関連審決 | 不服2018-2007 |
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事件 |
平成
31年
(行ケ)
10020号
審決取消請求事件
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原告 シーティービーエイティー インターナショナル カンパ ニー リミテッド 同訴訟代理人弁護士 達野大輔 松本慶 近藤友紀 同訴訟代理人弁理士 竹中陽輔 被告 特許庁長官 同 指定代理人庄司美和 豊田純一 阿曾裕樹 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2019/09/12 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 |
事実及び理由 | |
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請求
特許庁が不服2018-2007号事件について平成30年10月5日にした審決を取り消す。 |
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事案の概要
1 本件は,原告が出願した商標について拒絶査定を受けたことから,不服審判請求をしたところ,請求は成り立たない旨の審決がされたので,原告がその取消しを求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実) (1) 原告は,平成28年11月28日に,下記の商標(以下「本願商標」という。)について,商標登録出願(商願2016-134074号)をし(甲16),平成29年7月21日に,指定商品を「第34類 紙巻たばこ,たばこ,パイプ用たばこ,たばこ製品,代用たばこ(医療用のものを除く。,葉巻たばこ,シガリロ, )ライター,マッチ,喫煙用具,紙巻たばこ用紙,紙巻たばこ用筒,たばこ用フィルター,たばこ紙巻き器,紙筒にたばこを挿入するための機器,電子たばこ,電子たばこ用液体,加熱して使用することを目的とするたばこ製品,紙巻たばこ及びたばこ用の電気式の加熱装置」と補正した(甲18。同補正後の指定商品を,以下「本件指定商品」という。)ところ,平成29年11月6日付けで拒絶査定を受けた(甲20)ので,平成30年2月13日に,不服審判請求をした(甲21。不服2018-2007号)。 (2) 特許庁は,平成30年10月5日に, 「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,この審決の謄本は,同月19日に原告に送達された。 3 本件審決の理由の要点 (1) 本願商標 本願商標は,濃紺色で塗りつぶした縦長長方形(以下「本願素地」という。)内の上部中央に「SIGNATURE」の欧文字を茶色で横書きしてなり,かなり間を空けて,同長方形内の中央部分に,図形と文字との組合せ部分(以下「本願図柄部分」という。)を配した構成からなる結合商標である。本願図柄部分は,茶色の太線で大きく表された円輪郭内(内部は黒地である。)に, 「NO., 」「555」及び「STATE EXPRESS」の各文字(「555」の数字は,他の文字に比して大きく表されている。)を茶色で三段に横書きした部分(以下「本願円図形」という。)と,本願円図形の上部に,紋章風の図形(以下「本願紋章部分」という。)とをまとまりよく配した構成からなる。また,本願紋章部分は,王冠,円内に「SE」の文字を結合しモノグラム状に表した図形,2匹の仮想動物風の図形並びに「SEMPER」及び「FIDELIS」の各欧文字の記載がある2本のリボン状の図形等からなり,図形部分は茶色,文字部分は縦長長方形と同じ濃紺色である。 本願商標の構成中,上部中央の「SIGNATURE」の欧文字部分は,「署名,サイン」の意味を有する語である。また,紋章風の図形部分の構成中, 「SEMPER」及び「FIDELIS」の欧文字は,それぞれ, 「常に」及び「忠実」の意味を有するラテン語であるとしても,両語は,それぞれ,我が国において馴染みのない語であって,特定の意味合いを直ちに想起させるものではないから,当該文字部分に相応して, 「センパーフィデリス」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものといえる。さらに,本願円図形については,その構成中の「NO.」及び「555」の文字部分から「555番」の意味合いを生じるものの,「STATE」「状態,様子」 (の意)及び「EXPRESS」「急行電車,速達(便) ( 」の意)の文字部分からは,直ちに特定の意味合いを生じないものと解される。よって,本願円図形からは,全体として「ナンバーゴゴゴステートエキスプレス」「ナンバースリーファイブステ ,ートエキスプレス」及び「ナンバーゴヒャクゴジューゴステートエキスプレス」の称呼が生じ,特定の観念は生じないものである。 そうすると, 「SIGNATURE」の欧文字部分は,他の構成部分とは著しく離れて配置され,視覚上,明確に分離して把握されること,及び他の構成部分と観念的に密接な関連性を有しているとはいえないことから,当該欧文字部分は,他の構成部分とは分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいえない。そして,当該欧文字部分は,他の構成部分に比べて小さめに書されているとしても,本願商標の構成中,上部中央に配置され,十分判読可能なものであること,及び本件指定商品と何ら関連性を持つ語ではないことから,自他商品の識別標識としての機能を果たすものというべきである。 したがって,本願商標の「SIGNATURE」の欧文字部分は,構成上独立して見る者の注意をひく要部の一であるといえるから,引用商標と比較して商標の類否を判断することは許されるというべきであり,当該欧文字部分に相応して「シグナチャー」の称呼及び「署名,サイン」の観念を生じる。 (2) 引用商標 登録第4658792号商標(以下,「引用商標」という。)は,「SIGNATURE」の文字を標準文字で表してなり,第34類「たばこ」を指定商品として,平成14年9月5日に登録出願され,平成15年4月4日に設定登録されたものであり,その商標権は現に有効に存続しているものである。 引用商標からは,「シグナチャー」の称呼が生じ,「署名,サイン」の観念が生じる。 (3) 商標の類否 本願商標の要部である「SIGNATURE」の欧文字部分と引用商標とを対比すると,両者は,そのつづりを共通にすることに加え,一般的な書体で横書きに表されている点を共通にするため,外観上,酷似する。 また,両者は, 「シグナチャー」の称呼及び「署名,サイン」の観念を共通にするものである。 そうすると,本願商標の要部と引用商標とは, 「シグナチャー」の称呼及び「署名,サイン」の観念を共通にし,また,その外観においても酷似しているから,両者は,相紛らわしい商標であり,互いに類似する商標というべきである。 したがって,本願商標は,引用商標とは類似の商標である。 (4) 指定商品の類否 本願商標の補正後の指定商品中「紙巻たばこ,たばこ,パイプ用たばこ,たばこ製品,代用たばこ(医療用のものを除く。,葉巻たばこ,シガリロ,電子たばこ, )電子たばこ用液体,加熱して使用することを目的とするたばこ製品」は,引用商標の指定商品と同一又は類似の商品である。 (5) 以上によると,本願商標と引用商標とは,互いに類似する商標であり,かつ,本件指定商品には,引用商標の指定商品と同一又は類似の商品を含むものである。 したがって,本願商標は,商標法第4条1項11号に該当するから,商標登録を受けることができない。 4 原告の主張する審決取消事由(商標法4条1項11号該当性判断の誤り) (1) 本願商標の分離観察の可否 本件審決は,本願商標のうち, 「SIGNATURE」の欧文字部分について「構成上独立して見る者の注意をひく要部の一である」と判断したが,以下の理由により,この審決の認定判断には誤りがある。 ア 類否判断の基準 商標の類否判断においては,商標の外観,観念,称呼及びその他取引の実情等を総合勘案して類否判断を行うのが相当であり,結合商標の一部を分離,抽出して商標の類否を判断することは, 「その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合」や「それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合」など例外的な場合に限られるべきである。 イ 「本願商標の外観的特徴」と「分離観察の可否」 (ア) 本願商標の中で特に見る者の注意をひくのは,本願商標の中央部分の大きな面積を占めている本願円図形又は本願円図形を含む本願図柄部分である。本願円図形内の「555」という文字は他の文字と比較してひときわ大きく表示されており,特に顕著に取引者や需要者の目をひく部分である。 これに対し, 「SIGNATURE」の欧文字部分は,本願商標の上端部中央に配置され,本願商標全体との関係では非常に小さく,図柄部分と比しても約20分の1程度の大きさにすぎない。また「SIGNATURE」の欧文字部分は本願円図形の円輪郭や「NO., 」「555」及び「STATE EXPRESS」に使用されている色と同じ色で表示されており,特別目立つ態様で表示されているともいえない。 したがって,本願商標の「SIGNATURE」の文字部分が出所識別標識としての機能を有していないか,又はその出所識別標識としての機能が極めて弱いことから, 「SIGNATURE」の文字部分のみを抽出し,この部分だけを引用商標と比較してその類否を判断すべきでない。 また,本願商標は,たばこ及びたばこ関連商品を含む様々な本件指定商品に実際に使用される可能性があるが,その構成態様から,たばこのパッケージデザインの商標として使用することを主たる目的としていることからすると,本願商標に接する取引者や需要者は,常に本願商標を全体として認識するはずであり,本願商標の中で特に看る者の注意をひく本願円図形又は図柄部分を一切意識せずに「SIGNATURE」の文字部分の外観のみに注目して接することは,取引の実情に鑑みてもあり得ない。 以上からすると,取引者や需要者が商標の「要部」として認識するのは中央部分に大きく書した「NO./555/STATE EXPRESS」を含む本願円図形又は本願円図形を含む本願図柄部分であり, 「SIGNATURE」の欧文字部分を本願商標の要部の一であるとした本件審決の認定判断には誤りがある。 (イ) 被告は,「SIGNATURE」の文字部分と図柄部分との位置関係,同文字部分自体の位置,同文字部分の字型,他の図形部分や文字部分との書体や色彩の相違等から,同文字部分が,「看る者に対し,独立して注意をひくものである」と主張する。 しかし, 「SIGNATURE」の文字部分は,円輪郭図形やその他の文字部分と同じ茶系の色彩を使用しているから,被告の上記主張のうち色彩が相違しているとの主張には事実誤認がある。被告の上記主張が失当であることは前記(ア)のとおりである。 ウ 「SIGNATURE」の識別力と「分離観察の可否」 (ア) 「SIGNATURE」という言葉は, 「特徴的な,特製の,お勧めの,自慢の,とっておきの」という形容詞的な記述的意味をも有する成語である(甲1〜3,33〜35,44〜49)から,本願商標中の「SIGNATURE」の欧文字部分は,単に本件指定商品が「No.555 STATE EXPRESS」というブランドの「シグネチャーモデル」 「シグネチャーブランド」「特徴的な銘 , ,柄」「代表的な銘柄」「署名を入れられるほど自信のある銘柄」等であることを意 , ,味しているにすぎず,その識別力はないか,極めて弱い。 したがって,この識別力がないか,極めて弱い「SIGNATURE」の欧文字部分が「取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるもの」となることはなく,同欧文字部分が本願商標の要部となることはない。 (イ) これに対し,本件審決は, 「SIGNATURE」の語は,日本においては,「署名,サイン」の意味のほかに,「特徴的な,特製の,お勧めの,自慢の,とっておきの」などを意味するものとして一般的に認識,理解されているとはいえないから,当該言葉は,本件指定商品の関係において自他識別力が極めて弱い語であるとはいえないとして, 「SIGNATURE」の欧文字部分に自他商品識別標識としての機能を認めた。 しかし, 「SIGNATURE」という言葉は,日本においても,多岐にわたる分野で,例えば「シグネチャーモデル」「シグネチャーブランド」 「シグネチャーア , ,イテム」等のように,すでに日本語としても記述的に使用されている。したがって,これらの用法,意味が,日本において一般的に認識,理解されているとはいえないと断ずる本件審決の事実認定には誤りがある(甲3,26〜34)。 「SIGNATURE」という言葉が持つ記述的な意味は,英語を理解する者の観点からすると,ごく一般的な意味の一つであり,特別に例外的な意味といったものではない。英語が世界共通言語として認識,使用されている現代社会において,日本では認識,理解されていないとの理由で,このようなごく普通の記述的意味の存在を全く無視するとすれば,国際企業の商標選択の余地を不当に妨げ,パッケージデザイン等の自由を過度に阻害するものであり, 「産業の発達」を目的とする商標法の趣旨と鋭く対立するものといわざるを得ない(商標法1条)。 エ 「メインブランド(「No.555 STATE EXPRESS」」と )「分離観察の可否」 (ア) 本願円図形内の「No.555 STATE EXPRESS」は,原告が製造・販売するたばこ製品のメインブランドである。 この「No.555 STATE EXPRESS」は,アメリカでかつて運行していた「Empire State Express No.999」という列車から発想を得た一種の造語であり,原告が約100年前から世界中で販売してきた著名なたばこ製品のブランド名である(甲4,5,36)。 「No.555 STATE EXPRESS」は,1946年にはジョージ6世から「英国王室御用達許可証(Royal Warrant)」を受け(甲4),1980年代からはラリーチームのスポンサーやF1チームのスポンサーを務め,世界的に名が知られるようになったブランドである(甲6,7,37〜40)。原告が過去にラリーチームのスポンサーを務めたことによる宣伝広告効果は現在においても絶大なものであり, 「555」が付された自動車の写真やその数字とともに原告の名称や「No.555 STATE EXPRESS」が原告のたばこ製品のブランドであることを紹介する日本のウェブサイトが数多くみられる(甲50〜53)。 このように,市場において「No.555 STATE EXPRESS」は,原告のメインブランドとして取引されており,本願商標に接した取引者や需要者は,この「No.555 STATE EXPRESS」を含む本願円図形又は本願円図形を含む本願図柄部分に特に注目をして取引を行っているといえる。 したがって,本願商標については「No.555 STATE EXPRESS」を含む本願円図形又は本願円図形を含む本願図柄部分が顕著な自他商品識別力を有しているといえるから, 「SIGNATURE」の欧文字部分以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じない例外的な場合には当たらず, 「SIGNATURE」を本願商標の要部の一であるとした本件審決の認定判断には誤りがある。 (イ) 被告の主張について a 被告は, 「No.555 STATE EXPRESS」のブランドのたばこ製品は日本国内では発売されておらず,この商標が,我が国において広く認識され,周知,著名となるに至っていないと主張する。 しかし,上記ブランドのたばこ製品が国内未発売であったとしても,原告が提出した証拠から,上記ブランドが原告のたばこ製品のブランド名であることは,本件審決時点において,日本国内の一般の取引者や需要者の間で一定程度認知されていたことは明らかである。 なお,原告は,上記ブランドが商標法4条 1 項10号,19号の「周知,著名性」を主張しているものではない。 b 被告は,レースチームの活動が(日本ではなく)主に海外のものであることを理由に, 「No.555 STATE EXPRESS」の周知,著名性を否定する。 しかし,F-1,インディー500,パリ・ダカールラリーなどの著名自動車レースを見れば明らかなとおり,自動車レースの主戦場は海外である。日本でも,自動車レースに関していえば, 「日本のレース」よりも「海外のレース」の方がはるかに人気も注目度も高い。原告がスポンサーを務めていたスバルラリーチームが参加していたのはラリーレースの最高峰「世界ラリー選手権(WRC)」であり,この世界最高峰の舞台でスバルが快進撃を続けていた頃のスポンサーがまさに原告である。 以上の事実から, 「No.555 STATE EXPRESS」が海外のみならず日本でも十分に認知されていることは明らかである。 オ 「たばこのパッケージデザイン」と「分離観察の可否」 (ア)a 本願商標は,その構成態様から,たばこのパッケージデザインの商標であると目される。 たばこのパッケージは,図形や銘柄(ブランド・商標)が目立つ態様で記載され,その余の部分に品質等を表示する語が記載されるのが一般的である(甲42) 原告 。 が無作為に選んだたばこ自動販売機で販売されているすべてのパッケージを調べたところ,図形や銘柄(ブランド・商標)が目立つ態様で記載され,その余の部分に味,フレーバー,品質,種類等を示す語を記載する例が多数を占めた(甲60〜80)。このようなたばこパッケージに関する商慣習に鑑みると,本願商標のうち,出所識別機能を発揮するのは,メインブランドである「No.555 STATE EXPRESS」を含む本願円図形又は本願円図形を含む図柄部分であり,小さく書かれた「SIGNATURE」の欧文字部分は,たばこの品質や種類を表した記述的な表記であると認識するのが自然である。 b 引用商標の商標権者は,引用商標を,パッケージの上端部に,小さく「Signature MILD」「Signature MENTHOL」とい ,った態様で,かなり記述的に使用している。 このような引用商標の商標権者の実際の使用態様からみても,「SIGNATURE」という言葉が,市場において識別力の弱い言葉として使用されていることは明らかであり,現実に,本願商標と引用商標の間で出所の混同が生じないこともまた明らかである。 なお,引用商標の商標権者が「SIGNATURE」という言葉を自らの商品に記述的な言葉として使用しているという上記の事実は,「単に一時点における限定的な実情」を示すものではなく,たばこ業界における「SIGNATURE」という言葉に関する「恒常的かつ一般的な取引の実情」を示すものである。 さらにいえば,引用商標権者は「SIGNATURE」を商標法上の「商標」として使用していないのであるから,事実上引用商標権者の商標権は「空権化」している。商標法の保護の対象が商標の使用により蓄積,維持される商標権者の業務上の信用であることに鑑みると,このような「空権化」した商標に過大な保護を与えるべきでないことは,商標法が要請するところである。 c 「JET」及び「Espresso」の欧文字が表示されたたばこパッケージと目される商標について,特許庁は,たばこパッケージに小さく書かれた「Espresso」の文字部分は,他の構成要素(図形部分及び「JET」部分)と不可分に結びついているわけではないが,図形部分と「JET」部分が識別標識として機能する一方, 「Espresso」の文字の小ささ,細さ,色を理由に,「Espresso」の欧文字は,商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものということができないとして, 「Espresso」の部分は識別標識として機能しないと判断している。 一方,本願商標に関しても「SIGNATURE」は十分小さく,細く書かれており,同文字部分の色彩も他の文字・図形部分と同色で,目立つものではないにもかかわらず,本件審決においては, 「SIGNATURE」とその他の文字・図形部分に間隔があり,取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているものではないという点のみを理由とし,その他の要素を全く考慮せずに商標の類否判断を行っている。 このように,本件審決は,上記の過去の審決と矛盾するものである。 (イ) 被告の主張について a 被告は,本件指定商品は, 「たばこ」以外にも「電子たばこ,電子たばこ用液体」等も含んでおり,その指定商品中「たばこ」のみの取引の実情をいう原告の主張は,本件指定商品の範囲を恣意的に限定して解釈しようとするものであると主張する。 しかし,本件指定商品はそれぞれ指定商品としては異なる商品ではあるものの,いずれもたばこ関連製品であることは共通しており,また,本件指定商品中の多くの商品は,主にたばこ又は電子たばこ製造業者により製造されるもので,コンビニエンスストア,専門店,オンラインストアなどを含む,たばこ・喫煙具専門小売業者により販売されるものであるから,たばことは,通常同一営業主により製造又は販売されているものである。したがって,たばこに関するパッケージ商慣習と大きく異なるパッケージ商慣習が,たばこ以外の製品について存在するとは思われない。 現に,加熱式たばこ,電子たばこ及び電子たばこ用液体のパッケージについても,図形や銘柄(ブランド・商標)が目立つ態様で記載され,その余の部分に品質等を表示する語が記載されるという構成は採用されている(甲54〜59)。 b 被告は,本件指定商品中「たばこ」との関係において,その使用態様は商品パッケージデザインとしての使用に限られるものではなく,その他にも,商品そのものに付す場合や,広告,取引書類等に付す場合なども十分あり得るものであるから,本願商標が原告主張のような使用態様に限って使用されることを前提とする主張には根拠がないと主張する。 しかし, 「たばこ」との関係で本願商標を商品そのものに付したり,広告,取引書類等に付したりする可能性は否定できないものの,たばこそのものに本願商標のようなパッケージデザインの商標であると目される商標を付することは商慣習上一般的とはいえない。また,たばこのパッケージデザインについて図形や銘柄(ブランド・商標)が目立つ態様で記載され,その余の部分に品質等を表示する語が記載されるという構成が一般的であるとする原告の主張は,上記パッケージデザイン以外の使用態様についても妥当する。 c 被告は,商品の包装の上部に,他の構成文字等からは間隔を設けて商標を顕著に表示することは,商標の表示方法として広く一般的に採択されていることが明らかであるから,本件指定商品における取引者や需要者は,包装の上部に表示された文字部分は,商標を表示したものと認識,理解すると主張し,商品又はその包装の上部に,商標となり得る文字を,他の構成文字とは視覚上分離して記載する事例を挙げる。 しかし,前記(ア)aのとおり,たばこパッケージは,図形や銘柄(ブランド・商標)が目立つ態様で記載され,その余の部分に品質等を表示する語が記載されるのが一般的であるというべきである。 カ 「取引の実情」と「分離観察の可否」 (ア) たばこ製品の取引は,現在では,コンビニエンスストア,酒屋,駅構内の売店等の対面販売と,実店舗等の至近に設置された自動販売機による販売に,ほぼ限られている。 消費者は,店頭や自動販売機に陳列された商品のパッケージを目視し,商品の銘柄,パッケージのデザイン・色等を確認してから購入するから,たばこ商品に関しては,他の商品と異なり商標の称呼のみで取引されるケースはほとんどない。 また,たばこ商品の購入に当たっては, 「主要銘柄」「種類名」「商品パッケージ , ,のデザイン」という三つの要素が重要となるところ, 「種類名」「メンソール」「ラ ( ,イト」等)は複数のたばこ会社に共通して使用されることが非常に多いことから,上記三つの要素のうち, 「主要銘柄」と「商品パッケージのデザイン」が自他商品識別標識となり,主要銘柄を省略して取引されることは考えられない。 以上の取引の実情に鑑みると,本願商標において種類名を示す「SIGNATURE」の部分のみに注目して実際の取引が行われることは皆無であり,必ず,パッケージ全体のデザイン及び主要銘柄「No.555 STATE EXPRESS」を確認,認識して指定商品の取引がされる。 したがって,本願商標については,SIGNATURE」 「 の欧文字部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や「SIGNATURE」の欧文字部分以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合には当たらず, 「SIGNATURE」の欧文字部分を本願商標の要部の一であるとする本件審決の認定判断は,誤りである。 なお,商標実務における「商標の類否判断」において, 「称呼の類似」が殊更重要視されてきた理由は,一般的な商品の取引においては,電話取引,ラジオ・テレビ等による宣伝,セールスマンによる口頭での説明などが重要な取引類型と考えられてきたためである。たばこの販売に関しては,このような取引形態は一切ない。 (イ) 被告の主張について a 被告は,本件指定商品は, 「たばこ」以外の「電子たばこ,電子たばこ用液体」等も含んでいる旨主張する。 しかし,電子たばこや電子たばこ用液体は,たばこ関連製品としてたばこ製品と共に実店舗等で販売されることが依然として多い(甲81)から,たばこ製品と電子たばこ,電子たばこ用液体との間に,本願商標と引用商標の類否判断において結論を異ならせるほどの取引の実情の差異があるわけではない。 b 被告は,インターネット通信販売では,名称から生じる称呼に基づき商品検索等もなされ得るから,本願商標と引用商標との比較において,称呼における共通性を軽視することは適切ではないと主張する。 しかし,たばこのインターネット通信販売を行うためには,実店舗での販売許可を財務省の各管轄財務局から取得した上で,別途インターネット通信販売のための製造たばこ小売販売業許可の条件を財務局に付してもらう必要があり(甲82,83) その許可基準は実店舗販売よりも厳格であること, , 海外のたばこ販売ウェブサイトは,日本国内に実店舗を持たないため,財務局から日本でのインターネット通信販売の許可が取得できないことから,たばこのインターネット通信販売は,本願商標と引用商標との類否において考慮すべき取引の実情といえるほどのたばこの販売実態があるか定かではない。 また,インターネット通信販売においても,取引画面上で商品パッケージ画像が表示され,需要者はそれを目視して購入することになる以上,需要者は,パッケージ全体のデザイン及び主要銘柄を確認,認識して商品を購入することになるはずであるから,対面販売と殊更に事情を異にするわけではない。 c 被告は,原告の他の商品の流通経路が定かではないことを理由に本願商標に係る商品が実店舗や自動販売機を通じた販売経路を経るかどうかは確かでないと主張するが,企業が商品に応じて戦略的に流通経路を変えることがあることに照らすと,被告の上記主張は不合理である。 キ 登録商標の併存 (ア) 「SIGNATURE」という文字を含む以下の登録商標が,指定商品が抵触するにもかかわらず,引用商標と併存している。 a 「Vogue/LA SIGNATURE」(図形) 登録第5687 (251号)(甲8) b 「Vogue LA SIGNATURE」 (登録第5694696号)(甲9) c 「CAF?/IQOSignature」 (図形) (登録第6015014号)(甲10) d 「IQOSignature」 (登録第6015018号) (甲11) e 「PHILIP MORRIS/SIGNATURE」 (国際登録第818763号)(甲12) (イ) 前記(ア)のとおり登録商標が引用商標と現に並存していることは, 「S @IGNATURE」という言葉を多くのたばこ会社が使用しており,その言葉自体では需要者に対して強い印象を与えるものではないこと,A法的な観点から,引用商標「SIGNATURE」の商標としての力が極めて弱いことを意味する。 上記の併存例に鑑みても, 「SIGNATURE」という言葉単独で「取引者,需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える」とは考えられないから,本願商標の「SIGNATURE」の部分は「商標の独立した要部」とは認識すべきではない。 ク たばこ業界における「SIGNATURE」という言葉の使用 (ア) たばこ業界では, 「SIGNATURE」という言葉は,たばこ製品に好んで使用されている(甲22〜25)が,いずれも, 「SIGNATURE」という言葉は,メインブランドとしてではなく,記述的意味において使用されている。 たばこ業界においては,取引者や需要者は,SIGNATURE」 「 という言葉が,単独で商品の自他商品識別標識であるとは認識しておらず,あくまでメインブランドが自他商品識別標識であると認識している。 したがって,本願商標に関しても「SIGNATURE」の部分は自他識別標識として機能しておらず, 「SIGNATURE」を本願商標の要部の一であるとした本件審決の認定判断には誤りがある。 (イ) 被告は,原告の指摘する使用例(甲22〜25)は,すべて英語で表記された海外での使用例に関するもので,国内における使用例ではないばかりか,それらの中には「SIGNATURE」の語を他の語と結合して,複合語として意味上の連想を容易にしたものも含まれているから,上記使用例から,我が国の一般の取引者及び需要者が, 「SIGNATURE」の語が,単独で商品の品質を表示する語として認識するとはいえないと主張する。 しかし,現実のたばこ市場においては,主要なタバコメーカー(例えば,日本たばこ産業,フィリップモリス,ブリティッシュアメリカンタバコ)は,グローバルにビジネスを展開しており,商品デザインも世界的に統一したものを使っているという事実に鑑みると,海外での使用例も十分に考慮されてしかるべきであるし,日本における取引者や需要者も,海外のたばこ販売サイトを通じて, 「SIGNATURE」という語を使用するたばこ商品を購入することができる。 また,被告が指摘する「SIGNATURE」の語を他の語と結合して使用している例は, 「SIGNATURE」という言葉がたばこ業界において記述的意味において使用されていることを示すものである。 ケ 小括 本願商標においては, 「SIGNATURE」の欧文字部分が他の構成部分に比して,取引者や需要者に対して指定商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとはいえない。また,本願商標は, 「SIGNATURE」の欧文字部分以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合ともいえない。したがって,商標の類否判断において,ことさら「SIGNATURE」の欧文字部分のみを抽出し,この部分だけを引用商標と比較してその類否を判断することは許されないというべきである。 本願商標においては,本願円図形又は図柄部分が強い自他商品識別力を有する部分であり,同部分のみを要部と認めて,又は商標全体として類否の判断を行うべきである。 (2) 本願商標と引用商標の具体的類否判断 ア 外観上の類否 本願商標は,濃紺色で塗りつぶした縦長長方形内の上端部中央に「SIGNATURE」の欧文字を茶色で横書きしてなり,同長方形内の中央部分に図形と文字とを組み合せた図柄部分(本願図柄部分)を配した構成からなる結合商標である。本願図柄部分は,茶色の太線で大きく表された内部が黒地の円輪郭内に, 「NO., 」「555」及び「STATE EXPRESS」の各文字を茶色で三段に横書きした本願円図形と,本願円図形の上部に,紋章風の図形とをまとまりよく配した構成からなる。また,紋章風の図形部分は,王冠,円内に「SE」の文字を結合しモノグラム状に表した図形,2匹の仮想動物風の図形及び「SEMPER」及び「FIDELIS」の各欧文字の記載がある2本のリボン状の図形等からなり,図形部分は茶色,文字部分は縦長長方形と同じ濃紺色である。 これに対して,引用商標は, 「SIGNATURE」の欧文字を標準文字で表してなるものであり,本願円図形又は本願図柄部分に相当する部分が存在しない。 したがって,本願商標と引用商標とは「SIGNATURE」の欧文字部分が共通するものの,全体として本願商標と引用商標は外観上相紛れるおそれのないほど相違する。 イ 称呼及び観念上の類否 その構成全体から,本願商標からは, 「ナンバーゴゴゴステートエキスプレス」等の称呼が生じ,また,特定の観念は生じないと考えるべきである。 したがって,本願商標に係る称呼,観念は,引用商標に係るそれらとは相紛れるおそれのないほど非類似であるから,両商標は,称呼上や観念上も非類似である。 ウ 上記ア及びイに,前記(1)カの取引の事情等を総合勘案すると,本願商標と引用商標は,相互に相紛れるおそれのないほどに非類似の商標であり,実際の市場においては,「商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれ」は皆無である。 エ 以上からすると,本願商標と引用商標は非類似である。 5 被告の主張 (1) 本願商標と引用商標の類否について ア 本願商標について (ア) 本願商標の構成中, 「SIGNATURE」の文字部分は,一般的には「署名,サイン」の意味を有する英語と理解されるものである(乙2)。 そして,本願図柄部分の構成中, 「SEMPER」及び「FIDELIS」の欧文字は,両語を結合して「常に忠実な」の意味を有するラテン語(乙3)であるとしても,我が国において馴染みのない語であり,上記意味合いを直ちに想起させるものではない。また,「NO.」及び「555」の文字部分から「555番」程の意味合いを想起させるものの,「STATE EXPRESS」の欧文字は,「状態,国家」などを意味する英語「state」 (乙4)及び「急行電車,速達」を意味する英語「express」 (乙5)を組み合わせたものであるが,両語を組み合わせて特定の意味合いを想起させるものではない。さらに,本願図柄部分の上記以外の構成要素は,特定の客体を表してなるものとは直ちに理解できないから,特定の観念は生じない。 そうすると,本願商標の構成中,長方形の枠, 「SIGNATURE」の文字部分及び本願図柄部分は,それぞれ相互に観念上の関連性はなく,構成文字を結合して成語となるようなつながりもない。 また,本願商標のような構成においては,「SIGNATURE」の文字部分は,図柄部分とは,相当の間隔を設けて配置されているから,外観において不可分的な印象を与えるものではなく,それぞれが独立した構成部分として分離して認識されるばかりか,当該文字部分は,比較的目に着き易い上部中央に,普通の活字で極めて読み取り易く表示されているため,他の図形部分や文字部分との書体や色彩の相違等も踏まえると,看る者に対し,独立して注意をひくものである。 したがって,本願商標は,その構成中「SIGNATURE」の文字部分は,本願図柄部分を含むその他の構成要素とは,外観及び観念における関連性も乏しいもので,分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものではないから,本願商標は, 「SIGNATURE」の文字部分を含む複数の要部を含むもので,それぞれの要部に相応して二つ以上の称呼,観念が生じることになる。そして,本願商標に接する需要者は,外観上,上部に顕著に表された「SIGNATURE」の文字部分を本願商標の要部として着目して取引にあたることも十分にあるもので,当該文字部分と引用商標とを比較して商標の類否を判断すべきである。 (イ) 以上を踏まえると,本願商標は,本願図柄部分の構成文字に相応して生じる称呼及び観念に加えて,看る者に対し,独立して注意をひく要部である「SIGNATURE」の文字部分に相応して「シグナチャー」又は「シグネチャー」の称呼及び「署名,サイン」の観念をも生じる。 イ 引用商標について 引用商標は, 「SIGNATURE」の文字を標準文字で表してなるものであるから,これより,「シグナチャー」又は「シグネチャー」の称呼が生じ,「署名,サイン」の観念を生じる。 ウ 本願商標と引用商標の類否について 本願商標の要部である「SIGNATURE」の文字部分と引用商標とを比較すると,外観においては,つづりを共通にする「SIGNATURE」の文字を,いずれも大文字で表してなるもので,その書体も特段の特徴はないから,記憶に残りやすい平易な英語であることも相まって,外観上の印象において相紛らわしいものである。 そして,称呼においては,本願商標より生じる「シグナチャー」及び「シグネチャー」の称呼は,引用商標より生じる称呼と共通にするものであるから,称呼において相紛らわしい。 また,観念においては,本願商標の構成中「SIGNATURE」の文字部分に相応する「署名,サイン」の観念は,引用商標より生じる観念と共通にするものであるから,観念において相紛らわしい。 以上のとおり,本願商標と引用商標は,その要部である「SIGNATURE」の文字部分における比較において,外観,称呼及び観念のいずれにおいても相紛らわしいものである。 そして,一個の商標から二つ以上の称呼,観念が生ずる場合,一つの称呼,観念が他人の商標の称呼,観念と同一または類似であるとはいえないとしても,他の称呼,観念が他人の商標のそれと類似するときは,両商標はなお類似するものと解するのが相当であることを踏まえると,上記のとおり,本願商標の要部である「SIGNATURE」の文字部分に相応する外観,称呼及び観念が引用商標のそれらと相紛らわしく類似するものであるから,本願商標の図柄部分に相応する外観,称呼及び観念において同一又は類似であるとはいえないとしても,両商標は類似するというべきである。 (2) 本願商標と引用商標の指定商品の類否について 本件指定商品中「たばこ」は,引用商標の指定商品「たばこ」と,同一の商品である。 また,本件指定商品中「紙巻たばこ,パイプ用たばこ,たばこ製品,代用たばこ(医療用のものを除く。, ) 葉巻たばこ,シガリロ,電子たばこ,電子たばこ用液体,加熱して使用することを目的とするたばこ製品」は,主にたばこ又は電子たばこ製造業者により製造されるもので,コンビニエンスストア,専門店,オンラインストアなどを含む,たばこ・喫煙具専門小売業者により販売されるものであるから,引用商標の指定商品「たばこ」とは,通常同一営業主により製造又は販売されているもので,それらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは,同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがある。そうすると,本件指定商品中「紙巻たばこ,たばこ,パイプ用たばこ,たばこ製品,代用たばこ(医療用のものを除く。,葉巻たばこ,シガリロ,電子たばこ,電子たばこ用液体,加熱して使用する )ことを目的とするたばこ製品」は,引用商標の指定商品「たばこ」と,同一又は類似の商品である。 (3) 以上のとおり,本願商標は,引用商標と類似する商標であり,かつ,引用商標の指定商品と同一又は類似する商品について使用をするものであるから,商標法4条1項11号に該当する。 (4) 原告の主張について ア 原告は,本願商標の外観上の特徴からすると,取引者や需要者が商標の要部として認識するのは中央部分に大きく書した「NO./555/STATE EXPRESS」を含む本願図柄部分であり,SIGNATURE」 「 の欧文字部分は,外観上,出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとはいえないと主張する。 しかし, 「SIGNATURE」の文字部分は,本願図柄部分を含むその他の構成要素とは,外観及び観念の関連性も乏しいもので,分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものではないから,本願商標に接する需要者は,外観上,上部に顕著に表された「SIGNATURE」の文字部分を本願商標の要部として着目して取引することも十分にあるというべきであり,したがって,当該文字部分と引用商標とを比較して商標の類否を判断すべきである。 イ 原告は,「SIGNATURE」の英単語は,「署名,サイン」という意味に加えて, 「特徴的な,特製の,お勧めの,自慢の,とっておきの」という形容詞的な記述的意味を有しており,本願商標中の「SIGNATURE」の欧文字部分は,単に本件指定商品が「No.555 STATE EXPRESS」というブランドの「シグネチャーモデル」「シグネチャーブランド」「特徴的な銘柄」「代 , , ,表的な銘柄」「署名を入れられるほど自信のある銘柄」等であることを意味してい ,るにすぎず,その識別力はないか極めて弱いから,同欧文字部分が本願商標の要部となることはないと主張する。 しかし, 「SIGNATURE」の語は,一般的には「署名,サイン」の意味を有する英語と理解されるものであり(乙2),その片仮名表記である「シグネチャー」の語も,我が国の一般の国語辞典においては「@署名。サイン。A薬の容器に書かれている用法と注意。(乙6)の意味が紹介されているにすぎない。 」 また,原告が指摘する「シグネチャーモデル」「シグネチャーブランド」「シグ , ,ネチャーアイテム」等の使用例についても,インターネット記事情報(甲33)によると,それぞれ「著名人や芸能人の名前を付けたモデルや,その人物が使っているものと同じ特別仕様モデル」 「創業者の名前をブランド名に用いたブランド」 , ,「特徴的なアイテム」と紹介されており,共通する一貫した語義を有するものでもないばかりか, 「シグネチャー」の語単独での使用例ではなく,複合語として意味上の連想を容易にしたものだから,これらの使用例をもって,「signature」の語のみから, 「署名,サイン」以外の特定の意味合いを一般的に生じるものとは理解し難い。 したがって,本願商標の構成中「SIGNATURE」の文字部分は,それ単独では, 「署名,サイン」の意味以外に,原告主張のような意味を直ちに認識させるものではなく,その指定商品について,商品の品質を表示するような自他商品の識別標識としての機能を欠くものとはいえないから,当該文字部分を本願商標の要部ということに特段の支障はない。 ウ 原告は,本願商標の「No.555 STATE EXPRESS」は,原告が製造・販売するたばこ製品のメインブランドで,原告が約100年前から世界中で販売してきた著名なたばこ製品のブランド名であるから,本願商標に接した取引者や需要者は,この「No.555 STATE EXPRESS」を含む本願図柄部分に特に注目して取引を行っていると主張する。 しかし, 「ステート・エクスプレス・555・オリジナル」「ステート , エクスプレス 555 シグネチャー」 「ステート , エクスプレス 555 ゴールド」,「ステート エクスプレス 555 マンダリンデラックス」及び「ステート エクスプレス 555 プラチナム」は国内未発売(乙7〜11)とされており,これらの商品が免税品等として少数輸入される可能性があり得るとしても,国内における一般的な流通経路を通じて販売されているものとは理解し難く,我が国において大規模な販売実績があるとは考えにくい。 また,原告が主張する自動車レースチームのスポンサーとしての実績についても,本件審決時から25年前の1993年時点においてラリーチームのスポンサー活動をしていたことは把握できるが,どの時期までスポンサーをしていたのかや時期に応じた具体的な広告の態様が明らかではないばかりか,レースチームの活動場所も主に海外でのものであるから,我が国における一般の取引者や需要者の間における周知,著名性の向上に寄与した程度は,必ずしも明らかではない。 このように, 「No.555 STATE EXPRESS」の商標について,我が国において広く認識され,周知,著名となるに至っていると認めることはできない。 したがって,本願図柄部分は,周知,著名性の観点からしても, 「SIGNATURE」の文字部分との間において, 「『NO.555 STATE EXPRESS』の展開する『SIGNATURE』という商品シリーズ」というような観念のみが生じるような,明確かつ支配的な主従関係があるものとは直ちに看取し難く,それぞれに相応して生じる独立した自他商品識別標識としての印象が否定されるものではないから,本願商標に接する取引者や需要者は,図柄部分が併記されていたとしても, 「SIGNATURE」の文字部分も独立した要部として認識し,取引をするというべきである。 エ 原告は,本願商標は,たばこのパッケージデザインの商標であるところ,たばこパッケージは,図形や銘柄(ブランド・商標)が目立つ態様で記載され,その余の部分に品質等を表示する語が記載されるのが一般的であるから,本願商標のうち,出所識別機能を発揮するのは,メインブランドである「No.555 STATE EXPRESS」を含む本願図柄部分であり,小さく書かれた「SIGNATURE」の欧文字部分は,たばこの品質や種類を表した記述的な表記であると認識するのが自然であると主張する。 (ア) しかし,本件指定商品は, 「たばこ」以外にも「電子たばこ,電子たばこ用液体」等も含んでおり,その指定商品中「たばこ」のみの取引の実情をいう原告の主張は,本件指定商品の範囲を恣意的に限定して解釈しようとするもので,前提において誤りである。また,原告は,本件指定商品全般において,原告主張のような商慣習があることを示す証拠を提出していない。さらに,本件指定商品中「たばこ」との関係においても,その使用態様は商品パッケージデザインとしての使用に限られるものではなく,その他にも,商品そのものに付す場合や,広告,取引書類等に付す場合なども十分あり得るから,本願商標が原告主張のような使用態様に限って使用されることを前提とする主張には根拠がない。 (イ) 商品の包装の上部に,他の構成文字等からは間隔を設けて商標を顕著に表示することは,商標の表示方法として広く一般的に採択されていることが明らかであるから,本件指定商品における取引者や需要者が,包装の上部に表示された文字部分は,商標を表示したものと認識,理解することに特段の支障はなく,それに反して,その配置のみをもって品質表示であると理解する方が不自然である。 そして,たばこを含む本件指定商品と関連する商品についても,商品又はその包装の上部に,商標となり得る文字を,他の構成文字とは視覚上分離して記載する事例もある(乙12〜19)。 オ 原告は,引用商標の商標権者は,「SIGNATURE」の文字を,パッケージの上端部に,小さく記述的に使用しており,このような使用態様から見ても, 「SIGNATURE」という言葉が,市場において識別力の弱い言葉として使用されていることは明らかであると主張する。 しかし,商標の類否判断に当たり考慮することのできる取引の実情とは,その指定商品全般についての一般的,恒常的なそれを指すものであつて,単に該商標が現在使用されている商品についてのみの特殊的,限定的なそれを指すものではないところ,引用商標の現在又は特定の時点における使用態様は,恒常的かつ一般的な取引の実情を示すものでもなく,単に一時点における限定的な実情を示すにすぎないから,商標の類否を判断するに際して考慮することは適切とはいえない。 カ 原告は,本件審決は過去の審決例と矛盾すると主張する。 しかし,商標及びその類似の判断は,個別の商標をそれぞれ個別に比較して判断すべきものであるから,過去の審決例によりその判断が左右されるものではない。 キ 原告は,たばこ商品に関しては,商標の称呼のみで取引されるケースはほとんどなく,また,主要銘柄を省略して取引されることは考えられないから,本願商標において種類名を示す「SIGNATURE」の部分のみに注目して実際の取引が行われることは皆無であり,必ず,パッケージデザイン全体及び主要銘柄「No.555 STATE EXPRESS」を確認,認識して取引がされると主張する。 しかし,本件指定商品は, 「たばこ」以外の「電子たばこ,電子たばこ用液体」等も含んでおり,その指定商品中「たばこ」のみの取引の実情をいう原告の主張は,本件指定商品の範囲を恣意的に限定して解釈しようとするもので,前提において誤りである。また,原告は,本件指定商品全般において,原告主張のような商慣習があることを示す証拠を提出していない。さらに,本件指定商品中「たばこ」の販売についても,原告主張の販売経路に加えて,インターネット等の通信販売もあり得るものであり(乙20〜22),このようなインターネット通信販売では,名称から生じる称呼に基づき商品検索等もされ得る。実際に「シグネチャー」の文字で検索すると,検索結果として引用商標の商標権者の商品が表示される(乙23,24)。 したがって,本願商標と引用商標との比較において,称呼における共通性を軽視することは適切ではない。 加えて,原告の商品は,前記ウのとおり,国内における一般的な流通経路を通じて販売されているかは明らかではなく,本願商標に係る商品も,原告主張のような販売経路を経るかどうかは確かでないから,その主張自体が前提を欠くものである。 ク 原告は,「SIGNATURE」という文字を含む登録商標が,指定商品が抵触するにもかかわらず,引用商標と併存しているから,引用商標「SIGNATURE」の商標としての力が極めて弱いと主張する。 しかし,商標及びその類似の判断は,個別の商標をそれぞれ個別に比較して判断すべきものであるから,「SIGNATURE」(Signature)の文字を含む登録例が存在することにより,本願商標についての判断が左右されるものではない。 ケ 原告は, 「SIGNATURE」という言葉は,たばこ製品に好んで使用されているところ,この言葉がメインブランドとして使用されている事実はなく,記述的意味において使用されているから, 「SIGNATURE」という言葉は,独立した識別標識として機能していない旨主張する。 しかし,原告の指摘する使用例(甲22〜25)は,すべて英語で表記された海外における使用例に関するもので,国内における使用例ではないばかりか,それらの中には, 「SIGNATURE BLEND」, 「signature/BLENDS」 (甲22,23)のように, 「SIGNATURE」 (signature)の語を他の語と結合して,複合語として意味上の連想を容易にしたものも含まれているため,これらの使用例をもって,我が国の一般の取引者や需要者をして, 「SIGNATURE」の語が,単独で商品の品質を表示する語として認識されていることを示すものということはできない。 |
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当裁判所の判断
1 事実認定 後掲証拠によると,以下の各事実が認められる。 (1) 「SIGNATURE」の意味等について ア 「SIGNATURE」についての辞書の記載 各種の辞書やウェブサイトには,「SIGNATURE」の意味について,名詞としては「署名,サイン,しるし,特徴,特色,合図,薬の用法・注意」などの意味が,形容詞としては「特徴的な,典型的な,代表的な,特製の,お勧めの,とっておきの,署名を入れられるほど自信のある,上等な,優秀な,立派な」などの意味があると記載されており,また,「シグネチャーモデル」について,「著名人や芸能人の名前を付けたモデルや,その人物が使っているものと同じ特別仕様モデル」と説明されている(甲2,3,33〜35,44〜49,乙2,6)。 イ たばこ業界における「SIGNATURE」の使用状況 以下のとおり,「SIGNATURE」の文字の表示があるたばこのパッケージがウェブサイトに掲載されている。なお,これらのウェブサイトは英語で表示されている。 (ア) DUNHILL(甲22) たばこのパッケージの中央よりやや上の部分に,「DUNHILL」等の文字と図形が表示され,その直ぐ上に,小さな文字で「SIGNATURE BLEND」との文字が表示されている。 (イ) CAMEL(甲23) たばこのパッケージの最上部に「CAMEL」との文字が表示され,その直ぐ下に「signature」との文字が,上記の「CAMEL」の文字よりも若干小さく表示され,中央部やや下にらくだの図形が表示されている。 (ウ) Davidoff(甲24) 葉巻のケースの最上段に「Davidoff」との文字が表示され,その直ぐ下に「SIGNATURE」との文字が,さらにその直ぐ下に「2000」との文字が,いずれも上記の「Davidoff」の文字の半分程度の大きさで表示されている。 (エ) W.O.Larsen(甲25) パイプたばこの葉のケースの最上段に図形と「W.O.Larsen」等の文字が表示され,その直ぐ下に,円形の郭内に人の肖像が描かれ,さらにその直ぐ下に「SIGNATURE」との文字が,上記の「W.O.Larsen」より少し小さく表示されている。 ウ たばこ以外における「SIGNATURE」の使用状況 (ア) ヨネザワ楽器の開設する通信販売サイトにおいて,ドラマーのTomoyaのシグネチャーモデルのドラムスティックが販売されており,同ドラマスティックには, 「Tomoya?SIGNATURE MODEL」との記載がある(甲26)。 (イ) 「楽器のツボ」というウェブサイトにおいて,ギタリストの布袋寅泰のシグネチャーモデルのギターが紹介されており,同サイトには,「『布袋寅泰シグネチャーモデル』をご紹介します。」との記載がある(甲27)。 (ウ) 「サウウェブ」というウェブサイトにおいて,歌手の稲葉浩志のシグネチャーモデルのハーモニカが紹介されており,同サイトには,「稲葉浩志シグネチャーモデルハーモニカ『Koshi Inaba Signature Blues Harp』届いたのでレビュー」との記載がある(甲28)。 (エ) 株式会社開放倉庫の開設する通信販売サイトにおいて,プロBMXライダーであるナイジェル シルベスターのシグネチャーモデルの時計が販売されており,同サイトには,「CASIO G-SHOCK ナイジェル シルベスターシグネチャーモデル」との記載がある(甲29)。 (オ) 「Gressive」というウェブサイトにおいて,二人のトップアスリート(ウェイド・バンニーキルク,ムタズ・エサ・バルシム)のシグネチャーモデルとして,時計が紹介されている(甲30)。 (カ) 「中古ゴルフクラブ通販 ゴルフエース」という通信販売サイトにおいて,RJベティナルディのシグネチャーモデルのゴルフクラブが販売されており,同サイトには,「RJベティナルディ シグネチャーモデル1 オリジナルスチール」との記載がある(甲31)。 (キ) 「あじゃーるの『あれ?今日なにしてたっけ?』と言わないようにする!」とのウェブサイトにおいて,マイケル・ジョーダン他13名の有名なバスケットボール選手のシグネチャーモデルのバスケットシューズのロゴが紹介されており,同サイトには,「オールスターでは選手の履くバッシュも特別仕様でカッコいいのだ!!選手のバッシュを見ると各メーカーの認められたごく一部の選手にのみ作られるのが選手オリジナルモデル,通称『シグネチャーモデル』」との記載がある(甲32)。 エ 「SIGNATURE」が含まれる登録商標 たばこ等を指定商品とする登録商標のうち,「SIGNATURE」の文字を含むものとして,以下の登録商標がある(「/」は改行を示す。以下同じ。)。 (ア) 「Vogue/LA SIGNATURE」 (登録第5687251号)(甲8) (イ) 「Vogue LA SIGNATURE」 (登録第5694696号)(甲9) (ウ) 「CAF?/IQOSignature」(登録第6015014号)(甲10) (エ) 「IQOSignature」(登録第6015018号)(甲11) (オ) 「PHILIP MORRIS/SIGNATURE」 (国際登録第818763号)(甲12) (2) たばこ等のパッケージについて(甲42,54〜80,乙12〜15) ア たばこのパッケージは,概ね,目立つ位置に目立つ態様で,メインブランドを示す文字や図形が表示されており,当該メインブランドにおいては,味やタール含有量等の違いによって,複数の種類のたばこが用意されており,同種類を示す文字(以下「第2表示」という。)が,メインブランドを示す文字の直近や離れた位置に,メインブランドに比べると目立たない態様で表示されている。第2表示がパッケージの最上部に配置されているものもある。 第2表示としては, 「ORIGINAL」「GOLD」「MENTHOL」「LI , , ,GHTS」「CABIN , RED」「CASTER , WHITE」「SPARK」 , ,「Luckies」など様々なものがある。 イ 加熱式たばこのパッケージでは,たばこのメインブランドと加熱たばこのメインブランドが大きく目立つように表示され,「MENTHOL」等の文字が小さく表示されている。 電子たばこや電子たばこ用の液体のパッケージでは,たばこのメインブランドが大きく表示され,それよりは目立たない態様で「MENTHOL」等の文字が表示されている。 (3) 「No.555 STATE EXPRESS」のブランドが知られている程度について(甲4〜7,36〜40,50〜53,乙7〜11) ア 「No.555 STATE EXPRESS」のブランドは,たばこのブランドとして,100年以上前から用いられており,同ブランドのたばこは世界各国において販売されてきたが,日本においては,同ブランドのたばこは販売されていない。 イ 「No.555 STATE EXPRESS」のブランドのたばこを販売しているブリティッシュ・アメリカン・タバコ・カンパニー(以下「BAT」という。)は,1980年代からラリーレーシングチームのスポンサーとなり,平成5年から平成15年までの間は,スバル自動車株式会社(以下「スバル」という。)のレーシングチームのスポンサーとなり,同レースに使用されるスバルのレーシングカーには,「555」のロゴが大きく表示されていた。 上記のスバルのレーシングチームは,平成7年から平成9年にかけて3年連続でコンストラクターズタイトルを獲得した。 このスバルのレーシングチームの活躍の影響を受けて,ナンバープレートのナンバーを「555」とするスバル車のオーナーも現れ,奈良スバル自動車株式会社は,その開設したウェブサイトの平成28年12月16日付けの記事において,ナンバープレートのナンバーを「555」とするスバル車の意味について解説し,その解説の中で,「555」はたばこ会社のブランドであると述べ,「555」のロゴを大きく表示したスバルのレーシングカーの写真を掲載している。 また,ウェブサイトの「GAZOO」の平成29年9月28日付け及び平成30年11月3日付けの記事には, 「555」のロゴを大きく表示したスバルのレーシングカーの写真が掲載され,同ロゴは,たばこのブランドである旨の説明がされており,ウェブサイトの「Rally-M」の平成24年1月10日付けの記事には,上記の写真と同様の写真が掲載され, 「555」はたばこのブランドである旨の説明がされ, 「また『555』はF1のスポンサーでもあった?そうですが,同会社のラッキーストライクの方が有名みたいです。詳しくは分かりません..」と記載され .。 ている。 ウ 平成11年頃から,F1レースのレーシングチームであるブリティッシュアメリカンレーシング(以下「BAR」という。)が,F1レースにおいて,「555」のロゴが大きく表示されたレーシングカー及び「LUCKY STRIKE」のロゴが大きく表示されたレーシングカーを使用した。 (4) 引用商標の使用態様について(甲43) 引用商標の商標権者は,メインブランドを「GUDANG GARAM」とするたばこを販売しており,同たばこには, 「Signature」「NUANNTAR ,A」及び「Surya」等の種類がある。 上記「GUDANG GARAM」ブランドのたばこのうち,サブブランド名を「Signature」とするたばこ(以下「ガラムシグネチャー商品」という。)のパッケージには,以下のものがある。 ア 水色のパッケージに,メインブランドを示す「GUDANG/GARAM」との文字を黒色で中央下部に,「GARAM」を大きく,「GUDANG」をそれより小さく表示し,同文字の上部に多色の円形図形を,高さが「GUDANG/GARAM」と同程度で,幅が「GUDANG/GARAM」の半分程度の大きさで表示し,最上部に筆記体の「Signature」の文字を, 「GUDANG」と同程度の大きさの白色で表示し, 「Signature」の直下に「MILD」の文字を,ゴシック体の黒色で「Signature」の文字より小さく表示したもの イ 緑色のパッケージに,メインブランドを示す「GUDANG/GARAM」との文字を白色で中央下部に,「GARAM」を大きく,「GUDANG」をそれより小さく表示し,同文字の上部に多色の円形図形を,高さが「GUDANG/GARAM」と同程度で,幅が「GUDANG/GARAM」の半分程度の大きさで表示し,最上部に筆記体の「Signature」の文字を, 「GUDANG」と同程度の大きさの白色で表示し, 「Signature」の直下に「MENTHOLMILD」の文字を,ゴシック体の黒色で「Signature」の文字より小さく表示したもの 2 前記1の事実認定に基づき,本願商標と引用商標の類否について検討する。 (1) 商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,そのような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべきであり,かつ,その商品の取引の実情を明らかにしうる限り,その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。 また,複数の構成部分を組み合わせた結合商標については,各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない場合は,一つの称呼,観念が他人の商標の称呼,観念と同一又は類似であるといえないとしても,他の称呼,観念が他人の商標のそれと類似するときは,両商標はなお類似するものと解するのが相当である(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁参照)。 (2) 本願商標の外観について ア 本願商標は,前記第2の2(1)のとおりの外観であり,濃紺色で塗りつぶした縦長長方形(本願素地)内の最上部中央に「SIGNATURE」の欧文字を茶色で横書きしてなり,かなり間を空けて,同長方形内の中央部分に,図形と文字との組合せ部分(本願図柄部分)を配した構成からなる結合商標であるが,本願図柄部分は,茶色の太線で大きく表された円輪郭内(内部は黒地である。に,NO., ) 「 」「555」及び「STATE EXPRESS」の各文字(「555」の数字は,他の文字に比して大きく表されている。を茶色で三段に横書きした部分 ) (本願円図形)と,本願円図形の上部に,紋章風の図形(本願紋章部分)とをまとまりよく配した構成からなり,本願紋章部分は,王冠,円内に「SE」の文字を結合しモノグラム状に表した図形,2匹の仮想動物風の図形並びに「SEMPER」及び「FIDELIS」の各欧文字の記載がある2本のリボン状の図形等からなり,文字部分は縦長長方形と同じ濃紺色とし,それ以外を茶色としたものである。 イ 本願商標においては,本願円図形は,本願素地の縦の約4割,横の約6割の大きさで,ほぼ中央に配置され,本願円図形の直ぐ上に,本願紋章部分が配置され,本願円図形と本願紋章部分を合わせた縦の長さは,本願素地の約半分となると認められるから,本願図柄部分は,相当に目立つ態様で表示されているといえる。 一方,「SIGNATURE」の文字は,上記のとおり,本願素地の最上部中央に,本願図柄部分とは離れて表示されているところ,その大きさは,本願円図形内の「555」の文字と比較すると,横は同程度,縦は半分程度であり,「NO.」や「STATE EXPRESS」の文字より若干大きいこと,「SIGNATURE」の文字と本願図柄部分との間には間隔が空いており,その間隔は,本願図柄部分の縦の長さの約3分の1,「SIGNATURE」の文字の高さの約5倍,本願素地の縦の長さの約15%に相当するものであって,両者が一見して離れていると認識されること,「SIGNATURE」の文字は,本願円図形内の「NO.555 STATE EXPRESS」の文字や本願紋章部分と,それ自体で何らかの関連性があるとは認識されないことを総合考慮すると,「SIGNATURE」の文字は,本願図柄部分と一体のものとは認識できず,また,相応に目立つ態様で表示されているというべきである。 (3) 「NO.555 STATE EXPRESS」のブランドが知られている程度について ア ラリーチームにおける宣伝広告活動について 前記1(3)のとおり,BATは,スバルのラリーレースのレーシングチームのスポンサーとなり,同レースに使用されるスバル車には, 「555」のロゴが大きく表示されていたところ,同レーシングチームは,平成7年から平成9年にかけて3年連続でコンストラクターズタイトルを獲得したことなどからすると,その頃のラリーレースに興味を持つ者の間では, 「555」のブランドは相応に知られていたものと認められる。 しかし,日本において,上記のラリーレースに興味を持っている者がどの程度いたのかは明らかではなく,また,上記のラリーレースがテレビで放映されていたのかやその他のメディアで上記レースの状況がどの程度取り上げられていたかも明らかではないから,上記のラリーレースでの宣伝広告活動によって,日本において,「555」のブランドは,ラリーレースに興味を持つ限られた範囲の者には知られるようになったということはできるが,それ以上に,一般的に,本件指定商品の取引者や需要者(喫煙者やこれから喫煙をしようとしている成人)に知られるようになったと認めることはできない。 また,前記1(3)のとおり,BATがスバルのレーシングチームのスポンサーとなっていたのは平成15年までであるところ,本件審決時までには,上記のスポンサー契約を解消してから約15年経過していることからすると,本件審決時に近い時期においても,複数のウェブサイトで, 「555」のロゴを大きく表示したスバルのレーシングカーの写真が掲載されるなどしていることを考慮しても,本件審決の時点では,上記のラリーレースにおける宣伝広告活動の効果は限定的であるというほかない。 イ F1レースにおける宣伝広告活動について 前記1(3)のとおり,平成11年頃から,BARは, 「555」のロゴが大きく表示されたレーシングカーを使用してF1レースに参戦している。 しかし,同レースがテレビで放映されていたのかやその他のメディアで上記レースの状況がどの程度取り上げられていたかは明らかではない。また,BARは, 「LUCKY STRIKE」のロゴの表示があるレーシングカーも使用しており,ウェブサイトの「Rally-M」には, 「また『555』はF1のスポンサーでもあった?そうですが,同会社のラッキーストライクの方が有名みたいです。詳しくは分かりません」と記載されている。 これらのことからすると,F1レースにおける上記宣伝活動によって,一般的に「555」ブランドが,本件指定商品の取引者や需要者に知られるようになったとまで認めることはできない。 また, 「555」のロゴが大きく表示されたレーシングカーがいつまで使用されていたのかも明らかではない。 ウ そして,前記1(3)のとおり,「NO.555 STATE EXPRESS」のブランドのたばこは,日本において販売されていないことを併せて考慮すると,日本において,本件指定商品の取引者や需要者の間で,同ブランドが知られている程度は相当に低いものと認められる。 (4) 「SIGNATURE」の識別力について ア 前記1(1)アのとおり,「SIGNATURE」の文字は,「署名,サイン,特徴,特徴的な,典型的な,代表的な,特製の」等の多様な意味を有するところ,日本において,「署名,サイン」以外の意味が一般的に知られているとは認められないから,本件指定商品の取引者や需要者は,本願商標の「SIGNATURE」を「署名,サイン」という意味で理解するか又は「署名,サイン」という意味が本願商標においてどのような意義を有するかを理解することが困難であることから,意味を理解できないものというべきである。本願商標の「SIGNATURE」が,「シグネチャーブランド」「特徴的な銘柄」「代表的な銘柄」などと,指定商 , ,品の性質等を説明したものと認識されるとは認められない。 イ(ア) 前記1(1)イのとおり,複数のブランドのたばこのパッケージやケースに「SIGNATURE」や「signature」の文字が表示されているが,原告が提出した証拠における使用例は,四つのブランドにおける使用例のみであり,また,これらの使用例を紹介したウェブサイトは,いずれも英語で表示されたウェブサイトであり,上記のたばこが日本において販売されていると認めるに足りる証拠もないから,同使用例のみから,日本において,たばこのパッケージ等に「SIGNATURE」の文字が表示された場合に, 「SIGNATURE」の語が「シグネチャーブランド」「特徴的な銘柄」「代表的な銘柄」の意味を有すると認めるこ , ,とはできないし,他に,この事実を認めるに足りる証拠はない。 (イ) 前記1(1)ウのとおり, 「SIGNATURE」という語について, 「シグネチャーモデル」の使用例があることが認められ,また, 「シグネチャー」という語について, 「シグネチャーモデル」「シグネチャーブランド」「シグネチャーアイテ , ,ム」等の使用例があることを紹介しているウェブサイトがあることが認められる(甲33,34)ものの,このことから直ちに,日本において, 「シグネチャーモデル」,「シグネチャーブランド」「シグネチャーアイテム」等の言葉が一般的に知られて ,いると認めることはできない。 また, 「SIGNATURE」という語を,人物の名前等を併記せずに単独で使用した場合に, 「シグネチャーモデル」「シグネチャーブランド」「シグネチャーアイ , ,テム」等を意味するということはできないし,一般的に, 「SIGNATURE」という言葉から, 「シグネチャーモデル」「シグネチャーブランド」「シグネチャーア , ,イテム」等が連想されるということもできない。 (ウ) したがって,上記(ア),(イ)の使用例があることは,上記アの認定を左右するものではない。 (5) 取引の実情について ア 前記1(2)で認定したとおり,たばこのパッケージは,概ね,目立つ位置に目立つ態様で,メインブランドを示す文字や図形が表示されており,当該メインブランドにおいては,味やタール含有量等の違いによって,複数の種類のたばこが用意されており,同種類を示す文字(第2表示)が,メインブランドを示す文字の直近や離れた位置に,メインブランドに比べると目立たない態様で表示されている。 そして,第2表示としては,「MENTHOL」や「LIGHTS」といった味やタール量を連想させる文字があるものの,「CABIN RED」「CASTE ,R WHITE」「SPARK」「Luckies」等,味やタール量と関連しな , ,い文字もあり,これらの文字は,当該たばこの性質等を説明したものではなく,本件指定商品の取引者や需要者から商標として認識されるものと認められる。 このように,たばこのパッケージに表示される第2表示が,必ず商品の性質等を示す説明的な記載となることはなく,また,本件指定商品の取引者や需要者も,第2表示が,たばこの性質等を示すものと認識するとは限らないというべきである。 この点,原告は,たばこ業界においては,取引者や需要者は,メインブランドが出所識別標識であると認識していると主張するが,上記の「CABIN RED」,「CASTER WHITE」等の第2表示の例からも明らかなように,第2表示が出所識別標識として使用されることもあるのであるから,原告の上記主張は理由がない。 イ 前記1(4)のとおり,引用商標の商標権者は,メインブランドを「GUDANG GARAM」とするたばこを販売しており,同たばこには, 「Signature」「NUANNTARA」及び「Surya」等の種類があるところ,前記 ,1(4)で認定した事実からすると,上記のガラムブランドの商品のうちの「Signature」の文字は,複数の種類があるガラムブランドの商品のうちの一つの種類であるガラムシグネチャー商品を示す商標として使用されており,また,同商品のパッケージを見た取引者や需要者も,そのように認識するものと認められる。 この点,原告は,引用商標の商標権者は,引用商標を,パッケージの上端部に,小さく「Signature MILD」「Signature MENTHOL」 ,と表示して使用しており,商標として使用していない旨主張する。 しかし,前記1(4)のとおり, 「Signature」の文字は, 「MILD」や「MENTHOL MILD」とは一連に表示されておらず, 「MILD」や「MENTHOL MILD」よりも大きく,また,異なる書体や色で表示されているから,「MILD」や「MENTHOL MILD」とは独立した表示として認識されるものであって,出所識別標識として使用されているものと認められる。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 (6) 結論 ア 以上のとおり,@本願商標の外観上,「SIGNATURE」の文字は,本願図柄部分と一体のものとは認識できず,また,相応に目立つ態様で表示されていること,A日本における「NO.555 STATE EXPRESS」又は「555」のブランドが知られている程度は相当に低いこと,B本願商標の「SIGNATURE」は,「署名,サイン」という意味に理解されるか又は意味を理解できないものであって,「SIGNATURE」が「シグネチャーブランド」「特徴的 ,な銘柄」「代表的な銘柄」の意味で理解されるとは認められないこと,Cたばこの ,パッケージに表示される第2表示は,必ずしも,商品の性質等を示す説明的な記載となるとは限らないこと,D引用商標の商標権者の引用商標の使用状況を考慮し得るとしても,引用商標の商標権者は, 「Signature」の文字をたばこのパッケージにおいて,出所識別標識として表示していることを総合考慮すると,本願商標に接した者は,通常,「SIGNATURE」の文字を本願図柄部分とは独立して認識するものということができるから,同文字を本願図柄部分から分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認めることはできないというべきである。 したがって,本願商標と引用商標との類否を検討するに当たっては,「SIGNATURE」の部分を抽出して,この部分と引用商標との類否を検討し,両者が類似するときは,両商標は類似するものと解するのが相当である。 そうすると,本願商標の「SIGNATURE」の部分と引用商標とは,称呼,外観及び観念のいずれにおいても,共通するから,本願商標は,引用商標と類似する。 イ(ア) 原告は,結合商標の一部を分離,抽出して商標の類否を判断することは, 「その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合」や「それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合」などの例外的な場合に限られるべきであると主張する。 しかし,原告が挙げる上記の場合以外にも,各構成部分がそれらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない場合には,分離観察が許されると解するのが相当であり,本願商標の「SIGNATURE」の部分を抽出して商標の類否を判断することができることは上記アのとおりである。 (イ) 原告は,たばこの消費者は,店頭や自動販売機に陳列された商品のパッケージを目視し,商品の銘柄,パッケージのデザイン・色等を確認してから購入するから,たばこに関しては,商標の称呼のみで取引されるケースはほとんどないこと,たばこの購入に当たっては, 「主要銘柄」「種類名」「商品パッケージのデザ , ,イン」という三つの要素が重要となるところ,そのうち, 「主要銘柄」と「商品パッケージのデザイン」が自他商品識別標識となることからすると,本願商標において種類名を示す「SIGNATURE」の部分のみに注目して実際の取引が行われることは皆無であり,必ず,パッケージ全体のデザイン及び主要銘柄「No.555STATE EXPRESS」を確認,認識して指定商品の取引がされると主張する。 しかし,消費者が,たばこを購入するに当たって, 「SIGNATURE」に注目して購入することがないとはいえないから,原告の上記主張は理由がない。 (ウ) 原告は, 「SIGNATURE」という言葉が持つ記述的な意味は,英語を理解する者の観点からすると,ごく一般的な意味の一つであり,このようなごく普通の記述的意味の存在を無視するとすれば,国際企業の商標選択の余地を不当に妨げ,パッケージデザイン等の自由を過度に阻害すると主張する。 しかし,本願商標の登録出願が認められないのは,引用商標が登録されているにもかかわらず,SIGNATURE」 「 の文字を,本願図柄部分とは独立した態様で,かつ,相応に目立つ態様で表示していることなど,上記アで判示した諸事情を総合考慮した結果であり,国際企業の商標選択の余地を不当に妨げ,パッケージデザイン等の自由を過度に阻害するということはできない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 (エ) 原告は,「SIGNATURE」という文字を含む複数の登録商標が,引用商標と併存していることから, 「SIGNATURE」の部分が本願商標の独立した要部となることはない旨主張する。 前記1(1)エのとおり,たばこ等を指定商品とする登録商標には,「SIGNATURE」の文字を含むものが複数存在する。 しかし,これらの登録例では,「SIGNATURE」と他の部分との結合の態様等が本願商標とは異なっている。「SIGNATURE」の文字を含む登録商標が複数存在することから直ちに,本願商標の「SIGNATURE」の文字を本願図柄部分と分離して観察することができないことにはならないというべきである。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 (オ) 原告は,「JET」及び「Espresso」の欧文字が表示されたたばこパッケージと目される商標について,特許庁は, 「Espresso」の部分は識別標識として機能しないと判断したところ,本件審決は,上記の判断と矛盾する旨主張するが,原告が指摘する上記の事例における登録出願商標及び引用商標は,本件とは異なるから,本件審決の判断が上記事例における判断と矛盾するということはできない。 3 指定商品の類否 本件指定商品中「紙巻たばこ,たばこ,パイプ用たばこ,たばこ製品,代用たばこ(医療用のものを除く。,葉巻たばこ,シガリロ,電子たばこ,電子たばこ用液 )体,加熱して使用することを目的とするたばこ製品」は,引用商標の指定商品である「たばこ」と同一又は類似の商品である。 4 したがって,本願商標は,商標法4条1項11号に該当するから,登録を受けることができない。 |
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結論
以上の次第で,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 森義之 |
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裁判官 | 佐野信 |
裁判官 | 熊谷大輔 |