関連審決 |
取消2020-300 取消2020-300340 |
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事件 |
令和
3年
(行ケ)
10046号
審決取消請求事件
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原告 株式会社ニトリホールディングス 同訴訟代理人弁護士 名越秀夫 被告 株式会社エヌ・エス・ピー 同訴訟代理人弁護士 森本純 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2021/09/29 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
特許庁が取消2020-300340号事件について令和3年2月26日に した審決を取り消す。 |
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事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等 ? 被告は,以下のとおりの商標登録第5913819号商標(以下「本件商 標」という。)の商標権者である(甲1,2,18)。 商 標 Nクール(標準文字) 登録出願日 平成28年6月20日 設定登録日 平成29年1月13日 指定商品 第11類「化学物質を充てんした保温保冷具」 第25類「ベスト,洋服」 (令和2年6月1日,同月15日及び同月30日付け各審決(取 消2020-300099号ないし取消2020-300 1 102号事件)の確定により一部取消し後のもの) ? 原告は,令和2年5月22日,本件商標の指定商品中,第25類「ベスト」 に係る商標登録について,商標法50条1項所定の商標登録取消審判(取消 2020-300340号事件。以下「本件審判」という。)を請求し,同 年6月11日,その登録がされた。 特許庁は,令和3年2月26日,「本件審判の請求は,成り立たない。」 との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同年3月9日, 原告に送達された。 ? 原告は,令和3年4月7日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起し た。 2 本件審決の理由の要旨 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。 その要旨は,@表紙に「2020 CATALOG」の文字の下の中央に「N クール ?ウェア」の文字の記載のあるカタログデータ「Nクールウェア」 (甲1 5の3(審判乙4の3)。以下「本件カタログデータ」という。)の29頁には, 「Nクール ? シリーズ」のタイトルの下に, 「メッシュベスト」 (以下「本件使用 商品」という場合がある。 ,その下に「Nクール ? ベストU」 ) (以下「本件使用 商標」という場合がある。 の記載があり,その右側に,そのメッシュベストの画 ) 像が表示されている,A本件使用商標の要部は, Nクール」 「 の文字部分であり, 本件商標は「Nクール」の文字からなるため,本件商標と本件使用商標とは社 会通念上同一の商標といえる,B本件使用商品は, 「メッシュ製のベスト」であ ると認められ,作業着の上着の下に着るものであり,丈が短く,袖のないもの であるから,本件審判の請求に係る指定商品第25類「ベスト」の範疇に属す る商品である,C被告のウェブサイト(甲15の2(審判乙4の2))には,上 段に「製品情報」の記載,「2020年1月23日 最終更新日:2020年2 月27日」の記載があり,その下に「2020年版Nクールウェアカタログを 2 掲載しました」の記載の下に,本件カタログデータの表紙と同様のカタログの 表紙が掲載されており,そのさらに下には (画像をクリックするとPDFファ 「 イルが開きます) との記載があり, 」 PDFファイルを開けて本件カタログデー タを見ることができること,被告ウェブサイトの上記日付及び本件カタログデ ータの奥付の「2020.01」の記載から,本件カタログデータは2020 年1月に作成されたものと認められることからすると,被告は,本件審判の請 求の登録前3年以内の期間(以下「要証期間」という。)内の同月,日本国内に おいて,本件使用商品に本件商標と社会通念上同一と認められる本件使用商標 を付した広告を電磁的方法により提供したものと認められるから,かかる被告 の行為は,商標法2条3項8号の「使用」に該当する,Dしたがって,被告は, 要証期間内に日本国内において,商標権者である被告が本件審判の請求に係る 指定商品(本件使用商品)について,本件商標の使用をしたことを証明したも のと認められるから,本件商標の登録は,同法50条の規定により取り消すこ とができないというものである。 3 取消事由 本件商標の使用の事実の判断の誤り |
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当事者の主張
1 原告の主張 ? 被告による本件商標の使用の事実の不存在 被告は,@被告が,令和2年1月23日から同年4月2日までの間,被告 のウェブサイトにおいて,本件カタログデータ(甲15の3)を掲載し, 「製 品情報」のウェブページ(甲15の2)に掲載された本件カタログデータの 画像をクリックすることにより,本件カタログデータの29頁の「メッシュ (本件使用商品)の画像及び「Nクール ?ベストU」 ベスト」 (本件使用商標) の表示を閲覧できるようにして公開し,本件使用商品に関する広告に本件商 標と社会通念上同一の商標である本件使用商標を付してこれを電磁的方法に 3より提供した,A被告は,上記@の期間,上記@と同様の方法により,本件カタログデータの15頁の「Nクール ? ウェア」の標章及び被告が製造販売する型式名「NC-3010」及び型式名「NC-301」の袖のない胴衣であるベストの画像の表示を閲覧できるようにして公開し,商品「ベスト」に関する広告に本件商標と社会通念上同一の商標を付して電磁的方法により提供した,B被告は,平成30年6月27日から令和2年4月2日までの間,被告のウェブサイトにおいて,「NクールベストU」のパンフレットデータ(甲14の3(審判乙3の3))を掲載し,「製品情報」のウェブページ(甲14の2(審判乙3の2))に貼られたリンクにより,「ベスト」の画像及び「NクールベストU」の文字の表示のあるパンフレットデータを閲覧できるようにして公開し,商品「ベスト」に関する広告に本件商標と社会通念上同一の商標を付して電磁的方法により提供した旨主張するが,以下のとおり,被告の上記主張は,いずれも失当である。 ア 本件カタログデータについて (ア) 被告のウェブサイト内の「製品情報」のウェブページ(甲15の2) には「2020年1月23日/最終更新日2020年2月27日」との 記載があるから,同ウェブページの内容は「2020年2月27日」に 更新されたものであり,同年1月23日に掲載された内容のものではな い。 また,上記ウェブページに掲載されたカタログデータは, 「最終更新日 2020年2月27日」に内容が更新されており,同年1月に作成され たとする本件カタログデータ(甲15の3)とは内容が異なる。 (イ) 被告が挙げる甲15の1(審判乙4の1)は,被告の内部文書の単 なる依頼書であり, 「作業完了日:2020/1/23」との記載がある だけで,その依頼により「電磁的方法により提供」された日の記載はな い。 4 (ウ) 他方,被告が挙げる本件カタログデータのプロパティ(甲15の4 (審判乙4の4))には,「作成日:2020/01/10」 「更新日: , 2020/01/10」と表示されているだけで, 「製品情報」のウェブ ページ(甲15の2)の「2020年1月23日/最終更新日:202 0年2月27日」に相当する電磁的な履歴がない。このような矛盾があ る以上,上記ウェブページの「2020年版Nクールウェアカタログを 掲載しました」という内容自体の信用性を失わせるに足るものである。 (エ) 以上によれば,被告は,要証期間内に,本件カタログデータを「電 磁的方法により提供」したことを証明したものとはいえない。 イ パンフレットデータについて 「NクールベストU」のパンフレットデータ(甲14の3)には, 「電磁 的方法により提供」された日時を示唆する記載はない。また, 「Nクールベ ストU」のパンフレットデータには, 「製品情報」のウェブページ(甲14 の2(審判乙3の2))のリンク先であることを示唆する記載もない。 したがって,被告は,要証期間内に, 「NクールベストU」のパンフレッ トデータを「電磁的方法により提供」したことを証明したものとはいえな い。 ? 本件使用商品等が本件商標の指定商品に該当しないこと ア(ア) 特許庁商標課編の「商品・サービス国際分類表〔第11-2021 版〕 (以下「商品・サービス国際分類表」という。甲20)の第25類 」 の「注釈」に, 「この類には,特に,次の商品を含まない:」として「特 殊な用途に供する被服,履物及び帽子,例えば,保安用ヘルメット(ス ポーツ用を含む。) (第9類) 防火用被服 , (第9類) 手術着 , (第10類), 整形外科用履物(第10類) 並びに特定のスポーツをするときに必須の , 被服及び履物,例えば,野球用グローブ,ボクシング用グローブ,アイ ススケート靴,スケート靴(第28類);」との記載がある。 5 また,特許庁編「『商品及び役務の区分』に基づく類似商品・役務審査 基準〔国際分類第11-2021版対応〕(以下「類似商品・役務審査 」 基準」という。甲26の1)においても,「反射安全ベスト」(甲26の 3) 「救命胴衣」 , (甲26の4) 「防弾チョッキ」 , (甲26の5) 「防刃 , ベスト」(甲6) 「ベスト型の磁気治療器」 , (甲6)といった「特殊な用 途に供する被服」 一般的な被服の一種の類似群コード は, 「17A01」 に含まれていない。 (イ) 類似商品・役務審査基準は,商品の区分の基準について, 「(イ) 旧 商品区分においては,商品を分類する基準が,主として用途主義,販売 店主義であったが,新商品区分は国際分類を主たる体系として採用して いるために,その基準が,主として機能又は用途主義,材料主義を強調 したものとなっている。 (国際分類の「一般的注釈」参照)」 (甲26の6) と説明している。 類似商品・役務審査基準によると,第25類は,細分類として「被服」 を含み,更にこの「被服」は「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ 類」を含み,このうちの「セーター類」には「3 セーター類 カーデ ィガン,セーター,チョッキ」が含まれる。また,類似商品・役務審査 基準は,「チョッキ」又は「ベスト」の国際分類上の用語として,「ve sts」又は「waistcoats」を当てており(甲26の2),こ の「vests」又は「waistcoats」は,細分類17A01 の中でも「1 洋服」とは別の「3 セーター類 カーディガン,セー ター,チョッキ」の中に分類されているから,ここに入る「ベスト」は, 「3 セーター類 カーディガン,セーター」に準じるものでなければ ならない。 そうすると,本件商標の指定商品「ベスト」の「機能又は用途主義, 材料主義」は,「3 セーター類 カーディガン,セーター」のように, 6 洋装ファッションとしての「機能又は用途」と,それにふさわしい「材 料」を意味すると考えられる。このように,洋装ファッションとしての ベストは,様々な形はとるにしても,服飾デザイナーによるファッショ ンデザインの工夫の延長線上にあるものであり,ファッションデザイン 以外の要素を加えるものではない。 イ 本件カタログデータの29頁に掲載された「メッシュベスト」 (本件使用 商品)の「機能又は用途」は,保冷剤を保持するための装着具であり,洋 装ファッションとしての「機能又は用途」はない。また, 「メッシュベスト」 (本件使用商品)は,単純にメッシュ(網)を,保冷剤を保持するように 縫製したものにすぎず,保冷剤を装着せずに使用することは実用性がなく, 実際上も考えられない特別な「材料」であるから,機能的には保冷具の一 部材にすぎない。 したがって,「メッシュベスト」(本件使用商品)は,洋装ファッション としてのベストではなく,第25類の一般的な被服に属する「ベスト」 (類 似群コード17A01)の範疇に属する商品であるとはいえない。 「Nクー ルベストU」のパンフレットデータに掲載された「NクールベストU」 (「メ ッシュベスト」)も,これと同様である。 ウ 本件カタログデータの15頁に掲載された型式名「NC-3010」及 び型式名「NC-301」の「袖のない胴衣であるベスト」は,その「機 能又は用途」は,そもそも一般的なベストの定義である「胴着の一種で, 下着と上着の間に着る中衣であること,また,丈が短く,体にぴったりつ き,袖のないもので,スーツの下,あるいはブラウスやセーターの上など に着ることが多い。」に該当しないから, 「ベスト」ではない。これは, 「身 体に装着可能な扇風機(電動ファン)」を保持するための装着具(いわゆる 「空調服」 であり, ) 洋装ファッションとしての「機能又は用途」を有せず, それにふさわしい「材料」からなるものでもない。 7 したがって,上記「袖のない胴衣であるベスト」は,洋装ファッション としてのベストではなく,第25類の一般的な被服に属する「ベスト」 (類 似群コード17A01)の範疇に属する商品であるとはいえない。 エ 以上のとおり,本件使用商品等は,いずれも本件商標の指定商品「ベス ト」の範疇に属する商品に該当しない。 ? 小括 以上によれば,被告は,要証期間内に,日本国内において,被告が本件審 判の請求に係る指定商品に本件商標の使用をしたことを証明したとはいえな いから,これと異なる本件審決の判断は誤りである。 したがって,本件商標の登録は,商標法50条の規定により取り消される べきである。 2 被告の主張 ? 被告による本件商標の使用 ア 本件カタログデータに係る使用 (ア) 被告は,令和2年1月23日から同年4月2日までの間,被告のウ ェブサイトにおいて,本件カタログデータ(甲15の3)を掲載し, 「製 品情報」のウェブページ(甲15の2)に掲載された本件カタログデー タの画像をクリックすることにより,本件カタログデータを閲覧できる ようにして公開し,これを電磁的方法により提供した。 (イ) 本件カタログデータの29頁には,被告が製造販売する「メッシュ ベスト」 (本件使用商品)の画像の表示(別紙2参照)とともに,その商 品名として「Nクール? ベストU」 (本件使用商標)の表示(別紙1参照) がされている。 本件使用商標の構成中の「ベスト」の文字部分は,「メッシュベスト」 において自他商品識別機能を有する表記ではなく, 「U」も商品シリーズ の一連性を示す表記でしかなく,また, 「?」は「Nクール」が登録商標 8 であることを示す記号であるから,本件使用商標は,本件商標と社会通 念上同一の商標である。 したがって,被告が被告のウェブサイトに掲載した本件カタログデー タの29頁を閲覧できるようにした行為は,本件使用商品に関する広告 に本件商標と社会通念上同一の商標である本件使用商標を付して電磁的 方法により提供する行為(商標法2条3項8号)に当たる。 (ウ) 本件カタログデータの15頁には,「Nクール ? ウェア」の標章の下 に,被告が製造販売する型式名「NC-3010」及び型式名「NC- 301」の袖のない胴衣であるベストの画像の表示がされている。 「Nクール ? ウェア」の標章の構成中の「ウェア」の文字部分は,被服 において自他商品識別機能を有する表記ではなく,また, 「?」は「Nク ール」 「Nクール ? ウェア」 が登録商標であることを示す記号であるから, の標章は,本件商標と社会通念上同一の商標である。 したがって,被告が被告のウェブサイトに掲載した本件カタログデー タの15頁を閲覧できるようにした行為は,商品「ベスト」に関する広 告に本件商標と社会通念上同一の商標を付して電磁的方法により提供す る行為(商標法2条3項8号)に当たる。 イ パンフレットデータに係る使用 被告は,平成30年6月27日から令和2年4月2日までの間,被告の ウェブサイトにおいて, 「NクールベストU」のパンフレットデータ(甲1 4の3)を掲載し, 「製品情報」のウェブページ(甲14の2)に貼られた リンクにより, 「NクールベストU」のパンフレットデータを閲覧できるよ うにして公開し,これを電磁的方法により提供した。 「NクールベストU」のパンフレットデータには,ベストの画像が表示 されており, 「NクールベストU」の文字がベストの商品名であることを理 解できる。 9 そして, 「NクールベストU」の文字(標章)は,前記ア(イ)で述べたよ うに,本件商標と社会通念上同一の商標である。 したがって,被告が被告のウェブサイトに掲載した「NクールベストU」 のパンフレットデータを閲覧できるようにした行為は,商品「ベスト」に 関する広告に本件商標と社会通念上同一の商標を付して電磁的方法によ り提供する行為(商標法2条3項8号)に当たる。 ウ 原告の主張について 原告は,被告が要証期間内に本件カタログデータを電磁的方法により提 供したことの証明がない旨主張するが,以下のとおり理由がない。 (ア) 被告のウェブサイトの「製品情報」のウェブページ(甲15の2) の「2020年1月23日/最終更新日:2020年2月27日」の記 載は,同ウェブページを令和2年1月23日に公開し,その最終更新日 が同年2月27日であることを示すものである。 上記ウェブページの掲載及び本件カタログデータ(甲15の3)のウ ェブサイト上の掲載に係る被告の社内文書である甲15の1には,作業 「 完了日:2020/1/23」との記載があり, 「完了」欄に,A係長の 2020年1月23日付けの押印がされている。これらの記載は,上記 ウェブページの公開日の記載(「2020年1月23日」)と合致してい る。 また,被告の代理人が令和2年4月2日にインターネット上で本件カ タログデータを閲覧し,そのプロパティを表示した画面を保存して出力 した甲15の4には,本件カタログデータの作成日及び更新日が「20 20年1月10日」と表示されている。この事実は,上記ウェブページ に掲載された本件カタログデータについて,公開日である同年1月23 日から上記出力日である同年4月2日までの間,修正がされていないこ とを示している。 10 そうすると,上記ウェブページには「最終更新日:2020年2月2 7日」との記載があるが,少なくとも,同年1月23日から同年2月2 7日までの間,本件カタログデータの差替えはされていないものと認め るのが相当である。 (イ) 以上によれば,被告は,要証期間内に被告のウェブサイトに掲載し た本件カタログデータを閲覧できるようにして公開し,これを電磁的方 法により提供したものといえるから,原告の前記主張は失当である。 ? 本件使用商品等が本件商標の指定商品に該当すること ア 本件使用商品等が指定商品「ベスト」に該当すること (ア) 本件カタログデータの29頁に掲載された「メッシュベスト」 (本件 使用商品)は,メッシュ生地で製造された袖のない胴衣であり,酷暑環 境下において,主として,作業服として,上着の下に着用される, 「一般 的な被服」であって,一定の特殊な機能・用途のためにしか着用されず, 需要者も当該機能・用途を必要とする一部の者に限定される「特殊な被 服」ではないから,第25類「ベスト」の範疇に属する商品である。 (イ) 本件カタログデータの15頁に掲載された型式名「NC-3010」 及び型式名「NC-301」の商品は,同頁に「軽作業やレジャーに最 適,気軽に着用ベストタイプ」等の商品説明がされているように,一般 的な軽作業やレジャーに用いられるものであり,特殊な用途に使用され るものではないから,第25類「ベスト」の範疇に属する商品である。 また, NクールベストU」 「 のパンフレットデータに掲載された商品も, 第25類「ベスト」の範疇に属する商品である。 イ 原告の主張について 原告は,@類似商品・役務審査基準によれば,第25類は,細分類とし て「被服」を含み,更にこの「被服」は「洋服,コート,セーター類,ワ イシャツ類」を含み,このうちの「セーター類」には「3 セーター類 カ 11ーディガン,セーター,チョッキ」が含まれるところ,「ベスト」 「vests (and waistcoats)」は,「1 洋服」とは別の「3 セーター類 カーディガン,セーター,チョッキ」の中に分類されており,これに準じるものでなければならないから,洋装ファッションとしての「機能又は用途」と,それにふさわしい「材料」を有するものでなければならない,A「メッシュベスト」 (本件使用商品)は,保冷剤を保持するための装着具であり,洋装ファッションとしての「機能又は用途」を有せず,また,単純にメッシュ(網)を,保冷剤を保持するように縫製したものにすぎず,保冷剤を装着せずに使用することは実用性がなく,実際上も考えられない特別な「材料」からなり,保冷具の一部材にすぎないから,洋装ファッションとしてのベストではなく,第25類の一般的な被服に属する「ベスト」 (類似群コード17A01)の範疇に属する商品であるとはいえない旨主張する。 しかしながら,@については,第25類の一般的な被服に属する「ベスト」 (類似群コード17A01)を洋装ファッションとしての機能・用途・材料のものに限定されると解すべき理由はない。また,類似商品・役務審査基準の「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類」の記載は,第25類「被服」に含まれる商品を例示的に記載したものである上, 「3 セーター類 カーディガン,セーター,チョッキ」の記載は,明らかに,ニット製品を分類したものであるから, 「ベスト」が,全て「3 セーター類 カーディガン,セーター,チョッキ」に準じるものでなければならないとすることはできない。 次に,Aについては,メッシュ生地自体は,通気性を有する生地であり,被服に用いる生地として何ら特殊なものではない。また,被告が製造販売する「メッシュベスト」 (本件使用商品)は,ベストの所定の箇所に保冷材を取り付けることができるというものであって,例えば,ベスト全体が保冷具になっており,上半身全体を冷却するといった特殊なものではないか 12 ら,これが身体に着用する被服であることを捨象して,保冷具の一部材に すぎないとするのは,誤りである。 したがって,原告の上記主張は失当である。 ? 小括 以上によれば,被告は,要証期間内に,日本国内において,被告が本件審 判の請求に係る指定商品に本件商標の使用をしたことを証明したものといえ るから,本件審決の判断に誤りはない。 したがって,原告主張の取消事由は理由がない。 |
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当裁判所の判断
1 被告による本件商標の「使用」について ? 認定事実 証拠(甲15の1ないし4)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認 められる。 ア 被告は,機械金属製品及び部品の販売,家庭電気器具製品及び部品の販 売等を目的とする株式会社である。 イ 令和2年4月2日当時,被告のウェブサイトの「製品情報」のウェブペ ージ(省略)において, 「2020年1月23日/最終更新日:2020年 2月27日」の記載の下の「2020年版Nクールウェアカタログを掲載 しました」の見出しの下, 「Nクールウェア 2020年版カタログを掲載 しました。, (content/uploads/2020/01/NC 」「 oolwear2020.pdf) (画像をクリックするとPDFファイル が開きます)」との記載とともに,「2020 CATALOG」の文字の 下の中央に「Nクール? ウェア」の文字,下部に「株式会社エヌ・エス・ピ ー」等の表示のあるカタログの表紙の画像が掲載されていた(甲15の2)。 上記画像をクリックすると,本件カタログデータ(甲15の3)を表示す ることができた。 13ウ(ア) 本件カタログデータの1頁には,「空調服 TM とは? 人に備わって 」 「空調服 TM いる発汗による冷却システムを最大限にサポートします。 , を着用することで,体の近くを強制的に風が駆け巡ります。…身体の生 理クーラー ?を空調服 TM が上手に引き出すことにより,脳のセンサーが 快適と判断する為,無駄な汗が出なくなり,体力の温存が出来るように なります。」との記載がある。 (イ) 「Nクール ? ウェアとは?NSPオ 本件カタログデータの2頁には, リジナル仕様の空調服 TM です。 , 」 「お客様の声が続々と届いています。 …建設,建築業界を始め,土木・自動車・流通・運輸・金属・農業など …業界を問わず,あらゆるシーンで採用されています。 との記載がある。 」 また,2頁には,「導入事例」として,「建築現場」 「ガーデニング」 , , 「農作業」等の文字とともに,それぞれの作業風景の画像が表示されて いる。 (ウ) 「Nクール ? シリーズ 本件カタログデータの29頁には, 酷暑環境 でも空調服 TM の効果を最大限発揮!!」の見出しの下,上部に「型式名 NC-606」「専用メッシュベスト」「Nクール? ベストU」 , , (別紙1 参照) 「サイズ:フリー , 色:ブラック」との記載があり,その右側に 商品の画像(別紙2参照)が表示されている。 また,29頁には, 「@Nクール ? ベストのポケッ 「使用方法」として, トにNクール ? パックを入れます。 (前面2個,背面2個) , 」「Aマジック テープを止め,Nクール ? パックが体に密着するようにします。」との記 載がある。 エ 被告のウェブサイトに関する「ホームページ追加・変更・削除申請書」 と題する書面(甲15の1)には,「掲載内容(商品名,ページタイトル)」 欄に「2020年Nクールウェア総合カタログへの差し替えとTOPIC Sへの案内」,「修正@ カタログダウンロード内 ・2019年NSP空 14 調服総合カタログ⇒2020年Nクールウェア総合カタログ 上記内容 に差し替えをお願いします。データは添付を使ってください。添付:カタ ログNクールウェア総合2020年版.pdf」,「修正A TOPICS 2020年1月24日 2020年版Nクールウェアカタログを掲載し ました。内容⇒Nクールウェア2020年版カタログを掲載しました。カ タログダウンロード(PDFファイルが開きます)」,「作業完了日」欄に 「2020/1/23」との記載があり,また,「完了」欄に「20.01. 23」付けの「A係長」の印影が,「内容確認」欄に「20.01.24」 付けの「電算室B」の印影が顕出されている。 ? 本件使用商標の使用について ア(ア) 前記?の認定事実によれば,被告が,令和2年1月23日から同年 4月2日までの間,被告のウェブサイトにおいて,本件カタログデータ (甲15の3)を掲載し, 「製品情報」のウェブページ(甲15の2)に 掲載された本件カタログデータの画像をクリックすることにより,本件 カタログデータの29頁の「メッシュベスト」の商品(本件使用商品) の画像(別紙2参照)及び「Nクール ?ベストU」(本件使用商標)の表 示(別紙1参照)を閲覧できるようにしたことが認められる。 そして,被告が被告のウェブサイトに掲載した本件カタログデータの 29頁を閲覧できるようにした上記行為は,本件使用商品に関する広告 に本件使用商標を付して電磁的方法により提供する行為(商標法2条3 項8号)に当たるものと認められる。 (イ) これに対し原告は,@「製品情報」のウェブページ(甲15の2) には「2020年1月23日/最終更新日2020年2月27日」とい う記載があるので,その内容は同日に更新されたものであり,同年1月 23日の内容のものではなく,また,カタログデータの内容も更新されて いるから,同月に作成された本件カタログデータとは内容が異なる,A甲 1515の1は,被告の内部文書である単なる依頼書である上,その依頼も「作業完了日:2020/1/23」とあるだけで,その依頼により「電磁的方法により提供」された日の記載はない,B甲15の4には,「作成日:2020/01/10」 「更新日:2020/01/10」とある ,だけで, 「製品情報」のウェブページ(甲15の2)の「2020年1月23日/最終更新日:2020年2月27日」に相当する電磁的な履歴がないなどとして,被告は,本件カタログデータ(29頁)が,令和2年1月23日から同年4月2日までの間, 「電磁的方法により提供」がされたものとはいえない旨主張する。 しかしながら,「令和2年4月2日」の時点で被告のウェブサイトの「製品情報」のウェブページ(甲15の2)に掲載されていた本件カタログデータのPDFファイルのプロパティ(甲15の4)に,「作成日:2020/01/10」 「更新日:2020/01/10」と表示され ,ていたことに照らすと,本件カタログデータは,令和2年1月10日に作成され,その後,同年4月2日まで更新がされていないものと認められる。また,前記?エ認定の甲15の1の記載から,被告の社内において,「2020/1/23」を作業完了日として,被告のウェブサイトの「製品情報」のウェブページ内でダウンロードできるカタログデータを「2019年NSP空調服総合カタログ」から「2020年Nクールウェア総合カタログ」のデータに変更し,同ページ内で「TOPICS」としてその旨を告知することについて決裁がされ,2020年(令和2年)1月24日にその作業の完了を確認したことが認められる。上記認定事実は,同年4月2日時点で掲載されていた「製品情報」のウェブページ(甲15の2)の「2020年1月23日」及び「2020年版Nクールウェアカタログを掲載しました」との記載(前記?イ)に合致するものである。これらの事実によれば,被告は,同年1月23日,被告のウェブサ 16 イトに本件カタログデータ(甲15の3)を掲載し,同年2月27日に 「製品情報」のウェブページ(甲15の2)が更新された際も,本件カ タログデータは更新されず,同年4月2日の時点で上記ウェブページに 掲載されていたものと認めるのが相当であるから,@は理由がなく,また, Aは,上記認定を左右するものではない。 次に,Bについては,本件カタログデータのPDFファイルのプロパテ ィ(甲15の4)に「製品情報」のウェブページ(甲15の2)の「2 020年1月23日/最終更新日:2020年2月27日」に相当する 電磁的な履歴がないからといって,上記認定を左右するものではない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 イ 本件商標は,「Nクール」の文字を標準文字で表してなるものである。 次に,本件使用商標は,別紙1のとおり,「Nクール ? ベストU」の緑色 の文字を表してなるものである。そして,本件使用商標の構成中の「ベス ト」の文字部分は,本件使用商品(「メッシュベスト」)との関係では, 商品の種類を表すものであり,「?」の文字部分は登録商標を意味する記 号及び「U」の文字部分はローマ数字の2を表するものであって,いずれ も自他商品識別標識としての機能を有するものと認められないから,本件 使用商標の要部は, 「Nクール」の文字部分であると認めるのが相当である。 そこで,本件商標と本件使用商標の要部の「Nクール」の文字部分を対 比すると,外観は異なるが,構成文字が共通であり,「エヌクール」とい う同一の称呼が生じることからすると,本件使用商標は,全体として本件 商標と社会通念上同一の商標であると認められる。 ウ 以上によれば,被告は,要証期間内の令和2年1月23日から同年4月 2日までの間,日本国内において,本件使用商品に関する広告(本件カタ ログデータ)に本件商標と社会通念上同一の商標である本件使用商標を付 して電磁的方法により提供したものと認められるから,かかる被告の行為 17 は,本件商標の使用(商標法2条3項8号)に該当するものと認められる。 2 本件使用商品の本件商標の指定商品該当性について ? 本件使用商品が本件審判の請求に係る指定商品である第25類「ベスト」 に該当するかについて検討する。 ア(ア) 本件商標の登録出願時(登録出願日平成28年6月20日)に施行 されていた商標法施行令別表(以下「政令別表」という。)には,第25 類の名称として「被服及び履物」が挙げられている。 また,本件商標の登録出願時に施行されていた商標法施行規則別表(平 成28年経済産業省令第109号による改正前のもの。 「省令別表」 以下 という。)には,第25類に属する商品として「一 被服」を掲げ,その 細分類として定められた「(一) 洋服」から「(十一) ナイトキャップ 帽子」までに商品が例示列挙されているが, 「ベスト」については掲げら れていない。 (イ) 次に,本件商標の登録出願時に用いられていた国際分類(第10- 2016版)を構成する類別表(以下「国際分類類別表」という。)の第 25類の「注釈」(Explanatory Note)には,「この類 には,特に,次の商品は含まない:特殊な用途に供する被服及び履物(商 品のアルファベット順一覧表参照) 」と記載されている。一方で,国際 . 分類類別表の「商品のアルファベット順一覧表」には, 「ベスト」「ve ( sts」「waistcoats」 , )は,第25類に属する商品として掲 げられている。 (ウ) 「ベスト」 (「vests」, 「waistcoats」 とは, ) 一般に, 「丈が短く,体にぴったりつく,袖のない胴着の一種」を意味するもの と認められる(甲3,4)。 イ 前記ア認定の政令別表第25類の名称,省令別表に第25類に属するも のとされた商品の内容,国際分類類別表の第25類の「注釈」において示 18 された商品の説明及び国際分類類別表の「商品のアルファベット順一覧表」 の記載, 「ベスト」の用語の意義を総合考慮すると,本件審判の請求に係る 指定商品である第25類「ベスト」とは,省令別表第25類に属する商品 として掲げられた「被服」に含まれる「丈が短く,体にぴったりつく,袖 のない胴着の一種」であって, 「特殊な用途に供するものではないもの」と 解するのが相当である。 これを本件使用商品についてみるに,証拠(甲7,8,13の2,14 の3,15の3)によれば,本件使用商品は,メッシュ生地で作られた, 丈が短く,体にぴったりつく,袖のない胴着であると認められる。 また,前記1?ウの認定事実によれば,本件使用商品は,被告が販売す る「空調服」(電動ファンを内蔵した上着)(甲9)の下に着用する「専用 メッシュベスト」であるが, 「空調服」自体,その有する機能から暑さ対策 が必要となる場面で着用されることが想定された商品であり,実際に,業 界を問わず,様々な場面で利用されており(本件カタログデータの2頁に 「建設,建築業界を始め,土木・自動車・流通・運輸・金属・農業など… 業界を問わず,あらゆるシーンで採用されています。」との記載(前記1? ウ(イ))がある。 ,その用途が限定されていないことからすれば,本件使 ) 用商品も,同様にその用途が限定されていないものと認められるから, 「特 殊な用途に供するものではないもの」と認められる。 したがって,本件使用商品は, 「丈が短く,体にぴったりつく,袖のない 胴着の一種」であって, 「特殊な用途に供するものではないもの」であるか ら,本件商標の指定商品第25類「ベスト」に含まれるものと認められる。 ? これに対し原告は,@類似商品・役務審査基準によれば,第25類は,細 分類として「被服」を含み,更にこの「被服」は「洋服,コート,セーター 類,ワイシャツ類」を含み,このうちの「セーター類」には「3 セーター 類 カーディガン,セーター,チョッキ」が含まれるところ, 「ベスト」「v ( 19ests and waistcoats)」は,「1 洋服」とは別の「3セーター類 カーディガン,セーター,チョッキ」の中に分類されており,これに準じるものでなければならないから,洋装ファッションとしての「機能又は用途」と,それにふさわしい「材料」を有するものでなければならない,A「メッシュベスト」 (本件使用商品)は,保冷剤を保持するための装着具であり,洋装ファッションとしての「機能又は用途」を有せず,また,単純にメッシュ(網)を,保冷剤を保持するように縫製したものにすぎず,保冷剤を装着せずに使用することは実用性がなく実際上も考えられない特別な「材料」からなり,保冷具の一部材にすぎないから,洋装ファッションとしてのベストではなく,第25類の一般的な被服に属する「ベスト」 (類似群コード17A01)の範疇に属する商品であるとはいえない旨主張する。 しかしながら,@については,本件審判の請求に係る指定商品である第25類「ベスト」は,省令別表第25類に属する商品として掲げられた「被服」に含まれる「丈が短く,体にぴったりつく,袖のない胴着の一種」であって,「特殊な用途に供するものではないもの」と解すべきであることは,前記?イ認定のとおりである。また,省令別表には,第25類に属する商品として掲げた「一 被服」の細分類の「(一) 洋服」から「(十一) ナイトキャップ帽子」までに「ベスト」は掲げられていないが,上記細分類に掲げられた商品は,第25類に属する商品の例示列挙であるから,第25類「ベスト」は,上記細分類中の「(三) セーター類 カーディガン セーター チョッキ」に準じるものでなければならないと解すべき理由はない。また,国際分類類別表の第25類の「注釈」において示された商品の説明(前記?ア(イ))に照らしても,第25類「ベスト」は,洋装ファッションとしての「機能又は用途」とそれにふさわしい「材料」を有するものでなければならないと解すべき合理的な根拠はない。 Aについては,本件使用商品は,メッシュ生地で作られた,丈が短く,体 20 にぴったりつく,袖のない胴着であるが(前記?イ),その材料は特殊なもの であるとはいえず,保冷剤を装着することができるという機能を有するとし ても,そのことによって本件使用商品が保冷具の一部材にすぎないものであ るともいえない。また,上記のとおり,第25類「ベスト」は,洋装ファッシ ョンとしてのベストに限られるものではない。 したがって,原告の上記主張は,理由がない。 3 小括 以上によれば,被告は,要証期間内である令和2年1月23日から同年4月 2日までの間,日本国内において,本件審判の請求に係る指定商品第25類「ベ スト」に含まれる本件使用商品に関する広告(本件カタログデータ)に本件商 標と社会通念上同一の商標である本件使用商標を付して電磁的方法により提供 したことが認められ,かかる被告の行為は,本件商標の使用(商標法2条3項8 号)に該当するものと認められる。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,被告は,要証期間内 に,日本国内において,被告が本件審判の請求に係る指定商品に本件商標の使 用をしたことを証明したものといえるから,原告主張の取消事由は理由がない。 |
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結論
以上のとおり,原告主張の取消事由は理由がなく,本件審決にこれを取り消 すべき理由は認められない。 したがって,原告の請求は棄却されるべきものである。 |
裁判長裁判官 | 大鷹一郎 |
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