関連審決 |
取消2020-300223 |
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事件 |
令和
3年
(行ケ)
10112号
審決取消請求事件
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原告 シグマ電子工業株式会社 同訴訟代理人弁理士 清原義博 清原直己 南毅 被告 星宸科技股?有限公司 同訴訟代理人弁理士 万野秀人 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2022/03/23 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
特許庁が取消2020-300223号事件について令和3年8月4日にした審決を取り消す。 |
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事案の概要
本件は、商標法50条1項に基づく商標登録取消審判請求に係る取消審決に対する取消訴訟である。争点は、別紙商標登録目録記載の商標(以下「本件商標」といい、本件商標に係る商標登録を「本件商標登録」という。)の商標権者である原告が平成29年4月8日から令和2年4月7日までの期間内に本件指定商品について本件商標を使用したか否かである。 1 本件商標登録 原告は、本件商標の商標権者である(甲7、8)。 2 特許庁における手続の経緯等 被告は、令和2年4月8日、特許庁に対し、本件商標登録の取消しを求めて審判請求をした。特許庁は、同審判請求を令和2年4月8日に登録し(甲8)、取消2020-300223号事件として審理した上、令和3年8月4日、本件商標登録を取り消す旨の審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同月13日、 原告に送達された。 本件商標登録について、商標法50条2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」は、平成29年4月8日から令和2年4月7日までの期間(以下「本件要証期間」という。)となる。 3 本件審決の理由の要旨(1) 使用者及び商品カタログについて 「SIGMASTAR(R) 登録第1760095号 PAT」の題目の商品「IC電子点滅器」の商品カタログ(甲5)は、「住所A」在の原告が、印刷業者である双林印刷社に1000部依頼し、平成23年9月30日に納品されたことが認められ、本件商標の商標登録原簿及び原告の現在事項全部証明書(甲4)によれば、本件要証期間における原告の住所は、「住所A」であり、一致することから、 商品カタログ(甲5)は、商標権者の原告が作成したことが認められる。 そして、商標権者である原告は、本件要証期間の平成29年10月4日に、商品カタログ(甲5)の最終頁の作成者の住所の表示を「住所B」に変更した商品カタログ(甲2)を原告の顧客である三和サインワークス社の京都工場の代表者に送付したことが推認できる。 (2) 使用商標について 商品カタログ(甲2、5)の1葉目に「SIGMASTAR(R)」(以下「使用商標」という。)の文字が使用されているところ、使用商標は、構成文字の最後に○付きの「R」が付されているが、これは、付記的な表示であると認められ、○付きの「R」からは、特定の称呼及び観念が生じないものである。 一方、本件商標は、「SIGMASTAR」の欧文字と「シグマスター」の片仮名を上下二段に書して成るところ、その構成中の「シグマスター」の片仮名は、 「SIGMASTAR」の欧文字の読みを記載したことが明らかであることから、 本件商標は、構成全体としての使用に加え、「SIGMASTAR」の欧文字又は「シグマスター」の片仮名のみの使用も容認されると判断するのが相当である。 そして、本件商標の構成中の「SIGMASTAR」の欧文字と商品カタログに記載された「SIGMASTAR(R)」の文字は、○付きの「R」の文字の有無に差異はあるものの、構成文字「SIGMASTAR」のつづりを共通にし、かつ「シグマスター」の称呼を共通にすることからすると、本件商標と使用商標とは、 社会通念上同一の商標と認められる。 なお、使用商標は、商品カタログにのみ使用されているものであり、商品又は商品の包装に使用商標が使用されていることは確認できない。 (3) 使用商品について 商品カタログ(甲2、5)に掲載された商品は、「IC電子点滅器」である。 そして、商品カタログ(甲2、5)によると、「IC電子点滅器」は、ICで制御するネオン、イルミネーション及び蛍光燈のサイン点滅を行う商品と考えられ、 原告も「ICスイッチ」と称すると主張している。 そうすると、当該商品は、ICで制御する開閉器(電気回路の断絶と接続をする装置。回路は開の状態で切れ、閉の状態でつながる。スイッチ。)(出展:デジタル大辞泉)に該当するものと認められ、「配電用機械器具」の範ちゅうに属する商品と判断するのが相当である。 よって、商標権者である原告の取扱いに係る商品「IC電子点滅器」は、本件指定商品である「電子応用機械器具及びその部品」の範ちゅうに属する商品とは認められない。 (4) 小括 以上から、本件商標の商標権者である原告は、原告が作成した商品「IC電子点滅器」の商品カタログに、本件商標と社会通念上同一の商標を使用し、当該商品カタログは、本件要証期間である平成29年10月4日に、原告の顧客である三和サインワークス社の京都工場の代表者に送付したことは認められる。 しかしながら、商標権者である原告の取扱いに係る商品「IC電子点滅器」は、 本件指定商品「電子応用機械器具及びその部品」の範ちゅうに属する商品とは認められないものであり、また、他に、原告が提出した全証拠を総合してみても、本件要証期間に本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標を、本件指定商品に、使用していることを証明するものは見いだすことができない。 (5) 原告の主張について 原告は、「原告が使用する「IC電子点滅器」とは、家庭端末電源から電源を得て駆動する「電子応用機械器具」の内部に用いる電子部品である。」旨を主張する。 しかしながら、商品「IC電子点滅器」の商品カタログ(甲2、5)における「[取扱上の注意]」の項目に、「2.設置場所 通風よく雨水のかからない様、 直射日光をさけて取付けて下さい。」の記載及び「3.点滅器は、取付ける前に看板等の電球の点灯試験をしてから接続して下さい。」の記載があることからすると、 原告の取扱いに係る商品「IC電子点滅器」は、電子応用機械器具の内部に用いる電子部品には該当しない商品というのが相当である。 したがって、原告の上記主張は、採用することができない。 (6) むすび 以上のとおり、原告が提出した全証拠によっては、原告は、本件要証期間に、日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件商標又は本件商標と社会通念上同一と認められる商標に関し、本件指定商品のいずれかについて、商標法2条3項各号に規定する使用行為を行ったことを証明していない。 また、原告は、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。 したがって、本件商標は、商標法50条の規定により、その登録を取り消すべきものである。 |
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原告主張の審決取消事由(本件商標の使用についての判断の誤り)
1 本件審決は、原告が本件要証期間内である平成29年10月4日にした使用(本件商標と社会通念上同一の商標を付した甲5の商品カタログ(以下「本件カタログ」という。)の頒布)につき、これが本件指定商品についての使用に当たらないと判断した。しかしながら、次のとおり、本件審決の上記判断は誤りである。 (1) 本件カタログに記載された型番「F31 8AV」のIC電子点滅器(以下「本件商品1」という。)は、線材、CPU、IC、抵抗、ダイオード、ケミコン、ボリウム、積層セラミックコンデンサ、半導体素子、ダイオード、トランス及び制御基板から構成されているところ、これら部品は、いずれも本件指定商品に該当するから、これら部品により構成される本件商品1も、本件指定商品に該当する。 (2) 本件審決は、本件商品1(ICにより制御する開閉器)は商標法施行規則別表第9類3に定める「配電用の機械器具」の範ちゅうに属するから、本件商品1が同類15に定める「電子応用機械器具及びその部品」(本件指定商品)の範ちゅうに属するとは認められないと判断した。しかしながら、「配電」とは、変電所から需要端までの電力輸送を意味するから、「配電用の機械器具」として同類3に掲げられている「開閉器」ないし「点滅器」とは、電信柱等に取り付けられた屋外にある開閉器ないし点滅器(電気回路を開閉するスイッチ)をいうと解すべきである。 これに対し、本件商品1は、配電後の末端使用電源(家庭用のコンセント等)から電源を得て使用する照明器具の内部の電子回路内に配設され、当該照明器具を点滅させる部品(ICスイッチ)である。したがって、本件商品1は、「配電用の機械器具」として掲げられている「開閉器」ないし「点滅器」に該当せず、同類3に定める「配電用の機械器具」の範ちゅうに属しない。したがって、本件商品1が同類3に定める「配電用の機械器具」の範ちゅうに属することを根拠に、これが同類15に定める「電子応用機械器具及びその部品」の範ちゅうに属しないとすることはできない。 2 原告は、甲16の1のカタログに記載された「フルカラーLEDコントロール装置 LU3-9B」と称する商品(以下「本件商品2」といい、本件商品1と併せて「本件各商品」という。)に本件商標と社会通念上同一の商標を付した上、 これを本件要証期間内である平成29年12月7日、平成30年11月6日及び同年12月17日に販売した。本件商品2は、RGB3色のLEDを内蔵するIC回路により、これらのLEDを個別に発色させ、又は特定色を組み合わせて同時に発色させ、青、紫、赤、黄、緑、水色、白等の色を調光する電子機器であり、本件指定商品に該当する。 したがって、原告が本件要証期間内に本件商標又はこれと社会通念上同一の商標を本件指定商品について使用したとは認められないとした本件審決の判断は誤りである。 |
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被告の主張
以下のとおり、本件各商品は、いずれも本件指定商品に該当しないから、原告が本件要証期間内に本件商標又はこれと社会通念上同一の商標を本件指定商品について使用したとは認められないとした本件審決の判断に誤りはない。 1 本件商品1について (1) 本件商品1は、開閉器ないし点滅器(IC電子点滅器)であるところ、仮にこれを構成する部品にICやCPUが含まれていたとしても、本件商品1自体が開閉器ないし点滅器であることに変わりはない。そして、特許庁商標課編「「商品及び役務の区分」に基づく類似商品・役務審査基準」(以下「類似商品・役務審査基準」という。)によると、「開閉器」ないし「点滅器」は、商標法施行規則別表第9類3に定める「配電用又は制御用の機械器具」の範ちゅうに属するから、開閉器ないし点滅器である本件商品1は、同類3に定める「配電用又は制御用の機械器具」の範ちゅうに属するものである。したがって、本件商品1は、同類15に定める「電子応用機械器具及びその部品」の範ちゅうに属しない。 (2) 原告は、「配電」が変電所から需要端までの屋外の電力輸送を意味するとして、家庭内等で使用する照明器具の内部の電子回路内に配設される本件商品1は商標法施行規則別表第9類3に定める「配電用の機械器具」の範ちゅうに属しないと主張する。しかしながら、同類3に定める商品は、「配電用の機械器具」ではなく「配電用又は制御用の機械器具」とされ、これに当たるものとして「開閉器」ないし「点滅器」が掲げられているのであるから、仮に「配電」の定義が上記のとおりであるとしても、本件商品1(LED電球、ネオン等への電力の「制御」のために使用される開閉器ないし点滅器)は、同類3に定める「制御用の機械器具」の範ちゅうに属し、同類15に定める「電子応用機械器具及びその部品」の範ちゅうに属しない。 2 本件商品2について 本件商品2も、LED電球への電力の制御のために使用される開閉器ないし点滅器であるから、本件商品1と同様、商標法施行規則別表第9類3に定める「制御用の機械器具」の範ちゅうに属し、同類15に定める「電子応用機械器具及びその部品」の範ちゅうに属しない。 |
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当裁判所の判断
1 本件各商品が本件指定商品に該当するか否かについて (1) 商標法施行規則別表において定められた商品又は役務の意義は、商標法施行令別表の区分に付された名称、商標法施行規則別表において当該区分に属するものとされた商品又は役務の内容や性質、国際分類を構成する類別表注釈において示された商品又は役務についての説明、類似商品・役務審査基準における類似群の同一性などを参酌して解釈するのが相当である(最高裁平成21年(行ヒ)第217号同23年12月20日第三小法廷判決・民集65巻9号3568頁参照)。 (2) 本件指定商品は、本件商標について書換登録申請がされた日(平成13年3月15日(甲7、8)。以下「本件申請日」という。)に施行されていた商標法施行規則別表(平成13年経済産業省令第202号による改正前のもの。以下「省令別表」という。)第9類15に定める「電子応用機械器具及びその部品」を意味するものと解されるので、同類15に定める「電子応用機械器具及びその部品」の意義について検討する。 ア 本件申請日に施行されていた商標法施行令別表(平成13年政令第265号による改正前のもの)には、「第9類 科学用、航海用、測量用、写真用、音響用、 映像用、計量用、信号用、検査用、救命用、教育用、計算用又は情報処理用の機械器具及び電気式又は光学式の機械器具」との定めがある。 イ 省令別表には、次の定めがある。 (ア) 「第9類3 配電用又は制御用の機械器具 開閉器 継電器 遮断機 制御器 整流器 接続器 断路器 蓄電器 抵抗器点滅器 配線函 配電盤 ヒューズ 避雷器 変圧器 誘導電圧調整器 リアクトル」(イ) 「第9類15 電子応用機械器具及びその部品 (1) 電子応用機械器具 ガイガー計数器 高周波ミシン サイクロトロン 産業用X線機械器具 産業用ベータートロン 磁気探鉱機 磁気探知機 磁気ディスク用シールドケース 地震探鉱機械器具 水中聴音機械器具 超音波応用測探器 超音波応用探傷器 超音波応用探知機 電子応用静電複写機 電子応用扉自動開閉装置 電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路、磁気ディスク、磁気テープその他の周辺機器を含む。) 電子顕微鏡 電子式卓上計算機 ワードプロセッサ (2) 電子管 X線管 光電管 真空管 整流管 ブラウン管 放電管 (3) 半導体素子 サーミスター ダイオード トランジスター (4) 電子回路(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路を除く。) 集積回路 大規模集積回路」 ウ なお、弁論の全趣旨により本件申請日の後に発行されたものと認められる類似商品・役務審査基準(乙1、2)においても、「配電用又は制御用の機械器具」として「開閉器」及び「点滅器」が掲げられているが、「電子応用機械器具及びその部品」としては、「開閉器」も「点滅器」も掲げられていない。 エ 上記ア及びイによると、本件指定商品(「電子応用機械器具及びその部品」)は、上記イ(イ)のとおり省令別表第9類15に定める「電子応用機械器具及びその部品」に該当するものとして掲げられた「電子計算機」、「X線管」、「ダイオード」、「集積回路」等の商品を含み、上記イ(ア)のとおり同類3に定める「配電用又は制御用の機械器具」に該当するものとして掲げられた「開閉器」及び「点滅器」を含まないと解するのが相当である。そして、証拠(甲13〜15)及び弁論の全趣旨によると、ここでいう「開閉器」ないし「点滅器」とは、電気回路を開閉する装置、すなわち、スイッチを意味するものと認められる。 (3) これを本件各商品についてみるに、証拠(甲5、9〜12、16の1、甲17〜19、23、24)及び弁論の全趣旨によると、本件各商品は、いずれも照明器具の点滅を制御したり、その色を調節したりするICスイッチであると認められるから、本件各商品は、少なくとも省令別表第9類3に定める「制御用の機械器具」としての「開閉器」ないし「点滅器」に該当するというべきである。したがって、本件各商品は、同類15に定める「電子応用機械器具及びその部品」、すなわち、本件指定商品には該当しないといわざるを得ない。 (4) 原告は、本件各商品の部品(CPU、IC等)はいずれも本件指定商品に該当するから、本件各商品も本件指定商品に該当する旨主張する。しかしながら、 本件において本件指定商品に該当するか否かが問題とされるのは、完成品たる本件各商品であり、その部品ではないから、仮に原告が主張するとおり本件各商品の全ての部品が本件指定商品に該当するとしても、そのことは、本件各商品が本件指定商品に該当しないとの上記判断を左右しない。 また、原告は、「配電」は変電所から需要端までの屋外の電力輸送を意味し、家庭内等において使用する照明器具の内部に配設される本件商品1は「配電用の機械器具」の範ちゅうに属しないとして、本件商品1が「配電用の機械器具」の範ちゅうに属し、「電子応用機械器具及びその部品」の範ちゅうに属しないとした本件審決の判断は誤りである旨主張する。しかしながら、上記(3)において説示したとおり、本件商品1は、少なくとも「制御用の機械器具」としての「開閉器」ないし「点滅器」に該当するものであるから、仮に「配電」の意義が原告の主張するとおりであったとしても、そのことは、本件商品1が本件指定商品に該当しないとの上記判断を左右しない。 2 上記1のとおりであるから、本件カタログが本件指定商品に関するものであると認めることはできず、また、本件商品2が本件指定商品に該当すると認めることもできない。原告が主張する各使用は、いずれも本件指定商品についてのものであるとはいえず、審決取消事由は失当である。 3 以上の次第であるから、原告の請求は理由がない。 |
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追加 | |
(別紙)商標登録目録1登録番号第1472404号2登録日昭和56年7月31日3商標権の存続期間の更新登録日平成3年10月29日4商標権の存続期間の更新登録日平成13年4月10日5指定商品の書換登録日平成13年10月24日6商標権の存続期間の更新登録日平成23年2月22日7商標権の存続期間の更新登録日令和3年3月12日8登録商標9指定商品の書換登録前の商品及び役務の区分並びに指定商品第11類「電気機械器具、電気通信機械器具、電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)電気材料」10指定商品の書換登録後の商品及び役務の区分並びに指定商品第9類「電子応用機械器具及びその部品」(以下「本件指定商品」という。) |
裁判長裁判官 | 本多知成 |
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裁判官 | 浅井憲 |
裁判官 | 中島朋宏 |