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関連審決 取消2003-30018
関連ワード 使用事実 /  指定商品 /  結合商標 /  不使用 /  通常使用権 /  専用使用権 /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  更新登録 / 
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事件 平成 15年 (行ケ) 446号 審決取消請求事件
原告A
訴訟代理人弁護士 木下貴司
同 國政直子
同 高木浩二
同 布川博良
被告B
訴訟代理人弁護士 荒井鐘司
同 弁理士 河野尚孝
同 嶋崎 英一郎
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2004/03/31
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が取消2003−30018号事件について平成15年9月9日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
請求
主文第1,2項と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は,別紙目録記載のとおりの構成からなり,指定商品を旧別表第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」とする商標登録第1029414号商標(昭和46年2月12日商標登録出願,昭和48年9月1日設定登録,昭和58年10月28日,平成6年2月24日及び平成15年9月2日更新登録,以下「本件商標」という。)の商標権者である。
被告は,平成15年1月8日,本件商標の指定商品中「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,下着,ねまき類,和服,くつ下,たび,手袋(ゴム手袋・絶縁用ゴム手袋を含む。),えりまき,マフラー,スカーフ,ネッカチーフ,ショール,ネクタイ,ゲートル,たびカバー,エプロン,おしめ,帽子,ナイトキャップ,ずきん,ヘルメット,すげがさ,頭から冠る防虫網」に係る商標登録につき,不使用による登録取消しの審判を請求し,その予告登録は,同年2月5日(以下「予告登録日」という。)にされた。
特許庁は,同請求を取消2003-30018号事件として審理し,平成15年9月9日に「登録第1029414号商標の指定商品中『洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,下着,ねまき類,和服,くつ下,たび,手袋(ゴム手袋・絶縁用ゴム手袋を含む。),えりまき,マフラー,スカーフ,ネッカチーフ,ショール,ネクタイ,ゲートル,たびカバー,エプロン,おしめ,帽子,ナイトキャップ,ずきん,ヘルメット,すげがさ,頭から冠る防虫網』については,その登録は取り消す。」との審決をし,その謄本は,同月19日,原告に送達された。
2 審決の理由 審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,被請求人(原告)は,本件審判の請求に対し,答弁していないから,本件商標の登録は,商標法50条の規定により,指定商品中上記商品についてその登録を取り消すべきものであるとした。
原告主張の審決取消事由
1 審決は,本件商標の登録は,指定商品中上記商品について,商標法50条に規定する商標登録取消事由を認めた誤り(取消事由)があるから,違法として取り消されるべきである。
2 取消事由(本件商標の使用の事実の誤認) (1) 専用使用権者による本件商標の使用 ア 専用使用権の設定 原告と株式会社シーン(以下「シーン」という。)は,平成4年12月7日,同月1日から10年間,原告がシーンに対し,本件商標を含む6件の登録商標について専用使用権を設定し,シーンが原告に対し,これに対する対価を支払う旨を内容とする専用使用権設定契約(以下「本件専用使用権設定契約」という。)を締結した(甲8-1)。
本件専用使用権設定契約に基づき原告が同社に対し専用使用権を設定した6件の登録商標の各構成は,「MACBETH/マクベス」(本件商標の構成),「マクベス/MACBETH」,「MB(ただし,Mの右辺とBの左辺が一体化した構成。以下同様。)」及び「マクベス/MACBETH/MB」であった。
シーンは,本件専用使用権設定契約に基づき,平成5年6月23日,本件商標について,平成4年12月7日付け許諾を原因とする専用使用権設定登録の申請をし,同年8月23日,その登録がされた。
平成14年5月31日,原告とシーンは,本件専用使用権設定契約を合意解約した(甲8-2)。
原告とシーンは,上記合意解約に際し,当時シーンが有していた本件商標の表示された在庫商品の取扱いについて,原告はシーンに対し,上記合意解約後平成14年11月30日までの期間に限り,これらの在庫商品をシーンが引き続き販売することを許諾し(甲8-2の第3条),シーンは原告に対し,その対価として販売許諾料を,上記合意解約時において,一括して支払う旨を合意した(同第4条)。
イ シーンによる本件商標の使用 シーンは,本件専用使用権設定契約に基づき,平成4年12月7日から平成14年5月31日までの間,本件商標を表示したジャケット,スーツ等の洋服その他の被服等の商品を製造し,平成4年12月7日から平成14年11月30日までの間,これらの商品を販売した。ただし,平成14年6月1日から同年11月30日までの間は後記在庫商品に限り販売した。
シーンによる上記製造・販売実績のうち,現時点において,商品の種類,点数,製造時期等の詳細について明確に把握できているものは,次のとおりである。すなわち,シーンは,平成14年5月31日当時,製造済みの在庫商品として,本件商標が表示されたフリース製ジャケット合計1204点を有していた(甲8-2添付別紙「在庫明細」)。これらのジャケット合計1204点には,少なくとも襟の内側などに縫い付けられた折ネーム(以下「折ネーム」という。)及び付け札(商品に附属させられたタグ)に,「MACBETH」,「MacBeth」,「macbeth」又は「マクベス」のいずれか一つの商標(ただし,書体のみに変更が加えられたものを含む。)が表示されていた。
ウ シーンの使用に係る商標の構成 シーンが,上記ジャケット等の商品の折ネーム等に表示していた商標は,主に「MACBETH」,「MacBeth」,「macbeth」又は「マクベス」のいずれかであるところ,これらは,本件商標の「MACBETH/マクベス」との構成のうちの一部(上段又は下段のみ)を使用するものであり,また,「MacBeth」及び「macbeth」との構成は,「MACBETH」についてその文字の種類に変更を加えたものであるが,本件商標「MACBETH/マクベス」は,「MACBETH」(上段)と「マクベス」(下段)という,共に呼称及び観念を同一にする文字を上下二段に併記した構成からなるものであり,「MACBETH」又は「マクベス」は,そのうちの一方であって,「MacBeth」及び「macbeth」は,「MACBETH」の書体ないし文字の種類のみに変更を加えたにすぎず,これと同一の呼称及び観念を生ずる商標であるから,これらの商標は,いずれも本件商標と社会通念上同一と認められる商標に当たることが明らかである。
したがって,シーンが上記各商標を商品(その折ネームや付け札等を含む。)に表示した行為は,本件商標の使用に当たる。
(2) 通常使用権者による本件商標の使用 ア 通常使用権の許諾 原告と株式会社互興(以下「互興」という。)は,平成14年5月31日,同年6月1日から平成16年5月末日までの期間,アパレル業界での常識範囲のカットアンドソー(丸編Tシャツ及びポロシャツ類),セーター,スポーツシャツ及びカジュアルシャツを商品範囲として,原告が互興に対し,本件商標及び他の1件の登録出願中の商標についての通常使用権を許諾し,互興が原告に対し,これに対する対価を支払う旨を内容とする通常使用権設定契約(以下「本件通常使用権設定契約」という。)を締結した(甲9)。
イ 互興による本件商標の使用 互興は,本件通常使用権設定契約に基づき,平成14年6月1日から同年11月30日までの間に,少なくとも本件商標を使用したセーター,ベスト(商品概念のうちの「チョッキ」に該当し,「セーター」及び「チョッキ」は,いずれも「セーター類」に包含される。),ラガーシャツ及びボタンダウンシャツ(いずれも商品概念のうちの「スポーツシャツ」に該当し,「ワイシャツ類」に包含される。)その他の被服商品合計3万0722点を製造・販売した(甲14)。
上記各商品への本件商標の表示方法は,具体的には,上記各商品の商品本体,折ネーム及び付け札等に「MACBETH」,「MacBeth」,「macbeth」又は「MB」等と表示するものであり,このうち少なくとも折ネーム及び付け札については,全商品について「MACBETH」,「MacBeth」又は「macbeth」のいずれか一つ(書体のみに変更が加えられたものを含む。)の商標が表示されている。なお,検甲1(ボタンダウンシャツ)は,互興において同年6月1日から同年11月30日までの間に製造した商品の一つ(品番2340002・品名ミニウィンドペンボタンダウンシャツ)であり,当時,サンプル品として互興から原告に交付された商品を,原告において保管していたものである。
互興は,本件通常使用権設定契約に基づき,同年6月1日から同年11月30日までの間に販売した本件商標を使用した各商品の販売価格及び販売枚数を集計した結果に基づいて,互興が原告に支払うべき対価(商標使用料)を計算し,その計算の結果を記載した計算書(甲14)を,同年12月16日付けで原告に送付し,その後,その対価を原告に支払った。互興は,同年12月1日以降も現在に至るまで,本件通常使用権設定契約に基づき,本件商標を使用したセーター,チョッキ,スポーツシャツ,その他の被服を製造している(甲16〜18)。なお,甲16(写真)に写っている各商品は,互興において製造した商品であり,その大半は同年12月1日以降現在までの間に製造された商品であって,本件審判後に,同社が在庫品として保有していたものを原告において入手したものであるが,これらは,いずれも本件通常使用権設定契約に基づき,同年6月1日から同社において開始された「マクベス」ブランドの商品展開の一部であり,商標の表示態様(折ネームや付け札への表示態様)や商標の構成等については,同年6月1日から同年11月30日までの間に製造・販売された商品のものとほぼ同様である。
ウ 互興の使用に係る商標の構成 互興が,本件専用使用権設定契約に基づき,前記各商品に「MACBETH」,「MacBeth」又は「macbeth」等と表示する行為が,本件商標の使用事実と認められることについては,上記(1)ウのとおりである。
被告の反論
1 審決の認定判断は正当であり,原告主張の取消事由は理由がない。
2 取消事由(本件商標の使用の事実の誤認)について (1) 専用使用権者による本件商標の使用について ア 専用使用権の設定について 原告とシーンとの間で,本件商標について,専用使用権の設定契約が平成4年12月7日に締結され,同契約において,「第11条 有効期限 本件契約の有効期限は契約開始の日より10年間とするが,その後は甲・乙の一方が本件契約の終了を希望する旨を記した書面による通知を本件契約の最初の契約期間又は,その後の延長期間終了の少なくとも90日以前に促す事により,本件契約を終了させる権利を有することを条件として1年間づつ自動的に延長されるものとする」とされていること,及び平成5年8月23日に専用使用権設定の登録がされたことは認める。
しかし,上記登録においては,「期間の終期は平成5年9月1日まで」(甲11)とされており,平成5年9月1日より後の期間においては,法律上,専用使用権者は存在しない。
イ シーンによる本件商標の使用について シーンが本件商標の指定商品に含まれる商品を製造・販売したこと,その商品に本件商標が付されていたこと,シーンが本件商標が表示されたフリース製ジャケット合計1204点を有していたことは,客観的に,十分に直接的に立証されとはいえない。
ウ シーンの使用に係る商標の構成について シーンは,平成5年9月1日より後の期間においては,法律上,専用使用権者ではなかったのであるから,シーンの使用に係る商標の構成についての主張は,無意味である。
(2) 通常使用権者による本件商標の使用について ア 通常使用権の許諾について 原告と互興が,平成14年5月31日,原告主張に係る内容の本件通常使用権設定契約を締結したことは認める。
イ 互興による本件商標の使用について 原告の互興による本件商標の使用に係る主張事実は,いずれも,客観的に,十分に直接的に立証されとはいえない。
ウ 互興の使用に係る商標の構成について 登録商標と完全に一致しない標章の使用も登録商標の使用とされるのが通例であることは,あえて争わない。
当裁判所の判断
1 取消事由(本件商標の使用の事実の誤認)について (1) まず,通常使用権者による本件商標の使用について検討する。
通常使用権の許諾について 原告と互興が,平成14年5月31日,原告主張に係る内容の本件通常使用権設定契約を締結したことは,当事者間に争いがない。
イ 互興による本件商標の使用について 証拠(甲14〜18,29,31,32及び検甲1)を総合すれば,互興は,本件通常使用権設定契約に基づき,平成14年6月1日から同年11月30日までの間に,本件商標(本件商標と社会通念上同一の商標を含む。その具体的構成は後記のとおり。)を使用したセーター,ベスト,ラガーシャツ及びボタンダウンシャツ等の被服商品合計3万0722点を製造・販売し,その商標使用料として160万5989円を原告の指定したみずほ銀行自由が丘支店の有限会社アイランズ・コーポレーション名義の普通預金口座に振り込み,支払ったこと,互興は,同年12月1日から平成15年5月31日までの間に,本件商標を使用した上記同様の商品合計3万6960点を製造・販売し,その後も,同様の取引を行ったこと,上記各商品の商品本体,折ネーム及び付け札等には,「MACBETH」のローマ字を通常の活字体で横書きしてなる表示(以下「『MACBETH』表示」という。),「MacBeth」のローマ字を斜体の活字体で横書きしてなる表示(以下「『MacBeth』表示」という。)又は「macbeth」のローマ字をやや太めの丸みを帯びた活字体で横書きしてなる表示(以下「『macbeth』表示」という。)が付されていたことが認められるところ,上記セーター及びベストは,被告の本件取消請求に係る指定商品中のセーター類(旧別表第17類2,別表第25類1(3))に,ラガーシャツ及びボタンダウンシャツは,同ワイシャツ類(旧別表第17類3,別表第25類1(4))に該当するものと認められる。
被告は,互興による上記各表示の使用の事実は,いずれも,客観的に,十分に直接的に立証されたとはいえないと主張する。しかしながら,上記各証拠は,その証明力を疑わせるような事情は全くうかがわれず,信用できるものと認められるところ,これらの各証拠を総合検討すれば,通常使用権者である互興による使用の事実について,商標法50条2項本文にいう「証明」がされたものということができるから,被告の上記主張は失当というべきである。
ウ 互興の使用に係る商標の構成について 本件商標は,別紙目録記載のとおりの構成からなり,太字の活字体で表した「MACBETH」のローマ字を上段に表し,同じく太字の活字体で表した「マクベス」の片仮名を下段に表してなる結合商標であるところ,下段の「マクベス」は,「MACBETH」の称呼を片仮名で表したものであるから,本件商標の上段部分及び下段部分のいずれも「マクベス」の称呼を生ずるものであることが明らかであり,また,「マクベス」が英国の劇作家シェークスピアが著した戯曲の題名ないしその主人公の名であることは当裁判所に顕著であるから,本件商標の上段部分及び下段部分のいずれも,上記戯曲ないしその主人公の観念を生ずるものと認められる。他方,「MACBETH」表示,「MacBeth」表示及び「macbeth」表示は,いずれも,その構成から,「マクベス」の称呼を生じ,また,上記戯曲ないしその主人公の観念を生ずるものと認められる。
ところで,商標法50条1項に規定する商標登録の取消しの審判においては,片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標の使用も,登録商標の使用として認められるところ(同条1項括弧書),「MACBETH」表示,「MacBeth」表示及び「macbeth」表示は,上段部分及び下段部分共に「マクベス」の称呼及び観念を生ずる本件商標の上段部分のローマ字のみの構成とし,その字体を若干変更し,あるいは大文字の一部又は全部を小文字に変更したものにすぎないから,いずれも,本件商標と社会通念上同一であると認められる。したがって,互興による上記各表示の使用は,本件商標の使用と認められるというべきである。
(2) 以上によれば,本件商標の通常使用権者である互興は,予告登録日前3年以内に,被告の本件取消請求に係る指定商品中のセーター類及びワイシャツ類に該当する商品について,本件商標を使用したものと認められる。
2 そうすると,本件商標の指定商品中上記被告の本件取消請求に係る指定商品について,商標法50条に規定する商標登録取消事由を認めた審決の認定は,誤りというほかなく,この誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,原告主張の取消事由は理由があり,審決は取消しを免れない。
よって,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由があるからこれを認容し,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 岡本岳
裁判官 早田尚貴