関連審決 | 取消2018-300972 |
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事件 |
令和
3年
(行ケ)
10014号
審決取消(商標)請求事件
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原告 株式会社ビットスター 同訴訟代理人弁護士 平林尚人 谷口琢哉 田中康平 被告有限会社根本 同訴訟代理人弁理士 宮永栄 飯島千尋 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2021/09/09 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
特許庁が取消2018-300972号事件について令和2年12月17日にした審決を取り消す。 |
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事案の概要
本件は,商標法50条1項に基づく商標登録取消審判請求に対する取消審決に対する取消訴訟である。争点は,別紙商標登録目録記載の商標(以下「本件商標」といい,本件商標に係る商標登録を「本件商標登録」という。)の商標権者である原告が,平成28年1月17日から平成31年1月16日までの期間に,指定役務のうち第42類「電子計算機用プログラムの提供,コンピュータソフトウェアの提供,娯楽用電子計算機用プログラムの提供」(以下「取消請求役務」という。)について,本件商標を使用したか否かである。 1 本件商標登録 原告は,本件商標の商標権者である。 2 特許庁における手続の経緯等 被告は,平成30年12月21日,特許庁に対し,本件商標の指定役務のうち取消請求役務に係る本件商標登録の取消しを求めて審判請求(以下「本件審判請求」という。)をした。特許庁は,本件審判請求を平成31年1月17日に登録し,取消2018-300972号事件として審理をした上で,令和2年12月17日,本件商標の指定役務のうち取消請求役務についての本件商標登録を取り消す旨の審決をし,その謄本は,同月30日,原告に送達された。 本件商標登録について,商標法50条2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」は,平成28年1月17日から平成31年1月16日までの期間(以下「本件要証期間」という。)となる。 3 審決の理由の要旨 使用役務について 原告(商標権者)は,アーケードゲームや家庭用ゲームソフト等の企画及び開発をしている会社であり(甲10),業務委託契約書とする証拠(甲6)によれば,原告は,本件要証期間内の平成30年3月28日に,株式会社セガ・インタラクティブとの間で,業務用ゲーム機に収録するデータの作成に係る業務を受託し,検収報告書とする証拠(甲8)によれば,同年4月13日に当該業務委託契約書に基づく納品物が原告によって納品され,同日,株式会社セガ・インタラクティブによって納品物が検収され,その結果について原告に報告されたことが認められるものの,原告が,取消請求役務を提供した事実について把握できる記載及び説明は一切見いだせない。 したがって,原告(商標権者)が取消請求役務を提供した事実は認められない。 本件商標と原告等の使用に係る商標との同一性について ア 本件商標と「株式会社ビットスター」との文字からなる記載との同一性について 「ビットスター」の文字からなる本件商標と「株式会社ビットスター」の文字からなる記載(以下「本件使用商標1」という。)とは,明らかにその構成文字が相違する。 したがって,本件使用商標1は,本件商標と社会通念上同一の商標とは認められない。 なお,業務委託契約書とする甲4,6及び本件審判請求乙2,成果物検収書,検収報告書とする甲8及び本件審判請求乙4には,本件使用商標1の記載があるが,甲4,6及び本件審判請求乙2の記載は契約当事者を記載したもの,甲8及び本件審判請求乙4の記載は成果物の検収結果の報告先を記載したものであって,契約当事者又は報告先の法人を特定するための商号として記載されたものであり,役務に関する取引書類における商標の使用ということができない。 イ 本件商標と別紙使用商標目録記載のとおりの「Bitster」のロゴとの同一性について 原告のウェブサイトとする甲9の1,原告の公式ウェブサイトのアーカイブデータとする甲9の2・3,甲10及び原告の Facebook のアカウントの記事とする甲12,13には,別紙使用商標目録記載のとおりの「Bitster」のロゴ(以下「本件使用商標2」といい,本件使用商標1と併せて「本件使用商標」という。)の表示があるが,当該文字は,「B」の文字がデザイン化された「Bitster」の欧文字からなるものであり,「ビットスター」の片仮名からなる本件商標とは明らかに構成文字が相違し,「片仮名及びローマ字の文字を相互に変更するもの」ということもできない。 また,両商標は特定の観念を有しない造語よりなるものと認められるから,同一の観念を生じるものではない。 そうすると,本件商標と本件使用商標2とは,同一の称呼を生じるとしても,同一の観念を生じるということができないものであり,「片仮名及びローマ字の文字を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標」ということはできない。 したがって,本件使用商標2は,本件商標と社会通念上同一の商標とは認められない。 小括 上記のとおり,原告(商標権者)は,本件要証期間に,取消請求役務を提供していたことが認められない上,原告が提出した証拠から認定できる本件使用商標は,いずれも本件商標とは相違するものであって,社会通念上同一の商標ともいえないものである。 その他,本件商標権に係る専用使用権者又は通常使用権者による本件商標の使用事実を証明する証拠の提出はない。 |
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原告主張の審決取消事由(商標法2条3項8号の「使用」の判断の誤り)
1 原告は,以下のとおり,本件要証期間に取消請求役務について本件商標を使用していたものであり,原告による各使用は,商標法2条3項8号の「使用」(「役務に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」)に該当する。 原告は,平成30年4月19日,自社のホームページ(以下「本件ホームページ」という。)において,「ビットスターは(住所省略)でゲーム開発をしている会社です。スマホ用アプリから大型のアーケードゲームまで幅広く対応しています。」と掲載した(甲9の2。以下,この掲載行為を「本件使用行為1」という。)。 原告は,平成30年8月30日,本件ホームページにおいて,「ビットスターは受託開発だけではなく,オリジナルタイトルや試作ソフトの開発もしています。 その一部をご紹介!」と掲載した(甲14。以下,この掲載行為を「本件使用行為2」といい,本件使用行為1と併せて「本件各使用行為」という。)。 2 片仮名の「ビットスター」の文字は,本件商標と同一である(なお,「ビットスター」との記載は,法人を特定するための商号としての機能も有しているが,同記載は,同時に役務の識別機能も有しているから,商標の使用に当たる。)。 3 原告は,主としてゲームプログラムの開発を行っている会社であるが,自社において開発したプログラムの提供(販売等)も行っている。そして,原告は,依頼者からゲームプログラムの開発を受託した場合には,その開発したプログラムを依頼者とともに共同販売することを視野に入れている。また,ゲームプログラム等を共同で開発した場合には,それを使用する権利は両者に帰属することから,共同で販売(提供)を行うのが自然である。実際に,原告は,Simuline という会社とAquarace Extreme というゲームプログラムの共同開発・共同販売を行ったことがある(甲15,16)。本件各使用行為で用いられる本件ホームページにおける広告は,ゲームの開発受託だけでなく,その共同開発・共同販売等の依頼の募集をも内容とするものである。 また,実際,原告が開発したゲームソフトは,いわゆるサブスクリプションの形態で配信されており(甲18,19),原告による共同販売の方法としては,ゲームアプリ等を定額でインターネット上で利用させるというものも含まれる。本件各使用行為は,電気通信回路を通じてゲームプログラム等を利用させるサービスに関するものであって,電子計算機用プログラムの提供等の取消請求役務に関する広告である。 4 したがって,本件各使用行為は,商標法2条3項8号に該当する。 |
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被告の主張
以下のとおり,原告による本件各使用行為は,取消請求役務についての使用に該当しない。 1 証拠によっても,原告が自社で開発したゲームプログラムの提供(販売等)を行った事実を確認することはできないから,本件ホームページは,取消請求役務に関する広告に当たらない。 なお,本件使用行為1に係る本件ホームページ(甲9の2)にある「幅広く対応しています」との記載も,プログラムの提供を含むと読み取ることはできず,同記載は,エンドユーザー用からアーケード用まで幅広く対応している旨の記載であると読み取るのが自然である。本件使用行為2に係る本件ホームページ(甲14)やその他の証拠を見ても,原告が取消請求役務を行っている事実は確認できない。 2 国際分類によれば,オンラインによるゲームの提供は,第41類に分類されるから,仮に原告がオンラインによるゲームの提供を行っていたとしても,本件ホームページは,第42類に分類される取消請求役務に関する広告であるとはいえない。 |
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当裁判所の判断
1 認定事実 掲記の証拠によれば,次の事実が認められる。 本件使用行為1 原告は,平成30年4月19日,本件ホームページにおいて,「ビットスターは(住所省略)でゲーム開発をしている会社です。」,「スマホ用アプリから大型のアーケードゲームまで幅広く対応しています。」などの記載をした(甲9の2)。 本件使用行為2 原告は,平成30年8月30日,本件ホームページにおいて,「ビットスターは受託開発だけではなく,オリジナルタイトルや試作ソフトの開発もしています。」,「その一部をご紹介!」などの記載をした(甲14)。 2 取消事由(商標法2条3項8号の「使用」の判断の誤り)について 本件使用行為1に係る本件ホームページの上記文言からは,原告が幅広い種類のゲームソフトの開発(娯楽用電子計算機のプログラム等の設計,作成等)に従事している会社であることはうかがえても,同文言から,原告が取消請求役務(娯楽用電子計算機用プログラム等の提供)にも従事していると読み取ることは困難である(なお,本件使用行為1に係る本件ホームページの文言(「スマホ用アプリから大型のアーケードゲームまで」)に照らせば,本件ホームページの「幅広く対応しています」との文言を根拠に,本件ホームページが原告によるインターネット上でのゲームソフトの提供についても言及していると解することはできない。)。 また,本件使用行為2に係る本件ホームページの上記文言も,原告がソフトの開発を行っていることをいうにとどまり,原告が取消請求役務を行っていることにつき言及するものではない。 このように,本件各使用行為に係る本件ホームページの記載からは,これらが取消請求役務に関する広告であると認めることはできない。 この点に関し,原告は,@原告は,ゲームプログラム等について他の会社と共同開発及び共同販売を行ったことがある(甲15,16),A本件ホームページにも「共同開発のご提案なども大歓迎です」と記載されている(甲10),Bゲーム開発業界においては,いわゆるサブスクリプションが浸透しつつあるところ,平成24年10月17日からは,原告が開発したゲームソフトがサブスクリプションの形態で配信されており,また,原告は,平成29年9月頃にも,開発したゲームアプリのサブスクリプションの形態による共同販売を計画していた(甲19)から,本件ホームページは,取消請求役務に関する広告に該当する旨主張する。 しかしながら,上記@の点については,甲15(販売受益分配契約書)の第3条には,原告と Simuline Inc.が共同開発した Aquarace Extreme と称する機器(甲16)の販売は Simuline Inc.が行うとされ,その他,本件全証拠によっても,原告が上記機器に関して取消請求役務を行っていたと認めることはできない(なお,上記販売受益分配契約書の作成日付は,本件要証期間の6年以上前である平成21年10月14日である。)。また,上記Aの点については,上記@についての上記説示にも照らせば,本件ホームページに「共同開発のご提案なども大歓迎です」との文言があったとしても,そのことが,原告が共同開発に係るゲームソフト等を提供していることをも意味していると認めることはできない。さらに,上記Bの点については,原告の主張によっても,原告が平成24年10月17日からゲームソフトを提供したということはできず,同ゲームソフトに係る業務委託契約書であると認められる甲18をみても,原告がゲームソフトの提供に当たるとする約定はみられない(なお,平成24年10月17日は,本件要証期間の3年以上前の日付である。)。また,平成29年9月頃のゲームアプリの共同販売も,原告の主張によれば,計画がされていたにすぎない。したがって,原告の上記@ないしBの主張によっても,本件要証期間における本件ホームページが取消請求役務に関する広告であったと認めることはできない。 以上によれば,原告が本件要証期間内に取消請求役務に関する広告を内容とする情報に本件商標を付して電磁的方法により提供したということはできないから,取消事由は,理由がない。 3 結論 以上の次第であるから,原告の請求は理由がない。 |
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追加 | |
(別紙)商標登録目録1登録番号第5264664号2登録日平成21年9月11日3商標権の存続期間の更新登録日令和元年11月26日4登録商標「ビットスター」の片仮名を標準文字により表して成るもの5商品及び役務の区分並びに指定役務第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機用プログラムの提供,コンピューターソフトウェアの設計・作成又は保守,コンピュータソフトウェアの提供,家庭用テレビゲームのゲームプログラム・業務用ゲーム機のゲームプログラムの設計・作成又は保守,娯楽用電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,娯楽用電子計算機用プログラムの提供」(別紙)使用商標目録 |
裁判長裁判官 | 本多知成 |
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裁判官 | 浅井憲 |
裁判官 | 中島朋宏 |