関連審決 | 取消2000-31025 |
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関連ワード | 指定商品 / 不使用 / 通常使用権 / 国内 / 使用許諾 / 存続期間 / 更新登録 / 不使用取消審判 / 継続 / |
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事件 |
平成
15年
(行ケ)
433号
審決取消請求事件
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原告 株式会社内田洋行 訴訟代理人弁護士 吉武賢次 同 宮嶋学 訴訟代理人弁理士 矢崎和彦 同 小泉勝義 被告A 訴訟代理人弁理士 坂戸敦 |
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 2004/05/25 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた裁判
1 原告 (1) 特許庁が取消2000-31025号事件について平成15年8月21日にした審決を取り消す。 (2) 訴訟費用は被告の負担とする。 2 被告 主文と同旨 |
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当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯等 原告は,「Kent」の欧文字を横書きして成り,指定商品を第22類「はき物(運動用特殊靴を除く)その他本類に属する商品」とする,登録第1879769号の商標(昭和61年7月30日に設定の登録がされ,平成8年12月24日に存続期間の更新登録がされた。以下「本件商標」といい,その登録を「本件登録」という。)の商標権者である。 被告は,平成12年8月31日,本件登録を指定商品中の「はき物」につき商標法50条の規定により取り消すことについて審判を請求し,同年10月4日,この審判の請求の登録がなされた。特許庁は,これを取消2000-31025号事件として審理し,その結果,平成15年8月21日,「登録第1879769号商標の指定商品中の「はき物」については,その登録を取り消す。」との審決をし,その謄本を,同年9月2日原告に送達した。 2 審決の理由の骨子 審決の理由は,別紙審決書の写しのとおりである。要するに,@本件商標が付された靴が掲載されている,甲第4号証の3(審判乙第3号証。本訴における甲第4号証の枝番は,他のものも,審判における乙号証の番号に対応する。)の商品パンフレットも,甲第4号証の2のパンフレットも,平成9年10月4日から平成12年10月3日までの間に使用されていたと認めることはできない,A甲第4号証の4の商品見本帳は,取引者・需用者に対して配布される広告宣伝物ないし取引書類とは認められず,かつ,甲第4号証の4中の写真に写っている靴に,本件商標が付されていると認めることはできない,B甲第4号証の7及び8の納品書から,本件商標を靴に使用していたとの事実を認めることはできない(なお,これらの納品書から計算される値引率は著しく高く,不自然であるとして,記載内容自体の信頼性も否定している。),C本件商標が付された靴の販売を証明する内容の,甲第4号証の12及び13の取引先からの証明書は,証明願から1年以上経って作成されたと理解されるものであり,不自然かつ不可解であって,証拠価値はない,D甲第4号証の14及び15の,上記各取引先の店舗における商品の陳列状況の写真は,その前提となる本件商標の通常使用権者と小売店との取引関係の存在にそもそも疑問があり,やはり証拠価値を肯定できない,などと説示し,本件商標が,本件審判請求の登録前3年以内(以下「本件要証期間」という。)に,商標権者である原告から使用権の設定を受けた通常使用権者により,その指定商品中の「はき物」について使用された,とする原告の主張をすべて排斥するものである。 |
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原告の主張の要点
原告から本件商標の通常使用権の設定を受けた通常使用権者が,本件商標を,その指定商品中の「はき物」について,本件要証期間内に,日本国内において継続して使用していた。審決の認定は誤っており,取り消されるべきである。 1 通常使用権者の存在及びそれによる使用の1(株式会社ランバートによる使用) (1) 原告は,本件登録に先立ち,以下の商標の登録を得ていた。 登録第1294845号商標 出願日 昭和42年12月26日 登録日 昭和52年8月30日 商標の態様 「KENT」の欧文字と,「ケント」の片仮名文字を2段に横書きして成る。 指定商品 旧第22類「はき物(運動用特殊靴を除く),その他本類に属する商品」 (甲第3号証。以下,「第1商標」という。) (2) 原告は,昭和58年7月27日,株式会社ランバート(以下「ランバート」という。)との間で,第1商標につき,使用期間を3年間として,商標使用許諾契約を締結した(甲第5号証)。昭和61年7月28日,さらに,使用期間を5年間とする商標使用許諾契約を締結した(甲第6号証)。 (3) ランバートが実際に使用していた標章は,別紙1のとおりのものであり,第1商標とは異なっていた。そこで,原告は,ランバートの求めに応じ,本件出願をし,本件商標につき本件登録を得た。 平成3年7月30日,原告とランバートとは,本件商標につき,使用期間を5年間とする商標権通常使用許諾契約を締結した(甲第7号証)。 原告とランバートとは,本件商標の使用期間を延長することとし,平成8年7月30日,使用期間を5年間とする商標権通常使用許諾契約を締結した。(甲第4号証の1)。 原告とランバートとの間の使用許諾関係は,平成13年7月30日に終了した。この間,ランバートは,通常使用権の対価(年10万円)を,契約締結のたびに支払っている(甲第17号証の1ないし3,第18号証,第19号証)。 (4) ランバートは,紳士靴,婦人靴,服飾用品等の販売を主たる業務とする会社であり,全国の小売店,洋品店に対して靴を販売していた。ランバートが靴に使用していた標章は,「Kent」だけであり,そのほかの標章は使用していない。 ランバートが,本件商標を使用していたことは明らかである。 (5) ランバートは,実際に,本件商標が付された靴を他者に販売して,本件要証期間内に使用していた(甲第4号証の5ないし8,12ないし15)。 例えば,甲第4号証の5及び同8の納品書(控)に記載されている「1603 パンプス」は,検甲第2号証のオペラパンプスと同一の品番の靴を指すものである。 審決は, 「なお,乙第7号証及び乙第8号証(判決注・甲第4号証の7,8)の納品書(控)には,「単価」欄の価格(例えば11550)以外に,「摘要」欄にも価格が見受けられるところ(例えば,21000・・・被請求人は「摘要」欄の価格を「小売価格」と述べている:第二答弁書3頁9行),該「摘要」欄における小売価格に比べ,「単価」欄の価格は,破格の値段(55%値引)となっており,このような割引価格による取引が当該「はき物」の業者間において普通に行われているとは些か信じ難いところである。 してみれば,乙第7号証及び乙第8号証は,通常使用権者が本件商標を取消し請求に係る商品「はき物」について使用した事実を証明し得る証拠ということはできない。」(甲第1号証13頁21行目〜30行目) としている。 しかし,2万1000円は小売価格(上代)であり,1万1550円は卸値(下代)である。卸売価格は通常小売価格の50〜60パーセントであるから,上記両金額の差は,何ら不自然ではない。 (6) ランバートは,本件要証期間内は,靴の商品パンフレットを作成することをしていない。甲第4号証の2,甲第11号証の1ないし6及び甲第13号証の各パンフレットは昭和58年7月ころ作成されたもの,甲第4号証の3のパンフレットは昭和59年ころに作成されたものである(以下,上記各商品パンフレットを併せて「本件各商品パンフレット」ということもある。)。 商品パンフレットの作成をやめたのは,靴の色やデザインを変更するたびに,パンフレットを作り直すと,費用がかかるからである。 ランバートは,その代わりに,商品見本帳(甲第22号証,作成時期は平成4年以降,平成9年2月以前である。甲第4号証の4はその一部である。)を作成し,これを取引先に呈示して商談を進めていた。 (7) 以上のとおり,本件商標は,その通常使用権者であるランバートにより,本件要証期間を含む平成3年7月ころから平成13年7月までの間,使用されていたのである。 2 通常使用権者の存在とそれによる使用の2(株式会社ビイエムプランニングによる使用) (1) 平成12年7月24日,原告は,株式会社ビイエムプランニング(以下「ビイエムプランニング」という。)から,第1商標等に係る通常使用権の設定について打診を受け,同年9月19日,同社との間で,使用期間を3年間として,商標使用許諾契約を締結した(甲第8号証)。 この契約の締結に向けた交渉の当初から,ビイエムプランニングは,使用許諾された商標につき,株式会社イトーヨーカ堂(以下「イトーヨーカ堂」という。)に対し,再使用許諾をしたい,との希望を原告に申し入れていた。 原告は,これを認めることとし,上記契約締結後の平成14年2月,改めて,ビイエムプランニングとの間で対象商標に本件商標を含む商標使用許諾契約(期間3年,始期は平成12年9月19日)を締結した(甲第9号証)。これに基づき,使用許諾料も支払われている(甲第20号証,第21号証)。 (2) イトーヨーカ堂は,ビイエムプランニングからの再使用許可に基づき,本件商標を付した靴を販売している(甲第10号証,第14号証,第15号証)。 3 靴における商標の使用態様 審決は,「一般的に靴に商標を付する場合,靴の内底の見え易い位置に商標を付するのが普通と見られるところ,そのような方法をもって,本件商標が靴に付されている状態を乙第4号証(判決注・甲第4号証の4)からは見出すことができない。」(甲第1号証12頁34行目〜36行目),としている。甲第4号証の4の写真に,靴の内底が写っていないことは認める。 昭和58年ないし59年ころに作成されたパンフレットである甲第4号証の2には,本件商標が内底に付された靴の写真が記載されている。すなわち,審決がいうような一般的な態様で,本件商標を内底に付した靴が存在し,ランバートはこれを販売していたものである。そして,それが一般的な態様である以上,その後も,同様な態様の表示がされた靴が存在し,販売されていたと,経験則上推認することができる。 原告は,本件商標が付された靴の存在の立証は,甲第4号証の2で十分であると考える。しかし,さらに,これを補充するため,内底に本件商標が付された靴の存在を立証するものとして,甲第11号証の1ないし6,第12号証及び第13号証並びに検甲第1号証ないし第4号証を提出する。 |
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被告の主張の要点
本件要証期間内における本件商標の使用は認められない,とする審決の認定に誤りはない。 1 原告の主張1(通常使用権者の存在及びそれによる使用の1)に対して (1) 原告が,ランバートによる本件商標の使用の証拠として提出するもののうち,甲第4号証の1,第5号証ないし第7号証の契約書は,本件要証期間より前に作成された証拠にすぎない。 (2) 甲第4号証の2及び3のパンフレットは,昭和58年ないし59年に作成されたものである。本件要証期間内に,本件商標が使用されたことを証明し得るものではない。 (3) 甲第4号証の4(商品の見本帳)は,作成日付も作成者も不明である。また,甲第4号証の5ないし8(いずれも納品書(控)),12,13(いずれも「証明願」と題する書面)との関係も明らかでない。 (4) 本件要証期間内に作成された甲第4号証の7及び8(いずれも納品書(控))は,そこに記載されたランバートの住所が,2年以上前のものであり,かつ当時既に7桁の郵便番号が採用されていたにもかかわらず,5桁のままである。 さらに,これらの控えは,本来ランバートのものであるはずであるにもかかわらず,第三者から送付されたFAXとして提出されている。 このように,これらは,そもそも成立自体不自然であり,被告はその成立を否認する。同様の理由から,甲第4号証の5及び6(いずれも納品書(控))の成立も否認する。 (5) 甲第11号証の1ないし6(いずれもパンフレット),第12号証(靴等の写真)は,本件要証期間内の靴の製造販売を立証できるものではない。 (6) 本件商標の使用を証明する旨を述べる甲第4号証の12及び13の証明書(「証明願」と題する書面)は,証明願から1年も経った日付のものであり,かつ,異なる会社からの証明書であるにもかかわらず,証明の日付が同一であり,筆跡も同じであると認められる。 被告は,甲第4号証の12及び13の成立も否認する。 2 原告の主張2(通常使用権者の存在とそれによる使用の2)に対して (1) イトーヨーカ堂による使用は,たといそれが事実であるとしても,本件要証期間内におけるものではない。 甲第14号証(靴の写真)及び第15号証(領収書)は,本件要証期間内における使用の事実を立証し得るものではない。 (2) 原告は,第1商標に係る不使用取消審判においては,ビイエムプランニングによる使用について何ら主張・立証をせず(答弁すらせず),同商標についても不使用取消しの審決がなされている。ビイエムプランニングとの間に通常使用権の設定許諾があったというのであれば,原告のこの対応は極めて不自然である。 |
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当裁判所の判断
当裁判所も,本件全証拠によっても,本件要証期間内における本件商標の使用を認めることはできない,と判断する。その理由は,次のとおり付加するほかは,審決が説示するとおりである(ただし,原告が挙げている,甲第4号証の7及び8について,記載されている値引率が大きすぎることを理由に証明力がないとする部分,甲第4号証の4について,そこに掲載されている写真に,本件商標が付された木型が挿入されている状態の靴が写っているものの,通常,商標が付されているとみられる,靴の内底部分が写っていないことを根拠に,この甲第4号証の4からは,それに掲載されている写真に写っている靴について本件商標が使用されているとは認められない,とした部分を除く。)。 1 原告の主張1(ランバートによる本件商標の使用)について (1) 甲第4号証の1ないし3,9ないし11,第5号証ないし第7号証,第11号証,第12号証,第16号証ないし第19号証によれば,少なくとも昭和58年以降からの一時期において,本件商標「Kent」の商標が付された紳士靴等が存在し,かつ,原告による使用許諾に基づき,ランバートがそれらの靴を販売していた,との事実を認めることができる。 (2) 甲第4号証の7(平成11年12月10日付け納品書(控)),甲第4号証の8(平成12年4月24日付け納品書(控))は,本件要証期間内の日に作成された形となっている,商品の納品書(控)である。これらの納品書(控)に記載されている,靴の商品番号及び種類は,「2401 コインローファー」,「2501 〃(判決注・コインローファーを指す。)(しぼ皮)」(以上甲第4号証の7),「1601 ストレートチップ」,「1603 パンプス」,「1101 ローファーズ」(以上甲第4号証の8)である。 検甲第2号証の靴には,そのかかと部の内底面に,本件商標が付されている。そして,その左側内側面に,「2 92 1603 26」との記載がある。 検甲第2号証は,その形状(甲の部分が広く開き,締め紐や留め金がない)からは,パンプスであると認められる(乙第2号証)。 以上からは,本件商標をそのかかと部の内底面に付された,1603という型番のパンプスが存在すること,これが,甲第4号証の8の「1603 パンプス」に対応するものであり,したがって,本件商標を付されたパンプスが,平成12年4月24日に,ランバートからメンズクラブに一足納品されたとの事実を認める余地がある。 (3) しかし,甲第4号証の5ないし8には,その成立の真正,あるいは,少なくともその証明力について,以下のような疑問がある。 ア 甲第4号証の5ないし8は,いずれも納品書の控であるから,本来ランバートが保管しているはずのものである。しかし,これらの書証は,「FROM アOM’S GARDEN」として,ランバート以外のものから送付されたFAXとして提出されている。 イ 甲第4号証の7及び8は,郵便番号が7桁になってから1年以上経過した日付のものである。それにもかかわらず,5桁の郵便番号が記載されている。これは,少なくとも商売を行う者の書面としては,不自然である。 ウ 甲第4号証の5ないし8に記載された靴の型番は,いずれも,本件商標が付された商品のパンフレットには,記載がない。 甲第4号証の5には,「1600 ウィングチップ」,「1601 ストレートチップ」,「1608 タッセル」,「1605 モカシン」,「2401 ローファーズ」,「1607 キルト」及び「1603 パンプス」との記載が,甲第4号証の6には,「1021 ローファーズ」,「1020 プレントウ」及び「1022 タッセル」との記載が,それぞれある。甲第4号証の7及び8については,前記のとおりである。 これに対し,甲第4号証の2のパンフレットには,「3401 ローファー」,「5772 タッセル」,甲第4号証の3のパンフレットには,「8001 ローファー」,「8002 タッセル」,「9000 ウイングチップ」,「9001 ローファー」,「9002 タッセル」,甲第11号証の1ないし6のパンフレットには「3401 ローファー」,「3402 タッセル」,「3601 ローファー」,「6301 ローファー」,「6302 ローファー」,「8501 デッキシューズ」,甲第13号証のパンフレットには,「KT9012」,「KT9014」,「KT9013」,「KT9060」,「KT9050」,「KT9011」,「KT1015」,「KT1010」,「KT1014」,「KT1010-SC」,「KT1013」,「KT1011」,「KT7502」,「KT1011-SC」,「KT7503」,「KT7501」,「KT7500」,「KT219」,「KT219-ベロア」,「KT217」,「KT215」,「KT216」,「KT218」,のものしか挙げられていない(これらの靴については,それ自体に本件商標が付されていたと認められる。)。これらに対応すると思われる商品番号は,甲第4号証の5ないし8のいずれにも記載されていないのである。 ランバートが,本件各商品パンフレットに記載されているとおり,多くの種類の商品を扱っているのに,本件各商品パンフレットに記載された商品番号を有する商品に対応するものが,一つも甲第4号証の5ないし8に挙げられていないのは不自然である。 この点につき,原告は,デザインの変更等に応じて商品番号を適宜変えることがあった,と主張する。しかし,原告は,同時に,「ランバートでは英国調の本格的な手縫いの製法によるトラディショナルな靴を主力製品として販売してきており,基本的には大幅なデザインの変更や色の変更はしてこなかったので,シーズンごとのパンフレットは作成していなかった。また,それは「Kent」というブランドイメージを流行に左右されないトラディショナルなデザインとして定着させ,それを頑なに守ってきたことをも意味する。」(原告準備書面(4)8頁8行目〜13行目),とも主張している。この主張に照らすと,上記各商品パンフレット中の商品の中には,少なくともいくらかは,デザインが変わらず,したがって商品番号も変わらなかったものも存在したのではないか,との疑問が自然に生まれてくるのである。 (4) 検甲第2号証についても,その製造年月日について,疑問がある。 原告は,「1603 パンプス」について,「昭和50年代から平成12年当時にかけてもデザインの変更はなく,ロングランで売れている商品である。この商品についてはデザインの変更もないため,発注ごとに上2桁の番号を変えることなく,上記期間を通じて「1603」の商品番号は変えていない。」(原告準備書面(4)4頁8行目〜11行目),と主張している(同準備書面において,下2桁の番号は,おおむね商品区分ごとに使い分けている,と主張している。)。そうであれば,昭和58年から59年にかけて作成された,甲第4号証の2及び3,第11号証並びに第13号証の各商品パンフレットにも,「1603 パンプス」が掲載されているはずである。しかし,上記のとおり,「1603」の商品番号は,本件各商品パンフレット中には見当たらない。 (5) 原告が商品見本帳として提出する甲第22号証及びその一部であると原告が主張する甲第4号証の4にも,その成立の真正ないし証明力(とりわけ作成時期)に関し,疑問点がある。 確かに,甲第22号証には,甲第4号証の7及び8に記載のある,「2401 コイン ローファーズ」,「2501 コインローファーズ」(以上甲第4号証の7),「1601 ストレートチップ」,「1603 パンプス」,「1101 ローファーズ」に対応すると思われる商品が記載され,その直近に靴の写真が掲載されている。また,甲第4号証の5の「1600 ウィングチップ」,「1601 ストレートチップ」,「1608 タッセル」,「1605 モカシン」,「2401 ローファーズ」,「1607 キルト」及び「1603 パンプス」,甲第4号証の6の「1021 ローファーズ」,「1020 プレントウ」及び「1022 タッセル」についても,これに対応すると思われる商品が甲第22号証中にある。 しかし,甲第22号証は,本件各商品パンフレット(甲第4号証の2及び3,第11号証,第13号証)と異なり,商品パンフレットではなく,本件商標が付された靴の製造販売自体を証明するものではない。 その作成時期も,甲第22号証の体裁や内容自体からは不明である。原告の主張によっても,平成4年2月以降平成9年2月以前であり,本件要証期間以前であるというだけでなく,特定の不十分なものである。さらに,甲第22号証に掲載されている商品中,本件各商品パンフレット中に対応するものが存在すると推認されるものは,「1010 タッセル」しかない。 結局,甲第22号証は,その成立及び作成趣旨自体不明確なものであり,少なくとも,作成時期が不明であるから,これと甲第4号証の7及び8の納品書(控)とを組み合わせても,本件要証期間内における,それに記載された商品の存在とその販売の事実とを認定することはできない。 (6) 以上によれば,甲第4号証の5ないし8,とりわけ甲第4号証の8と,甲第22号証と,検甲第2号証とを組み合わせても,本件商標が付された靴(特にパンプス)が,本件要証期間内に販売されたとの事実を認定することはできない,という以外にない。 (7) 原告は,ランバートの経営者の陳述書(甲第16号証)を提出している。 これには,原告の主張に沿う記載がある。しかし,本件商標の使用についての具体的な事実としては,甲第4号証の7及び8に基づく取引を挙げるのみである。甲第4号証の5ないし8,甲第22号証,検甲第2号証には,その成立の真正,証拠価値及び証明力にいずれも疑問があることは既に述べたとおりであり,上記陳述書は,その疑問を払拭するものではない。 甲第16号証によっても,前記認定が左右されるものではない。 2 原告の主張2(ビイエムプランニングによる使用)について (1) 甲第8号証,第9号証,第10号証,第14号証,第15号証,第20号証及び第21号証によれば,原告とビイエムプランニングとの間で,本件商標に係る使用許諾契約が締結されたこと,ビイエムプランニングは,イトーヨーカ堂に対し,原告の同意を得て本件商標の使用を許諾したこと,これに基づき,イトーヨーカ堂は,本件商標を付した靴を販売していること,の各事実を認めることができる。 (2) しかし,上記証拠により認められる,イトーヨーカ堂が本件商標の使用を開始した時期は,早くとも平成14年2月25日以降である(甲第10号証。具体的な使用の事実が認められるのは,平成15年9月26日である。甲第14号証,第15号証)。これより前,すなわち,本件要証期間中に,ビイエムプランニングないしイトーヨーカ堂が,本件商標を使用したと認めるに足りる証拠はない。 (3) 本件要証期間を挟んでその前後において本件商標を使用した者がいたとしても,原告が主張する本件要証期間前の使用者はランバートであり,本件要証期間後の使用者はビイエムプランニング(イトーヨーカ堂)であって,原告の主張するところによっても,本件要証期間の前後の使用者が異なることになる。そうである以上,本件要証期間中の使用をその前後の使用から推認することもできないという以外にない。 3 結論 以上によれば,審決の取消しを求める原告の本訴請求には,理由がない。そこで,これを棄却することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 山下和明 |
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裁判官 | 若林辰繁 |
裁判官 | 高瀬順久 |