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事件 令和 3年 (行ケ) 10036号 審決取消請求事件
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原告平塚製菓株式会社
同訴訟代理人弁理士 梅村莞爾 10 被告 クラシエフーズ株式会社
同訴訟代理人弁護士 設樂隆一
同 佐々木健詞
同訴訟代理人弁理士 加藤あい 15 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 20 特許庁が無効2020−890056号事件について令和3年1月26日 にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ? 被告は,次の商標(以下「本件商標」という。)の商標権者である(甲1, 25 2)。 登録番号 第6196454号 1登録出願日 平成31年3月13日 登録査定日 令和元年10月17日 設定登録日 令和元年11月8日 登録商標 別紙記載1(本件商標)のとおり 5 商品及び役務の区分第30類
指定商品 茶,コーヒー,ココア,菓子,パン,サンドイッチ,中華 まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,アイスク リームのもと,シャーベットのもと,穀物の加工品,即席菓子のもと,食 用粉類 10 ? 原告は,次の商標(以下「引用商標」という。の商標権者であった ) (甲3, 4)。 登録番号 第2095320号 登録出願日 昭和61年8月22日 登録査定日 昭和63年7月22日 15 設定登録日 昭和63年11月30日 登録商標 別紙記載2(引用商標)のとおり 商品及び役務の区分 第30類
指定商品 菓子,パン ? 原告は,令和2年7月22日,本件商標の無効審判(以下「本件無効審判」 20 という。)を請求した。請求の理由の要旨は,本件商標と引用商標とは,称呼 及び観念において相紛らわしい類似の商標であり,その指定商品も同一又は 類似する商品であるから,本件商標は,商標法(以下,条文は商標法の条文 を示す。 4条1項11号に該当するものであり, ) 46条1項の規定により無 効にすべきものであるというものであった。 25 特許庁は,本件無効審判を無効2020−890056号事件として審理 し,令和3年1月26日,結論を「本件審判の請求は,成り立たない。審判 2費用は,請求人の負担とする。」との審決(以下「本件審決」という。)をし, その謄本は同年2月4日,原告に送達された。 ? 原告は,令和3年3月4日,本件審決の取消しを求めて本件訴訟を提起し た。 5? なお,被告は,令和2年9月3日,引用商標について50条1項に基づく 不使用取消審判(取消2020−300610号)を請求し,その審判請求 は同月25日登録され(甲3),その審判において原告は答弁をせず,同年1 2月22日,引用商標の商標登録を取り消す旨の審決がされ(乙51),同審 決は令和3年2月5日確定し(乙52),引用商標は,上記審判請求が登録さ 10 れた令和2年9月25日に消滅したものとみなされた(54条2項)。 2 本件審決の理由の要旨 本件審決の理由は別紙審決書(写し)記載のとおりであり,要するに,本件 商標と引用商標は,外観,称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれの ない非類似の商標であり,本件商標の登録は4条1項11号に違反してされた 15 ものではないから,46条1項の規定によりその登録を無効とすることはでき ないというものである。 3 原告の主張する取消事由 商標法4条1項11号の判断の誤り 第3 当事者の主張 20 (原告の主張) 1 本件商標と引用商標は類似しており,これらが非類似であるという本件審決 の判断は誤りであるから,本件審決は取り消されるべきである。 2 本件商標と引用商標が類似している理由は,次のとおりである。 ? 外観 25 本件審決は, 「本件商標と引用商標とを比較すると,両商標の外観は,その 構成文字において『SWEET PARTY』の欧文字の有無に差異がある 3上,二段書きの態様においても明らかな差異を有するから,外観上,明確に 区別できるものである。(本件審決第5の3)と判断した。 」 本件商標は,「スイーツ」と「パーティー」を二段書きにしたものであり, 引用商標は,「スイートパーティー」と「SWEET PARTY」を二段書 5 きにしたものであり,外観は異なるが,いずれも,特殊な書体ではなく,図 形と組み合わされているといった特異な構成でもないから,外観の相違は強 い印象を与えるものではない。したがって,本件審決の上記判断は誤りであ る。 ? 称呼 10 ア 本件審決は,本件商標から生じる「スイーツパーティー」の称呼と引用 商標から生じる「スイートパーティー」の称呼について, 「両称呼は,中間 音における『ツ』の音と『ト』の音に差異があるところ,これらの前音は, 長音であって,比較的弱く発音される音であり,当該差異音は,各々前音 に紛れることなく,明瞭に発音され,聴取されるものであるから,両者は 15 相紛れるおそれはないものである。(本件審決第5の3)と判断した。 」 イ しかしながら,本件商標から生じる「スイーツパーティー」という称呼 と引用商標から生じる「スイートパーティー」という称呼は,ともに9音 (長音も促音(ッ)も1音として)からなる同音数であり,しかも唯一,中間 音の「ツ」と「ト」が相違するのみである。また,「スイーツパーティー」 20 という称呼と「スイートパーティー」という称呼は,ともに前半部の「ス イーツ」の長音「イー」と, 「スイート」に続く後半の「パーティー」の「パ ー」の長音にアクセントが置かれて発音がされるから,聞く者にとっては アクセントが置かれる「イー」と「パー」とが最も印象に残り,その中間 に位置する「ツ」, 「ト」は印象に残りにくい音となる。しかも「ツ」 「ト」 と 25 はともにタ行に属する同行音であり近似音である。 本件審決は,前記アのとおり,『ツ』の音と『ト』の音に差異があると 「 4ころ,これらの前音は,長音であって,比較的弱く発音される音であり」 とも述べるが, 「イ」という母音にアクセントが置かれて長く発音されるか ら,「イー」という音は強く発音される。 したがって,本件商標の「スイーツパーティー」という称呼と引用商標 5 の「スイートパーティー」という称呼は,時と所を異にして聞く場合は, いずれであったか極めて相紛らわしい称呼であり,類似しており,本件審 決の前記アの判断は誤りである。 ? 観念 ア 本件審決は,観念について,「本件商標は,『ケーキ・菓子などのパーテ 10 ィー』程の観念を生じるのに対し,引用商標は, 『甘美なパーティー』『快 , いパーティー』等の観念を生じるものであるから,両者は明らかに異なり, 観念上相紛れるおそれのないものである。(本件審決第5の3)「菓子を 」, 取り扱う業界はもとより,食品を取り扱う業界において,また,その他の 市場においても, 『スイーツ』の文字は『菓子,ケーキ』などの意味合いで 15 使用されている一方, 『スイート』の文字は, 『甘口の(食品)『すてきな』 』 『楽しい』 『かわいらしい』といった意味合いで使用されており,異なる意 味合いで明確に使い分けられている実情が見受けられる(乙3〜乙28)。 そうすると, 『パーティー』の文字と結合した本件商標及び引用商標におい ても,上記1及び2のとおり,本件商標から『ケーキ・菓子などのパーテ 20 ィー』程の観念を生じるのに対し,引用商標から『甘美なパーティー』, 『快 いパーティー』等の観念を生じるのであるから,両者は明らかに異なり, 観念上相紛れるおそれのないものである。(本件審決第5の4)と判断し 」 た。 イ(ア) 本件商標は,英語の sweets に相応する「ケーキ・菓子などの甘いも 25 の」を意味する「スイーツ」という語と, 「集い,集まり」などを意味す る「パーティー」という語とからなり, 「スイーツ」「パーティー」それ , 5ぞれの語が日常的に広く使用されているのみならず,スイーツパーティ 「 ー」という語も, 「ケーキ・菓子などの甘いものをいただく集い,パーテ ィー」として広く使用され,例えばホテルなどでもいわゆるバイキング 形式でケーキなどのスイーツを提供する場合に使用されている。ティー 「 5 パーティー」「カクテルパーティー」などが同様の用語といえる。, 一方,引用商標は,「甘い,甘味な」といった味覚を表す語として日 常的にしばしば用いられる「スイート」,「SWEET」という語と, 「パーティー」,「PARTY」という語からなり,これらから,「ス イートパーティー」 「SWEET PARTY」 「甘いパーティー」 , は, 10 といった意味内容も生じるが,それ自体が一般的に使用されているもの ではないので,特定の観念を生じないものとして認識される。 しかしながら,「スイーツパーティー」という語が一般的になればな るほど,「スイートパーティー」,「SWEET PARTY」は,「ス イーツパーティー」と同じような, 「甘いものを対象としたパーティー」 15 という類似する観念で捉えられ,観念としても非常に近い,紛らわしい ものとして認識されるおそれは十分に生じる。 (イ) 本件審決は,前記アのとおり, 「スイート」には味覚としての「甘い」 という意味の他に, 「すてきな」「楽しい」「かわいらしい」といった意 ,, 味があり,引用商標から「甘美なパーティー」「快いパーティー」の観 , 20 念が生じるとする。 しかし,通常の日本人が,「スイーツ」という語と「スイート」とい う語を別個の用語として認識し,これらを混同して用いることがないと しても,本件においては,市場において転々流通する商品を識別する標 識である「商標」として「スイーツパーティー」と「スイートパーティ 25 ー」とが混同を生じるか否かが問題であって,「スイーツ」という語と 「スイート」という語の違いを強調して商標の類否を判断することは重 6大な誤りである。 しかも,本件審決が引用する乙3〜乙28の例のうち,「スイート」 という語が「甘い」という味覚以外の意味で,すなわち審決のいう「す てきな」,「楽しい」,「かわいらしい」といった意味合いで使用され 5 ている例は,乙27以外に一つもない。そして,乙27では,ウェディ ングドレスについて「スイートウェディングドレス」と使用されている が,これは本件の指定商品「食品」とは無関係の衣類やそのサービスに 関しての使用例である。これ以外の乙号証は,いずれも菓子や食品に関 するものであり,「スイート」,「SWEET」という語が,「甘い」 10 という意味以外に,「すてきな」,「楽しい」,「かわいらしい」とい う意味合いで使用されているものは全くない。食品,とりわけ菓子につ いて「スイート」という語が用いられた場合,味覚を表す「甘い」とい う意味以外の理解をし,わざわざ「甘美な」,「快い」という意味を認 識する者はいないであろう。 15 そのため,引用商標から「甘美なパーティー」「快いパーティー」の , 観念が生じるとする本件審決の上記判断は誤りである。 (ウ) したがって,本件商標と引用商標は観念において相紛らわしく,類 似しており,本件審決の前記アの判断は誤りである。 ? 混同のおそれ 20 ア 本件商標は,商標法6条2項,商標法施行令2条所定の商品区分第30 類に属する菓子をはじめとする多くの食品をその指定商品とし,引用商標 は第30類に属する菓子,パンを指定商品とするところ,これらの指定商 品は,いずれもごく一般的,日常的に取引され消費されるものであり,需 要者は,幼児,老人を含む大衆である。 25 本件商標と引用商標のカタカナ表記(外観)及び称呼は,同行音の近似 音とされる「ツ」と「ト」の一字(一音)が相違するだけであり,本件商 7標を英語表記して引用商標の英語表記と比較しても,「S」一文字の有無 が相違するだけであるから,需要者の通常の注意力を基準とすると,本件 商標と引用商標は相紛らわしく,混同のおそれがある。 イ 原告は,菓子等を製造販売する訴外株式会社銀座コージーコーナー(以 5 下「訴外会社」という。)の申し入れにより,訴外会社がプチケーキの詰め 合わせに「クリスマス スイーツパーティー」という名称を使用すること について引用商標の使用を許諾し,引用商標に基づく禁止権を行使しない 旨の商標使用許諾契約を締結し(甲12,13),また,訴外会社から本件 商標が登録されていることを指摘されて本件無効審判を請求したものであ 10 り,これらのことから,本件商標と引用商標とが相紛らわしいことは,菓 子等の製造販売業者において認識されていたといえる。 ? 類否 以上のとおり,本件商標と引用商標は,外観の相違が強い印象を与えるも のではなく,称呼,観念において類似し,取引の実情等を考慮すると混同の 15 おそれがあるから,類似する。 (被告の主張) 1 本件商標と引用商標は類似しておらず,両者が非類似であるという本件審決 の判断に誤りはない。 2 本件商標と引用商標が類似していない理由は,次のとおりである。 20 ? 外観 本件商標と引用商標は,引用商標にはアルファベット書きがあるのに対し て本件商標にはない点,本件商標が「スイーツ」と「パーティー」を2段書 きにして両方の語を分けているのに対し,引用商標が「スイートパーティー」 と横一連に記載している点,「スイーツ」の「ツ」と「スイート」の「ト」 25 が異なる点で相違するので,外観上明確に区別することができる。 ? 称呼 8本件商標の「スイーツパーティー」という称呼と引用商標の「スイートパ ーティー」という称呼は,中間音の「ツ」と「ト」が異なり,これらは母音 を異にし音質が異なる上,取引者,需要者は,「スイーツ」と「スイート」 のそれぞれの文字が表す観念の違いを認識しつつ各々の商標を称呼し聴取す 5 るから,これらを互いに聞き誤るおそれはない。 ? 観念 本件商標中の「スイーツ」は,「甘いもの,ケーキ・菓子など」を意味す る名詞であるのに対し,引用商標中の「スイート」,「SWEET」は,他 の語と結合し,「甘いこと,甘口,甘美なこと,快いこと,気持ちよいさま」 10 の他,「愛する,愛しい,楽しい」という意味を有する形容詞である。 インターネット上で検索結果の多い「スイーツ」という語を含む用語の例 として「人気スイーツ」「スイーツレシピ」があるが,これらの用語におい , て, 「スイーツ」という語は, 「ケーキ・菓子など」の意味で用いられている。 本件商標及び引用商標の指定商品である菓子の業界では, 「スイート」とい 15 う語は「スイーツ」という語と区別して用いられている。 「スイーツパーティー」という語は,ケーキ,菓子などが提供され,それ らを食べるパーティーの意味で用いられている。他方, 「スイート」という語 は,「甘いこと,甘口」の他,「甘美な,快い,愛しい,楽しい」という意味 で使用されており, 「スイートパーティー」という語が,甘美な,快い,楽し 20 いパーティーという意味で用いられる例(乙65)もある。 そうすると,本件商標は,ケーキ,菓子などが提供され,それらを食べる パーティーという観念を生じるのに対し,引用商標は,甘美な,快い,愛し い,楽しいパーティーという観念を生じ,両者は観念を異にし,相紛れるこ とはない。 25 ? 混同のおそれ 本件商標は被告の使用によって周知となっているのに対し,引用商標は, 9使用の実績がなく,引用商標を取り消す旨の不使用取消審判が確定し,その 審判請求が登録された令和2年9月25日に消滅したものとみなされたから, 本件商標と引用商標との間に混同のおそれはない。 ? 類否 5 本件商標と引用商標は,全体的にみれば,混同のおそれはなく,非類似で ある。 第4 当裁判所の判断 1 当裁判所は,本件商標と引用商標は類似しておらず,これらが非類似である という本件審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由には理由がないと判 10 断する。 2 本件商標と引用商標が類似していない理由は,次のとおりである。 ? 類否の判断 商標の類否は,対比される商標が同一又は類似の商品又は役務に使用され た場合に,その商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか 15 否かによって決すべきであるが,それには,使用された商標がその外観,観 念,称呼等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に 考察すべく,しかも,その商品又は役務に係る取引の実情を明らかにし得る 限り,その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である。 また,商標の外観,観念又は称呼の類似は,その商標を使用した商品又は 20 役務につき出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず,した がって,右3点のうちその1つにおいて類似するものであっても,他の2点 において著しく相違することその他取引の実情によって,なんら商品又は役 務の出所に誤認混同をきたすおそれの認めがたいものについては,これを類 似商標と解すべきではない(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年 25 2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁)。 以下,上記基準に基づいて検討する。 10 ? 外観 本件商標は,「スイーツ」と「パーティー」を二段書きにしたものであり, 引用商標は,「スイートパーティー」と「SWEET PARTY」を二段書 きにしたものであるから,いずれも結合商標であるところ,一見して外観は 5 異なる。 確かに,カタカナ表記の部分に着目すれば,本件商標と引用商標とは, 「ス イーツ」の「ツ」と「スイート」の「ト」が異なるのみであるが,本件商標 は, 「スイーツ」と「パーティー」を二段書きにしたものであり,しかも名詞 と名詞が結合した商標であるから,上段の「スイーツ」を分離して観察する 10 ことが可能である一方,引用商標は「スイートパーティー」と切れ目なく横 書きされており,しかも, 「スイート」の部分は形容詞であって必然的に名詞 の「パーティー」を修飾する関係にあるから,引用商標の「スイートパーテ ィー」の部分は,外観上も不可分一体のものとして強く結びついている点で も異なる。しかも,後記?ア,イ(キ)のとおり, 「スイーツ」という語と「ス 15 イート」という語は別の語として観念され,実際にも区別されて用いられて いることからすると,通常の注意力を有する取引者・需要者からみれば,本 件商標と引用商標のカタカナ表記の部分である「スイートパーティー」とは, 外観上明確に区別することが可能であるから,本件商標と引用商標とは,外 観上非類似と認めるのが相当である。 20 ? 観念 ア 国語辞典の記載 本件商標と引用商標(スイートパーティー)は, 「スイーツ」という部分 と「スイート」という部分が異なる。 国語辞典には,「スイーツ」という語については,【sweets】甘いもの。 「 25 ケーキ・菓子など。」を意味するものと記載されている(広辞苑第7版,乙 2)。 11 他方,「スイート」という語については,【sweet】@甘いこと,甘口。 「 A甘美なこと。快いこと。気持ちよいさま。」を意味するものと記載され, 「スイート」という語を用いた語として, 「−・コーン【〜corn】トウモロ コシの一品種。糖分を多く含む。−・スポット【〜spot】ゴルフのクラブ・ 5 フェースやテニスのラケットなどの,球を最も効果的に打つことができる 点。−・ハート【〜heart】恋人(特に女性)。愛人。−・ピー【〜pea】マ メ科の蔓性観賞用一年草。シチリア島原産で,江戸時代末に渡来。葉はエ ンドウに似,先端は巻ひげとなる。桃色・白色・紫色・斑などの蝶形花を つけ,花後に莢を生じる。園芸品種が多い。ジャコウエンドウ。ジャコウ 10 レンリソウ。−・ホーム【〜home】 (特に新婚の)楽しい家庭。愛の巣。−・ ポテト【〜potato】@サツマイモのこと。Aサツマイモで作った洋風菓子。 サツマイモを蒸して裏漉しし,砂糖・卵黄・バターなどを加えて練り,オ ーブンで焼く。」が挙げられている(広辞苑第7版,乙2)。
上記の国語辞典の記載によれば, 「スイーツ」と「スイート」は別の語と 15 して一般的に認識されており,また,「スイート」という語は,「@甘いこ と,甘口。」の他に, 「A甘美なこと。快いこと。気持ちよいさま。」などの 意味を有し,「スイートハート」「スイートホーム」など, , 「甘いこと」以 外の, 「愛しい」「楽しい」の意味で用いられる例があることが一般的に認 , 識されているものと認められる。 20 イ 実際の使用例 (ア) 「スイーツ」という語の使用例 インターネット上で検索結果の多い「スイーツ」という語を含む用語 の例として「人気スイーツ」があり(検索結果:約 2,060,000 件,乙1 2)「絶対おすすめ!人気スイーツベスト 20!」「人気スイーツをお取 ,, 25 り寄せ」のように使用されている(乙13,14)。また,「スイーツレ シピ」という用語(検索結果:約 1,780,000 件,乙15)は, 「お手軽ス 12 イーツレシピをご紹介」「 ,『本格チョコ』のスイーツレシピ特集」のよう に使用されている(乙16,17)「スイーツ食べ放題」 。 (検索結果:約 1,440,000 件,乙18)という用語は,「20 種類以上のスイーツ食べ放 題!」, 「平日限定スイーツ食べ放題プラン」のように使用されている(乙 5 19,20)これらの用語において, 。 「スイーツ」という語は,「ケーキ・ 菓子など」の意味で使用されている。 (イ) 「スイート」という語の使用例 「スイート」という語が食料品との関係で使用される例としては, 「ス イートワイン」「スイートチョコレート」「スイートチリソース」など ,, 10 があり(乙21〜乙23)「スイート」という語は「甘い,甘口」の意 , 味で使用されている。 (ウ) 「スイーツ」という語と「スイート」という語が同一作成者のウェ ブページで使い分けられている例 a アサヒグループホールディングス株式会社の「アウトドア!おつま 15 みレシピ」の特集ウェブページにおいては, 「アウトドアでも〆のスイ ーツ♪」(乙3〔2枚目〕)という表題の下に様々なデザートのレシピ が紹介されている一方,「BBQが盛り上がるおつまみレシピ♪」(乙 3〔2枚目〕)という表題の下に紹介された「鶏とシーフードのタイ風 漬けこみダレ」のレシピ欄では,スイートチリソースとナンプラーが, 「 20 エスニック風。 と記載されている。 」 ここで,「スイーツ」という語は, 「甘いもの,ケーキ・菓子など」の意味で使用されているのに対し, 「スイート」という語は, 「甘い,甘口」の意味で,チリソースの味を 表すために使用されており,双方の語は使い分けられている。 b 株式会社不二家のウェブページにおいては,不二家ならではのバレ「 25 ンタインスイーツをお届け」「 ,『ルビーチョコレート』のケーキなど, チョコの味わいを楽しむスイーツが登場」 (乙4〔1頁〕 と記載され, ) 13 「スイーツ」という語は, 「甘いもの,ケーキ・菓子など」の意味で使 用されている。他方,「ミルキートリュフ(5粒)」という製品の説明 において,『ミルキートリュフ(5粒) 「 』は,ホワイトチョコクリーム をスイートチョコレートで包んだトリュフです。(乙4〔2頁〕 」 )と記 5 載され,キャンペーン対象商品の欄において「22枚ホームパイ(ス イートバニラ)(乙5〔3枚目〕 」 )という商品が挙げられており,「ス イート」という語は,お菓子又はその材料の味について甘いことを表 す形容詞として使用されている。このように, 「スイーツ」という語と 「スイート」という語は使い分けられている。 10 c 株式会社シャトレーゼのウェブページにおいては,家族で楽しむハ「 ロウィンスイーツを発売!」(乙6〔1頁〕, )「かぼちゃのお化けをイ メージした『ハロウィンデコレーション』と,今年で5年目の発売と なる,グラサージュをかけたスイートチョコムースに目・耳・しっぽ のチョコレートをつけた『ハロウィン黒猫』は,皆様で楽しむハロウ 15 ィンパーティーや手土産にもおすすめです。この他にも,可愛くて食 べるのがもったいない『おばケーキ』や定番のベイクドチーズデコレ ーションは,お子様はもちろん,家族でお楽しみいただけるスイーツ となっております。(乙6〔1頁〕, 」 )「いい夫婦の日スイーツ」(乙7 〔1頁〕, )「いい夫婦の日スイートフルーツデコレーション」 (乙7〔1 20 頁〕, )「いい夫婦の日スイートベリーカップ」 (乙7〔1頁〕, )「いい夫 婦の日スイートショコラケーキ」(乙7〔1頁〕)と記載されており, 「スイーツ」という語は, 「甘いもの,ケーキ・菓子など」の意味で使 用されているのに対し,「スイート」という語は,「甘い,甘口」の意 味で使用されており,双方の語は使い分けられている。 25 d 森永製菓株式会社のウェブページにおいては,『DARS』×パレス「 ホテル東京 コラボレーションスイーツ」(乙8〔1頁〕, )「今回新た 14 に発売する『ダースミルフィーユ』は,東京・丸の内のラグジュアリ ーホテル『パレスホテル東京』とコラボレーションしたオリジナルス イーツです。(乙8〔1頁〕, 」 )「Aさんセレクトの夏のひんやりスイー ツが楽しめる」(乙10〔1頁〕, )「Aさんがセレクトした食材(焼き 5 バナナ,チェリー,キャラメルソース,ラズベリーソース)を使った スイーツも提供いたします。」 (乙10〔1頁〕, )「森永製菓株式会社(東 京都港区芝,代表取締役社長・B)は,自宅で手作りするお菓子(ス イーツ)に関する調査を実施しました。その結果,家族(妻子)がい る男性の83.9%が, 『自宅で作る,または今後作りたいお菓子(ス 10 イーツ)』として『ホットケーキ・パンケーキ』を選択しました。さら に, 『男性が自宅で家族のために,お菓子(スイーツ)を作ること』に は,女性では91.3%,男性でも86.4%が『好感が持てる・ま あ好感が持てる』と回答。(乙11〔1頁〕, 」 )「また,『甘党男子』 『ス イーツ男子』などスイーツへの関心が高い男性が話題になっています。 15 当社では,家庭内での手作りシーンでも変化が起きているのではと考 え,男性のお菓子(スイーツ)作りに関する傾向と意識について,調 査を行いました。(乙11〔1頁〕, 」 )「調査名:J-MONITOR『男性の スイーツ作りに関する調査』(乙11〔1頁〕, 」 )「30〜50代男性の 約90%が『お菓子・スイーツ好き』!」 (乙11〔1頁〕, )「始めに, ママ20 『お菓子(スイーツ)の好意度』を調べたとこと,調査対象者全体で は『好き・まあ好き』の合計が91.1%となりました。(乙11〔1 」 頁〕, )「近年,スイーツ好きの男性『甘党男子』『スイーツ男子』の存 在がクローズアップされていますが・・・」(乙11〔1頁〕)と記載 されており, 「スイーツ」という語は, 「甘いもの,ケーキ・菓子など」 25 の意味で使用されている。他方, 「ミルクチョコレートと,リンゴの果 肉や芳醇な香りがまざりあうスイートな味わいです。(乙9〔3頁〕 」) 15 と記載され, 「スイート」という語は, 「甘い,甘口。」の意味で使用さ れている。さらに,「スイートなビジュアルが本命チョコにお勧め!」 (乙8〔2頁〕)と記載され, 「スイート」という語が, 「甘美な,愛し い,楽しい」の意味で用いられている。 5e このように,「スイーツ」という語と「スイート」という語は使い分 けられており,また,「スイート」という語が,菓子業界においても, 「甘いこと」以外に, 「甘美な,愛しい,楽しい」の意味で用いられて いる例がある。 (エ) 「スイーツパーティー」という語の使用例 10 a えひめ結婚支援センターのウェブページには,恋するスイーツパー「 ティー」「100人の男女が出会う恋のスイーツパーティー!四国中 , 央市中のスイーツ店から50種類以上のスイーツ&ケーキが大集合! 食べ放題スイーツビュッフェでスイートな出会いをしましょう。(乙 」 24,26)と記載されており, 「スイーツ」という語は「ケーキ・菓 15 子など」の意味で使用され, 「スイーツパーティー」という語は,ケー キ,菓子などが提供され,それらを食べるパーティーの意味で用いら れており,他方, 「スイート」という語は, 「甘美な,愛しい,楽しい」 の意味で使用されている。 株式会社アクセス・ネットワークのウェブページには, 「湯田上温泉 20 スイーツパーティ」「バレンタインスイーツパーティー」「スイーツ ,, ビュッフェを楽しみながら交流をしていただきます」 (乙25)と記載 されており, 「スイーツ」という語は「ケーキ・菓子など」の意味で使 用され, 「スイーツパーティー」という語は,ケーキ,菓子などが提供 され,それらを食べるパーティーの意味で用いられている。 25 b さらに,匝瑳市ウェブページには,「サマースイーツパーティー」, 「夏らしいさわやかなスイーツを楽しみながら,素敵な出会いを見つ 16 けてみませんか。(乙56)と記載されている。 」 公益社団法人福島法人会のウェブページには,スイーツパーティー 「 を開催いたします!」「あま〜いスイーツを味わいながら,話に花を , 咲かせて交流してみませんか?」(乙57)と記載されている。 5 株式会社ミヤガワのウェブページには,クリスマススイーツパーテ「 ィー」「明るく楽しいクリスマスパーティーをイメージしたスイーツ , ビュッフェ」「ベリー系を中心にクリスマスならではのスイーツをご , 用意しております」(乙58)と記載されている。 マリエール太田のウェブページには,クリスマススイーツパーティ 「 10 ー」「イベント盛り沢山の新感覚スイーツビュッフェ」 , (乙59)と記 載されている。 株式会社PR TIMESのウェブページには,冬のスイーツパー 「 ティーをお楽しみください」「20種類のスイーツをお楽しみいただ , けます」(乙60)と記載されている。 15 株式会社ネロルのウェブページには「ポップスイーツパーティー」, 「『おかしがいっぱいのパーティーがいい!』という主役のリクエスト にお応えしてPOPなスイーツパーティーをスタイリング」(乙61) と記載されている。 エンスカイNEWSのウェブページには,ゲームに関して, 「カービ 20 ィのスイーツパーティー」「今日はカービィの仲間たちを呼んでスイ , ーツパーティー!今はその準備で大忙し。時にはお友達を手伝いなが ら,たくさんのスイーツを完成させよう!このゲームは誰が立派なパ ティシエか点数を競うゲームです。(乙62)と記載されている。 」 株式会社リーメントのウェブページには,玩具に関して, 「リラック 25 マ いちごスイーツパーティー」「全部集めていちごスイーツパーテ, ィーをしよう」(乙63)と記載されている。 17 株式会社講談社のウェブページには,絵本に関して「ディズニープ リンセス スイーツパーティー シールあそび(ディズニーブック ス), 」「ディズニープリンセスたちと,おしゃれで優雅なスイーツパー ティーを楽しみましょう!」「かわいいスイーツのシールを貼って, , 5 素敵なティータイムを過ごしてね!」「7人のプリンセス,それぞれ, のイメージに合うケーキを選んでね!」「プリンセスたちの優雅なお , 茶会。テーブルセッティングをしましょう。(乙64)と記載されて 」 いる。 c 前記a,bのとおり,「スイーツパーティー」という語は,ケーキ, 10 菓子などが提供され,それらを食べるパーティーの意味で用いられて いる。 (オ) 「スイートパーティー」という語の使用例 大垣市のウェブページには,「令和2年度『水都おおがき?縁むすび』 第2回事業『スイートパーティー』, 」「独身の男女の皆さんに素敵な出会 15 いの場を提供する,かがやき婚活事業『水都おおがき?縁むすび』−。今 回のテーマは,『スイートパーティー』。人気の結婚式場で挙式ムード高 まるスイートなパーティーに参加しませんか。(乙65)と記載され, 」 「スイート」という語が,「甘美な,快い,楽しい」の意味で用いられ, 「スイートパーティー」という語は,甘美な,快い,楽しいパーティー 20 の意味で用いられている。 (カ) 「スイーツ」「スイート」が「パーティー」以外の用語と結合して , 用いられた例 ウェディングドレスショップであるMARIA LOVELACEの ウェブページには,ピンクのウェディングドレスでスウィートウェディ 「 25 ングスタイル」「ピンク色で作り上げるHAPPYで,可愛らしさ溢れ , る一日も素敵ではないでしょうか」「あなたのお肌色にあったピンクで , 18 一歩先を行く,スウィートウェディングを叶えてみて下さい」(乙27) と記載されており,「スウィート」という語は,「甘美な,愛しい,楽し い」の意味で使用されている。 大手前短期大学・大手前学園のウェブページには, 「スイーツウエディ 5 ング2011」「,『スイーツウエディング』とは・・・・」「大手前学園 , の教員・学生が『スイーツ』をテーマにしたウエディングショーを実施 しました。『製菓』『ブライダル』を専門にする教員・学生のコラボレー ションで,スイーツづくしのファッションショーと結婚披露パーティを プロデュースしました。,スイーツづくし! 」「 ホントの結婚披露パーテ 10 ィをプロデュース!」「8月28日(日) , ,大手前大学教員が企画,大手 前短期大学教員がウエディングを,大手前製菓学院教員・学生がスイー ツフルコースを担当し,実際の結婚披露パーティが公開型で行われまし た。, 」「スイーツフルコース MENU」 (乙28)と記載されており, 「スイ ーツ」という語が「甘いもの,ケーキ・菓子など」の意味で使用されて 15 いる。 そして,乙27において「スウィートウェディング」という用語が, 甘美な,愛しい,楽しい結婚式という意味で使用されているのに対し, 乙28では, 「スイーツウエディング」という用語が,甘いもの,ケーキ・ 菓子などがもっぱら提供される結婚披露パーティーという意味で使用さ 20 れており,「ウェディング(ウエディング)」という語と結びついたとき も,「スイート(スウィート)」という語と「スイーツ」という語は,そ れぞれの意味に従って区別して使用されている。 (キ) 以上によれば,実際の使用例において, 「スイーツ」という語と「ス イート」という語は,それらが他の語と結びつく場合も含めて区別して 25 使用されており,「スイーツ」という語は,「甘いもの,ケーキ・菓子な ど」の意味で使用され,他方,「スイート」という語は,「甘い,甘口」 19 の他, 「甘美な,快い,愛しい,楽しい」という意味で用いられているも のと認められる。そして, 「スイーツパーティー」という語は,スイーツ (甘いもの,ケーキ,菓子など)が提供され,それらを食べるパーティ ーの意味で用いられている。 5ウ そうすると,本件商標は,「スイーツ」と「パーティー」を二段書きにし たものであるから,「スイーツ」(甘いもの,ケーキ・菓子など)という名 詞が強調された上で,その全体から, 「スイーツパーティー」という語とし て認識され,スイーツ(甘いもの,ケーキ,菓子など)が提供され,それ らを食べるパーティーという観念を生じるものと認められる。 10 他方,引用商標は,「スイートパーティー」又は「SWEET PART Y」という語として認識され形容詞である「スイート」 「SWEET」が必 然的に名詞の「パーティー」を修飾する関係にあるから「スイート」なパ ーティーを意味し, 「スイート」という語の意味のうち,パーティーを修飾 する場合に当てはまる意味は, 「甘美な,快い,愛しい,楽しい」という意 15 味であるから, 「甘美な,快い,愛しい,楽しいパーティー」という観念を 生じるものと認められる。 ? 称呼 本件商標は「スイーツパーティー」の称呼を生じ,引用商標は「スイート パーティー」の称呼を生じる。本件商標と引用商標は,ともに9音(長音も 20 促音(ッ)も1音として)からなる同音数であり,中間音の「ツ」と「ト」が相 違するのみであり, 「ツ」と「ト」はいずれもタ行の同行音で,比較的近い音 であることを考慮すると,本件商標と引用商標は,称呼上,類似するという べきである。ただし,上記の差異である「ツ」と「ト」のそれぞれの前音は 長音であって,比較的弱く発音される音であるから,当該差異音は,各々前 25 音に紛れることなく比較的はっきりと発音され,聴取され得るものであるこ と,前記?ア,イ(キ)のとおり, 「スイーツ」という語と「スイート」という 20 語は別の語として観念され,実際にも区別されて用いられていることからす ると, 「スイーツ」と「スイート」は1音違いではあるものの,それぞれの音 が表す観念の違いを認識することによって別の語として聞き分けられるもの と認められることを考慮すると,その類似性の程度は高くないというべきで 5 ある。 ? 類否の判断 以上のとおり,本件商標と引用商標は,外観上明確に区別できるものであ ること,本件商標と引用商標は観念において明確な差異があること,本件商 標と引用商標とは称呼において類似しているものの,その類似性の程度は高 10 くないことを考慮すると,本件商標と引用商標は,外観,観念,称呼等によ って取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察する場合に は,同一又は類似の商品に使用された場合に,その商品の出所につき誤認混
同を生ずるおそれはないものと認められる。 したがって,本件商標を引用商標の類似商標と解することはできないとい 15 うべきである。 3 原告の主張の検討 ?ア 原告は, 「スイーツパーティー」という語が一般的になればなるほど「ス イートパーティー」, 「SWEET PARTY」 「スイーツパーティー」 は, と同じような, 「甘いものを対象としたパーティー」という類似する観念で 20 捉えられ,観念としても非常に近い,紛らわしいものとして認識されるお それは十分に生じる旨主張する(前記第3,2?イ(ア))。 しかし,前記2?のとおり, 「スイーツ」という語と「スイート」という 語は,区別して観念されており,それらが他の語と結びつく場合も含めて 区別して使用されているから, 「スイーツパーティー」という語が一般的に 25 なっても,「スイートパーティー」「SWEET PARTY」から類似す , る観念が生ずるとはいえず,原告の上記主張は,採用することができない。 21 イ(ア) 原告は, 「スイーツパーティー」と「スイートパーティー」とが混同 を生じるか否かが問題であって, 「スイーツ」という語と「スイート」と いう語の違いを強調して商標の類否を判断することは重大な誤りである 旨主張する(前記第3,2?イ(イ))。 5 しかし,前記のとおり,本件商標は,「スイーツ」と「パーティー」を 二段書きにしたものであり,しかも名詞と名詞が結合した商標であるか ら,上段の「スイーツ」を分離して観察することが可能であること, 「ス イーツ」「スイート」及び「パーティー」はそれぞれ独立した意味のあ , る単語であって,「スイーツパーティー」と「スイートパーティー」は, 10 「パーティー」の部分において共通し, 「スイーツ」「スイート」は, , 「パ ーティー」という語を修飾して,どのようなパーティーであるかを示す 部分であるから, 「スイーツパーティー」と「スイートパーティー」とが 混同を生じるか否かを明らかにする上で, 「スイーツ」という語と「スイ ート」という語の観念等の違いの有無を検討することは必要である。 15 (イ) また,原告は, 「スイート」という語が「すてきな」「楽しい」「か ,, わいらしい」といった意味で使用されている例は乙27以外にない旨, 食品,とりわけ菓子について「スイート」という語が用いられた場合, 味覚を表す「甘い」という意味以外の理解をし,わざわざ「甘美な」「快 , い」という意味を認識する者はいない旨主張する(前記第3,2?イ(イ))。 20 しかし, 「スイート」という語が,甘美な,愛しい,楽しいという意味 で使用された例は,乙27(前記2?イ(カ))の他, (前記2?イ(ウ) 乙8 d),乙24,乙26(前記2?イ(エ)a),乙65(前記2?イ(オ))に ある。また,食品,とりわけ菓子について用いられる場合でも, 「スイー ト」という語により修飾される語が味覚を生ずるものでない場合は, 「ス 25 イート」という語は,甘美な,愛しい,楽しいの意味で使用されるもの と推認され,前記2?イ(ウ)dのとおり,菓子について, 「スイートなビ 22 ジュアルが本命チョコにお勧め!」(乙8〔2頁〕)として,「スイート」 という語が,甘美な,愛しい,楽しいの意味で用いられている例もある。 したがって,原告の上記主張を採用することはできない。 ?ア 原告は,本件商標及び引用商標の指定商品の需要者は,幼児,老人を含 5 む大衆であり,本件商標と引用商標のカタカナ表記(外観)及び称呼は,
同行音の近似音とされる「ツ」と「ト」の一字(一音)が相違するだけで あり,本件商標を英語表記して引用商標の英語表記と比較しても, 「S」一 文字の有無が相違するだけであるから,需要者の通常の注意力を基準とす ると,本件商標と引用商標は相紛らわしく,混同のおそれがあると主張す 10 る(前記第3,2?ア)。 しかし, 「スイート」「パーティー」という語は,子供を含めて一般に広 , く知られた平易な語であると認められ(弁論の全趣旨)「スイーツ」「ス ,, イーツパーティー」という語も,子供を対象とするゲーム,玩具,絵本に ついて用いられていることからすれば(乙62〜乙64) 広く知られた平 , 15 易な語であると認められるから,難解で聞き慣れない語の中の一字(一音) が相違する場合と異なり,本件商標と引用商標は,外観及び称呼において, 「ツ」と「ト」の一字(一音)が相違するだけであっても,その区別は可 能であるものと認められる。そして,本件商標と引用商標とで観念が明確 に異なることは,前記2?ウのとおりである。したがって,需要者を考慮 20 しても,本件商標と引用商標は混同のおそれがあるとは認められず,原告 の上記主張は,採用することができない。 イ 原告は,菓子等を製造販売する訴外会社の申し入れにより商標使用許諾 契約を締結し,訴外会社から指摘されて本件無効審判を請求したことから, 本件商標と引用商標とが相紛らわしいことは,菓子等の製造販売業者にお 25 いて認識されていたと主張する(前記第3,2?イ)。 しかし,原告と訴外会社との一契約をもって,菓子等の製造業者すべて 23 における認識を判断することは相当ではなく,また,原告が訴外会社と商 標使用許諾契約を締結するに至った経緯や訴外会社の意図は明らかでない から,菓子等の製造販売業者において,一般に,引用商標と「スイーツパ ーティー」という商品名が商標として類似していると認識していたと認め 5 るに足りないというべきである。 したがって,原告の上記主張は,採用することはできない。 4 結論 以上によれば,本件商標と引用商標は類似しておらず,本件商標の登録は4 条1項11号に違反してなされたものではないから46条1項の規定によりそ 10 の登録を無効とすることはできないという本件審決の判断に誤りはなく,原告 主張の取消事由は理由がない。 よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決 する。 知的財産高等裁判所第3部 15 裁判長裁判官 東海林保 20 裁判官 上田卓哉 25 24 裁判官 5中平健 25 別紙 1(本件商標) 5 2(引用商標) 10 (別紙審決書の写し省略) 26
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2021/10/06
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
事実及び理由
全容