運営:アスタミューゼ株式会社
  • ポートフォリオ機能


追加

関連審決 不服2021-4816
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
元本PDF 裁判所収録の別紙1PDFを見る pdf
元本PDF 裁判所収録の別紙2PDFを見る pdf
元本PDF 裁判所収録の別紙3PDFを見る pdf
事件 令和 4年 (行ケ) 10041号 審決取消請求事件
5
原告株式会社ぐるなび
同訴訟代理人弁理士 飯島紳行
同 藤森裕司 10
被告特許庁長官
同 指定代理人小松里美
同 綾郁奈子
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2022/10/31
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 15 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2021-4816号事件について令和4年3月28日にした20 審決を取り消す。
事案の概要
本件は、商標法4条1項11号を理由とする商標登録出願拒絶査定に対する 不服審判請求の不成立審決に対する取消訴訟である。
1 特許庁における手続の経緯等(争いのない事実)25 ? 原告は、令和2年9月11日、令和元年7月23日にされた商標登録出願 (商願2019-100303号)の商標法10条1項の分割出願として、
1 別紙1記載のとおりの構成からなり、第35類、第39類、第41類及び第 43類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として商標登録出願(商 願2020-113205号)をしたが、その後、指定役務については、第 35類、第39類、第41類及び第43類に属する別紙1記載のとおりの役 5 務に補正された(以下、この補正後の上記出願に係る商標を「本願商標」と いう。 。
) ? 原告は、令和3年2月4日付けの拒絶査定を受けたため、同年4月14日、
拒絶査定不服審判請求をした。
特許庁は、上記請求を不服2021-4816号事件として審理を行い、
10 令和4年3月28日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下 「本件審決」という。)をし、その謄本は、同年4月18日、原告に送達され た。
? 原告は、令和4年5月16日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起 した。
15 2 本件審決の理由の要旨 本件審決は、以下のとおり、本願商標が商標法4条1項11号に該当する商 標であると判断した。
? 本願商標について 本願商標は、別紙1記載のとおり、白色の二重叶結びの紐を有するピンク20 色の花弁模様が配された赤色の御守袋の図形(以下「本願図形部分」という。) の中央に、大きく黄色で「御守」の文字を縦書きしてなるところ、その構成 中の「御守」の文字は、
「災難を逃れるため、着物や帯などにつけるもの。御 札。護符。」の意味を有する語であるから、本願図形部分と「御守」の文字と は、観念的に密接な関連性を有するものであり、かつ、視覚的にも一体的な25 ものとして看取されるものと認められる。
そうすると、本願商標は、本願図形部分と「御守」の文字部分とが不可分 2 一体となって「護符」等の観念を生じるものとみるのが相当である。
したがって、本願商標は、その全体から、「オマモリ」の称呼及び「護符」 等の観念を生じるものである。
? 引用商標について 5 ア 登録第431494号商標(以下「引用商標1」という。)は、別紙2の 1記載のとおりであり、
「お守」の文字を手書き風の書体をもって縦書きし てなるところ、当該文字は、
「護符」等の意味を有する「御守」の語を平仮 名と漢字で表したものと認められるから、「オマモリ」の称呼を生じ、「護 符」等の観念を生じるものである。
10 イ 登録第4425327号商標(以下「引用商標2」という。)は、別紙2 の2記載のとおりであり、
「御守」の文字を毛筆体風の書体をもって横書き してなるところ、当該文字は、ややデザイン化されているものの、
「護符」 等の意味を有する「御守」の語を表したものと容易に理解できるものと認 められるから、「オマモリ」の称呼を生じ、「護符」等の観念を生じるもの15 である。
ウ 登録第5730472号商標(以下「引用商標3」という。)は、別紙2 の3記載のとおりであり、「omamori」の文字(「i」の点はデザイ ン化されている。)を横書きしてなるところ、当該文字は、一部デザイン化 されているものの、
「護符」等の意味を有する「御守」の語の欧文字表記と20 容易に理解できるものと認められるから、「オマモリ」の称呼を生じ、「護 符」等の観念を生じるものである。
エ 登録第6054423号商標(以下「引用商標4」という。)は、別紙2 の4記載のとおりであり、
「守」の文字を中央に有する角の丸い黄色の正方 形の図形部分(以下「引用図形部分」という。)の下に、
「omamori」25 の文字を配してなるところ、引用図形部分と「omamori」の文字部 分とは、分離観察が取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合し 3 ているとは認められないから、
「omamori」の文字部分を要部として 抽出することも許される。
そして、
「omamori」の文字部分は、
「護符」等の意味を有する「御 守」の語の欧文字表記と容易に理解できるものと認められるから、引用商 5 標4からは「オマモリ」の称呼を生じ、「護符」等の観念を生じる。
? 商標の類否について 本願商標と、引用商標1ないし3及び引用商標4の要部「omamori」 の文字部分とは、外観上異なるものであるとしても、称呼上同一であり、観 念上も同一であるから、その外観称呼及び観念によって、取引者、需要者10 に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すると、両者は、役務 又は商品の出所について誤認混同を生じさせるおそれのある類似の商標であ る。
? 指定商品指定役務の類否について ア 本願商標と引用商標115 本願商標の指定役務中の第35類「菓子・パン・サンドイッチ・中華ま んじゅう・ハンバーガー・ピザ・ホットドッグ・ミートパイ・人工甘味料・ 角砂糖・果糖・氷砂糖(調味料) ・砂糖・麦芽糖・はちみつ・ぶどう糖・粉 末あめ・水あめ(調味料)及び穀物の加工品の小売又は卸売の業務におい て行われる顧客に対する便益の提供」は、引用商標1の指定商品中の第320 0類「菓子(甘栗・甘酒・氷砂糖・みつまめ・ゆであずきを除く。 、粉末 ) あめ、水あめ、パン」と類似の役務と認められる。
イ 本願商標と引用商標2 本願商標の指定役務中の第35類「おむつの小売又は卸売の業務におい て行われる顧客に対する便益の提供」は、引用商標2の指定商品である第25 25類「マイナスイオン・遠赤外線を発生する被服、その他の被服」と類 似の役務と認められる。
4 ウ 本願商標と引用商標3 本願商標の指定役務中の第35類「犬用鎖・ペット用被服類・ペット用 ベッド・犬小屋・小鳥用巣箱・ペット用食器・ペット用ブラシ・犬のおし ゃぶり・観賞魚用水槽及びその付属品・小鳥かご・小鳥用水盤及びペット 5 用おもちゃの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の 提供」は、引用商標3の指定商品である第20類「愛玩動物用骨つぼ」と 類似の役務と認められる。
エ 本願商標と引用商標4 本願商標の指定役務中の第39類に属する役務は、引用商標4の指定役10 務中の第39類に属する役務と同一又は類似の役務と認められ、本願の指 定役務中の第41類に属する役務は、引用商標4の指定役務中の第41類 に属する役務と同一又は類似の役務と認められ、また、本願商標の指定役 務中の第43類に属する役務は、引用商標4の指定役務中の第39類「企 画旅行の実施、旅行者の案内、旅行に関する契約(宿泊に関するものを除15 く。)の代理・媒介又は取次ぎ、旅行の企画・手配及び予約」と類似の役務 と認められる。
3 取消事由 商標法4条1項11号該当性判断の誤り
当事者の主張
20 1 原告の主張 ? 本願商標の認定の誤り 御守袋の表面に記載された「御守」などの文字は、御守の内容・種類を区 別する目的で付されているものであり、本来的に商品 役務の出所を表示し、
・ 自他商品・役務を識別する標章として採択されているものではない。神社や25 寺の名称やシンボルマークが自他商品・役務を識別する標章として機能する 場合があったとしても、御守袋の表面に記載された「御守」などの文字が出 5 所識別機能を果たすことはない。このような御守についての一般的な認識を 前提とすれば、客観的に一見して御守袋と認識できる本願商標について、そ の構成中の「御守」の文字は、単に図形として表された御守の内容・種類と して表されているものにすぎず、ピンク色の桜の花弁模様や全体的なデザイ 5 ンとともに図形として一体的に把握され、全体として「白色の二重叶結びの 紐を有し、ピンク色の桜の花弁模様を配し、
『御守』の文字を御守袋の表面に 表した赤色の御守」なる図形商標と認識されるものである。そうすると、本 願商標がその指定役務に使用される場合、本願商標からは役務の出所識別標 識としての「オマモリ」の称呼及び「御守」の観念は生じない。
10 ? 引用商標4の認定の誤り 本件審決は、引用商標4を文字部分と引用図形部分に分けて文字部分を要 部と認定したが、誤りである。
? 商標の類否判断の誤り ア 本願商標の構成全体から格別の称呼観念が生ずることはないから、本15 願商標と引用商標との類比は、それぞれの構成全体の有する外観上の印象 が互いに相紛らわしいか否かによってするほかない。
そうすると、本願商標と引用商標1ないし4とは、外観において全体の 構成が相違し、外観上異なるものである以上、取引者、需要者に与える印 象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すると、両者は、役務又は商品20 の出所について誤認混同を生じさせるおそれのない非類似の商標と判断 されるものである。
イ 仮に、本願商標から「オマモリ」の称呼
「護符」等の観念が生じたとし ても、御守袋と認識できる本願商標について、
「御守」の文字は、ピンク色 の桜の花弁模様や全体的なデザインとともに一体的に把握されるもので25 あって、本願商標は、全体として「白色の二重叶結びの紐を有し、ピンク 色の桜の花弁模様を配し、
『御守』の文字を御守袋の表面に表した赤色の御 6 守」との印象を強く抱かせるものであるから、このような本願商標と引用 商標の外観上の顕著な相違から看取できる印象は、称呼及び観念から看取 できる印象を凌駕しているものである。
したがって、本願商標と引用商標とは、全体として、役務又は商品の出 5 所について誤認混同を生じさせるおそれがなく、両者は類似するものでな い。
? 指定商品指定役務類否判断の誤り ア 引用商標1について 一般に、「菓子(甘栗・甘酒・氷砂糖・みつまめ・ゆであずきを除く。 、
)10 粉末あめ、水あめ、パン」等の取引において、製造・販売と小売等の役務 の提供が同一事業者によって行われているのが通常であるとまでは認め られないから、引用商標1の指定商品をその商品の小売等の役務を提供す る事業者の製造又は販売に係る商品であると誤認するおそれがあるとは いえない。
15 イ 引用商標2について 「おむつ」と「被服」は、生産部門、販売部門、原材料、品質、用途、
需要者等を異にし、商品それ自体においても十分区別できるものである。
ウ 引用商標3について 本願商標の指定役務の取扱商品は、ペットが生きている際に使用される20 商品であって、一般的なペットショップで販売されているものである。こ れに対し、引用商標3の指定商品は、ペットが亡くなった後に使用される 商品であって、ペット用の仏具の販売業者や葬祭の提供を行う事業者が販 売しているものである。したがって、引用商標3の指定商品は本願商標の 指定役務に類似しない。
25 2 被告の主張 ? 本願商標の認定の誤りの主張について 7 本願商標は、白色の二重叶結びの紐を有するピンク色の花弁模様が配され た赤色の御守袋の図形の中央に、
「御守」の文字を黄色で縦書きしてなるもの であるところ、当該「御守」の文字は、
「災難を逃れるため、着物や帯などに つけるもの。御札。護符。」の意味を有する一般的な語(乙5)であり、当該 5 白色の二重叶結びの紐、ピンク色の花弁模様及び赤色の色彩は、御守(護符 等)と一体となった御守袋の中でも、ありふれたデザイン及び色彩といえる ものであって(甲1ないし6)、御守(護符等)以外の何かを連想させるよう な特徴を有するものではないから、本願商標は、その構成全体として、護符」 「 等を直ちに理解させるものであり、また、
「オマモリ」の称呼が生じるものと10 いうべきである。
そして、本願商標の全体から理解される「護符」等は、本願商標の指定役 務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様等との関連を 想定できないから、本願商標の指定役務との関係において、出所識別標識と して強い印象を取引者又は需要者に与えるものである。
15 したがって、本願商標は、その全体から、役務の出所識別標識としての「護 符」等の観念及び「オマモリ」の称呼が生じるものである。
? 引用商標4の認定の誤りの主張について 引用商標4の引用図形部分と「omamori」の文字部分とは、その構 成が明らかに相違する上に、ある程度の間隔を設けて配置され、横幅も不ぞ20 ろいな状態で、特に工夫もなく両者が上下に配置されているだけであること からすると、分離観察を許さないほど全体が不可分一体になっているもので はない。
また、
「omamori」の文字部分は、引用図形部分に比べて小さいとは いえ、十分に認識可能な太い字体で記載されており、引用商標4の指定役務25 との関係において識別力が弱いという事情も見いだせないことからすれば、
この部分を要部として抽出し、この部分だけを本願商標と比較して商標その 8 ものの類否を判断することも許されるというべきである。
そして、当該「omamori」の文字部分は、
「護符」等の意味を有する 「御守」の語(乙5)の欧文字表記と容易に理解できるものといえるから、
これよりは、「オマモリ」の称呼を生じ、「護符」等の観念を生じるものであ 5 る。
したがって、引用商標4は、その構成中の「omamori」の文字部分 (以下「引用商標4の要部」という。)から「オマモリ」の称呼を生じ、「護 符」等の観念を生じるものである。
? 商標の類否判断の誤りの主張について10 ア 本願商標からは、役務の出所識別標識としての「護符」等の観念及び「オ マモリ」の称呼が生じるものというべきであるから、本願商標と引用商標 1ないし4との類否を外観上の印象のみによって比較し判断するほかな い旨の原告の主張は、その前提において誤りである。
イ 本願図形部分である、白色の二重叶結びの紐、ピンク色の花弁模様及び15 赤色の色彩は、御守(護符等)と一体となった御守袋の中でも、ありふれ たデザイン及び色彩といえるものであるから、本願商標に接する者が、こ のようなデザイン及び色彩に着目しこれを記憶して、本願商標を、原告の 主張に係る「白色の二重叶結びの紐を有し、ピンク色の桜の花弁模様を配 し、
『御守』の文字を御守袋の表面に表した赤色の御守」のごとく詳細な観20 念を想起させる図形商標として認識するというのは不自然というべきで ある。そして、仮に、本願商標が、これに接する者に、上記のような詳細 な観念を想起させることがあるとしても、このような「・・・の御守」と の観念は、結局、
「護符」等の観念に包含されるものであるし、本願商標か ら「護符」等の観念及び「オマモリ」の称呼が生じることを妨げるもので25 はない。
? 指定商品指定役務類否判断の誤りの主張について 9 ア 引用商標1について 本願商標の指定役務のうち「菓子、パン、サンドイッチ、中華まんじゅ う、ハンバーガー、ピザ、ホットドッグ、ミートパイ、穀物の加工品」の 小売等の役務と、引用商標1の指定商品中の「菓子(甘栗・甘酒・氷砂糖・ 5 みつまめ・ゆであずきを除く。 、パン」は、役務の提供と商品の製造、販 ) 売とが同一営業主によって行われ、需要者の範囲や用途も一致するといえ る実情がある。このことは、例えば、
「菓子、パン、サンドイッチ、中華ま んじゅう、ハンバーガー、ピザ、ホットドッグ、ミートパイ、穀物の加工 品」又はこれらに属する商品の製造、販売と、当該商品の小売等の役務の10 提供とが同一営業主によって行われている事例(乙11ないし17)から も確認できる。
さらに、本願商標の指定役務のうち「人工甘味料、砂糖、麦芽糖、はち みつ、ぶどう糖、粉末あめ、水あめ(調味料)」の小売等の役務と、引用商 標1の指定商品中の「粉末あめ、水あめ」は、当該役務の提供と当該商品15 の製造、販売とが同一営業主によって行われ、当該役務が提供される場所 と当該商品が販売される場所とが一致し、需要者の範囲や用途も一致する といえる実情がある。このことは、例えば、
「人工甘味料、砂糖、麦芽糖、
はちみつ、ぶどう糖、粉末あめ、水あめ(調味料)」又はこれらに属する商 品の製造、販売と、当該商品の小売等の役務の提供とが同一営業主によっ20 て行われている事例(乙18ないし乙22)からも確認できる。
加えて、本願商標の指定役務のうち「角砂糖、果糖、氷砂糖(調味料)」 の小売等の役務と、引用商標1の指定商品中の「水あめ」についても、当 該小売等の役務が取り扱う商品である「角砂糖、果糖、氷砂糖(調味料)」 と、引用商標1の指定商品中の「水あめ」とが、いずれも甘味を加える商25 品であるという共通性を有するものであるから、両商品の小売等の役務が 提供される場所と両商品が販売される場所とが一致し、需要者の範囲や用 10 途も一致するといえる実情がある。このことは、例えば、
「角砂糖、果糖、
氷砂糖(調味料)、水あめ(調味料)」が同一の営業主が運営する店舗にお いて、同一のカテゴリーの商品として販売又は小売等の役務の提供がされ ている事例からも確認できる(乙23)。
5 また、本願の上記指定役務のうち「菓子」の小売等の役務と、引用商標 1の上記指定商品のうち「水あめ」についても、当該役務の提供と当該商 品の製造、販売が同一営業主によって行われ、役務が提供される場所と商 品が販売される場所とが一致し、需要者の範囲や用途も一致するといえる 実情がある(乙24)。
10 したがって、本願商標の上記各指定役務は、引用商標1の上記各指定商 品と類似する。
イ 引用商標2について 本願商標の指定役務において小売等の対象とされている「おむつ」と、
引用商標2の指定商品が属する被服とは、用途及び需要者の範囲が一致し、
15 役務の提供場所と商品の販売場所とが一致し、同一の営業主によって商品 の製造、販売と当該商品の小売等の役務の提供が行われている実情がある。
このことは、例えば、乳幼児用布おむつと乳幼児用又は子供用被服が同一 の営業主によって、製造、販売と当該商品の小売等の役務の提供とが行わ れている事例(乙25ないし29)や、大人用紙おむつと大人用被服及び20 これに属する商品が同一の営業主によって、製造、販売と当該商品の小売 等の役務の提供とが行われている事例(乙30、31)において確認する ことができる。
したがって、本願商標の上記指定役務は、引用商標2の上記指定商品と 類似する。
25 ウ 引用商標3について 本願商標の指定役務において小売等の対象とされている「犬小屋」等と 11 引用商標3の指定商品とは、いずれも「ペット用の商品」として、共通性 を有し、一般に、用途や需要者が一致するものであるといえる。そして、
本願商標の上記商品の小売等の役務と、引用商標3の上記指定商品とは、
役務の提供と商品の販売を行う営業主が一致し、役務の提供場所と商品の 5 販売場所とが一致し、用途及び需要者の範囲が一致するといえる実情があ る。このことは、例えば、同一営業主が運営するオンラインショップにお いて、本願商標の小売等の役務が取扱う上記商品又はこれに属する商品と、
引用商標3の指定商品又はこれに属する商品とが、いずれも、ペット用の 商品に属するものとして販売され、当該商品の小売等の役務が提供されて10 いる事例(乙32ないし34)からも、確認することができる。
したがって、本願商標の上記指定役務は、引用商標3の上記指定商品と 類似する。
当裁判所の判断
1 商標法4条1項11号該当性15 ? 本願商標について 本願商標は、白色の二重叶結びの紐を有するピンク色の花弁模様が配され た赤色の御守袋の図形の中央に、
「御守」の文字を黄色で縦書きしてなるもの であるところ、御守袋の上に「御守」と表示されているその外観からみて、
御守(護符)を連想させるものであるから、本願商標は、その構成全体から20 少なくとも御守の観念を生じ、そして、
「御守」の文字が御守袋の上に表示さ れていることに照らして、少なくとも「オマモリ」の称呼が生じることは明 らかというべきである。
? 引用商標1について 引用商標1は、「お守」の文字を手書き風の書体をもって縦書きしてなる25 ものであるから、御守(護符)の観念を生じ、「オマモリ」の称呼を生じる ことは明らかというべきである。
12 ? 本願商標と引用商標1との類否について 本願商標と引用商標1とは、称呼及び観念を同一とし、両者の外観が異な るとしても、本願商標の外観は、本願商標及び引用商標1から生じる観念及 び称呼をそのまま体現した御守(護符)そのものであり、その相違は称呼及 5 び観念から生じる出所の認定を何ら左右するものではないから、両者は、役 務又は商品の出所について誤認混同を生じさせるおそれのある類似の商標と 認められる。
? 本願商標の指定役務と引用商標1の指定商品との類否について 本願商標の指定役務中の第35類「菓子・パン・サンドイッチ・中華まん10 じゅう・ハンバーガー・ピザ・ホットドッグ・ミートパイ・人工甘味料・角 砂糖・果糖・氷砂糖(調味料) ・砂糖・麦芽糖・はちみつ・ぶどう糖・粉末あ め・水あめ(調味料)及び穀物の加工品の小売又は卸売の業務において行わ れる顧客に対する便益の提供」 「小売又は卸売の業務において行われる顧 は、
客に対する便益の提供」の対象商品である「菓子・パン・サンドイッチ・中15 華まんじゅう・ハンバーガー・ピザ・ホットドッグ・ミートパイ・人工甘味 料・角砂糖・果糖・氷砂糖(調味料)・砂糖・麦芽糖・はちみつ・ぶどう糖・ 粉末あめ・水あめ(調味料)及び穀物の加工品」と引用商標1の指定商品中 の第30類「菓子(甘栗・甘酒・氷砂糖・みつまめ・ゆであずきを除く。 、
) 粉末あめ、水あめ、パン」とが類似するから、上記引用商標1の指定商品と20 類似する役務と認められる。
? 小括 以上のとおり、本願商標は、引用商標1に類似する商標であって、引用商 標1の指定商品に類似する役務について使用するものであるから、商標法4 条1項11号に該当する商標である。
25 2 原告の主張について ? 本願商標の認定の誤りの主張について 13 原告は、前記第3の 1 のとおり、本願商標の構成中の「御守」の文字は 御守の内容・種類を表しているにすぎず、全体的なデザインとともに一体的 に把握されるものであるから、本願商標がその指定役務に使用される場合、
本願商標からは役務の出所識別標識としての「オマモリ」の称呼及び「御守」 5 の観念は生じない旨主張する。
しかしながら、前記1?のとおり、御守袋の上に「御守」と表示されてい る本願商標は、御守袋の形状の図案それ自体からして、 御守」 「 の観念を生じ、
「オマモリ」の称呼が生じるものといえるところ、その表面の「御守」の文 字は、その表面中央にあって文字として記載され、かつ、文字としてはその10 記載しかない以上は、当然のこととして、当該御守袋が何であるかを示すも のというべきであり、そこからも「御守」の観念を生じ、
「オマモリ」の称呼 が生じることは明らかである。そして、本願商標に係る指定役務のうち、少 なくとも、おむつ、食品、化粧品、ペット用品、ベビーオイル等を含む第3 5類の商品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供15 (以下「小売等役務」という。)について、御守が、これら商品の小売等役務 の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法又 は時期その他の特徴、数量又は価格と関連性を有することは想定できないか ら、上記のように本願商標から生じる「御守」の観念や「オマモリ」の称呼 が本願商標の当該指定役務の内容、対象そのものを示すものとは理解されな20 い。
このように本願商標から生じる「御守」の観念や「オマモリ」の称呼が本 願商標の当該指定役務の内容、対象を示すものとはいえない以上は、これら の観念称呼が役務の出所識別標識として生じる可能性を否定することはで きないから、原告の上記主張を採用することはできない。
25 ? 商標の類否判断の誤りの主張について 本願商標の構成全体から格別の称呼観念が生ずることはないことを前提 14 とする原告の主張(前記第3の 1 ア)については、その前提に誤りがある ことは前記のとおりであるから、採用することができない。
次に、原告は、前記第3の 1 イのとおり、仮に、本願商標から「オマモ リ」の称呼、護符(御守)の観念が生じたとしても、本願商標は、全体とし 5 て「白色の二重叶結びの紐を有し、ピンク色の桜の花弁模様を配し、『御守』 の文字を御守袋の表面に表した赤色の御守」との印象を強く抱かせるもので あるから、本願商標と引用商標の外観上の顕著な相違から看取できる印象は、
称呼及び観念から看取できる印象を凌駕している旨主張する。
しかしながら、本願図形部分である、
「白色の二重叶結びの紐、ピンク色の10 花弁模様及び赤色の色彩」のうち、
「白色の二重叶結びの紐」は御守袋の特徴 にほかならず、また、
「ピンク色の花弁模様及び赤色の色彩」は御守袋として は格別印象に残るような形状・色彩を有するものではないから御守袋を構成 する地模様と認識されるのがせいぜいのところであり、それらが単独で看者 に強い印象を与えるものではない。
15 そうすると、本願商標から生じる「オマモリ」の称呼及び護符(御守)の 観念が本願図形部分から看取できる印象に凌駕されることはない。
したがって、原告の上記主張を採用することはできない。
? 指定商品指定役務類否判断の誤りの主張について 原告は、引用商標1の指定商品の製造・販売と小売等役務の提供が同一事20 業者によって行われていることは通常とまではいえないから、引用商標1の 指定商品を同指定商品に係る小売等役務を提供する事業者が製造又は販売す る商品であると誤認するおそれがあるとはいえない旨主張する。
しかしながら、ある製品の製造業者が当該製品の販売場を持つなどして、
当該販売場を置くとともに、同時に、顧客に対する当該製品の品揃え・陳列、
25 接客等のサービスを提供するなどして小売等役務の提供場所とし、当該製品 の販売行為を促進して最終的には当該製品の販売行為により収益を上げよう 15 とすることは、自然な商業的取引の在り様といえ、これと異なる特殊な事情 がない限りは、通常行われることと推認されるものというべきである。
そして、引用商標1の指定商品について、その製造・販売と小売等役務の 提供が別事業者によって行われていることが通常であるとするような特殊な 5 事情は本件証拠からは認められず、かえって、本願商標の指定役務である「菓 子、パン、サンドイッチ、中華まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、ホットド ッグ、ミートパイ」の小売等役務に係る商品と、これに類似する引用商標1 の指定商品である「菓子(甘栗・甘酒・氷砂糖・みつまめ・ゆであずきを除 く。 、パン」について、自社工場を持つ営業主がそれら製品を自社店舗で販 )10 売するなど、その製造販売と小売等役務が同一営業主によって行われること がよくあるとの実情は公知の事実ともいえ、被告からも、その一例の指摘が ある(乙11ないし17)。
以上からすると、原告の上記主張を採用することはできない。
? 小括15 以上のとおりであるから、原告の各主張は、本願商標が引用商標1に類似 する商標であって引用商標1の指定商品に類似する役務について使用するも のであるとする前記判断を左右するようなものとはいえない。
3 結論 以上の次第であり、その余の点について判断するまでもなく、本願商標が商20 標法4条1項11号に該当する商標であるとの本件審決の判断は相当であって、
取消事由は理由がないから、原告の請求を棄却することとして、主文のとおり 判決する。
追加
2516 裁判長裁判官菅野雅之5裁判官本吉弘行10裁判官中村恭17 (別紙1)本願商標商標の構成5指定役務第35類「おむつの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、菓子・パン・サンドイッチ・中華まんじゅう・ハンバーガー・ピザ・ホットドッグ・ミートパイ・人工甘味料・角砂糖・果糖・氷10砂糖(調味料)・砂糖・麦芽糖・はちみつ・ぶどう糖・粉末あめ・水あめ(調味料)及び穀物の加工品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、口臭用消臭剤・動物用防臭剤・薬剤(農薬に当たるものを除く。及び医療用試験紙の小売又は卸売の)業務において行われる顧客に対する便益の提供、化粧品・歯磨き及15びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、犬用鎖・ペット用被服類・ペット用ベッド・犬小屋・小鳥用巣箱・ペット用食器・ペット用ブラシ・犬のおしゃぶり・観賞魚用水槽及びその付属品・小鳥かご・小鳥用水盤及びペット用おもちゃの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益18 の提供、ベビーオイルの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」第39類「外国人観光旅客に対するバスによる乗客の輸送、外国人観光旅客に5対する鉄道・車両・船舶・航空機による輸送及び輸送情報の提供、
外国人観光旅客に対する旅行及び観光に関する情報の提供、外国人観光旅客に対する荷物の宅配に関する情報の提供、輸送及び旅行に関する情報の提供、バス・タクシー及びハイヤーの運賃・運行状況及び予約状況に関する情報の提供、車両による輸送及びこれに関す10る情報の提供、全地球測位システム(GPS)を用いた車両・船舶・航空機の位置情報の提供、自動車の貸与及びこれに関する情報の提供、船舶の貸与及びこれに関する情報の提供、観光業務及びこれに関する情報の提供、企画旅行の実施及びこれに関する情報の提供、
旅行者の案内及びこれに関する情報の提供、旅行に関する契約(宿15泊に関するものを除く。の代理・媒介又は取次ぎ及びこれらに関す)る情報の提供」第41類「外国人観光旅客に対する娯楽情報の提供、インターネットによる娯楽情報の提供、ショー・競技会・試合・コンサート及び娯楽イベン20トの運営並びに上演、映画・音楽・スポーツ・ビデオ及び演劇の娯楽の提供、技芸・スポーツ又は知識の教授及びこれらに関する情報の提供、セミナーの企画・運営又は開催及びこれらに関する情報の提供、スポーツイベント及び文化イベントの手配及び運営、リクリエーション及びレジャー活動の企画・運営又は開催、食に関するイ25ベントの企画・運営又は開催、人・企業又は地域間の交流会の企画・運営及び開催、娯楽イベントの運営、パーティーの企画・運営・開19 催、パーティーの企画・運営又は開催に関する情報の提供、興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。及びこれらに関する情報の提供、
)通訳及びこれに関する情報5の提供、翻訳及びこれに関する情報の提供」第43類「外国人観光旅客に対する宿泊施設の提供に関する情報の提供、外国人観光旅客に対する宿泊施設の予約の取次ぎ、宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ及びこれらに関する情報の提供」10(以上)20 (別紙2)引用商標1登録第431494号商標(引用商標1)5商標の構成登録出願日昭和25年12月23日設定登録日昭和28年9月15日更新登録日平成25年3月26日10指定商品第30類「菓子(甘栗・甘酒・氷砂糖・みつまめ・ゆであずきを除く。、粉末あめ、水あめ、もち、パン」)(平成17年7月13日指定商品の書換登録)2登録第4425327号商標(引用商標2)15商標の構成登録出願日平成11年11月24日設定登録日平成12年10月20日更新登録日令和2年10月5日21 指定商品第25類「マイナスイオン・遠赤外線を発生する被服、その他の被服」3登録第5730472号商標(引用商標3)5商標の構成登録出願日平成26年7月11日設定登録日平成27年1月9日指定商品第20類「愛玩動物用骨つぼ」104登録第6054423号商標(引用商標4)商標の構成登録出願日平成29年10月4日15設定登録日平成30年6月22日指定役務第39類「企画旅行の実施、旅行者の案内、旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ、旅行の企画・手配及び予約、ハイヤー又はタクシーの手配、自動車の貸与」20第41類22 「技芸・スポーツ又は知識の教授、通訳、翻訳、セミナーの企画・運営又は開催、興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。、社会・文化・経済・教育)5活動の記録資料・作品・報告・統計資料の発表会又は展示会の企画・運営又は開催」(以上)23