関連審決 | 無効2018-890044 |
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事件 |
平成
31年
(行ケ)
10062号
審決取消請求事件
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原告X 同訴訟代理人弁理士 杉本勝徳 内山邦彦 岡田充浩 被告有限会社テクノム 同訴訟代理人弁護士 山田勝重 山田克巳 山田博重 上岡秀行 新島由未子 同訴訟代理人弁理士 羽切正治 仲村圭代小野博喜 大木下香織 山田智重 平山巌 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2019/10/09 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は,原告の負担とする。 -1-事実及び理由第1 請求特許庁が無効2018−890044号事件について平成31年3月26日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要1 特許庁における手続の経緯等? 被告は,以下の商標(登録第5614453号。以下「本件商標」という。)の商標権者である(甲16,17)。 商標 「らくらく」(標準文字)登録出願日 平成25年4月17日登録査定日 平成25年8月12日設定登録日 平成25年9月13日指定商品 第20類「家具,机類」(2) 原告は,平成30年6月20日,本件商標について商標登録無効審判を請求した。 (3) 特許庁は,上記請求を無効2018−890044号事件として審理を行い(以下「本件審判」という。,平成31年3月26日,) 「本件審判の請求は,成り立たない。」との別紙審決書(写し)記載の審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同年4月4日,原告に送達された。 (4) 原告は,平成31年4月25日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 2 本件審決の理由の要旨本件審決の理由は,別紙審決書(写し)のとおりである。要するに,「らくらく」の文字からなる引用商標が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,原告の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものとは認めることはできず,本件商標は商標法4条1項10号に該当するものとはいえな-2-い,というものである。 3 取消事由商標法4条1項10号該当性判断の誤り第3 当事者の主張〔原告の主張〕本件審決は,原告が販売する正座用の椅子(以下「原告商品」という。)には,そのほとんどに「らくらく正座椅子」の文字が使用され,「らくらく」の文字が単独で用いられていると認められるものは1件のみであること,原告商品が「らくらく」と略称されていると認め得る事情も見いだせないことからすれば,登録出願時及び登録査定時において,引用商標は,原告の業務に係る商品を表示するものとして需要者に広く認識されていたと認めることはできないと認定した。 しかしながら,原告が原告商品に使用している「らくらく正座椅子」との標章は,「らくらく」と「正座椅子」の2つの構成部分を組み合わせた結合商標と解されるところ, 正座椅子」「 との構成部分は,原告商品の普通名称を表示するものにすぎず,当該構成部分から商品の出所識別標識としての称呼,観念は生じない。これに対し,「らくらく」との構成部分は,「正座椅子」と用語として関連するものではなく,原告商品の内容等を具体的に表すものではないから,取引者,需要者に対し,商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであり,「らくらく」の部分のみを原告の使用商標として抽出すべきである。 また,椅子や机などの家具を販売する取引者である原告と被告とが,「らくらく正座椅子」から「らくらく」が抽出されることを前提に本件審判の請求やそれ以前の折衝を遂行しており,原告が「らくらく正座椅子」と本件商標との非類似の主張を一切していないという取引の実情から見ても,「らくらく」の部分のみを原告の使用商標として抽出すべきである。 本件審決は,原告の使用商標についての誤った認定を前提に,引用商標は,原告の業務に係る商品であることを表示するものとして需要者の間に広く認識されてい-3-たものと認めることはできないとの誤った判断をしているのであるから,本件審決は取り消されるべきである。 〔被告の主張〕本件審決は,全体観察により,原告の使用する商標を不可分一体の「らくらく正座椅子」と認定したものであり,その認定に誤りはない。 原告は,「らくらく正座椅子」の「正座椅子」の部分が普通名称であるから,その部分が分離し,「らくらく」自体が使用商標であるかのように主張するが,普通名称であれば当然のごとく要部から除外されると解することはできないし,そもそも「正座椅子」が普通名称として取引者・需要者に認識されていることの立証もされていない。 また,原告が提出した証拠によっても,原告商品の取引において,需要者・取引者が「らくらく正座椅子」について「らくらく」を抽出し,取引表示として使用されていた実態は一切確認できない。 以上によれば,本件審決の認定には何ら誤りはない。 第4 当裁判所の判断1 商標法4条1項10号該当性判断の誤りについて(1) 商標の類否判断商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,そのような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべく,しかも,その商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。 (2) 認定事実証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 -4-ア 原告は,屋号「住友産業」として,正座用の椅子の販売を行っており,遅くとも昭和63年ころから原告商品を製造販売している(乙5の1)。 原告商品の販売数は,平成12年及び平成15年から平成25年で,合計74万6136個である(甲1,2)。 原告商品は,正座をする際に臀部の下に敷き,その上に腰を下ろして正座をすることにより,体重が分散され,膝にかかる負荷が小さくなるため,足の痺れや膝頭の痛みが緩和され,楽に正座をすることができるという正座補助具である(甲12の2,弁論の全趣旨)。原告は,後記の原告商品の広告等において,「足のシビレ ヒザ頭の痛みに」(甲3の2〜4),「足のシビレ ヒザ頭の悪い方に」(甲4の2〜4)などの文言を付し,足の痺れや膝頭の痛みが緩和され,楽に正座をすることができる椅子として,原告商品を宣伝広告している。 イ 原告が販売する原告商品の包装箱には,「らくらく椅子」(甲 8 の1〜4・6・7)「らくらく正座椅子」, (甲8の5)又は「らくらく二段正座椅子」(甲8の8)の文字が付されている。 ウ 広告宣伝等(ア) 平成14年1月から平成18年12月までの間に,「らくらく正座椅子」(甲3の2〜5,4の2〜14,5の1〜15,6の2〜18,7の2〜23)「らくら,く万能座椅子」(甲3の1,6の1・12,7の1・16),「らくらく万能正座椅子」(甲6の6)「らくらく椅子」, (甲7の16)との標章とともに原告商品の写真等を掲載した広告が,生活産業新聞に合計75回掲載された(甲3の1〜甲7の23)。 (イ) 平成17年6月10日発行の「2005〜2006 生活用品 品目別 企業便覧」(甲9の1) 平成22年11月10日発行の, 「生活産業企業名鑑2011」(甲9の2),平成16年4月発行の「50音別電話帳 吉野川市版2004年版テレ&パル50」(甲11)にも,「らくらく正座椅子」(甲9の1・2,11)「らく,らく万能座椅子」(甲9の2)「らくらく椅子」, (甲9の2)との標章とともに原告商品の写真等を掲載した広告が掲載された。 -5-(ウ) 原告作成の「創造する企業」と題するカタログにも,「らくらく正座椅子」との標章とともに,原告商品の写真等が掲載されている(甲10)。 (エ) NHKテレビテキスト「きょうの健康」2011年11月号において原告商品の写真が紹介され(甲12の1・2),テキスト及びNHK出版のウェブサイトにおいて,「らくらく正座いす」との標章とともに原告商品の写真等を掲載した広告が掲載された(甲12の3・4)。 (オ) 東急百貨店の1999年7月発行の折り込みチラシ(甲13の1),市民生活協同組合ならコープの平成23(2011)年6月21日発行の折り込みチラシ(甲13の2) 近鉄百貨店の平成24年3月発行の折り込みチラシ, (甲13の3),同平成24年9月の折り込みチラシ(甲13の4),小田急百貨店藤沢店の平成24年12月発行の折り込みチラシ(甲13の5),小田急百貨店町田店の平成24年12月発行の折り込みチラシ(甲13の6)においても,「らくらく椅子」との標章とともに原告商品の写真等を掲載した広告が掲載された。 (カ) アマゾンのウェブサイトには,平成19年9月18日,平成22年4月21日,平成23年9月19日に「らくらく正座椅子」との標章とともに原告商品の写真等を掲載した広告が掲載された(甲14の1〜4)。 有限会社ルーツが平成6年に作成した同年度版の総合カタログには,「らくらく椅子」との標章とともに原告商品の写真等を掲載した広告が(甲15の1),株式会社ヤマソロが平成23年に作成した総合カタログ2011には,「らくらく正座椅子」との標章とともに原告商品の写真等を掲載した広告が(甲15の2),それぞれ掲載された。 (3) 原告による引用商標の使用について前記認定事実(2)ア,ウによれば,原告は,昭和63年頃から原告商品の販売を開始し,30年以上継続して販売していることがうかがわれ,その販売数は,平成12年及び平成15年から平成25年の12年間で約75万個に上っていること,平成14年から平成18年にかけて生活産業新聞に75回にわたり,原告商品の広告-6-が掲載されたほか,各種カタログ,チラシやアマゾンのウェブサイト等にも原告商品の広告が掲載されたことが認められる。 しかしながら,原告が販売する原告商品の包装箱には,「らくらく椅子」「らくら,く正座椅子」又は「らくらく二段正座椅子」との標章が付されており,「らくらく」の文字のみが単独で使用されたものはない(前記認定事実(2)イ)。 また,原告商品の広告等には,その多くにおいて「らくらく正座椅子」との標章が付されており,「らくらく万能座椅子」「らくらく万能正座椅子」「らくらく正座い, ,す」「らくらく椅子」の標章が付されたものもあるものの,, 「らくらく」の文字のみが単独で使用されたものはない(前記認定事実(2)ウ)。 そうすると,原告の主張する引用商標「らくらく」が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,原告商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものとは認められないというべきである。 (4) 原告の主張についてア 原告は,「らくらく正座椅子」は,「らくらく」と「正座椅子」とを結合した構成から成る結合商標であるが,「らくらく」の文字部分のみが商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであるから,この部分のみを原告の使用商標として抽出すべきであると主張する。 しかし,「らくらく」は,「楽」であることを意味する語であり,足の痺れや膝頭の痛みが緩和され,楽に正座をすることができるとの原告商品の機能を表している。 また,「正座椅子」は,正座用の椅子を意味する語であり,原告商品の用途又は商品の種類そのものを表している。よって,いずれも,それぞれの文字部分のみによって出所識別標識としての機能を発揮するとはいえない。 そうすると,原告商品の表示から,「らくらく」の文字部分のみが商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとはいえず,「らくらく」の文字部分のみを要部として抽出することはできない。よって,原告の主張は採用できない。 イ また,原告は,「らくらく正座椅子」から「らくらく」を抽出しているとの取-7-引の実情に照らしても,「らくらく」の部分のみを原告の使用商標として抽出すべきであるとも主張する。 しかし,原告商品が「らくらく」と略称されているなどして,「らくらく正座椅子」から「らくらく」を抽出していることを認めるに足りる証拠はない。原告は,取引者である原告と被告が,「らくらく正座椅子」から「らくらく」を抽出していることを前提に本件審判請求やそれ以前の折衝を行っていたことをもって,「らくらく」を抽出する取引の実情があるとも主張するが,本件審判手続における当事者の主張内容をもって,「らくらく正座椅子」から「らくらく」を抽出していることが取引の実情であると認めることはできず,原告の主張は採用できない。 (5) 小括以上によれば,本件商標は,商標法4条1項10号に該当するものではない。 2 結論よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第1部裁判長裁判官 高 部 眞 規 子裁判官 小 林 康 彦裁判官 関 根 澄 子-8- |
事実及び理由 | |
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全容
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