 本件では,前記のとおり,被告が,原告代表者や原告の理事に対して,本件事業を承継するとの意向を伝えたとは認められず,原被告間の本件事業の承継に関する具体的な協議は,P1,P2及び双方の事務職員の間で行われたにとどまる。
a しかし,まず,そもそも原告は,財政難のために原告大学の募集停止を決定したことから,本件事業の継続が困難な状況に陥り,本件事業の承継先を探す必要に迫られていたのであり,そのような状況の中で,原告代表者及びP4は,平成26年4月4日に被告を訪問した際に,学生の受入れ及び学科の承継に加えて,本件事業の承継先が見つかるとよいと考えている旨を伝えていたのであるから,被告としては,本件事業の承継が原告の意向に沿うものであると考えてしかるべき状況があったと認められる。
b そして,被告は,上記に近接する同月末の原告のP1からの申入れを契機として検討を進め,同年5月23日にはP1が事務局のP3とともに被告の施設を視察しているのであって,P1が原告における本件事業の中心人物であったことからすると,上記のような原告の状況とあいまって,被告においては,P1の上記申入れが原告の上層部の意向に基づくものであり,原告側の担当者がP1とされたと信じてしかるべき状況にあったというべきである。
また,被告が同年6月4日の執行部会において本件事業を承継する意向を固め,その旨をP2がP1に対して連絡した後,被告大学が第7回大会の共催校となることを想定して,P2及び被告の事務職員がP1から同年7月11日に原告大学で開催された第6回大会の選考委員会に招かれたことについても,同様のことがいえる。
36 c そして,同年8月24日,第6回大会終了後に原告大学で開催された大会組織委員会及び大会実行委員会においては,地方公共団体,企業等の委員のほか,原告の理事でもあるP10や原告の事務局担当者が出席する場で,被告大学が共催校となることが承認されている。この場は,原告の大学組織内の会議でないとはいえ,原案の作成等全て原告の差配の下に執り行われるものであり,しかも,原告の学長も出席する,大会としての最高の意思決定の場であって,それまでの単なるP1との間のやり取りとは次元が異なるものである。したがって,そのような場で被告大学が共催校となることが原告のP1から正式に発議され,承認されたのであるから,被告において,その方針が原告の組織内での了解を得たものであると考えることは,極めて自然なことというべきである。
また,その後,原告の事務局が作成した文書により,被告大学が共催校となることが,本件事業の後援者等の関係者や文部科学省に,対外的に報告されている。これらの文書は,大会組織委員会等の名義で作成されているものではあるが,実質的には本件事業を執り行ってきた原告が発出するに等しい性質のものであるというべきところ,特に,原告が,大学行政を所管する文部科学省に対して正式の報告文書を作成,提出するに当たっては,通常は,しかるべき組織的決裁を経ているはずのものであるから,被告において,そこに記載された内容が原告の組織としての方針でもあると考えることは,極めて自然なことというべきである。
d さらに,第6回大会の直後から,第7回大会に向けた引継ぎ,準備が始まり,引継ぎの当初から本件商標の移転登録の必要性が協議され,平成26年10月には事務局が発足し,本件商標のロゴのデータを含め,大会の資料,データがP3を通じて被告に引き渡されているのであって,このような事態は,少なくとも原告の事務局内部での組織的な了解を経た上でなければ通常は考え難いことである。
また,被告としても,原告の理事会の承認を要する前提で,既に同月に本件商標の移転登録のための承諾書及び委任状をP3に送付した後,平成27年2月に見込 37 みを問い合わせたところ,P3からは,同年3月の理事会で予算が承認されれば,その後の手続を進めるとの回答を得ている。被告が執行部会や常任理事会等を経て意思決定をしていることに鑑みれば,原告も同様に,事務局内で本件事業の承継に関する情報が共有され,同月の理事会に向けて各種の会議を経て準備が進められているものと期待する状況があったというべきであり,よもや,P3が3,4か月にわたって,承諾書及び委任状を1人で手元に持ち続け,上司に全く報告していないとは思いもよらないところであったといえる。
e 以上からすると,原告が本件事業を継続することが困難となった中で,原告側の種々の行動の積み重ねにより,被告において,原告が組織として被告を共催校とすることを了解していると考え,被告が第7回大会を行うために必要な事項については原告内部でしかるべき手続が執られ,又は執られることになると信じることは極めて自然なことであったというべきであり,このことに疑いを生じさせるような事情が存したとは何ら認められない。
そして,第7回大会のためには,平成27年4月の募集開始に合わせて,同年3月にはホームページに募集要項を掲載する必要があり,その前提の下,同年1月には第7回大会の準備を本格的に開始し,関係者に後援や役員への就任を依頼し,同年2月には,大会組織委員会及び大会実行委員会において募集要項が確定している段階にあったから,同年2月25日の時点で,同年3月の理事会決議を待たずに本件商標を使用する必要が生じていたと認められ,このような事情を原告側が理解していると被告側が考えることにも,また理由があったというべきである。そして,通常,登録商標の使用を許諾しない相手方に対して当該商標のロゴのデータを送付するとは考え難い上,本件商標の使用に至るまで,本件事業の承継について原告が異議を述べることがなかったため,被告においては,P3から本件商標のロゴのデータを送付されることによって,本件商標権の移転に関する原告の理事会決議に先行して原告から本件商標を使用することがあらかじめ許諾されていたと受け止めるのも無理はなかったというべきである。
38 (ウ) この点について,原告代表者は,被告側から原告代表者等に対し,本件事業の承継や本件商標の使用について,正式の申入れがなかったと供述する(7頁)。しかし,前記のように,原告側での本件事業の中心人物であったP1が被告との協議に当たり,大会組織委員会で正式に承認されるなど原告の組織的な方針と理解される種々の行動が積み重ねられた本件において,被告側から原告代表者や原告の理事に対して直接の申入れがされず,また,被告側において原告代表者や原告の理事の意思を直接確認しなかったからといって,それをもって被告の過失ということはできない。
また,原告代表者は,商標権のような重要な財産を譲り渡すときは,対価や譲渡時期について決定するものであると述べる(甲21)。しかし,本件商標は本件事業と一体の関係にあるところ,本件事業はそれ自体としては経費の負担だけが必要な事業であり,そのために神戸山手学園のように本件事業を承継しない判断を下す学校法人もあったのであるから,被告として,大会の開催に必要となる経費の負担に加えて,本件商標権の譲受けに対価の支払を要するとか,本件商標の使用料を支払わなければならないものと予想せず,そのための協議をしなかったとしても,そのことをもって被告の過失ということはできない。
(エ) 以上からすると,被告には,原告から平成27年5月に本件商標の使用を指摘されて,その買取りを求められるまでの間,ホームページに本件商標を使用するに当たり,本件商標権の移転に関する原告の理事会決議に先行して本件商標を使用することを原告からあらかじめ許諾されており,必要な事項については原告内部でしかるべき手続が執られ,又は執られることになると信じ,また,そう信じるにつき正当な理由があったというべきであるから,被告による本件商標の使用には過失がなかったものと認めるのが相当である。
イ 後継の大会として第7回大会を宣伝,開催したことについて 次に,被告が原告から本件商標権の買取りを求められた後,ホームページ等において,第1回大会ないし第6回大会を過去の大会として紹介し,後継の大会として 39 の宣伝,開催を続けた行為について検討するに,前記アにおいて検討した事情に加え,被告による本件商標使用後の事情をみると, 被告は,平成27年2月にホームページで第7回大会の開催を告知し,同年3月には全国の高等学校へ募集要項を発送し,バードランドとの間で業務委託契約を締結し,同年4月に募集を開始し,文部科学省及び観光庁等にパンフレットの原稿作成や大会への出席を依頼する段階にあり,同月の時点では文部科学省及び観光庁の後援名義の使用及び大臣賞,長官賞の交付を許可されている。
そうすると,原告が本件商標の使用を指摘してその買取りを求めた同年5月の時点では,既に,被告が開催するのが後継の第7回大会であることが参加者,関係者に周知され,その前提で準備が進められ,参加者の応募を待つ状態となっており,この時点において後継の大会であることを否定して覆すことは,参加者,関係者に著しい混乱を招く事態となることが容易に予想されることから,それまで過失なく第7回大会の準備を進めてきた被告にとって,従前の大会との連続性を否定する行動をとることは,極めて困難であったというべきである。
また,被告は,原告からは,同年5月7日には,本件商標の使用を指摘してその買取りを求められたにすぎず,その後の同年6月6日付けの内容証明郵便においても,原告から本件商標の使用をやめるよう求められたにとどまり,後継の大会としての宣伝,開催について抗議を受けておらず(証人P2・12頁),原告側によってそれが問題であると主張されたのは,第7回大会終了後の同年9月3日に被告に送達された本件訴状によってである。そのため,被告が,本件商標の使用は取りやめたものの,後継の大会としての宣伝,開催を取りやめることまでが必要であると考えなかったとしても無理からぬところがある。
これらの事情に加え,原告は,本件事業の継続が困難な状況に陥り,第7回大会の準備を自らは特段しておらず,他の共催校も決まらなかったのであり,被告が開催しなければ第7回大会は開催されなかったことを考慮すると,被告が後継の大会として宣伝,開催した行為については,違法性又は過失を欠くというべきである。
40 (3) 以上によれば,被告が本件商標を使用し,後継の大会として第7回大会を宣伝,開催した行為に係る,原告の被告に対する不法行為による損害賠償請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。
3 所有権に基づく本件優勝旗等の引渡請求について 前提事実のとおり,本件優勝旗等は,原告が購入して使用してきたものであるから,原告の所有に属するものである。
ところで,本件優勝旗等は,原告の事務局から第6回大会の優勝校に送付された後に被告に返還されているところ,争点5(原告は,被告に対し,本件優勝旗等を無償で譲渡したか)について,被告は,原告が本件事業の承継に伴って被告に対して本件優勝旗等を無償で譲渡した旨主張する。
しかし,前記のとおり,共催校の変更を含む本件事業の承継は原告の理事会の決議事項であるところ,同決議を経ていないから,原告が被告に対して本件事業を承継させる旨の意思決定をしたとは認められず,被告の主張は,その前提を欠き,採用できない。
また,被告が本件口頭弁論終結後に提出した平成29年3月6日付け「被告準備書面(7)」には,被告が第7回大会を開催したことに過失はなく,第6回大会の優勝校から本件優勝旗等の返還を受けたことにより,被告が本件優勝旗等を即時取得した旨が記載されている。
しかし,動産の即時取得の規定は,動産を処分する権限のない者から,その権限があると誤信して取引によって動産を取得した場合に適用されるものであるところ,本件では原告は前記のとおり本件優勝旗等の処分権を有しているから,即時取得の規定は適用されない。
したがって,原告の被告に対する所有権に基づく本件優勝旗等の引渡請求は理由がある。
結論
よって,原告の被告に対する,所有権に基づく本件優勝旗等の引渡請求は理由が 41 あるからこれを認容し,被告が本件商標を使用し,後継の大会として第7回大会を宣伝,開催した行為に係る不法行為による損害賠償請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
追加
42 (別紙)商標権目録1登録番号第5236313号出願日平成20年11月12日登録日平成21年6月5日商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務第9類携帯電話機用ストラップ,カメラ用ストラップ第16類紙製包装用容器,紙製のぼり,紙製旗,衛生手ふき,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ,紙類,文房具類,印刷物,写真,写真立て第41類技芸・スポーツ又は知識の教授,教育に関する情報の提供,人材育成のための教育及び訓練,インターネットを介した教育に関する情報の提供,コンピュータ及びコンピュータプログラムの取り扱いに関する教授,インターネットによる知識の教授に関する情報の提供,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,書籍の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),教育研修のための施設の提供登録商標43 2登録番号第5253176号出願日平成20年11月19日登録日平成21年7月31日商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務第9類携帯電話機用ストラップ,カメラ用ストラップ第14類キーホルダー,記念カップ,記念たて,時計,貴金属製バッジ第16類紙製包装用容器,紙製のぼり,紙製旗,衛生手ふき,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ,紙類,文房具類,シール及びステッカー,印刷物,写真,写真立て第20類アドバルーン,木製又はプラスチック製の立て看板,ネームプレート(金属製のものを除く。),標札(金属製のものを除く。),旗ざお,うちわ,扇子第26類衣服用き章,衣服用バッジ(貴金属製のものを除く。),衣服用バックル,衣服用ブローチ,ワッペン,腕章,ボタン類第41類技芸・スポーツ又は知識の教授,教育に関する情報の提供,人材育成のための教育及び訓練,インターネットを介した教育に関する情報の提供,コンピュータ及びコンピュータプログラムの取り扱いに関する教授,インターネットによる知識の教授に関する情報の提供,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,書籍の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映44 画・放送番組・広告用のものを除く。),興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),教育研修のための施設の提供登録商標45 (別紙)物件目録1優勝旗1本(添付写真の物)(省略)2優勝杯1個(添付写真の物)(省略)46
裁判長裁判官 松宏之
裁判官 田原美奈子
裁判官 林啓治郎
  • この表をプリントする