運営:アスタミューゼ株式会社
  • ポートフォリオ機能


追加

関連審決 無効2002-35289
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成17行ケ10618審決取消請求事件 判例 商標
平成15行ケ248審決取消請求事件 判例 商標
平成19行ケ10391審決取消請求事件 判例 商標
平成18行ケ10519審決取消請求事件 平成19行ケ10091審決取消請求事件 判例 商標
平成18行ケ10529審決取消請求事件 判例 商標
関連ワード 識別力 /  指定商品 /  周知商標 /  周知性 /  公序良俗(4条1項7号) /  4条1項10号 /  類似性(類否判断) /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  離隔的 /  無効審判 /  非類似 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 15年 (行ケ) 422号 審決取消請求事件
原告 東洋エンタープライズ株式会社
訴訟代理人弁理士 野原利雄
被告 株式会社インディアンモトサイクル カンパニージャパン
訴訟代理人弁護士 佐藤雅巳
同 古木睦美
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2004/05/11
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 特許庁が無効2002−35289号事件について平成15年8月8日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 主文と同旨 2 被告 (1) 原告の請求を棄却する。
(2) 訴訟費用は原告の負担とする。
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 被告は,審決書別掲(1)のとおりの構成から成り,商標法施行令別表第25類「被服,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」を指定商品とする,商標登録第4022987号商標(平成7年11月2日登録出願,平成9年7月4日設定登録。以下,審決と同様に「本件商標」という。)の商標権者である。
原告は,平成14年7月4日,本件商標の商標登録をすべての指定商品に関し無効にすることについて審判を請求した。
特許庁は,これを無効2002-35289号事件として審理し,その結果,平成15年8月8日に,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本を,平成15年8月19日,原告に送達した。
2 審決の理由 別紙審決書の写しのとおりである。要するに,本件商標は,その登録出願より先に登録出願のなされた平成6年商標登録願第95840号商標(審決書別掲(2)に表示したとおりの構成から成り,第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ショール,スカーフ,手袋,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー,帽子,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具」を除く。),げた,草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品として,平成6年9月21日に登録出願された商標。以下,審決と同様に「引用商標」という。)とは,その称呼,外観及び観念のいずれの点からみても,非類似の商標であり,商標法(以下「法」という。)8条1項に違反して登録されたものではなく,法46条1項1号に該当しない,として,原告主張の無効事由を排斥するものである。
原告主張の審決取消事由の要点
審決は,本件商標が,引用商標と,称呼,観念及び外観のいずれにおいても類似するものであるのに,類似しないと誤って判断したものであり,この誤りが結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,違法として取り消されるべきである。
1 本件商標と引用商標との類似性についての判断の誤り (1) 称呼及び観念における類似性について 審決は,「本件商標は,別掲(1)のとおり,「Indian」の文字を書してなるものであるから,その構成文字に相応して「インディアン」の称呼及び「北米原住民」の観念を生ずるものである。」(審決書4頁4段),「引用商標は,「Indian」及び「MOTOCYCLE」の各文字部分に相応し,これより「インディアンモトサイクル」の称呼を生ずるものであって,該文字部分は,全体として「北米原住民のオートバイ」といった観念を想起させるものとみるのが相当である。」(審決書4頁7段)とそれぞれ認定した上で,「本件商標より生ずる「インディアン」の称呼と引用商標より生ずる「インディアンモトサイクル」の両称呼を比較するに,音構成,構成音数において顕著な差異を有するものであるから,称呼上相紛れるおそれのないものである。」(審決書4頁末段,5頁1段),「本件商標と引用商標の観念は,前記認定のとおりであるから,類似するものではない。」(審決書5頁3段)とそれぞれ判断した。しかし,審決の上記認定判断は誤りである。
引用商標の識別標識としての要部は,その黒塗り円形図の中央に配されたインディアン図形と,黒塗り長方形図を背に特徴ある筆記体で書かれた欧文字「Indian」と,その下段に白抜きの活字体で書かれた欧文字「MOTOCYCLE」であり,これらの要部の中で,とりわけ強い識別力を発揮すると認められる主要部は,標章全体の中央部に位置し,最も大きく,かつ,特徴ある書体で表記されている欧文字「Indian」の部分にあるということができる。審決も,引用商標の「黒塗りの長方形内の「Indian」及び「MOTOCYCLE」の各文字部分は,独立して自他商品の識別標識としての機能を有すると認められるものである。」(審決書4頁5段)と判断しているところである。
引用商標がこのようなものである以上,引用商標からは,仮に,その全体に対応するものとして「インディアンモトサイクル」との称呼が生じ得るとしても,同時に,その主要部である欧文字「Indian」の部分に対応するものとして,「インディアン」との称呼も生じることが明らかである。
引用商標から生じる観念についてみると,主要部である欧文字「Indian」からは,「北米原住民」との観念が生じることが明らかである。これに対し,仮に,「Indian」と「MOTOCYCLE」とを一体として把握したとしても,審決が認定した「北米原住民のオートバイ」との観念は,生じない。「北米原住民のオートバイ」は,語意的には極めて不自然であり,両者間に語意的な一体性は認識し難いからである。そこからは,「北米原住民」と「二輪自動車」との別異の観念が別々に生じるにすぎない。
(2) 外観における類似性について 審決は,「本件商標と引用商標は,別掲(1)及び同(2)のとおりの構成よりなるものであるから,外観においては,判然と区別し得る差異を有するものである。」(審決書5頁2段)と判断した。しかし,この判断も,誤りである。
本件商標を構成する欧文字「Indian」は,特徴のある筆記体によって表記されており,その外観的特徴は,この書体デザインにある。
これに対し,引用商標は,インディアン図形並びに筆記体欧文字「Indian」及び活字体欧文字「MOTOCYCLE」を,それぞれ黒塗りの円形図又は長方形図を背景に表記したものである。その外観的特徴は,ワッペン形状にした全形もさることながら,円形図中央に配された左向きのインディアン図形と全体のほぼ中央に大書された筆記体欧文字「Indian」の特徴ある書体とにあるということができる。本件商標の「Indian」も,引用商標の「Indian」と同一の特徴のある書体から成るものである。両商標は,外観においても類似するというべきである。
2 米国オートバイメーカーと本件商標及び引用商標との関係について 本件商標及び引用商標は,いずれも,1901年に創業され,1953年に解散した米国のオートバイメーカー"INDIAN MOTO(R)CYCLE CO.,INC."(以下「インディアン社」という。)のオートバイ商標を起源とするものであり,1900年代に製造された同社のオートバイのイメージや,当時の時代イメージを種々の商品に再現することを意図して採択されたものである。同社の商標を起源とした商標を採択し使用する者は,世界中に存在し,原告も被告も,そのうちの一業者にすぎない。したがって,本件商標と引用商標とは,その標章の態様の起源を共通にするものであり,必然的にその書体や外観が近似するのである。
被告の反論の要旨
1 本件商標と引用商標との類似性についての判断の誤り,の主張について (1) 引用商標は,@黒塗りの円形図,同図の中心部に配した左向きのインディアンの図形,白塗りの三重の円弧の図形,及び,円弧の図形の外周に沿って配した「WORLDS FINEST MOTORCYCLE」の文字から成る上部構成と,A黒塗りの長方形図並びに同図の中に配した「Indian」の欧文字及び「MOTOCYCLE」の欧文字から成る下部構成とから成るものである。
(2) 引用商標中の欧文字「WORLDS FINEST MOTORCYCLE」は,インディアンの図形の周り,白抜きの縁取りの外周に添って配されており,しかも,十分に人目を引く大きさであって,要部となるに十分な顕著性を有する。引用商標の要部は,左向きのインディアンの図形,「Indian」及び「MOTOCYCLE」の欧文字のみに限定されるものではない。
このような引用商標と本件商標とを全体としてみると,類似していないことが明らかである。
(3) 引用商標の黒塗り長方形図中の欧文字「Indian」と欧文字「MOTOCYCLE」とは,同長方形図中に,相互に近接して,左右方向にほぼ同一の長さで配されている。引用商標は,「Indian」及び「MOTOCYCLE」の欧文字を要部としてとらえたとしても,「Indian/MOTOCYCLE」と一体として把握すべきである。これを,あえて,「Indian」と「MOTOCYCLE」との二つの独立した構成要素から成るものと解すべき理由はない。
この場合,本件商標の称呼「インディアン」と引用商標の称呼「インディアンモトサイクル」とが相違することは明らかである。また,本件商標から生じる観念が「北米原住民」であるのに対し,引用商標から生じる観念は「北米原住民のオートバイ」なのであり,両者が相違することは明らかである。本件商標の「Indian」が引用商標の「Indian/MOTOCYCLE」の2段書きから成るものと,その外観において相違することも明白である。
(4) 本件商標と引用商標とは,上記のとおり,称呼,観念,外観のいずれにおいても相違し,全体として類似しないことが明らかである。本件について,法8条1項を適用する余地はない。
2 法8条1項の先願の商標について (1) 法8条1項の規定における先願の商標は,商標登録されていることが必要である。引用商標は,未登録であるから,法8条1項の規定の適用はない。
(2) 引用商標は,法4条1項7号及び10号に該当するため,法8条1項の先願の商標とはなり得ない。
(ア) 原告による引用商標の出願は,被告の商標の周知性に便乗して不正の利益を得るためになされたものであるから,公序良俗に反する出願である(法4条1項7号)。すなわち,本件商標と同一の,特徴ある筆記体の「Indian」商標(以下「Indianロゴ」ともいう。),右向きのインディアン酋長の図形中に「Indianロゴ」を配した商標(以下「ヘッドドレスロゴ」という。),左向きのインディアンの図形商標,「Indianロゴ」と「MOTOCYCLE」とから成る商標,「ヘッドドレスロゴ」の下に特徴ある筆記体の「Indian Motocycle Co.,Inc.」を配した商標は,いずれも,被告の業務に係る周知商標であり,これらの周知商標に類似する引用商標は,被告の商標の周知性に便乗して不正の利益を得るためになされたものである。
(イ) 引用商標は,その出願当時,被告が衣類や帽子等に使用していた,周知の「Indianロゴ」と「MOTOCYCLE」から成る商標と類似するものであるから,法4条1項10号に該当する。
当裁判所の判断
1 本件商標と引用商標との類似性についての判断の誤りについて (1) 本件商標は,別紙審決書写し別掲(1)のとおり,欧文字「Indian」を特徴のある書体で表した商標である。審決が,本件商標について,「その構成文字に相応して「インディアン」の称呼及び「北米原住民」の観念を生ずるものである。」(審決書4頁4段)とした判断に誤りはない。
(2) 引用商標は,別紙審決書写し別掲(2)のとおり,黒塗りの円形図を背景として,その内側中央に,頭部の羽根飾りを前方に突出させた左向きインディアン図形を配し,同図形の外側に配した白塗りの三重の円弧の図形の外周に沿って,「WORLDS FINEST MOTORCYCLE」と欧文字の活字体で表記し,その下方に,黒塗り長方形図を背景として,特徴のある書体で表した欧文字「Indian」と,白抜きの活字体欧文字「MOTOCYCLE」とを上下2段に表記した構成から成るものである。
審決は,引用商標について,「「Indian」及び「MOTOCYCLE」の各文字部分は,文字の書体等において異なるものであるとしても,前記したとおり,いずれも黒塗りの長方形内に書されていること,及びその上部に配置された黒塗り円状図形は,中心部に描かれたインディアンの図形とその外周に沿って書された「WORLDS FINEST MOTORCYCLE」の欧文字とが一体的に表示されていることを考慮すると,「Indian」及び「MOTOCYCLE」の各文字部分の外観及び観念上の一体性は決して弱いものということはできない。してみると,引用商標は,「Indian」及び「MOTOCYCLE」の各文字部分に相応し,これより「インディアンモトサイクル」の称呼を生ずるものであって,該文字部分は,全体として「北米原住民のオートバイ」といった観念を想起させるものとみるのが相当である。」(審決書4頁6段,7段)と判断した。しかし,この判断は,誤りである。
確かに,引用商標には,上記のとおり,欧文字「Indian」の下に,「MOTOCYCLE」との欧文字が表記されている。この「MOTOCYCLE」は,同じ引用商標に「WORLDS FINEST MOTORCYCLE」との記載があることからみれば,オートバイを意味する「MOTORCYCLE」の意味で使用されているものと認められる(「MOTOCYCLE」は,「MOTORCYCLE」から「R」を脱落させたものと認められる。)。しかし,引用商標中の欧文字「Indian」は,特徴のある筆記体の書体で,活字体の「MOTOCYCLE」とは,その書体が異なり,また,文字の大きさも,欧文字「Indian」の方が,欧文字「MOTOCYCLE」よりはるかに大きい。また,欧文字「Indian」は,その上部にあって,共に看者の注意を引くインディアン図形と,インディアン(北米原住民)という観念を共通にしている。引用商標中,看者の注意を最も強く引く,インディアン図形と欧文字「Indian」とが,いずれもインディアン(北米原住民)を意味していることは,引用商標を見た取引者・需要者が,これをインディアンを用いた商標と理解することにつながる大きな要因となる,と解すべきである。さらに,本件商標及び引用商標の指定商品である被服又は洋服等の取引者・需要者である一般の日本人にとって,「MOTORCYCLE」との英語は,余りなじみのない言葉であり,この語がオートバイの意味の英語であると明瞭に認識されるかどうかは不明である。また,これをオートバイに関係する言葉であると理解する者がいるとしても,北米原住民であるインディアンとオートバイとは,歴史的にみた場合に,相互の関連性が不明な言葉である(相互の関連性を知る者は,1901年に創業され,1953年に解散した米国のオートバイメーカーのインディアン社を知る者に限定されるであろう。)。
以上からすれば,本件商標及び引用商標の指定商品の取引者・需要者である一般の日本人が,引用商標を「Indian/MOTOCYCLE」と一連の商標として認識し,把握することは多くなく,引用商標を見た取引者・需要者中の多くの者は,引用商標を,日本人にとって一般によく知られているインディアンを用いた商標として,認識し,理解するものというべきである。
被告は,引用商標においては,インディアン図形の周りにある「WORLDS FINEST MOTORCYCLE」と活字体で表記された欧文字も,顕著性を有する,と主張する。
しかし,同欧文字は,引用商標中の欧文字「Indian」及び「MOTOCYCLE」と比べて,その文字の大きさがかなり小さく,離隔的に見たときに判読が困難なほどであることからすると,補助的な文字標章であり,これを,インディアン図形,「Indian」及び「MOTOCYCLE」の欧文字と同様に,取引者・需要者の注目を集める顕著な部分であるとみることができないことは明らかである。
被告は,引用商標の欧文字「Indian」と欧文字「MOTOCYCLE」とは,黒塗りの長方形の図形中に,相互に近接して,左右方向にほぼ同一の長さで配されているから,「Indian/MOTOCYCLE」と一体として把握すべきである,これを,あえて,「Indian」と「MOTOCYCLE」との二つの独立した構成要素から成るものと解すべき理由はない,と主張する。
しかし,引用商標中の欧文字「Indian」は,特徴のある筆記体の書体で,活字体の「MOTOCYCLE」とは,書体が異なり,また,文字の大きさも,「Indian」の方が,「MOTOCYCLE」よりはるかに大きいこと,欧文字「Indian」は,その上部にあって,看者の注意を引くインディアン図形と観念を共通にしていること,これに対し,「MOTO(R)CYCLE」との英語は,一般の日本人には余りなじみのない語であること,「Indian」と「MOTOCYCLE」とは,歴史的にみて相互の関連性が不明な言葉であることなどは,上記のとおりである。これらのことに比べると,引用商標の欧文字「Indian」と欧文字「MOTOCYCLE」とが,黒塗りの長方形の図形中に,相互に近接して,左右方向にほぼ同一の長さで配されているという程度のことはささいなことであり,これによって,上記の判断が左右されることはない,というべきである。
(3) 以上からすれば,引用商標からは,「インディアン」との称呼が生じ,インディアン(北米原住民)との観念も生じるのであるから,引用商標と本件商標は,その取引者・需要者が取引の場においてその出所を混同するほどに類似している,とみるべきである。なお,引用商標と本件商標との間には,その外観において幾つかの差異があるものの,欧文字「Indian」の特徴のある書体は共通しており,その外観上の差異がその称呼及び観念から生じるインディアン商標としての類似性を否定し得るものではないことは明らかである。審決の「本件商標と引用商標は,その称呼,外観及び観念のいずれの点からみても非類似の商標といわなければならない。」(審決書5頁4段)との判断は,誤りであり,これを前提として,本件商標は,法8条1項に違反して登録されたものではない,とした審決の判断も誤りである。
2 法8条1項における先願の商標について (1) 被告は,法8条1項の規定における先願の商標は,商標登録されている必要がある,と主張する。しかし,法8条1項及び3項並びに法46条1項1号並びに法のその余の規定をみても,法46条1項1号所定の無効理由の判断において,ある商標が法8条1項の規定における先願の商標とされるためには,それが商標登録されている必要がある,と解すべき理由は見いだし得ない。被告の主張は理由がない(なお,引用商標については,平成16年2月3日に登録査定がなされている(甲45)。)。
(2) 被告は,引用商標は,法4条1項7号及び同項10号に該当するため,法8条1項における先願の商標とはなり得ない,と主張する。
しかし,法8条3項は,「商標登録出願が放棄され取り下げられ若しくは却下されたとき,又は商標登録出願について査定若しくは審決が確定したときは,その商標登録出願は,前2項の規定の適用については,初めからなかつたものとみなす。」と規定している。この規定からすれば,本件商標に係る無効審判請求事件において,引用商標が本件商標に対する関係で先願の商標としての地位を有しているかどうかは,同審判事件における審決時を基準として判断すべきであり,法8条3項に規定する事由が生じていることが明らかにならない限り,引用商標は,本件商標に対する関係で先願の商標としての地位を失わないというべきである。審決時において,将来,法8条3項に規定する事由が生じる可能性について判断する必要はない,というべきである(本件の審決が取り消され,特許庁において,再審理をし,審決をするときに,仮に,引用商標について法8条3項所定の事由が生じていたとすれば,そのときに,法8条3項を適用すればよいのであり,現時点において,引用商標について,法8条3項に規定する事由が将来生じるかどうかを審理する必要はない。)。
3 結論 以上に検討したところによれば,審決の取消しを求める原告の請求には理由があることが明らかである。そこで,これを認容することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山下和明
裁判官 設樂隆一
裁判官 高瀬順久