元本PDF | 裁判所収録の全文PDFを見る |
---|---|
元本PDF | 裁判所収録の別紙1PDFを見る |
元本PDF | 裁判所収録の別紙2PDFを見る |
元本PDF | 裁判所収録の別紙3PDFを見る |
事件 |
令和
2年
(ネ)
10017号
商標権侵害差止等,虚偽事実告知・流布行為差止請求控訴事件
|
---|---|
控訴人(一審原告) 株式会社守半海苔店 控訴人補助参加人 株式会社守半本店 (以下「補助参加人」という。) 上記両名訴訟代理人弁護士 石井晋一 岩永利彦 渡邉孝太 旧商号株式会社守半總本舗 被控訴人(一審被告) 株式会社東京蒲田守半 同訴訟代理人弁護士 鈴木仁志 神村大輔 |
|
裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2022/11/30 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 原判決主文第1項を取り消す。 2 被控訴人は、その販売する焼きのり、味付けのり及びのり茶1漬けの各包装に別紙被控訴人標章目録記載1、3、4、6、 7の各標章を付してはならない。 3 被控訴人は、焼きのり、味付けのり及びのり茶漬けについて、 別紙被控訴人標章目録記載1、3、4、6、7の各標章をその包装に付したものの販売又は販売のための展示をしてはならない。 4 被控訴人は、焼きのり及び味付けのりに関する商品の紹介用のパンフレットについて、別紙被控訴人標章目録記載8の標章を付して販売してはならない。 5 被控訴人は、別紙被控訴人ウェブページ目録記載のウェブページに別紙被控訴人標章目録記載11の標章を表示してはならない。 6 被控訴人は、別紙被控訴人標章目録記載1、3、4、6、7の各標章を付した、焼きのり、味付けのり及びのり茶漬けの各包装容器を廃棄せよ。 7 被控訴人は、別紙被控訴人商品目録記載1〜5の商品に関するパンフレットのうち、別紙被控訴人標章目録記載8の標章を付した部分を廃棄せよ。 8 被控訴人は、控訴人に対し、145万4809円及びこれに対する平成30年4月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 9 控訴人のその余の請求をいずれも棄却する。 10 訴訟費用(補助参加によって生じた費用を除く。)は、1、 2審を通じ、これを20分し、その19を控訴人の負担とし、 その余を被控訴人の負担とし、補助参加によって生じた費用は、1、2審を通じ、これを20分し、その19を補助参加2人の負担とし、その余を被控訴人の負担とする。 |
事実及び理由 | |
---|---|
控訴の趣旨
1 原判決の主文第1項を取り消す。 2 被控訴人は、その販売する焼きのり、味付けのり及びのり茶漬けの各包装に別紙被控訴人標章目録記載1〜7の各標章を付してはならない。 3 被控訴人は、焼きのり、味付けのり及びのり茶漬けについて、別紙被控訴人標章目録記載1〜7の各標章をその包装に付したものの販売又は販売のための展示をしてはならない。 4 被控訴人は、焼きのり及び味付けのりに関する商品の紹介用のパンフレットについて、別紙被控訴人標章目録記載8〜10の各標章を付して販売してはならない。 5 被控訴人は、別紙被控訴人ウェブページ目録記載のウェブページに別紙被控訴人標章目録記載11の標章を表示してはならない。 6 被控訴人は、その店舗内に設置される売場表示において、別紙被控訴人標章目録記載12の標章を表示してはならない。 7 被控訴人は、別紙被控訴人標章目録記載1〜7の各標章を付した、焼きのり、 味付けのり及びのり茶漬けの各包装容器を廃棄せよ。 8 被控訴人は、別紙被控訴人標章目録記載8〜10の各標章を付した、別紙被控訴人商品目録1〜5記載の商品に関するパンフレットを廃棄せよ。 9 被控訴人は、控訴人に対し、4500万5000円及びこれに対する平成30年4月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 |
|
事案の概要
1 事案の要旨 3 (1) 本訴事件 ア 本訴事件は、原判決別紙1本件商標権目録記載の登録商標(本件商標)を有する控訴人が、被控訴人に対して、被控訴人が「守半」の文字を含む別紙被控訴人標章目録記載の各標章(以下併せて「被控訴人各標章」という。)を使用する行為は、本件商標に類似する標章を本件商標権の指定商品又はそれに類似する商品若しくは役務に使用する行為であり、商標法37条1項1号により本件商標権を侵害する行為とみなされると主張して、@同法36条1項に基づき、被控訴人各標章の使用の差止めを求め、A同条2項に基づき、被控訴人の包装容器・パンフレットの廃棄を求め、B平成20年4月8日から平成30年4月7日までの10年間についての商標権侵害の不法行為による損害賠償請求として、損害賠償金4500万5000円及びこれに対する不法行為の後の日である平成30年4月22日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「改正前民法」という。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。控訴人は、当審において、上記Bの不法行為に基づく損害賠償請求の対象となる期間を、平成20年4月7日から平成30年4月6日までの10年間と改めるとともに、請求に係る4500万5000円を損害賠償請求権の内金請求とし、 また、不当利得返還請求を予備的に追加した。 イ 補助参加人は、本訴事件の控訴人を補助するため、原審において本訴事件の訴訟に参加した。 (2) 反訴事件 反訴事件は、被控訴人が、控訴人に対し、控訴人のウェブページ上で、「守半」の標章に関し、原判決別紙8告知事実目録記載1の各括弧書内の文章の表示(本件表示)をすることは、競争関係にある被控訴人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為として不正競争防止法2条1項21号の不正競争に該当し、その侵害の停止又は予防に必要であるとして、同法3条1項に基づいて本件表示に係る事実及び同目録記載2の事実の告知の差止めを求めた事案である。 4 (3) 原審の判断等 原審は、控訴人が、被控訴人に対して、本件商標権に基づく本訴請求をすることは権利の濫用に該当するとして本訴請求をいずれも棄却するとともに、本件表示は、 競争関係にある被控訴人の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知に該当するとはいえないとして反訴請求もいずれも棄却した。 これに対し、控訴人は本訴請求をいずれも棄却とした部分を不服として控訴を提起した。被控訴人も、反訴請求をいずれも棄却した部分を不服として附帯控訴を提起したが、当審において、反訴請求に係る訴えを取り下げた。 2 前提事実(当事者間に争いがない事実並びに証拠(以下、書証番号は特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨から認められる事実) 以下のとおり補正するほかは、原判決4頁12行目から6頁13行目に記載のとおりであるからこれを引用する。 (1) 原判決4頁19行目の「である。」を「である(甲9、乙1)」と改める。 。 (2) 原判決4頁24行目から同頁25行目までを、「被控訴人は、平成18年5月1日、その商号を「株式会社守半總本舗」に変更し、令和3年10月1日、現在の商号である「株式会社東京蒲田守半」に変更した(乙1、弁論の全趣旨) 」と改 。 める。 (3) 原判決5頁15行目の「商標登録出願」の次に「(以下「本件出願」という。」を挿入し、同頁21行目の「本件商標権の出願」を「本件出願」と改める。 ) (4) 原判決6頁1行目の「被告各商標」を「被控訴人各標章」と改める。 3 争点 (1) 被控訴人の行為が本件商標権を侵害するとみなされる行為に該当するか(争点1) (2) 控訴人の本件商標権に基づく本訴請求が権利濫用に該当するか(争点2) (3) 本件商標の商標登録が商標登録無効審判により無効にされるべきものか(争点3) 5 ア 公序良俗違反(商標法4条1項7号)該当性(争点3-1) イ 周知商標(商標法4条1項10号)該当性(争点3-2) (4) 被控訴人が本件商標権について先使用権を有するか(争点4) (5) 差止めの必要性(争点5) (6) 控訴人の損害の発生及びその額(争点6) 4 争点に対する当事者の主張 以下のとおり補正し、後記5に当審における当事者の主張を補足するほかは、原判決7頁5行目から16頁4行目に記載のとおりであるからこれを引用する。 (1) 原判決8頁25行目「原告の商標権」を「本件商標権」と改める。 (2) 原判決11頁2行目の「出願」を「本件出願」と、同頁5行目、7行目及び7〜8行目の各「本件商標権の出願」を「本件出願」とそれぞれ改める。 (3) 原判決12頁16行目の「守半本店ともに」を「守半本店とともに」と改める。 (4) 原判決13頁3行目の「本件商標権を出願している」を「本件出願をしている」と、同頁12行目の「本件商標権の出願」を「本件出願」と、同頁26行目の「本件商標の出願」を「本件商標」とそれぞれ改める。 (5) 原判決14頁3行目の「出願」を「本件出願」と、同頁14行目の「本件商標の出願前から」を「本件出願の前から」と、同頁18行目の「本店」を「守半本店」とそれぞれ改める。 (6) 原判決15頁3行目、8行目及び26行目の各「本件商標権の出願」を「本件出願」と、同頁21行目の「本店」を「守半本店」とそれぞれ改める。 5 当審における当事者の主張 (1) 争点2(控訴人の本件商標権に基づく本訴請求が権利濫用に該当するか)について(被控訴人の主張) ア 「守半總本舗」の使用について 6 (ア) 被控訴人は、「守半」の使用を補助参加人から許されており、これに「總本舗」という語を付加したところで本件商標権の侵害にはならない。「守半總本舗」の使用について明示の許諾を要するとする控訴人の主張は独自のものにすぎない。 (イ) 被控訴人は、蒲田地区以外でも営業を行っており、補助参加人は、これについて異議を述べたことはなく、「蒲田」や「支店」を併用しない広範な態様の使用を継続的に容認してきたから、補助参加人の許諾が「蒲田」地域又は「蒲田」を併用する場合に限定されるとの控訴人の主張は事実に反する。 被控訴人による「總本舗」の使用について、控訴人は平成18年から平成29年12月まで11年以上の長期間にわたり、被控訴人に対し何らの指摘も行っておらず、補助参加人からは、一度もこの点について異論を唱えられたことがなく、守半本店4代目のAの承諾を得ている。 被控訴人の「守半總本舗」の商号への変更についても、原判決が認定しているとおり、補助参加人による黙示的な許諾があった。 (ウ) 知財高裁平成29年(ネ)第10012号同年8月30日判決は、極真会館から許諾を受けて「極真」の標章を使用していた支部長らの協議会が、創立者の死後に「全日本極真連合会」を名乗って活動を開始し、さらにその一部が「極真会館世界総極真」を設立したという事案において、創立者の親族らが「世界総極真」に対して商標権を行使することは、客観的に公正な競業秩序を乱すものであって権利の濫用に当たると判断したが、同判決をはじめとする一連の極真関連判決において、 「極真」の標章について権利の濫用が成立する場合、「極真+α」の類似標章についての商標権行使も濫用に当たることが明示されている。そうすると、本件において、「守半」についての権利濫用が成立するにもかかわらず、「守半總本舗」についての権利行使が濫用に当たらないとするのは、上記判例法理に反する。 また、最高裁昭和60年(オ)第1576号平成2年7月20日第二小法廷判決・民集44巻5号876頁をはじめとする判例・裁判例によると、同一標章使用グループ内の紛争に関し、@他の寄与者の寄与価値を独占的に取得した商標権者に 7おいて、Aその寄与者に対して商標権侵害を主張することは権利濫用であるとの共通の判断枠組みが確立している。原判決がこの枠組みに沿って、控訴人の本件商標権に係る権利行使について、権利の濫用であると判断したことは正当である。 (エ) 商標法上、商標の専有権の範囲は「願書に記載した商標」に限定されており(商標法27条1項)、商標権は類似標章まで独占できる権利ではなく、法は、あくまで商標権を実質的に確保するために、正当な標章の使用権を有しない第三者が類似商標を使用する行為を侵害とみなして禁止権を政策的に拡張しているにすぎないのであって(同法37条1項 擬制侵害)、商標そのものを使用できる正当な標章使用権者に対して「擬制侵害」のみが成立するとの主張は、商標法の本質を正解しない。 したがって、商標そのものの使用が禁じられる場合にはじめて「商標+α」の類似商標の使用も禁じられるとの論理関係になるのであり、商標そのもの(同一標章)は使用してよいが「商標+α」(類似標章)の使用は許されないとの思考は論理的に成り立たない。 特に、本件請求は、「守半」の標章を被控訴人が使用すると消費者の誤認混同が生じることを根拠とするものであるにもかかわらず、「守半」の商標の使用はよいが「守半+α」の使用は禁じるとの結論になる場合、「守半+α」を「守半」に変更せよと命じるのと同義になり、消費者の誤認混同はより強度になる。控訴人は「本店」と「總本舗」との誤認混同が生じると主張するが、控訴人は「本店」ではなく、そのような主張をする立場にない。 イ 「守半」を含む商号及び標章の使用許諾の撤回又は解除について 控訴人及び補助参加人(以下、併せて「控訴人ら」という。)の主張する「意思表示の撤回」や「解除」は、法的意味や法的根拠が不明であるし、補助参加人が「總本舗」の表示を黙示的に承諾してきたことを認めながら、その使用が補助参加人に対する「背信行為」である旨述べることは、背理である。補助参加人は、被控訴人が蒲田以外で営業を行うことについても異議を述べていなかった。 8 ウ 被控訴人が「守半」グループのアウトサイダーであるという主張について 「血筋」が異なる者は標章・屋号の使用許諾を受けられず、「アウトサイダー」として排除されて当然であるかのような控訴人らの主張は、血脈による差別の意味合いすら伺えるものであって、相当でない。もとより、使用者が事業に貢献した使用人にのれんを分けて店をもたせることは、社会において顕著にみられる慣行的行為である。「血筋」の異なる者に対するのれん分けを否定するかのような主張は、 社会慣行を無視した「血脈」による区別であって不適切である。 また、控訴人らは、「守半」の知名度と信用の獲得に対して被控訴人の寄与を自認しつつ、被控訴人を「アウトサイダー」とするもので、矛盾している。 そして、控訴人と補助参加人の間に一体的協力関係があったことを認めるに足りる証拠はなく、かえって、被控訴人と補助参加人との間に極めて密接な関係が存在していたし、商標権の濫用判断においては、正権原を有する者に対する行使であるか否かが主たる問題なのであり、「血縁」や「共同仕入れ」をもとに「アウトサイダー」と名付けることは無意味である。なお、被控訴人のB家は、補助参加人の守屋家と家族ぐるみの密接な付き合いを行っていた。 エ 控訴人が「守半」の独占的な表示主体であるとの主張について 控訴人が「守半」の独占的な表示主体であるという主張には、論理性がない。また、控訴人が補助参加人の「代理」である旨の主張には証拠がない上、代理なのであれば、その効果が帰属するのは補助参加人であって、控訴人ではない。 オ 控訴人の悪性について (ア) 権利取得過程の悪性について 控訴人が、「血筋」を強調し、「血筋」の異なる正規使用者を排除するために商標権を取得することは、当然に非難されるべきものであって、公序良俗違反・権利濫用に該当する。 また、仮に「守半」の標章の「知名度と信用」が控訴人と補助参加人に帰属するのであるならば、控訴人単独での本件出願はまさに補助参加人からの「横取り」で 9あって不適切である。他方、控訴人が、「知名度と信用」が専ら控訴人に帰属すると主張するとなると、補助参加人に「知名度と信用」が帰属しないとの不適切な主張を行っていることになる。いずれにしても、本件商標権は、控訴人が、補助参加人に無断で、被控訴人に対抗する意図に基づいて取得したものである。 (イ) 権利行使過程の悪性について 補助参加人から正権原を付与された被控訴人に対し、その使用を禁ずるために権利行使をすることは、まさに非難されるべき濫用行為に該当する。 カ 被控訴人に「守半」を使用する正当な利益があること のれん分けを受け、補助参加人から託されて自己のコスト・リスクで「守半」のブランド価値の向上に努めた被控訴人に対し、「血筋」が違う者が信用を「横取り」しているかのように述べる控訴人らの主張は、不相当かつ不適切である。 キ 控訴人は最後発者であること 昭和2年から昭和27年まで「守半」の経営は、補助参加人と被控訴人の2者体制で行われており、控訴人は昭和16年に初めて「守半」の屋号を付した家内制加工業を開始した最後発の事業者である。このことは、当時の電話帳の記載(乙124)から明らかとなった。 ところが、控訴人は、本件訴訟の当初には、明治34年に「守半本店」と対等なものとして「守半海苔店」を創業し、遅くとも大正3年に守屋半助の長女Cが「守半海苔店」を承継し、昭和16年に「合資会社守半海苔店」として法人化し、これを前身として昭和33年に控訴人が設立されたなどと主張し、控訴人自らのホームページにおいても、Cが半助から「守半海苔店」の店舗を与えられ、Dが初代店主となったかのような不実な表示をしている。 そうすると、控訴人による本件商標権の行使は、著しい濫用と評価すべきである。 (控訴人らの主張) ア 被控訴人が「守半總本舗」を使用できないこと (ア) 仮に原判決が指摘するように、E及び被控訴人(以下、併せて「被控訴人ら」 10という。)が「守半」の標章・屋号の使用許諾を得ていたと推認されるとしても、 これは被控訴人らが昭和2年頃から平成18年まで使用を継続していた「支店」としての「守半蒲田店」に対する使用許諾が推認されるにすぎず、「本店」に匹敵するかのような「總本舗」による使用との間には、その使用の態様及び性質等において断絶がある。 このような「守半總本舗」の商号の下、被控訴人が「守半」の使用を継続することは、「守半本店」又は「守半海苔店」の事業として化体した信用を横取りするものであり、控訴人又は補助参加人の明示的な許諾が必要となる。原判決は、被控訴人による「守半總本舗」への商号変更について、補助参加人が異議を述べたとは認められないと判断しているが、補助参加人が異議を述べなかったことが「守半總本舗」の商号のもとでの使用許諾を推認させる理由とはならない。 (イ) 被控訴人が指摘する極真関連事件の裁判例は、当事者双方の事情を総合的に比較衡量して権利濫用を判断したものであり(甲137)、本件とは事案を異にする。控訴人は、独自の知名度と信用を獲得しており(甲74〜136)、「守半」の知名度と信用の獲得は、控訴人に集中的に帰属するか、又は、少なくとも補助参加人と控訴人の両者に集中的に帰属していた。 (ウ) 被控訴人に何かしらの先使用権(商標法32条1項)が成立するとしても、 当該先使用権の対象となる使用標章と同一性を有する限りで使用権原が認められるにすぎず、「守半+α」などと抽象的かつ広範な使用権原が認められるものではない。 (エ) 控訴人は、被控訴人に対し、本件商標権の使用を許諾したことなどないから、 万が一、補助参加人による黙示的な使用許諾が認定されたとしても、これをもって被控訴人が正当な使用権者であるとはいえない。 イ 「守半」を含む商号及び標章の使用許諾の撤回又は解除 補助参加人は、被控訴人が、原判決によるところの守屋半助の事業の主たる承継者である補助参加人の許諾なく「守半本店」に匹敵するかのような「守半總本舗」 11に商号変更したことや無断で大森地区に出店したことに基づき、被控訴人による背信行為を理由として、被控訴人に対し、「守半」を含む商号及び標章の使用許諾の撤回又は解除の意思表示を行う。 ウ 被控訴人は「守半」グループのアウトサイダーであること 老舗ブランドの同族経営においては、創業者との血縁関係が最重要視されることは社会通念上当然であるが、控訴人らの経営者は「守半本店」を開業した守屋半助の血筋であるが、被控訴人の経営者は守屋半助の血筋とは何ら関係のない者である。 また、控訴人らは、のり製品の包装紙、缶、化粧箱等を共同で発注して共同仕入れをしており、お互いの事業において一体的協力関係にあったが、補助参加人と被控訴人との関係は、単なる卸売元と卸売先の取引関係にすぎず、それを超えた一体的協力関係にはなかった。 そして、前記ア及びイのとおり、補助参加人は「守半總本舗」の商号及び標章について使用許諾をしていない。 さらに、「守半」の標章の知名度と信用の獲得について、被控訴人による寄与があったとしても、被控訴人らは、「支店」である「守半蒲田店」として寄与したにすぎない。「守半」の標章の知名度と信用は、守屋半助の事業を承継した補助参加人又は控訴人が獲得したものである。 以上からすると、控訴人らは「守半」グループであるが、控訴人は「守半」グループの一員ではなく、単なるアウトサイダーにすぎないから、控訴人が、被控訴人に対して、本件商標権を行使することは、権利濫用に該当しない。 エ 控訴人が「守半」の独占的な表示主体であること 控訴人は、守屋半助の事業の承継者として、「守半」を含む商号及び標章の使用を長きにわたって継続しており、少なくとも大森地区及びその周辺において、控訴人独自の知名度と信用を獲得していた(甲74〜136)から、「守半」の標章の知名度と信用の獲得は、控訴人に集中的に帰属していた。 また、控訴人らは、ともに守屋半助の血筋として、その事業の承継者として一体 12となってのり事業に取り組んでいたのであり、「守半」の標章の知名度と信用の獲得は、補助参加人と一体となって控訴人にも集中的に帰属していたといえる。そして、「守半」の標章の知名度と信用の獲得は、控訴人らの両者に集中的に帰属していることで足り、それが控訴人単独で帰属することは必要ではない。 仮に、「守半」の標章の知名度と信用の獲得が、控訴人に集中的に帰属するものではないとしても、原判決が認定した各事実からすると、知名度と信用は、少なくとも補助参加人に一定程度帰属しており、「守半」を含む商号及び標章は、補助参加人の許諾がないと使用できない関係にあった。このような関係のもと、控訴人は、 補助参加人と一体となってのり事業に取り組む一環として、いわば補助参加人を代理した「守半」の独占的な表示主体であるといえる。 オ 控訴人には権利濫用と判断されるべき悪性がないこと (ア) 権利取得過程の悪性の不存在 控訴人の経営者は、守屋半助の血筋の者であり、控訴人は、守屋半助の事業の承継者として、自己の事業において「守半」の標章を昭和初期から継続使用し、少なくとも大森地区及びその周辺において、独自の知名度と信用を獲得していたのであり、控訴人らの事業に係る知名度と信用の獲得を保護するという正当な動機で商標登録を受けたのであるから、商標権の権利取得過程において非難されるべき悪性は皆無である。 (イ) 権利行使過程の悪性の不存在 控訴人は、守屋半助の事業の承継者として、独自の知名度と信用を獲得していたが、現実に控訴人の事業と被控訴人の事業とを消費者が取り違えるなどのトラブルが多数発生している上、被控訴人の店舗従業員に対する消費者からの苦情が、控訴人に寄せられるなどしており、控訴人が長きにわたって獲得してきた信用を毀損している(甲27、31、53)。 また、控訴人は、被控訴人に対し、少なくとも、昭和56年、平成18年及び平成29年に明示的な使用中止を要請してきており、商標権侵害行為を長期にわたっ 13ていたずらに放置してきたわけではない。控訴人は、独自の知名度と信用を獲得していたものであり、自身の営業努力によって獲得した知名度と信用を保護するという正当な利益がある。控訴人は、知名度と信用が毀損されないよう、商標権者として当然の権利行使をしているにすぎず、権利行使過程の悪性は存在しない。 カ 被控訴人に「守半」を使用する正当な利益がないこと 被控訴人が、あたかも「守半本店」に匹敵するかのような「守半總本舗」の商号のもと「守半」の使用を継続することは、守半本店又は守半海苔店の事業として化体した信用を横取りするものである。しかも、被控訴人自身も、「守半總本舗」による使用について明示的な許諾が改めて必要であると認識しながらこれを得ていない。 被控訴人は、控訴人と比較して多くの店舗数で営業しているが、これは控訴人からの使用中止の要請を一方的に拒否して作り上げられた既成事実にすぎず、この既成事実には保護されるべき正当な利益はない。仮に、被控訴人に何かしらの正当な利益があったとしても、被控訴人は、昭和2年頃から長きにわたって使用してきた「守半蒲田店」を、平成18年に自ら「守半總本舗」に変更しており、例えば再度これを「守半蒲田店」に戻したとしても、被控訴人に生じる損害の程度は軽微である。 キ 前記(被控訴人の主張)キ記載の主張及び乙124は、侵害論の審理が終了し、損害論の審理の終盤になって提出されたものであるが、侵害論の蒸し返しであり、時機に後れたものであるから、却下すべきである。 (2) 争点3-1(公序良俗違反(商標法4条1項7号)該当性)について(被控訴人の主張) ア 前記(1)(被控訴人の主張)のとおり、同一標章使用グループ内の使用許諾を受けた寄与者に対する商標権行使は、「公正な競業秩序を乱すもの」とする判例法理が確立しているから、当初からこれを目的として、当該寄与者の同意を得ずに商標を出願登録する行為が「公の秩序」に反することは明らかであり、このことは、 14知財高裁平成29年(ネ)第10053号同29年12月25日判決をはじめとする裁判例により確立されている。 イ 本件では、これまでの裁判例が摘示する事情が同様に当てはまる上に、以下のように、さらに強い公序良俗違反性を基礎づける事情がある。 (ア) 被控訴人が、補助参加人から使用許諾を得て「守半」の標章を使用し、同標章の知名度・信用の獲得に寄与してきたこと。 (イ) 控訴人が「被控訴人は油断ならない」との考えのもとに「被控訴人への対抗」の目的で本件出願をしたこと。このことは、本件出願を発案し直訴した張本人である控訴人の当時の工場長が認めている(甲62)。 (ウ) 控訴人が、本件商標が登録された直後の昭和56年に、被控訴人に対して標章の使用禁止を主張していること。 (エ)「守半」標章に周知性と信用があり、それが守半3店(補助参加人、控訴人、 被控訴人)の活動に密接に関連する重要な財産であったこと。 (オ) 控訴人が、創業者である守屋半助の事業を承継していない「分家」にすぎず、 Fがその事業を全部承継したことは、客観的証拠から明らかとなっており(乙29、 40)、しかも、控訴人は、守半3店のうちの最後発者であることを自認しており、 「守半」標章の自己への正当な帰属を主張し得る立場にはないこと。 (カ) 控訴人が、事実でない自社の歴史を語って自己の正当性を基礎付けようとしていたこと。 (キ) 控訴人は、正当な理由なく被控訴人との協議を経ないまま本件出願を行っている上、「守半」グループ全体に権利が帰属する形で商標登録を得る方策を検討した事実もないこと。 (ク) 控訴人が本件商標権を有することは、「守半」の標章使用グループ内において被控訴人に対する自己の立場を著しく強化するものであり、被控訴人を排除したい控訴人にとって利点が大きいこと。 (ケ) 控訴人による本件出願の時点において、第三者が商標の出願をし又はこれを 15企図したなどの具体的な問題が生じていた事実はなく(甲65)、当時これに備えるべき具体的な必要性はなかったし、登録後においても、控訴人が被控訴人以外の者に権利行使をした形跡はなく、専ら「寄与者」である被控訴人を「狙い撃ち」にした出願及び登録であったこと。 (コ) 控訴人が「守半」グループ内部での自らの影響力を強め、守半3店にとって重要な財産である標章に係る権利を盾に取って、被控訴人を排除してのり事業における「守半」の標章を独占し、自己の利益を図ろうとしてきたものと評価されること。 (控訴人らの主張) 前記(1)(控訴人らの主張)のとおり、権利濫用が否定される以上、公序良俗違反無効の抗弁も否定される。 (3) 争点3-2(周知商標(商標法4条1項10号)該当性)について(被控訴人の主張) ア 控訴人らは、補助参加人が昭和40年代より日本橋高島屋、東京駅名店街、 横浜駅ビル東光のれん街等で営業していたことを根拠として、「守半」の標章の「知名度と信用」が「補助参加人と一体となって控訴人にも集中的に帰属していた」などと主張し、「守半」の標章が本件出願時(昭和51年)より前から広範囲で周知であったことを自白するに至っている。 イ 以下の事実から、本件出願時における「守半」の周知性は明らかである。 (ア) 守半が明治時代に日本で初めて乾のりを火で焼いて食べることを世に広めた「焼きのり開祖」として、当時より世間に広く認識されていたこと(乙8、訴状第1の1自白)。 (イ) 守半の「焼きのり」を遠方から買いに来る顧客が多かったこと(乙8の2)。 (ウ) 「守半」ののりが昭和前期から高級のりを扱う需要者に知られていたこと(乙43の1)。 (エ) 補助参加人が昭和40年代初頭〜昭和51年頃に日本橋高島屋に出店し、 16「守半」ののりを販売していたこと(乙56の2・3、乙60、62〜67)。 (オ) 守半が東京駅に出店していたこと(乙56の2・3、乙60、68、乙69の1〜4、乙70〜72、乙73の1〜3)。 (カ) 補助参加人が昭和40年代初頭〜昭和51年頃に「横浜駅ビル東光のれん街」に出店していたこと(乙56の2・3、乙61、乙69の1〜4、乙70、71、 乙73の1〜3)。 (キ) Eが遅くとも昭和39年頃には蒲田地区に限らず全国規模で注文を受け付けるようになっていたこと(原判決の認定)。 (ク) 被控訴人が関東有数の大ターミナル駅であった蒲田駅前最大の商業施設(ニューカマタビル)の最前面に出店していたこと(乙26、59、60、70、74、 乙75の1・2)。 (ケ) 著名企業であるユザワヤが「守半」ののりを昭和40年代初頭から同51年頃にかけて贈答品等として全国の関係先に大量に頒布していたこと(乙58の1・2、乙59、60)。 ウ 「守半」の標章は、補助参加人及び被控訴人からなる「寄与グループ」に帰属していたものであり、控訴人に帰属するものではないから、控訴人がその商標登録を受ける行為は、他人(寄与グループ)の周知標章の登録にほかならず、無効である。 仮に控訴人の寄与が認められる余地があるとしても、標章の一使用者にすぎない控訴人と寄与グループ全体とは別個の存在であり、控訴人から見て寄与グループ全体はまさに「他人」に該当するから、グループ全体の許諾なく控訴人単体で商標を出願登録する行為は、最高裁昭和56年(オ)第1166号同59年5月29日第三小法廷判決・民集38巻7号920頁の趣旨からしても、「他人」の周知標章の登録にほかならない。 エ 前記(2)(被控訴人の主張)イで述べた事実からすると、控訴人には不正競争の目的がある。 17(控訴人らの主張)前記(1)(控訴人らの主張)のとおり、控訴人に権利濫用はなく、不正競争の目的など認められない。そして、本件商標権の設定の登録の日から5年を経過しているため、無効の抗弁は許されない(商標法47条1項)。 (4) 争点5(差止等の必要性)について(控訴人らの主張) 被控訴人の行為は本件商標権を侵害するもので、差止等の必要性がある。 控訴人が、令和3年9月14日時点で被控訴人のホームページを確認したところ、 「守半總本舗」の名称が使用されていた。また、被控訴人は、巻紙やシールを用いて「守半總本舗」の表示を削除したと主張するが、このような巻紙やシールの使用を中止するだけで容易に「守半總本舗」の表示を復元できる。このことに加え、被控訴人のこれまでの態度に照らすと、被控訴人による「侵害するおそれ」はなお残るから、差止請求は認容されるべきである。 (被控訴人の主張) 被控訴人は、令和3年10月に「守半總本舗」の表示を廃止し、商号を「株式会社東京蒲田守半」に変更した。同年7月中旬には、被控訴人商品1、3、4、7のパッケージや、内袋、ラベルにおける「守半總本舗」の表示を「守半」に変えるか又は削除し、被控訴人商品6については「守半總本舗」表記のない巻紙の使用又はシール貼付により「守半總本舗」の表示を削除した。被控訴人は、既に販売商品及びディスプレイ商品において、「守半總本舗」の商標的使用をしていない。また、 被控訴人は、同年9月中には、卸売先に納品済の残存商品についても、回収等の適宜の方法により表示を変更することとした。 したがって、同月中には差止等の必要性は存在せず、訴えの利益を欠くことになったから、差止請求は棄却又は却下されるべきである。 (5) 争点6(控訴人の損害の発生及びその額)について(控訴人らの主張) 18 ア 商標法38条2項による損害額の算定と請求額 被控訴人による本件商標権の侵害により、控訴人には損害が生じた。損害額については商標法38条2項により次のとおり推定される。 (ア) 対象期間 損害額計算の対象となる期間は平成20年4月7日から平成30年4月6日の10年間(以下「対象期間」という。)である。 (イ) 対象期間における被控訴人商品1、3、4、6、7の売上額及び限界利益額 a 被控訴人商品1 売上額 単価1200円×4000個×3店舗×10年=1億4400万円 限界利益率20% 限界利益額 1億44000万円×20%=2880万円 b 被控訴人商品3、4、6 売上額 合計3300万円×3店舗×10年=9億9000万円 限界利益率20% 限界利益額 9億9000万円×20%=1億9800万円 c 被控訴人商品7 売上額 単価130円×8万個×3店舗×10年=3億1200万円 限界利益率20% 限界利益額 3億1200万円×20%=6240万円 d a〜c合計 売上額 14億4600万円 限界利益額 2億8920万円 (ウ) 商標法38条2項による損害額 したがって、商標法38条2項により、控訴人の損害額は2億8920万円であると推定される。本件では、そのうち4000万5000円を請求する。 なお、被控訴人は、文書提出命令に応じることなく、帳簿等を提出しなかったか 19ら、上記損害額について真実擬制がされるべきである。 (エ) 弁護士費用は、500万円が相当である。 (オ) よって、控訴人は、被控訴人に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、 4500万5000円及びこれに対する平成30年4月22日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を請求する。 また、仮に商標法38条2項による損害額の推定が覆滅される場合、当該覆滅部分につき、同条3項の適用を求める。 イ 商標法38条3項による損害額の算定と請求額 予備的に、商標法38条3項により算定される損害額を主張する。 (ア) 使用料相当額 本件における使用料率は売上額(前記ア(イ)d)に対する15%が相当であるから、使用料相当額は、2億1690万円(14億4600万円×15%)となる。 (イ) 弁護士費用は2169万円が相当である。 (ウ) 控訴人には、上記(ア)及び(イ)の合計2億3859万円に消費税2385万9000円を加えた合計2億6244万9000円の損害賠償請求権があり、そのうち4500万5000円を請求する。 (エ) よって、控訴人は、被控訴人に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、 4500万5000円及びこれに対する平成30年4月22日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を請求する。 ウ 不当利得返還請求 被控訴人から、消滅時効の抗弁が提出されたことから、予備的に、不当利得返還請求をする。 (ア) 不当利得額 被控訴人には、対象期間について、前記イ(ア)と同額の2億1690万円の使用料相当額の不当利得が生じている。控訴人は、そのうち4500万5000円の返還を請求する。 20 (イ) よって、控訴人は、被控訴人に対し、不当利得返還請求として、4500万5000円及びこれに対する平成30年4月22日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を請求する。 エ 被控訴人の主張に対する反論 (ア) 被控訴人は、商標権の専用権や禁止権の性質を述べ、被控訴人に対する損害賠償請求が認められないなどと主張するが、仮に「守半總本舗」以外の表示について権利濫用を理由に権利行使が認められないとしても、それは権利行使が制限されるだけであって、商標権侵害が不存在であることを意味しない。そして、専用権の範囲であっても禁止権の範囲であっても、商標権者には損害賠償請求権が認められるから(商標法25条、37条1号)、権利濫用の対象とならない被控訴人による標章の使用については、損害賠償請求権が否定される理由はない。 (イ) 仮に「守半總本舗」以外の表示について権利濫用が認められるとしても、それは、差止請求に限られ、不法行為に基づく損害賠償請求又は不当利得返還請求には及ばない。 (ウ) 被控訴人は、損害が不発生であると主張するが、被控訴人が「守半總本舗」を使用することで、被控訴人が「守半」の本来的かつ主要な使用主体であるかのような誤認混同を生じさせ、控訴人の事業と被控訴人の事業を消費者が取り違えるなどのトラブルを多数発生させており、控訴人に逸失利益が生じていることは明らかである。 (被控訴人の主張) ア 商標法38条2項に基づく請求について(ア) 商標法38条2項の適用について a 商標法38条2項適用の前提として、損害の発生を立証することを要するが、 本件では、その立証がされていない。被控訴人が「守半總本舗」を付した被控訴人商品1、3、4、6、7を販売したことにより、控訴人の売上げや利益が減少したという事実はない。 21 被控訴人は、この点を立証するために、控訴人が上記各商品の競合品であるものと主張する控訴人の商品の販売に係る出荷台帳等の文書について、書類提出命令を申し立て、裁判所が提出命令を発出したにもかかわらず、控訴人はこれに応じなかったのであるから、控訴人に損害が生じていないことについて、真実であると擬制される。 b 商標権は、登録商標を独占的に使用することができる権利であり、類似する標章を排他的に使用する権能までを含むものではなく、ただ、類似する標章を使用する者に対し、その使用の禁止を求めることができるにすぎない。本件商標権者である控訴人は、登録商標である「守半」を独占的に使用する権利を持つにすぎず、 これと類似する標章や「總本舗」などの商標としての機能を有しない語を付加した標章を排他的に使用する権利を有しない。 そして、控訴人は、被控訴人に対し、権利濫用に当たるため、「守半」についての権利行使することができず、被控訴人による「守半」の使用に係る損害を主張できないところ、「守半總本舗」については使用権がなく、独占権を有していないのであるから、「守半總本舗」が被控訴人に使用され、控訴人がこれを独占できなかったことによって損害が生じるはずもない。 c そうすると、本件について、商標法38条2項を適用することはできない。 (イ) 売上額について 対象期間における売上高の推計は次のとおりである。なお、被控訴人は、商品ごとの売上げが記録されるシステムを採用しておらず、商品ごとの売上額を把握していない。 a 売上高の推定 (a) 仕入高全体に占めるのり製品の割合と売上高全体に占めるのり製品の割合とがある程度近似する可能性があることに着目し、 @ 仕入高全体に占めるのり製品の推計比率をもとに、全商品の売上高のうちでののり製品の売上高を推計し、 22 A のり製品全体に占める対象商品の推計割合をもとに、のり製品の売上高推計値のうちの対象商品の売上高を推計する という方法で推計を試みた。 (b) 被控訴人の損益計算書の売上高欄の科目のうち、「音楽講座等売上高」を除いた「卸売上高」「一般小売売上高」 、 、及び「(東急)ストア売上高」の3つの科目を合計した金額が商品販売売上げになるから、これら3つの科目の合計額を算出したところ、下表のとおりである。 (c) のり仕入率について、@のり製品の仕入先からの仕入高の100%、Aのり製品以外の仕入先からの仕入高の0%、Bのり製品とそれ以外の両方の仕入先からの仕入高の50%がそれぞれのり製品の仕入高であると仮定した場合、平成27年8月期から令和元年8月期(5事業年度)の平均値は、60.7%であった。 (d) 上記60.7%を、各事業年度の商品販売売上げに乗じて各事業年度ののり 23製品売上高を推計すると、以下のような結果になった。 b 銘柄数按分法による被控訴人商品1、3、4、6、7の売上高の推計 (a) 被控訴人が販売するのり製品全体の製品数に対する被控訴人商品1、3、4、 6、7の数の比率が、のり製品売上高に占める同各被控訴人商品の売上高の比率と同一であると仮定して、同各被控訴人商品の売上高を推計した。 (b) 被控訴人商品 1 の商品数は1、被控訴人商品3の商品数は8、被控訴人商品4の商品数は5、被控訴人商品6の商品数は4、被控訴人商品7の商品数は1である。 対象期間中の販売期間は、被控訴人商品1が平成30年1月から、被控訴人商品3が平成26年1月から、被控訴人商品4が平成25年10月から、被控訴人商品6が平成29年5月から、被控訴人商品7が平成26年1月から、対象期間の末日までである。 対象期間における被控訴人商品1、3、4、6、7の売上高推計値は、別紙銘柄数按分法売上高推計表のとおりであり、以下のようになる。 24 被控訴人商品1 19万9696円 被控訴人商品3 2149万7479円 被控訴人商品4 1415万0059円 被控訴人商品6 264万3451円 被控訴人商品7 268万7188円 c 変動在庫推計法による被控訴人商品1、3、4、6、7の売上高の推計(a) 令和3年4月から同年9月までに、被控訴人の3店舗で販売等された商品の払出個数につき、商品ごとの比率を調べたところ、次のとおりであった。 個数の比率 金額の比率 (定価を乗じて算出) 被控訴人商品1 0.10% 0.57% 被控訴人商品3 1.10% 2.99% 被控訴人商品4 8.31% 4.19% 被控訴人商品6 6.23% 8.79% 被控訴人商品7 6.46% 1.37% その他のり製品 48.71% 45.21% のり製品以外(お茶等) 29.09% 36.87%(b) 上記の各比率が、対象期間における売上高に占める各被控訴人商品の売上高の割合と同一であると仮定すると、対象期間における被控訴人商品1、3、4、6、 7の売上高推計値は、別紙変動在庫推計法売上高推計表のとおりであり、以下のとおりとなる。 25 被控訴人商品1 66万2429円 被控訴人商品3 2078万1630円 被控訴人商品4 3066万9937円 被控訴人商品6 1502万4874円 被控訴人商品7 952万2014円 d 上記b及びcの推計値について、「変動在庫推計法」には、対象期間よりも後のごく短いサンプル期間のデータに依拠していることや、サンプル期間の状況に照らすと高級品の売上げが偏って高く出すぎるおそれがある一方、「銘柄数按分法」は、偏りの出ない推計方法である。そこで、両手法の利点・欠点を相互補完させるため、「変動在庫推計法」と「銘柄数按分法」とを2:1の割合で加重平均すると、以下のようになる。 被控訴人商品1 50万8185円 被控訴人商品3 2102万0246円 被控訴人商品4 2516万3311円 被控訴人商品6 1089万7733円 被控訴人商品7 724万3739円(ウ) 限界利益率について 被控訴人が有する資料から被控訴人の商品の限界利益率を算定することができないことに鑑み、被控訴人は、被控訴人商品1、3、4、6、7について控除される経費として控訴人が主張する項目(原材料費、仕入費用、運送費等)の額が、売上高の80%であることについては争わない。 もっとも、被控訴人は、各店舗について売上変動賃料を負担しているところ、こ 26れは、居住用不動産の賃料のような固定金額ではなく、売上高に応じて歩合的に変動するものであるから(乙109、134)、各店舗における被控訴人商品1、3、 4、6、7の販売に直接関連して追加的に必要となった経費であることが明らかである。そして、被控訴人の各店舗に係る上記賃借料は商品販売売上げの約11.2%であるから(乙127、133、134)、本件における限界利益率は、20%からさらに11.2%を控除した8.8%である。 (エ) 損害額の推定が覆滅されることについて 仮に商標法38条2項が適用されるとしても、次の各事情に照らすと、その推定は100%覆滅されるべきである。 a 前記(ア)のとおり、被控訴人が「守半總本舗」を付した商品を販売したことによって、控訴人の販売する競合品の売上げが減少したという事実はない。 b 補助参加人と被控訴人こそが、控訴人が独立してのり店の経営を始める数十年前から「守半」の標章の価値を築いた主体であり、控訴人は、すでに確立されていた「守半」の価値に便乗し、被控訴人に黙ってその価値の独占を図った不誠実な商標権者である。 c 「總本舗」の表示が、「本家本元」を表すものとして顧客誘引力があるとしても、これは本件商標(守半)とは関係がないから、「本家本元」であるとの誤認による逸失利益は、商標法で保護されるべき損害に該当しない。しかも、控訴人は「本家本元」ではない。 d 控訴人の顧客は8割が固定客であり(乙42)、被控訴人側の「總本舗」の表示により、顧客が控訴人の商品の購入を取りやめて、被控訴人の商品を購入するなどということはない。なお、被控訴人の顧客も約8割が固定客である。 e 被控訴人が小売店を3店舗有しているのに対して、控訴人は1店舗しか有していないから、その販売能力に照らすと、被控訴人の売上げの3分の2については、 商標権者である控訴人が販売できない数量に当たる。 f 被控訴人は小売りのほかに卸売りもしているが、控訴人は小売専門店である 27から、卸売分については、市場の非同一性が明らかである。 g 市場においてのり製品を販売する店舗は無数に存在し、市場における競合品が存在する。 h 被控訴人商品1は予約特注品であって、最高級の贈答用の限定商品であり、 控訴人が店舗で市販している「特上平やきのり」とは競合しない。被控訴人商品6は、高級感のある贈答用のギフトに最適な高級品であり、自宅での普段使いを想定した控訴人の「食べきりパック」とは競合しない。 i のりのような日常食品・嗜好品・ギフト品は、味の好み、地元の長年の付き合い、継続的購入の便利さ、販売店の地域的な行きやすさ、ギフトで送った相手の反応(喜ばれたかどうか)等の要因により反復継続的に購入されるものであり、 「總本舗」の表示が付いているかどうかで購入の意思を決定するようなものではない。 j 「守半總本舗」の表示の売上げへの寄与度は、特許権でいう「部分実施」をはるかに下回る瑣末なものである。 イ 商標法38条3項に基づく請求について(ア) 控訴人は、訴え提起から3年近くも経過した時点で、商標法38条3項に基づく請求を追加する訴えの変更をしたが、被控訴人に過大な防御負担を強いるもので、手続を著しく遅滞させるものであるから、請求の基礎の同一性を欠き訴訟を著しく遅滞させるものとして、却下すべきである。 (イ) 控訴人は、「守半」の商標権者であり、類似標章である「守半總本舗」の使用について使用料相当額を請求する法的根拠を有しないから、商標法38条3項に係る控訴人の主張は失当である。 また、控訴人は、被控訴人に対し、「守半總本舗」の使用について使用料を請求できないから、損害の発生があり得ない。そこで、被控訴人は、損害不発生の抗弁を主張する。 (ウ) 使用料率について 28 本件商標の指定商品は、第29類、第30類、第31類、第32類の4つであり、 「ロイヤルティ料率データハンドブック〜特許権・商標権・プログラム著作権・技術ノウハウ〜」の商標分類別のロイヤルティ料率・表T-8(乙146)によると、 これらの4区分について、実際に行われている商標使用許諾契約における使用料率の平均は、1.27777・・・%、各区分の最小値の平均は0.5%である。なお、29類と31類では実例はない。 そして、本件においては「守半」の使用が許されることや、前記ア(エ)で指摘した事項を考慮すると、本件における使用料率はゼロ(ないし限りなくゼロに近い値)となり、最大でも0.1%を超えることはない。 ウ 消滅時効について 控訴人が、被控訴人による「守半」「守半總本舗」の標章の使用について、当初から知っていたことについては争いがない。そこで、被控訴人は、控訴人に対する令和2年12月25日付けの控訴審第4準備書面の送付をもって、本件商標権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権につき、3年の消滅時効を援用した。 エ 不当利得返還請求について (ア) 控訴人は、原審の段階で、訴えの追加的変更を行わずに早期解決を求める旨明言していた。事実審の最終段階における訴えの変更は、請求の基礎の同一性を欠き訴訟を著しく遅滞させるものとして、却下すべきである。また、上記発言に照らし、禁反言及び訴訟上の信義則の観点からも許されない。 (イ) 使用料相当額についての主張は前記イのとおり。 |
|
当裁判所の判断
1 争点1(被控訴人の行為が本件商標権を侵害するとみなされる行為に該当するか)について 原判決19頁17行目から20頁26行目記載のとおりであるからこれを引用する。 2 争点2(控訴人の本件商標権に基づく本訴請求が権利濫用に該当するか)に 29ついて (1) 証拠及び弁論の全趣旨によると、以下の事実が認められる。 ア 守屋半助による事業の開始 守屋半助(万延元年生まれ)は、明治17年、大森地区においてのり問屋業を行う「守半」を開業(以下、守屋半助が開業した事業のことを「守半本店の事業」という。)し、その後、焼きのり等の製造販売を開始した(乙40、弁論の全趣旨)。 イ 守屋半助の子らの状況 守屋半助の子ら及びその親族の状況は、原判決別紙9親族関係図のとおりである(甲16、弁論の全趣旨)。 D’(明治19年生まれ)は、明治44年5月22日、守屋半助の婿養子となる縁組をするとともに守屋半助の長女Cと婚姻してDとなり、大正3年7月31日、 分家の届出をした(甲16)。 ウ 補助参加人の事業 守屋半助の二男Fは、遅くともDが分家した頃までに守半本店の事業の全部又は一部を承継し、小売店を設けて「守半本店」などの標章を用いてのりの小売業を行っていた(乙8、40、弁論の全趣旨)。 昭和33年12月1日、Fの長男G(大正15年生まれ)を代表取締役として、 大森地区(後述する合資會社守半海苔店とは別住所)を本店所在地とし、乾のり加工販売等を目的とする補助参加人が設立され、守半本店の事業を補助参加人が承継した(乙3、29、弁論の全趣旨)。 補助参加人は、「株式会社守半本店」の商号の下、大森地区の店舗で小売販売をし、また、昭和40年代頃には、日本橋高島屋、東京駅名店街及び横浜駅ビル東光のれん街において小売販売をしていたこともあるが、平成22年にのりに係る事業を休止した(乙8、56、60、原審証人A、弁論の全趣旨)。 エ 被控訴人の事業、平成18年の「守半總本舗」の商標出願等 (ア) E(明治34年生まれ)は、遅くとも大正8年頃から、守半本店において丁 30稚として働き始めたが、昭和2年頃、蒲田地区において「守半」を含む屋号を使用し、守半本店の事業とは別にのりの加工・販売等の事業を開始した(乙4の1〜5、 乙11の12・13、乙22、弁論の全趣旨)。 Eは、上記事業について、「乾海苔問屋守半支店」(乙11の12) 「守半支店」 、 (乙12)といった屋号を使用して蒲田地区で複数の店舗を経営するようになり、 戦災によってこれらの店舗を失ったものの、戦後、蒲田地区に店舗を再び設け、蒲田駅前のビルに店舗を構えるなどして、「守半海苔店蒲田支店」(乙11の13)、 「守半海苔茶店」(乙56の1)「守半海苔店」 、 (乙26の1・2、乙56の2)といった屋号を使用していた(乙6の2、乙22)。 また、Eは、上記事業で扱うのり製品の容器等にも「守半」との標章を付して使用していた(乙11の8〜10、乙22)。 Eは、遅くとも昭和39年頃には蒲田地区に限らず、全国規模でのりの販売をするようになっていた(乙26)。 (イ) 昭和44年9月1日、Eの長男H(昭和9年生まれ)を代表取締役として、 商号を「株式会社守半蒲田店」、蒲田地区を本店所在地、のり、茶及び関連商品の販売等を目的とする被控訴人が設立され、Eが開業した上記(ア)の事業を承継した。 被控訴人は、当該事業について、「守半」を含む標章を引き続き使用した。(乙1の3、乙4の1・2、乙22、乙56の3) 被控訴人は、蒲田地区に店舗を設けるほか、平成17年には大森地区に原判決別紙7被控訴人店舗目録記載3の店舗(アトレ大森店)を開業した(乙6の2)。 (ウ) 被控訴人は、平成18年2月1日、以下の商標について商標出願をしたが、 同年9月5日付けで、本件商標との関係で商標法4条1項11号に該当するとして拒絶理由通知を受け、同年10月18日付けで同じ理由に基づき拒絶査定を受けた(甲12〜14)。なお、被控訴人は、以下の商標出願に当たり、控訴人に対し、 何ら説明をしなかった(弁論の全趣旨)。 31商標の構成出願年月日 平成18年2月1日出願番号 商願2006-007732商品の区分及び指定商品 第21類 干しのり、焼きのり、味付けのり、あおのり、のりのつくだに、その他の加工水産物、のりを主原料とする錠剤状・カプセル状・液体状の加工食品、お茶漬けのり、ふりかけ、食用油脂、乳製品、食肉、卵、 食用魚介類(生きているものを除く。、冷凍野菜、冷凍果実、肉製品、加工野菜及 )び加工果実、油揚げ、凍り豆腐、こんにゃく、豆乳、豆腐、納豆、加工卵、カレー・シチュー又はスープのもと、なめ物、豆、食用たんぱく (エ) 被控訴人は、平成18年5月1日付けで、その商号を「株式会社守半蒲田店」から「株式会社守半總本舗」に変更し、同月17日付けで、被控訴人及び控訴人らが所属する大森本場乾海苔問屋協同組合に対し、名義を上記商号に変更する旨の名義変更願を提出した(乙1の1、乙7、85)。 上記商号変更に際して、補助参加人からは特に異議が述べられなかったが、控訴人は、被控訴人に対して異議を述べた。被控訴人は、この頃、控訴人が本件商標権を取得していることを認識したが、その後も「守半總本舗」を含む標章の使用を継続した(甲9〜11、乙20、22、被控訴人代表者本人、原審証人A、弁論の全趣旨)。 オ 控訴人の事業及び本件出願 (ア) 昭和16年10月1日、DとCの長男I(明治44年生まれ)を代表者と 32 して、大森地区を本店所在地とし、乾のり加工販売等を目的とする合資會 社守半海苔店が設立された(甲16、17)。 補助参加人が設立されたのと同日の昭和33年12月1日、Iを代表取締役として、合資會社守半海苔店と同じ場所を本店所在地とし、乾のり加工販売等を目的とする控訴人が設立された。このとき、控訴人と補助参加人に共通する役員はいなかった(甲17、乙2、3)。 合資會社守半海苔店や控訴人は、昭和16年10月以来、「守半」や「守半海苔店」といった標章を用いて大森地区の一店舗のみにおいてのり等の製造・販売等をしている(甲3、4、乙11、42、49、乙50の1・2、弁論の全趣旨)。 なお、合資會社守半海苔店は、昭和37年5月31日に解散し、同年12月10日に清算結了の登記がされた(甲17)。 (イ) 控訴人は、昭和51年4月28日、本件出願を行い、昭和55年5月30日に本件商標が登録された(甲1、2)。控訴人は、本件出願に当たって、被控訴人に対し、何ら説明をしなかった(弁論の全趣旨)。 カ 控訴人ら及び被控訴人間の従前の関係 (ア) 控訴人と守半本店(補助参加人) 控訴人は、かつて、守半本店(補助参加人)の近くにのりの製造工場を有しており、控訴人の代表者・従業員と守半本店(補助参加人)の従業員が共同で旅行会をするなど、控訴人と守半本店(補助参加人)との間には、現在に至るまで、継続的に一定の人的交流があった(甲62〜64、原審証人J、弁論の全趣旨)。 (イ) 被控訴人と守半本店(補助参加人) Eがのり販売等の事業を開始した後、E又は被控訴人及びその関係者と、守半本店(補助参加人)及びその関係者との間には、継続的に一定の交流があり、Eの兄の孫であるKが、昭和33年頃から昭和37年まで守半本店(補助参加人)に勤務していたことがあるし、被控訴人が昭和61年11月に創業60周年記念及び新社屋落成披露の会を開催した際には、補助参加人からも関係者(Gの弟のL)が出席 33した上、被控訴人と補助参加人との間の取引関係として、少なくとも、昭和50年代頃及び平成13年から平成18年までの間に、「守半」の標章が入ったお茶漬けのりを補助参加人が被控訴人に卸売りしたことがあり、平成13年から平成14年頃に被控訴人の製品について補助参加人が加工や倉庫での保管を請け負ったことがあり、補助参加人と被控訴人とが一時期、同じデザインの缶を製品の容器として使用していたこともあった(乙11、13、22、78〜82、84、88、89、 乙93の1・2、乙94、原審証人A、被控訴人代表者本人、弁論の全趣旨)。 (ウ) 控訴人と被控訴人 控訴人と被控訴人との間には、直接の取引関係や交流はなかったが、少なくとも昭和56年に控訴人が被控訴人に「守半」の付された包装紙等の使用を中止するように申し入れるまで、それぞれに「守半」標章を使用することについて、互いに異議を述べたことはなかった(乙22、弁論の全趣旨)。 キ 当事者間の「守半」標章を巡る争いの経緯 (ア) 控訴人は、昭和56年、被控訴人に対し、当時控訴人が使用していたものと同様の唐草模様に「守半」の文字の付された包装紙等の使用を中止するように要求した。これに対して、被控訴人は、直ちには使用を中止せず、その後も相当期間、 同様の包装紙の使用を継続した。(甲28〜30、乙22、原審証人M、弁論の全趣旨) (イ) 前記エ(エ)のとおり、平成18年に被控訴人が商号を「株式会社守半總本舗」に変更した際にも、控訴人から被控訴人に対し、異議が述べられたが、被控訴人は、 その後も「守半總本舗」を含む標章の使用を継続し、令和3年10月1日まで商号を変更しなかった(甲9〜11、乙20、22、被控訴人代表者本人、原審証人A、 弁論の全趣旨)。 (ウ) 控訴人は、平成29年12月19日、同月18日付けの通知書(甲5)によって、被控訴人に対し、本件商標権に基づき、同通知書の受領後2週間以内に被控訴人が「守半」の文字を含む標章を使用することの中止等を求めたが、被控訴人が 34これに応じなかったことから、平成30年4月7日、本訴事件を提起した。 ク 「守半」標章の知名度と信用 前記ウ〜オのような三者それぞれの営業活動により、「守半」の標章は、現在まで、少なくとも大森・蒲田地区を中心として、のりの製造販売業において、一定の知名度と信用を獲得している(甲74〜135、乙8の2、15〜19、乙26、 乙42、乙43の1、乙56、60)。 (2) 前記(1)の事実を前提として検討するに、当裁判所は、控訴人が、被控訴人標章2、5、9、10、12の使用に対して、本件商標権を行使することは権利の濫用に当たるものの、「守半總本舗」の文字からなる被控訴人標章1、3、4、6〜8、11の使用に対して本件商標権を行使することについては、権利濫用に当たらないものと判断する。その理由は以下のとおりである。 ア 被控訴人標章2、5、9、10、12の使用について (ア) 前記(1)ア〜カのとおり、控訴人、被控訴人及び補助参加人は、いずれも守屋半助の開業した「守半」と何らかの関わりを有する事業者であり、前身を含めると、いずれも大森又は蒲田地区を中心として、控訴人が本件商標権を取得するより相当以前から長年にわたって、「守半」を含む商号や標章を使用し、のりの製造販売等に係る事業を行ってきた者である。 そして、控訴人ら及び被控訴人の三者は、それぞれが独立の事業者として、のりの製造販売等に係る事業を行ってきており、前記(1)クのとおり、大森及び蒲田地区を中心とした「守半」の標章の知名度と信用は、控訴人、被控訴人及び守半本店(補助参加人)の三者が営業活動を行う中で獲得されてきたものということができる。 (イ) 控訴人及び被控訴人の補助参加人との交流の状況や、三者が大田区内の一部地域内で長年活動し、大森本場乾海苔問屋協同組合という同一の組合に加盟していたことからすると、控訴人ら及び被控訴人の三者は、「守半」の標章を巡る前記(ア)の客観的状態を認識していたものと推認でき、少なくとも昭和56年までは、「守 35半」の商号や標章を巡って三者の間で明示的な紛争が生じることはなく、本件商標権についても、昭和55年に取得されて以降、40年近くにわたって、被控訴人や補助参加人などの他者に対して権利行使されたことはなかった。 (ウ) 控訴人及び被控訴人又はそれぞれの前身が、どのような経緯で、「守半」を含む商号や標章を使用することになったのかについては、いわゆる「のれん分け」の有無も含め、証拠上、必ずしも明らかではないものの、前記(1)イ、エ、オの三者の経営者の親族関係、人間関係及び前記(1)カの控訴人や被控訴人の守半本店(補助参加人)との交流の状況並びに守半本店がこれまで控訴人や被控訴人による「守半」標章の使用について何ら異議を述べていなかったことからすると、控訴人の前身やEが、「守半」の商号や標章を使用することについては、守半本店の許諾があったものと推認できる。 (エ) 本件で問題となっている被控訴人標章のうち、「守半」に「粋の極み」「特 、 選」「の海苔」といった文字を付加した標章(被控訴人標章2、5、9、10)や、 、 大きな文字で横書きにした「守半」の上下に小さな文字で「海苔の老舗」「蒲田」 、 と書した標章(被控訴人標章12)の使用については、@前記(1)エ(ア)のとおり、 被控訴人の前身であるEの個人事業の時代から、「守半海苔店蒲田支店」 「守半海 、 苔店」といった屋号が使用されてきたこと、及び、A「粋の極み」「特選」「の海 、 、 苔」「海苔の老舗」「蒲田」といった文字は、商品であるのりなどの性状や品質、 、 、 普通名称を表すか、「守半」を修飾する付加的なものとして取引者、需要者に認識されるもので、後述する「總本舗」のように「守半」に新たな異なる意味合いを与えるようなものではないことに照らすと、社会通念上、本件商標権の取得以前からEや被控訴人によって行われてきた「守半」標章の使用の延長線上にある行為と評価できる。 (オ) そうすると、前記(ア)のとおりの客観的状況があり、かつ前記(イ)のとおり、 それを認識しながら、長年にわたり本件商標権を行使してこなかった控訴人が、本件商標権の取得以前から正当に行われてきた「守半」標章の使用行為と同一又は社 36会通念上同一といえる被控訴人による被控訴人標章2、5、9、10、12の使用行為に対し、本件商標権を行使することは、権利の濫用に該当するというべきである。 イ 被控訴人標章1、3、4、6〜8、11の使用について (ア) 前記(1)エ(エ)のとおり、被控訴人は、平成18年から新たに「守半總本舗」という商号及び標章を使用するようになったものであるが、「總本舗」とは、「ある特定の商品を製造・販売するおおもとの店」を意味する語であり(甲73)、そのような語を「守半」に結合させた「守半總本舗」は、従前、Eや被控訴人がしていた「守半」の商号や標章の使用とはその意味合いを異にする。 すなわち、前記(1)ア、ウ〜オからすると、従前、控訴人ら及び被控訴人の三者間では、守半本店(補助参加人)が「本店」という中心的な地位を占める屋号、商号を一貫して用いており、控訴人及び被控訴人もそれを是認してきたということができる。しかし、被控訴人が上記のような意味合いを持つ「總本舗」を「守半」に結合させた「守半總本舗」の商号や標章を用いた場合、取引者、需要者に対し、あたかも被控訴人が三者の中で新たに「本店」としての地位を獲得したかのような印象を与えることとなり、平成18年以前に長年にわたって構築されていた三者の関係性を変質させるものといえる。 そうすると、被控訴人によって平成18年以降、開始された「守半總本舗」の商号・標章の使用は、本件商標権の取得以前から、長年にわたってEや被控訴人によって行われてきた「守半」標章の使用とは、社会通念上、同一に考えることはできない。 (イ) 被控訴人は、「守半總本舗」という商号や標章の使用について、「本店」である補助参加人の当時の代表者であるAから承諾を得たと主張するが、Aはその事実を否定しており、また、被控訴人代表者は、原審において上記主張に沿う供述をしたものの、Aから承諾を得た時期という重要な点について供述内で変遷しており、 直ちに信用することができない。また、補助参加人が異議を述べなかったというこ 37とから直ちに承諾があったと認めることはできない。そうすると、被控訴人の上記主張は採用できない。 そして、仮に「守半總本舗」の使用について補助参加人の承諾があったとしても、 そのことから直ちに、被控訴人による「守半總本舗」の使用に対する本件商標権の行使が権利濫用になるということはできない。 すなわち、「守半」の標章は守屋半助の開業した守半本店の事業に起源を持つものであり、補助参加人は、守半本店の事業を承継したものであるが、「守半」標章の知名度や信用が、需要者や取引者から見て、守屋半助の開業以来、三者の中で終始、守半本店(補助参加人)にのみ集中的に帰属するような状況にあったのかは証拠上必ずしも明らかではない。むしろ、前記(1)ク及び前記ア(ア)のとおり、控訴人や被控訴人が、独自の立場で営業を行い、それによっても「守半」標章の知名度や信用が蓄積されてきたと考えられることからすると、補助参加人が、控訴人ら及び被控訴人の三者内において「守半」標章の使用許諾をする法的権限を、守半本店の事業を承継したとか、代表者と守屋半助との間に血縁関係があるといった理由のみによって永続的に保持すると解するのは相当ではなく、平成18年当時、三者の中で補助参加人がそのような特別な権限を持っていたというためには、その時点において、「守半」標章の知名度や信用が、需要者や取引者から見て、補助参加人にのみ集中的に帰属するような状況にあったか、三者間で補助参加人がそのような権限を持つことが明示又は黙示に合意されていたか、控訴人及び被控訴人が、補助参加人が「守半」標章の使用を第三者に許諾することに同意していたなどの事情を要するものと解されるところ、上記当時、これらの事情があったと認めるに足りる証拠はない。 そして、前記(1)エ、オ、ク及び前記ア(ア)のとおり、三者がそれぞれの立場から営業活動を行って「守半」標章の知名度と信用の獲得に貢献しているという客観的状況があり、かつ、控訴人が昭和55年に本件商標権を取得しており、被控訴人が遅くとも平成18年11月頃までには控訴人が本件商標権を取得していることを認 38識していたこと、その頃、控訴人が被控訴人に対し、「守半總本舗」の使用に関して異議を述べていたことからすると、被控訴人が「守半總本舗」の使用について、 本件請求における不法行為期間(対象期間)の始期である平成20年以降も継続するためには、補助参加人の承諾のみでは足りず、商標権者たる控訴人の承諾も得るべきであったと解すべきである。しかし、前記(1)エ(エ)のとおり、被控訴人は、控訴人の承諾を得ることなく、「守半總本舗」の使用を継続したものであった。 (ウ) 被控訴人は、権利濫用を基礎付ける事情として、@本件商標が補助参加人との関係で周知商標の出願(商標法4条1項10号)に当たり、かつ、A本件商標権取得の動機が被控訴人を「守半」グループから排除することにあったと主張するので、以下検討する。 a 上記@について 本件出願がされた昭和51年当時、補助参加人がどの程度の規模で、どのように営業活動をし、どのような広告宣伝活動をしていたのかを的確に認定するに足る証拠はない。被控訴人は、同年頃、補助参加人が日本橋高島屋や東京駅などに出店していたと主張し、被控訴人代表者の陳述書(乙22、60)にはそれに沿う記載があるものの、出店の態様や当時の売上げ等は明らかとなっていない。 そうすると、本件出願当時及び登録査定当時、「守半」の標章が、補助参加人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして、商標法4条1項10号にいう周知性を獲得していたと認めることはできない。 b 上記Aについて 前記ア(イ)のとおり、本件商標は昭和55年に登録されたが、昭和56年や平成18年に控訴人から被控訴人に対して要求や異議が申し入れられた時も、控訴人が、 同要求又は異議が本件商標権に基づくものであると表明したり、当事者間で、本件商標権の扱いが議論されるなどしたものとは認められないから、本件商標権は登録から40年近くにわたって他者に対して行使されてこなかったというほかない。 この点について、原審証人Mは、控訴人が、被控訴人に対抗する目的で本件出願 39をした旨を陳述書(甲62、65)に記載しているが、同証人は、本件商標権の取得に直接に関与したものではなく、また、原審における証人尋問では、「蒲田店という意識はなかった」と被控訴人からブランドを守るという意識はなかったという趣旨の証言をしており、上記陳述書の内容を直ちに信用することはできない。 そして、そのほかに本件商標がどのような経緯で登録されるに至ったのかを的確に認定できる証拠はなく、本件商標権が、被控訴人を排除する目的で取得されたと認めることはできない。 また、本件商標権の取得について、被控訴人の承諾はなかったし、補助参加人の承諾があったのかも証拠上明らかではないものの、少なくとも現時点では、補助参加人は、控訴人による本件商標権の取得について異議がないこと、前記(1)エ(ウ)のとおり、被控訴人も、控訴人の承諾を得ることなく、「守半總本舗」の商標を出願していることからすると、控訴人による本件商標の取得過程の悪性が取り立てて高いということはできない。 (エ) 以上からすると、被控訴人が、本件商標の登録以前から使用していた「守半」標章とは社会通念上同一視することができない「守半總本舗」を、商標権者たる控訴人の承諾なく使用するという、被控訴人標章1、3、4、6〜8、11の使用行為に対して、控訴人が本件商標権を行使することは、権利濫用に該当するものではないというべきである。 ウ 当事者の主張について (ア) 控訴人らの主張について 控訴人らは、@守半本店からEへの許諾は、蒲田地区において又は「蒲田」と併用する場合に「守半」の標章を使用することに限定したものであった、A補助参加人が使用許諾を撤回した、B被控訴人は「守半」グループのアウトサイダーである、 C控訴人が「守半」標章の独占的な表示主体である、D権利行使過程に悪性がない、 E被控訴人に「守半」を使用する正当な利益がないことなどを根拠として、控訴人による本件商標権の行使は、権利濫用に当たらないと主張するので、以下検討する。 40 a 上記@について 前記(1)エ(ア)(イ)のとおり、Eや被控訴人が、長年にわたり、全国から注文を受け付けるなどして全国規模で営業をしていることや、被控訴人が、平成17年に大森地区に出店した際にも、補助参加人が特段異議を述べていないことからすると、 控訴人らが主張するような、営業地域を「蒲田」に限るとか、「守半」の標章の使用は「蒲田」と併用する場合に限るといった条件が付された許諾がE及び被控訴人に与えられていたと認めることはできない。 b 上記Aについて 本件で、控訴人の本件商標権の行使が権利濫用となるかどうかは、当初、守半本店がEに対して使用を許諾していたか否かという点のみにより決されるものではなく、前記アでみたような、これまでの「守半」標章を巡る客観的状況や経緯、被控訴人による標章の使用態様といった事情を総合して判断すべきものであるから、補助参加人の許諾が事後的に撤回されたことのみをもって、直ちに権利濫用該当性が否定されるものではない。 加えて、本件では、前記イ(イ)のとおり、補助参加人が、三者内で「守半」標章の許諾する権限を常に保持していたとはいえないこと、現時点においては、補助参加人は、のりに係る事業を休止していて「守半」標章の知名度や信用の維持に寄与しておらず、本件商標権を有しているものでもないことに照らすと、補助参加人が、 守屋半助の事業を承継したものであることを踏まえても、本件の審理中にされた補助参加人による使用許諾の撤回が、被控訴人による「守半」標章の使用の法的性質に影響を及ぼすことができると解することは相当ではない。 c 上記B及びCについて 証拠(甲74〜135)によると、控訴人が「守半海苔店」として、単独で雑誌等に取り上げられることが多数あったものと認められるものの、前記(1)エ(ア)(イ)のとおり、被控訴人も、「守半」を含む標章を長年使用しており、しかも、三者の中では、近時、最も多い店舗数を有して営業をしていたのであるから、「守半」標 41章を全体として見た場合に、その知名度と信用の獲得には、被控訴人も相当に寄与していると認められる。 この点について、控訴人らは、被控訴人は、「守半蒲田店」として寄与したにすぎないとも主張するが、前記(1)エ(ア)(イ)、キ及びクで認定したとおり、E及び被控訴人は、「守半海苔茶店」 「守半海苔店」といった控訴人と同一又は極めて類似 、 する屋号を用いたり、単なる「守半」との標章を商品に付したりしていた上、これらの状況について、昭和56年に控訴人が控訴人の包装紙と同様の被控訴人が使用する唐草模様に「守半」の文字が付された包装紙等の使用中止を要求し、平成18年に控訴人が被控訴人の商号が「株式会社守半總本舗」に変更された際に異議を述べるまでは、控訴人らから被控訴人に対して特段の異議等もなかったこと、長年の控訴人ら及び被控訴人三者それぞれの営業活動により、「守半」の標章が、少なくとも大森・蒲田地区を中心として、のりの製造販売業において、一定の知名度と信用を獲得しているものであることからすると、控訴人らの上記主張は採用できない。 他方、補助参加人は平成22年以降、のりに係る事業を休止しており、往時はともかくとして、近時においては、「守半」標章の知名度と信用の維持には貢献していない。 さらに、三者と守屋半助との血縁関係の有無が、のりの取引者ないし需要者に広く認識されていたと認めることはできず、血縁関係を基準に被控訴人を控訴人や補助参加人と区別するのは相当ではない。 以上からすると、「守半」標章を全体としてみた場合に、同標章に表れた知名度や信用性の主体として、被控訴人がアウトサイダーであるとか、その主体が控訴人のみであったなどということはできない。 d 上記D及びEについて 前記ア、イで検討したとおりであって、被控訴人が「守半總本舗」以外の被控訴人標章2、5、9、10、12を使用することに対して本件商標権を行使することは権利濫用に該当し、また、被控訴人において、「守半」の標章を使用する正当な 42利益があるというべきである。 (イ) 被控訴人の主張について 被控訴人は、@控訴人が「守半」標章の知名度と信用の獲得に貢献していないこと、控訴人が「守半」標章の使用について独占権を有する立場になかったこと、権利行使の態様が悪質であることからすると、控訴人による本件商標権の行使は全体として権利濫用に該当する、A本件において「守半」の標章の使用については権利濫用に当たるにもかかわらず、「守半總本舗」の使用については権利濫用に当たらないとするのは論理的に成り立たず、類似標章である「守半總本舗」を「守半」に変更させようとすることになるもので消費者の誤認行動をより強化する不当な結果となると主張する。 a 上記@について 証拠(甲74〜135)に照らすと、控訴人も「守半」標章の知名度と信用の獲得に貢献していたと認められる。また、控訴人は、昭和55年に本件商標権を取得しているが、後述するように、本件商標権が商標登録無効審判により無効にされるべきものとは認められない。そして、繁忙期である12月に、2週間の期限を設定して「守半」の付された標章の使用の差止め等を求めたこと(甲5)をもって、直ちに権利行使の過程に悪性があったということはできない。 そうすると、控訴人の権利行使が全体として権利濫用に当たるとはいえない。 b 上記Aについて 商標法は、指定商品における登録商標に類似する商標の使用について、当該商標権を侵害するものとみなすことにより(商標法37条1号)、需要者及び取引者をして混同が生じることを防止しようとしているものであり、本件においては、被控訴人標章1〜12の使用は、いずれも本件商標権を侵害し、又は侵害するものとみなされるものである。 その上で、本件商標権の行使が権利濫用に当たるか否かは、権利侵害の内容や権利行使の態様等を踏まえて総合的に判断されるべきところ、侵害の内容が異なる場 43合に、侵害行為ごとに異なる判断となることは当然に想定されることである。本件では、被控訴人が「守半」及びこれに「特選」「粋の極み」などの商品の品質等を表す語句と共に用いる場合と、被控訴人が「守半總本舗」を使用する場合とでは、 侵害の内容及び質が異なるから、権利行使に当たるか否かの判断が異なることになると判断するものであって、被控訴人の上記批判は当たらない。 (ウ) なお、控訴人は、前記第2の5(1)(被控訴人の主張)キ記載の被控訴人の主張及び乙124について、時機後れであるから却下すべきであると主張するところ、これらは損害額の審理の終盤になって提出されたものであって、そのこと自体は相当ではないものの、その内容は、控訴人には「守半」の知名度と信用に対する寄与がないという従前の主張を補足するものにすぎず、同主張の審理のために訴訟の完結が遅延することにはならないから、上記控訴人の主張は採用できない。 3 争点3(本件商標の商標登録が商標登録無効審判により無効にされるべきものか)について (1) 争点3-1(公序良俗違反(商標法4条1項7号)該当性)について 前記2(2)イ(ウ)bで認定、判断したところからすると、本件商標が「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」(商標法4条1項7号)に該当し、商標登録無効審判によって無効とされるべきものであるとはいえない。 (2) 争点3-2(周知商標(商標法4条1項10号)該当性)について ア 前記2(2)イ(ウ)aで検討したとおり、本件出願がされた昭和51年当時の補助参加人の営業や広告宣伝の実態を的確に認定できる証拠はなく、被控訴人についても、当時の売上高などは不明であって、当時の営業や広告宣伝の実態を的確に認定できる証拠がない。 そうすると、「守半」の標章が、本件出願当時及び登録査定当時、補助参加人又は被控訴人の商品若しくは役務を表示するものとして、商標法4条1項10号にいう周知性を獲得していたと認めることはできない。 イ また、前記2(2)イ(ウ)bで検討したところからすると、控訴人に不正競争の 44目的があったと認めることもできない。 そうすると、本件商標が周知商標(商標法4条1項10号)に該当し、商標登録無効審判によって無効とされるべきものであるとはいえない。 (3) 以上のとおり、本件商標の商標登録が商標登録無効審判により無効にされるべきものとは認められない。 4 争点4(被控訴人が本件商標権について先使用権を有するか)について 前記3で認定したとおり、本件出願がされた昭和51年当時の被控訴人の営業や広告宣伝の実態を的確に認定できる証拠がなく、「守半」が被控訴人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして周知になっていたと認めることはできない。 また、前記2(2)イ(ア)のとおり、控訴人が本件出願時に使用していた「守半」を含む商号や標章と、平成18年から新たに使用が開始された「守半總本舗」は社会通念上、同一のものとはいえないのであり、先使用権はこの点からしても成立しない。 したがって、被控訴人は本件商標権について先使用権を有するとはいえない。 5 争点5(差止めの必要性)について(1) 証拠(乙103〜107、123)によると、被控訴人が、令和3年10月1日に商号を変更するとともに、被控訴人の店舗及び被控訴人ホームページにおける「守半總本舗」の表示をとりやめたこと、それまでに、被控訴人商品1、3、4、 6、7に相当する商品について、その包装に「守半總本舗」の標章を用いていないものの販売を開始したことが認められる。 しかしながら、被控訴人が、被控訴人標章1、3、4、6、7を付した包装や、 被控訴人標章8を付したパンフレットを全て廃棄したものと認めるに足りる証拠はなく、今後、被控訴人が、これら標章を付した商品を販売したり、これらの標章が付されたパンフレットを頒布したり、また、ホームページに被控訴人標章11を掲載するおそれが全くなくなったとまで認めることはできない。 そうすると、被控訴人標章1、3、4、6〜8、11に関し、差止め又は廃棄等 45の侵害予防に係る請求を認める必要性はなお存在するというほかない。 (2) 他方、前記2(2)アのとおり、控訴人が、被控訴人による被控訴人標章2、 5、9、10、12の使用行為に対して本件商標権を行使することは権利の濫用に該当するものであるから、被控訴人標章2、5、9、10、12に関し、差止め又は廃棄等を求める控訴人の請求は認められない。 6 争点6(控訴人の損害の発生及びその額)について (1) 商標法38条2項の適用について 被控訴人は、「守半總本舗」の標章をその包装に付した被控訴人商品1、3、4、 6、7を販売していたところ、これらを販売することは控訴人の本件商標権を侵害するものとみなされる行為であり、同行為について、控訴人は本件商標権を行使することができ、過去の侵害行為について、損害賠償請求をすることができる。 そして、控訴人は、自ら「守半」の標章を付した「やきのり」 「味付やきのり」 、 、 「のり茶漬」を販売しており(甲3、4)、これらの商品は、焼きのり、味付けのり又はのり茶漬けである被控訴人商品1、3、4、6、7と需要者を共通にする同種の製品であって、侵害者の侵害行為がなければ販売することができたという競合関係にある製品(競合品)であるといえるから、本件について、商標法38条2項を適用することができる。 被控訴人は、控訴人の商品の売上げが減少していないから損害が生じておらず、 同項適用の前提を欠くと主張するが、被控訴人が「守半總本舗」の標章を使用したことにより、被控訴人が「守半」を使用する三者間で「本店」の地位を獲得したかのような印象を需要者に与えたことにより、「守半」製品を購入しようとした需要者の一部が被控訴人の商品を購入し、そのために控訴人の売上げが増加しなかった相当因果関係を否定することができないから、控訴人に逸失利益がなかったと認めることはできない。 (2) 消滅時効について 被控訴人は、控訴人に対して令和2年12月25日に送付された同日付け控訴審 46第4準備書面により、控訴人に対し、本件の不法行為に基づく損害賠償請求権について消滅時効を援用する旨の意思表示をした(記録上明らかな事実)。そして、同消滅時効の成立を否定すべき事由は認められない。 そうすると、本件において、商標権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権は本訴の訴え提起日(平成30年4月7日)において3年を経過していた部分については、時効により消滅した。そこで、以下、対象期間のうち、平成27年4月8日から平成30年4月6日までの期間(以下「期間B」という。)は不法行為に基づく損害賠償請求又は不当利得返還請求によるものとし、それ以前の期間(平成20年4月7日から平成27年4月7日まで。以下「期間A」という。)は不当不利得返還請求によるものとして、損害額又は利得額を算定する。 (3) 売上高及び限界利益 ア 売上高について 対象期間(平成20年4月7日から平成30年4月6日)における被控訴人商品1、3、4、6、7の売上高は、被控訴人による変動在庫推計法により推計される額と認めるのが相当である。同推計は、損益計算書(乙127)記載の売上高のうち、卸売上高、一般小売売上高及びストア売上高を合計したものが商品販売による売上高に当たるものとし(乙128)、これに仕入額のうちのり製品のものと考えられる部分の割合(乙129)と、売上高に対するのり製品の割合が同等であると仮定してのり製品の売上高を推定し(乙130)、そのうち各商品の占める割合を令和3年4月から同年9月までの被控訴人3店舗における売上高に対する各商品の売上高の割合(乙140、141)と同等であると仮定して、推計したものであるところ(乙142)、その推定過程に不合理な点はない。 なお、被控訴人は、上記推定のほかに、のり製品の売上高を同時期に販売していた商品数で除して各商品の売上高を推計する手法(銘柄数按分法)により売上高を推計し(乙131〜134)、これと、上記変動在庫推計法により推計した売上高について、1:2の割合で加重平均した金額を売上高として主張するが、各商品の 47売上高が均一であるとはおよそ考えられないことからすると、単純に商品数で除する銘柄数按分法による推定は合理性を欠くというほかなく、この額と加重平均をとる理由がないから、被控訴人の上記主張は採用できない。 そうすると、対象期間における被控訴人商品1、3、4、6、7の売上高は次のとおりである。 被控訴人商品1 66万2429円 被控訴人商品3 2078万1630円 被控訴人商品4 3066万9937円 被控訴人商品6 1502万4874円 被控訴人商品7 952万2014円 これを、期間Aと期間Bに分けて計算すると、別紙「損害額計算」記載1の売上額一覧のとおりとなり、期間Aについては、合計1787万2767円、期間Bについては、合計5878万8117円となる(なお、平成27年4月分は日割り計算した。また、以下、損害の計算において、1円未満は四捨五入した。) イ 限界利益について 経費(原材料費、仕入費用、運送費等)の額が、売上高の80%であることについては争いがない。被控訴人は、各店舗の賃料についても経費として控除すべきであると主張するが、証拠(乙127、133、148)によると、賃料が一定ではなく変動していることは認められるものの、売上高に対して一定の割合の額であるとは認めることはできず、被控訴人顧問税理士は、テナント料は売上高の15%である旨の記載した書面を作成しているが(乙148)、賃料は売上高の15%ではなく、これらを総合しても、限界利益額を算定するに当たって、各店舗の賃料を経費として控除すべきと認めるに足りない。 そうすると、限界利益率は売上高の20%であり、不法行為に基づく損害賠償請求が可能であって商標法38条2項が適用され得る期間Bについてみると、限界利 48益額は、別紙「損害額計算」記載2の「限界利益(20%)」欄のとおり、合計1175万7624円である。 ウ 推定の覆滅について (ア) 後掲各証拠によると、次の事実が認められる。 a 被控訴人が「守半總本舗」を標章として用いた商品を販売したことにより、 控訴人の売上げが減少したとしてもその程度は大きくないものと認めるのが相当である。この点は、控訴人が、書類提出命令に応じることなく、控訴人の商品の売上高に係る書類を提出していないことからも推認される。なお、控訴人は、平成18年9月1日から平成19年8月31日までの期間の損益計算書(甲147)を提出しているところ、これによると、控訴人の上記期間の売上高は、その前期よりも216万5097円減少したことが認められるものの、これが、控訴人の売上額全体に対しどの程度の影響であったものか、また、被控訴人による「守半總本舗」標章の使用による影響によるものか明らかではなく、上記証拠をもって、被控訴人の行為によって控訴人の被控訴人商品1、3、4、6、7の競合品の売上高が相当程度に減少したと認めることはできない。 b 控訴人は卸売販売をしていないが、被控訴人は卸売販売をしているので、市場が一部異なっている。被控訴人の売上高のうち約13.5%は、卸売販売によるものと認められる(乙127、128)。 c 控訴人は1店舗、被控訴人は3店舗において、小売販売をしている。 d 控訴人及び被控訴人の顧客は、約8割が固定客である(乙42)。 (イ) 前記(ア)のとおり、被控訴人が「守半總本舗」の標章を使用したことにより控訴人の売上げが相当程度低下したとはいえず、卸売販売については市場が異なっており、店舗数の違いから販売能力に差があるといえ、さらに需要者の8割は固定客であって誤認混同するおそれが少ないといえるから、これら事情を総合すると、 商標法38条2項により推定される損害額について、9割の限度で推定が覆滅されると認めるのが相当である。 49 (ウ) 被控訴人は、@控訴人が「守半」の標章の価値を築いたものではないこと、 A「總本舗」の表示による損害は商標法で保護されるべき損害に当たらないこと、 B被控訴人商品1及び6については、控訴人の商品に競合品がないこと、C市場において競合品が存在することについても、推定を覆滅すべき事情に当たり、100%の割合で覆滅すべきであると主張するが、前記2(1)クのとおり、控訴人も「守半」の標章の知名度及び信用の獲得に貢献したといえるし、「守半總本舗」という類似商標の使用は商標法上、侵害とみなされるのであるから、被控訴人による「守半總本舗」の使用により控訴人に生じた損害は商標法上保護されるべき損害に当たる。また、被控訴人商品1及び6についても、控訴人は、需要者を共通とする同種の商品を販売しており競合品を販売していないとはいえない。さらに、市場において無数の「焼きのり」や「お茶漬けのり」が販売されているとしても、「守半總本舗」が「守半」の本店であるものと誤認して購入した需要者の需要が、あえて「守半」の標章を使用していない製品に向くとは考えにくい。そうすると、被控訴人が指摘する上記各事情は、本件において推定覆滅事情に当たると認めることはできない。 (エ) そして、前記イの限界利益額の9割について推定が覆滅されるとすると、別紙「損害額計算」記載2の「9割覆滅」欄のとおり計算され、商標法38条2項により算定される期間Bにおける損害額は、117万5763円となる。 エ 推定覆滅部分に係る商標法38条3項に基づく損害額 (ア) 商標権者は、自ら当該商標を使用して利益を得ることができると同時に、第三者に対し、当該商標の使用を許諾して利益を得ることができることに鑑みると、 侵害者の侵害行為により商標権者が受けた損害は、商標権者が侵害者の侵害行為がなければ自ら販売等をすることができた競合品の売上げの減少による逸失利益と使用許諾の機会の喪失による得べかりし利益とを観念し得るものと解される。 したがって、商標法38条2項による推定が覆滅される場合であっても、当該推定覆滅部分について、商標権者が使用許諾をすることができたと認められるときは、 50同条3項の適用が認められると解すべきである。 (イ) これを本件についてみるに、前記ウの覆滅事由のうち、被控訴人が卸売販売をしていた部分については、商標権者が侵害者の侵害行為がなければ自ら販売等をすることができた競合品の売上げの減少による逸失利益を想定することができないものであるものの、商標権者が使用許諾をすることができたものということができるから、同覆滅部分については、商標法38条3項の適用を認めるのが相当である。 一方、その他の推定覆滅部分については、控訴人が使用許諾をすることができたものと認めるに十分ではなく、同項の適用を認めることができない。 (ウ) そうすると、前記アの期間Bの売上高に、卸売販売をしていた割合である13.5%を乗じ、更に後記カのとおりの使用料率0.5%を乗ずることとなり、商標法38条3項の重畳適用により算定される損害額は、別紙「損害額計算」記載3の「使用料率0.5%」欄のとおり計算され、3万9682円となる。 オ 商標法38条2項及び推定覆滅部分の同条3項に基づく損害額 以上によれば、商標法38条2項及び推定覆滅部分の同条3項に基づく損害額の合計は121万5445円(=117万5763円+3万9682円)となる。 カ 商標法38条3項による使用料相当額について (ア) 使用料率について 証拠(乙146「ロイヤルティ料率データハンドブック〜特許権・商標権・プロブラム著作権・技術ノウハウ〜」平成22年8月31日経済産業省知的財産政策室編)によると、国内同業他社にライセンスすることを想定したアンケート調査の結果(サンプル数205)では、商標権のロイヤルティ料率(正味販売高に対する料率)は、全体で平均2.6%であり、本件商標権の指定商品である30類では平均1.5%、32類では平均0.5%であり、29類及び31類で回答が得られなかったことが認められる。 上記に、前記ウ(ア)の各事情その他本件に顕れた事情を考慮すると、本件における使用料率は0.5%と認めるのが相当である。 51 (イ) 使用料相当損害金について 前記アの売上額に、使用料率0.5%を乗じると、使用料相当額は、別紙「損害額計算」記載4及び5のとおり計算され、期間Aにつき8万9364円、期間Bにつき29万3940円となる。 そうすると、期間Bについては、前記オの額の方が大きいから、商標法38条2項及び推定覆滅部分について同条3項に基づき算定される額(121万5445円)が控訴人の損害額となる。 キ 不当利得返還請求権について 期間Aについては不当利得に基づく請求が認められることとなり、その額は、前記カで算定した使用料相当額と同額の8万9364円である。 なお、期間Bについては、不当利得返還請求による利得額(前記カ(イ)の使用料相当損害金と同額の29万3940円)よりも、不法行為に基づく損害賠償請求により認められる額(121万5445円)の方が大きいので、不法行為に基づく請求が認められることとなる。 ク 弁護士費用 事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌すると、本件の不法行為と相当因果関係にある弁護士費用は、15万円と認めるのが相当である。 ケ 合計 以上を合計すると、控訴人は、被控訴人に対し、不当利得に基づく利得金8万9364円、不法行為に基づく損害金121万5445円及び弁護士費用15万円の合計145万4809円及びこれに対する不法行為の後の日でありかつ訴状送達の日の翌日である平成30年4月22日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求することができる。 コ なお、被控訴人は、控訴人による商標法38条3項に基づく主張及び不当利得返還請求の追加について、請求の基礎の同一性を欠き訴訟を著しく遅滞させるものであるから却下すべきであると主張するが、商標法38条3項に基づく主張の追 52加は訴えの変更には当たらない。また、同項に基づく主張が追加されたことによって使用料率に係る主張立証を要することとなったものであるが、本件訴訟の経緯に照らすと、それによって訴訟の完結が遅延したとはいえない。 また、不当利得返還請求については、消滅時効の抗弁が提出された後に初めて追加する理由が生じたものであるところ、不法行為に基づく損害賠償請求とその請求の基礎は同一であり、また、そのための特段の審理を要するものではないから、著しく訴訟手続を遅滞させるとはいえない。 そうすると、上記被控訴人の主張には理由がない。 7 結論 以上の次第で、控訴人の請求は、被控訴人に対し、145万4809円及びこれに対する平成30年4月22日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払い並びに被控訴人標章1、3、4、6〜8、11に係る差止め又は廃棄等を求める限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却すべきところ、これと異なり、控訴人の請求を全部棄却した原判決は失当であって、本件控訴の一部は理由があるから、原判決の主文第1項を取り消し、上記の限度で控訴人の請求を認容し、 その余の請求を棄却することとして、主文のとおり判決する。 |
|
追加 | |
浅井憲裁判官勝又来未子54別紙被控訴人標章目録12355456756891011571258別紙被控訴人ウェブページ目録URL「www.以下省略」により特定されるインターネット上のウェブページ及び同ドメイン名下において存在する全てのインターネット上のウェブページ59別紙被控訴人商品目録1商品名:幽玄商品:焼きのり商品番号:U-502商品名:幽玄商品:焼きのり商品番号:UZ-50、UZ-100603商品名:極上のり商品:焼きのり、味付けのり商品番号:Y81、A81、Y151、A151、Y201、A201、 Y251、A2514商品名:大判海苔商品:焼きのり商品番号:Z40、Z50、Z60、Z70、Z80615商品名:守半特選風味シリーズ商品:焼きのり、味付けのり626商品名:老舗伝承商品:焼きのり、味付けのり(表面)(裏面)637商品名:【海苔物語】海苔茶漬商品:のり茶漬け型番:NM-C64別紙銘柄数按分法売上高推計表2013年10月2013年11月2013年12月2014年1月2014年2月2014年3月2014年4月2014年5月2014年6月2014年7月2014年8月C1ヶ月平均の海\7,474,596\7,474,596\7,474,596\7,474,596\7,474,596\7,474,596\7,474,596\7,474,596\7,474,596\7,474,596\7,474,596苔製品売上高対象商品1売上高(1ヶ月)(C×1/157)対象商品3売上高(1ヶ月)(C\380,871\380,871\380,871\380,871\380,871\380,871\380,871\380,871×8/157)対象商品4売上高(1ヶ月)(C\238,044\238,044\238,044\238,044\238,044\238,044\238,044\238,044\238,044\238,044\238,044×5/157)対象商品6売上高(1ヶ月)(C×4/157)対象商品7売上高(1ヶ月)(C\47,609\47,609\47,609\47,609\47,609\47,609\47,609\47,609×1/157)(注1)2014年8月期は2013年8月21日から2014年8月20日までの事業年度で、2015年8月期から2018年8月期までも同様である。 (注2)2014年8月までは2014年8月期の推計値、2014年9月から2015年8月までは2015年8月期の推計値、以下同様にして計算している。 (注3)2018年4月は4月6日までの6日分として計算している。 652014年9月2014年10月2014年11月2014年12月2015年1月2015年2月2015年3月2015年4月2015年5月2015年6月2015年7月2015年8月C1ヶ月平均の\7,813,080\7,813,080\7,813,080\7,813,080\7,813,080\7,813,080\7,813,080\7,813,080\7,813,080\7,813,080\7,813,080\7,813,080海苔製品売上高対象商品1売上高(1ヶ月)(C×1/157)対象商品3売上高(1ヶ月)\398,119\398,119\398,119\398,119\398,119\398,119\398,119\398,119\398,119\398,119\398,119\398,119(C×8/157)対象商品4売上高(1ヶ月)\248,824\248,824\248,824\248,824\248,824\248,824\248,824\248,824\248,824\248,824\248,824\248,824(C×5/157)対象商品6売上高(1ヶ月)(C×4/157)対象商品7売上高(1ヶ月)\49,765\49,765\49,765\49,765\49,765\49,765\49,765\49,765\49,765\49,765\49,765\49,765(C×1/157)2015年9月2015年10月2015年11月2015年12月2016年1月2016年2月2016年3月2016年4月2016年5月2016年6月2016年7月2016年8月C1ヶ月平均の\8,179,466\8,179,466\8,179,466\8,179,466\8,179,466\8,179,466\8,179,466\8,179,466\8,179,466\8,179,466\8,179,466\8,179,466海苔製品売上高対象商品1売上高(1ヶ月)(C×1/157)対象商品3売上高(1ヶ月)\416,788\416,788\416,788\416,788\416,788\416,788\416,788\416,788\416,788\416,788\416,788\416,788(C×8/157)対象商品4売上高(1ヶ月)\260,493\260,493\260,493\260,493\260,493\260,493\260,493\260,493\260,493\260,493\260,493\260,493(C×5/157)対象商品6売上高(1ヶ月)(C×4/157)対象商品7売上高(1ヶ月)\52,099\52,099\52,099\52,099\52,099\52,099\52,099\52,099\52,099\52,099\52,099\52,099(C×1/157)662016年9月2016年10月2016年11月2016年12月2017年1月2017年2月2017年3月2017年4月2017年5月2017年6月2017年7月2017年8月C1ヶ月平均の海苔製品売\8,303,154\8,303,154\8,303,154\8,303,154\8,303,154\8,303,154\8,303,154\8,303,154\8,303,154\8,303,154\8,303,154\8,303,154上高対象商品1売上高(1ヶ月)(C×1/157)対象商品3売上高(1ヶ\423,091\423,091\423,091\423,091\423,091\423,091\423,091\423,091\423,091\423,091\423,091\423,091月)(C×8/157)対象商品4売上高(1ヶ\264,432\264,432\264,432\264,432\264,432\264,432\264,432\264,432\264,432\264,432\264,432\264,432月)(C×5/157)対象商品6売上高(1ヶ\211,545\211,545\211,545\211,545月)(C×4/157)対象商品7売上高(1ヶ\52,886\52,886\52,886\52,886\52,886\52,886\52,886\52,886\52,886\52,886\52,886\52,886月)(C×1/157)2017年9月2017年10月2017年11月2017年12月2018年1月2018年2月2018年3月2018年4月合計C1ヶ月平均の海苔製品売\9,797,606\9,797,606\9,797,606\9,797,606\9,797,606\9,797,606\9,797,606\9,797,606上高対象商品1売上高(1ヶ\62,405\62,405\62,405\12,481\199,696月)(C×1/157)対象商品3売上高(1ヶ\499,241\499,241\499,241\499,241\499,241\499,241\499,241\99,848\21,497,479月)(C×8/157)対象商品4売上高(1ヶ\312,026\312,026\312,026\312,026\312,026\312,026\312,026\62,405\14,150,059月)(C×5/157)対象商品6売上高(1ヶ\249,621\249,621\249,621\249,621\249,621\249,621\249,621\49,924\2,643,451月)(C×4/157)対象商品7売上高(1ヶ\62,405\62,405\62,405\62,405\62,405\62,405\62,405\12,481\2,687,188月)(C×1/157)67別紙変動在庫推計法売上高推計表2014年08月期2015年08月期2016年08月期2017年08月期2018年08月期@商品販売売上(乙128)\147,767,958\154,459,579\161,702,782\164,148,011\193,692,380計A商品販売売上月額(@÷月数)\12,313,997\12,871,632\13,475,232\13,679,001\16,141,032各被告商品の比率対象商品1(幽玄)0.57%\662,429\662,429対象商品3(極上のり)2.99%\2,945,512\4,618,344\4,834,908\4,908,024\3,474,842\20,781,630対象商品4(大判海苔)4.19%\5,675,516\6,471,852\6,775,344\6,877,800\4,869,425\30,669,937対象商品6(老舗伝承)8.79%\4,809,536\10,215,338\15,024,874対象商品7(海苔茶漬)1.37%\1,349,616\2,116,092\2,215,332\2,248,824\1,592,150\9,522,014(注)2018年8月期は2018年4月6日までの「7ヶ月間+6日間」として計算している。 68別紙損害額計算1売上額一覧期間A期間BH25.10〜H26.8H26.9〜H27.4.7小計H27.4.8〜H27.8H27.9〜H28.8H28.9〜H29.8H29.9〜H30.4.6小計商品1662,429662,429商品32,945,5122,763,4355,708,9471,854,9094,834,9084,908,0243,474,84215,072,683商品45,675,5163,872,5029,548,0182,599,3506,775,3446,877,8004,869,42521,121,919商品64,809,53610,215,33815,024,874商品71,349,6161,266,1862,615,802849,9062,215,3322,248,8241,592,1506,906,212小計17,872,76758,788,1172限界利益額及び推定覆滅後の額(期間B)売上額限界利益(20%)9割覆滅商品1662,429132,48613,249商品315,072,6833,014,537301,454商品421,121,9194,224,384422,438商品615,024,8743,004,975300,498商品76,906,2121,381,242138,124小計58,788,11711,757,6241,175,7633推定覆滅部分の使用料相当額(期間B)売上高の13.5%使用料率0.5%商品189,428447商品32,034,81210,174商品42,851,45914,257商品62,028,35810,142商品7932,3394,662小計7,936,39639,682694使用料相当額(期間A)売上額使用料率0.5%商品1商品35,708,94728,545商品49,548,01847,740商品60商品72,615,80213,079小計17,872,76789,3645使用料相当額(期間B)売上額使用料率0.5%商品1662,4293,312商品315,072,68375,363商品421,121,919105,610商品615,024,87475,124商品76,906,21234,531小計58,788,117293,94070 |
裁判長裁判官 | 本多知成 |
---|---|
裁判官 | 53 |