関連審決 |
無効2019-890054 |
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事件 |
令和
3年
(行ケ)
10081号
審決取消請求事件
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5 原告 エスキー工機株式会社 同訴訟代理人弁護士 河部康弘 同訴訟代理人弁理士 齋藤昭彦 10 同齋藤博子 同訴訟復代理人弁護士 藤沼光太 被告 株式会社エイ・アイ・シー 15 同訴訟代理人弁護士 錦織淳 同 新阜直茂 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2022/10/18 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 20 事 実 及 び 理 由第1 請求特許庁が無効2019−890054号事件について令和3年6月9日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要25 1 特許庁における手続の経緯等? 被告は、次の商標(以下「本件商標」という。)の商標権者である。(甲818)登録番号 第5769618号商標の構成 ゴミサー(標準文字)指定商品 第7類「生ゴミ処理機、液体肥料製造装置」5 登録出願日 平成27年1月19日登録査定日 平成27年5月22日設定登録日 平成27年6月5日? 原告は、本件商標が出願されるよりも前から、 「ゴミサー」との名称(以下「引用商標」という。)の業務用生ごみ処理機を販売している(以下「原告商10 品」という。 。(甲5))? 原告は、令和元年9月20日、本件商標について、商標登録無効審判を請求した(無効2019−890054号)。(甲127)? 特許庁は、令和3年6月9日、「本件審判の請求は、成り立たない。」とする審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同月18日に原告に15 送達された。 ? 原告は、令和3年7月9日、本件審決の取消しを求めて、本件訴えを提起した。 2 本件審決の理由の要旨本件審決の理由は、別紙審決書(写し)のとおりであり、取消事由との関係20 では、要するに、引用商標が周知著名であるとは認められず、また、被告が不正の目的をもって本件商標を使用するものとはいえないから、本件商標は、商標法4条1項10号及び同項19号には該当しないというものである。 3 取消事由? 取消事由1(商標法4条1項10号及び同項19号)25 引用商標の周知性の有無に関する判断の誤り? 取消事由2(商標法4条1項19号)2不正の目的の有無に関する判断の誤り第3 当事者の主張1 取消事由1(引用商標の周知性の有無に関する判断の誤り)〔原告の主張〕5 以下のとおり、引用商標は、本件商標の出願時及び登録査定時において、原告商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものであるから、 引用商標の周知性を否定した本件審決の判断には誤りがある。 ? 需要者の範囲について業務用生ごみ処理機は、処理方式により、@コンポスト型、A減容・消滅10 型(無排水式)(以下「減容・消滅型A」という。 、B減容・消滅型(排水処)理式)(以下「減容・消滅型B」といい、減容・消滅型Aと併せて「消滅型」という。 及びC乾燥式に分類されるところ、 ) それぞれの特徴が大きく異なることから、処理方式ごとに需要者が異なる。 そして、原告商品は、減容・消滅型Bの業務用生ごみ処理機であるから、 15 引用商標の周知性を検討するに当たっては、肥料の製造を主目的とするコンポスト型の業務用生ごみ処理機の需要者ではなく、生ごみを大量に減容・減量化することを主目的とする減容・消滅型Bの業務用生ごみ処理機の需要者を基準とすべきであり、また、減容・消滅型Bの業務用生ごみ処理機については、需要者層が極めて限定されることも考慮すべきである。 20 ? 原告商品の市場占有率に関する主位的主張ア 原告商品の売上実績等によれば、平成12年度ないし平成26年度の減容・消滅型Bの業務用生ごみ処理機の市場における原告商品の占有率は、 28%ないし60%と算出又は推計され、これ以前も高い市場占有率であったと考えられる。 25 このように、原告商品が高い市場占有率を維持してきたことからすれば、 本件商標が出願された平成27年の時点において、引用商標が周知性を有3していたことは明らかである。 イ 被告は、引用商標は被告の販売代理店としての活動によって周知となったものであり、原告の出所識別機能を果たすものとして機能していない旨主張するが、原告商品は、被告が販売代理店として原告商品の販売を始め5 るよりも前から市場占有率が高かったものである。 ? 原告商品の市場占有率に関する予備的主張ア コンポスト型及び乾燥式の業務用生ごみ処理機と、消滅型の業務用生ごみ処理機とでは、処理時間が大きく異なるために需要者が異なる。したがって、仮に、原告商品の市場占有率につき、減容・消滅型Bの業務用生ご10 み処理機の需要者を基準とすることが許されないとしても、消滅型の業務用生ごみ処理機の需要者を基準とすべきである。 そして、原告商品の売上実績等によれば、平成12年度ないし平成26年度の消滅型の業務用生ごみ処理機の市場における原告商品の占有率は、 15.5%ないし31.1%と算出又は推計され、これ以前も高い市場占15 有率であったと考えられる。 イ コンポスト型の業務用生ごみ処理機と、消滅型及び乾燥式(以下、併せて「減量型」という。)の業務用生ごみ処理機とでは、前者が肥料の製造を目的とし、後者が生ごみの減容又は減量を目的とする点で異なるために需要者が異なる。したがって、仮に、原告商品の市場占有率につき、減容・20 消滅型Bの業務用生ごみ処理機の需要者を基準とすることが許されないとしても、減量型の業務用生ごみ処理機の需要者を基準とすべきである。 そして、原告商品の売上実績等によれば、平成12年度ないし平成26年度の減量型の業務用生ごみ処理機の市場における原告商品の占有率は、 9.2%ないし23.4%と算出又は推計され、これ以前も高い市場占有25 率であったと考えられる。 ウ 仮に、処理方式を問わず、業務用生ごみ処理機全体の市場における原告4商品の周知性について検討したとしても、原告商品の売上実績等によれば、 平成12年度ないし平成26年度の業務用生ごみ処理機全体の市場における原告商品の占有率は、 9%ないし13.6. 2%と算出又は推計され、 これ以前も高い市場占有率であったと考えられる。そして、自動車業界等5 の他業界における市場占有率及び周知性の関係性に鑑みれば、原告商品が周知であったことは明らかである。 ? 原告商品が高額な商品であること減容・消滅型Bの業務用生ごみ処理機の平均価格は、50kg/日型が380万円、100kg/日型が660万円、500kg/日型が1775万10 円、1000kg/日型が4500万円と、かなり高額である。そして、通常の需要者であれば、このような高額な商品を購入する場合には、各社の製品の金額や性能等を吟味するものであり、その際に自らが購入した商品以外の商品の名称も認識すると考えられるから、原告商品の知名度は、市場占有率を上回るものといえる。 15 ? 取引者である販売代理店に周知であること原告商品は30社以上の販売代理店による販売実績があること、減容・消滅型Bの業務用生ごみ処理機の年間納入台数は年間数百台程度である上、製造メーカーはわずか10社にすぎないことからすれば、取引者である販売代理店において、引用商標は周知であったというべきである。 20 ? 納品先が著名な企業・団体であること原告商品が日本国内の様々な著名企業・団体に納品されていることは、生ごみ処理機の分野において原告が第一人者であり、原告商品が周知であることの証左である。 ? 被告が引用商標の周知性を利用していること25 被告は、原告と被告との間における原告商品に係る販売代理店契約(以下「本件代理店契約」という。)が解消された後、株式会社テクノウェーブ(以5下「テクノウェーブ」という。)が平成14年から「イーキューブ」との名称で製造していた業務用生ごみ処理機の名称を「ゴミサー」に変えて販売するようになった(以下「被告商品」という。 。また、被告は、被告商品を宣伝)する被告のウェブページにおいて、被告商品の製造元をテクノウェーブでは5 なく原告と表記しているほか、原告商品の販売実績を被告商品の販売実績であるかのように記載するなどしている。 このように、被告は、原告商品の知名度にフリーライドし、また、原告商品と被告商品との混同を故意に生じさせようとするなど、不正競争防止法(以下「不競法」という。)等に違反する様々な行為をしており、このことは、引10 用商標が周知であることを推認させるものである。 〔被告の主張〕? 原告商品は、山形県又は庄内地域に限定されてはいたものの、製造・販売が開始された当初は一定程度の将来性が期待されていた商品であった。しかしながら、原告商品の販売台数は、平成11年の281台をピークとして次15 第に減少していった。 このように原告商品の売上げが低迷していた状況において、年間60台程度の販売台数をかろうじて維持することができたのは、被告の営業努力の賜物であるから、引用商標が周知性を有するなどとは到底いえない。 ? そもそも、原告商品は、販売台数そのものが極端に少ないことからすれば、 20 そのような販売実績をもって引用商標が全国的に周知であるなどとは到底いえない。また、原告商品の販売実績の6割ないし8割は被告によるものであり、本件代理店契約の解消後における販売台数は極めて少ないと推測されることからすれば、原告商品について周知性を論じること自体が無意味である。 ? 原告商品の販売台数は、ピーク時においても全国でわずか数百台であった25 上、減少傾向にあるというのであるから、原告が主張する市場占有率は、統計学的に無意味である。 62 取消事由2(不正の目的の有無に関する判断の誤り)〔原告の主張〕以下のとおり、被告は、周知である引用商標をフリーライド等の目的で使用しているから、被告が不正の目的をもって本件商標を使用するものとはいえな5 いとした本件審決の判断には誤りがある。 ? 前記1で主張したとおり、引用商標は周知であった上、被告は、販売代理店として原告商品の知名度について十分な知識があったことからすれば、被告には原告商品の知名度に便乗して不正に利益を得る目的があったと推認される。 10 ? 前記1?で主張したとおり、被告は、原告商品を取り扱わなくなった後も、 被告商品に「ゴミサー」の名称を付して販売するなど、被告商品が原告商品であると誤認させ、不競法等に違反するような行為を継続している。また、 被告は、令和3年11月に行われた「第4回感染症対策総合展」において、 原告商品の写真が掲載されるとともに、原告商品の販売実績等が記載される15 などした被告商品のカタログを配布したものである。これらの行為からすれば、被告に不正の目的があったことは明らかである。 ? 被告は、原告代表者が元々有していた「ゴミサー」の登録商標(登録第4284828号。以下「旧原告登録商標」という。)につき原告代表者がその登録商標の更新手続を拒んだため、被告においてやむなく本件商標を登録し20 た旨主張するが、実際には、原告代表者に何も告げることなく本件商標を登録したものである。この経過に関する被告の主張は、何らの証拠に基づくものではない上、その内容や時系列等に不自然な点がある。 ? 被告は、原告代表者が旧原告登録商標の更新をしなかったことを奇貨として、原告商品のデッドコピーである被告商品を同一名称で販売しようとして25 本件商標を出願したものであるから、不正の目的を有していたものといえる。 〔被告の主張〕7? 原告代表者は、旧原告登録商標の更新手続を怠ってその商標権を失った上、 このことを被告には一切知らせず、平成26年10月末頃にこのことを取引先から指摘された被告から再度の商標登録を求められたにもかかわらず、これを拒否した。 5 被告は、このような経過から、被告の取引先に対する信用を保持するために、やむを得ず、原告に通告した上で、正当な自衛行為として本件商標の商標登録をしたものであるから、被告に不正の目的があったということはできない。 ? 原告は、旧原告登録商標に係る権利を更新期間の徒過によって自ら放棄し10 た上、被告による本件商標の商標登録を容認し、その後、長期にわたって被告による本件商標の商標登録を放置して、逆に本件商標にフリーライドしてきたものであること、原告商品の販売実績は、ほとんどが被告によるものであり、 「ゴミサー」の商標に係る信用は被告自身に化体していることなどからすれば、本件請求は、信義則に反するものとして許されない。 15 ? 被告のウェブページにおいて、原告商品の写真や、被告商品の製造元が原告である旨の記載が残存しているのは、原告が一方的に取引を停止したことや、ウェブページの修正作業に遅れや漏れが生じたことによるものであることからすれば、これらをもって、被告に不正の目的があったということはできない。 20 第4 当裁判所の判断1 認定事実前記前提事実に加え、各文末に掲記した証拠(枝番があるものは枝番を含む。)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ? 原告商品の販売実績等25 ア 原告は、平成4年に原告商品を製品化し、 「ゴミサー」との名称で販売を開始した。(甲5、11)8イ 原告代表者は、平成5年12月7日、ゴシック体の「ゴミサー」の文字を商標とし、指定商品を第7類「生ゴミ処理機」とする商標登録出願をし、 平成11年6月18日に設定登録を受けた(旧原告登録商標) (甲2)。 ウ 原告商品は、平成6年度に山形県酒田市内の小学校に導入され、その後、 5 ワシントンホテルチェーンのホテルに導入されるなどして、販売実績を伸ばしていった。(甲19ないし21)エ 平成4年から平成29年における原告商品の年間販売台数は、次のとおりであった(括弧内は累積販売台数) (甲93、123)。 平成4年 4台10 平成5年 13台(17台)平成6年 93台(110台)平成7年 98台(208台)平成8年 96台(304台)平成9年 131台(435台)15 平成10年 269台(704台)平成11年 284台(988台)平成12年 269台(1257台)平成13年 211台(1468台)平成14年 179台(1647台)20 平成15年 106台(1753台)平成16年 98台(1851台)平成17年 83台(1934台)平成18年 68台(2002台)平成19年 58台(2060台)25 平成20年 54台(2114台)平成21年 58台(2172台)9平成22年 52台(2224台)平成23年 70台(2294台)平成24年 56台(2350台)平成25年 78台(2428台)5 平成26年 86台(2514台)平成27年 78台(2592台)平成28年 89台(2681台)平成29年 74台(2755台)? 原告商品に係る受賞歴及び報道歴等10 ア 原告は、平成6年には酒田市の新田産業振興基金から新田産業賞を、平成8年には日本発明振興協会から考案功労賞を、平成12年には環境やまがた推進ネットワークから環境やまがた大賞を、それぞれ受賞した。 (甲22ないし24)イ また、次の各新聞報道において、 「ゴミサー」の名称と共に原告商品が取15 り上げられた。 (ア) 平成9年5月1日付け山形新聞庄内版(甲3)(イ) 平成9年5月18日付け荘内日報(甲20)(ウ) 平成15年5月18日付け荘内日報(甲19)(エ) 平成17年11月11日付け日刊工業新聞(甲4)20 ? 本件代理店契約等ア 被告は、平成8年頃から、原告の販売代理店として原告商品を販売するようになり、主に保育園への販売を担当していた。 (甲59、60、62、 63、乙8)イ 被告が、平成31年3月12日から開催された「2019 new 環25 境展」に原告商品を出展しようとしたところ、原告代表者は、これに強く反対するなどし、令和元年5月10日、被告に対し、同月末日をもって取10引を停止する旨通告した。その後、本件代理店契約は解消され、被告は、 同月7日納入分を最後に、現在に至るまで原告商品の販売をしていない。 (甲45ないし48、乙6ないし8)? 被告による被告商品の販売等5 ア 旧原告登録商標は、平成21年6月18日が存続期間の満了日であったところ、原告代表者が存続期間の更新申請をしなかったことから、平成22年3月10日、上記満了日に遡ってその登録が抹消された。 (甲2、25、 128)イ 被告は、弁理士に依頼して、旧原告登録商標の登録が抹消されているこ10 とを確認した上で、平成27年1月19日、商標を「ゴミサー」の標準文字とし、指定商品を第7類「生ゴミ処理機、液体肥料製造装置」とする商標登録出願をし、同年6月5日に設定登録を受けた(本件商標) (甲1、 。 乙1ないし5、9)ウ テクノウェーブは、平成14年頃から「イーキューブ」との名称の業務15 用生ごみ処理機を製造していたところ、被告は、上記?イのとおり原告商品の販売を終了した後、テクノウェーブが製造する上記業務用生ごみ処理機を「ゴミサー」の名称で販売するようになった(被告商品)。また、被告は、被告商品のパンフレットや被告商品を紹介するウェブページにおいて、 原告商品の写真を使用したり、原告を製造元として表示したりしているほ20 か、「ゴミサーは全国2000台以上稼働中。 、 」 「全国導入実績2,500台以上」などとして、原告商品の販売実績を記載するなどしている。 (甲40ないし43、53ないし55、101ないし103)2 取消事由1(引用商標の周知性の有無に関する判断の誤り)について? 引用商標の周知性の有無について25 ア 需要者の範囲について前記第2の1?及び?のとおり、本件商標の指定商品は、第7類「生ゴ11ミ処理機、液体肥料製造装置」であり、原告商品は、業務用生ごみ処理機であるところ、証拠(甲89ないし92)及び弁論の全趣旨によれば、業務用生ごみ処理機は、その処理方式の違いから、@微生物の働きにより生ごみを分解して堆肥に変えるコンポスト型、A微生物の働きにより生ごみ5 を水及び炭酸ガス等に分解して減容・減量又は消滅させる消滅型、B熱により生ごみの水分を蒸発させて減容・減量させる乾燥式に分類されること、 原告商品は、上記のうち消滅型に分類されることが認められる。 このように、業務用生ごみ処理機には、様々な処理方式のものがあるところ、生ごみ処理機を購入しようとする事業者は、必要とする生ごみの処10 理量や処理機を設置しようとする施設の設備等、それぞれの事情を基に、 いずれの処理方式の生ごみ処理機が適当であるかを判断して商品を選択するものといえる。そうすると、業務用生ごみ処理機の処理方式によって需要者そのものが異なるものではないというべきであるから、引用商標の周知性の有無については、業務用生ごみ処理機を必要とする事業者全体を15 需要者として判断するのが相当である。 イ 原告商品の市場占有率について(ア) 上記アのとおり、引用商標の周知性の有無については、業務用生ごみ処理機を必要とする事業者全体を需要者として判断するのが相当であることからすれば、原告商品の市場占有率については、処理方式を問わず20 業務用生ごみ処理機全体の市場における占有率を算定するのが相当である。 (イ) そこで検討するに、証拠(甲8)及び弁論の全趣旨によれば、平成12年度から平成18年度までの間における業務用生ごみ処理機全体の販売台数は、以下のとおりであったと認められる。そして、前記1?エ25 で認定した各年における原告商品の年間販売台数によれば、原告商品の市場占有率は、概ね以下の各括弧書き内に記載したとおりであったと認12められる(なお、平成18年度の販売台数及び市場占有率は、11月までのものである。。 )平成12年度 2036台(13.2%)平成13年度 1895台(11.1%)5 平成14年度 1685台(10.6%)平成15年度 1534台(6.9%)平成16年度 1092台(8.9%)平成17年度 881台(9.4%)平成18年度 610台(7.3%)10 (ウ) 上記(イ)のとおり、平成12年度ないし平成18年度の業務用生ごみ処理機全体の市場における原告商品の占有率は、概ね10%前後で推移していたといえるところ、弁論の全趣旨によれば、平成19年度ないし平成26年度も同程度の市場占有率であったと認められる。 (エ) 以上のとおり、平成12年度から平成26年度までの間、原告商品の15 市場占有率は、概ね10%前後にとどまっていたことからすれば、本件商標の出願時以前において、原告商品が高い市場占有率を有していたものとはいえない。 ウ 原告商品の販売台数について(ア) 前記1?エのとおり、原告商品は、販売を開始した平成4年から本件20 商標が出願された前年である平成26年までの間に累計で2514台が販売されたものの、年間の販売台数は、平成11年の284台をピークに年々減少し、平成16年に100台を下回って以降は毎年70台前後で推移していたものである。 (イ) 以上のとおり、原告商品の販売台数は、最も多かった年でも284台25 にとどまる上、本件商標の出願時以前の約10年間は毎年70台前後で推移してきたことからすれば、本件商標の出願時以前において、原告商13品の販売台数が多かったとはいえない。 エ 原告商品に関する報道、広告宣伝等について(ア) 前記1?のとおり、原告は平成6年、平成8年及び平成12年に各種の賞を受賞し、原告商品は平成9年、平成15年及び平成17年に新聞5 報道において取り上げられたことがあったものの、これらはほとんどが山形県内又は酒田市内における受賞歴又は報道歴である上、その後、本件商標の出願時までの約10年間において、原告又は原告商品に関する報道がされたなどの事情は存しない。 (イ) また、原告商品に係る広告宣伝活動についてみても、原告商品につい10 ては、販売代理店であった被告において通常の営業活動を超える広告宣伝活動がされていたなどの事情は存せず、また、原告において多額の広告宣伝費を支出していたなどの事情も存しない。 オ 引用商標の周知性について(ア) 上記イ及びウのとおり、本件商標の出願時以前において、原告商品が15 高い市場占有率を有していたものとはいえず、また、原告商品の販売台数が多かったとはいえない。これに加え、上記エのとおり、原告の受賞歴や原告商品に係る報道歴は、ほとんどが山形県内又は酒田市内におけるものであった上、原告商品に関し、本件商標の出願時以前の約10年間における報道歴はないこと、原告商品について特別な広告宣伝活動が20 されていたなどの事情は存しないことも考慮すると、原告商品が平成4年から20年以上にわたって販売されてきた商品であることや、一般に業務用生ごみ処理機が相当程度高額な商品であるとうかがわれること(甲7)などを考慮しても、本件商標の出願時及び登録査定時において、 原告商品が高い知名度を有する商品であり、原告商品の名称である引用25 商標が周知であったと認めることはできない。 (イ) 以上によれば、引用商標が、本件商標の出願時及び登録査定時におい14て、原告商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 ? 原告の主張に対する判断ア 前記第3の1〔原告の主張〕?、?並びに?ア及びイについて5 (ア) 原告は、引用商標の周知性を判断する際に考慮すべき需要者の範囲について、業務用生ごみ処理機の処理方式に応じて限定すべきであるから、 原告商品の市場占有率は、減容・消滅型Bの業務用生ごみ処理機の需要者を基準として算定すべきであり、仮にそれが認められないとしても消滅型又は減量型の業務用生ごみ処理機の需要者を基準として算定すべ10 きである旨主張する。 しかしながら、前記?アで検討したとおり、いずれの処理方式の業務用生ごみ処理機を選択するかは、業務用生ごみ処理機を購入しようとする事業者がそれぞれの事情を基に判断するものであり、処理方式によって需要者そのものが異なるものではないというべきであることからすれ15 ば、引用商標の周知性を判断するに当たって基準とすべき需要者は、業務用生ごみ処理機を必要とする事業者全体とするのが相当である。 (イ) したがって、原告の上記主張は採用することができない。 イ 同〔原告の主張〕?ウ及び?について(ア) 原告は、業務用生ごみ処理機全体の市場を基準としても、原告商品は20 高い市場占有率を有していたものであり、原告商品が高額な商品であることも考慮すれば、原告商品の知名度は市場占有率を上回るものといえる旨主張する。 しかしながら、前記?で検討したとおり、本件商標の出願時以前において、原告商品が高い市場占有率を有していたものとはいえず、その他25 の事情も考慮すると、一般に業務用生ごみ処理機が相当程度高額な商品であるとうかがわれることを考慮しても、本件商標の出願時及び登録査15定時において、原告商品が高い知名度を有していたものと認めることはできない。 (イ) したがって、原告の上記主張は採用することができない。 ウ その他の主張について5 (ア) 原告は、原告商品は30社以上の販売代理店による販売実績があること、原告商品の納品先が著名な企業・団体であることを指摘する(前記第3の1〔原告の主張〕?及び?)が、これまで検討したところに照らすと、これらの事情を考慮しても、本件商標の出願時及び登録査定時において、原告商品の知名度が高く、引用商標が需要者の間に広く認識さ10 れていたものと認めることはできない。 (イ) また、原告は、被告が原告商品の知名度を利用して様々な不正な行為をしている旨主張する(前記第3の1〔原告の主張〕?)が、被告による各行為の当否は措くとしても、これらの行為の存在をもって、原告商品の知名度が高く、引用商標が需要者の間に広く認識されていたものと15 認めることはできない。 (ウ) このほか、原告は、引用商標の周知性について縷々主張するが、いずれも前記の結論を左右するものではないというべきである。 ? 小括以上検討したところによれば、引用商標は、本件商標の出願時及び登録査20 定時において、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた商標であるとは認められないから、その余の点について判断するまでもなく、本件商標は、商標法4条1項10号及び同項19号のいずれにも該当するとは認められない。 3 結論25 以上のとおり、本件商標は、商標法4条1項10号及び同項19号のいずれにも該当するとは認められないから、本件審決の判断に誤りはなく、原告の取16消事由はいずれも理由がない。 よって、原告の請求は、理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部5裁判長裁判官10 東 海 林 保裁判官15 中 平 健裁判官20 都 野 道 紀17 |
事実及び理由 | |
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全容
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