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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成15ワ11661商標権侵害差止等請求事件 判例 商標
平成16ワ12032損害賠償請求事件 判例 商標
平成18ワ5272損害賠償請求事件 平成18ワ8460損害賠償請求事件 判例 商標
平成15ワ1521商標権侵害差止請求事件 判例 商標
平成20ワ19774商標権侵害差止等請求事件 判例 商標
関連ワード 識別力 /  役務の提供 /  先願主義 /  指定商品 /  指定役務 /  周知商標 /  周知性 /  4条1項10号 /  4条1項11号 /  不正競争の目的 /  類似性(類否判断) /  損害額 /  使用料相当額 /  権利濫用(権利の濫用) /  先使用(32条) /  役務の類似 /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  取引の実情 /  出所の混同 /  国内 /  警告 /  差止 /  ドメイン /  使用許諾 /  社団法人 /  先使用権 /  外国 /  非類似 /  ハウスマーク / 
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事件 平成 14年 (ワ) 13569号 商標権侵害差止等請求事件
平成 15年 (ワ) 2226号 商標権侵害差止請求事件
第1事件原告兼第2事件被告 株式会社学情
訴訟代理人弁護士 小松 陽一郎
同 福田 あやこ
同 宇田浩康
同 井ア康孝
同 辻村和彦
訴訟復代理人弁護士 井口 喜久治第1事件被告兼第2事件原告 株式会社ディスコ
訴訟代理人弁護士 菅原信夫
補佐人弁理士 前田均
同 西出眞吾
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2004/04/20
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 第1事件被告は、第1事件被告が運営する別紙ウエブサイト目録記載のインターネットホームページのサイトで提供する業務において、別紙標章目録2及び3記載の標章を使用してはならない。
2 第1事件被告は、第1事件原告に対し、金61万8318円及びこれに対する平成15年10月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 第1事件原告のその余の請求をいずれも棄却する。
4 第2事件原告の請求をいずれも棄却する。
5 訴訟費用は、第1・第2事件を通じてこれを3分し、その1を第1事件原告兼第2事件被告の、その余を第1事件被告兼第2事件原告の各負担とする。
6 この判決は、第2項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
1 第1事件 (1) 被告は、被告が運営する別紙ウエブサイト目録記載のインターネットホームページのウエブサイトで提供する業務において、別紙標章目録1ないし3記載の標章を使用してはならない。
(2) 被告は、原告に対し、金200万円及びこれに対する平成15年10月21日(売上高算定最終日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 第2事件 (1) 被告は、提供する求人情報提供業務において、別紙標章目録4記載の標章を使用してはならない。
(2) 被告は、原告に対し、金1169万4375円及びこれに対する平成15年12月27日(同年同月26日付け訴え変更申立書の送達日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
1 第1事件は、別紙商標目録1記載の商標権(原告商標権)の商標権者である第1事件原告兼第2事件被告(以下「原告」という。)が、別紙標章目録1ないし3記載の標章をインターネットホームページのサイトで使用する第1事件被告兼第2事件原告(以下「被告」という。)の行為は原告商標権を侵害するとして、被告に対し、商標法36条1項に基づきこれらの標章の使用の差止めを求めるとともに、損害賠償を請求している事案である。
第2事件は、別紙商標目録2記載の商標権(被告商標権)の商標権者である被告が、別紙標章目録4記載の標章をインターネットホームページのサイトで使用する原告の行為は被告商標権を侵害するとして、原告に対し、商標法36条1項に基づき同標章の使用の差止めを求めるとともに、損害賠償を請求している事案である。
2 争いのない事実等 (1) 当事者 ア 原告は、広告宣伝物の企画並びに製作、有料職業紹介事業、就職情報誌の出版、各種情報の収集・処理サービス、企業の経営管理又は企業の販売活動に関する人材育成教育の受託、各種イベントの企画・実施並びに運営管理、労務・経営コンサルタント業、労働者派遣事業法に基づく一般労働者派遣事業及び特定労働者派遣事業、企業における人材育成のための教育及び指導に関するコンサルタント業、就職相談等を目的とする株式会社である。
イ 被告は、書籍の出版並びに販売、書籍出版の請負並びに受託、産業教育の企画の請負並びに受託、学生並びに一般社会人の教養向上のための国内研修及び海外研修の企画と受託、企業の求人情報を主とする広告代理業、大学等高等教育機関の学生募集情報を主とする広告代理業、人材派遣並びに人材斡旋に関する事業等を目的とする株式会社である。
(2) 商標権 ア 原告は、別紙商標目録1記載の商標権(以下「原告商標権」といい、その登録商標を「原告商標」という。)を有している。
イ 被告は、別紙商標目録2記載の商標権(以下「被告商標権」といい、その登録商標を「被告商標」という。)を有している。
(3) 商標の類似 別紙標章目録1記載の標章(以下「被告標章1」という。)は原告商標と類似する。また、別紙標章目録4記載の標章(以下「原告標章」という。)は被告商標と類似する。
(4) 行為態様 ア 原告の行為 原告は、平成11年1月25日、ドメイン名を「CAREER-JAPAN.CO.JP」とするURL登録を行い(甲第28号証の1)、同年3月19日に原告商標を商標登録出願した上、同年4月よりインターネット上に就職情報サイト「Career-Japan」(http:-/.www.career-japan.co.jp。以下「原告サイト」という。)を立ち上げ、求人情報を提供している。原告は、原告サイトにおいて、原告標章を使用している。
イ 被告の行為 被告は、平成14年5月よりインターネット上に情報サイト「DISCO CAREER JAPAN.JP」(https:-/.www.disco-careerjapan.jp。以下「被告サイト」という。)を立ち上げた。被告は、被告サイトにおいて、平成15年3月まで被告標章1を使用し(ただし、被告は、商標としては使用していない旨主張している。)、平成14年7月以降は別紙標章目録2記載の標章(以下「被告標章2」という。)を、平成15年3月5日以降は別紙標章目録3記載の標章(以下「被告標章3」という。)も使用している(以下、被告標章1ないし3を併せて「被告標章」という。)。
3 争点 (1) 第1事件について ア 被告は、被告標章1を商標として使用していたか。
イ 被告標章2及び3は原告商標に類似するか。
ウ 被告が被告サイト上で行っている行為と原告商標権の指定役務は類似するか。
エ 原告の損害 (2) 第2事件について ア 被告商標権は無効原因を有するか。
(ア) 商標法4条1項11号 (イ) 商標法4条1項10号 イ 被告商標権に基づく権利行使は、悪意若しくは害意の登録商標権者が先使用者に対してしたものとして、権利濫用となるか。
ウ 原告に先使用権は認められるか。
エ 被告の損害
争点に関する当事者の主張
1 争点(1)ア(被告は、被告標章1を商標として使用していたか)について 【原告の主張】 被告は、被告サイトにおいて、「Careerjapan.jpは、日本で働きたい外国人を応援します。」という文章で被告標章1を使用している。上記使用態様は、被告が被告サイトで行っていた役務の提供について、自己を識別するための標章として使用しているものであり、商標として使用しているというべきである。
【被告の主張】 被告標章1はドメイン名として使用していたものであり、商標として使用していたものではない。
2 争点(1)イ(被告標章2及び3は原告商標に類似するか)について 【原告の主張】 (1) 被告標章2には、「CAREER JAPAN」に、「DISCO」及び「.JP」が付加されている。
ア 「.JP」は、トップレベルドメインを示すために通常使用される文字であり識別力を有していない。したがって、「.JP」以外の部分において類否判断がなされるべきである。
イ 「DISCO」は、いわゆるハウスマークであるが、著名性を有していない。
「DISCO」も「CAREER JAPAN」も、いずれも識別力を有しているが、両者の結合状態は弱く、構成上一体とはいえない。したがって、その一部を分離ないし抽出して、その部分が有する外観称呼又は観念により商標の類否判断が行われるべきである。
ウ 以上を踏まえ、被告標章2と原告商標を比較すると、被告標章2の「CAREER JAPAN」の部分は、原告商標と称呼及び観念を同一にし、外観においてもほぼ同一である。したがって、被告標章2と原告商標は類似する。
(2) 被告標章3は、被告標章2と比較すると、「Career」「Japan」のように頭文字以外が小文字となっているにすぎず、上記(1)と同様のことがいえる。よって、被告標章3と原告商標は類似する。
【被告の主張】 「DISCO」はサービスの提供を行う主体を表すためにサービスについて使用される企業商標すなわちハウスマークであるから、これが付してある被告標章2及び3は原告商標とは出所の観点から明確に区別でき、取引者・需要者にとって出所の混同は生じない。
したがって、被告標章2及び3と原告商標は非類似である。
3 争点(1)ウ(被告が被告サイト上で行っている行為と原告商標権の指定役務は類似するか)について 【原告の主張】 (1) 被告は、被告サイトにおいて、被告標章を使用して広告業務及び求人情報提供の業務を行っている。被告は、被告標章に係る役務は「求人情報の提供」であって、原告商標権の指定役務と類似しないと主張するが、以下のとおり、原告商標権の指定役務と被告標章に係る役務とは、同一又は類似する。
(2) 原告商標と被告標章における役務の同一性 ア 「求人広告」と「広告」の同一性 求人情報の提供には、一般的に「求人広告」と呼ばれる役務も含まれている。求人広告は、広告の一態様である。
イ 「電子計算機通信ネットワークによる広告の代理」との同一性 原告商標権の指定役務である第35類「電子計算機通信ネットワークによる広告の代理、広告文の作成」は、第35類「広告」の範疇に入る「雑誌による広告の代理 新聞による広告の代理 テレビジョンによる広告の代理 ラジオによる広告の代理」の各広告媒体を電子計算機通信ネットワークに当てはめたものである。ここには、広告業務及び広告代理業務の両者が含まれる。
被告は、被告サイトにて他企業の求人広告を掲載している。求人広告は広告に含まれるものであるから、被告サイトにて被告が行っていることは広告業務に該当し、「電子計算機通信ネットワークによる広告の代理」に該当する。
ウ 「電子計算機通信ネットワークによる広告文の作成」との同一性 被告の求人広告を掲載するための当該文言を作成する行為は、「電子計算機通信ネットワークによる広告文の作成」に該当する。
(3) 原告商標と被告標章における役務の類似性1(広告業務との比較) ア 役務類否の判断基準 役務の類否は、@提供の手段、目的又は場所が一致するかどうか、A提供に関連する物品が一致するかどうか、B需要者の範囲が一致するかどうか、C業種が同じかどうか、D当該役務に関する業務や事業者を規制する法律が同じかどうか、E同一の事業者が提供するものであるかどうかといった各基準を総合的に考慮して、その事案に固有の具体的事情を勘案し、需要者に出所の誤信が生じるおそれがあるか否かの観点から判断される。
イ 当てはめ (ア) 提供の手段、目的又は場所が一致するかどうか 今日インターネットが広く使用されている状況下において、広告業務及び求人情報提供業務とも電子計算機通信ネットワークが使用されている。そして、媒体が提供の手段であると共に場所でもあるので、提供の手段及び場所において共通している。
また、「広告」と「求人情報の提供」は、提供者(ほとんどが企業)が情報を需要者(多くは一般個人)に対して提供する点で目的を共通している。
さらに、広告業務と求人情報提供業務は、需要者の一方の広告主である企業が、広告及び求人情報の提供を依頼する際に、直接情報提供媒体に依頼し、
あるいは、広告代理店を介して依頼するという双方の形態が併存する点で共通している。
(イ) 提供に関連する物品が同一かどうか 広告業務及び求人情報の提供業務は、同様の媒体を介して情報を提供するものであるから、提供に関連する物品において共通している。
(ウ) 需要者の範囲が一致するかどうか 広告業務の需要者は一般人及び依頼者である企業である。求人情報の提供業務の需要者は、一般求職者及び依頼者である企業である。したがって、両者は需要者の範囲において共通している。
(エ) 同一の事業者が提供するものであるかどうか 業界最大手の株式会社リクルートの例などをみればわかるように、広告業務と求人情報提供業務の両方を行っている事業者が存在する。
企業が事業を展開する場合には、ノウハウの蓄積やリスクを軽減する趣旨から、隣接若しくは類似する業務から行うのが通常である。複数の企業が求人情報の提供業務のみならず広告業務若しくは広告代理業務を営んでいる事実は、両者が類似していることを示している。
(オ) 当該役務に関する業務や事業者を規制する法律が同じかどうか a 日本就職情報出版懇話会 日本就職情報出版懇話会は、昭和58年7月11日に設立された求人情報提供業者の団体であり、新規学卒に関する就職情報出版企業を会員とする。
原告・被告ともに同会に加盟している。
同会は、昭和59年11月に「広告倫理綱領及び広告掲載基準」を設定して内部規約として遵守すべきことを定めている。同基準の趣旨は、広告一般に対する規約であって、求人広告に限定されておらず、営業・商業広告においても妥当するものとなっている。
b 財団法人新聞広告審査協会 財団法人新聞広告審査協会は、昭和46年に設立認可され、消費者保護基本法の精神に則り、虚偽・誇大な広告から消費者を守ること、広告を真に生活に役立つ情報とするため広告媒体側における自主規制の強化と確立を図ること等を目的として設立された公益法人であり、広告業務、広告代理業務、求人情報提供業務を行う者が加盟している。
c 社団法人関西広告審査協会 社団法人関西広告審査協会は、昭和54年に設立認可され、関西地域の広告の内容並びにそれに関する事項の調査及び審査と審査情報の伝達により、
消費者保護基本法に則って消費者の利益を守り、かつ、広告の信用度の維持、増進を図り、社会経済の健全な発展と国民生活の向上に寄与することを目的とした社団法人である。同協会には、広告業務、広告代理業務、求人情報提供業務を行う者が加盟しており、同協会が審査する対象は、営業・商業広告に限らず、人事募集広告も含まれ、また、あらゆる広告媒体が対象となっている。
d 社団法人日本広告審査機構 社団法人日本広告審査機構は、昭和49年10月に設立され、公正な広告活動の推進を通じて、広告・表示の質的向上を図ることで、正しい企業活動の推進と消費者保護の役割を果たし、社会・経済の健全な発展と国民生活の向上に寄与することを目的としている。同機構には、広告業務、広告代理業務、求人情報提供業務を行う者が加盟しており、審査対象には、人事募集広告が含まれる。
ウ 小括 (ア) 以上のように、広告業務と求人情報提供業務は、提供の手段・目的が一致し、提供に関連する物品が一致し、需要者の範囲が一致し、同一の事業者が提供する場合があることが認められる。これらに加え、原告と被告が同種業界にあること、営業・商業広告と求人広告は、消費者・一般人からみればあくまで広告主から提供される広告として共通の認識の下に把握されること、そのため、虚偽広告及び誇大広告を防止すべく、当該業界が広告内容の規制団体を設立したり、倫理規約を規定したりすることで、消費者保護を図るように義務付けられていることからすれば、求人情報の提供の際に、広告業務において使用される同一又は類似の標章を付した場合、広告役務の取引者・需要者に同一の出所の提供に係る役務と誤認されるおそれがある。
したがって、被告の求人情報提供業務は、原告商標権の指定役務と類似するのであり、原告商標と被告標章が類似することを併せ考えれば、被告が被告サイトにおいて被告標章を使用する行為は、原告商標権を侵害することになる。
(イ) 被告は、「類似商品・役務審査基準」において、広告の代理と求人情報の提供は、類区分が同一であっても短冊が異なり、また類似群が異なるのであるから、両者の役務は類似しないと主張する。
しかしながら、商品の区分が設けられた趣旨は、同種企業が取り扱う商品をまとめて1区分とし、同区分内の商品について1つの商標権で権利設定ができるようにすることにより、無数の商標権を取得しなければならないという事態あるいは必要のない商品についての商標権を取得するという事態を回避し、商標登録出願の便宜及び出願審査上の便宜を図るところにある。また、「類似商品・役務審査基準」は、常に取引実情を反映したものに改正されることが予定されている。
現代は、人材の流動化が激しく、企業・求職者ともにより多くの情報を求めシビアに判断していく必要が生じている。企業側からすれば、求人情報の提供においても、自社に関する情報をより多く広く提供して、求職者を誘引しなければならない。そこで、営業・商業広告と求人情報の境界が不明確な場合も多くなってきている。
(4) 原告商標と被告標章における役務の類似2(広告代理業務との比較) ア 役務類否の判断基準は、前記(3)ア記載のとおりである。
イ 当てはめ (ア) 提供の手段、目的又は場所が一致するかどうか 広告代理業務は、広告企画の立案・製作のみならず、新聞・雑誌・ラジオ・テレビなどの広告媒体保有者から与えられた枠を利用して広告掲載を行う業務を含むものであり、このような業務内容からすれば広告業務と何ら手段・目的を異にするものではない。
したがって、広告代理業務と求人情報の提供業務は、提供の手段、目的又は場所が一致しているということができる。
(イ) 提供に関連する物品が一致するかどうか 広告代理業務及び求人情報の提供業務は、共に、同様の媒体を介して情報を提供するものであるから、提供に関連する物品において共通している。
(ウ) 需要者の範囲が一致するかどうか 広告代理業務の需要者は、依頼者である企業であり、求人情報の提供業務の需要者は、一般求職者及び依頼者である企業であり、後者において一般求職者を範囲に入れている点で異なるが、依頼者である企業については同様であり、両者は共通する点を有している。
(エ) 同一の事業者が提供するものであるかどうか 前記(3)イ(エ)で述べたように、1つの事業者が広告代理業、広告業務及び求人情報の提供業務を行っている例があるほか、被告自身も、求人情報の提供業務のみならず、広告代理業務を行っている。
ウ 小括 以上のように、広告代理業務と求人情報提供業務は、提供の手段・目的が一致し、提供に関連する物品が一致し、需要者の範囲につき共通点を有し、同一の事業者が提供する場合があることが認められる。
また、原告と被告が同種業界であることを加味すれば、求人情報の提供の際に、広告代理業務において使用されるのと同一又は類似の標章を付した場合、
広告代理業務の需要者に同一の出所の提供に係る役務と誤認されるおそれがある。
したがって、被告の求人情報提供業務は、原告商標権の指定役務と類似するのであり、原告商標と被告標章が類似することを併せ考えれば、被告サイトにおいて被告標章を使用する行為は、原告商標権を侵害することになる。
(5) 原告商標と被告標章における役務の類似性3(「広報活動の企画」に該当すること) 被告は、被告サイトにおいて、被告標章を使用し、求人している企業の企業情報を掲載している。そして、「外国人積極採用企業紹介」の欄では当該企業の活動等の記事を掲載、提供している。
外国人積極採用企業として掲載されている企業からすれば、企業の様々な情報を提供し、提供した情報内容により企業イメージをアップさせることができ、
さらに、外国人を積極的に採用する企業として紹介されることによって企業イメージをアップさせることができるのであるから、このような記事を記載し提供するサイトを運営することは、「広報活動の企画」に該当する。
国際分類8版を参照すると、「広報活動の企画」の指定商品又は指定役務の類区分は第35類で、かつ類似群は35A01であるから、少なくとも原告商標の指摘役務と類似群を同一にしており、役務の類似性が推定される。
したがって、被告の求人情報提供業務は、原告商標権の指定役務と類似するのであり、原告商標と被告標章が類似することを併せ考えれば、被告が自己が運営するサイトにおいて被告標章を使用する行為は、原告商標権を侵害することになる。
【被告の主張】 (1) 被告が被告標章2及び3を被告サイトで使用して求人情報提供の業務を行っていることは認めるが、広告業務を行っていることは否認する。
(2) 原告は、被告が被告サイトにおいて被告標章を使用して他企業の求人広告を掲載しており、この「求人広告」は広告に含まれるので、被告の業務は原告商標権の指定役務と同一であると主張する。しかし、被告が行っている業務である求人情報の提供は、原告商標権の指定役務と同一又は類似ではない。
指定役務の第35類に、「広告」のほかに「求人情報の提供」を別に設けている事実からすると、両者は商標法上異なる役務であって、特に「求人情報の提供」の存在意義を没却させないためにも、「求人情報の提供」が「広告」に含まれると解するのは不合理である。
被告サイトに係る業務は「広告」でも「広報活動の企画」でもなく、「求人情報の提供」そのものである。
(3) また、各種の検討の結果、役務の類否をまとめた特許庁の「類似商品・役務審査基準」では、第35類のうち「広告の代理」や「広告文の作成」は類似群コード35A01に属する一方、求人情報の提供は類似群コード42G02に属するのであって、類似群コードが異なる場合は商品又は役務は互いに非類似であるから、原告商標に係る指定役務は被告が使用している役務に類似しない。
(4)ア 役務の類否は、役務の提供の手段、目的又は場所の同一性、需要者の範囲の同一性、業種又は事業者の同一性、規制する法律の関連性、役務の提供に関連する物品の同一性等を総合的に勘案して判断することが基本である。
イ これを本件において当てはめると次のようになる。
(ア) 役務の提供の手段、目的又は場所 商標法における広告とは、第三者が広告主のために、広告主を明示して、他人を介さずに広告主の商品、サービス、アイデア等について消費者に告知、
説得することを目的とするものであるのに対し、求人情報の提供とは、他人である雇用希望主のために、雇用希望主を明示して、雇用希望主が労働者を募集することを求職者層に対し、他人を介さずに告知、勧誘する活動を行うことを目的とするものである。
すなわち、役務の提供の目的についていえば、広告は、商品、サービス、アイデア等に関する情報を消費者に対して提供するのが目的であるのに対し、
求人情報の提供は、雇用希望主が労働者を募集していることを求職者層に対して提供することを目的とするものであり、両者は提供しようとする情報の内容及び提供対象者が全く相違する。
なお、近時のインターネットの爆発的発達に鑑みれば、電子計算機通信ネットワークの使用という点で、役務の提供の手段及び場所が共通していたとしても、役務の類否判断における重要性は低い。また、インターネットが発達すればするほど、使用者は目的とする情報を得る技能に長けてくるのが通例であることから、上記役務の提供の目的が全く異なれば使用者が誤ったサイトを検索してしまうこともない。
(イ) 役務の提供に関連する物品 役務の類否において考慮される「役務の提供に関連する物品」とは、
商標法2条3項5号にいう「役務の提供の用に供する物」、すなわち、一般的な広告や求人情報の提供についていえば広告媒体として使用される新聞、雑誌などの物品(有体物)をいう。
しかしながら、本件の場合、原告商標に係る「電子計算機通信ネットワークによる広告の代理」も被告が行う求人情報の提供サービスも、インターネット上のウェブページという電子的方法を媒体としているので、役務の提供の用に供する物品(有体物)は存在せず、したがって、当該項目は役務の類否判断に用いることができない。
(ウ) 需要者の範囲 広告の需要者は広告に係る商品や役務の購買を欲する需要者であるのに対し、求人情報の提供の需要者は求職者である。したがって、両者が対象とする需要者は全く異なる。
役務の類否判断における需要者とは、役務の提供を受ける者を意味することから、「一般企業」といった広い概念の需要者層で判断するものではなく、
具体的に役務の提供を受ける層をいう。したがって、広告における依頼者及び求人情報の提供における依頼者も需要者というのなら、広告における需要者層は企業の広報部であり、求人情報の提供における需要者層は企業における人事部であって、
両需要者は全く異なる。
(エ) 事業者 事業者が同じであるからといって、役務が類似するとは限らない。
(オ) 業務や事業者を規制する法律の同一性 【原告の主張】(3)イ(オ)について反論すると、役務の類否の判断基準としての「業務や事業者を規制する法律の同一性」における「法律」とは遵守義務がある規律をいうのであって、加入義務のない団体が規定する規律をいうものではない。原告が挙げる4団体のうち、日本就職情報出版懇話会は、原告・被告とも加入しているが、同懇話会の目的は、相互啓発、意見交換及び親睦であり、加入義務のない閉鎖的な親睦団体であって、同懇話会の倫理規約が上記判断基準の「法律」に該当するものではない。他の3団体も、加入義務が課されていないから、同様である。
ウ 以上のとおり、広告の代理と求人情報の提供とは、提供の目的、需要者の範囲、業種及び事業者の同一性の点で全く異なる役務、すなわち、非類似の役務であり、同一又は類似の標章を付した場合でも、両役務の取引者・需要者に同一の出所の提供に係る役務と誤認されるおそれは全くない。
エ 被告は、平成14年7月2日、求人情報の提供を含む役務を指定役務として、「DISCO CAREER JAPAN」及び「CAREER JAPAN」なる標章につき、それぞれ商標登録出願をし、いずれも平成15年1月7日付けで登録査定を受け、同年1月31日登録になった(後者が被告商標権)。このことは、特許庁が、求人情報の提供が原告商標権の指定役務とは類似しないと判断したことを示している。
4 争点(1)エ(原告の損害)について 【原告の主張】 (1)ア 被告は、企業から委託を受けて、自己が運営している被告サイトにおいて被告標章を使用し、企業の求人広告を掲載してきた。被告による求人広告の掲載は、単に不特定多数人に対して求人情報を提供するだけでなく、就職を希望する登録会員の履歴書と求人広告の掲載を委託した企業の募集内容を自動的にマッチングさせるなどの付加価値を含んでいる。また、被告は、求人広告の掲載を委託した企業に対し、「オプション企画」として「HR TALK」なる広告商品を有償で提供している。これは、求人広告を閲覧する者に対し、企業の人事担当者に対するQ&A形式で企業の概要及び募集広告を紹介する広告であるが、7社が広告掲載を被告に委託している。このようなインターネットを利用した求人広告の掲載料は、同種業界の一般的基準からして、1件当たり年間150万円を下ることはない。そうすると、被告が合計7社から広告掲載を委託されている関係では、少なくとも1年間で1050万円の売上を得ている。
イ インターネットを利用した広告掲載においては、サイトの維持費用や営業に関する経費はかかるものの、特に大規模な施設等を要するわけではなく、利益は少なくとも売上高の30パーセントを下ることはない。したがって、被告が上記の広告掲載の委託を受けたことで得た利益は、1年間で315万円となる。
ウ 以上よりすれば、被告による被告標章の使用により原告に発生した損害額は、平成14年6月21日から平成15年10月20日までの1年4か月間で420万円と推定される。
エ 被告は、被告サイトの運営による売上高が418万3189円であると主張しているが、この金額から、商標法38条2項にいう利益の算定のために控除できるのは、被告が主張する費用のうち、変動費であるホスティングサービス費用及び保守費用の合計93万5200円にすぎない。したがって、原告が、被告の利益を少なくとも150万円と主張するのは妥当である。
(2) 仮に(1)の主張が認められないとすれば、原告は、予備的に、商標法38条3項に基づく使用料相当額を損害として主張する。
原告は第三者に原告商標の使用許諾をしたことはないが、原告商標を使用して広告宣伝に多額の費用を投入し、その結果高い認知度が認められること、被告はホームページ上で被告標章を使用し、誰でも閲覧できる状態にしており、被告サイトの総称として広く被告標章を使用していること、システム開発費を除けば多くの利益を計上していることを勘案すると、原告商標の使用に対して受けるべき金額は、売上額の10パーセントが相当である。したがって、被告主張の売上高418万3189円を前提とすると、その10パーセントに当たる41万8138円が原告の受けた損害額である。
(3) 弁護士費用 50万円 【被告の主張】 (1) 被告サイトの掲載料は、3か月間で5万円ないし10万円であり、これを1年間に換算しても20万円ないし40万円である。また、原告が指摘する7社のうち6社については、被告サイト立上げ時のサービスとして掲載料を0円に設定した経緯がある。そのため、被告の平成13年10月1日以降平成15年9月30日までの売上総額は、418万3189円である。
これに対し、同時期における被告サイトの立上げ及び維持に要した経費は、ドメインネーム登録費用、システム初期開発費用、ホスティング費用、ホスティングサービス費用、システム追加開発費用、キャリアジャパン企画書の印刷費用、キャリアジャパンの新聞広告費用、広告費用、保守費用の合計920万7446円である。
したがって、被告が実際に得た利益はゼロ(赤字)である。
(2) サイトの運営において、商標の使用に対して受けるべき金額が、売上額の10パーセントであるとの主張は争う。
(3) 弁護士費用は争う。
5 争点(2)ア(被告商標権は無効原因を有するか)(ア)(商標法4条1項11号)について 【原告の主張】 被告商標権の指定役務と、原告商標権の指定役務とが、同一又は類似の役務であることについては、上記3の【原告の主張】で述べたとおりである。
したがって、被告商標は、先願に係る原告の登録商標と抵触するものであり、商標法4条1項11号に反して商標登録された登録商標であるから、無効原因を有する。被告商標権に基づく権利行使は権利濫用として許されない。
【被告の主張】 被告商標権の指定役務と原告商標権の指定役務とが、同一又類似の役務ではないことについては、上記3の【被告の主張】で述べたとおりである。
被告商標に係る指定役務は「求人情報の提供、職業のあっせん、電子計算機通信ネットワークによる求人情報の提供及び職業のあっせん」であるのに対し、原告商標に係る指定役務は「電子計算機通信ネットワークによる広告の代理、広告文の作成」であることから、両役務は非類似である。特許庁もこれと同様の判断をして、被告の商標登録出願に対して登録査定をした。
6 争点(2)ア(被告商標権は無効原因を有するか)(イ)(商標法4条1項10号)について 【原告の主張】 (1) 被告商標は、原告の業務に係る役務を表示しており、原告標章と同一又は類似の関係にある。被告商標権の指定役務は、原告の業務に係る役務と同一又は類似の関係にある。以上の点については、上記2及び3の【原告の主張】で述べたとおりである。このような場合、需要者の間で原告標章が広く認識されているとき(周知性が認められるとき)には、被告商標は、商標法4条1項10号に反して商標登録された登録商標であって無効原因を有し、被告商標権に基づく権利行使は権利濫用として許されないことになる。
(2) 原告標章の周知性について 原告は、平成10年ころから就職情報サイトの立上げを検討し、平成11年1月には「career-japan」をURL登録し、サイト名のPR活動を展開した後、
平成11年3月19日に原告商標を商標登録出願した。
原告は、原告標章を使用した原告サイトの立上げ当時から、その普及のため、様々な広告活動を行った(平成11年から平成15年3月までに原告が実施した新聞、招待状ダイレクトメール、中吊り広告、駅貼り広告にかけた費用、発行部数、配布・掲示枚数の数字は、別紙1ないし5(Career-Japan告知媒体リスト)のとおりである。)。また、原告が行っていた合同企業説明会の開催等においても原告サイトの存在を明らかにしていた。
その結果、原告サイトへの年間掲載企業数、年間登録者数は、次のとおり毎年増加し続けている。@平成11年実施の「転職就職博」への年間参加企業数は590社、年間動員数は1万505名、原告サイトへの年間掲載企業数は4488社、年間登録者数は8373名、A平成12年実施の「転職就職博」への年間参加企業数は639社、年間動員数は1万1897名、原告サイトへの年間掲載企業数は8976社、年間登録者数は1万3686名、B平成13年実施の「転職就職博」への年間参加企業数は751社、年間動員数は1万1544名、原告サイトへの年間掲載企業数は1万2824社、年間登録者数は23万659名、C平成14年実施の「転職就職博」への年間参加企業数は762社、年間動員数は1万3219名、原告サイトへの年間掲載企業数は9181社、年間登録者数は23万0790名、D平成15年実施の「転職就職博」への年間参加企業数は336社(3月末現在)、年間動員数は4538名(3月末現在)、原告サイトへの年間掲載企業数は1701社(3月末現在)、年間登録者数は7万9695名(3月末現在)である。
したがって、遅くとも平成14年6月末までには、原告標章は周知性を獲得していた。原告が原告標章を使用したのは、被告が出願する約2年半以上も前のことであり、善意であることも明らかである。
よって、被告商標は、需要者の間に広く認識されている未登録周知商標である原告標章と抵触する以上、商標法4条1項10号に反して商標登録された登録商標であり、無効原因を有することになる。被告商標権に基づく権利行使は、権利の濫用として許されない。
【被告の主張】 原告は、周知性の主張において、サイトの告知活動を、新聞、招待状ダイレクトメール、中吊り広告、駅貼り広告を通じて行ったと主張するが、このうち、招待状ダイレクトメールの送付及び中吊り広告及び駅貼り広告についての立証はない。
また、原告が周知性を立証するために提出する証拠は、いずれも「就職博」又は「転職博」と銘打った就職説明会の開催を宣伝するものであって、広告やダイレクトメールを見たり受け取ったりした者が看取するのは、主として「就職博」「転職博」という語句である。原告標章は、その片隅の目立ちにくい位置に、面積比率10パーセント程度に小さく表示されているにすぎず、しかも役務内容が明らかではない。
さらに、原告は、その広告等の回数やかけた費用等を強調する。しかし、原告が送付したというダイレクトメールの数は、東京地区、大阪地区及び名古屋地区の有効求人数及び有効求職者数のうちのわずか1パーセント程度にしかすぎない。
また、新聞広告は各地区において1年に10回程度、中吊り広告は月1回程度にすぎず、不特定多数を相手とする新聞広告、中吊り広告あるいは駅貼り広告による認知度は需要者の10パーセントにも満たない。
したがって、原告が提出する証拠では、原告標章が周知性を有していることを立証したことにならない。
7 争点(2)イ(被告商標権に基づく権利行使は、悪意若しくは害意の登録商標権者が先使用者に対してしたものとして、権利濫用となるか)について 【原告の主張】 現行商標法は先願主義を採用しているが、先願者が先使用者の存在につき悪意ないし害意の場合にまで先願主義が貫かれる必要はなく、そのような場合は先使用者の利益に優先性が認められるべきである。
原告は平成11年4月から原告標章を転職サイトに使用し、宣伝広告費用をかけて普及させてきた。原告と被告は同一業界に属しているのであるから、被告は当初からその存在を知っていた。それにもかかわらず、被告商標の使用を開始し、原告が警告した後わずか10日余り後に被告商標を出願し、それが登録されると、原告が被告の出願よりも約2年半以上前から使用し宣伝費を投入していた原告標章の使用差止めを求めてきた。
したがって、被告の、被告商標権に基づく権利行使は、悪意若しくは害意の登録商標権者が先使用者に対してした差止請求であるから、権利濫用として許されない。
【被告の主張】 被告が商標登録出願をしたきっかけは、被告サイトで被告標章を使用することが決定したからであり、被告サイトの立上げ時期がたまたま原告が通知書を送付した時期と相前後しただけである。
原告は、原告サイトにおいて求人情報の提供を行っているが、原告商標の商標登録出願をする際にその指定役務に「求人情報の提供」を指定しなかったのであるから、原告には求人情報の提供役務について商標権を取得しようとする意思がなかったとみるべきであり、この役務についての商標権取得を放棄したとみるべきである。
特許庁は役務が非類似であると判断し、また、原告には商標権を取得しようとする意思がないのであるから、原告の権利を保護する価値はない。被告の権利行使は正当である。
8 争点(2)ウ(原告に先使用権は認められるか)について 【原告の主張】 原告は、上記6の【原告の主張】記載のとおり、被告の商標登録出願前から、原告標章を使用しており、原告標章は、被告商標の商標登録出願当時、原告の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた。なお、原告に不正競争の目的がないことは、その使用経過からして明らかである。
したがって、原告は、原告標章につき先使用権(商標法32条)を有する。
【被告の主張】 原告標章が、被告商標の商標登録出願当時、原告の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたことは否認する。理由は、上記6の【被告の主張】記載のとおりである。よって、原告標章について先使用権は認められない。
9 争点(2)エ(被告の損害)について 【被告の主張】 原告サイトには、平成15年3月末現在において、年間1701社の掲載があった。1社当たりの年間掲載料は150万円である。サービス業界の基準からすれば、被告商標の使用料率については売上の0.5パーセントないし3パーセントが一般的基準である。したがって、被告商標の登録日(同年1月31日)以後、同年12月26日現在までの11か月の間に、被告は原告から被告商標の使用に対し、最も低い使用料率である0.5パーセントで算定した1169万4375円を下らない金額を受けることができたはずである。よって、被告は、同金額を被告の受けた損害として、その賠償を請求する。
【原告の主張】 被告の主張は争う。
争点に対する判断
1 争点(1)ア(被告は、被告標章1を商標として使用していたか)について (1) 被告が、平成14年5月より被告サイトを立ち上げ、同サイトにおいて平成15年3月まで被告標章1を使用していたことは、前記第2の2(4)イのとおりである。この被告標章1の使用につき、被告は、ドメイン名として使用していたものであって、商標として使用したものではないと主張する。しかし、証拠(甲第3号証)及び弁論の全趣旨によれば、被告は、被告サイトにおいて、「Careerjapan.jpは日本で働きたい外国人を応援します。」との文言を掲載していたことが認められ、また、被告サイトは、主に外国人留学生を対象として、求人事項や採用希望企業の活動内容、将来像、採用傾向等の情報を提供すること等の業務を行ってきたことが認められる。そうすると、上記使用態様は、単にドメイン名として使用するものではなく、被告標章1を自らのサービスを他のサービスと識別するための標識として使用するものであったということができる。したがって、被告は、被告サイトにおいて、被告標章1を商標として使用していたというべきである。
(2) 被告が平成15年4月以降被告標章1を使用していないことは当事者間に争いはないところ、被告が、将来再び被告標章1を使用するおそれがあることを裏付ける事実の主張立証はない。
2 争点(1)イ(被告標章2及び3は原告商標に類似するか)について (1) 原告商標は、アルファベットの大文字と小文字を組み合わせ、またハイフンでつないで横書きした、「Career-Japan」という文字標章である。これに対し、
被告標章2は、アルファベットの大文字で構成される、横書きの「DISCO CAREER JAPAN.JP」という文字標章であり、被告標章3は、アルファベットの大文字と小文字を組み合わせからなる、横書きの「DISCO Career Japan.jp」という文字標章である。
(2) そこで、原告商標と被告標章2及び3とを対比すると、まず、原告商標は、「キャリア ジャパン」との称呼が生じる。また、「経歴、職業」等を意味する「キャリア」と「日本」を意味する「ジャパン」が結合した造語と観念されると解され、「キャリア」の語が用いられていることと原告商標権の指定役務の関係から、就職、求人に関する広告等、「経歴、職業」に関係があることを想起させるといえる。
一方、被告標章2及び3のうち、「.jp」の部分は、トップレベルドメインを示すために通常使用される文字であるから、識別力を有しない。したがって、この部分を除くと、被告標章2は「DISCO CAREER JAPAN」、被告標章3は「DISCO Career Japan」となり、全体としてみると、いずれも「DISCO」の文字が冒頭にある点で原告商標と外観上異なっており、「ディスコ キャリア ジャパン」との称呼が生じる点でも原告商標と異なっている。
(3) ところで、2つ以上の語の組み合わせからなる文字商標は、全体において一体性が認められ、全体から一定の外観称呼又は観念が生ずる場合には、これを分離して要部等を観察して類否判断をすることはできない。しかし、全体の構成から一定の外観称呼又は観念が生じることがなく、又は、語の間に識別力に強弱があったり、語の中の一部が需要者に特に印象付けられたりする場合には、要部というべき一部を分離ないし抽出してその部分が有する外観称呼又は観念による商標の類否判断を行うべきである。
この点、「DISCO」は、被告の社名をアルファベットで表記したものということができるほか、証拠(甲第6号証)によれば、被告は、アルファベットの大文字で構成される横書きの「DISCO」及びカタカナで構成される横書きの「ディスコ」の文字標章を、指定役務を「求人情報の提供、就職及び再就職に関する身上相談、
生徒・学生の生活・学習・受験進路・就職に関する身上相談、職業適性検査の実施及び診断」として、平成13年4月18日に商標登録出願し、同標章は、平成14年8月30日に商標登録されたことが認められる。したがって、「DISCO」の部分は、語としての識別性を有するということができる。しかしながら、「DISCO」という文字標章が、求人事項や採用希望企業の事業内容等の情報提供業務における需要者の間で被告を示すものとして認識されていたことを認めるに足りる証拠はない。
また、「DISCO」という文字と、「CAREER JAPAN」あるいは「Career Japan」とは、意味の上で関連性がなく、これらの文字の結合によって、全体から特定の観念が生ずるということもできない。そして、被告標章2及び3においては、「DISCO」はすべて大文字で表記されているのに対し、「CAREER JAPAN」(被告標章2)、「Career Japan」(被告標章3)の部分は、「C」と「J」が他の文字よりも大きな文字で記載され(被告標章2)、又は「Career」の「C」と「Japan」の「J」が大文字、その他は小文字で記載されている(被告標章3)ことからすると、外観上、「CAREER JAPAN」ないし「Career Japan」の部分は、「DISCO」という部分とは別に、一まとまりとして見ることができるものと認められる。さらに、被告の被告サイトにおける役務の内容からすれば、需要者においては、一連に称呼するにはいささか冗長な「DISCO CAREER JAPAN.JP」あるいは「DISCO Career Japan.jp」の文字標章のうち、求人事項や採用希望企業の事業内容等の情報提供であることをうかがわせる「CAREER JAPAN」あるいは「Career Japan」の語に着目することも十分あるものと推認される。
以上からすれば、原告商標と被告標章2あるいは3の類否の判断においては、原告商標の「Career-Japan」と、被告標章2の要部である「CAREER JAPAN」、
被告標章3の要部である「Career Japan」とにおいて、その外観称呼又は観念による類否判断をすべきである。そして、これらは、頭文字部のみ大文字にするか、
すべてを大文字にするか、間にハイフンを入れるか否かの相違しかないから、外観称呼観念のいずれにおいても原告商標に類似するものということができる。
(4) 被告は、「DISCO」といういわゆるハウスマークが付されている以上、需要者において出所の混同はないと主張する。しかし、「DISCO」という文字標章が求人事項や採用希望企業の事業内容等の情報提供業務における需要者の間で被告を示すものとして広く認識されてることを認めるに足りる証拠はない。したがって、「DISCO」が被告のハウスマークとして付されているとしても、この部分が特に需要者の注意を惹くとはいえないから、これが付されていることによって、需要者に出所の混同が生じないとはいえない。被告の主張は採用できない。
3 争点(1)ウ(被告が被告サイト上で行っている行為と原告商標権の指定役務は類似するか)について (1) 被告が、被告サイトにおいて、被告標章2及び3を使用して求人情報の提供業務を行っていることは、当事者間に争いがない。また、被告が、被告サイトにおいて平成15年3月までは被告標章1を商標として使用していたことは、前記1で認定したとおりである。そして、原告商標権の指定役務は、「電子計算機通信ネットワークによる広告の代理、広告文の作成」である(前記第2の2(2)ア)。一般に、広告とは、商品、サービス、情報等を、その提供者を明示して、広く第三者に告知し、その入手等に勧誘する活動をいい、広告の代理とは、そのような活動を、
広告主に代わって第三者が行うことをいうと解される。
原告は、被告が被告サイトにおいて被告標章を使用して求人情報の提供業務のみならず、広告業務を行っており、被告の業務は原告商標権の指定役務と同一又は類似する旨主張するので、以下検討する。
(2) 前記第2の2の事実(争いのない事実等)と証拠(甲第8ないし第10号証、第15ないし第20号証、第22、第23号証、第29号証、第93、第94号証、乙第9号証、第11号証、第19号証[枝番号をすべて含む場合は、その記載を省略する。以下同じ。])及び弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実が認められる。
ア 被告サイトのトップ頁には、「就職・転職」、「採用」、「株式会社ディスコについて」の項目がある。
求職者は、無料の登録手続を採った後、被告サイト上の情報を無料で入手、利用することができる。
被用者を募集しようとする企業は、被告に依頼し、被告サイトに自己の情報を掲載することができる。
イ 被告サイトの「就職・転職」の頁には、被用者を募集している企業の「会社名」、「業種」、「ポジション」、「勤務地」及び「オンライン応募」が一覧できる頁がある。
また、その頁から、各会社ごとの情報が掲載された頁に移ることができる。そこには、「企業情報」欄の「企業名」「業種」「会社案内」、「グループインフォメーション」欄の「設立年月日」「資本金」「本社、支社所在地」「社員数」等、「募集要項」欄の「職種」「勤務地」「給与」「職務内容」「選考方法」等、「採用基準」欄の「資格内容」「志願者状況」「対象職種」「職歴年数」「専攻」「学位」「言語スキル」等の各項目が設定されており、各会社のそれぞれの情報が掲載されている。
この中で、「企業情報」欄の「会社案内」には、「今後の事業展開において活躍フィールドはどんどん広がっていきます」、「国内市場・北米市場はもとより、ヨーロッパ・発展途上国を含めて、目標とする世界1MT専門メーカーを実現していきます」などといった、採用基準の枠にとらわれない、当該企業の今後の展望、目標、それに伴う採用傾向等が記載されている。
ウ 被告サイトの「採用」の頁においては、「外国人を雇用する」の表題の下、「HR Talk-外国人を雇用している企業のインタビュー」と題して、7社の名称が挙げられている。
各社ごとの頁には、「東アジアでナンバー1をめざす」等インタビュー記事の中の一節などが冒頭に挙げられ、「化学商品を次々とマーケットに送り出している」等の簡単な会社紹介や、「海外マーケットで一部商品が成熟化するなか、
商品の起爆剤となるのは『発展途上の10億人市場』である中国だ。『このマーケットを制する企業こそが21世紀を制する』を標語に、着々と有力な外国人採用に入っている。採用の対象は『ずばりマーケティング』。人事担当者の狙いも理路整然としている。」等の前文を置いて、採用内容、採用実績、会社業績、事業目標、
外国人採用についての採用傾向等を、人事担当者と聞き手とのインタビュー形式の記事にして掲載している。
エ 被告の事業内容には、中途採用等の広告の取扱いや各種代理店業務が含まれている(甲第15号証)。また、被告は、法人の申告所得のランキング表において、「広告代理」「宣伝制作サービス」「情報処理・ソフトウエア」「情報サービス他」等の分類の中で、「広告代理」に分類されている(甲第19、第20号証)。
オ 効率的に人材を確保するために、特に学生の採用については、企業のイメージ作りや企業に対する理解度をアップさせるような広報の重要性を指摘されることがあり、そのような広報としては、現在の活動目的、将来像、社会への貢献状況、企業理念を明らかにし、求めている人材像を明確に具体的に打ち出すものが想定されていること、そのような広報の作成においては、「アイデアや専門知識で勝負している就職情報会社と上手につきあうことは多くのプラスがある。」、就職情報会社は、「企業を客観的に見ることができ、新鮮な目で自社の魅力を新発見してくれる可能性があ」り、「種々の表現技術を持っており、現代の学生達の価値観に併せた求人ツールを企画することができる」などとされている(甲第29号証)。
カ 従来より、新聞においては、「人事募集広告」あるいは「求人広告」と称される欄が存在し、この欄には、募集する事業者名、連絡先、募集する職種、労働条件等が記載されており、同一の文字が配置されるだけのものもあれば、強調したい部分の文字の大きさや太さを変えたり、勧誘的文言が付加されたりすることもある(甲第9、第10号証)。
キ 広告ないし広告代理業と求人情報提供業務を同一の事業主が行う例がある(公知の事実)。
(3) 一定の役務に商標が使用される場合に、それが商標権の侵害といえるためには、当該商標が登録商標の指定役務と同一又は類似の役務に使用されることが必要であるところ(商標法25条37条1号参照)、役務が類似するか否かは、両者の役務に同一又は類似の商標を使用したときに、当該役務の取引者ないし需要者に同一の営業主の提供に係る役務と誤認されるおそれがあるか否かによって決すべきであると解するのが相当である。そして、この類否の判断に当たっては、取引の実情を考慮すべきであり、具体的には、役務の提供の手段、目的又は場所が一致するかどうか、提供に関連する物品が一致するかどうか、需要者の範囲が一致するかどうか、業種が同じかどうかなどを総合的に判断すべきである。
ところで、商標登録出願に際しては、出願人は、指定商品又は指定役務並びに政令で定める商品及び役務の区分を記載した願書を提出しなければならず(商標法5条1項)、商標登録出願は商標の使用をする一又は二以上商品又は役務を指定して商標ごとにしなければならず(同法6条1項)、この指定は、政令で定める商品及び役務の区分に従ってしなければならない(同条2項)とされている。商標法施行令は、商標法の上記規定を受けて、商品及び役務の区分を定めており(同施行令1条、別表)、さらに、商標法施行規則は、同施行令による商品及び役務に属する商品及び役務を定めている(同施行規則6条、別表)。商標法施行令による商品及び役務の区分及び同施行規則による区分ごとの商品及び役務の帰属は、商品及び役務の類否を判断する際に参考にされるべきであるが、商品及び役務の類似の範囲を定めるものではない(同法6条3項)。
(4) 被告は、商標法における広告とは、第三者が広告主のために、広告主を明示して、他人を介さずに広告主の商品、サービス、アイデア等について消費者に告知、説得することを目的とするものであるのに対し、求人情報の提供とは、他人である雇用希望主のために、雇用希望主を明示して、雇用希望主が労働者を募集することを求職者層に対し、他人を介さずに告知、勧誘する活動を行うことを目的とするものであると主張し、広告と求人情報の提供とでは、対象とする需要者も全く異なると主張する。「広告」とは、国語辞典によれば、「広く世間に告げ知らせること。特に、顧客を誘致するために、商品や工業物などについて、多くの人に知られるようにすること。」(広辞苑[第5版])、「@広く世の中に知らしめること。
A人々に関心を持たせ、購入させるために、有料の媒体を用いて商品の宣伝をすること。また、そのための文書類や記事。」などとされており、特に、商品の購入等を誘引するために宣伝するという意味合いで一般的に用いられることからすれば、
「求人情報の提供」との間には、被告が主張するような差異があることも否定できない。被告商標権が、先願である原告商標権の存在にもかかわらず登録になったことは、このような点が考慮されたものと考えられる。
しかし、商標権侵害の成否に関しての役務の類否の判断に当たっては、具体的な取引の実情を考慮すべきである。これを本件についてみると、前記(2)認定の事実によれば、被告は、インターネットという電子計算機通信ネットワークを利用して、採用希望企業の名称、所在地、給与、勤務時間、職務内容等の求人事項、並びに、当該企業の経営理念や活動目的、将来像、それらに適合する採用傾向等の情報を、興味・関心を惹くような構成に整理編集した上で、誰もが閲覧し得る状況に置くことによって、提供しているということができる。そして、求人情報の提供、
広告、広告代理といった業種を同一企業が営んでいる例があり、被告自身も広告代理をその業務の1つとしている(なお、商標法施行令及び同法施行規則による役務の区分において、「求人情報の提供」は、従前は、気象情報の提供と並べて第42類に分類されていたが、平成13年の改正により、「広告」と同じ第35類に移されていることも、現代では両者が近い関係にあるとされていることを示しているといえる。)。
したがって、役務の提供の手段、目的又は場所の点においても、提供に関連する物品(本件の場合は情報)においても、需要者の範囲においても、業種の同一性においても、被告が被告サイトにて行っている業務は、広告代理業務と同一ないし類似するということができる。
なお、前記のとおり、被告は被告商標権の登録を受けているが、その指定役務は「求人情報の提供、職業のあっせん」等であって、「電子計算機通信ネットワークによる広告の代理」まで含んでいるわけではないから、上記登録の事実は、
被告が行っている上記業務が原告商標権の指定役務に類似すると判断することの妨げになるものではない。
4 争点(1)エ(原告の損害)について (1) 前記認定によれば、被告が被告サイトにおいて、平成15年3月まで被告標章1を使用したこと、平成14年7月以降被告標章2を使用していること、平成15年3月5日以降被告標章3を使用していることは、原告商標権を侵害するものである。そして、被告には過失の存在が推定される(商標法39条、特許法103条)から、被告は、上記商標権侵害によって原告が被った損害を賠償する義務がある。
(2) 原告は、被告が被告サイトを運営することにより1年間で1050万円の売上を得ている旨主張するが、この事実を認めるに足りる的確な証拠はないから、
被告が自認する売上額418万3189円を損害算定の基礎とすべきである。
(3) 次に、証拠(乙第22号証の1、第23号証の1)によれば、平成13年10月1日から平成15年9月30日までに被告が被告サイトの立上げや維持管理等に要した経費は合計920万7446円になることが認められる。原告は、被告の売上から、商標法38条2項の「利益の額」を算出するために控除できるのは、
ホスティングサービス費用と保守費用の合計93万5200円にすぎないと主張するが、前掲証拠と弁論の全趣旨によれば、上記の合計920万円余の経費は、いずれも被告標章を使用した被告サイトの運営管理、すなわち侵害行為において要する費用であると認められる。
したがって、本件においては、被告の利益を認めることができないので、
原告の商標法38条2項に基づく損害の主張は失当である。
(4) 原告は、予備的に商標法38条3項に基づいて使用料相当額の損害を請求するところ、原告商標は、近時「キャリア指向」「キャリアアップ」などの用法によって就職に関して多用されるようになった「CAREER」という語句を使用するものであって、求職者層に対し一定の誘引力を発揮するものと認められること、原告と被告は競合関係にあること、その他本件に現れた諸事情を勘案すると、被告が被告標章を使用したことによって原告に対し支払うべき使用料相当額は、被告が被告サイトにより得た売上額である418万3189円に10パーセントを乗じた金額である41万8318円(円未満切り捨て)と認めるのが相当である。
(5) 上記損害の認容額、本件事案の内容、訴訟の経過、差止請求も認容することなどの事情を勘案すれば、本件において原告の損害として認めるべき弁護士費用は、20万円が相当である。
(6) よって、原告の損害は、合計61万8318円となる。
5 争点(2)ウ(原告に先使用権は認められるか)について (1) 証拠(甲第22号証、第28号証、第30ないし第33号証、第35号証ないし第92号証、乙第11号証)によれば、次の事実が認められる。
ア 原告は、平成10年ころ、転職情報をインターネット上のサイトに掲載して提供する計画を立案し、約1年にわたってその内容と名称を検討した。
名称については、外国人が検索することも念頭において、「career-japan」とし、平成11年1月25日にURL登録した。
原告は、平成11年4月に、企業側が掲載費を支払い、求職者側は自らの経歴をサイトに無料で登録するという形式を採用し、企業側から提示される求人事項や原告が就職等において必要と考えて提供する各種情報を提供する原告サイトを立ち上げた。対象者は、20歳代から30歳代の、高学歴でキャリア志向の強い男女である。原告サイトでは、原告商標のほか、「J」と「j」が異なるほかは、
原告商標とほぼ同一と言い得る原告標章が使用されている。
原告サイトでは、無料の会員登録を行った者が、求人情報の検索、企業の詳細な情報の入手、企業への問合せ、職務経歴書の登録、希望条件の合った企業が登録した場合のメールでの告知受信などの、各種サービスを受けることができる。
「お仕事検索」の頁には、「キーワード」「職種」「勤務地」及び「その他の条件」で検索ができるようになっており、検索を実行すると、その結果として、募集する会社等、募集職種、仕事内容、勤務地、応募資格等の求人事項が提示される。募集する会社等の勤務地は、東京、大阪、名古屋を中心とする各都市圏(東京の場合の千葉県、大阪の場合の兵庫県、滋賀県などを含む。)が主である。
「会員登録」の頁では、実際の会員登録手続方法が掲載されている。
「転職相談室」の頁では、転職の準備、提出書類、活動方法、内定・入社等についての一般論が、QアンドA方式で掲載されている。また、転職に当たっての業界別資格・検定試験一覧、最近の経済状況をまとめた「経済動向ニュース」などが掲載されている。
イ 原告は、原告サイトの立上げに当たって、当時の原告の顧客(全国約3000社)及び新規顧客(約7000社)に対し、原告サイトへの中途求人情報掲載を促すため、ダイレクトメール約1万通を販売促進用チラシを入れて郵送するとともに、主に東京、名古屋、大阪の各営業部にて営業社員による訪問販売を行い、
約1500枚の販売促進用チラシを配布した。また、その後も、企業に対して、原告サイトへの求人情報の掲載を促すための勧誘のチラシやダイレクトメール等を送付、配布した。
ウ 原告は、大学新卒者を対象とした合同企業説明会(約60ないし120社の企業が一同に会して行う就職説明会)を「就職博」という名称で主に東京、名古屋、大阪の3地区において、年間約30回行い、年間動員数は学生側約20万人、企業側約3000社であった。また、中途採用者向けには、「転職就職博」という名称で就職説明会を開催し、年に4回、東京、名古屋、大阪において開催している。
「就職博」や「転職就職博」を広告した新聞、ダイレクトメール、電車の中吊り広告、駅貼りポスターには、原告サイトであることを示す原告商標の「Career-Japan」及びそのアドレスを明記していた。
平成11年から平成15年5月時点までの間の就職博、転職就職博に関する新聞、招待状ダイレクトメール、交通機関の中吊り広告及び駅貼りポスターによる広告宣伝の実施状況は、別紙1ないし5(Career-Japan告知媒体リスト)記載のとおりである。
このうち、新聞における広告宣伝は、それぞれの大都市圏で100万ないし250万部発行されている全国紙である、毎日新聞、朝日新聞、讀賣新聞、日本経済新聞に掲載する形で行っている。
ダイレクトメールは,自社保有の転職希望者リストから適合地域を抽出し、転職就職博の開催3週間前に「招待状」という形式で発送したものである。
中吊り広告は,大都市圏の交通機関で行ったものである。また、駅貼りポスターは、名古屋において駅にポスターを貼ったものである。
エ 平成11年以降、転職就職博と原告サイトへの、年間参加・掲載企業数、年間動員・登録者数は、第3の6【原告の主張】(2)記載のとおりである。
オ 被告は、平成14年5月に被告サイトを立ち上げ、就職情報の提供を行っている。対象者は日本語が堪能な外国人留学生・留学経験者であり、平成15年12月末現在までの間に約3700名の外国人が会員登録を行い、約約80社以上の企業がこれを利用している。
被告は、被告サイト立上げ前に、外国人留学生の採用イベント「ジャパン・ジョブ・フェア」を過去14年にわたり行ってきた。その間の参加企業総数は358社、来場者総数は1万5650人である。
カ 原告は、平成14年6月21日付けで、被告標章1について原告商標権に抵触する旨記載した通知書を被告に対し発送し、同通知書は、同月24日に被告に到達した。
被告は、平成14年7月2日に被告商標を出願し、同商標は平成15年1月31日に登録された。
(2)ア 前記(1)認定の事実によれば、原告は、被告商標が出願されるより約2年半前から、20歳代から30歳代の高学歴の男女を対象とし、東京、大阪あるいは名古屋を中心とする地域に所在する企業の求人事項を、原告標章を使用した原告サイトにおいて掲載しており、そのことは原告サイト立上げ以降原告が打ち出した広告等により、徐々に東京、大阪あるいは名古屋を中心とする地域において認識されるに至っていたということができる。そして、被告商標出願時には、原告標章は、インターネット上で求人事項の掲載等を行う原告の役務を示すものとして、東京、大阪あるいは名古屋を中心とする地域において、就職情報に関心を持つ需要者層の間で広く認識されていたと認めるのが相当である。したがって、原告商標は、
商標法32条1項所定の周知性の要件を満たすものというべきである。
そして、原告の原告標章の使用態様や時期、被告商標の使用態様やその時期等に照らせば、原告標章の使用は不正競争の目的に出たものではないということができる。
イ よって、原告は、商標法32条1項に基づき先使用による原告標章の使用をする権利を有するということができる。
(3)ア これに対し、被告は、その費用からしても、掲載企業数や登録者数からしても、周知性を獲得したと認めることはできないと主張し、あるいは原告の行った広告等は「就職博」「転職就職博」の広告宣伝であって、原告サイトやその内容を知らしめるものではなかったと主張する。そして、これを裏付ける証拠として、
広告費50億円を計上するも宣伝効果がなかったとの求人情報誌出版関係者への聞取りの結果を記載した報告書(乙第16号証)や、東京、大阪、名古屋等を含む全国の有効求人、有効求職、有効求人倍率等が掲載された文書(乙第17号証)を提出する。
イ しかしながら、乙第16号証は、株式会社リクルートが既に発行していた求人情報誌の対抗商品として創刊された求人情報誌について、「結果的には期待したほどの効果があったとはいえない」と述べているのみで、その結論の前提として、若者向けの雑誌の注目度は高く、宣伝効果はかなりのものだったが、ライバル媒体も宣伝広告費の上積みを図ったことを指摘している。
また、乙第17号証は、年代、学歴等を問わない求職者数等の統計であるところ、原告が対象者とし、したがって、掲載企業が募集対象として念頭においている者、実際に登録する求職者は、その中でも20歳代から30歳代の高学歴の男女という限られた範囲の者にすぎない。
したがって、これらの証拠により、前記認定の結論が左右されるものではない。
ウ また、「転職就職博」等への参加企業数や年間動員数は、平成11年以降ほぼ横ばいであるのに対し、原告サイトに関しては、1年目(平成11年)に掲載した企業は4488社、登録者は8373名であったところ、翌年には掲載企業数は約2倍、登録者数は約1.6倍になり、3年目には、掲載企業数は初年の約3倍、登録者数は約27倍と増加し、この傾向は4年目以降も続いている。このことは、「転職就職博」等の広告やダイレクトメールによって、「Career-Japan」というサイトの存在を認識したことによるものと思われる。したがって、原告が周知性の立証として提出する証拠が「転職就職博」等の広告であることをもって、前記認定が覆るものではない。
6 以上からすれば、第2事件については、その余の争点につき判断するまでもなく、その請求は理由がない。
7 よって、第1事件については、原告の請求は主文第1、2項記載の限度であるからこれを認容し、その余は理由がないから棄却し、第2事件については、被告(第2事件原告)の請求はいずれも理由がないから棄却し、訴訟費用につき民事訴訟法61条64条を、仮執行宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して(ただし、主文第1項については、仮執行宣言を付するのは相当でないからこれを付さないこととする。)、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 小松一雄
裁判官 中平健
裁判官 大濱寿美
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