関連審決 |
不服2022-2303 |
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事件 |
令和
5年
(行ケ)
10017号
審決取消請求事件
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原告 レインビヴァレッジ カンパニー エルエルシー 同訴訟代理人弁理士 柳田征史 高橋秀明 中熊眞由美 被告特許庁長官 同 指定代理人杉本克治 矢澤一幸 山田啓之 清川恵子 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2023/06/22 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 原告のために、この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 |
事実及び理由 | |
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原告の求めた裁判
特許庁が不服2022-2303号事件について令和4年10月14日にした審決を取り消す。 |
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事案の概要
本件は、商標登録出願(商願2020-124498)の拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟であり、争点は、上記出願に係る商標(以下「本願商標」という。)が商標法4条1項11号に掲げる商標に該当するか否かである。 1 本願商標 本願商標の構成及び指定商品は、次のとおりである。 (1) 構成 (2) 指定商品(令和3年9月13日付け手続補正書による補正後のもの) 第25類「被服、トップス、ワイシャツ類、ティーシャツ、スウェットシャツ、 フード付きスウェットシャツ及びパーカー、ジャケット、ボトムス、ズボン及びパンツ、ショートパンツ及びショーツ、スポーツブラ、バンダナ、汗止めバンド、手袋、帽子、つばあり帽子、ビーニー帽、指なし手袋、靴下、履物、ガーター、靴下留め、ズボンつり、バンド、ベルト、仮装用衣服、運動用特殊衣服、運動用特殊靴」 第28類「ワークアウト用手袋」 2 特許庁における手続の経緯 原告は、令和2年10月8日、本願商標について商標登録出願をし、令和3年6月10日付け拒絶理由通知書を受け、同年9月13日に意見書を提出するとともに指定商品を前記1(2)のとおりに補正する手続補正書を提出したが、同年11月12日付けで拒絶査定を受けた。原告は、令和4年2月16日、上記拒絶査定を不服として不服審判請求をし、特許庁は、同請求を不服2022-2303号事件として審理した上、同年10月14日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同月26日、原告に送達された。 3 本件審決の理由の要点 (1) 本願商標について 本願商標は、何らかの仮面を模したとおぼしき図形、並びに、その下部に、大きく「REIGN」の欧文字及び小さく「TOTAL BODY FUEL」の欧文字を二段に横書きした構成からなるところ、図形部分と各文字部分(「REIGN」と「TOTAL BODY FUEL」)は、段を異にし、文字の大きさ及び書体も異なるから、それぞれ視覚的に分離して看取されるので、これらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているものではない。 そして、本願商標の構成中「REIGN」の欧文字部分は、他の文字部分に比して、大きく顕著に表されているから、看者の注意を最も引く文字部分といえる。 また、本願商標の構成中「REIGN」の欧文字部分は、 「レイン」と発音される「治世。支配。 の意味を有する英語 「ジーニアス英和辞典 」 ( 第5版」大修館書店)である一方で、 「TOTAL BODY FUEL」の欧文字部分は、 「TOTAL」(総計の。完全な。、 )「BODY」(人・動物の)体。肉体)及び「FUEL」 ( (燃料。)の英語(前掲書参照)を結合したもので、各語の語義を組み合わせると「完全な体の燃料」ほどの漠然とした意味合いを連想させるから、両文字部分に特段の称呼及び観念上のつながりはない。 してみれば、本願商標の構成中「REIGN」の文字部分は、他の構成要素からは分離、独立して、最も目を引く、出所識別標識としては強く支配的な印象を与える要部ということができるから、当該文字部分を要部として分離、抽出し、引用商標と比較して商標の類否を判断すべきである。 そうすると、本願商標は、その要部である「REIGN」の文字部分に相応して「レイン」の称呼が生じ、「治世。支配。」の観念が生じる。 (2) 登録第5589978号商標(以下「引用商標」という。)について ア 引用商標は、平成23年11月28日に登録出願され、平成25年6月14日に設定登録されたものであり、その構成及び指定商品は次のとおりである。 (ア) 構成 (イ) 指定商品 第25類「被服、帽子」 イ 引用商標は、前記ア(ア)のとおり「REIGN」の欧文字(3文字目の「I」の下部には、黒塗りの星印を配してなる。 を横書きしてなるところ、 ) 「REIGN」の語は「治世。支配。」の意味を有する英語(前掲書参照)であるから、その構成文字に相応して「レイン」の称呼が生じ、「治世。支配。」の観念が生じる。 (3) 本願商標と引用商標の比較 ア 本願商標の要部(REIGN)と引用商標を比較すると、外観においては、 構成文字が共通する同一の語を表してなるから、記憶に残る印象としては近似したものとなる。 次に、称呼及び観念においては、いずれも「レイン」の称呼が生じ、 「治世。支配。」の観念が生じるから、称呼及び観念を共通にする。 そうすると、本願商標の要部と引用商標とは、外観においては、記憶に残る印象としては近似し、また、称呼(レイン)及び観念(治世。支配。 を共通にするから、 )それらによって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両商標は、その出所について誤認混同を生ずるおそれがある類似の商標と認められる。 イ 本願商標の指定商品中「被服、トップス、ワイシャツ類、ティーシャツ、スウェットシャツ、フード付きスウェットシャツ及びパーカー、ジャケット、ボトムス、ズボン及びパンツ、ショートパンツ及びショーツ、スポーツブラ、バンダナ、 手袋、帽子、つばあり帽子、ビーニー帽、指なし手袋、靴下」 (第25類)は、引用商標の指定商品「被服、帽子」とは、同一又は類似の商品を含んでいる。 (4) 以上によれば、本願商標は、引用商標と類似する商標であって、その指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品を含むから、商標法4条1項11号に該当し、登録することができない。 |
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原告の主張する取消事由
本件審決は、商標法4条1項11号該当性に関し、事実認定、判断及び法律の適用を誤った違法なものであるから、取り消されるべきである。 1 本願商標の構成中の「REIGN」部分のみを抽出したことの誤り (1) 本願商標は、王冠をデザインした図形と「REIGN」の文字と「TOTAL BODY FUEL」の文字を構成部分として組み合わせてこれらを三段にまとまりよく一体的に表示してなる結合商標であって、全ての構成部分が同色で上下左右に軽重の差なくバランスよく配置され、外観上の一体性を有するものであることに加えて、中段の「REIGN」の文字部分が、上段の図形部分とは観念的一体性を有し、下段の「TOTAL BODY FUEL」の文字部分とは視覚的一体性を有するものであるから、 「REIGN」の文字部分が取引者、需要者に対して商品出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとはいえない。 すなわち、 「REIGN」は、英語で「君主、帝王、女王などの君臨、統治、治世、 御代」を意味する語であって、君主・帝王・女王等と関係しない単なる「支配」を意味する語とは異なるところ(ジーニアス英語辞典第3版。甲40)、本願商標の構成中の図形部分は、 「REIGN」の観念と相まって、見る者に対して「王冠」を容易に想起、連想させるから、図形部分と「REIGN」の文字部分は、相互に類似する観念を想起、連想させる関係によりつながっている有機的結合というべきものであって、観念的一体性を有する。なお、図形部分上部の三つの山形図形を配列してなる部分は、典型的な王冠(クラウン)の図案やイラストとして一般に認識されている図形(甲26〜39)と一致するものである。 また、本願商標の構成中の「REIGN」の文字部分と「TOTAL BODY FUEL」の文字部分は、ほぼ同一の書体が用いられており、幅が同じで、上下の間隔は極めて狭く、著しく接近した態様で配置されているから、視覚的一体性を有する。 (2) 本願商標は、 「REIGN」の文字以外の構成部分からも出所識別標識としての称呼、観念が生じるものである。 本願商標中の図形部分は、本願商標の構成全体面積の約3分の2という大きな部分を占めており、上段の中央に黒塗りで力強く顕著に表示されているのであるから、 出所識別標識として見る者の注意を最も強く引き付ける構成部分である。そして、 当該図形部分は、 「王冠」を想起、連想させるものである。そうすると、当該図形部分は、商品出所識別標識としての機能を十分に備えているというべきであり、出所識別標識としての「王冠の図柄」の観念が生じることが明らかである。 また、 「TOTAL BODY FUEL」の文字部分は、それぞれ外来語として広く一般に親しまれる「トータル」(全体の、総合的な)「ボディー」 、 (身体)「フ 、 ューエル」 (燃料)が結合したものと容易に認識、理解される。そうすると、当該文字部分から、出所識別標識としての「トータルボディーフューエル」の称呼と、 「総合的身体用燃料」の観念が生じることが明らかである。 (3) 以上より、本願商標の構成においては「REIGN」の文字部分が取引者、 需要者に対して出所識別標識として強く支配的な印象を与えるということはできないこと、また、 「REIGN」以外の構成部分、すなわち王冠の図形及び「TOTAL BODY FUEL」の文字部分からも出所識別標識としての称呼、観念が生じることが明らかである。そうすると、本願商標と引用商標の類否は、本願商標の構成部分全体と引用商標を対比して判断しなければならない。 したがって、本願商標と引用商標の類否判断において、本願商標の構成部分全体と引用商標を対比することなく、本願商標の構成から「REIGN」の文字部分を抽出して当該文字部分のみを引用商標と比較し、本願商標と引用商標が類似するものであると認定した審決の判断には違法がある。 2 引用商標に関する認定の誤り (1) 本件審決は、引用商標について、「REIGN」の欧文字(3文字目の「I」の下部には、黒塗りの星印を配してなる。)を横書きしてなるなどと認定したが、誤りである。 引用商標の構成中、冒頭の英文字「R」と2番目の英文字「E」に続いて3番目に配置された構成部分は、黒塗りの短い縦線の下に黒塗りの小さな星の図案を配置してなる特徴的な形状の図形(以下、「星を配した特徴的形状の図形」という。)であり、星型の図形の存在が顕著であって、感嘆符「!」や英文字の小文字「i」を上下逆さにしたものとは明らかに異なる形状であり、まして、英文字の大文字「I」と同一視することなど不可能である。 そして、引用商標の構成において、英文字の「R」「E」「G」及び「N」の4 、 、 文字は同じ種類の書体で統一的に表示され、かつ、これら英文字の各々の下端は全て同一水平線上に配置されている。これに対して、星を配した特徴的形状の図形は、 「R」「E」「G」及び「N」の4文字とは明確に異なる書体及びデザインで表示 、 、 されていることに加え、当該図形の下端は、上記4個の英文字と同一水平線上に位置せず、これらよりも下方に位置している。 このため、左端の「R」及び「E」の2文字と、中央の星を配した特徴的形状の図形と、右端の「G」及び「N」の2文字には視覚的連続性がなく、「R」「E」 、 、 「G」及び「N」の4個の英文字は、 「E」と「G」の間に挿入された星を配した特徴的形状の図形の存在によって、前方の2文字「RE」と後方の2文字「GN」とに等幅で区切られ、前後2つの文字列に分断されたものとして看取される。 すなわち、引用商標の構成においては、 「R」「E」「G」及び「N」の4文字と 、 、 星を配した特徴的形状の図形がその書体のデザインにおいても、その位置関係においても、視覚的連続性を欠くものであるから、当該構成部分全体を一連一体のものとして捉えて、特定の英単語(「REIGN」)のつづりを表記したものであると直感することは極めて困難である。 したがって、引用商標は、英文字の「RE」及び「GN」と「星を配した特徴的形状の図形」を組み合わせた構成よりなる、特定の観念を生じない造語として認識、 理解されるものである。 (2) 本件審決は、引用商標から「レイン」の称呼が生じると認定したが、誤りである。標準文字の「レイン」からなり、第25類「えり巻き、ストール、ショール、 スカーフ、ネクタイ、バンダナ、マフラー」を指定商品として、引用商標よりも後に登録出願された登録第5724558号商標が、引用商標とは非類似であるものとして設定登録されていることからも、引用商標から「レイン」の称呼が生じるものではないことが裏付けられる。 (3) 被告は、引用商標について、欧文字をありふれたレタリング手法の一つを用いて表してなるものと認識、理解されると主張し、レタリングされた「I」 「i」 又はを含む商標(名称)のウェブサイト上での使用例を証拠として提出したが(乙5〜15)これらは、 、 いずれも引用商標の3番目の構成(星を配した特徴的形状の図形)と同一のデザインではない上、レタリングされた文字を採用した商標(名称)のみが表示されているものではなく、傍らや同じウェブページ内に当該商標(名称)を通常の活字体の英文字で表記したものや、その読み方をカナ文字で表記したものが表示されている。これに対し、引用商標には、通常の活字体の英文字表記もカナ表記も存在しないから、引用商標から、英文字の「REIGN」を認識、理解することは困難である。 3 類否判断の誤り 本願商標及び引用商標の構成に基づいて、その外観、称呼、観念等を比較対照し、 また、その構成部分の独創性の程度、両商標が使用される指定商品の取引の実情について考察すると、以下の事柄が明らかである。 (1) 外観について 本願商標の構成全体の印象を鮮明に特徴付けている王冠の図形の有無により、両商標の外観が著しく異なる。 本願商標の構成中の文字部分を比較しても、両者の間で共通する文字は僅かに「R」「E」「G」及び「N」の4文字のみであり、当該4文字についても、本願 、 、 商標と引用商標では、その書体のデザインが相違し、異なった印象を与える。引用商標においては、その構成の中央に配置された星を配した特徴的形状の図形の存在が顕著であり、本願商標の文字部分「REIGN」とは異質な、独特の外観を形成している。さらに、本願商標の構成文字には、引用商標には存在しない「TOTAL BODY FUEL」の文字部分が存在する点で引用商標とは明確な相違点が認められる。 したがって、本願商標と引用商標は外観において一見して判然と区別できるものであり、出所識別標識として取引者、需要者に与える印象が著しく相違する。 (2) 称呼について 本願商標からは、 「REIGN」及び「TOTAL BODY FUEL」の文字全体に基づいて「レイントータルボディーフューエル」の称呼が生じる。また、 「REIGN」の文字からは「レイン」「TOTAL 、 BODY FUEL」の文字からは「トータルボディーフューエル」の称呼が生じる。 これに対して、引用商標は、星を配した特徴的形状の図形で英文字の「RE」の2文字と「GN」の2文字に区切った造語として看取されるから、特定の称呼は生じない。あるいは、これらの構成部分のうち、容易に読むことができる英文字部分の「RE」と「GN」を発音した「アールイージーエヌ」の称呼が生じることがあるかもしれないが、いずれにしても本願商標から生じる称呼と共通するところはない。 したがって、本願商標と引用商標は称呼上も明瞭に異なり、相紛れるおそれは皆無である。 (3) 観念について 本願商標の構成中の王冠の図形からは「王冠の図柄」 「REIGN」の文字部分 、 からは「君主、帝王、女王などの君臨、統治、治世、御代」「TOTAL 、 BODY FUEL」の文字部分からは「総合的身体用燃料」の観念が、それぞれ生じる。 なお、文字部分全体(「REIGN TOTAL BODY FUEL」)としてみると、既存の観念を有しない造語と認識されるものであるが、 「REIGN」が原告の商号の主要部分と一致し、「TOTAL BODY FUEL」(総合的身体用燃料の意味)が原告の主要商品であるエナジードリンクを比喩的に表現した造語的フレーズであることからすると、文字部分全体が密接な関係で結ばれているといえる。 これに対し、引用商標は、英文字の「RE」と英文字の「GN」を、星を配した特徴的形状の図形で区切った構成の造語として認識されるものであるから、特定の観念を生じない。 したがって、本願商標と引用商標は観念においても類似するところはなく、相紛れるおそれは皆無である。 (4) 出所識別力について 本願商標の構成中の王冠の図形と「TOTAL BODY FUEL」の文字部分は、独創性の程度が高く、商品出所識別標識として取引者、需要者の注意、関心を強く引き付け、容易に記憶され、永くその記憶にとどまることができる構成部分であって、強い出所識別力を発揮することが明らかである。 (5) 「REIGN」の部分について 本願商標の構成中の「REIGN」の文字部分のように、誰もがたやすく英文字の大文字「I」であると認識理解できる通常の書体で「REIGN」と書した場合と、引用商標のように特殊な形状の記号(星を配した特徴的形状の図形)を用いてこれを英文字の大文字「I」に見立てて全体を「REIGN」と読ませている場合では、一見した印象は著しく異なり、それぞれの「REIGN」の文字部分の識別性は同じものとはいえない。 したがって、仮に、引用商標が「REIGN」のつづりとして看取されることがあるとしても、本願商標の構成中の「REIGN」の文字部分とは、出所識別標識として需要者に与える印象、記憶、連想等は著しく異なるというべきである。 (6) 取引の実情について 本願商標が使用される指定商品は、身体に着用するアパレル製品及び服飾品であるから、需要者は、商品のデザイン、色彩、素材、サイズ、フィット感、手入れ(洗濯)方法などを吟味して商品を選択するのが通常であり、商品選択の際は、ウェブサイト、商品カタログ又は店舗における試着といった視覚情報や手段を用いて、商品(又はその画像)を眼で見て確かめ、商品のラベル、タグ、下げ札などに表示されたブランドのロゴ(商標)を視覚で確認しながら購入することが想定される。したがって、本願商標の指定商品は、称呼のみによる取引が常態の、称呼における類否が格別に重視されるべき商品とはいえないことが明らかである。 (7) 小括 以上述べた事項を踏まえ、本願商標と引用商標のそれぞれの外観、称呼、観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合し、本願商標の構成部分の独創性の程度、更に本願商標の指定商品の取引の実情を勘案して考察すると、 本願商標と引用商標が同一又は類似の商品に使用されたとしても、当該商品の出所について誤認混同を生じるおそれがないことは明白である。 4 以上のとおり、本件審決は、商標法4条1項11号該当性について、事実認定及び判断並びに法律の適用を誤った違法なものであるから、取り消されるべきものである。 |
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被告の主張
1 商標法4条1項11号該当性について 本願商標は、図形、並びに、その下部に、大きく「REIGN」の欧文字及び小さく「TOTAL BODY FUEL」の欧文字を二段に横書きした構成からなるところ、図形部分と文字部分は、段を異にし、さらに、文字部分は、各段の文字の大きさ及び書体も異なり、それぞれ視覚的に分離して看取されるので、これらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているものではないから、本願商標の構成中大きく顕著に表されている「REIGN」の欧文字部分が、看者の注意を最も引く文字部分といえる。 また、引用商標は、 「REIGN」の欧文字(3文字目の「I」の下部には、黒塗りの星印を配してなる。)を横書きしてなる。 そして、本願商標の要部(「REIGN」の文字部分)と引用商標を比較すると、 外観においては、構成文字が共通する同一の語を表してなるから、記憶に残る印象としては近似したものとなり、称呼及び観念を共通にすることからすると、これらによって需要者、取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、同一又は類似の商品について使用するときは、両商標は、その商品の出所について誤認混同を生じるおそれがあるというべきで、類似する商標といえるものである。 2 原告の主張について (1) 本願商標の図形部分は、構成全体としていかなる事物又は文字、図形等を表示したものであるか、一見して理解、認識し得るものとはいえず、本願商標の図形部分からは、直ちに、特定の称呼及び観念は生じないから、 「REIGN」の文字との観念的なつながりがあるとはいえない。 (2) 原告は、原告の商品であるエナジードリンクを根拠に、本願商標の文字部分の関連性を主張しているが、商標の類否判断に当たり考慮することのできる取引の実情とは、その指定商品全般についての一般的、恒常的な取引の実情をいうところ、 本願商標の指定商品ではないエナジードリンクを根拠とする主張は、本願商標の指定商品全般についての一般的、恒常的な取引の実情を主張したものではないことが明らかであるから、原告の主張は失当である。 (3) 引用商標は、 「REIGN」の欧文字(3文字目の「I」の下部には、黒塗りの星印を配してなる。)を横書きした構成よりなり、3文字目の「I」の欧文字は、 「!」 (感嘆符)の符号と捉えられる場合があるとしても、その構成自体は「I」の欧文字に通じる縦線を主体とした簡単なもので、近年の文字のデザイン化の実情、 すなわち、 「I」の下部に四角や円、星印等の図形を配したり、 「i」を上下逆にして「!」 (感嘆符)のようにデザインすることが広く行われていたりすること(乙5〜15)に照らせば、 「I」の欧文字を表していると認識、理解されるものである。そして、当該文字は、前後の欧文字(大文字)「RE」と「GN」 ( )の間に近接して、 横一列に一連一体の構成で配置されていること、さらには、構成全体としては「REIGN」の英語に通じることも併せ鑑みると、引用商標は、 「REIGN」の欧文字を、ありふれたレタリング手法の一つを用いて表してなるものと認識、理解するのが自然である。 (4) 本願商標の指定商品の一部及び引用商標の指定商品はいずれも日用品であり、 その需要者は、一般消費者であって、取引の際に払われる注意力はさほど高いとはいえないものであり、また、当該商品の性質上、多くの場合、これに付された商標の一見した印象によって商品の出所を識別することが多い実情にある。このことを考慮し、本願商標と引用商標を、時と場所を異にして離隔的に観察した場合、本願商標の要部と引用商標とは、外観においては記憶に残る印象が近似し、称呼及び観念を共通にするといえるから、本願商標と引用商標とは類似する。 (5) 以上のとおり、原告の主張は、いずれも失当である。 |
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当裁判所の判断
1 商標の類否について 商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、 それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきであり、 かつ、その商品の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。 また、複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて、商標の構成部分の一部が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合等、商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない場合には、その構成部分の一部を抽出し、当該部分だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁、最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁、最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。 2 本願商標及び引用商標 (1) 本願商標について ア 本願商標の構成は、前記第2の1(1)のとおりであり、上部には、全体の3分の2を超える大きさで図形が表され、その下に二段からなる文字が表され、文字部分の上段には欧文字で大きく「REIGN」と、下段には「REIGN」の文字部分とほぼ同じ幅をもって、欧文字で小さく「TOTAL BODY FUEL」と表されているものであり、図形部分及び文字部分はいずれも黒色である。 イ 本願商標の全体を観察すると、図形部分と文字部分はそれぞれの形態が明瞭に異なるとともに、図形部分と文字部分の間には空白部分があり、図形部分と文字部分がそれぞれ視覚的に分離、独立した印象を与えるものといえる。 そして、本願商標の図形部分は、その大きさが全体の3分の2を超えるものであり、黒色ではっきりと表されていることから、本願商標において強く支配的な印象を与える部分といえる。また、文字部分は、 「REIGN」の文字部分(一段目)と「TOTAL BODY FUEL」の文字部分(二段目)からなるところ、一段目と二段目は文字の大きさやフォントが明らかに異なるために、視覚的に独立した印象を与えるものであるとともに、 「REIGN」の文字部分が他の文字部分に比して著しく太いフォントで大きく表されていることから、本願標章を見た者に対し、 「REIGN」の文字部分もまた、強く支配的な印象を与える部分といえる。 ウ(ア) 本願商標の図形部分は、一見して何を表すものであるか看取することは困難であり、直ちに特定の観念及び呼称が生じると認めることはできない。 (イ) 本願商標の二段にわたる文字部分は、四つの英単語からなるものであるところ、ジーニアス英語辞典第5版(乙1〜4)及びその他の英和辞典(甲5〜11)によると、 「REIGN」は、(君主の)治世、統治(在位)期間、支配」等を、 「 「TOTAL」は「まったく、すっかり、完全に」を、 「BODY」は「体、身体」等を、 「FUEL」 「燃料」 は 等を意味するものであることが認められる。これらのうち、 「TOTAL」及び「BODY」については、日本国内において広く親しまれており、日常的に用いられる単語であり、広辞苑第七版(平成30年発行)にも、 「合計、 全体的」等を意味するものとして「トータル【total】」が、 「身体、胴体」等を意味するものとして「ボディー【body】」が登載されている。また、「FUEL」についても、日本国内において日常的に使用されているとまではいえないとしても、広辞苑第七版に、燃料を意味するものとして「フューエル【fuel】」が登載されている。 これに対し、 「REIGN」は日本国内で親しまれているものとはいえず、その意味及び読みについても一般に広く認識、理解されているものではない。 そうすると、文字部分である「REIGN TOTAL BODY FUEL」の全体から、特定の観念及び称呼が生じるということはできない。また、文字部分の全体が、英文として特定の意味を有する熟語や文章であると認めることもできず、 各英単語の意味を考慮しても、文字部分の全体から特定の観念を生じるということはできない。さらに、文字部分の全体を一連一体のものと観察すべきとする取引の実情があるものと認めるに足りる証拠はない。 エ 以上を総合すると、本願商標は、図形部分、 「REIGN」の文字部分及び「TOTAL BODY FUEL」の文字部分からなる結合商標であるところ、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとは認められないから、その構成部分の一部であり、文字部分のうち強く支配的な印象を与える「REIGN」の部分を抽出し、当該部分(以下「本願要部」という。)だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである。 オ そして、本願要部からは、ローマ字から連想される「レイグン」や、英語読みの「レイン」の称呼を生じ、また、そのアルファベットから「アールイーアイジーエヌ」の称呼を生じる。 「REIGN」は英単語であるが、日本において広く用いられる外来語であるものとは認められず、 「REIGN」から、特定の観念が生じるとはいえない。 (2) 引用商標について ア 引用商標は、「RE!GN」の5文字を横書きしてなるものであり、「!」は下部分を「★」で表して、デザイン化した文字となっている。 イ 名称等を表すロゴや文字列における「!」の文字の使用例についてみると、 次のとおり、会社名、ブランド名又はサービス名等を表すロゴや文字列の中で、I」 「又は「i」に変えて「!」の文字又は「I」の下に「●」や「■」や「★」の図形を配して「!」をデザイン化したものを用いるレタリング手法が採用されているものが多くみられることが認められる。 (ア) 株式会社フィットのウェブサイト(乙5) (イ) 株式会社Creative2が運営するヒントポットのウェブサイト(乙6) (ウ) 株式会社ビズヒントのウェブサイト(乙7) (エ) hintゼミのウェブサイト(乙8) (オ) 株式会社インサイトテクノロジーのウェブサイト(乙9) (カ) CAMPFIRE(キャンプファイヤ)の「ラジオ局が本気で作る、今までにない【Hint(ヒント)】」のウェブサイト(乙11) (キ) 株式会社ジンズのウェブサイト(乙12) (ク) PEIENのウェブサイト(乙13) (ケ) ECO&KIDS AKIRA 釧路店のウェブサイト(乙14) (コ) 東レ株式会社の「ナノ積層フィルム ピカサス」のウェブサイト(乙15) ウ 「I」又は「i」と「!」は、外観が類似していることから、日本国民にとって、 「!」の文字から「I」又は「i」を連想して「アイ」又は「イ」と読むことが難しいとはいえないことに加え、前記イの各使用例においては、「!」又は「!」の文字をデザイン化(ただし、 「!」の文字であることが容易に読み取れる限度におけるデザイン化である。以下同じ。)したものをもって、「I」又は「i」と読ませることを意図しているものであることが明らかであり、名称等を表すロゴや文字列において、「I」又は「i」に代えて「!」又は「!」の文字をデザイン化したものを用いる手法が一般的に用いられていることからすると、このようなロゴや文字列を見た取引者、需要者は、「!」又は「!」の文字をデザイン化したものをもって、 「I」又は「i」と読むものと認識、理解すると認めるのが相当である。 エ そうすると、引用商標である「RE!GN」は、取引者、需要者をして「REIGN」を意味するものと認識、理解されると認めるのが相当である。したがって、引用商標からは、 「レイグン」「レイン」又は「アールイーアイジーエヌ」の称 、 呼を生じ、特定の観念が生じるとはいえない。 3 本願商標と引用商標の類否 (1) 本願要部(「REIGN」の文字部分)と引用商標とを比較すると、その外観はフォントがやや異なっており本願商標の方が太い文字であること及び3文字目が本願要部では欧文字の「I」であるのに対し、引用商標では「I」の下に「★」を配したもので、「!」の文字をデザイン化したものである点において異なるものの、 本願要部と引用商標は、それが表す文字列が同一であること、引用商標の3文字目のデザイン化の程度が著しいとはいえず、欧文字の「I」に近いものであることを考慮すると、そのデザインの差異により見る者に与える印象の差異が大きいということはできず、外観において近似しているというべきである。そして、文字列が同一であって、称呼及び観念が共通することからすると、本願要部と引用商標は、外観において近似しており、また、称呼及び観念を共通にし、同一又は類似の商品又は役務について使用するときは、その商品又は役務の出所について誤認混同が生じるおそれがあるというべきであるから、互いに類似する。 (2) 指定商品についてみると、本願商標の指定商品が第25類「被服、帽子」を含むものであり、引用商標の指定商品が第25類「被服、帽子」であるから、本願商標と引用商標は、指定商品が同一又は類似する。 (3) 以上を総合すると、本願商標は、引用商標に類似する商標であって、引用商標と指定商品が同一又は類似するものと認めるのが相当である。 4 原告の主張について (1) 原告は、本願商標の図形部分は王冠をデザインした図形であり、本願要部と観念的一体性を有し、また、文字部分全体が視覚的一体性を有するから、本件審決が、 本願要部を抽出して引用商標と対比したことは誤りであると主張する。 しかしながら、前記2(1)オのとおり、本願要部から特定の観念が生じるとはいえないから、本願要部の観念から本願商標の図形部分が王冠であるものと容易に想起できるとの原告の主張は前提を欠く。また、原告が提出した王冠の写真(甲28〜35)は、いずれも本願商標の図形部分とは大きく印象が異なるというほかなく、 本願商標の図形部分からこのような王冠を想起することは困難である。王冠をアイコンとして図形化したもの(甲36〜39)の中には、上部に三つのとがった山のような形を有する点において本願商標の図形部分の上部と共通するものがあることが認められるものの、このことを考慮しても、取引者、需要者をして、本願商標の図形部分が王冠をデザインしたものであると直ちに認識、理解することができるとは認められない。そうすると、本願商標の図形部分と本願要部が観念的一体性を有するとはいえない。 次に、本願商標の文字部分の一段目(本願要部)と二段目(「TOTAL BODY FUEL」の文字部分)をみると、文字の大きさが顕著に異なる上、本件要部には、ほぼ均一の太さを有する力強いフォントが用いられているのに対し、 「TOTAL BODY FUEL」の文字部分はやや優雅な印象を与えるフォントが用いられており、フォントの印象も異なるから、一段目と二段目が近接していることを考慮しても、本件文字部分が全体として視覚的一体性を有するとはいえない。 したがって、原告の上記主張は採用できない。 (2) 原告は、本願商標の構成のうち本願要部以外の部分からも、出所識別標識としての称呼、観念が生じることを指摘して、本願商標から本願要部を抽出することは誤りであると主張するが、本願要部以外の構成が出所識別機能を有するとしても、 本願商標が前記2(1)のとおりの構成を有すること及び本願商標の各構成部分を不可分一体に観察すべきとする取引の実情があるとはいえないことに照らすと、本願商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認めることはできないから、原告の上記主張は採用できない。 (3) 原告は、引用商標の3文字目(3番目の構成)は「星を配した特徴的形状の図形」であって、 「I」や「i」と同一視することは不可能であり、被告が提出した証拠における例では、同一文書内に通常の活字体で名称等を示したり、読み方をカナ文字で表記したりしているが、引用商標ではそのようなことはしていないから、 「星を配した特徴的形状の図形」が「I」や「i」を意味するものと認識、理解することはできないと主張する。 しかしながら、前記2(2)のとおり、引用商標の3文字目は「I」の下に「★」を配して「!」の文字をデザイン化したものであるところ、その傍らに、通常の欧文字で名称等を表記したり、読み方をカナ文字で表記したりするなどしているか否かにかかわらず、取引者、需要者は、 「!」又は「!」の文字をデザイン化したものをもって「I」又は「i」を意味するものと認識、理解するといえるから、原告の上記主張は採用できない。 (4) 原告は、本願商標全体と引用商標は外観、称呼、観念が異なるから本願商標と引用商標は類似しないと主張するが、前記1ないし3に判示したとおり、本願商標から本願要部を抽出して引用商標と比較することで商標の類否を判断することも許されるところ、本願要部と引用商標とは類似するから、上記原告の主張は採用できない。 5 以上のとおり、本願商標は、その商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標である引用商標と類似するもので、引用商標の指定商品と同一又は類似する商品を指定商品とするものであるから、商標法4条1項11号に該当し、 登録することができない。原告の主張する取消事由には理由がない。 |
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結論
以上のとおり、原告の請求は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 本多知成 |
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裁判官 | 浅井憲 |
裁判官 | 勝又来未子 |