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関連審決 異議2001-90867
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審判番号(事件番号) データベース 権利
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関連ワード 指定役務 /  公序良俗(4条1項7号) /  4条1項10号 /  顧客吸引力(グッドウィル) /  国内 /  使用許諾 /  登録異議申立 /  継続 / 
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事件 平成 15年 (行ケ) 492号 商標登録取消決定取消請求事件
原告A
訴訟代理人弁理士 西島綾雄
被告 特許庁長官今井康夫
指定代理人 宮下正之
同 涌井幸一
被告補助参加人 株式会社音楽専科社
訴訟代理人弁護士 矢野佳秀
同 相澤愛
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2004/04/27
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 (1) 特許庁が異議2001-90867号事件について平成15年9月25日にした決定を取り消す。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
特許庁における手続の経緯等及び決定の理由
以下は,当事者間に争いがなく,かつ,証拠(弁論の全趣旨を含む。)によって認定できる事実である。
1 特許庁における手続の経緯等 原告は,登録第4499261号の商標(「Shock Wave」の欧文字と「ショックウェイブ」の片仮名文字を上下二段に横書きして成り,第41類「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営に関する情報の提供,その他の映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,演芸の上演,演劇の演出又は上演・音楽の演奏に関する情報の提供,その他の演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,技芸・スポーツ又は知識の教授,研究用教材に関する情報の提供及びその仲介,セミナーの企画・運営又は開催,動物の調教,植物の供覧,動物の供覧,図書及び記録の供覧,美術品の展示,庭園の供覧,洞窟の供覧,映画の上映・制作又は配給,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),放送番組等の制作における演出,映像機器・音声機器等の機器であって放送番組等の制作のために使用されるものの操作,ゴルフの興行の企画・運営又は開催,相撲の興行の企画・運営又は開催,ボクシングの興行の企画・運営又は開催,野球の興行の企画・運営又は開催,サッカーの興行の企画・運営又は開催,スポーツ以外の企画・運営又は開催,競馬の企画・運営又は開催,競輪の企画・運営又は開催,競艇の企画・運営又は開催,小型自動車競争の企画・運営又は開催,当せん金付証票の発売,音響用又は映像用のスタジオの提供,運動施設の提供,娯楽施設の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,興行場の座席の手配,映写機及びその附属品の貸与,映写フィルムの貸与,楽器の貸与,スキー用具の貸与,スキンダイビング用具の貸与,テレビジョン受信機の貸与,ラジオ受信機の貸与,図書の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,ネガフィルムの貸与,ポジフィルムの貸与,おもちゃの貸与,遊園地用機械器具の貸与,遊戯用器具の貸与,絵画の貸与,音声周波機械器具・映像周波機械器具・映写機及びその付属品の貸与,美術用モデルの提供」を指定役務として,平成12年3月29日に登録出願され(以下「本件出願」という。),同13年8月17日に登録された(本件商標を掲載した公報の発行日は,同年9月18日である。)。以下,「本件商標」といい,その登録を「本件登録」という。)の商標権者である。
2 被告補助参加人(以下「補助参加人」という。)は,平成13年11月16日,本件登録に対し登録異議の申立てをした(以下「本件異議申立て」という。)。特許庁は,これを異議2001-90867号事件として審理し,その結果,平成15年9月25日,「登録第4499261号商標の商標登録を取り消す。」との決定をし,その謄本を,同年10月14日原告に送達した。
(甲第1号証ないし甲第5号証) 3 決定の理由 決定の理由は,別紙決定書の写しのとおりである。
要するに,補助参加人が,平成8年から主催し,ロック音楽の愛好家等の間で知られていた「SHOCK WAVE」という名称(以下「引用標章」という。)の音楽イベントの開催等について,補助参加人は,原告(補助参加人の元従業員である。)が代表者を務める株式会社スターチャイルド(以下「スターチャイルド」という。)と,業務提携をする契約を締結し,この契約(以下「本件契約」という。)において,スターチャイルドは,補助参加人に対し,引用標章に係る権利を含む補助参加人の権利を侵害しないと約したにもかかわらず,スターチャイルドの代表者である原告は,スターチャイルドの業務を有利に遂行し,あるいは補助参加人が,引用標章を冠する音楽イベント事業を遂行することを抑止するため,補助参加人に無断で,引用標章と略同一の構成から成り,それが付される業務と同一の業務を指定役務として含む本件商標の登録をしたものであるから,本件登録は,公序良俗に反し商標法4条1項7号に該当する,というものである。
原告主張の決定取消事由の要点
1 引用標章に係る権利の帰属の認定の誤りについて (1) 決定は, 「・・・音楽専科社(甲)とスターチャイルド(乙)との間における「業務提携基本契約書」の写しである乙第2号証(判決注・本訴乙第11号証。以下「本件契約書」という。)によると,乙は甲が出版販売するビジュアル系音楽雑誌,月刊「SHOXX」並びに同誌に関連する臨時増刊の全ての有形財産,無形財産の全権利を侵害しないことを約束すること(第1条),そして,甲が所有する権利を乙が使用するにあたっては事前に文書により,甲の許諾を得るものとすること(第3条)等が規定されていることが認められる。
しかして,この契約書(乙第2号証)によると,引用商標に係る商標権は,同契約で規定する「SHOXX」に関連する無体財産に該当し,その権利の取得については,事前に文書により乙は甲の承諾を得ることが合意されているものと解されるところであるが,商標権者は,「SHOCK WAVE」のタイトル(引用商標)の使用について申立人の許諾があったと主張しているに止まり,「SHOXX」に関連する無体財産権となる本件商標権の取得についてまで,音楽専科社(甲)の許諾を得ていたと認めることはできないものであり,その許諾があったことを証明する書面の提出はない。」(甲第1号証7頁9行目〜23行目) と判断している。
しかし,引用標章に係る本件契約にいう「無形財産」の「権利」が,補助参加人に属するとした決定の認定は,誤っている。
(2) 補助参加人に対して,引用標章についての本件契約にいう「無形財産」の「権利」の主体であるとの評価を与えることが許されるためには,これが,補助参加人の業務に係る役務を表示するものとして,周知ないし著名である,という事実が必要がある。しかし,そのような事実はない。
この点について,決定は,「申立人は,新進グループに演奏の機会を与え,これを育成する等のために,「SHOCK WAVE」(引用商標)の名称を用いて演奏の興行を継続的に行っており,1996年から2001年まで,23回にわたってイベントを開催し,雑誌「SHOXX」においてその紹介を行ってきたことを認めることができる。」(甲第1号証4頁13行目〜17行目),としている。
新進グループ等の育成等を目的とし,彼らに演奏の機会を与え,音楽活動を支援する場として,平成8年から,「SHOCK WAVE」という名称が付された演奏の興行が継続的に行われてきた。この「SHOCK WAVE」という名称の興行(以下「本件音楽イベント」という。)を主催し,運営してきたのは,株式会社クラブチッタ(以下「クラブチッタ」という。)を始めとする,複数の会社である。総合問い合わせ先も,クラブチッタとなっていた。
本件音楽イベントにつき,補助参加人は,企画を行っていたにすぎない。
一般に,音楽のイベントの企画者は,企画についてだけしか責任を負わない。これに対し,主催者は,事故に対する対応を含め,運営に係る法的及び経済的責任をすべて負う。現実に,補助参加人は,事故に対する法的責任を回避するため,イベントの主催は行わない方針であった。
需要者は,本件音楽イベントに付された引用標章が,主催者であるクラブチッタの業務を示すものであると認識することはあっても,補助参加人の業務を示すものと認識することはない。
(3) 本件契約にいう「無形財産」の「権利」には排他性のないものは含まれない,と解するのが合理的である。
(4) 以上のとおりであるから,引用標章に関し,補助参加人が本件契約にいう「無形財産」の「権利」を有していた,とすることはできない。
(5) イベントの企画は,個別的に行われ,企画の需要者は企画者の履歴を知った上で企画を依頼する。
したがって,補助参加人以外の者が,引用標章を用いてイベントの企画を行ったとしても,混同のおそれはない。
2 公序良俗違反とした認定の誤りについて (1) 前記のとおり,引用標章について,補助参加人は何ら権利を有していない。補助参加人が引用標章についての権利を有していることを前提として,本件登録が公序良俗に反するとした決定の結論は,誤りである。
(2) 原告は,補助参加人の従業員として,補助参加人が主催者となって本件音楽イベントを開催するよう,強く提案し,受け入れられなかったことから,法的及び経済的責任を原告がすべて負うと約束し,企画者という形で補助参加人を関与させた,という事情がある。
(3) もともと,本件契約成立時,引用標章は何人も商標登録の出願ができるものであった。そして,前記のとおり,補助参加人は,もともとイベントの主催者にはならないとの方針を堅持しており,引用標章につき商標登録を行う意思も全くなかった。
そのため,原告は,他者に登録されるなどして引用標章を使用することができなくなる事態を防止するため,自己の費用で本件登録を行ったものである。
本件登録は,公序良俗に反するものではない。
被告及び補助参加人の主張の要点
1 原告の主張1(引用標章に係る権利の帰属の認定の誤り)に対して (1) 補助参加人は,当初から,本件音楽イベントの企画を担当しており,企画者として主体的に関与してきている。
企画者であるからといって,その役割が付随的なものにとどまる,ということはない。現実に,補助参加人は,その発行する音楽雑誌「SHOXX」(以下「本件音楽雑誌」という。)の誌上で,本件音楽イベントについて広く告知し,これにより本件音楽イベントが広く認知されるようになった。補助参加人は,アーティスト(バンド)との出演交渉等を主体的に行っており,その結果,アーティストやその所属事務所も,本件音楽イベントを,補助参加人のものとして認識するに至っている。
(2) 補助参加人は,本件音楽イベントにつき,当初から,具体的な実行をクラブチッタに依頼した。平成12年9月以降は,スターチャイルドも実行に参加するようになった。しかし,本件音楽イベントは,あくまで,補助参加人が主体となって開催してきたものである。
補助参加人が,本件契約により,本件音楽イベントの事業をスターチャイルドに承継させた,という事実はない。
(3) 本件音楽イベントは,多数回開催され,その観客数も,多い年(平成11年)は年間1万名を超えるなど,有名なものであった。
本件音楽雑誌は,本件音楽イベントの開催並びにその日時・場所の告知等を内容とする広告を掲載してきた。その広告では,「企画:SHOXX/音楽専科社」と表示している。そして,本件音楽雑誌は,14年以上の歴史を持ち,発行部数も6万部に及ぶ,ビジュアル・ハードロック系の音楽雑誌としては国内最大手のものであり,著名である。
本件音楽イベントに係るCDの制作・販売も,補助参加人が手掛けている。
以上の事実の下では,本件音楽イベント及びこれに付された引用標章は,ビジュアル・ハードロック系の音楽の演奏者や愛好家等の中で周知であり,かつ,補助参加人が主体的に興行しているものとして周知であった,というべきである。
この点について,原告は,イベント企画の需要者の中に,イベントの観客者は含まれないことを前提として,イベントの主催者と企画者との取引は個別的に行われるから,混同のおそれはない,との主張をする。しかし,その前提自体が誤りである。いずれにしろ,引用標章が補助参加人の業務を示すものとして周知であることと,取引が個別に行われることとの間には,何の関連性もないのである。
(4) 原告は,本件契約にいう「無形財産」の「権利」には,排他性のないものは含まれないと解するのが合理的である,と主張する。しかし,本件契約のような業務提携契約において,その1条のような条項を入れるのは,提携先が,各種権利の使用許諾を与えられたことを奇貨として,当該権利を剽窃的に取得する等の事態を防止するためである。原告主張のように,限定的に解すべき理由はない。
(5) 以上のとおりであるから,引用標章が,補助参加人の業務を示すものとして周知であること,引用商標に係る権利を補助参加人が有していること,それが本件契約にいう「無形財産」の「権利」に含まれることは,いずれも明らかである。
2 原告の主張2(公序良俗違反とした認定の誤り)に対して (1) 補助参加人が,原告に対し,引用標章を商標として登録することを許可した事実はない。なお,補助参加人は,平成13年5月20日付けで,原告を解雇し,本件契約も,同月末日付けで解約した。
本件登録の事実を知った補助参加人は,登録異議の申立て(本件異議申立て)をすると同時に,本件商標につき移転登録の手続をするよう求めた。しかし,原告は,これに応じず,かえって,本件商標を補助参加人が音楽イベントに使用することを禁止する,と述べている。このため,補助参加人は,別の名称を用いて本件音楽イベントと同じ内容の音楽イベントを開催することを,余儀なくされている。
以上の事実から,原告が本件登録を得たのは,スターチャイルドの業務を有利に展開し,あるいは補助参加人の業務を妨害するためであることが明らかである。
(2) 原告は,他者により引用標章が登録されることを防止するため,本件登録を行った,と主張する。
もともと,引用標章は補助参加人の業務を示すものとしては周知であったから,他者による登録が許されるようなものではない(商標法4条1項10号,15号)。
他者による登録のおそれがあるとしても,補助参加人に対して,商標出願をするよう働きかければ済む話である。
前記のとおり,補助参加人が本件商標につき移転登録の手続をするよう求めたのに対し,原告がこれに応じていないことからみて,原告に上記のような動機があったこと自体,大いに疑問である。
当裁判所の判断
1 原告の主張1(引用標章に係る権利の帰属の認定の誤り)について (1) 本件音楽イベント(新進グループ等の育成等を目的とし,彼らに演奏の機会を与え,音楽活動を支援する場として,平成8年から,「SHOCK WAVE」という名称が付されて継続的に行われてきた演奏の興行)は,平成8年3月にその第1回が開催され,平成13年まで,札幌,仙台,東京,川崎,新潟,名古屋,大阪,福岡等日本全国で,多数回開催されてきた。その観客動員数は,年間4000人強から,多いとき(平成11年)には1万人を超えることもあった。
本件音楽イベントは,地方のテレビ局で放映されたこともあり,さらに,これに関するCDも販売されている。
(甲第5号証,乙第1号証ないし第7号証,第9号証,第14号証) 以上の事実から,本件音楽イベントは,ビジュアル・ハードロック系の音楽の愛好家や,この種音楽に関するイベントの興行を業とする者,楽器の製造・販売を業とする者等の取引者・需要者の間で,周知であったと認めることができる。
(2) 本件音楽雑誌は,13年以上の歴史を持ち,ビジュアル・ハードロック系の音楽専門雑誌としては国内で最多規模の発行部数も達成し,この種音楽の愛好家等の間で,周知の雑誌であると認められる。
本件音楽イベントは,本件音楽雑誌に,「企画:SHOXX/音楽専科社」あるいは単に「企画:SHOXX」として宣伝され,また,本件音楽イベントに関するCDも「制作・販売:(株)音楽専科社」として宣伝され,販売されてきた。
以上の事実から,「SHOCK WAVE」の名称を付された本件音楽イベントは,補助参加人の業務,とりわけ本件音楽雑誌と密接に関わるものとして,ビジュアル・ハードロック系の音楽の愛好家等の間で周知であった,と優に認めることができる。
(甲第5号証,乙第2号証ないし第7号証,第9号証,弁論の全趣旨) (3) (1)及び(2)で認定した事実から,@補助参加人が,引用標章を名称とする本件音楽イベントの企画という業務を行っていることを,ビジュアル・ハードロック系の音楽の愛好家等の取引者・需要者が認識すること,Aこれにより,引用標章と結び付いた,本件音楽イベントに関する一定の評価(少なくとも5年程度の期間にわたり,多数回開催され,多数の観客を動員している。)が,補助参加人の企画力に対する一定の評価となり,補助参加人に対し一定の顧客吸引力をもたらすことになることを,認めることができる。
(4) 本件契約は, 「株式会社音楽専科社(以下「甲」という。)と株式会社スターチャイルド(以下「乙」という。)とは,甲乙間の業務提携の内容を明確にし,協力関係の維持促進をはかるため,基本的事項に関し,業務提携基本契約書(以下「本契約」という。)を締結する。」(前文), 「第1条(基本原則) 乙は甲が出版販売するビジュアル系音楽雑誌,月刊「SHOXX」並びに同誌に関連する臨時増刊誌(雑誌,書籍,通信販売)の全ての有形財産,無形財産の全権利(以下「権利」という。)を侵害しないことを約束する。
第2条(相互協力) 甲および乙は相互に協力して,関係法令を遵守しつつ共同の利益の増進を図るため協力して努力するものとする。
第3条(個別契約) @甲が所有する権利を乙が使用するにあたっては事前に文書により,甲の許諾を得るものとする。
A甲は乙より@項の権利の使用申し入れを受諾する場合には使用する権利の内容,事業内容,期間等々を明示した個別契約を締結する。」 と定めている。
本件契約の上記の文言からみて,同契約にいう「無形財産」の「権利」に当たるものとなるためには,基本的に,本件音楽雑誌に関するものである必要があることが明らかである。引用標章についてこれをみる。
前記認定のとおり,本件音楽イベントは,補助参加人が企画するものとして,本件音楽雑誌で宣伝されているばかりでなく,「企画:SHOXX」として,すなわち本件音楽雑誌が企画しているものとして宣伝され,あるいは出場するバンドが本件音楽雑誌で紹介されるなど,本件音楽雑誌と極めて密接なかかわりを持つものとして開催されている。そして,補助参加人は,これにより,本件音楽イベントと本件音楽雑誌とが,後者において前者を宣伝するなどして,前者が成功し,人気を博する有名なものとなり,そのような人気を博する本件音楽イベントに関する広告や記事を掲載する後者もまた,人気を得て発行部数を増やす,という形で,相乗効果を上げることを期待したものであり(甲第5号証中の商標登録異議申立書4頁参照),現実に,それらは相乗効果を上げ得る関係に立つ,と認められる。
以上の状況の下では,上記のとおり,補助参加人の業務に係るものとして周知となっていた引用標章につき,補助参加人は,本件音楽雑誌の顧客吸引力に係るものとして,本件契約にいう「無形財産」の「権利」を有する,ということができる。
(5) 原告は,補助参加人は企画者にすぎず,法的ないし経済的責任を負わないから,本件音楽イベントを補助参加人の業務に係るものとすることはできず,取引者・需要者が,そのように認識することもない,と主張する。
そもそも,企画者が,イベントの実行に関し法的ないし経済的責任を一切負わないということ自体,相当に問題である。一概にそのようにいうことはできない。その点はおくとしても,顧客(ビジュアル・ハードロック系の音楽の愛好家等)は,専ら,本件音楽イベントに関する表示を基に,企画者として,補助参加人を本件音楽イベントに結び付けて理解するものであるから,本件音楽イベントに対する補助参加人の実際の関与の態様(法的ないし経済的責任を負うか否か等)が,本件音楽イベントに関し補助参加人が顧客吸引力を獲得するか否かに,直接関係するとは認められない。
(6) 原告は,自己が全責任を負うと約束して,本件音楽イベントを開催したと主張する。これは,原告が,自己の事業として本件音楽イベントを開催した,という趣旨であろう。しかし,これを認めるに足りる証拠はない。
たとい,本件音楽イベントが,補助参加人の従業員(本件音楽雑誌の編集長)であった原告が,その開催を提案して,実現に至ったものであるとしても,原告が携わったのは,補助参加人の従業員としての資格においてであった以上,特段の事情がない限り,それを原告自身の事業ということはできない。ところが,そのような特段の事情は,本件全証拠によっても認めることができない。
かえって,本件音楽イベントは,その開始当初から,原告の名前を企画ないし制作等と結び付けてすることなどない形で,開催されていたのである(甲第5号証,乙第1号証ないし第7号証,第9号証,第14号証)。
(7) 本件音楽イベントの宣伝において,例えば「総合制作・問い合わせ先●クラブチッタ」(乙第3号証),「制作:STAR CHILD LIFE,CLUB CITTA’」(乙第4号証),として,補助参加人以外の者も掲載されている。また,本件音楽イベントに関するCDについて,「制作・販売:STAR CHILD」(乙第4号証)として宣伝されたものもある。
しかし,このことは,本件音楽イベントの実行等について,補助参加人以外の者の関与もあり,それらも,本件音楽イベントの一定の評価に起因する顧客吸引力を享受すると認められる,ということを意味するにとどまり,前記のとおりの意味で,補助参加人が,引用標章について,本件契約にいう「無形財産」の「権利」を有することを否定するものではない。
(8) 本件音楽イベントに関する宣伝を本件音楽雑誌に掲載することについて,補助参加人は,スターチャイルドに対し,広告料金を請求している(乙第4号証ないし第6号証,第17号証ないし第20号証)。
しかし,本件契約には,本件音楽イベントに係る補助参加人の業務を完全にスターチャイルドに引き継ぐとは定められていない。現に,本件音楽イベントの宣伝においては,一貫して補助参加人の名称が掲載されている。
補助参加人が,スターチャイルドに対し広告料を請求したのは,本件音楽イベントを共同して開催する者同士の間のこととして,前者が後者に,宣伝についての相応の費用負担を求めたものと解することが可能である。これにより,補助参加人が,本件音楽イベントから撤退したと解することはできない。
(9) 以上のとおりであるから,引用標章について,補助参加人は,本件契約にいう「無形財産」の「権利」を有していると認められる。
これに反する原告の主張は,採用できない。
2 原告の主張2(公序良俗違反とした認定の誤り)について (1) 本件登録に関し,時期を問わず,原告が,補助参加人の承諾を得たと認めるに足りる証拠はない。
本件出願は平成12年3月29日である。当時,原告は補助参加人の従業員であったと認められるから,補助参加人の有する財産権を侵害しないようにすべきは当然であった。また,補助参加人が,本件音楽イベントの企画を通して獲得した,引用標章に係る財産権(顧客吸引力)は,原告が,その退職後も,尊重すべきものであると認められる。しかも,平成12年9月1日に本件契約が締結され,これにより,原告が代表者を務めるスターチャイルドも,引用標章に係る権利を含む,補助参加人の財産権を侵害しないことを約した上で,補助参加人と業務提携をしている。
引用標章に係る補助参加人の財産権を尊重すべき原告が,補助参加人に無断でした本件登録が,公序良俗に反することは明らかである。
(2) 本件音楽イベントを実現まで漕ぎ着けたことが,原告の尽力に負うところ大であったとしても,それは,補助参加人の従業員として当然のことである。本件音楽イベントが,原告個人の事業としてなされたものと認められない以上,原告の上記尽力は,本件登録が公序良俗に反すると認定することの阻害事由にはならない。
(3) 原告は,本件商標が他者により登録されることを防止するために,本件登録を行った,と主張する。
仮に,本件出願時ないし本件登録時,何人も本件商標を登録することができたとしても(前記のとおり,引用標章は既に周知であると認められるので,他者による登録が可能であるとは必ずしも認められない。商標法4条1項10号参照),そして,補助参加人に自ら本件商標を登録する意図がなかったとしても,原告が,補助参加人に対し,上記のような事態が起こり得ることを説明し,それを防止するために登録が必要であることの理解を求め,許可を得る程度のことが,困難であったと認めることはできない。ところが,原告が,このような許可を得たことはもちろん,原告が,補助参加人に対し,そのような説明等を行ったと認めることもできない。
原告の主張は,採用できない。
3 結論 以上のとおりであるから,原告の主張の取消事由には理由がないことが明らかであり,その他,決定には取消しの事由となるべき誤りは認められない。そこで,原告の本訴請求を棄却することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山下和明
裁判官 設樂隆一
裁判官 高瀬順久
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