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関連審決 不服2016-12344
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事件 平成 30年 (行ケ) 10067号 審決取消請求事件

原告 ポロ・ビーシーエス株式会社
同訴訟代理人弁護士 山本忠雄 福本隆史
同訴訟代理人弁理士 城村邦彦 熊野剛 田中秀佳
被告 特許庁長官
同 指定代理人大森友子 井出英一郎 半田正人 板谷玲子
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2018/12/10
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2016-12344号事件について平成30年3月28日にした審決を取り消す。
事案の概要
1 本件は,原告が出願した商標について拒絶査定を受けたことから,不服審判請求をしたところ,請求は成り立たない旨の審決がされたので,原告がその取消しを求める事案である。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実) (1) 原告は,平成27年1月5日,平成26年2月12日に登録出願された商願2014-10044号の商標法10条1項による分割出願として,別紙2記載の商品を指定商品とする別紙1の商標(以下「本願商標」という。)について,登録出願した(甲11,17)ところ,平成28年6月3日付けで拒絶査定を受けた(甲23)ため,同年8月16日,不服審判請求をした(甲24。不服2016-12344号)。
(2) 特許庁は,平成30年3月28日に, 「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,本件審決は,同年4月9日,原告に送達された。
3 本件審決の理由の要点 本件審決の理由は,本願商標を指定商品に使用するときは,これに接する取引者,需要者が,ザ・ポロ・ローレン・カンパニー・リミテッド・パートナーシップ(同社及びその前身の会社を,以下「ラルフ社」という。)が使用する,「Polo」(大文字表記を含む。)又は「ポロ」の文字からなる商標(以下「引用商標」という。)を想起,連想し,その商品が,あたかもラルフ社又はラルフ社と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるから,商標法4条1項15号に該当するというものである。詳細は,以下のとおりである。
(1) 引用商標は,ラルフ社の主要ブランドとして周知著名である,「PoloRalph Lauren」及び「ポロ ラルフ ローレン」の文字,並びに, 「Polo」 「Ralph と Lauren」の文字を上下二段に併記してなる商標(以 下「本件使用商標」という。)の略称・通称として,我が国の衣料品を取り扱う業界の取引者,需要者の間において,本願商標の登録出願日とみなされる日(平成26年2月12日)には,相当程度広く認識され,その周知性は,本件審決の時点においても継続している (2) 引用商標は, 「Polo」 (大文字表記を含む。)又は「ポロ」の文字からなるものである。
他方,本願商標は,別紙1のとおり, 「POLO」と「HOME」の文字を上下二段に併記し,両文字の間に,その幅に収まるように,小さく「BRITISH COUNTRY SPIRIT」の文字を書してなる結合商標であるところ,構成上からは,これら文字部分が,それを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合されているような事情は見いだせない。
そして,本願商標の構成中の「HOME」の文字部分は,衣料品を取り扱う業界においては, 「家庭用の商品」を意味する語であるから,本願商標の指定商品との関係では,商品の出所識別標識としての機能を果たし得ない。また,本願商標の構成中の「BRITISH COUNTRY SPIRIT」の文字部分は,構成中の他の文字部分に比して小さく表記されている上に,全体として「英国精神」ほどの意味合いを認識させるものであるところ,衣料品を取り扱う業界において,国名は一般に当該製品の製造地,販売地を表す実情があることを鑑みると,商品が英国に由来することを表していると連想させるにとどまり,本願商標の指定商品との関係では,商品の出所識別標識としての機能を果たし得ないか,又は極めて弱いというべきである。
そうすると,本願商標の構成中,大きく目立つ態様で書され,かつ,ラルフ・ローレンの主要ブランドとして周知著名である本件使用商標の略称として,我が国の取引者,需要者の間において相当程度広く認識されている引用商標「Polo」と同じつづりである「POLO」の文字部分が,商品の出所識別標識としての機能を果たし得るものといえる。
したがって,本願商標と引用商標は,両者の全体の外観において差異を有するとしても,本願商標の要部たる「POLO」と引用商標とは, 「POLO」の文字のつづりを同じくし,また, 「ポロ」の称呼及び「ラルフ・ローレンの主要ブランド」としての観念も共通するものであるから,これらの要素が取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すると,本願商標と引用商標とは,類似性の程度が極めて高いというべきである。
(3) 本願商標の指定商品は,前記2のとおり,衣料品であり,本件使用商標に係る商品は,衣料品・アクセサリー・香水・寝具・タオル・家庭用品であるから,両者は極めて関連性の高いものであって,両者の取引者,需要者が共通することも明らかである。
(4) したがって,本願商標は,商標法4条1項15号に該当する。
4 原告主張の審決取消事由 (1) 引用商標は周知ではないこと 本件使用商標が被服の分野で周知著名であることは争わないが,本件使用商標の周知性がそのまま引用商標の周知性につながるものではない。そして,引用商標が周知であることを裏付ける証拠はなく,また,以下の事情を考慮すると,引用商標は周知でないと認められる。
ア 引用商標は,本件使用商標が長く冗長なため,引用商標の使用が本件使用商標の使用を意味することが明らかな場合に限って,略称として引用商標が使用されているのであり,本件使用商標から完全に離れて,引用商標が単独で使用されている事実はない(例えば,甲29の1)。
そして,ラルフ社は,各種の登録商標を有している(甲33の1〜7)が,それらの商標は,いずれも,要部を「POLO」の部分と「RALPH LAUREN」の部分とし,両方の部分を表示することで,ラルフ社の出所表示機能を果たすことから,本件使用商標も,ラルフ社の出所を表示する部分は, POLO」 「 の部分と (b 「y)RALPH LAUREN」の部分の双方であり,(by)RALPH 「 LA UREN」の部分があって初めてラルフ社の出所を識別できる。
イ 「POLO」「ポロ」は,普通名称(ポロ競技)であり,かつ,普通名 ,称(ポロシャツ)の略称でもある。そして,実際にも,「ポロ」は,普通名称「ポロシャツ」の略称としても,一般的に使用されている事実がある(甲39の1〜7)。
また,辞書では,「polo」,「ポロ」の項で,ラルフ社については一切言及がない(乙67,68)。
ウ 世界的に見ると,ポロ競技の振興やルールの整備等を目的とする団体が「POLO」ブランドを使用したライセンスビジネスを世界的に展開している例があり,例えば,米国のユーエス・ポロ・アソシエーション(US POLO ASSOCIATION)(甲31の1〜3),英国のハーリンガム・ポロ・アソシエーション(HURLINGHAM POLO ASSOSIATION)(甲32の1〜3)等が知られている。後者は,世界のポロ競技のルールを今もなお決めている団体である。
これらの団体は,「POLO」ブランドを使用したライセンスビジネスを世界的に加速しつつあり,日本においても,ユーエス・ポロ・アソシエーションが遅くとも平成2年頃には活動を開始し,第25類(被服)などを指定商品として,商標「US POLO ASSOCIATION」を登録している(甲31の6・7)。また,ハーリンガム・ポロ・アソシエーションも,遅くとも平成27年頃には活動を開始し,第25類(被服)などを指定商品として,商標「HURLINGHAM POLO」を登録している(甲32の4・5)。これらの団体は,「POLO」ブランドのライセンスビジネスを通じて,ポロ競技の知識の普及に貢献している。
また,世界知的所有権機関(WIPO)の検索サイトで,平成30年9月13日,米国で有効に存続する,いわゆるPOLO商標を,検索語「POLO」と,指定分類「25類」(被服)で検索したところ,登録件数は121件であったが,そのうち103件は,ラルフ社とは無関係の会社の登録商標であることが判明した。
その中には,「U.S.POLO」「U.S.POLO , ASSN」「HURLI , NGHAM POLO」及び「HV POLO」等がある。
したがって,世界的な潮流を見ると,我が国の衣料品を取り扱う業界の取引者,需要者が引用商標を見ても直ちにラルフ社と結びつけるわけではないことが分かる。
エ 被告は,新聞報道の見出しやウェブサイトにおいて,ラルフ社の商標を「ポロ」と表記している例があると主張する。
しかし,新聞報道の見出しやウェブサイトの見出しでは,簡潔であることが求められており,携帯電話を「携帯」,スマートフォンを「スマホ」等と記載することに代表されるように様々な言葉を略して記載されることはままあることである。記事本文の「ポロ ラルフ ローレン」を,単に「ポロ」と略して見出しにすることは,通常のことである。
また,ウェブサイトでは,「ラルフローレン」又は「by Ralph Lauren」の表記も伴った記載方法となっている。
したがって,被告の上記主張は理由がない。
オ 被告は,ラルフ社の世界での売上高について主張しているが,ラルフ社の日本での売上高は,証拠上不明であり,したがって,ラルフ社の日本における周知性の程度も不明である。
(2) 日本におけるPOLO商標についての特別事情 ア 原告は,「POLO」の文字を横書きしてなり,指定商品に被服(25類)を含む商標を二つ有している(登録番号第1434359号[甲34の1・2],登録番号第2721189号[甲35の1・2]。両商標を,以下「原告商標A」と総称する。)ところ,原告の前身である公冠販売株式会社(以下「公冠販売」という。 は, ) 昭和62年1月1日付けでラルフ社との間でライセンス契約を締結し,原告商標Aの通常使用権を,ラルフ社に対し許諾している(甲37の1・2。同契約を,以下「本件ライセンス契約」という。)。
以上のとおり,ラルフ社自身が,原告の前身である公冠販売及び原告商標Aを尊重してきたという歴史を有しており,ラルフ社が日本において「POLO」商標を 用いた販売を展開できたのも本件ライセンス契約があってのことである。本件ライセンス契約は,今日に至るまで一切変更されることなく継続されている。
イ 前記アの事実に加え,ラルフ社の「POLO COUNTRY」の登録商標が無効になったこと(知財高裁平成18年(行ケ)第10528号同19年5月31日判決),原告は,「POLO」商標のフリーライド・ダイリューションを防止するために各種の権利保護活動を行っていること(甲45の1〜3等)など,本件の特殊な事情を考慮すると,誤認混同のおそれの判断においては,商標法4条1項11号の基準により,ラルフ社の登録商標,本件使用商標のうちのいずれに類似するか,個別・具体的な類似性を認定すべきであり,また,混同の意味についても狭く解すべきである。
(3) 需要者の注意力は誤認しない程度に高いこと 株式会社しまむらの店舗(以下「しまむら」という。)において,原告の商品であるPOLOのベビーソックスを「ラルフ・ローレンではないポロ」と認識して消費者が購入する事実があること(甲40の1),しまむらにおいて,「ラルフ・ローレン」の商品も取り扱われている事実があること(甲40の2),しまむらにおいて,原告の「POLO」ブランドの商品を「ラルフ・ローレン」とは無関係と認識して消費者が購入する事実があること(甲40の3),「ポロ」は必ずしも「ラルフ・ローレン」の業務に係る商品のみを示すものと認識されない事実があること(甲40の4)が認められ,これらの事実及び乙72,乙73の1の記載からすると,特別な専門的知識経験を有しない一般大衆でも,引用商標が,必ずしも「ラルフ・ローレン」の商品とは限らないことを認識していることは明らかである。
(4) 原告のPOLO商標の周知性 ア 原告の商標 原告は,原告商標Aの他に,別紙3の構成の登録番号第4012493号の登録商標(以下「原告商標B」という。)を有する(甲36の1・2)。また,原告は,原告商標Bを別紙4のとおりの態様で使用している(甲42の1,甲43の1。同 商標を以下「原告使用商標」という。。
) 原告商標B及び原告使用商標は,上段に「POLO」の文字を,下段に「BRITISH COUNTRY SPIRIT」の文字を,それぞれ横書きしてなり,被服(25類)を指定商品に含み,「POLO BCS」と略記されたり,「ポロビーシーエス」と略称されたりすることがある。
そして,本願商標は,原告商標Bの「BRITISH COUNTRY SPIRIT」の下に,「HOME」を追加したものであるが,これにより,「POLOBRITISH COUNTRY SPIRIT」というブランドには「HOME」部門が存在するということや,「POLOのふるさと」,「英国精神の発祥」というように観念を広げることを取引者に示している。
以上のことから,本願商標は,原告商標B及び原告使用商標の観念を昇華させたものといえ,外観類似性も考慮に入れると,原告商標B及び原告使用商標と同視してもよく,原告商標B及び原告使用商標の周知性は本願商標にも及ぶといえる。
イ 原告の活動 (ア) 原告については,ニュースサイト等で報道されている(甲41の1)。
また,原告使用商標を付した商品は,通販サイトやしまむらにおいてラルフ・ローレンの商品と並んで整然と販売されている(甲41の10・12)。
(イ) 原告及びグループ企業によるPOLO商品の売上及び販売の事実 現在,原告が,原告商標A,B及び原告使用商標(以下,併せて「原告商標」という。)の全部又は一部の使用権を設定するライセンスを行っているグループ企業は,8社12部門である。このライセンス契約は,過去約20年間継続しており,その結果,原告商標(特に原告商標A)は,特にGMS(しまむらなどの量販店)などにおいて,原告を出所とすることが広く知られている。
まず,昭和58年度の原告によるPOLO商品の売上高は6億0743万円であったが,平成28年度の原告及びグループ企業の卸売高は38億1910万7000円(小売上代換算98億円程度),生産枚数510万9000枚である。
そして,原告商標の付された紳士カジュアル商品は,全国42の店舗において,専門店・専門コーナーを設けて販売されている(甲41の13)。
原告商標の付されたスーツは,はるやま商事株式会社が経営する全国255店舗において専門コーナーを設けて販売されている(甲41の14)。
原告商標の付されたレディスカジュアルは,全国11店舗において,専門店・専門コーナーを設けて販売されている。
また,専門店・専門コーナー以外にも,イトーヨーカ堂,ダイエー,イオン,ライフ,しまむら等の全国規模のGMSやカジュアル専門店,ヨークベニマル,イズミヤなどの地域的なGMSに到るまでほぼ全般的に網羅された状態で販売が行われている。このうちイトーヨーカ堂の店舗数は,全国176店舗(平成29年2月現在),イオンの店舗数は,全国495店舗(平成29年2月末現在),イズミヤの店舗数は,全国86店舗(平成29年2月末現在)となっており,これらのほとんどの店舗で原告商標を付した何らかの商品が販売されている。
これに加え,平成20年頃から,原告商標が付された商品は,ライセンシーのホームページ,アマゾン,楽天市場,YAHOOショッピングなどを通じ,インターネットでも販売されている。
以上のように,原告商標を付した商品は,主に量販店を中心として商品展開を行っており,全国で原告商標を付した商品が販売されている結果,多くの取引者,需要者が日常的に原告商標を付した商品を目にする機会があり,かつ,それを原告を出所とするものと認識するに至っている。
(ウ) 原告商標B及び原告使用商標が有名商標集に搭載されるほど周知されていること 原告商標B及び原告使用商標は,日本国内で,グループ企業と協働して広く使用された結果(甲41の1〜12)AIPPI , (社団法人日本国際知的財産保護協会。
以下「AIPPI」という。)発行の「日本有名商標集」第3版(平成16年)にも搭載されている(甲42の1)。
(エ) 原告らの活動の結果,原告商標等は周知性を獲得したこと 原告商標B及び原告使用商標と本願商標は,前記グループ企業をはじめとする多くの取引者により,原告の業務に係る被服等の商品を示すものとして認識されている。その一端を証するものとして,上記商標が原告の業務に係る被服等に使用される商標であると衣料品業界で認識されていることを示す証明書(甲43の1〜8)がある。なお,甲43の1・2の証明書のグンゼ株式会社は,メンズインナーの分野では,日本市場の売上高第一位の企業であり,甲43の3・4の証明書の株式会社カイタックファミリーは,ナイトウェアの分野では,日本市場の売上高第一位の企業であり,甲43の5・6の証明書の中西株式会社は,ベビーのシューズ・ソックスの分野では,日本市場売上高第一位の企業であり,甲43の7・8の証明書の山喜株式会社は,メンズの布帛シャツの分野では,日本市場売上高第一位の企業である。
また,需要者は,原告使用商標を引用しつつ,原告の会社・ブランドの説明をできる程に原告使用商標を認識し(甲40の1の3頁以下,甲40の3) しかも, , 「ポロ」や「POLO」と呼称しているのである。
以上のように,各分野における日本第一位の売上げを有する企業が, 「POLO/BRITISH COUNTRY SPIRIT」のことを「ポロ」等と略称して記載したり, 「ポロ」と略して呼称しており,これらの企業が製造する製品の卸先や販売している小売店,ひいては,一般顧客も,同様に記載したり,呼称したりしていることが推察される。したがって,原告商標B及び原告使用商標と本願商標は,少なくとも衣料品業界において周知となっているといえる。
ウ 以上より,本願商標は周知であるといえる。
そして,本願商標が周知であることから,取引者,需要者において,通常有する注意力をもってすると,本願商標とラルフ社の商標について,出所を誤認,混同するおそれは極めて低い。
(5) 類似性の程度 前記のとおり,本願商標と対比すべきはラルフ社が使用している商標であり,引用商標とを対比することは妥当ではないが,以下では,予備的に,引用商標についても対比をする。
外観について 本願商標の構成は,「POLO」,「BRITISH COUNTRY SPIRIT」及び「HOME」の欧文字を三段に横書きし,上段と下段の文字を,中段の文字に比較して大きく書すことにより,各列の文字の始まりと終わりが同じ位置になるよう文字の両端を揃え,構成文字全体として矩形を形成するように配されており,視覚上,まとまりよく一体的に表現されているものである。
ラルフ社の使用する商標は,本件使用商標の他にも各種のものがあるところ,それらは,一段又は二段で構成されている点及び「RALPH LAUREN」又は「ラルフローレン」と付されている点で,本願商標と顕著に異なる。
観念について (ア) ラルフ社の使用する商標は,「POLO」,「ポロ」と並んで又はその下部に,「RALPH LAUREN」,「ラルフローレン」との表示がされている。ラルフ社の創業者かつデザイナーであり,極めて著名なラルフ・ローレンの名前が付されていることは明らかであるので,「ラルフ・ローレンによる(作の)POLO」という観念が想起される。
この「Ralph Lauren」という表示があることで,これらのラルフ社の商標はその出所がラルフ社であることが明らかとなり,そのような観念を想起しようのない本願商標とラルフ社の使用商標は観念が大きく異なる。
(イ) 「home」の文字は,「家庭」のほかに「ふるさと」,「発祥の地」などの意味もあるから,本願商標の下段の「HOME」は,「家庭」を意味するだけでなく,「ふるさと」や「発祥の地」などの意味もある。したがって,本願商標からは,「POLO」ブランドの「家庭用の商品」の観念の他,「POLO」すなわちポロ競技の「ふるさと」などの観念も生ずる。また,中段の「BRITISH COUNTRY SPIRIT」も併せると,「ポロ競技のふるさと-英国精神」といった意味合いも想起させる。
したがって,本願商標は,以上のような「POLO」ブランドの「家庭用の商品」,ポロ競技の「ふるさと」,「ポロ競技のふるさと-英国精神」という観念を発生させる点で,そのような観念が発生し得ない引用商標と観念においても顕著に相違する。
称呼について (ア) 本願商標は,前述したように,視覚上,まとまりよく一体的に表現され,等書等大の「POLO」と「HOME」から,前述の「ポロ競技のふるさと」の意味合いも想起することから,「ポロホーム」という一連称呼を生ずる。
中段の「BRITISH COUNTRY SPIRIT」は,比較的小さく表示され読みも長くなるので,簡易迅速を尊ぶ取引の実際においては,省略して「ポロホーム」とのみ呼称される可能性が高い。本願商標を,「ポロ」又は「ホーム」と,それぞれ単独で呼称するのは,不自然である。
(イ) これに対し,ラルフ社の使用商標は,「ポロ」,「ラルフ」,「ラルフ(の)ポロ」,「ローレン(の)ポロ」等の称呼を生ずるから,両者は顕著に相違する。
また,引用商標は,「ポロ」の称呼のみを生ずるから,両者は顕著に相違する。
エ 本願商標は不可分一体として把握されるべきこと 本願商標は,外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等においても,ラルフ社の使用商標や引用商標とは異なるし,取引の実情を見ても「ポロホーム」と呼称されたりしている。
そして,本願商標では,原告商標B及び原告使用商標が周知著名であることや,ラルフ社の使用商標には,「RALPH LAUREN」という表示があることでその出所表示機能を果たしていること,ラルフ社へ原告が原告商標Aのライセンスを与えているという日本におけるPOLO商標の特別事情,引用商標のうち本件の 判断を一番左右すると思われる「POLO」の商標権者は原告であること,引用商標が必ずしもラルフ社を一義的に特定するわけではないことに鑑みると,「POLO」という部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として唯一の出所を示すといえるほど強く支配的な印象を与えるものとまではいえない。
また,本願商標は,「POLO」ブランドの「家庭用の商品」,ポロ競技の「ふるさと」,中段の「BRITISH COUNTRY SPIRIT」も併せ「ポロ競技のふるさと-英国精神」という観念を生じさせている点からも, 「HOME」の文字は,「POLO」と併せて,出所識別標識としての機能を果たすことから,「POLO」以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないとはいえない。
したがって,本願商標は,出所混同の判断において,不可分一体として把握されるべきである。
オ ラルフ社が提出した意見書(甲46) ラルフ社は,平成28年4月28日, 「Polo」 「Ralph と Lauren」の文字を上下二段に併記してなる商標の商標登録出願においての暫定拒絶通報に対し,意見書(甲46)を提出しているが,ラルフ社は,同意見書において, 「POLO」部分ではなく, 「RALPH LAUREN」部分にラルフ社の出所識別機能があることを自認し,本願商標の称呼が「ポロホーム」であるとし,本願商標からラルフ社を想起しないと述べている。
カ 以上より,本願商標とラルフ社の使用商標,引用商標とは,外観,観念,呼称が類似しておらず,全体としても,看者に与える印象,記憶が著しく相違し,判然と区別されるものである。
(6) 商品間の関連性の程度,需要者の共通性 ラルフ社は,ラルフ社の使用商標を付した商品を,百貨店や独立のブランドショップで販売しているのに対し,原告は,本願商標を付した商品を,量販店で販売しているから,ラルフ社の商品と原告の商品とは,価格帯や市場が異なり,取引者, 需要者も異なる。
(7) メルカリ等について 被告は,後記5(4)のとおり,原告の商品とラルフ社の商品との混同が生じている旨主張する。
しかし,メルカリの出品等では,個人が出品することから,高額販売を狙って買い手を意図的に錯誤させるような出品の例が存在する。被告が挙げた事例は,その数少ない悪意的な一例にすぎない。原告は,誤認混同を誘発するような商品等の説明を行っている出品者に対し警告を行っている(甲49の1)。
また,メルカリにおいては,ブランドタブの選択肢に原告がなく,「ラルフローレン」のみが存在する(甲50)。
さらに,被告が原告の商品とラルフ社の商品との間に混同が生じているとして引用する乙70は,文章全体から見ると,むしろ「ラルフローレンのPOLOとは全く別物」ということを主として伝える文章であるから,出所の混同は生じていない。
なお,ヤフオクでは,原告の商品とラルフ社の商品との間に混同が生じた事例はない(甲47)し,一般消費者間の取引よりも圧倒的に市場の大きい,業者と一般消費者間の取引においても,原告製の商品とラルフ社製の商品との間に混同は生じていない(甲53の1〜8)。
(8) 以上より,取引者,需要者が,本願商標を,ラルフ社に係る商品と関連づけて認識するおそれは極めて低く,出所の混同のおそれはない。
5 被告の主張 以下の理由から,本願商標は,商標法4条1項15号に該当する。
(1) 引用商標の著名性 ア ラルフ社の製品には,「POLO RALPH LAUREN」「Po ,lo Ralph Lauren」及び「ポロ ラルフ ローレン」の文字,並びに, 「POLO」と「RALPH LAUREN」の文字を上下二段に併記してなる商標(同商標を,以下「ラルフ社使用商標」と総称する。)が使用されている(乙9 〜30,51,55)。
ラルフ社は,ラルフ社使用商標が付された商品を,ラルフ社の店舗,大丸,三越等の大規模百貨店やアウトレットモール等を通じて販売する(乙9〜14,31〜34)とともに,ラルフ社のウェブサイト並びにショッピングサイトである「ZOZOTOWN」「西武,SOGO」「ISETAN , , ONLINE」「楽天市場」 ,及び「Amazon.co.jp」等でも販売をしている(乙9,15〜19,35)。
そして,その販売に係る業績は,平成23年度で売上高56億6000万ドル,平成25年度で売上高74億5000万ドルに上る(乙36,37)。
また,ラルフ社は,ラルフ社使用商標を使用した広告を,ラルフ社のウェブサイトや雑誌を通じて行っている(乙9,乙20の1,乙21の1)。
さらに,平成22年1月5日から16日に首都圏と近畿圏在住の20〜69歳の男女900人を対象に実施された「ファッションブランド意識調査」によると, 「衣料品の人気度ランキング」において,ラルフ社のブランドは,バーバリー,ユニクロに次ぐ3位であった(乙38の1〜3)。
イ 各種の辞書には,「ポロ」の項に,ラルフ社を設立したラルフローレンの商標と説明されている(乙2,3,39)。
また,「ポロ」を,ラルフ社の商標として報道した新聞記事(乙40〜50)や,ラルフ社の商品を「ポロ」として紹介したウェブサイトの記事(乙51〜56)が多数ある。
ウ 「POLO」「ポロ」の文字が,記事の見出し等に単独で使用されてい ,る例もあるところ(甲29の5の3〜5 乙40〜56),これに接する需要者は,記事の内容まで読まずとも(特にウェブサイト記事は画面のスクロールが必要である。 引用商標の著名性より, ) 該記事がラルフ社の取扱いに係る製品に関するものであることを認識できるものである。逆に,引用商標の著名性が高いものであるから,記事の見出し等に単独で使用されているといえる。
一方,ラルフ社以外の者が我が国において,その取扱いに係る製品に「POLO」, 「Polo」及び「ポロ」の文字を単独で使用している例は確認できない。
エ 「ポロ」の文字が「ポロシャツ」の略称として使用されていることは否定しないが,前記のとおり,引用商標は,ラルフ社の取扱いに係る製品を表すものとして,我が国での取引者,需要者の間において広く認識され,著名となっているものであり,少なくともポロシャツ以外の商品に付されたときはそれに接する需要者は,その著名性によりラルフ社の取扱いに係る製品であることを認識するものである。
オ このように,引用商標は,ラルフ社の取扱いに係る製品を表すものとして,我が国での取引者,需要者の間において広く認識され,著名となっていたものであり,かつ,その状態が本願商標の原出願の登録出願日(平成26年2月12日)はもとより,現在に至るまで継続しているというべきである。
(2) 本願商標と引用商標との類似性の程度 ア 本願商標の要部 (ア) 本願商標の構成中, 「英国の」の意味を有する「British」, 「国,田舎(の)」の意味を有する「country」及び「精神」の意味を有する「spirit」 (乙57の1〜3)の語を一連に書した「BRITISH COUNTRY SPIRIT」の文字部分は,構成中の他の文字部分に比して,約30分の1の大きさで,小さく表記されている上に,全体として「英国精神」ほどの意味合いを認識させるものであるところ,衣料品を取り扱う業界において,国名が一般に当該製品の製造地,販売地を表す実情がある(乙58〜61)ことに鑑みると,この文字部分は,商品が英国に由来することを表していると連想させるにとどまり,国名と同様の役割を果たしていると理解されるものであって,本願商標の指定商品との関係では,商品の出所識別標識としての機能を果たし得ないか又は極めて弱いというべきである。
(イ) また, 「家庭」を意味する「HOME」の文字部分(乙62,63)は,衣料品を取り扱う業界においては, 「家庭用の商品」を意味するものとして使用され ていること(乙64〜66)から,本願商標の指定商品との関係では,商品の出所識別標識としての機能を果たし得ない。
(ウ) そして,本願商標の構成中の「POLO」の文字部分は, 「馬に乗ったプレーヤーが4人一組になり,柄の長いハンマーで球を打って相手のゴールに入れるスポーツ」 (乙67)「ペルシア起源の騎乗球技。四人ずつ二組に分かれ,馬に乗 ,りながら一個のプラスチック製のボールを長柄の槌(マレット)で相手側のゴールへ打ち込み合って勝負を争う。(乙68)といった競技名の意味を有するものであ 」って,我が国においては,競技名を表す語として知られていると言い得るものであるが,一方で,この「POLO」の文字は,前記(1)のとおり,ラルフ社の取扱いに係る製品を示す商標として,取引者,需要者の間において広く認識され,著名となっていたものである。
(エ) そうすると, 「POLO」の文字が上記の競技を意味する語であったとしても,他の競技,例えば,野球,サッカー,ゴルフ,テニス等のように一般に広く慣れ親しまれ,かつ,極めて多数の者が実際に行った経験を有するものと比較した場合,ポロ競技自体は,我が国においては馴染みの薄いスポーツと言わざるを得ないものであるから,本願商標の構成全体から見たときは,その構成中の「POLO」の文字部分が,出所識別標識としての機能を果たし得る要部として看取されるというべきである。
類似性の程度 本願商標の構成中には, 「ラルフ社の取扱いに係る製品を示す商標」として我が国の取引者,需要者の間において相当程度広く認識されており,その観念を生じる引用商標の「POLO」及び「Polo」の文字と同じつづりであって,その「ポロ」の称呼と同じである「POLO」の文字を要部として含んでいる。
そうすると,本願商標と引用商標とは, 「POLO」の文字において外観,称呼及び観念を共通にし, 「Polo」の文字とは,同じつづりで外観が近似し,称呼及び観念を共通にし,また,引用商標中の「ポロ」の片仮名とは,称呼及び観念を共通 にするから,本願商標と引用商標の類似性は極めて高いというべきである。
(3) 本願商標の指定商品と,ラルフ社の業務に係る商品との関連性及び需要者の共通性等について 本願商標の指定商品は,衣料品等であり,当該指定商品は,ラルフ社の業務に係る製品である衣料品等を含む商品であって極めて関連性の高い商品であり,その取引者,需要者も共通であるといえる。
また,衣料品等は,日常的に消費される性質の商品であり,その需要者は広く一般の消費者を含むものであるところ,このような一般の消費者は,必ずしも商標やブランドについて正確又は詳細な知識を持たない者も多数含まれているといえ,商品の購入に際し,メーカー名や商標自体について常に注意深く確認するとは限らず,小売店の店頭などで短時間のうちに購入商品を決定することも少なくないものである。
(4) 実際に出所の混同を生じていること ウェブサイトには,以下のとおりの記載があり,同記載からすると,需要者は原告の商標について,それがあたかもラルフ社の取扱いに係る商品であるかのように出所の混同を生じていると認められる。
ア 「非常に残念なことですが,多くの方がデパートの主力ブランドのpolo ralph laurenの偽物だと認識しているようです。ブランド名,ロゴマークは似ておりますが,実際は全く別のライセンスをキッチリ取得して生産されたブランドになります。」との記載(乙69の1) イ 「他にも,以前しまむらで『POLO』とコラボした子供服やリュック,トートバッグが販売され人気になりました。ラルフローレンのPOLOだと思って購入した人もかなり多いみたい。でも実際はタグをよく見ると, 『POLO BRITISH COUNTRY SPIRIT』って書いてあるんですよね。ラルフローレンのPOLOとは全くの別物。なのに,ラルフローレンだと思い込んだ人がメルカリで,ラルフローレンとして販売してトラブルになったりもしています。しま むらで購入したって書けば間違いないんでしょうけど,高く売りたくて書かない人もいるみたいなので,ラルフローレンだと勘違いして購入しちゃいますよね。 との 」記載(乙70) ウ 「手軽にファッションに取り入れられる靴下や,羽織るのに便利なパーカーなども販売されています。子供服でも人気のあるラルフローレンの服の取扱いのあるしまむらの店舗もありますので,まめにチェックしましょう。 の記事ととも 」に,原告の商標が付された子供服の写真が掲載されている(乙71の1)。
エ 「そのまま,近所へお買い物。しまむら系列の子供服バースデイへ。お!POLO!!ラルフローレン! 980円 1280円 買おうかなーと躊躇してたらばあばがプレゼントしてくれました。ありがたや〜 しかしロゴをよく見るといつもと違うよーな。タグ確認 ブリティッシュカントリースピリッツとは?ラルフローレンの仲間なのかしら。
・・・どうやらラルフローレンとは関係のないPOLOさんらしいです。」との記載(乙72) オ 「1500円で販売した子供用ワンピース 友人からいただき出品しました タグにポロと書いてたのでラルフローレンと思ってましたが,しまむらとポロのコラボ商品でした 詐欺と書かれましたが,そんなつもりなく悲しいですし,皆さんに何も問題なければ評価前にご連絡くださいと書いてましたが直接評価され対応出来ませんでした」との記載(乙73の1) カ 「『ポロトランクス』は,627回の取引実績を持つ A さんから出品されました。ポロラルフローレン(トランクス/メンズ)の商品で,熊本県から4〜7日で発送されます。」の記事とともに原告の商標が付されたトランクスの写真が掲載されている(乙73の2)。
キ 「『POLO☆スクールカーディガン』は,628回の取引実績を持つ Bさんから出品されました。ポロバイラルフローレン(カーディガン/ボレロ/レディース)の商品で,大阪府から2〜3日で発送されます。」の記事とともに原告の商標が付されたカーディガンの写真が掲載されている(乙73の3)。
ク 「『POLOデニムシャツ?藍染め?』は,129回の取引実績を持つ Cさんから出品されました。ポロラルフローレン(シャツ/メンズ)の商品で,東京都から2〜3日で発送されます。」の記事とともに原告の商標が付されたシャツの写真が掲載されている(乙73の4)。
ケ 「ブランド」として「POLO RALPH LAUREN」の記載と共に原告の商標が付された子供服の写真が掲載されている(乙74の1)。
(5) 原告商標の周知性が本願商標に及ぶとの原告の主張について 原告が提出した証拠によっても,原告商標について,原告を出所とするものと,取引者,需要者が認識するに至っているということはできない。
(6) 前記(1)〜(5)の事情を総合考慮すると, 「POLO」の文字自体の独創性の程度は高くないとしても,本願商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断したときは,本願商標に接する需要者は,引用商標を想起,連想するものであるといえ,本願商標と引用商標は互いに類似する相紛らわしい商標である。
したがって,本願商標がその指定商品に使用されたときは,当該商品はあたかもラルフ社又は同社と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
当裁判所の判断
1 商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には,当該商標をその指定商品又は指定役務に使用したときに,当該商品又は役務が他人の業務に係る商品又は役務であると誤信されるおそれがある商標のみならず,当該商品又は役務が上記他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品又は役務であると誤信されるおそれがある商標が含まれる。そして,上記の「混同を生ずるおそれ」の有無は,当該商標 と他人の表示との類似性の程度,他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や,当該商標の指定商品又は指定役務と他人の業務に係る商品又は役務との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品又は役務の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし,当該商標の指定商品又は指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきものである(最高裁平成10年(行ヒ)第85号同12年7月11日第三小法廷判決・民集54巻6号1848頁,最高裁平成12年(行ヒ)第172号同13年7月6日第二小法廷判決・裁判集民事202号599頁)。
以上を前提に,以下,本願商標が商標法4条1項15号に該当するかについて検討する。
(1) 引用商標の周知著名性の程度 ア 後掲証拠によると,以下の各事実が認められる。
(ア) 引用商標は,デザイナーであったラルフ・ローレンが1967年頃にアメリカ合衆国で立ち上げたブランド「POLO」に由来する。
「Polo」ブランドの衣料品等の事業は成功し,ラルフ社は,平成10年には,ニューヨーク証券取引所に上場し,世界での売上げは,平成23年には約56億6000万ドル,平成25年には約74億5000万ドルとなった。(乙4,5,7,36,37) (イ)a ラルフ社は,昭和51年には,日本においても,「Polo」ブランドの事業を開始し,平成18年には,東京の表参道にアジア地域で初めての直営旗艦店を開店した。
平成22年1月に,首都圏及び近畿圏に居住する20〜69歳の男女900人を対象として,ファッションブランドに対する意識についてのアンケート調査を行ったところ,740人が回答し,「このブランドが好き」との項目では,23.9%の回答者が「ラルフローレン」を「好き」と答えており,この割合は全体で3位であった。また,上記調査では,「ブランドを知っている」の項目では,81.8% の回答者が「ラルフローレン」を「知っている」と答えており,この割合は全体で14位であった。
(乙4,5〜7,乙38の1・2) b ラルフ社は,ラルフ社使用商標を付した商品を,ラルフ社の店舗や,大丸,三越等の百貨店やアウトレットモールを通じて,広く販売する(乙9〜14,乙31〜34[枝番をすべて含む。)とともに,ラルフ社のウェブサイト並びに通 ]信販売のウェブサイトである「ZOZOTOWN」「西武,SOGO」「ISET , ,AN ONLINE」, 「楽天市場」 「Amazon」 及び 等でも販売している(乙9,15,乙16の1・2,乙17の1・2,乙18,19,35)。
また,ラルフ社は,ラルフ社使用商標を使用した広告を,ラルフ社のウェブサイトや多数の雑誌を通じて行っており,数多くの雑誌でラルフ社の商品の特集が組まれている(乙9,乙20の1・2,乙21の1・2,乙22〜28)。
c 辞書類には,ラルフ社やラルフ・ローレンに関して,以下の記載がある。
(a) 「コンサイスカタカナ語辞典第4版」 (株式会社三省堂 平成22年2月10日発行)の「ポロ」の項 「米国のデザイナー,ラルフローレンがデザインした紳士服や婦人服の商標」 (乙39) (b) 「英和ブランド名辞典初版」 (株式会社研究社 平成23年8月31日発行)の「Polo ポロ」の項 「米国のデザイナーRalph Laurenがデザインした革製品(バッグなど)(乙2) 」 。
(c) 「ファッション辞典」(文化出版局 平成14年5月22日発行)の「ローレン,ラルフ[Ralph Lauren]」の項 「1939年米国生まれ。‘68年紳士服ブランド『ポロ』設立。(乙3) 」 (ウ)a ラルフ社は,ラルフ社使用商標を使用して衣服等の商品を販売して いるが,ラルフ社の扱う商品の紹介等において,以下のとおり,引用商標が使用されることも多数ある。
(a) 「オーダーシャツ専門店 金沢 金港堂 オーナーのブログ」のウェブサイトに「POLOの迷彩ソックス 投稿日:平成26年8月18日」との見出しの下,ラルフ社製のソックスが写真とともに紹介されている(乙51)。
(b) 「古着屋JAM大阪 堀江店ブログ」のウェブサイトの平成27年9月6日付けの記事に「ああ,麗しきPOLO!」の見出しの下,ラルフ社製のジャケット等が写真とともに紹介されている(乙52)。
(c) 「テイクファイブ ショップブログ」のウェブサイトの平成28年3月22日付け記事に, 「ポロスニーカー&新作ギリ-サンダル^-^」の見出しの下,ラルフ社製のスニーカーが写真とともに紹介されている(乙53)。同記事においては,「ポロのスニーカーです」と記載されている。
(d) 「BLOG-PROPS-STORE」のウェブサイトの平成29年5月6日付け記事に, 「Polo」の見出しの下,ラルフ社製の帽子や衣服が写真とともに紹介されている(乙54の1)。
(e) 「JIMS STORE」のウェブサイトには,平成30年3月17日付け記事に,ラルフ社製の帽子の写真の下に「NYでも老若男女問わず『POLO』のキャップはみんなかぶっていますね。」との記載があり,同年2月14日付けの記事に, 「POLOのオックスフォードシャツ」の見出しの下,ラルフ社製の衣服が,写真によって紹介されており,平成29年7月31日付けの記事に, 「POLOの夏セット」の見出しの下,ラルフ社製の衣服が写真とともに紹介され,同月23日付けの記事に,「POLO以外にもこんなキャップもご用意いたしました!」との記載があり,同月10日付けの記事に, 「POLO揃えました!!!」の見出しの下,ラルフ社製の衣服,帽子及びサンダルが写真とともに紹介され,また, 「レザーでお探しならPOLOもオススメです!!!」との記載があり,同年5月25日付けの記事に, 「POLOのショーツ」の見出しの下,ラルフ社製の衣服が写真とと もに紹介され,同月5日付けの記事には, 「POLO良いです」の見出しの下,ラルフ社製の衣服が,「今回は入荷初日からRRLと一緒に投入したPOLOのショーツ。予想に反しRRLよりPOLOの方が勢いがあったかもしれません。, 」「最近はいつも以上にPOLOが気分ですね〜!!!」などの記載と写真とともに紹介されている(甲29の5の1〜5,乙55)。
(f) 「フリマアプリ&サイト Shoppies」のウェブサイトに「POLOキャップ 帽子 男女兼用」の見出しの下,ラルフ社製の帽子が写真とともに紹介されている(乙56)。
(g) 三井アウトレットパーク多摩南大沢のウェブサイトの「ショップを探す」のページ中のラルフ社の店舗のページに, 「取扱いブランド POLO」との記載がある(甲29の1)。
(h) 「Reshal」のウェブサイトに, 「ポロラルフローレン(Polo Ralph Lauren)(通称:ポロ), 」「ポロラルフローレン(Polo Ralph Lauren)の【ポロ】は,気品を意識しポロ競技から命名され,ブランドのロゴマークとして使われていることは有名です。」との記載がある(甲29の2)。
(i) ウィキペディアのラルフ・ローレンのページに,ラルフ社について,「通称:ラルフ,ポロ」との記載がある(甲29の3,乙7)。
(j) 丸井今井札幌本店のウェブサイトには,「<ポロラルフローレン>が大通館5階にオープン!」との見出しの下に, 「のクラシックなスタイル」との記載がある(甲29の4)。
b 以下のとおり,ラルフ社やラルフ社の商品のブランドを「ポロ」と表記している記事が多数ある。
(a) 平成3年12月5日の朝日新聞の記事 「ポロの靴下 ブランド世代が高感度消費者に(京都暮色:3)」との見出し(乙 40) (b) 平成5年3月4日の毎日新聞の記事 「『ポロ』類似商品差し止めの仮処分申請」との見出し 本文には,『ポロブランド』で知られる米国の衣料品メーカー『ザ・ポロ/ロ 「ーレン・カンパニー』 ・・・が,東京都内の衣料品会社二社を相手に,似通った商標の製品の販売差し止めを求める仮処分を,・・・申し立てた。・・・いずれも,左胸に『ポロ』のマークに類似した商標をつけた衣料品を販売しており,商標法違反などに当たる,としている。」との記載がある。(乙41) (c) 平成7年3月28日の朝日新聞の記事 「スリーエムが偽『ポロ』 奈良県警が商標法違反容疑で捜索【大阪】」との見出し 本文には, 「人気ブランド『ポロ ラルフローレン』にそっくりのマークを勝手に使っていたとして,奈良県警生活保安課と奈良,天理両署は・・・直営店三店舗を商標法違反の疑いで家宅捜索し,シャツやトレーナーなど約二百四十点を押収した。
調べによると,同社は・・・『RALPH LAUREN』の文字やポロ競技者のマークを同社のトレーナーやTシャツに勝手に付けて販売した疑い。」との記載がある。(乙42) (d) 平成9年2月14日の日本経済新聞の記事 「コスメロール, 『ポロ』ブランドのスキンケア用品投入。 との見出し 」 (乙43) (e) 平成14年10月17日の産経新聞の記事 「ポロ,日本法人を来年設立」との見出し(乙44) (f) 平成16年5月29日の産経新聞の記事 「偽『ポロ』6200点を販売目的で所持」との見出し 本文には, 「有名ブランド『ポロ・ラルフローレン』などの偽衣料品を大量に所持していたとして,浅草署は,商標法違反・・・の疑いで, ・・・を逮捕した。調べでは,・・・『ポロ・ラルフローレン』の登録商標に似せた商標を付けたTシャツなど計約六千二百点を販売目的で所持していた疑い。」との記載がある。(乙45) (g) 平成20年3月5日の日経MJ(流通新聞)の記事 「ナイガイ,『ポロ』との協議継続。」との見出し(乙46) (h) 平成21年3月4日の日経MJ(流通新聞)の記事 「『ポロ』国内3子会社統合,ライセンス管理や卸一貫。」との見出し 本文には, 「米ポロ社の二〇〇八年三月期の売上高は約四十八億八千万ドル(約四千七百八十二億円) このうち日本での売上高は二億七千二百万ドル 。 (約二百六十七億円)で,全体の六%弱を占めた。」との記載がある。(乙47) (i) 平成24年9月17日の朝日新聞の記事 「偽『ポロ』など8千点所持容疑,業者逮捕/大阪府」との見出し 本文には, 「偽ブランドの衣料を販売目的で所持していたとして府警は・・・商標法違反容疑で逮捕,送検したと発表した。府警は同社倉庫から, 『ポロ・ラルフローレン』などに似せた商品約8千点を押収した。」との記載がある。(乙48) (j) 平成26年5月10日の東京読売新聞 「偽『ポロ』ブランド摘発=東京」との見出し 本文には, 「武蔵野署は・・・商標法違反・・・の疑いで逮捕したと発表した。同署幹部によると, ・・・米国のブランド『ポロ』の偽物のジャージー2組を販売目的で所持した疑い。」との記載がある。(乙49) (k) 平成28年1月27日の日経産業新聞 「ポロの旗艦店で大型バイク展示,ホンダ,消費者と接点。 との見出し 」 (乙50) イ 前記アで認定したとおり,ラルフ社の世界での売上げは,平成25年には,約74億5000万ドルにも上ること,日本においても,平成18年には,アジア地域で初めてラルフ社の直営旗艦店が開店し,平成20年3月期に日本における売上高は約267億円で世界全体の6%弱を占めたこと,ラルフ社の商品は,ラルフ社の直営店のほか,百貨店,アウトレットモール,通信販売のウェブサイトで広く販売されていること,数多くの雑誌に,ラルフ社の広告が掲載され,ラルフ社の商品の特集記事も組まれていること,ブランドに関する調査では,人気度が3位 となったこと,ラルフ社やそのブランドの「Polo」がブランド名辞典等にも掲載されていること,ラルフ社に関する新聞記事も少なからずあることからすると,ラルフ社使用商標は,ラルフ社が取り扱っている衣服等の商品の出所を示すものとして,日本国内においても周知著名であり,その程度はかなり高いことが認められる。
そして,前記アのとおり,ウェブサイトや新聞等においては,ラルフ社やラルフ社の商品を紹介する際に,単に「ポロ」,「Polo」又は「POLO」とのみ表記している記事も多数あることからすると,ラルフ社使用商標は,一般的に「ポロ」,「Polo」又は「POLO」と呼ばれているものと認められる。したがって,引用商標は,ラルフ社が取り扱っている衣料品等の商品の出所を示すものとして,取引者及び需要者において認識され,ラルフ社使用商標の略称として周知著名であり,その程度はかなり高いものと認められる。
ウ 原告の主張について (ア) 原告は,新聞報道の見出しやウェブサイトの見出しでは,簡潔であることが求められるから,記事本文の「ポロ ラルフ ローレン」を,単に「ポロ」と略して見出しにすることは,通常のことであると主張する。
a しかし,新聞においては,読者がその意味を把握することができない表現や読者に誤解を与えるような表現は極力使用しないよう留意されているものと考えられるところ,新聞の見出しは,本文と同様に,読者に誤解を与える表現を避けるよう留意されているものと考えられるから,前記ア(ウ)bのとおり,「ポロ」とのみ表記している見出しが多数あることは,ラルフ社使用商標が,一般的に「ポロ」と呼ばれていることを示すものということができる。
b また,ウェブサイトの見出しも,スペースに制約がないことを考慮すると,必ずしも,簡潔に記載する要請があるとはいえず,簡潔な記載により誤解を招くおそれがある場合にまで,略称等を用いないものと考えられ,前記ア(ウ)aのウェブサイトの見出しの「POLO」との記載も,ラルフ社使用商標が,一般的に 「POLO」と呼ばれていることを示すものといえる。
c したがって,原告の上記主張は理由がない。
(イ) 原告は,「POLO」「ポロ」は,普通名称の「ポロ競技」や「ポロ ,シャツ」を意味すること,世界的に見ると,「POLO」ブランドを使用したビジネスを行っている団体が複数あること,世界知的所有権機関(WIPO)の検索サイトで,平成30年9月13日,米国で有効に存続する,いわゆるPOLO商標を,検索語「POLO」と,指定分類「25類」 (被服)で検索したところ,登録件数は121件であったが,そのうち103件は,ラルフ社とは無関係の会社の登録商標であること等を理由に,引用商標はラルフ社の商品の出所表示としては周知性がない旨主張するので,以下,同主張について検討する。
a 証拠(甲31の1〜7,甲32の1〜5,甲38,甲39の1〜7)及び弁論の全趣旨によると,「ポロ」,「Polo」という名称の競技があること,ポロシャツが一般的に「ポロ」と略称されていること,ポロ競技の振興等を目的とする団体として,US POLO ASSOCIATIONやHURLINGHAM POLO ASSOSIATIONが存在すること,US POLO ASSOCIATIONは,第25類(被服)などを指定商品として,商標「US POLO ASSOCIATION」を登録していること,HURLINGHAM POLO ASSOSIATIONは,第25類(被服)などを指定商品として,商標「HURLINGHAM POLO」を登録していることが認められる。
b(a) 確かに,前記aのとおり,「ポロ」や「POLO」は,ポロ競技やポロシャツを意味する言葉として使用されることがあるものの,前記ア(イ),ア(ウ)のとおり,ラルフ社使用商標は,一般的に「ポロ」 「Polo」 「POLO」 や やと呼ばれているから,これらの語は,ラルフ社が取り扱っている衣料品等の出所を示すものと認識され,引用商標はラルフ社使用商標の略称として周知著名であると認められる。
(b) また,前記aのとおり,US POLO ASSOCIATIO NやHURLINGHAM POLO ASSOSIATIONという団体が存在し,同団体が,「被服」等を指定商品として,「US POLO ASSOCIATION」,「HURLINGHAM POLO」の商標を登録しているが,同商標を使用した商品の日本における販売量や知名度等は不明であるから,上記事実が,日本における引用商標の周知著名性に影響を与えるものではない。
また,同様に,世界中に「POLO」を含むラルフ社と関係のない登録商標が多数あるとしても,同商標を使用した商品の日本における販売量や知名度等は不明であるから,上記事実が,日本における引用商標の周知著名性に影響を与えるということはできない。
(c) したがって,原告の上記主張は理由がない。
(ウ) 原告は,原告商標や本願商標は周知であり,また,取引者及び需要者は,原告商標や本願商標を「ポロ」と略して呼称している旨主張するので,同主張について,以下検討する。
a 後掲証拠によると,以下の事実が認められる。
原告は,原告商標A及び原告商標Bを有しているが,原告商標Aのうちの登録番号第1434359号の商標等について,原告は,本件ライセンス契約に基づき,ラルフ社に対し,通常使用権を許諾している。なお,本件ライセンス契約は,昭和62年に,ラルフ社と原告の前身である公冠販売との間で締結された。
(甲34の1・2,甲35の1・2,甲37の1・2,弁論の全趣旨) (b) 原告は,原告商標Bや原告使用商標を付して,衣服等を販売している。
原告の商品は,しまむらやイトーヨーカ堂,イオン等のスーパーマーケットやグンゼ株式会社,山喜株式会社,「楽天市場」,「Amazon」等の通信販売のウェブサイトで販売され,その他に,原告商標の付されたスーツが,はるやま商事株式会社が経営する店舗において販売されている。
(甲8,甲9の1〜3,甲10の1〜11,甲41の4〜14,弁論の全趣旨) (c) 平成11年11月26日には,「繊維ニュース」のウェブサイトで,原告についての記事が掲載された(甲41の1)。
(d) 原告使用商標は,AIPPI発行の「日本有名商標集」第3版(2004年)に搭載されている(甲42の1)。
原告使用商標について,「衣料品を取り扱う業界において,ポロ・ビーシーエス株式会社が販売する衣服等に使用されている商標であると認識されており,単に『POLO』『Polo』『ポロ』と略して書したり,『ポロ』と略して呼称することが通常行われていることに相違ありません。」と記載し,グンゼ株式会社,株式会社カイタックファミリー,中西株式会社,山喜株式会社がそれぞれ記名押印した証明書及び,本願商標について,「衣料品を取り扱う業界において,ポロ・ビーシーエス株式会社が販売する衣服等に使用されている商標であると認識されており,単に『POLO HOME』と略して書したり,『ポロホーム』と略して呼称することが,通常行われていることに相違ありません。」と記載し,上記の各社がそれぞれ記名押印した証明書(以下,これらの2種類の証明書を「本件証明書」という。)が存する(甲43の1〜8)。
b 前記aのとおり,原告商標Bや原告使用商標を付された原告の商品は,全国の店舗や通信販売のウェブサイトで販売されている。
しかし,本件証拠上,原告商標Bや原告使用商標を付した原告の商品の売上高は不明であり,上記事実のみから,原告商標Bや原告使用商標が周知であると認めることはできず,ましてや,「ポロ」や「POLO」の表示が原告や原告の商品の出所を示すものとして周知であると認めることはできない。
この点,原告は,原告及びグループ企業の卸売高は38億1910万円余りであると主張するが,その点に関する証拠を提出しておらず,原告の上記主張をそのまま認めることはできない。
仮に,原告及びグループ企業の売上高が,原告が主張する上記の額であったとしても,前記(1)イのとおり,ラルフ社使用商標やその略称としての「ポロ」,「Po lo」又は「POLO」が周知著名であり,その程度はかなり高いこと,後記(4)で判示するとおり,多くの者が,原告製の商品をラルフ社製の商品と誤認しており,その誤認に基づいて,原告製の商品を購入してしまう者も少なくないことを考慮すると,上記売上高から,「ポロ」や「POLO」の表示が原告や原告製の商品の出所を示すものとして周知であると認めることはできない。
(b) また,本件証明書は,印刷された文書に記名押印をしただけのものであって,本件証明書から本件証明書に記載された事実が存すると認めることができるものではない。
(c) さらに,原告使用商標が「日本有名商標集」に搭載されていても,それだけで周知であると認めることはできない。
(d) 原告は,原告商標が周知であることの根拠として,原告使用商標を付した商品がしまむらにおいて,ラルフ社の商品と並んで整然と販売されていると主張し,その証拠として甲41の12を挙げる。
しかし,甲41の12は,多数のウェブサイトの記事をまとめたウェブサイトであり,「しまパトで発見!『しまむら×POLO』がおしゃれ」との表題の下,しまむらで販売しているラルフ社製の商品と原告製の商品を紹介しているが,同ウェブサイトで最初に紹介されている商品(子供服)は,原告製の商品である。しかるところ,この商品の紹介記事は,後記(4)ア(ウ)(乙71の1)の「(略)」というウェブサイトの記事を複製したものであり,同「(略)」サイトでは,同記事は,「しまむらで買えるラルフローレンコラボ商品」の項目にあることから,同記事の商品はラルフ社の商品として紹介されている(甲41の12,乙71の1)。したがって,甲41の12のウェブサイトでは,原告製の商品をラルフ社製の商品と誤認して紹介している可能性が高く,「POLO」を原告製の商品の出所を示すものとして使用しているのではないというべきである。
(e) 原告は,原告商標Aのうち登録番号第1434359号の商標について,本件ライセンス契約に基づき,ラルフ社に対し,通常使用権を許諾してい る。
しかし,上記事実があるからといって,通常実施権を許諾されてラルフ社が使用している商標等が原告の商品の出所を示すものと認識されることにはならないというべきである。
(f) 平成11年11月26日に「繊維ニュース」のウェブサイトで原告についての記事が掲載されているとしても,「ポロ」や「POLO」の語が原告や原告製の商品の出所を識別するものとして周知であると認めることができるものではない。
(g) したがって,前記イの認定が左右されることはなく,「ポロ」や「POLO」は,ラルフ社の商品の出所を示すものとして周知著名であり,原告や原告製の商品の出所を示すものとして周知であるとは認められない。
(2) 本願商標と引用商標の類似性の程度 ア 本願商標は,別紙1記載のとおりであり,「POLO」,「BRITISH COUNTRY SPIRIT」及び「HOME」の欧文字を三段に横書きし,上段と下段の文字を,中段の文字に比較して大きく書すことにより,各列の文字の始まりと終わりが同じ位置になるよう文字の両端を揃えている。中段の「BRITISH COUNTRY SPIRIT」の文字の大きさは,上段の「POLO」及び下段の「HOME」の各文字の大きさの約30分の1であり,目立たない。
イ 下段の「HOME」の文字は,「家庭」を意味するものであるが,衣料品の分野では「家庭用の商品」を意味するものとして使用されているものと認められる(乙64〜66)から,本願商品においても,別紙2の指定商品との関係では,出所識別標識としての機能は弱いというべきである。
一方,上段の「POLO」の文字は,ポロ競技やポロシャツを意味するが,前記のとおり,「POLO」は,ラルフ社製の商品を示す商標として周知著名であり,その程度がかなり高いことからすると,これをラルフ社が取り扱っている商品と重なる別紙2の指定商品に使用した場合は,同文字部分からは,ラルフ社の商品が観 念され,また,同文字部分が,取引者,需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。
ウ 以上からすると,本願商標は,「POLO」の文字部分を要部として分離観察をすることができるというべきである。
そうすると,本願商標と引用商標は,外観,称呼が同一であり,指定商品に使用された場合は,ラルフ社の商品という同一の観念を生じさせるから,類似しているといえる。
エ 原告は,別の商標登録の審査において,ラルフ社自身が,「POLO」部分ではなく, 「RALPH LAUREN」部分にラルフ社の出所識別機能があることを自認し,本願商標の称呼が「ポロホーム」であるとし,本願商標からラルフ社を想起しないと述べている旨主張する。
しかし,別の商標登録の出願審査におけるラルフ社の主張が本件訴訟における本願商標と引用商標の類比の判断に影響を与えるということはなく,原告の上記主張は理由がない。
(3) 取引者及び需要者の共通性 本願商標の指定商品は衣料品等であり,引用商標もラルフ社製の衣料品等を示すものとして使用されているから,本願商標と引用商標とでは,取引者及び需要者は共通する。
これに対し,原告は,ラルフ社製の商品と原告製の商品とは,価格帯や市場が異なり,取引者,需要者も異なる旨主張するが,しまむらにおいては,原告製の商品のほかにラルフ社製の商品も販売されていることが認められ(乙71の1) また, ,通信販売のウェブサイトでも,原告製の商品とラルフ社製の商品が同じページで販売されていることが認められる(甲41の10)から,原告の上記主張は理由がない。
(4) 混同の有無 ア 後掲証拠によると,以下の事実が認められる。
(ア) 株式会社石洋服店のウェブサイトでは,「非常に残念なことですが,多くの方がデパートの主力ブランドのpolo ralph laurenの偽物だと認識しているようです。ブランド名,ロゴマークは似ておりますが,実際は全く別のライセンスをキッチリ取得して生産されたブランドになります。」との記載とともに,原告製の衣服の写真を掲載し,同衣服の広告をしている(乙69の1)。
(イ) 「(略)」というウェブサイトに, 「他にも,以前しまむらで『POLO』とコラボした子供服やリュック,トートバッグが販売され人気になりました。
ラルフローレンのPOLOだと思って購入した人もかなり多いみたい。でも実際はタグをよく見ると,『POLO BRITISH COUNTRY SPIRIT』って書いてあるんですよね。ラルフローレンのPOLOとは全くの別物。なのに,ラルフローレンだと思い込んだ人がメルカリで,ラルフローレンとして販売してトラブルになったりもしています。しまむらで購入したって書けば間違いないんでしょうけど,高く売りたくて書かない人もいるみたいなので,ラルフローレンだと勘違いして購入しちゃいますよね。」との記載がある(乙70)。
(ウ) 「(略)」というウェブサイトの「しまむらで買えるラルフローレンコラボ商品」という見出しの下に,「手軽にファッションに取り入れられる靴下や,羽織るのに便利なパーカーなども販売されています。子供服でも人気のあるラルフローレンの服の取扱いのあるしまむらの店舗もありますので,まめにチェックしましょう。 の記事と共に, 」 原告使用商標に似た商標と原告製の子供服の写真が掲載され,その下に,『POLO』のキッズドッキングワンピースは一枚でコーディネー 「トが完成」との記載がある。(乙71の1) (エ) 「(略)」というウェブサイトに, 「そのまま,近所へお買い物。しまむら系列の子供服バースデイへ。お!POLO!!ラルフローレン! 980円1280円 買おうかなーと躊躇してたらばあばがプレゼントしてくれました。ありがたや〜 しかしロゴをよく見るといつもと違うよーな。タグ確認 ブリティッシュカントリースピリッツとは?ラルフローレンの仲間なのかしら。
・・・どうやら ラルフローレンとは関係のないPOLOさんらしいです。」との記載がある(乙72)。
(オ) メルカリのウェブサイトの「皆さんの意見聞かせて下さい」のページに,「1500円で販売した子供用ワンピース 友人からいただき出品しました タグにポロと書いてたのでラルフローレンと思ってましたが,しまむらとポロのコラボ商品でした 詐欺と書かれましたが,そんなつもりなく悲しいですし,皆さんに何も問題なければ評価前にご連絡くださいと書いてましたが直接評価され対応出来ませんでした」との質問が投稿されており,回答の中には, 「・・・ポロとは書いてありますが,ラルフローレンとは書いてなく,ポロビーシーエスと書いてありますので,・・・」との記載がある(乙73の1)。
(カ) メルカリのウェブサイトに, 「ポロトランクス」という題名の出品ページには,『ポロトランクス』は,627回の取引実績を持つAさんから出品されま 「した。ポロラルフローレン(トランクス/メンズ)の商品で,熊本県から4〜7日で発送されます。 との記載と共に, 」 原告使用商標と似た商標が付されたトランクスの写真が掲載されている(乙73の2)。
(キ) メルカリのウェブサイトに, 「POLO☆スクールカーディガン」という題名の出品ページに,『POLO☆スクールカーディガン』は,628回の取引 「実績を持つBさんから出品されました。ポロバイラルフローレン(カーディガン/ボレロ/レディース)の商品で,大阪府から2〜3日で発送されます。」との記載と共に,原告使用商標と似た商標が付されたカーディガンの写真が掲載されている(乙73の3)。
(ク) メルカリのウェブサイトの「POLOデニムシャツ?藍染め?」という題名の出品ページに,『POLOデニムシャツ?藍染め?』は,129回の取引 「実績を持つCさんから出品されました。ポロラルフローレン(シャツ/メンズ)の商品で,東京都から2〜3日で発送されます。」の記事と共に,原告使用商標が付されたシャツの写真が掲載されている(乙73の4)。
(ケ) メルカリのウェブサイトの 【美品】 「 ラルフローレンポロベビーTシャツ80」という題名の出品ページに,ブランド欄に「ラルフローレン」と記載して,原告製の衣服が出品されたが,同商品は,原告製の商品であり,ラルフ社製の商品ではないから,商標法上の問題があるとして,記載事項の変更を要請された(甲49の1)。
(コ) 「Rakutenラクマ」のウェブサイトの「ポロベビー」という題名の出品ページに, 「ブランド」として「POLO RALPH LAUREN」と記載された商品が出品され,同商品の写真には,原告使用商標と類似した商標が付されている(乙74の1)。
イ 前記アの事実によると,原告製の衣服をラルフ社製の衣服と誤認して,その中古品をウェブサイトに出品している事例が少なからずあり,また,原告製の衣服をラルフ社製の衣服と誤認して購入したり,原告製の衣服をラルフ社製の衣服と誤認してウェブサイトで紹介したりする事例もあることが認められる。
さらに,原告製の衣服を販売している会社が,その広告において,わざわざ,多くの人は,原告製の衣服はラルフ社製の偽物であると認識しているようであるが,実際は,ラルフ社製の偽物ではなく,別のライセンスを取得している旨説明している。
以上の事実からすると,多くの者が,原告製の商品をラルフ社製の商品と誤解して購入等しているものと推認される。
したがって,原告使用商標又は,それに似た商標を付している商品とラルフ社製の商品との間に,現実に出所の混同が生じていることは明らかであるから,本願商標についても出所の混同が生じるものと認められる。
ウ 原告の主張について (ア) 原告は,前記アで認定したメルカリへの出品について,買い手を意図的に誤認させる悪意の出品である旨の主張をしているが,原告の主張は,前記アで認定した各出品者が詐欺行為をしたことについての具体的な裏付けを伴うものでは なく,憶測にすぎないことから,採用できない。また,原告は,メルカリにおいては,ブランドタグの選択肢に「ラルフローレン」しかない旨の主張をするが,そうであるとしても,前記イ記載の誤認混同が生じていることの理由とは認め難い。
(イ) 原告は,ヤフオクにおいては,原告製の商品とラルフ社製の商品との間に混同が生じた事例はなく,また,業者と一般消費者間の取引においては,原告製の商品とラルフ社製の商品との間に混同は生じていないと主張し,その証拠として,甲47,甲53の1〜8を提出するが,同証拠から直ちに,原告の上記主張事実を認めることはできず,前記イの認定を左右するに足りるものではない。
(ウ) 原告は,甲40の1・3から,消費者が,原告製の商品をラルフ社製の商品と区別して購入する事実がある旨主張する。
しかし,甲40の1の記事は,写真に掲載した原告製の商品がラルフ社製の商品ではないことを注意喚起するものであり,甲40の3の記事は,一見したところラルフ社製の商品であると思ったが,よく確認すると,原告製の商品であることが分かったというものであるから,原告製の商品をラルフ社製の商品と誤認する可能性が高いことを示すものである。したがって,上記記載は,原告製の商品とラルフ社製の商品との間に混同が生じやすいことを裏付けるものといえる。
(5) 以上からすると,引用商標の独創性の程度が造語による商標に比して低いことを考慮しても,本願商標をその指定商品に使用した場合,当該商品がラルフ社の業務に係る商品であると誤信され,出所の混同を生ずるおそれがあることは明らかである。
2 原告の主張について 原告は,本件ライセンス契約が存し,原告はラルフ社に対し,通常実施権を許諾していること,ラルフ社の「POLO COUNTRY」の登録商標が無効になったこと,原告は,「POLO」商標のフリーライド,ダイリューションを防止するために各種の権利保護活動を行っていることなどの本件の特殊な事情を考慮すると,誤認混同のおそれの判断においては,商標法4条1項11号の基準により,ラルフ 社の登録商標,ラルフ社使用商標のうちのいずれに類似するか,個別・具体的な類似性を認定すべきであり,また,混同の意味についても狭く解すべきであると主張する。
しかし,前記1のとおり,引用商標は,ラルフ社の商品の出所を示すものとして周知著名であり,原告が指定商品に本願商標を使用すれば,当該商品がラルフ社製の商品であると誤信され,出所の混同が生じるおそれがあるから,同項15号を適用して,その商標登録出願は拒絶すべきものであって,このことは,原告の主張する上記の事情の存在によって左右されるものではない。
したがって,原告の上記主張は理由がない。
3 以上によると,本願商標は,商標法4条1項15号に該当するから,登録を受けることができない。
結論
以上の次第で,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
追加
別紙1別紙2第25類「被服,ナイトガウン,ネグリジェ,寝巻き,パジャマ,バスローブ,その他の寝巻き類,ズボン下,スリップ,パンツ,ブラジャー,すててこ,その他の下着,水泳着,水泳帽,アイマスク,エプロン,えり巻き,靴下,ショール,スカーフ,手袋,ネクタイ,バンダナ,マフラー,耳覆い,ネックウォーマー,レッグウォーマー,腹巻き,スパッツ(運動用特殊衣服を除く。,バスキャップ,日よけ付きサンバイザー,ナイトキ)ャップ,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」 別紙3別紙4
裁判長裁判官 森義之
裁判官 佐野信
裁判官 熊谷大輔
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