関連審決 | 無効2017-890065 |
---|
元本PDF | 裁判所収録の全文PDFを見る |
---|---|
元本PDF | 裁判所収録の別紙1PDFを見る |
元本PDF | 裁判所収録の別紙2PDFを見る |
元本PDF | 裁判所収録の別紙3PDFを見る |
事件 |
令和
1年
(行ケ)
10170号
審決取消請求事件
|
---|---|
原告スター バック ス・コ ーポレイ ション 訴訟代理人弁護士 窪田英一郎 乾裕介 今井優仁 中岡紀代子 本阿弥友子 鈴木佑一郎 堀内一成 訴訟代理人弁理士 加藤ちあき 被告 株式会社BullPulu (審決時の名称・株式会社J・J) 訴訟代理人弁理士 駒津啓佑 訴訟復代理人弁護士 中地充 |
|
裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2020/09/16 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 1事 実 及 び 理 由第1 請求特許庁が無効2017−890065号事件について令和元年8月21日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要1 特許庁における手続の経緯等? 被告は,以下のとおりの商標登録第5903265号商標(以下「本件商標」という。)の商標権者である(甲1,63,64)。 商標の構成 別紙1記載のとおり登録出願日 平成28年3月9日登録査定日 平成28年11月1日設定登録日 平成28年12月9日指定商品 第29類「タピオカ入りの乳製品」第30類「タピオカ入りのコーヒー,タピオカ入りのココア,タピオカ入りの菓子,タピオカ,食用タピオカ粉」指定役務 第43類「飲食物の提供」? 原告は,平成29年9月15日,本件商標について商標登録無効審判を請求した。 特許庁は,上記請求を無効2017−890065号事件として審理を行い,令和元年8月21日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし(出訴期間90日附加),その謄本は,同月29日,原告に送達された。 ? 原告は,令和2年12月19日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 2 本件審決の理由の要旨本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。 2その要旨は,@別紙2記載の登録第4806987号商標(以下「引用商標」という。甲2)と同一の構成からなる商標(以下「原告使用商標」という場合がある。)は,1996年(平成8年)から2011年(平成23年)4月に変更されるまで,我が国において原告のハウスマークとして使用されていたものであり,その当時,原告のコーヒー,ココア,乳製品,菓子等及びこれら商品の提供(以下「原告商品・役務」という場合がある。)を表示するものとして,取引者,需要者の間に広く認識されていたものであるが,そのハウスマークの変更から約5年後の本件商標の登録出願時及び登録査定時においては,その周知性を維持していたものとはいえず,原告使用商標及び原告使用商標中の「緑色の円環並びにその帯状部分に白抜きで文字及び図形が配置された構成」は,上記各時点において,原告の業務に係る商品・役務を表示するものとして,我が国における取引者,需要者の間に広く認識されていたとは認められない,A本件商標と引用商標とは,いずれも緑色の二重円環図形を有する点において共通するものの,それぞれの構成態様に照らせば,当該図形部分は,いずれもそれのみが特に強調された体裁で表されてはおらず,視覚的に強い印象をもって看取,把握されるものではないというべきであり,当該図形部分が,独立して自他商品及び自他役務の識別標識として機能し,取引に資されるとはいい難く,両商標は,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきであるから,本件商標は,商標法4条1項11号に該当しない,B上記@のとおり,原告使用商標及び原告使用商標中の「緑色の円環並びにその帯状部分に白抜きで文字及び図形が配置された構成」は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,原告の業務に係る商品・役務を表示するものとして,需要者の間に広く認識されていたものということはできず,また,上記Aのとおり,本件商標と引用商標とは,非類似の商標であり,それと同様に,本件商標と原告使用商標とは,非類似の商標であって,その類似性の程度は低いことからすると,本件商標をその指定商品及び指定役務に使3用しても,これに接する需要者をして,原告使用商標を連想,想起させることはなく,その商品及び役務を原告商品・役務,あるいは原告と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのように,その商品又は役務の出所について混同を生じさせるおそれはないから,本件商標は,同項15号に該当しないというものである。 第3 当事者の主張1 取消事由1(商標法4条1項11号該当性の判断の誤り)について? 原告の主張ア 引用商標の周知性に係る判断の誤り以下に述べるとおり,引用商標は本件商標の登録出願時及び登録査定時においても周知性を維持しており,甲11(平成29年7月28日付け「スターバックス・コーポレイションの商標における緑色円環部分の認識度に関するアンケート調査」報告書)記載のアンケート(以下「本件アンケート調査」という。)の結果は,引用商標の中では「緑色の二重の円環並びに内側の円環の帯状部分に白抜きの文字及び図形を配した構成」(以下「本件緑色円環配置構成」という。)が識別力を有することを示すものであることは明らかであるから,本件審決が,引用商標(引用商標と同一の構成からなる原告使用商標)における本件緑色円環配置構成の上記各時点における周知性を否定する判断をしたのは誤りである。 (ア) 引用商標の認知度原告のブランドである「スターバックスコーヒー」は,平成23年時点において,その店舗数が日本全国で約1000店に上り,原告の商品はコンビニエンスストアやスーパーマーケットでも販売されてきたことから,日本において代表的なコーヒーチェーンに成長していた(甲3の2,6の3ないし5,6の7,6の15ないし18,6の21,6の22)。また,平成6年の原告の日本進出以来,引用商標は,店舗の看板4や商品の容器等に付され,原告の業務に係る商品及び役務に関して集中的に使用されてきた結果(甲3の2,4,6),平成23年時点において,取引者,需要者における引用商標の認知度は,高かった。 そして,原告のハウスマークが同年4月に変更された後,本件商標の登録出願時及び登録査定時まで,わずか5年が経過したにすぎないから,その間に引用商標についての需要者の認知度が急激に低下するようなことはなく,また,原告のハウスマークの上記変更後も,引用商標は,需要者の目に触れる場面が多々あり,実際に原告の20周年記念イベントや原告の店舗で飾られている(甲7の6,13,65,66)。 さらに,原告のハウスマークの上記変更後にアメリカで行われた実験(甲18)においても,被験者の156人中110人が,原告のロゴについて,緑色を基調とした円環及び円形の図形を描いている。 以上によれば,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時においても,周知性を維持していたというべきである。 (イ) 本件アンケート調査a 引用商標は,別紙2記載の構成からなるものであり,引用商標における「緑色の二重の円環並びに内側の円環の帯状部分に白抜きの文字及び図形を配した構成」(本件緑色円環配置構成)は,それ自体は商標ではなく,単独で原告の商標として使用されることもないが,他の「STARBUCKS」の文字及び中心部の図形等の要素と同様に引用商標の要素となっている。 本件アンケート調査の概要は,本件緑色円環配置構成についての需要者の認識を測ることを目的とし,日本全国に居住する20歳から69歳までの男女552名を調査対象者として,平成29年7月21日(金)及び22日(土)の2日間にわたりインターネットを通じて行われ,質問内容は,別紙3記載の標章(以下「本件標章」という。)5の画像を見て想起する会社又は店の名前を質問し,回答を求めるというものであり,本件アンケート調査の調査票には,本件標章について「緑色円環の上部と下部に白抜きの文字が表示されていること」「上,部と下部を分かつ図形模様が表示されていること」及び「中心に絵が描かれていること」の注意事項が示されている。本件アンケート調査の結果,本件標章から原告を想起した回答者の割合は,「産業の限定なし」で77.72%,外食産業に限定すると71.20%,コーヒーショップに限定すると83.88%であった。 そして,@本件アンケート調査の調査対象者は,性別,年齢及び人口分布が実際の母集団の構成に合致するように割り付けたグループからサンプル抽出が行われ,本人又は家族がマスコミ関連業,調査業,広告代理業,コンサルティング会社に従事している者は,本件標章の原画像に職務上接する可能性があるため,調査対象者から除外されており,調査対象者の抽出方法が適切であること,A本件アンケート調査は,週末の2日間にインターネットを通じて行われたものであり,調査期間は特段短いものではないこと,B統計学上の一定の理想的な条件下で生じる標本誤差は,サンプル数が500で回答比率が20%又は80%である場合には±3.6%,サンプル数が500で回答比率が30%又は70%の場合には±4.1%であり,標本誤差の改善幅はサンプル数が大きくなるにつれて改善するところ(甲67),本件アンケート調査における552名というサンプル数は,アンケート調査の信頼性を確保するのに合理的であること,C仮に緑色の二重円環を示して調査を行ったとしても,そこから得られる結果は引用商標を含む原告の商標を日常生活で目にする需要者の実際の認識を反映するものではないから,本件緑色円環配置構成に関する需要者の認識を適切に測るためには,本件標章を対象に質問を行うべきであり,かつ上記6注意事項を示さなければならないから,本件アンケート調査の質問内容は適切であること,D本件アンケート調査は,本件商標の登録出願時及び登録査定時から1年後の平成29年に実施されたものであり,本件アンケート調査の結果は,上記各時点における需要者の認識を反映したものといえることからすると,本件アンケート調査は適切に実施されたものであり,本件アンケート調査の結果は,上記各時点における本件緑色円環配置構成の周知著名性を示すものである。 b この点に関し本件審決は,本件アンケート調査は,調査期間は2日間のみで,対象人数が552名と少なく,また,本件アンケート調査の調査票においては,調査の対象物である緑色の円環加工図形の画像(本件標章の画像)の上部に「円の中心部に絵があり,緑色の輪の部分には会社名が特定できる白い文字が表示されていました」と表記していることから,本件アンケート調査の回答者は,緑色の円環加工図形の円の中心部に絵があることや緑色の輪の部分には会社名が特定できる白い文字があることを前提にイメージし,回答することになっており,その条件の下では,本件アンケート調査が,純粋に原告使用商標中の「緑色の円環並びにその帯状部分に白抜きで文字及び図形が配置された構成」についての周知性を調査したものとはいい難い旨判断した。 しかしながら,前記aのとおり,本件アンケート調査は,引用商標(原告使用商標)の要素である本件緑色円環配置構成についての需要者の認識を測ることを目的とするものであって,引用商標中の緑色円環図形そのものについての需要者の認識を測ることを目的とするものではないし,また,調査期間は特段短いものではなく,552名というサンプル数は,アンケート調査の信頼性を確保するのに合理的であるから,本件アンケート調査は適切に実施されたものであり,本件審7決の上記判断は誤りである。 (ウ) まとめ以上によれば,引用商標における本件緑色円環配置構成は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,原告の業務に係る商品及び役務を表示するものとして,需要者の間に広く認識されており,周知著名であったものといえる。 これを否定した本件審決の判断は誤りである。 イ 本件商標と引用商標の類否判断の誤り(ア) 引用商標における本件緑色円環配置構成の識別力a 前記ア(イ)aのとおり,本件アンケート調査において80%以上の回答者が本件標章から原告を想起したという事実は,需要者は原告の商品及び役務に使用されてきた引用商標全体の中から本件緑色円環配置構成(緑色の二重の円環並びに内側の円環の帯状部分に白抜きの文字及び図形を配した構成)をその特徴的な部分として捉え,本件緑色円環配置構成が引用商標を含む原告の商標を想起するにあたっての鍵となる特徴であることを意味するものである。 したがって,本件緑色円環配置構成は,自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものであるから,引用商標において,識別力のある特徴的な部分であるといえる。 b これに対し被告は,円環部分(二重円内)に文字が配置された図形は,ありふれたものであること(甲35,37ないし39,44,47,52ないし54,57,59,60,62等)からすると,引用商標における本件緑色円環配置構成は,識別力のある特徴的部分であるとはいえない旨主張する。 しかしながら,被告が挙げる甲号各証の登録例には,緑色を基調としたものは存在せず,文字が白抜きでないもの(甲45等)も存在し,8上記登録例は,本件緑色円環配置構成と異なるものであるから,本件緑色円環配置構成がありふれたものであることの根拠とはなり得ない。 したがって,被告の上記主張は理由がない。 (イ) 本件商標と引用商標との対比a 1商標に2以上の要部を有する商標で各要部がそれぞれ独立して識別力を発揮する場合は,各要部を分離してそれぞれの有する外観,称呼及び観念等について他人の商標との類否を判断することも許されており,そして,共通の要部を持つ商標同士は全体として互いに類似するといえる(最高裁昭和38年12月5日第一小法廷・民集17巻12号1621頁参照)。 しかるところ,引用商標においては,「STARBUCKS」の文字部分が自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を果たし得るのみならず,前記(ア)aのとおり,本件緑色円環配置構成も自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものである。 このように本件緑色円環配置構成が自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を果たし得ること,本件商標は,本件緑色円環配置構成を有する点で引用商標と外観において共通することを踏まえると,本件商標においても,「BULLPULU」の文字部分のみならず,本件緑色円環配置構成が自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものである。 そして,本件緑色円環配置構成が原告を強く想起させるものであることを踏まえると,本件商標からも引用商標ひいては原告のイメージが想起され得るから,本件商標と引用商標は,観念においても同一又は類似する。 加えて,需要者はしばしば何を買うか,どこで買うかという選択を商品のパッケージの瞬間的な見た目の印象に注目して行うことが多く,9商標が使用された看板等を離れた場所から視覚によって認識し,これを目印として入店することも多いという取引の実情を踏まえると,商標の視覚的な全体構成が,文字部分の違いや中心部の図形の違いという細部における差異よりも需要者に強い影響を与えているといえる。 b 以上によれば,本件商標と引用商標は,本件緑色円環配置構成を有する点で外観において共通し,観念においても同一又は類似すること,さらに,商標の視覚的な全体構成が,文字部分の違いや中心部の図形の違いという細部における差異よりも需要者に強い影響を与えていることを考慮すると,本件商標と引用商標を本件商標の指定商品又は指定役務に使用するときは,出所の混同を生ずるおそれがあるといえるから,両商標は,全体として類似するというべきである。 したがって,本件商標と引用商標は,相紛れるおそれのない非類似の商標であるとした本件審決の判断は誤りである。 (ウ) 指定商品及び指定役務の類似本件商標の指定商品及び指定役務は,引用商標の指定商品及び指定役務中の第30類「ココア飲料,コーヒー飲料,エスプレッソコーヒー飲料,その他のコーヒー及びココア,マフィン・スコーン・クッキー・ペストリー及びその他の焼いてなる菓子及びパン,チョコレート,キャンディ,アイスクリーム,冷凍菓子,その他の菓子及びパン,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,食用粉類」及び第43類「給食の提供,その他の飲食物の提供」と原材料や需要者の範囲,業種等が共通し,同一営業主の製造・販売又は提供に係る商品・役務と誤認されるおそれがあるから,両商標の指定商品及び指定役務は類似する。 ウ 小括以上によれば,本件商標は,引用商標に類似する商標であって,その指定商品及び指定役務は引用商標の指定商品及び指定役務に類似するから,10商標法4条1項11号に該当する。 したがって,本件商標の同号該当性を否定した本件審決の判断は誤りである。 ? 被告の主張ア 引用商標の周知性に係る判断の誤りの主張に対し(ア) 引用商標の認知度について引用商標が本件商標の登録出願時及び登録査定時において周知性を維持していたといえないから,これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。 なお,甲18記載の実験からは,引用商標において取引者及び需要者から認知されていた部分は,引用商標の中央部の図形部分であることがうかがわれるにすぎない。 (イ) 本件アンケート調査について本件アンケート調査は,外食産業に関する複数の質問をした後に,「この画像はある会社が運営するお店の設備やお店で販売する商品の図柄の一部を抜き出して加工したものです。」,「元々の図柄では,円の中心部分に絵があり,緑色の輪の部分には会社名が特定できる白い文字が表示されていましたが,下記の画像では,絵の部分を白く塗りつぶし,文字の部分にはモザイク処理を施し,会社名が読み取れないようにしてあります。 との前提の記載を付した上で,」 本件標章の画像について,「この画像を見て,なんと言う会社またはお店の名前を思い浮かべましたか。」との質問をしたものである。アンケートの回答者は,上記前提の記載があるため,実在の外食産業として存在し,その中心部分に絵があり,緑色の輪の部分に会社名が特定できる白い文字が表示されているという標章を記憶の中から思い出し,その結果,原告の会社名を記載しているにすぎず,いわば連想ゲームにおけるクイズの回答をしているにすぎない。 11したがって,本件アンケート調査の結果から,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,引用商標の本件緑色円環配置構成が周知著名であったということはできない。 イ 本件商標と引用商標の類否判断の誤りの主張に対し(ア) 引用商標の本件緑色円環配置構成の識別力について前記ア(イ)のとおり,本件アンケート調査の結果は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,引用商標の本件緑色円環配置構成が周知著名であったことを示すものとはいえない。 そして,円環部分(二重円内)に文字が配置された図形は,ありふれたものであること(甲35,37ないし39,44,47,52ないし54,57,59,60,62等)からすると,引用商標における本件緑色円環配置構成は,特徴的部分であるということはできず,識別力はない。 (イ) 本件商標と引用商標の対比についてa 引用商標は,別紙2記載のとおり,緑色又は黒色の二重円内の上段に「STARBUCKS」,下段に「COFFEE」の各文字及び左右に星形の図形を白抜きで表し,二重円内の中央に,周囲の色と同一色で大きく表された抽象的に図案化された冠を着けた女性の図形を配した構成からなるところ,前記(ア)のとおり,円環部分(二重円内)に文字が配置された図形は,ありふれたものであることからすると,引用商標における本件緑色円環配置構成は,特徴的部分であるということはできないから,要部に当たらない。 また,本件商標は,別紙1記載のとおり,緑色の二重円内の上段に「BULLLPULU」,下段に「TAPIOCA」の各文字及び左右に丸印を白抜きで表し,二重円内の中央に,周囲の色とは異なる白色で写実的に大きく表された犬の図形とその犬の図形の影を左側に配12した構成からなるところ,本件商標における「緑色の二重円内の上段に「BULLLPULU」,下段に「TAPIOCA」の各文字及び左右に丸印を白抜きで表した構成も,これと同様に要部に当たらない。 したがって,引用商標における本件緑色円環配置構成が要部に当たることを前提とする原告の主張は失当である。 b 本件商標においては,「BULLLPULU」の文字部分と中央に周囲の色とは異なる白色で写実的に大きく表された犬の図形が,自他商品・役務識別標識としての機能を果たしているとみるのが相当であり,要部に当たる。そして,本件商標は,「BULLLPULU」及び「TAPIOCA」の文字から,「ブルプルタピオカ」の称呼を生じ,要部である「BULLLPULU」の文字に相応して「ブルプル」の称呼も生じ,また,文字部分から特定の観念は生じないものの,中央に周囲の色とは異なる白色で写実的に大きく表された犬の図形からは犬の観念が生じる。 一方,引用商標においては,「STARBUCKS」の文字部分が,独立して自他商品・役務識別標識としての機能を果たしているとみるのが相当であり,要部に当たる。そして,引用商標は,「STARBUCKS」及び「COFFEE」の文字から,「スターバックスコーヒー」の称呼を生じ,要部である「STARBUCKS」の文字に相応して「スターバックス」の称呼も生じ,また,「(コーヒーショップ名としての)スターバックスコーヒー」の観念が生じ,さらに,中央に周囲の色と同一色である大きく表された女性の図形から女性の観念を生じる。 そして,本件商標と引用商標とを対比すると,外観においては,中央の看者の目につく位置に,本件商標は周囲の色とは異なる白色で写実的に大きく表された犬の図形が浮き立つように配置され,引用商標13は周囲の色と同一色の抽象的に図案化された冠を着けた女性の図形が周囲と同化するように配置されており,図形同士を対比しても色合い,図形のモチーフのいずれにおいても全く異なり,また,二重円内に配置された構成文字が外観は全く異なるから,両商標は,商標全体としての外観が明らかに異なる。 次に,称呼においては,両商標は,それぞれの称呼における構成音に1つの共通点もなく,かつ構成音数も異なることから,明瞭に聴別し得るものである。 さらに,観念においては,本件商標が犬の観念が生じるのに対し,引用商標は「(コーヒーショップ名としての)スターバックスコーヒー」の観念を生じ,両者の観念に共通点はないから,相紛れるおそれがない。 そうすると,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標である。 (ウ) 指定商品及び指定役務の類似についてタピオカ入りの商品及びタピオカ入りの飲食物の提供を前提として,本件商標の指定商品及び指定役務を特定した被告と,コーヒー関連商品を中心として商品の販売などを行う原告とは,需要者の範囲が異なるから,本件商標の指定商品及び指定役務は,引用商標の指定商品及び指定役務と類似しない。 ウ 小括以上によれば,本件商標は,引用商標と非類似の商標であって,その指定商品及び指定役務は引用商標の指定商品又は指定役務に類似しないから,商標法4条1項11号に該当しない。 したがって,本件商標の同号該当性を否定した本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由1は理由がない。 142 取消事由2(商標法4条1項15号該当性の判断の誤り)について? 原告の主張ア 引用商標及びその本件緑色円環配置構成の独創性及び周知著名性引用商標は,明確なコンセプトをもって独自に創作されたものであり,その独自性は極めて高い(甲12)。 そして,前記1?ア(ウ)のとおり,引用商標における本件緑色円環配置構成は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,原告の業務に係る商品及び役務を表示するものとして,需要者の間に広く認識されており,周知著名であったものである。 イ 本件商標と引用商標の類似性本件商標と引用商標とは,それぞれの文字部分及び図形に違いがあるといえるものの,本件緑色円環配置構成を有する点で共通し,しかも,引用商標の本件緑色円環配置構成は周知著名であることからすると,本件商標を見た需要者は,「STARBUCKS」,「COFFEE」の文字部分や星形の小さな図形, (セイレン)人魚 の絵のような引用商標の各要素が,「BULLPULU」,「TAPIOCA」の文字や円形の小さい図形,犬の絵に置き換わったものにすぎず,依然として引用商標の特徴的な構成が本件商標に残っていると認識するものと考えられる。 そして,本件商標と引用商標は,外観において共通し,観念において同一又は類似することは,前記1(1)イ(イ)aのとおりである。 ウ 原告の事業展開の状況,商品・役務間の関連性,需要者の共通性等原告は,「シアトルズ・ベスト・コーヒー」,「エボリューション・フレッシュ」,「ベイ・ブレッド」,「ティーバナ」などの自らの業務に関連する子会社を多数保有し,コーヒーチェーンだけでなく,他の飲食産業にも携わっている(甲14の1ないし5)。 また,原告は,世界的に著名なコーヒーチェーンとして,コーヒーのほ15かにココアや乳製品,菓子等を自己の店舗において販売及び提供をし(甲3の3,4),これらの店舗には,テイクアウト用の商品の販売店舗やテイクアウト専門の店舗も含まれる。 そして,本件商標の指定商品及び指定役務と原告の業務に係る商品及び役務は,原材料や需要者の範囲,業種等が共通する。 エ 小括以上によれば,本件商標がその指定商品又は指定役務に使用された場合,需要者において,本件緑色円環配置構成に着目し,引用商標が連想され,原告の業務に係る商品又は役務,原告と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのように,その商品又は役務の出所について混同を生ずるおそれがあるといえるから,本件商標は,商標法4条1項15号に該当するというべきである。 したがって,本件商標の同号該当性を否定した本件審決の判断は誤りである。 ? 被告の主張前記1?イ(イ)bのとおり,本件商標は,引用商標と外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であるから,これに接する取引者,需要者が引用商標を連想又は想起することはない。 そうすると,本件商標をその指定商品又は指定役務について使用しても,取引者,需要者をして,その商品又は役務が原告又は原告と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その商品又は役務の出所について混同を生ずるおそれはない。 したがって,本件商標は商標法4条1項15号に該当しないとした本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由2は理由がない。 第4 当裁判所の判断1 取消事由1(商標法4条1項11号該当性の判断の誤り)について16? 認定事実前記第2の1の事実と証拠(甲3,4,6,7,11,13,18,65,66(枝番のあるものは枝番を含む。))及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア 原告使用商標の使用状況等(ア) 原告は,1971年(昭和46年)に米国ワシントン州シアトルにおいて「スターバックスコーヒー」の第1号店をオープンした米国法人である。 原告の子会社と日本国内の飲食業等経営会社は,平成7年10月,合弁事業としてスターバックスコーヒージャパン株式会社(以下「スターバックスコーヒージャパン」という。)を設立した。 スターバックスコーヒージャパンは,平成8年,日本国内における「スターバックスコーヒー」の第1号店を東京都内にオープンした後,全国的な店舗展開をし,平成23年3月末現在の日本国内における店舗数は912店舗(甲3の2)となり,その当時までに「スターバックスコーヒー」は,全国的なコーヒーチェーン店となった。その後も,スターバックスコーヒージャパンは,「スターバックスコーヒー」の店舗展開を進め,平成28年6月末現在の日本国内における店舗数は1198店舗(甲3の2)となった。 「スターバックスコーヒー」では,コーヒーを中心とした各種飲料,菓子,パン等を販売し,提供している(甲3の3,4)。 (イ) 別紙2記載の引用商標と同一の構成からなる原告使用商標は,1992年(平成4年)に原告のハウスマークとして採用されたものであるところ(甲18),日本国内においては,平成8年の「スターバックスコーヒー」の第1号店のオープンから,各チェーン店の店舗の看板や案内板,コーヒーカップ,プラスチック容器などの店舗内で商品を提供す17る容器等(甲4等)に付されて使用されてきた。 また,平成17年9月から,東京,神奈川,千葉及び埼玉のコンビニエンスストアで,容器に原告使用商標を付したチルドカップコーヒー(甲6の17等)の販売が開始された後,平成23年6月には,沖縄県を除く全国のコンビニエンスストアで,容器に原告使用商標を付した新商品のチルドカップコーヒーが販売されるようになった(甲3の2)。 その間の平成14年3月8日,原告は,引用商標について商標登録出願をし,平成16年10月1日,商標権の設定登録を受けた。 (ウ) 原告は,2011年(平成23年)4月,原告のハウスマークを原告使用商標(引用商標)から,緑色の円に白抜きで冠を付けた女性の図形を表した標章(以下「原告新標章」という場合がある。甲18)に変更した。原告新標章の図形は,緑色の色彩を除き,引用商標中の中央部の黒色の円に白抜きで冠を付けた女性の図形と同一の構成の図形である。 同月頃から,「スターバックスコーヒー」の各チェーン店では,店舗の看板,コーヒーカップ,プラスチック容器などの容器等に原告新標章を付して使用している(甲3の3ないし5等)他方で,原告のハウスマークの変更後においても,スターバックスコーヒー武蔵境イトーヨーカドー店(平成27年3月時点),順天堂医院店(平成28年1月時点),神戸北野異人館店(同年4月時点),名古屋伏見ATビル店(同月時点)及び国際新赤坂ビル店(同年7月時点)では,引用商標を付した店舗の看板(甲13)を使用している。 また,同年8月に東京都内で開催された原告の日本における事業展開開始20周年記念のイベント(甲65)において,引用商標を付したコーヒーカップ,ボトル,トートバックなどの商品が展示,販売された。 イ 本件アンケート調査(ア) 本件アンケート調査(甲11)の概要は,原告が「NERAエコノ18ミックコンサルティング」に依頼して,引用商標の「緑色の円環部分(ただし,文字・記号は判読不能に加工したもの)」である本件標章の著名性を検証することを目的として,日本全国に在住する20歳から69歳までの男女552名を調査対象者として,平成29年7月21日(金)から22日(土)の2日間にわたりインターネットを通じて行われたものであり,本件標章の画像を見て「スターバックス」を想起する割合を調査し,本件標章の認識度を調査するというものである。 本件アンケート調査は,GMOリサーチ株式会社の維持管理する調査パネルの中から性別・年代及び居住地域について割り付けを行った上で無作為に抽出した552名に対し,@まず,別紙3記載の本件標章の画像について,「この画像はある会社が運営するお店の設備やお店で販売する商品の図柄の一部を抜き出して加工したものです。」,「元々の図柄では,円の中心部に絵があり,緑色の輪の部分には会社名が特定できる白い文字が表示されていましたが,下記の画像では,絵の部分を白く塗りつぶし,文字部分にはモザイク処理を施し,会社名が読み取れないようにしてあります。」との説明を付して示した上で,「この画像を見て,何と言う会社またはお店の名前を思い浮かべましたか。以下の回答欄に思い浮かべた会社またはお店の名前をお書きください。わからない場合は「わからない」とお書きください。」との質問(以下「第1の質問」という。)に対する回答を求め,A次に,本件標章の画像について,「この画像は,実は,外食産業に属する会社が運営するお店の設備やお店で販売する商品の図柄の一部を抜き出して加工したものでした。」,「先程お伝えした通り,元々の図柄では,円の中心部に絵があり,緑色の輪の部分には会社名が特定できる白い文字が表示されていましたが,下記の画像では,絵の部分を白く塗りつぶし,文字部分にはモザイク処理を施し,会社名が読み取れないようにしてあることに変わりありませ19ん。」との説明を付して示した上で,「この画像を見て,外食産業に属する何と言う会社またはお店の名前を思い浮かべましたか。以下の回答欄に思い浮かべた会社またはお店の名前をお書きください。前問では「外食産業に属する」という情報はなかったので,今度は前問ではお答えいただいた内容とは違う回答をしていただいていても構いません。思い浮かんだ会社またはお店の名前を率直にお書きください。わからない場合は「わからない」とお書きください。」との質問(以下「第2の質問」という。)に対する回答を求め,Bさらに,本件標章の画像について,「この画像は,実は,あるコーヒーショップの会社が運営するお店の設備やお店で販売する商品の図柄の一部を抜き出して加工したものでした。」,「先程お伝えした通り,元々の図柄では,円の中心部に絵があり,緑色の輪の部分には会社名が特定できる白い文字が表示されていましたが,下記の画像では,絵の部分を白く塗りつぶし,文字部分にはモザイク処理を施し,会社名が読み取れないようにしてあることには変わりありません。」との説明を付して示した上で,「この画像を見て,何と言うコーヒーショップの会社またはお店の名前を思い浮かべましたか。以下の回答欄に思い浮かべた会社またはお店の名前をお書きください。前問および前々問では「コーヒーショップ」という情報はなかったので,今度は前問および前々問でお答えいただいた内容とは違う回答をしていただいていても構いません。思い浮かんだ会社またはお店の名前を率直にお書きください。わからない場合は「わからない」とお書きください。」との質問(以下「第3の質問」という。)に対する回答を求めたものである。さらに,第3の質問の後に,「あなたは過去1年間にコーヒーショップを利用しましたか。」,「あなたはこれから1年間にコーヒーショップを利用しますか。」との質問に選択式で回答を求めている。 20(イ) 本件アンケート調査の結果は,本件標章を用いる会社等の業種を限定しないでした第1の質問については,「スターバックス」と回答した者は429人(77.72%),本件標章を用いる会社名等を外食産業の中から回答させる第2の質問については,「スターバックス」と回答した者は393人(71.20%),本件標章を用いる会社名等をコーヒーショップの中から回答させる第3の質問については,「スターバックス」と回答した者は463人(83.88%)であり,いずれの質問についても,「スターバックス」と回答した者が一番多かった。 本件アンケート調査における集計対象を,コーヒーショップ需要者(回答者から,過去1年間にコーヒーショップの利用がなく,かつ,これから1年間コーヒーショップを利用する見込みのない者を除いたもの)に限定すると,「スターバックス」と回答した者の割合は,第1の質問については81.99%,第2の質問については76.34%,第3の質問については88.44%であった。 ? 引用商標に係る周知性の判断の誤りの有無について原告は,引用商標は,平成23年4月に原告のハウスマークが変更された後の本件商標の登録出願時及び登録査定時においても周知性を維持していたこと,本件アンケート調査の結果によれば,引用商標における本件緑色円環配置構成(「緑色の二重の円環並びに内側の円環の帯状部分に白抜きの文字及び図形を配した構成」)は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,原告の業務に係る商品及び役務を表示するものとして,需要者の間に広く認識されており,周知著名であったものといえるから,これを否定した本件審決の判断は誤りである旨主張するので,以下において判断する。 ア 引用商標の構成態様等について引用商標は,別紙2記載のとおり,外側から順に緑色の細い円環,白色の細い円環,緑色の太い帯状の円環及び白色の細い円環から構成され,そ21の緑色の太い帯状の円環内に左右に白抜きで星印を配し,さらに白抜きで上段に「STARBUCKS」の欧文字を下段に「COFFEE」の欧文字を円弧に沿って書してなる円環部分(以下「本件円環部分」という場合がある。)と,本件円環部分の内側の中央に黒色の円内に白抜きで,頂部に星を擁した冠を着けた女性の図形部分(以下「本件図形部分」という。)とからなる結合商標である。 原告が主張する引用商標における本件緑色円環配置構成(「緑色の二重の円環並びに内側の円環の帯状部分に白抜きの文字及び図形を配した構成」)は,引用商標中の具体的な構成部分そのものではなく,本件円環部分から抽出した上位概念化した要素としての構成及び配置の態様をいうものと解される。 イ 原告使用商標の使用状況等について(ア) 前記?アの認定事実によれば,「スターバックスコーヒー」は原告の運営する米国を発祥とするコーヒーチェーン店のブランドであること,原告は,1992年(平成4年)から2011年(平成23年)3月までの間,引用商標と同一の構成からなる原告使用商標(以下,原告使用商標と引用商標を区別せずに,「引用商標」という。)を原告のハウスマークとして使用してきたこと,原告の子会社らによって設立されたスターバックスコーヒージャパンは,日本国内において,平成8年から,「スターバックスコーヒー」ブランドのコーヒーチェーン店の店舗展開をし,平成23年3月末現在の店舗数は全国で合計912店舗であったこと,引用商標は,上記各店舗の看板や案内板,コーヒーカップ,プラスチック容器などの店舗内で商品を提供する容器等に付され,また,同年6月には,沖縄県を除く全国のコンビニエンスストアで,容器に引用商標を付したチルドカップコーヒーが販売されていたことが認められる。 上記認定事実によれば,引用商標は,平成23年3月末当時において,22原告の業務に係る商品及び役務(コーヒー,ココア,乳製品,菓子等及びこれら商品の提供。以下同じ。)を表示するものとして,日本国内において,需要者である一般消費者の間で広く認識されており,その認識の程度は著名に至っており,引用商標は著名であったことが認められる。 しかるところ,@引用商標の構成中の本件円環部分と本件図形部分とは分離観察し得るものであること,A本件円環部分のうち,緑色の太い帯状の円環内に白抜きで表された「STARBUCKS」及び「COFFEE」の文字部分全体から「スターバックスコーヒー」の称呼が生じ,また,本件円環部分は外側の緑色の細い円環と内側の白色の細い円環とによって全体の領域が明確に画されており,本件円環部分の外観は全体として記憶に残りやすいものと認められることからすると,引用商標の構成中の本件円環部分は全体として需要者に対して強い印象を与えるものといえる。 しかしながら,他方で,原告が主張する引用商標における本件緑色円環配置構成は,引用商標中の具体的な構成部分そのものではなく,本件円環部分から抽出した上位概念化した要素としての構成及び配置の態様をいうものであり,緑色の帯状の円環内における白抜きの文字が「STARBUCKS」及び「COFFEE」の文字とは異なる文字である場合や白抜きの図形が星印以外の図形であっても,本件緑色円環配置構成に含まれることになるが,引用商標に接した需要者において,このような上位概念化した要素としての構成及び配置の態様をイメージし,それが記憶に残るものと認めることは困難である。 (イ) そうすると,引用商標が平成23年3月末当時に著名であったからといってそのことから直ちに引用商標における本件緑色円環配置構成が原告の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 23ましてや,上記時点から約4年後の本件商標の登録出願時(登録出願日平成28年3月9日)及び登録査定時(登録査定日同年11月1日)において,本件緑色円環配置構成が原告の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 ウ 本件アンケート調査について(ア) 原告は,@本件アンケート調査の調査対象者の抽出方法が適切であること,A本件アンケート調査は,週末の2日間にインターネットを通じて行われたものであり,調査期間は特段短いものではないこと,B本件アンケート調査における552名というサンプル数は,アンケート調査の信頼性を確保するのに合理的であること,C仮に緑色の二重円環を示して調査を行ったとしても,そこから得られる結果は引用商標を含む原告の商標を日常生活で目にする需要者の実際の認識を反映するものではないから,本件緑色円環配置構成に関する需要者の認識を適切に測るためには,本件標章を対象に質問を行うべきであり,かつ上記注意事項を示さなければならないから,本件アンケート調査の質問内容は適切であること,D本件アンケート調査は,本件商標の登録出願時及び登録査定時から1年後の平成29年に実施されたものであり,本件アンケート調査の結果は,上記各時点における需要者の認識を反映したものといえることからすると,本件アンケート調査は適切に実施されたものであり,本件アンケート調査の結果は,上記各時点における本件緑色円環配置構成の周知著名性を示すものである旨主張する。 (イ) そこで検討するに,前記?イの認定事実によれば,本件アンケート調査は,引用商標の「緑色の円環部分(ただし,文字・記号は判読不能に加工したもの)」である本件標章の著名性を検証することを目的として,調査対象者に対し,本件標章の画像について,「ある会社」,「外24食産業に属する会社」又は「あるコーヒーショップの会社」が運営するお店の設備やお店で販売する商品の図柄の一部を抜き出して加工したものである旨,元々の図柄では,円の中心部に絵があり,緑色の輪の部分には会社名が特定できる白い文字が表示されていたが,本件標章の画像では,絵の部分を白く塗りつぶし,文字部分にはモザイク処理を施し,会社名が読み取れないようにしてある旨の説明を付して示した上で,こ「の画像を見て,何と言う会社またはお店の名前を思い浮かべましたか。 以下の回答欄に思い浮かべた会社またはお店の名前をお書きください。 わからない場合は「わからない」とお書きください。」との質問に対する回答を求めたものであることが認められる。 しかるところ,前記イ(ア)のとおり,原告が主張する引用商標における本件緑色円環配置構成は,本件円環部分から抽出した上位概念化した要素としての構成及び配置の態様をいうものであるが,引用商標に接した需要者において,このような上位概念化した要素としての構成及び配置の態様をイメージし,それが記憶に残るものと認めることは困難であることに照らすと,本件緑色円環配置構成の認識度ひいては著名性を適切に調査することは,その性質上困難を伴うものといえる。 そして,本件標章は,別紙3のとおり,外側から順に緑色の細い円環,白色の細い円環,白色のモザイク模様が付された緑色の太い帯状の円環から構成されるドーナツ形状の図形からなるものであり,本件標章と引用商標における本件円環部分は,緑色の細い円環,白色の細い円環,緑色の太い帯状の円環を有するドーナツ形状である点では共通するが,緑色の太い帯状の円環内の構成態様及び内側の白色の細い円環の有無の点において異なる態様の標章であることに照らすと,本件標章から本件円環部分を想起するものと認めることはできないし,ましてや,本件標章から本件緑色円環配置構成を認識できるものと認めることはできない。 25この点に関し,本件アンケート調査には,本件標章について,元々の図柄では,円の中心部に絵があり,緑色の輪の部分には会社名が特定できる白い文字が表示されていたが,本件標章の画像では,絵の部分を白く塗りつぶし,文字部分にはモザイク処理を施し,会社名が読み取れないようにしてある旨の説明が付されているところ,上記説明は,本件標章に接した需要者が視覚によって認識し,又は想起することができない内容を文章によって誘導するものであって適切なものではない。 そうすると,本件アンケート調査は,本件緑色円環配置構成の認識度ひいては著名性を調査することを目的とする調査方法として適切であると認めることはできないから,原告の前記主張は,理由がない。 エ まとめ以上によれば,引用商標が,平成23年3月末当時において原告の業務に係る商品及び役務を表示するものとして著名であり,引用商標の構成中の本件円環部分は全体として需要者に対して強い印象を与えるものであったことは認められるが,このことと本件アンケート調査の結果から,引用商標における本件緑色円環配置構成が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,原告の業務に係る商品及び役務を表示するものとして,需要者の間に広く認識されており,周知著名であったものと認めることはできない。他にこれを認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告の前記主張は採用することができない。 ? 本件商標と引用商標の類否判断の誤りの有無についてア 本件商標について本件商標は,別紙1記載のとおり,外側から順に緑色の細い円環,白色の細い円環,緑色の太い帯状の円環から構成され,その緑色の太い帯状の円環内に左右に白抜きで丸印を配し,さらに白抜きで上段に「BULLPULU」の欧文字を下段に「TAPIOCA」の欧文字を円弧に沿って書26してなる円環部分と,この円環部分の内側の中央に犬の図形とその影を左側に配した図形部分とからなる結合商標である。 本件商標は,その構成中,緑色の太い帯状の円環内の「BULLPULU」及び「TAPIOCA」の文字部分が,他の構成部分から分離して観察され得るものであり,上記文字部分全体に相応して,「ブルプルタピオカ」の称呼を生じるほか,「BULLPULU」の文字に相応して「ブルプル」の称呼をも生じる。 また,「BULLPULU」の文字部分は,辞書等に載録がない語であって,さらに,「TAPIOCA」の文字は,「タピオカ」(カッサバの根から製した食用・糊用の澱粉)の意味を有する我が国でも親しまれた語であり,本件商標の指定商品及び指定役務との関係において,商品の品質及び役務の質を表し,自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を有しないか,極めて弱いといえるものであり,「BULLPULU」の文字部分が独立して自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を果たし得ると認めるのが相当である。 そうすると,本件商標の構成中の「BULLPULU」の文字部分を要部として抽出し,これと引用商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも許されるというべきである。 イ 引用商標について引用商標は,前記?アのとおり,本件円環部分と本件図形部分とからなる結合商標である。 引用商標は,その構成中,本件円環部分のうちの緑色の太い帯状の円環内の「STARBUCKS」及び「COFFEE」の文字部分が,他の構成部分から分離して観察され得るものであり,上記文字部分全体に相応して,「スターバックスコーヒー」の称呼を生じるほか,「STARBUCKS」の文字に相応して「スターバックス」の称呼をも生じ,また,「(原27告のブランド名としての)スターバックスコーヒー」の観念を生じる。 そして,「STARBUCKS」の文字部分は,辞書等に記載がない語であるのに対し,「COFFEE」の文字は,「コーヒー」の意味を有する我が国でも特に親しまれた語であり,引用商標の指定商品及び指定役務の一部については,商品の品質及び役務の質を表し,自他商品及び自他役務の識別標識としての機能がないか,極めて弱いといえるものであるから,「STARBUCKS」の文字部分が独立して自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を果たしていると認めるのが相当である。 そうすると,引用商標の構成中の「STARBUCKS」の文字部分を要部として抽出し,これと本件商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも許されるというべきである。 ウ 本件商標と引用商標の類否について(ア) 本件商標の要部である「BULLPULU」の文字部分と引用商標の要部である「STARBUCKS」の文字部分とを対比するに,前記ア及びイの認定事実に照らすと,上記各文字部分は,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相違するものである。 そうすると,本件商標と引用商標が本件商標の指定商品又は指定役務に使用されたとしても,その商品又は役務の出所の誤認混同が生ずるおそれがあるものと認められないから,本件商標と引用商標は,全体として類似していると認めることはできない。 (イ) これに対し原告は,@本件アンケート調査の結果において,80%以上の回答者が本件標章から原告を想起したという事実は,引用商標においては,「STARBUCKS」の文字部分のみならず,本件緑色円環配置構成(緑色の二重の円環並びに内側の円環の帯状部分に白抜きの文字及び図形を配した構成)も自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を果たし得ることを示すものであること,A本件商標は,本件緑28色円環配置構成を有する点で引用商標と外観において共通することを踏まえると,本件商標においても,「BULLPULU」の文字部分のみならず,本件緑色円環配置構成も自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を果たし得ること,B本件商標と引用商標は,本件緑色円環配置構成を有する点で外観において共通し,観念においても同一又は類似すること,さらに,商標の視覚的な全体構成が,文字部分の違いや中心部の図形の違いという細部における差異よりも需要者に強い影響を与えていることを考慮すると,本件商標と引用商標を本件商標の指定商品又は指定役務に使用するときは,出所の混同を生ずるおそれがあるといえるから,両商標は,全体として類似する旨主張する。 しかしながら,前記?エで説示したとおり,引用商標における本件緑色円環配置構成は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,原告の業務に係る商品及び役務を表示するものとして,需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないから,本件緑色円環配置構成が独立して自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものと認めることはできない。 したがって,原告の上記主張は,その前提において採用することができない。 ? 小括以上のとおり,本件商標は,引用商標に類似する商標であるものと認めることはできないから,商標法4条1項11号に該当するものとは認められない。 したがって,これと同旨の本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由1は理由がない。 2 取消事由2(商標法4条1項15号該当性の判断の誤り)について? 原告は,引用商標及びその本件緑色円環配置構成の独創性及び周知著名性,29本件商標と引用商標の類似性,原告の事業展開の状況,商品・役務間の関連性,需要者の共通性等を考慮すると,本件商標がその指定商品又は指定役務に使用された場合,需要者において,本件緑色円環配置構成に着目し,引用商標が連想され,原告の業務に係る商品又は役務,原告と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのように,その商品又は役務の出所について混同を生ずるおそれがあり,本件商標は,商標法4条1項15号に該当するから,これを否定した本件審決の判断は誤りである旨主張する。 しかしながら,@前記1?エのとおり,引用商標における本件緑色円環配置構成は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,原告の業務に係る商品及び役務を表示するものとして,需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないこと,A前記1?ウ(ア)で説示したとおり,本件商標の要部である「BULLPULU」の文字部分と引用商標の要部である「STARBUCKS」の文字部分は,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相違するものであり,本件商標と引用商標が本件商標の指定商品又は指定役務に使用されたとしても,その商品又は役務の出所の誤認混同が生ずるおそれがあるものと認められず,本件商標と引用商標は,全体として類似していると認めることはできないことに照らすと,本件商標がその指定商品又は指定役務に使用された場合,需要者において,本件緑色円環配置構成に着目し,引用商標が連想され,原告の業務に係る商品又は役務,原告と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのように,その商品又は役務の出所について混同を生ずるおそれがあるものと認めることはできない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 ? 以上によれば,本件商標は,商標法4条1項15号に該当するものと認めることはできない。 30したがって,これと同旨の本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由2は理由がない。 3 結論以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,本件審決にこれを取り消すべき違法は認められない。 したがって,原告の請求は棄却されるべきものである。 知的財産高等裁判所第4部裁判長裁判官 大 鷹 一 郎裁判官 本 吉 弘 行裁判官 中 村 恭31(別紙1) 本件商標32(別紙2) 引用商標登録第4806987号商標商標の構成登録出願日 平成14年3月8日設定登録日 平成16年10月1日更新登録日 平成26年5月20日指定商品 第18類「かばん金具,がま口口金,皮革製包装用容器,愛玩動物用被服類,札入れ,トートバッグ,財布,小銭入れ,ブリーフケース,書籍用バッグ,ブリーフケース型の書類かばん,その他のかばん類,その他の袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,革ひも,原革,原皮,なめし皮,毛皮」第25類「ジャケット,その他の洋服,コート,セーター」類,ティシャツ,ポロシャツ,スウェットシャツ,その他のワイシャツ類,寝巻き類,ショーツ,その他の下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下 ,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,ス33カーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメ ット,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手 ・靴びょう・靴保護金具」を除く。),靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具,げた,草履類,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。),乗馬靴」第30類「アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,その他の食品香料(精油のものを除く。),草を原料とする茶,その他の茶,ココア飲料,コーヒー飲料,エスプレッソコーヒー飲料,その他のコーヒー及びココア,氷,マフィン・スコーン・クッキー・ペストリー及びその他の焼いてなる菓子及びパン,即席菓子のもと,即席パンのもと,チョコレート,キャンディ,アイスクリーム,冷凍菓子,その他の菓子及びパン,みそ,ウースターソース,グレービーソース,ケチャップソース,しょうゆ,食酢,酢の素,そばつゆ,ドレッシング,ホワイトソース,マヨネーズソース,焼肉のたれ,角砂糖,果糖,氷砂糖,砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,水あめ,ごま塩,食塩,すりごま,セロリーソルト,化学調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆,穀物の加工品,アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン」34指定役務 第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,給食の提供,その他の飲食物の提供,動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,会議室の貸与,展示施設の貸与,布団の貸与,業務用加熱調理機械器具の貸与,業務用食器乾燥機の貸与,業務用食器洗浄機の貸与,加熱器の貸与,調理台の貸与,流し台の貸与,カーテンの貸与,家具の貸与,壁掛けの貸与,敷物の貸与,タオルの貸与」35(別紙3)36 |
事実及び理由 | |
---|---|
全容
|