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関連審決 不服2019-13864
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事件 令和 4年 (行ケ) 10062号 審決取消請求事件

原告三菱鉛筆株式会社
同訴訟代理人弁護士 石神恒太郎 佐藤信吾 薄葉健司
同訴訟代理人弁理士 青木篤 外川奈美 田島壽 遠山良樹
同訴訟復代理人弁理士 平田学
被告特許庁長官
同 指定代理人阿曾裕樹 矢澤一幸 綾郁奈子 冨澤美加
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2023/01/24
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2019-13864号事件について令和4年4月13日にした審決を取り消す。
事案の概要
本件は、別紙商標目録記載の商標(以下「本願商標」という。)に係る商標登録出願の拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。争点は、@本願商標が商標法3条1項3号に掲げる商標に該当するか、A本願商標が同条2項に規定する商標に該当するかである。
1 特許庁における手続の経緯等 原告は、平成27年4月1日、本願商標について、商標の詳細な説明を「商標登録を受けようとする商標は「DICカラーガイドPART2(第4版)2251」のみからなるものである。」とし、指定商品を第16類「鉛筆、シャープペンシル、
シャープペンシルの替え芯、鉛筆削り(電気式のものを除く。)」として、商標登録出願(商願2015-29864号)をし(甲152)、平成30年11月28日付けで手続補正書を提出して指定商品を第16類「鉛筆(色鉛筆を除く。)」と補正したところ、令和元年7月12日付けで拒絶査定を受けた。そこで、原告は、
同年10月17日、同拒絶査定に対する不服審判の請求(不服2019-13864号)をした。
特許庁は、令和4年4月13日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同年5月24日、原告に送達された。
原告は、令和4年6月22日、本件訴えを提起した。
2 本件審決の理由の要旨 本件審決の理由は、別紙のとおりであるが、その要旨は、以下のとおりである。
(1) 商標法3条1項3号について ア 本願商標は、別紙本件審決の別掲1(1)及び(2)のとおり、色彩(DICカラーガイドPART2(第4版)2251)のみからなる商標であるところ、文字や 図形、他の色彩と組み合わせたものではなく、商標を使用する際の形態や使用態様も特定されておらず、輪郭のない単一の色彩のみからなるものである。
そして、本願商標に係る色彩は、JIS系統色名の区分では「ごく暗い赤」に該当し、基本色彩語としては「赤」「紫」「茶」の境界領域に存在する(甲126)とされる。
イ また、商取引においては、商品やその包装の色彩は、商品のイメージや美感を高めるために多様な色彩が選択されているから、本来的には商品の出所を表示する機能を有するものではないところ、筆記用具を取り扱う業界においても、別紙本件審決の別掲2のとおり、赤系や茶系の多様な色彩(朱塗色、ボルドーカラー、バーガンディレッド、ワインレッドなど)が、商品の色彩(外装色)として採択されている実情がある。
ウ そうすると、本願商標は、その指定商品に使用されるときは、その需要者及び取引者は、単に商品やその包装の美感を向上させる目的の色彩であると認識、理解するにとどまるというべきで、単に商品の特徴(商品の色彩)を普通に用いられる方法で表示するにすぎない。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
(2) 商標法3条2項について ア 商品の色彩は、古来存在し、通常は商品のイメージや美観を高めるために適宜選択されるものであり、また、商品の色彩には自然発生的な色彩や商品の機能を確保するために必要とされるものもあることからすると、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、原則として何人も自由に選択して使用できるものとすべきで、特に、単一の色彩のみからなる商標については上記趣旨が妥当するものと解される。
そして、商標法3条1項3号に該当する単一の色彩のみからなる商標が同条第2項に当たるというためには、当該商標が使用をされた結果、特定の業務に係る商品又は役務であることを表示するものとして需要者の間に広く認識されるに至り、そ の使用により自他商品識別力又は自他役務識別力を獲得していることが必要であり、
さらに、同条1項3号の前記趣旨に鑑みると、特定人による当該商標の独占使用を認めることが公益上の見地からみても許容される事情があることを要すると解するのが相当である(知財高裁令和元年(行ケ)第10146号同2年8月19日判決参照)。
イ 原告は証拠を提出し、本願商標が、原告による継続した使用により、自他商品の出所識別標識としての機能を獲得している旨を主張しているため、以下検討する。
(ア) 証拠及び原告の主張によれば、以下の事実が認められる。
a 原告は、明治20年創業の筆記具大手であって、ボールペン、サインペン、
鉛筆、学用品などを取り扱っている(甲1、2)。
原告の取扱商品には、「ユニ」(uni)と称する「鉛筆」(以下、この鉛筆を同じシリーズのものも含めて「原告商品」という。)があり、ユニシリーズには、
「ユニ」(昭和33年発売)、「ハイユニ」(昭和41年発売)、「ユニスター」がある(甲1)。
b 原告商品は、商品本体の側面の色彩を、本願商標に相当する色彩を基調色としつつ、片方の端部に帯状に黒色(「ハイユニ」には帯状の金色も配している。)を配しているもので、いずれも側面には「MITSU-BISHI」、「Hi-uni」、「uni」等の文字(金色に彩色したものがある。)が表示されている(甲47、48)。
c 原告商品の販売実績は、「ユニ」の出荷本数が年間約1200万本から約1500万本の間(平成13年〜平成27年)で、「ハイユニ」の販売数量が年間約200万本から約270万本の間(平成13年から平成27年)とされる(甲93、
甲94)。
d 新聞や雑誌、インターネット記事、テレビ番組等において、原告商品を商品紹介、言及、広告又はそれと関連する記事情報(本願商標に係る色彩を表示しない ものを含む。)が掲載されている(甲2、4〜29、39〜43、46、120、
121、133)。
上記記事情報には、原告商品やその色彩について、「日本の「あづき」と西洋の「ワインレッド」の高級感を合わせた「ユニ色」に金色のロゴがトレードマークで…」(甲28の9葉目)、「茶色ともエンジ色ともつかない不思議な塗り色。円錐形の先端と、ゴールドの刻印文字。」(甲42)、「…日本の伝統色であるえび茶色とワインレッドを掛けあわせた通称「uni色」を開発。」(甲46)、「製法は当時から変わらず、ユニ色(えび茶とワインレッドの混合色)と黒色を組み合わせたデザインも、そのまま。」(甲121)等の紹介をするものがある。
e 原告が株式会社コイックスに依頼して平成30年10月にオンラインで実施したアンケート調査(甲107。以下「本件アンケート調査」という。)は、以下のとおりである。
(a) 対象者は、鉛筆を使用する子を持つ親及び鉛筆を自身が使用している者(1200名。20代、30代、40代、50代、60代のそれぞれ男女100名及び母親200名。)である。
(b) 調査方法は、本願商標(別紙本件審決の別掲1(1)に相当する。)を「あずき色の色彩画像」として回答者に見せて、当該画像が鉛筆のブランドに使用している色彩とした上で、思い浮かべるブランドを自由回答形式で尋ねたものとされる。
(c) 調査結果は、原告に係る商品(「uni」、「三菱鉛筆」、「三菱」等)との関連を想起、回答できた割合は、43.4%であったとされる。
(イ)a 上記認定事実によれば、原告商品は、昭和33年の発売以降、60年以上の継続した販売実績があり、新聞や雑誌、インターネット記事等による商品紹介記事も継続して掲載されているから、当該商品は、我が国の需要者の間において、
一定程度の認知度を獲得している商品である実情はうかがえる。
b しかしながら、原告商品の外装は、本願商標に係る色彩を基調色としつつも、
他の色彩(黒色、金色)や文字(「MITSU-BISHI」、「Hi-uni」、
「uni」等)を表示してなるから、本願商標に係る単一の色彩のみで商品の出所を表示してなるものではない。
また、本願商標に係る色彩は、「ユニ色」なる色彩として紹介される場合があるとしても、原告商品について当該色彩と他の色彩の組み合わせ(「ユニ色」と「金」や「黒」)が特徴である旨を言及する記事情報もあるなど、本願商標に係る単一の色彩が、原告商品に係る出所識別標識として認識、記憶されているかは必ずしも明らかではない。
c さらに、本件アンケート調査によっても、比較的鉛筆に親しんでいる需要者の間においても、本願商標(別紙本件審決の別掲1(1))から、原告との関連を想起できる者は50%にも満たず、半数以上の需要者は原告との関連を想起できていないから、本願商標の指定商品に係る一般の消費者(鉛筆の使用頻度が低い者を含む。)の間における認知度は、それより低いものと考えられる。
d そうすると、本願商標に係る色彩は、その指定商品に係る需要者の間において、原告に係る出所識別標識として広く認識されるに至っているとまでは認められない。
e 加えて、本願商標とも共通した印象を与え得る赤系や茶系の色彩を商品の外装色として彩色した商品(文房具)が、別紙本件審決の別掲2のとおり、多数の事業者により製造、販売されている取引の実情があることを踏まえると、本願商標に係る単一の色彩のみで、文字等に依拠せずに商品の出所を識別することまでは事実上困難というべきで、また、本願商標に係る色彩について特定人に排他独占的な使用を認めることは、商品やその包装、広告の美感を向上させるために自由に使用が認められていた色彩について、第三者による使用を不当に制限する結果にもなるから、公益上(独占適応性)の観点から支障がある。
その他に、本願商標について、原告による独占使用を認めることが公益上の見地からみて許容されるというべき事情は見いだせない。
f 以上のとおり、本願商標は、その指定商品に係る需要者の間において、特定 人(原告)の業務に係る商品であることを表示するものとして広く認識されるに至っているものではなく、特定人(原告)に排他独占的な使用を認めることは公益上(独占適応性)の見地からみて許容されるともいえない。
したがって、本願商標は、その指定商品との関係において、使用をされた結果、
需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識できるに至ったものと認めることはできず、商標法3条2項の要件を具備しない。
(3) まとめ 以上を踏まえると、本願商標は、商標法3条1項3号に該当し、原告による使用実績によっては、我が国の需要者の間において、何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているものとはいえないから、同条2項の要件を具備しない。
原告主張の審決取消事由(商標法3条1項3号及び同条2項についての判断
の誤り) 以下のとおり、本願商標は、商標法3条1項3号に掲げる商標に該当せず、また、
仮に同号に掲げる商標に該当するとしても、同条2項に規定する商標に該当するから、これと異なる本件審決の判断は誤りである。
1 本願商標の独自性 本願商標は、古くからある既存の色彩から採択されたものではなく、原告において、ブランドカラーであることを意識し、他社製品の色彩と重ならないようにオリジナルの色彩を作成して選定したものである。このように、本願商標は、既存の塗料、包装等に由来する色彩ではなく、原告が採択した独自の色彩であって、原告以外の善意の取引者が偶然に使用することはあり得ないものであるから、本願商標は、
本願商標に係る指定商品(鉛筆(色鉛筆を除く。)。以下「本件指定商品」という。)が通常有する色彩ではなく、また、自他商品識別標識として機能するものである。
本願商標が自他商品識別力を欠くというためには、本件指定商品について、本願 商標が既に第三者によって当該商品の色彩として採用されていることが必要であるところ、別紙本件審決の別掲2の各色彩のうち本件指定商品について使用されたもの(同別掲2の(2)ないし(4))についてみると、これらは、いずれも本願商標と視覚上相違する。なお、念のため、本件審決が挙げるシャープペンシル、ボールペン及び万年筆について使用された各色彩(別紙本件審決の別掲2の(5)ないし(9))をみても、これらは、いずれも本願商標と視覚上相違する。
2 本願商標の著名性 (1) これまでの数多くの新聞、雑誌等において、本願商標に係る記事が掲載されてきた(甲2、3、39〜43、114〜121、133)。
(2) 原告は、これまで長年にわたり、新聞、テレビ等において、本願商標が使用された原告商品の広告を行ってきた(甲4〜28、36、37)。
(3) 原告商品は、平成13年から平成27年までをみると、毎年1400万本ないし1700万本程度販売され、原告商品の同期間の累計販売本数は約25億本である(甲34)。また、原告は、鉛筆の市場において、極めて高い市場占有率(平成27年において53.7%)を誇っている(甲35)。さらに、本願商標が使用された原告商品は、全国のほぼ全ての文具店での取扱いがあり、その店舗数は、
平成26年において7254店に上る(甲103、104)。
(4) 原告が商標登録出願をした2つの商標(甲137(以下「別件商標1」という。)及び甲138(以下「別件商標2」という。))については、いずれも商標登録がされている。別件商標1においては、本願商標の色彩が全体の約92%を占め、別件商標2においては、本願商標の色彩が全体の約85%を占めているところ、別件商標1及び2について商標登録がされたのは、これらの商標のうち極めて大きな部分を占める本願商標が著名であったからである。
(5) 以上によると、需用者及び取引者は、65年近くの長きにわたって、原告商品に使用される文字商標である「ユニ」及び「uni」と共に、本願商標(需用者及び取引者が「ユニ色」と呼ぶ色彩)を記憶に深く刻み込んで認識してきたので あって、本願商標は、文字商標である「ユニ」及び「uni」と同様、著名な商標として、自他商品識別標識として機能してきたといえる。
なお、本件審決が挙げる各色彩(別紙本件審決の別掲2の(2)ないし(9))が本願商標と視覚上相違し、これらの各色彩の存在が本願商標の自他商品識別力を否定するものでないことは、前記1のとおりである。
3 本願商標の特別顕著性 前記2(1)の記事によると、本願商標は、需用者及び取引者によって「ユニ色」と呼ばれているところ(甲29)、本件指定商品については、各社とも、出所識別標識としてブランドカラーを意識していたのであるから(甲42)、本願商標は、
単に「赤」「紫」「茶」の境界領域の色彩というにとどまらず、「ユニ色」として、
商品が原告の業務に係るものであることを直接表示するものとなっている。このように、本願商標が「ユニ色」という特定の意味(原告独自の色彩)を有する特別顕著なものであり、それが原告の著名な文字商標と色彩との組合せで呼ばれている以上、本願商標は、自他商品識別標識として機能するものであるといえる。
4 本件指定商品における本願商標の重要性 本件指定商品は、極めて小さいものであって、本件指定商品に文字商標を付した部分の面積は小さいから、陳列された商品を見た需用者は、当該文字商標のみによっては商品の出所を認識し得ず、当該文字商標と違って本件指定商品の大部分を占める本願商標をもって商品の出所を認識する。このような本願商標の重要性に照らすと、本願商標は、自他商品識別力を有するものである。
5 模倣品の存在 原告商品は、これまで悪意の第三者により模倣されてきた(甲109、110)。
このような模倣がされるのは、需用者において、模倣品が原告の業務に係るものであると誤認するからであるから、このような模倣がされることは、本願商標が自他商品識別標識として機能してきたことを意味する。
6 特許庁の認識 特許庁は、令和元年(2019年)に米国で開催されたINTA総会において、
商標登録がされた別件商標1の見本として、本願商標の占める割合が別件商標1と異なる原告商品(「ユニスター(uni star)」)を展示した(甲125)。
専門官庁である特許庁が別件商標1と上記の原告商品に使用される商標とを取り違えたことは、専ら本願商標によって、問題となる鉛筆が原告の業務に係る商品であると認識されていることの証左である。
7 本件アンケート調査の結果 本件アンケート調査によると、対象者に先入観を与えないように配慮して行った本願商標から思い浮かぶ鉛筆のブランドを自由に回答する方式の質問においても、
対象者の43.3%は、本願商標が原告の業務に係るものであると回答した。この調査結果は、第三者が本願商標を模倣した場合、半数近くの需用者が当該模倣品を誤って購入してしまうおそれがあることを意味するのであるから、当該調査結果をもって、本願商標が自他商品識別標識として認識されていないと判断するのは相当でない。
なお、上記質問が実際の販売の場面(本願商標が鉛筆に使用されている場面)で行われたとすれば、鉛筆が原告の業務に係るものであると回答する需用者の割合は、
当然に高くなったはずである。
8 独占適応性 前記1のとおり、本願商標は、古くから存在するものではなく、原告によって案出されたものであるところ、そもそも、他人が案出したものを無断で使用することは、商業道徳上許されない。また、本願商標は、65年近くの間使用されてきたが、
原告以外の善意の取引者が本願商標を本件指定商品に使用した例は皆無であり、今後も、原告以外の善意の取引者が本願商標を本件指定商品に使用することは考えられないから、本願商標の使用の可能性を取引界に開放しておく必要性はなく、本願商標につき商標登録をすることによる公益上の支障はない。そもそも、色彩は、無限のバリエーションを有するものであり、特定の色彩について登録商標としての独 占使用を認めたとしても、第三者は、指定商品及び指定役務(本件では鉛筆(色鉛筆を除く。))についてのみ、当該色彩及びこれと紛らわしい色彩の使用が制限されるにすぎず、色の三原色や虹の七色等を除けば、特定の色彩を特定の指定商品及び指定役務について独占使用することを認めたとしても、公益上の不利益は通常生じない。さらに、本願商標のような色彩のみからなる商標についての商標登録を認める制度は、文字等を捨象した生の色彩のみをもって出所識別力を認めるものであるところ、実際に販売された商品のごく一部に施された文字があることのみを理由に、商品の大部分を占める色彩が発揮する自他商品識別力を否定することは、色彩のみからなる商標の商標登録を認める商標法の趣旨を無視するものである。
以上に加え、本願商標が自他商品識別機能を有するに至った以上、本願商標については、独占適応性が獲得されたというべきである。
9 商標登録の必要性 本願商標の模倣ないし盗用を防止するため、本願商標について商標登録を認める必要がある(甲122)。
被告の主張
以下のとおり、本願商標は、商標法3条1項3号に掲げる商標に該当し、かつ、
同条2項に規定する商標に該当しないから、これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
1 本願商標が商標法3条1項3号に掲げる商標に該当することについて(1) 本願商標は、輪郭のない単一の色彩のみからなる商標である。
(2) 本願商標に係る色彩は、見本色(DICカラーガイド)により特定されるものであり、JIS系統色名の区分では「ごく暗い赤」に該当し、マンセル近似値としては「1.6R 2.5/3.9」(色相 明度/彩度)とされる(甲126)。本願商標に係る色彩とマンセル値が近く、似通った印象を与える色彩として「ボルドー」(2.5R 2.5/3)、「バーガンディー」(10RP 2/2.5)等の近似色が存在する(乙2〜4)。
(3) 一般の商取引においては、商品やその包装の色彩には、商品のイメージや美感を高めるために多様な色彩が選択されているから、色彩は、本来的には、商品の出所を表示する機能を有するものでないところ、筆記用具を取り扱う業界においても、商品の色彩(外装色)として、ボルドー、バーガンディー等を含む本願商標の近似色が広く採択されている実情がある(乙5〜32)。
(4) 上記(1)ないし(3)によると、本願商標が本件指定商品について使用されるときは、需用者及び取引者をして、単に商品やその包装の美感を向上させる目的の色彩であると認識させ、理解させるにとどまるというべきであって、本願商標は、
単に商品の特徴(商品の色彩)を普通に用いられる方法で表示するものにすぎないというほかない。したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に掲げる商標に該当する。
2 本願商標が商標法3条2項に規定する商標に該当しないことについて (1) 商標法3条1項3号に掲げる商標に該当する単一の色彩のみからなる商標が同条2項に規定する商標に該当するというためには、当該商標が使用をされた結果、特定の業務に係る商品又は役務であることを表示するものとして需要者の間に広く認識されるに至り、その使用により自他商品識別力又は自他役務識別力を獲得していることが必要であり、さらに、特定人による当該商標の独占使用を認めることが公益上の見地からみても許容される事情があることを要すると解するのが相当である。
(2)ア 前記1(1)ないし(3)を踏まえると、本願商標の色彩自体は、ありふれた印象を与えるもので、創作性や特異性はなく、独創性を欠くものである。
イ 原告商品の実際の商取引においては、まずはその文字部分(「MITSU-BISHI」、「uni」等)が出所識別標識として目を引き、商標として事実上機能するのであり、その外装色が、単に商品のイメージや美感を高めるための色彩ではなく、独立した出所識別標識であると直ちに認識され、把握されるものではない。また、原告商品の外装色は、複数の色彩の組合せからなるものと理解されるか ら、単一の色彩のみからなる本願商標とは同一性を欠く。さらに、原告が主張する新聞、雑誌等の記事(前記第3の2(1))によると、原告商品の外装色は、需用者の間において、複数の色彩の組合せが特徴であると理解されているといえる。加えて、上記アのとおり、本願商標の色彩がありふれた印象を与えるもので、独創性を欠くことに照らすと、一般の需用者において、本願商標の色彩の外観のみから、これを「ユニ色」と同定することは極めて困難である。
以上によると、本願商標と同一性を有しない外装色からなる原告商品の販売実績や広告宣伝実績によって、本願商標につき、一般の需用者の間において「ユニ色」という色彩として認知され、原告商品に係る出所識別標識としての認知度が直ちに向上することはないといえる。
ウ 本件アンケート調査によると、比較的鉛筆に親しんでいる需用者の間においてさえ、本願商標から原告との関連を想起できる者は50%にも満たないことが分かり、半数以上の需用者は、本願商標と原告との関連を想起できないといえるから、
本件指定商品に係る一般の消費者(鉛筆の使用頻度が低い者を含む。)の間における本願商標の認知度は、それより低いといえる。そうすると、本願商標は、本件指定商品に係る需用者の間において、原告に係る出所識別標識として広く認識されるに至っているとはいえない。
(3)ア 本願商標とマンセル値等を多少異にする色彩であっても、本願商標とその近似色(ボルドー、バーガンディー等の暗い赤色や茶色(乙2〜4))は、時と場所を異にして接する場合、見分けることが困難である。そうすると、本願商標と類似する商標(色彩)には、ある商品について使用した場合、時と場所を異にして接する場合に記憶に基づき見分けることが困難で誤認混同を生じるおそれがある近似色が含まれることになる。
イ また、本件指定商品と類似の商品には、商品の構造や機能、需用者層が共通し、同一の営業主により製造、販売されているため、同一又は類似の商標を使用するときは、同一の営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれのある筆記 用具(色鉛筆、万年筆、ボールペン、シャープペン等)が含まれるというべきである。
ウ そして、前記1(3)のとおり、筆記用具の分野において、本願商標の近似色(ボルドー、バーガンディー等を含む。)が商品の外装色として多数の事業者により採択されている実情があるから、本願商標は、何人も自由な使用ができるように開放しておく必要性が高い(特に、色鉛筆においては、外装色を本願商標又はその近似色とする必要性が極めて高い。)。
エ したがって、原告に限って本願商標の独占使用を認めることは、筆記用具に係る分野において、現在及び将来を含めた色彩使用の自由を著しく制限するもので、
他の事業者の色彩選択に著しい萎縮効果を与えることに鑑みると、公益上の見地からみても許容されるものではない。
(4) 以上によると、本願商標は、長年の間、原告により独占的排他的に継続使用されているものではなく、事実上、原告による独占的使用が容認されているともいえないから、原告により使用をされた結果、需用者が原告の業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものとはいえない。したがって、本願商標は、商標法3条2項に規定する商標に該当しない。
3 原告の主張について (1) 色彩は、色相、明度及び彩度の僅かな違いによって連続的に色調を変化させるものであって、色名としては異なるとしても、外観からは目立った印象の違いを判別できないものが多数存在し、本願商標についても、似通った印象を与える近似色が存在するほか、本願商標は、規格化された極めて多数存在する色彩(DICカラーガイド)の中の一つにすぎないから、本願商標の採択経緯にかかわらず、その色彩自体に、一般需用者が独特な色彩として認知、識別できるような特徴はない。
(2) 商標の出所識別標識としての著名性は、当該商標と外観において同一と見られる標章が使用されたことを前提として評価、認定すべきところ、原告商品の外装色は、複数の色彩(暗い赤、黒、金等)の組合せからなるものであって、単一の 色彩のみからなる本願商標とは同一性を欠くものであるから、原告商品の販売実績や広告宣伝実績により、一般の需用者の間において、本願商標の出所識別標識としての認知度が直ちに向上することはない。
なお、別件商標1及び2は、本願商標と異なり、いずれも色彩の組合せからなるもので、その色彩及び配色を特定してなるものであるから、別件商標1及び2について商標登録がされていることをもって、本願商標が著名であるということはできない。
(3) 本願商標に係る色彩とされる「ユニ色」との名称は、JIS等で定義された色彩名や、日常的に使用される慣用色名又は外来色名ではなく(乙46)、色彩名として一般に認知されているものではない。また、本願商標に係る色彩自体も、
ありふれた印象を与えるものであって、近似色も存在し、独創性を欠くものであるから、一般の需用者において、本願商標の外観のみから、これが「ユニ色」であると同定することは極めて困難である。原告が主張するように、本願商標が特別顕著なものであるということはできない。
当裁判所の判断
1 本願商標が商標法3条1項3号に掲げる商標に該当するかについて(1) 本願商標及びその近似色について ア 別紙商標目録記載のとおり、本願商標は、色彩(DICカラーガイドPART2(第4版)2251)のみからなる商標であり、文字、図形又は他の色彩と組み合わせたものではなく、商標を使用する際の形態や使用態様も特定されておらず、
輪郭のない単一の色彩のみからなるものである。
イ 「DICカラーガイドPARTU(第4版)第5巻」に収録された「DIC-2251」(本願商標)は、JIS系統色名が「ごく暗い赤」とされ、マンセル近似値が「1.6R 2.5/3.9」とされ、色名が「Uni色」とされているほか、JIS系統色名の区分における位置付けとしては「ごく暗い赤」「暗い赤」「暗い灰みの赤」の3区分の境界領域に位置するとされ、また、基本色名としては 「紫みの赤」に近い領域に位置するとされ、基本色彩語としては「赤」「紫」「茶」の境界領域に存在し、色相「赤」ないし「赤紫」の暗い色として捉えられるとされている(甲126)。
色彩の表し方のうち「マンセル表色系」とは、色相、明度及び彩度を細かく記号化、数値化して色彩を表示するものであり、本願商標の上記マンセル近似値(1.6R 2.5/3.9)は、順に、色相、明度及び彩度を示している(乙1)。本願商標とマンセル近似値が近い近似色としては、例えば、「ボルドー」(2.5R2.5/3)、「バーガンディー」(10RP 2/2.5)等が存在する(乙2〜4)。
(2) 本願商標の近似色の使用例について 次のとおり、鉛筆を含む筆記用具に関しては、ボルドー及びバーガンディーを含む本願商標の近似色が広く使用されている。
ア 「CAINZ」のウェブサイトには、「六角赤鉛筆3本組」の欄に、外装色を暗い赤色とする商品(赤鉛筆)の写真が掲載されている(乙6)。
イ 岩手県八幡平市のふるさと納税に係るウェブサイトには、「HMG318【漆塗り】溜塗ノック式鉛筆(朱)」の欄に、外装色を暗い赤色とする商品(ノック式鉛筆)の写真が掲載されるとともに、「漆本来の茶褐色を生かし下層の朱色漆が透けるように仕上げています」との付記がされている(乙7)。
ウ 「楽天市場」のウェブサイトには、「越前漆塗鉛筆」の欄に、外装色を暗い赤色(朱塗色)とする商品(鉛筆)の写真が掲載されている(乙8)。
エ 「メルカリ」のウェブサイトには、「漆記具漆塗鉛筆」の欄に、外装色を暗い赤色とする商品(鉛筆)の写真が掲載されるとともに、「安比塗という塗物で仕上げた鉛筆です」との付記がされている(乙9)。
オ 「スタビロジャパン」のウェブサイトには、「オペラ なかなか折れない鉛筆」の欄に、外装色を暗い赤色とする商品(鉛筆)の写真が掲載されている(乙10)。
カ 「HOLBEIN」のウェブサイトには、「アーチスト色鉛筆 OP060ワインレッド」の欄に、外装色を暗い赤色(ワインレッド)とする商品(色鉛筆)の写真が掲載されている(乙11)。
キ 「東急ハンズネットストア」のウェブサイトには、「パイロット レグノボールペン ダークレッド」の欄に、外装色を暗い赤色(ダークレッド)とする商品(ボールペン)の写真が掲載されている(乙12)。
ク 「Pen Boutique 書斎館 Aoyama」のウェブサイトには、
「PILOT カスタム74ディープレッド」の欄に、外装色を暗い赤色(ディープレッド)とする商品(万年筆)の写真が掲載されている(乙13)。
ケ 「アスクル」のウェブサイトには、「ゲルインクボールペン サラサクリップ 0.5mm レッドブラック 赤10本」の欄に、外装色を暗い赤色(レッドブラック)とする商品(ボールペン)の写真が掲載されている(乙14)。
コ 「PILOT」のウェブサイトには、「カスタム 743」の欄に、「FKK-3000R-DR-(ペン種)」として、外装色を暗い赤色(ディープレッド)とする商品(万年筆)の写真が掲載されている(乙15)。
サ 「こだわり文具のアーティクル」のウェブサイトには、「【 CARANd’ACHE】カランダッシュ 849クレーム・ユア・スタイル エディション2 ボールペン 油性 バーガンディー」の欄に、外装色を暗い赤色(バーガンディー)とする商品(ボールペン)の写真が掲載されている(乙16)。
シ 「PayPayモール」のウェブサイトには、「ムーミン クリックゴールド 0.5mm バーガンディ」の欄に、外装色を暗い赤色(バーガンディー)とする商品(ボールペン)の写真が掲載されている(乙17)。
ス 「PARKERTIME」のウェブサイトには、「パーカー51 バーガンディCT 万年筆」の欄に、外装色を暗い赤色(バーガンディー)とする商品(万年筆)の写真が掲載されている(乙18)。
セ 「ビックカメラ.com」のウェブサイトには、「限定エナージェルクレナ 04 黒 バーガンディ」の欄に、外装色を暗い赤色(バーガンディー)とする商品(ボールペン)の写真が掲載されている(乙19)。
ソ 「YAHOO!ショッピング」のウェブサイトには、「ぺんてる 水性ペンフラマン バーガンディ」の欄に、外装色を暗い赤色(バーガンディー)とする商品(水性ペン)の写真が掲載されている(乙20)。
タ 「Cartier」のウェブサイトには、「サントス ドゥ カルティエボールペン」の欄に、外装色を暗い赤色(ボルドー)とする商品(ボールペン)の写真が掲載されるとともに、「商品特性」として、「ボルドーカラー ラッカー」との付記がされている(乙21)。
チ 「Montblanc○JP」のウェブサイトには、「マイスターシュテュ Rック Le Petit Prince クラック ローラーボール」の欄に、外装色を暗い赤色(バーガンディレッド)とする商品(ボールペン)の写真が掲載されるとともに、「バーガンディレッドのラッカーが印象的な…」との付記がされている(乙22)。
ツ 「株式会社サクラクレパス」のウェブサイトには、「ピグマはがきペン」の欄に、外装色を赤茶色とする商品(ペン)の写真が掲載されている(乙23)。
テ 「PILOT」のウェブサイトには、「フリクションボール3ビズ」のうち「ボルドー」と付記されたものの欄に、外装色を暗い赤色(ボルドー)とする商品(ボールペン)の写真が掲載されている(乙25)。
ト 「Freiheit」のウェブサイトには、「カヴェコ クラッシック スポーツ ボールペン【軸色:ボルドー】」の欄に、外装色を暗い赤色(ボルドー)とする商品(ボールペン)の写真が掲載されている(乙26)。
ナ 「セーラーショップ」のウェブサイトには、「レクラス万年筆[ボルドー]」の欄に、外装色を暗い赤色(ボルドー)とする商品(万年筆)の写真が掲載されている(乙27)。
ニ 「INHERITPEN」のウェブサイトには、「アウロラ ボールペン タレンタム D32-X ボルドー」の欄に、外装色を暗い赤色(ボルドー)とする商品(ボールペン)の写真が掲載されている(乙28)。
ヌ 「世界の筆記具ペンハウス」のウェブサイトには、「アウロラ ボールペンイプシロン B31/X ボルドー」の欄に、外装色を暗い赤色(ボルドー)とする商品(ボールペン)の写真が掲載されている(乙29)。
ネ 「YAHOO!ショッピング」のウェブサイトには、「北星鉛筆 KITA-BOSHI PENCIL W07-600AZ[鉛筆屋のシャープペン W07 小豆]」の欄に、外装色を暗い赤色(小豆色)とする商品(シャープペン)の写真が掲載されている(乙30)。
ノ 「たのめーる」のウェブサイトには、「コクヨ 鉛筆シャープ 0.9mm(軸色:ワインレッド)PS-P100DR-1P」の欄に、外装色を暗い赤色(ワインレッド)とする商品(シャープペン)の写真が掲載されている(乙31)。
ハ 「ヨドバシ.com」のウェブサイトには、「プラチナ万年筆 PLATINUM PEN PGB-3000 71 1649713[バランス ワインレッド 万年筆M(中字) 両用式]」の欄に、外装色を暗い赤色(ワインレッド)とする商品(万年筆)の写真が掲載されている(乙32)。
(3) 検討 一般に、商取引においては、商品の外装等の商品又は役務に関して付される色彩は、商品又は役務のイメージ、美感等を高めるために多種多様なものの中から選択されて付されるものにすぎないから、そのようにして付された色彩が直ちに商品又は役務の出所を表示する機能を有するというものではない。
そして、本願商標についてみても、前記(1)のとおり、本願商標は、輪郭のない単一の色彩のみからなるものであるところ、JIS系統色名の区分における位置付けとしては、「ごく暗い赤」「暗い赤」「暗い灰みの赤」の3区分の境界領域に位置するとされ、基本色名としても、「紫みの赤」に近い領域に位置するとされ、基本色彩語としても、「赤」「紫」「茶」の境界領域に存在し、色相「赤」ないし 「赤紫」の暗い色として捉えられ、マンセル近似値をみても、当該近似値が近いボルドー、バーガンディー等が存在するなど、その近似色は、無数に存在するものと認められる。現に、取引の実情をみても、前記(2)のとおり、本願商標の近似色は、
本件指定商品である鉛筆を含む筆記用具に関して、広く使用されているものである(なお、後記2(2)において説示するとおり、本願商標が自他商品識別力を備えるに至ったものと認めることはできない。)。
以上によると、本願商標は、本件指定商品である鉛筆(色鉛筆を除く。以下同じ。)について使用される場合であっても、本願商標に接した需用者及び取引者をして、本願商標に係る色彩が単に商品(鉛筆)のイメージ、美感等を高めるために使用されていると認識させるにすぎないものと認めるのが相当である。そうすると、
本願商標は、本件指定商品である鉛筆の特徴(鉛筆の外装色等の色彩)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるということができるから、本願商標は、商標法3条1項3号に掲げる商標に該当する。これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
2 本願商標が商標法3条2項に規定する商標に該当するかについて (1) 単一の色彩のみからなる商標と商標法3条2項について 商標法3条1項3号に掲げる商標に該当する単一の色彩のみからなる商標が同条2項に規定する「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」に該当するというためには、当該商標が使用をされた結果、特定人の業務に係る商品又は役務であることを表示するものとして需要者の間に広く認識されるに至り、その使用により自他商品識別力又は自他役務識別力を獲得していることが必要であり、さらに、特定人による当該商標の独占使用を認めることが公益上の見地からみても許容される事情があることを要すると解するのが相当である。
(2) 本願商標の自他商品識別力 ア 認定事実 掲記の証拠及び弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。
(ア) 原告は、明治20年に創業した筆記具の大手企業(当時の商号・眞崎鉛筆製造所)であり、昭和27年、商号を現在のものに変更した(甲2、42)。
(イ) 原告は、昭和33年に「ユニ(uni)」と称する鉛筆の製造販売を開始し、その後、昭和41年には「ハイユニ」と称する鉛筆の製造販売を開始し、現在は、「ユニスター」と称する鉛筆の製造販売も行っている(甲1、2)。
(ウ) 原告商品(ユニ、ハイユニ及びユニスター)には、鉛筆の6側面の大部分に基調色として本願商標に係る色彩が付された上、鉛筆の後端部には、黒色(ユニ及びユニスターにつき)又は黒色及び金色(ハイユニにつき)が配されており、また、鉛筆の6側面のうち1面には、「MITSU-BISHI」、「uni」、
「Hi-uni」、「uni☆star」等の金色様の文字が刻印されている(甲47、48、148〜150)。
(エ) 昭和30年代から、数多くの新聞、雑誌、テレビ、インターネット、イベント等において、原告又は原告商品についての記事が掲載され、また、本願商標を付した原告商品についての広告がされてきた(甲2〜29、36、37、39〜43、114〜121、124、133)。
(オ) 原告は、平成27年度の鉛筆の市場において、53.7%の市場占有率を有しており、株式会社トンボ鉛筆は、原告に次ぐ27.4%の市場占有率を有している(甲35)。原告商品の販売については、平成13年から平成27年までの実績で、ユニが年間1200万本から1500万本の間、ハイユニが年間200万本から300万本の間である(甲93、94)。
(カ) 原告は、平成30年10月、株式会社コイックスに委託して、次のとおりの本件アンケート調査(甲107)を行った。
a 調査対象者(a) 鉛筆を使用する子を持つ親(20歳から59歳までの母親)(b) 自身が鉛筆を使用している者(20歳から69歳までの男女) b 回収数 1200サンプル(20歳代、30歳代、40歳代、50歳代及び60歳代の男女各100名ずつ(合計1000名)及び母親200名) c 調査方法 「あずき色の色彩画像」として別紙商標目録記載1に相当する色彩を見せた上、「先ほどの画像は、とある鉛筆のブランドに使用している色彩です。
画像を御覧になり、あなたは、何というブランドを思い浮かべましたか。以下の回答欄に御自由にお書きください。」との質問をし、回答を得る。
d 回答結果 原告の名称やそのブランド名(三菱鉛筆、uni等)を想起して回答した者は、全体の43.4%であった。
イ 検討 前記認定事実によると、原告商品は、相当の長きにわたり新聞等の記事において取り上げられ、また、様々な媒体において広告がされてきたのであるから、原告商品(ユニ、ハイユニ又はユニスターと称する鉛筆)は、需用者の間において、相当程度の認知度を有しているものと認められる。
しかしながら、前記認定のとおり、原告商品には、本願商標のみならず他の色彩及び文字も付されているところ、前記1(2)のとおり、本件指定商品である鉛筆を含む筆記用具について、ボルドー及びバーガンディーを含む本願商標の近似色が広く使用されている実情も併せ考慮すると、原告商品に触れた需用者は、本願商標のみから当該原告商品が原告の業務に係るものであることを認識するのではなく、本願商標と組み合わされた黒色又は黒色及び金色や、当該原告商品が三菱鉛筆のユニシリーズであることを端的に示す「MITSU-BISHI」、「uni」、「Hi-uni」、「uni☆star」等の金色様の文字と併せて、当該原告商品が原告の業務に係るものと認識すると認めるのが相当である。
加えて、前記認定のとおり、鉛筆の市場においては、原告及び株式会社トンボ鉛筆が合計で80%を超える市場占有率を有しており、比較的鉛筆に親しんでいる需用者としては、本件アンケート調査における質問をされた場合、回答の選択の幅は比較的狭いと考えられるにもかかわらず、本願商標のみを見てどのような鉛筆のブ ランドを思い浮かべたかとの質問に対し、原告の名称やそのブランド名(三菱鉛筆、
uni等)を想起して回答した者が全体の半分にも満たなかったことからすると、
本願商標のみから原告やユニシリーズを想起する需用者は、比較的鉛筆に親しんでいる者に限ってみても、それほど多くないといわざるを得ない。
以上によると、本件指定商品に係る需用者の間において、単一の色彩のみからなる本願商標のみをもって、これを原告に係る出所識別標識として認識するに至っていると認めることはできない。
(3) 小括 以上のとおり、本願商標については、これが使用された結果、原告の業務に係る商品であることを表示するものとして需用者の間に広く認識されるに至り、その使用により自他商品識別力を獲得しているといえないから、原告による本願商標の独占使用を認めることが公益上の見地からみて許容される事情があるか否かについて判断するまでもなく、本願商標が商標法3条2項に規定する商標(「使用をされた結果需用者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識するもの」)に該当するということはできない。これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
3 原告の主張について (1) 原告は、本願商標は原告が採択した独自の色彩であって、原告以外の善意の取引者が偶然に使用することはあり得ないものであるから、自他商品識別標識として機能すると主張する。
しかしながら、原告が単一の色彩のみからなる商標(色彩)を採択した経緯や、
当該商標と同一の商標を一定の指定商品及び指定役務について使用する者がないことは、当該商標が自他商品識別標識又は自他役務識別標識として機能するか否かとは直接の関係がないことであるから、原告の上記主張を採用することはできない(原告は、本願商標が自他商品識別力を欠くというためには、本件指定商品について、本願商標と同一の商標が既に第三者によって当該商品の色彩として使用されていることが必要であるとも主張するが、独自の見解であり、採用できない。)。
(2) 原告は、@これまで数多くの新聞、雑誌等において、本願商標に係る記事が掲載されてきたこと、Aこれまで長年にわたり、新聞、テレビ等において、本願商標が使用された原告商品の広告が行われてきたこと、B原告は、鉛筆の市場において極めて高い市場占有率を誇り、また、本願商標を使用した多数の原告商品が全国の多数の店舗において販売されていること、C別件商標1及び2について商標登録がされていることからすると、本願商標は、著名な商標として、自他商品識別標識として機能してきたと主張する。
しかしながら、上記@ないしBの点については、前記2(2)のとおり、原告商品が需要者の間において相当の認知度を有していることの根拠となるものではあるものの、原告商品に付された本願商標以外の色彩及び文字の存在や、本件指定商品である鉛筆を含む筆記用具について、ボルドー及びバーガンディーを含む本願商標の近似色が広く使用されている実情を考慮すると、上記@ないしBの事実が存在するとしても、原告商品に触れた需用者は、本願商標のみから当該原告商品が原告の業務に係るものであると認識するということはできない。また、上記Cの点については、別件商標1及び2は、いずれも本願商標に係る色彩とそれ以外の色彩との組合せからなるものであり、その色彩及び配色を特定してなるものであって(甲137、
138)、輪郭のない単一の色彩のみからなる本願商標とは相当に異なるものであるから、別件商標1及び2について商標登録がされていることは、本願商標がそれのみで自他商品識別力を有することの根拠になるものではない。
以上のとおりであるから、原告の上記主張を採用することはできない。
(3) 原告は、本願商標は「ユニ色」として、商品が原告の業務に係るものであることを直接表示するものとなっており、特別顕著なものであるから、自他商品識別標識として機能するものであると主張する。
確かに、前記1(1)イのとおり、「DICカラーガイドPARTU(第4版)第5巻」に収録された「DIC-2251」(本願商標)については、色名が「uni色」とされており、また、「文具のこが屋」のウェブサイトにおいても、「ユニ ペンシルホルダー」なる商品の説明として、「本体軸部分には実際の木材を使用し、
ユニのイメージカラーである、…アレンジしたオリジナルカラー(通称「ユニ色」)と「黒」、「金」をあしらいました。」との記載があるが(甲29)、本願商標に係る色彩を「ユニ色」と呼称する場合があるとしても、前記2(2)において説示したところに照らすと、需用者において、この「ユニ色」のみで、本件指定商品である鉛筆が原告の業務に係るものであると認識するとはいえないといわざるを得ない。
したがって、原告の上記主張を採用することはできない。
(4) 原告は、本願商標が使用された商品(鉛筆)に接した需用者は商品のうちの狭い部分に付された文字商標のみによって商品の出所を認識するのではなく、商品の大部分を占める本願商標をもって商品の出所を認識するのであるから、このような本願商標の重要性に照らすと、本願商標は自他商品識別力を有すると主張する。
しかしながら、原告商品に付された本願商標以外の色彩及び文字(なお、当該文字は、当該原告商品が三菱鉛筆のユニシリーズであることを端的に示すものである。)の存在や、本件指定商品である鉛筆を含む筆記用具について、ボルドー及びバーガンディーを含む本願商標の近似色が広く使用されている実情を考慮すると、
原告商品に触れた需用者が本願商標のみから当該原告商品が原告の業務に係るものであると認識することができないことは、これまで説示してきたところであって、
このことは、原告商品(鉛筆)の表面において本願商標に係る色彩が付された面積が他の色彩が付された面積に比して大きいことにより左右されるものではない(なお、証拠(甲47、48、148〜150)によると、原告商品に付された文字が需用者の目を引くものでないということはできない。)。
したがって、原告の上記主張を採用することはできない。
(5) 原告は、原告商品の模倣品が存在することは本願商標が自他商品識別標識として機能してきたことを意味すると主張する。
しかしながら、原告が主張する模倣品(甲109、110)も、鉛筆の表面に本願商標に係る色彩又はその近似色のみを付したものではなく、帯状の黒色を配した り、金色様の文字を付したりしたものであるから、これらの模倣品の存在をもって、
本願商標に係る色彩のみで自他商品識別力を有するということはできない。したがって、原告の上記主張は、採用できない。
(6) 原告は、特許庁が別件商標1の見本として、別件商標1の見本に該当しない鉛筆(ユニスター)を展示したことをもって、特許庁も専ら本願商標によって鉛筆が原告の業務に係る商品であると認識している旨の主張をするが、仮に特許庁が原告の主張するような取り違えをしたからといって、本願商標に係る色彩のみで自他商品識別力を有するということはできない。したがって、原告の主張を採用することはできない。
4 結論 以上の次第であるから、原告が主張する審決取消事由は失当であり、原告の請求は理由がない。
裁判長裁判官 本多知成
裁判官 浅井憲
裁判官 中島朋宏