関連審決 | 取消2017-300526 |
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事件 |
平成
30年
(行ケ)
10003号
審決取消請求事件
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原告 株式会社マインドウインド 同訴訟代理人弁理士 野原利雄 被告 アクティプリント株式会 社 同訴訟代理人弁理士 古谷栄男 松下正 同訴訟復代理人弁護士 小林幸夫 藤沼光太 田仲剛 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2018/05/28 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
特許庁が取消2017-300526号事件について平成29年11月28日にした審決を取り消す。 |
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事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等 ? 原告は,以下の商標(登録第5053467号)の商標権者である。(甲1, 12) 登録商標:別紙商標目録記載のとおり(以下「本件商標」という。) 登録出願:平成18年10月4日 設定登録:平成19年6月8日 更新登録:平成29年6月20日 指定商品:第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」 ? 被告は,平成29年7月20日,特許庁に対し,本件商標は,その指定商品のうち第25類「被服」について,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないとして,商標法50条1項の規定に基づく商標登録の取消しを求める審判を請求し,当該請求は同年8月3日に登録された。(甲1) ? 特許庁は,これを取消2017-300526号事件として審理し,平成29年11月28日,本件商標の指定商品中,第25類「被服」についての商標登録を取り消す旨の別紙審決書(写し)記載の審決をし(以下「本件審決」という。),その謄本は,同年12月6日,原告に送達された。 ? 原告は,平成30年1月4日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 2 本件審決の理由の要旨 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。要するに,原告は本件審判請求に対して答弁せず,審判請求の登録前3年以内の要証期間内における本件商標の使用は証明されないから,商標法50条の規定により,本件商標の指定商品中,第25類「被服」についての登録は取り消されるべきものである,というものである。 3 取消事由 本件商標の使用の有無に係る認定の誤り 2 |
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当事者の主張
〔原告の主張〕 原告は,平成28年10月28日及び29日,東京都品川区所在のTOCビル13階の特別ホールにおいて,ファミリーセール(以下「本件セール」という。)を開催し,本件商標を表示した下げ札(タグ。甲3,4の1・2。以下「本件タグ」という。)を付けた婦人服計4点(品番「11-33-4197-32」の商品2点並びに同「11-33-4199-00」及び同「11-33-4199-80」の商品各1点。以下「本件商品」という。)を展示し,各500円(消費税別)で販売した。この事実は,物流倉庫の担当者が発行した「証明願」(甲5)及び原告作成の「riche.商品の販売データ」(甲12)が示すとおりであり,これらの証拠の記載内容は,物流倉庫の「棚卸明細表」(甲7)及び「移動(即時)伝票明細」(甲9〜11)並びに運送費用の請求書(甲25)によって裏付けられている。 本件タグには,下げ紐のほか,本件セールにおける本件商品の割引率又は販売価格をその色により表すための結束バンドが付けられており,結束バンドではなく下げ紐により,本件商品にくくり付けられていた。そして,原告において,本件タグに表示されたバーコードから商品の品番等の情報を読み取り,結束バンドの色から販売価格を把握して,販売データとして入力するため,本件商品を販売し顧客に引き渡した際に,本件商品から本件タグを取り外し,保管していた。また,上記下げ紐を取り外す際には,商品を傷つけないようにするため,紐をハサミで切断するのではなく,紐をほどいて取り外していた。 また,本件商品は,平成26年4月1日に消費税率が8%に改定される前に原告が仕入れ,販売を開始したものであるため,本件タグに表示された税込価格は消費税率を5%で計算したものとなっているが,ファミリーセールで展示販売される商品中には発売から一定期間経過した商品も含まれており,原告は,特価であることの理由を示すためにも,発売当時の下げ札をそのまま付けておくこととしていた。 3そして,実売価格や消費税額について購入者の混乱や誤認を避けるべく,「特価品/¥500円均一/(税別)」と朱書したポップ掲示をすることによって対応していた。 なお,原告の開催するファミリーセールで展示販売される商品のほとんどは,原告が百貨店で展示販売していた商品であるため,原告の下げ札が付いているが,原告が受託販売している他社商品等には,原告の下げ札は付されていなかった。 よって,本件商標は,要証期間内に使用されたものである。 〔被告の主張〕 原告が本件セールを開催したことについては,不知。同セールにおいて,原告が本件商標を付した商品を展示して販売したことについては,否認する。 原告が掲げる証拠のいずれも,本件商標が本件セールにおいて使用されたことを推認させるものではなく,要証期間内に原告により本件商標が使用されたことを立証するものではない。 |
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当裁判所の判断
1 認定事実 後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ? 原告は,洋服の製造販売等を営む株式会社である。 ? 原告は,平成28年10月28日及び29日,本件セールを開催した。本件セールは,原告商品の在庫処分の意味合いを含めたディスカウントセールであり,その際,原告は,原告商品を定価から30%ないし90%値引きし,又は,500円,1000円若しくは2000円の均一価格に値引きして販売した。(甲14,16〜18) 2 取消事由について ? 原告は,本件セールにおいて本件タグを付けた本件商品を展示して販売したものであり,本件商品を顧客に引き渡した際に本件タグを取り外し,原告において保管していた旨主張する。 4 ? しかし,原告の提出する証拠(甲5,7,9〜12,25)から認められるのは,せいぜい,本件商品が本件セールの際に倉庫からセール会場に移動され,各500円(消費税別)で販売されたという事実にすぎず,本件セールにおいて,本件商品に本件タグが付されて展示,販売された事実を推認させるものではなく,そのほかに,原告の主張を認めるに足りる証拠はない。原告の主張は,客観的な裏付けを欠くものであり,以下のアないしウの事実に照らしても,不自然,不合理であって,採用できない。 ア 本件タグは,その表面に本件商標が表示され,その裏面に,原告の名称のほか,当該商品の品番,サイズ,素材,生産国,バーコード情報,本体価格,税込価格等が表示されているところ,この税込価格は,消費税率を5%として計算したものである(甲3,4の1・2)。しかし,我が国の消費税率は,本件セールの開催日より2年半以上前の平成26年4月1日に,5%から現行の8%に改定されている(乙3)。この点について,原告は,特価であることの理由を示すために発売当時の下げ札をそのまま付けておいた旨主張するが,消費税改定後に展示販売する商品に消費税改定前の税込価格を表示したタグを付すことは,商品の購入者を混乱させたり,当該商品が古い物であるという印象を与えたりしかねないことから,通常は,そのような取扱いはされないものと考えられる。 イ 本件タグに表示された前記アの情報は,購入者にとって重要な情報であり,かかる情報が表示されたタグは,それが付された商品とともに購入者に引き渡すのが通常であると考えられる。また,タグは,紐や結束バンドによって被服に取り付けられるのが通常であるところ,本件タグは,タグの上部に結束バンドがくくり付けられており,結束バンドは切断されていない(甲3,4の1・2)。かかる事実は,本件タグが,本件商品を顧客に引き渡した際に本件商品から取り外されたものではないことを推認させるものである。なお,原告は,本件タグは結束バンドではなく下げ紐により本件商品にくくり付けられていた旨主張するが,下げ紐を取り外す際に,ハサミなどで切断せずに,その都度紐をほどくという煩瑣な方法をとって 5いたというのは,不自然である。また,原告は,上記のとおり購入者にとって重要な情報が表示された本件タグを本件商品の購入者に引き渡さなかった理由について,何ら合理的な説明をしていない。 ウ 原告は,平成30年3月11日に,本件セールと同じ会場において,本件セールと同様のファミリーセールを開催し,そこで展示された原告商品の中には,本件商品と同じ500円均一の価格(消費税別)と表示されたものも存在するが,「本体価格 ¥500」等の価格表示以外のタグは付されていない(乙1,2)。そうすると,仮に,本件セールにおいて本件商品が販売された事実があるとしても,本件商品を展示して販売する際に,本件タグが付されていなかった可能性は高い。なお,原告は,上記平成30年のセールにおいて展示販売された原告の在庫資産である商品には,本件タグと同様の下げ札が付されていた旨主張するが,これを裏付ける的確な証拠はない。 ? 以上のとおり,原告が本件セールにおいて本件商品に本件タグを付して展示販売することにより,本件商標を使用したとの事実を認めることはできない。また,原告は,そのほかに,指定商品のうち第25類「被服」について,本件商標を要証期間内に使用したことの主張立証をしない。 ? 小括 よって,本件商標が要証期間内に指定商品のうち第25類「被服」について使用されたとの事実は認められないというべきであり,本件商標の指定商品のうち第25類「被服」についての商標登録は,商標法50条の規定により取り消されるべきものである。 3 結論 以上のとおり,原告主張の取消事由は理由がないから,原告の請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。 |