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関連審決 不服2022-18074
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事件 令和 5年 (行ケ) 10010号 審決取消請求事件

原告株式会社ノイン
同訴訟代理人弁護士 小林幸夫 河部康弘 平塚健士朗 北岡裕章
同訴訟代理人弁理士 古谷栄男 松下正
被告特許庁長官
同 指定代理人茂木祐輔 旦克昌 森山啓 綾郁奈子
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2023/07/06
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2022-18074号事件について令和4年12月28日にした審決を取り消す。
事案の概要
本件は、別紙商標目録記載の商標(以下「本願商標」という。)に係る商標登録出願の拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。争点は、本願商標と後記引用商標の類否(本願商標が商標法4条1項11号に掲げる商標に該当するか否か)である。
1 特許庁における手続の経緯等 原告は、令和4年4月15日、本願商標(乙1)について、商標登録出願(商願2022-43886号)をしたところ、同年9月5日付けで拒絶査定を受けた。
そこで、原告は、同年11月10日、同拒絶査定に対する不服審判の請求(不服2022-18074号)をした。
特許庁は、令和4年12月28日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、令和5年1月10日、原告に送達された。
原告は、令和5年2月6日、本件審決の取消しを求めて本件訴えを提起した。
2 本件審決の理由の要旨(1) 引用商標 本件における引用商標(甲12、乙2)は、別紙引用商標目録記載のとおりである。
(2) 商標法4条1項11号該当性について ア 本願商標について 本願商標は、「リフナビ大阪」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中、「大阪」の文字部分は、「近畿地方中央部の府。京都とともに2府の一。」又は「大阪府中部の市。」を意味する語(乙3(小学館大辞泉編集部編「大辞泉【第二版】」(平成24年)))であって、一方「リフナビ」の文字部分は、辞書等に載録がなく、また、特定の語義を有するものとみるべき特段の事情も見当たらないものであるから、特定の意味合いを有しない一種の造語として認識されるといえる ものである。
そして、「リフナビ」の文字部分は、本願商標の指定役務との関係において、自他役務を識別する機能を果たし得ないとみるべき事情はみられないのに対し、「大阪」の文字部分は、「大阪府」又は「大阪市」を容易に認識させるものであり、指定役務との関係においては、「大阪府」又は「大阪市」という特定の地域で役務が提供されること、すなわち、役務の提供の場所を認識させるものといえるから、
「大阪」の文字部分は、自他役務の識別標識としての機能を果たさないか、又は極めて弱い部分である。
そうすると、本願商標の構成において、自他役務の識別標識としての機能を強く発揮する部分は、「リフナビ」の文字部分であるといえることから、当該文字部分を要部として抽出し、これを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許されるというべきである。
してみれば、本願商標からは、全体から生じる「リフナビオオサカ」の称呼のほかに、「リフナビ」の文字部分に応じて「リフナビ」の称呼が生じ、特定の観念は生じない。
イ 引用商標について 引用商標は、「リ」の文字の左部分が白抜きの円を内包した図形で表された「リフナビ」の文字を横書きし、その下には波状の線を配してなるものである。そして、
下部の波状の線は、上部の文字を単に装飾するために配されたものと認識されるものであって、特定の意味合いや称呼が生じるものではない。
そうすると、引用商標において、自他役務の識別標識としての機能を強く発揮する部分(要部)は、「リフナビ」の文字部分にあるといえるから、引用商標からは、
「リフナビ」の文字に応じて「リフナビ」の称呼が生じることが明らかであり、また、特定の観念は生じない。
ウ 本願商標と引用商標の類否について 本願商標の要部と引用商標の要部を比較するに、両者の外観については、図案化 の有無において差異があるものの、我が国において、文字の一部を図案化して表記することは一般的に行われているといえることからすれば、同じ片仮名で構成され、
「リフナビ」のつづりを共通にした両者は、取引者、需要者に同一の出所表示として認識され得るというべきであるから、本願商標と引用商標とは、外観において類似するものというべきである。
次に、称呼については、本願商標と引用商標とは、「リフナビ」の称呼を共通にするものである。
さらに、観念については、本願商標と引用商標とは、いずれも特定の観念を生じさせないものであるから、比較することができない。
そうすると、本願商標と引用商標とは、観念において比較することができないとしても、外観において類似し、称呼を共通にするものであることから、本願商標と引用商標の外観称呼及び観念によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両商標は、役務の出所について誤認混同を生ずるおそれがある類似の商標と判断するのが相当である。
エ 本願商標の指定役務と引用商標の指定役務との類否について 本願商標の指定役務中、第35類「インターネットによる広告、広告の代理、広告業、経営の診断又は経営に関する助言、事業の管理、市場調査又は分析、商品の販売に関する情報の提供、職業のあっせん、コンピュータ又はコンピュータシステムの操作に関する運用管理、電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作、広告用具の貸与、求人情報の提供」と、引用商標の指定役務中、第35類「広告業、インターネットによる広告の代理、経営の診断及び指導、市場調査、商品の販売に関する情報の提供、商品の売買契約の仲介、広告用具の貸与、職業のあっせん、電子計算機・タイプライター又はこれらに準ずる事務用機器の操作、求人情報の提供」は、同一又は類似の役務である。
また、本願商標の指定役務中、第44類「エステティック技術を用いた美容・理容に関する情報の提供、美容院・エステサロンの紹介・取次ぎ、美容・理容・あん 摩・マッサージ・指圧・カイロプラクティック・きゅう・柔道整復・はりに関する情報の提供、育毛・増毛・植毛に関する情報の提供、育毛・増毛・植毛及び脱毛の予防に関する情報の提供、頭髪の発毛・育毛・増毛及びかつらの装着に関する情報の提供、美容、理容、リラクゼーションマッサージ・オイルマッサージ・リフレクソロジー・リンパマッサージの提供に関する情報の提供、マッサージの提供に関する情報の提供、あん摩・マッサージ及び指圧、カイロプラクティック、きゅう、柔道整復、整体、はり治療、温泉入浴施設に関する情報の提供」と、引用商標の指定役務中、第44類「リラクゼーションマッサージ、オイルマッサージ、リフレクソロジー、リンパマッサージ、タイ式マッサージ、美容、理容、あん摩・マッサージ及び指圧、カイロプラクティック、きゅう、柔道整復、はり、リラクゼーションマッサージの提供に関する情報の提供、温泉入浴施設に関する情報の提供、美容・理容・あん摩・マッサージ・指圧・カイロプラクティック・きゅう・柔道整復・はりに関する情報の提供」は、同一又は類似の役務である。
オ 小括 以上のとおり、本願商標は、引用商標と類似の商標であり、かつ、引用商標の指定役務と同一又は類似の役務について使用をするものであるから、商標法4条1項11号に該当する。
(3) 原告の主張について ア 原告は、本願商標について、外観上まとまりよく一体的に表され、また、全体の称呼も無理なく一連に称呼でき、さらに、全体から何らかの意味合いを想起、
理解されるとはいえず、仮に「大阪」の文字部分が地域名であるため識別力が弱いとしても、全体として一体不可分の商標として理解、認識される旨主張する。
しかしながら、上記(2)アのとおり、本願商標の構成中、「大阪」の文字部分は、
役務の提供の場所を表したものと認識させるものであるから、自他役務の識別標識としての機能がないか、又は極めて弱い部分であり、一方、「リフナビ」の文字部分は、本願商標の自他役務の識別標識としての機能を強く果たす部分であるから、
本願商標は、常に一体不可分ものとして理解、認識されるとは限らないというべきである。
イ 原告は、引用商標について、ある単語の一部が図案化されている場合に図案化される前の単語を推測できるのは、当該単語を認識しているから可能であって、
「リフナビ」という語が知られているものではない以上、先頭文字が何であるかを推測できないから、引用商標からは、「フナビ」又は「ノフナビ」の称呼しか生じない旨主張する。
しかしながら、引用商標の構成中の「リ」の文字部分は、全体として片仮名の「リ」と構成を共通にするものであり、また、一部を図案化することによって片仮名の「リ」と認識することを妨げるほど、その図案化の程度が著しいというほどのものではない。むしろ、「リ」の文字の右側は、垂直の直線部分が長いことや湾曲度合いなどにおいて、片仮名の「ノ」とは構成が異なるというべきである。
してみれば、引用商標は、「リフナビ」の文字を表したものと容易に認識されるから、「リフナビ」の称呼のみを生じさせるものである。
ウ 原告は、過去の審決例を挙げて、本願商標と引用商標についても同様に捉えるべき旨主張する。
しかしながら、商標の類否の判断は、対比する商標について個別具体的に判断されるべきものであるから、構成態様や指定役務の異なる過去の審決例によって、直ちに本願商標と引用商標との類否判断が左右されるべきではない。
エ したがって、原告の上記主張は、いずれも採用することができない。
(4) まとめ 以上のとおり、本願商標は、商標法4条1項11号に該当し、登録することができない。
原告主張の審決取消事由(本願商標と引用商標の類否についての判断の誤り)
以下のとおり、本願商標は、引用商標に類似する商標に該当しないから、本願商標が引用商標に類似する商標に該当することを前提に、本願商標が商標法4条1項 11号に掲げる商標に該当するとした本件審決の判断は誤りである。
1 本願商標について(1) 結合商標類否判断の基準 複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼観念が生じないと認められる場合などを除き、許されないというべきである(最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁)。
(2) 本願商標の構成中の「リフナビ」の文字部分について 本願商標の構成中の「リフナビ」の文字部分のうち「ナビ」の文字部分は、「航行、航法、航海(術)、運行指示などの意味を持つ英単語。目的地までの経路や道順、移動方法の案内。」を意味する「ナビゲーション」の略語である(甲17)。
また、「カーナビゲーション」の略語である「カーナビ」、「リクルートナビゲーション」の略語である「リクナビ」、毎日新聞社の関係会社であることから「ナビ」の前に「マイ」を付した「マイナビ」を始め、「○○ナビ」との文字部分からなる登録商標は、多数存在している(甲18ないし22)。加えて、本願商標の指定役務に「広告業」や「〜に関する情報の提供」が含まれることに照らすと、本願商標に接した需用者は、「○○ナビ」という言葉の意味を知っており、本願商標の構成中の「ナビ」の文字部分が需要者を特定の情報に案内するという意味を有する「ナビゲーション」の略語であると理解する。
他方、本願商標の指定役務のうち第44類に区分されるものの全てが「リフレッシュ」又は「リフレクソロジー」の略語としての「リフ」の語を連想させるものであること及び「リフレッシュ」が日常的に用いられる一般的な語であることに鑑みると、本願商標に接した需用者は、本願商標の構成中の「リフ」の文字部分が「リ フレッシュ」又は「リフレクソロジー」の略語であると容易に理解する。この点に関し、被告は、「リフ」で始まる語としては「リフレッシュ」及び「リフレクソロジー」のほかにも多数の語(「リフ」、「リフト」、「リフレーン」、「リフレーション」等)が存在すると主張するが、被告が挙げる当該語(乙49)は、いずれも本願商標に係る需用者が本願商標の構成中の「リフ」の文字部分から想起する一般的な語ではない(なお、3文字の片仮名からなる「リフト」の略語として2文字の片仮名からなる「リフ」が用いられることは考え難い。)。
そうすると、本願商標の構成中の「リフナビ」の文字部分に接した取引者、需用者は、それが「リフレッシュ」又は「リフレクソロジー」の略語と「ナビゲーション」の略語との組合せであり、本願商標に係る役務の内容をそのまま略語で表現したものであるとすぐに理解するから、当該文字部分が「取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える」とまではいえない。
(3) 本願商標の構成中の「大阪」の文字部分について 本願商標は、「エステティック技術を用いた美容・理容に関する情報の提供、美容院・エステサロンの紹介・取次ぎ、美容・理容・あん摩・マッサージ・指圧・カイロプラクティック・きゅう・柔道整復・はりに関する情報の提供」等の需要者が実際に現地でサービスの提供を受ける業種に関する情報の提供を指定役務とするものである。このような業種において、地名は、需要者にとって非常に重要な情報であり、需要者においてサービスを提供する業者を選別する上で着目する部分である。
加えて、メンズエステの業界における業者のほとんどは、店舗を一つしか有しない零細業者であり(甲23、24)、その名称に地名を付す者(複数の店舗を有する者)は余り存在しないため、他の業界の場合と比較して、標章の中にある地名は目立ちやすい。なお、地名を含むか否かのみが異なる2つの商標が類似しないと判断された審決又は異議の決定の例は多数存在しており(甲1ないし11)、商標の構成のうち地名を示す文字部分について、これが地名であるというだけで直ちに識別力を有しないと判断するのは相当でない。
そうすると、本願商標の構成中の「大阪」の文字部分は、役務の提供を受ける場所の表示ではあるものの、当該文字部分につき「出所識別標識としての称呼観念が生じない」とまでいうことはできない。
(4) 小括 以上によると、本願商標の構成中の「リフナビ」の文字部分は、強く支配的な印象を与えると評価できるほど強い識別機能を発揮しておらず、他方、「大阪」の文字部分にも、出所識別標識としての称呼観念が生じないと評価できるほど識別力がないとまではいえないから、本願商標は、一体不可分の商標(「リフナビ大阪」)として認識されるべきである。したがって、本願商標から生じる称呼は「リフナビオオサカ」であって「リフナビ」ではないし、本願商標の外観は「リフナビ大阪」であって「リフナビ」ではない。
2 引用商標について (1) 引用商標の上側の左端の部分(本件審決が「リ」の文字であると認定した部分の左側の部分)と上側のその余の部分との区別について 引用商標の構成から下部に配された細い波状の線の部分(以下「下側部分」という。)を除いた部分(以下「上側部分」という。)に含まれ、本件審決が「リ」の文字であると認定した先頭部分(以下「上側先頭部分」という。)の左側の部分(以下「上側先頭左側部分」という。)は、地図等において特定の位置を指し示す際に用いられるピンのマーク(以下「ピンマーク」という。)である(甲25)。
ピンマークは、記号として取引者、需要者に広く認識されているごく一般的なものであり、需要者が一見すれば、地図上の位置を示す記号であると認識できるものであるから、取引者、需用者において、引用商標の上側先頭左側部分を文字ないし文字の一部と認識するのは、極めて例外的な場合であるといえる。
また、引用商標の上側部分を観察すると、上側部分から上側先頭左側部分を除いたその余の部分(以下「上側その余の部分」という。)の色よりも上側先頭左側部分の色の方が薄くなっており、上側先頭左側部分と上側その余の部分とで色が異な ることが読み取れる(実際に、引用商標は、上側先頭左側部分及び下側部分並びに上側部分の右肩に付された「○」のマークを緑色とし、上側その余の部分を黒色と Rする形態で使用されており(甲26)、そのような形態で使用される引用商標に接した需用者は、ピンマーク(上側先頭左側部分)が明らかに称呼を生じさせない下側部分及び「○」のマークと同じ色で表示されていることから、黒色で表示された R上側その余の部分と緑色で表示された部分(上側先頭左側部分及び下側部分並びに「○」のマーク)とが別々の構成のものであるとして両者を分離し、上側その余の R部分が「ノフナビ」の文字を示していると認識するというべきである(引用商標の上側先頭部分の右側の部分(以下「上側先頭右側部分」という。)が「ノ」の文字を示すものと認識されることは、後記(2)アのとおりである。)。)。
さらに、本来の「リ」の文字の左側部分は、右側部分よりも短く垂直に延びる縦線であり、引用商標の上側先頭左側部分のような形状のものではないから、引用商標の上側先頭部分が「リ」の文字を表すものであるとすると、当該部分は、その一部が線ですらない形状のものを含むことになる。
したがって、引用商標の上側部分は、ピンマークである上側先頭左側部分と「ノフナビ」の文字を示す上側その余の部分とからなるのであって、全体として「リフナビ」の文字を示すものではない。
なお、本件審決は、引用商標の上側先頭部分について、これが文字の一部を図案化したものであると評価したが、これは、上側先頭部分が全体として何らかの文字を示すものであることを前提とした評価であり、結論を先取りするものであるから、
誤りである。
この点に関し、被告は、文字の一部を図案化して表すことは商取引の実際において一般に行われているなどとして、引用商標の上側部分については全体として「リフナビ」の文字を表したものと認識されるとみるのが自然であると主張する。しかしながら、被告が挙げる図案化の例は僅かに14個であり、それらの中に広く知られている商標は含まれないのであるから、文字の一部を図案化して表すことが商取 引の実際において行われているとの事実は、一般的に知られているものではない。
また、文字の一部の図案化が一般に行われていることと図案化された部分が実際に文字の一部であると認識できることとは次元を異にする問題であるから、仮に当該図案化が商取引の実際において一般に行われているとしても、そのことをもって、
引用商標の上側先頭左側部分が文字の一部を表したものと認識されるとみるのが自然であるということはできない。さらに、被告が挙げる図案化の例は、先に読み方を知らなければ図案化された部分が文字の一部であると認識し得ないものであるし、
仮に図案化された部分が文字の一部であると認識し得るとしても、それは、引用商標におけるのと異なり、当該図案化された部分が一連の文字の途中に位置し、前後の文字を基にした推測が可能であるからである。したがって、被告が挙げる図案化の例があることを考慮しても、単色の連続した片仮名からなり、文字の一部を図案化したものと認識し得る手掛かりを欠く引用商標の上側部分については、そのように認識されるとみるのが自然であるということはできない。
(2) 引用商標の上側先頭右側部分について ア 本件審決は、引用商標の上側先頭右側部分について、垂直の直線部分が長いこと、湾曲の度合い等を理由に、これが片仮名の「ノ」と構成を異にすると判断した。しかしながら、「ノ」、「リ」等の文字は、フォント、周囲の文字とのバランス等により、文字を構成する部分の長さ、角度等を異にするものであるから、引用商標の上側先頭右側部分が「ノ」の文字を示すものであるのか、又は「リ」の文字の右側部分を示すものであるのかについては、本件審決が判断したように垂直の直線部分の長さ、湾曲の度合い等から明確に区別できるものではない。同じ文字であっても、その形は多種多様である(本件審決も、文字の一部を図案化して表記することは一般的に行われていると説示している。)。実際に、引用商標の上側先頭右側部分とほとんど同じ角度及び長さで表記されたものにつき、これが「ノ」の文字を示すと認識させる登録商標が存在する(甲27)。
したがって、引用商標の上側先頭右側部分は、「ノ」の文字を示すものとして認 識されるというべきである。
イ なお、仮に引用商標の上側先頭左側部分が文字の一部を表すものと認識されるとしても、@片仮名の「ソ」の文字は、片仮名の「リ」の文字と似ていると認識されていること(甲34、35)、A引用商標の指定役務の中に第35類「電子計算機・タイプライター又はこれらに準ずる事務用機器の操作」があること、B「ソフ」で始まる語は、多数存在し、被告が挙げる「リフ」で始まる語よりも一般的な語であること(甲36)からすると、引用商標を見た需用者は、その上側部分から、
「リフナビ」の語よりも、「ソフトウェア」と「ナビゲーション」の略語である「ソフナビ」の語を想起するとみるのが自然である。
(3) 小括 以上によると、引用商標の外観は、ピンマークである上側先頭左側部分、「ノフナビ」の文字を示す上側その余の部分及び細い波状の線である下側部分又は「ソフナビ」の文字を表す上側部分及び細い波状の線である下側部分であり、また、引用商標からは、「ノフナビ」又は「ソフナビ」の称呼が生じる。
3 本願商標と引用商標の類否について (1) 本願商標と「ノフナビ」の文字を示す上側その余の部分又は「ソフナビ」の文字を示す上側部分を構成に含む引用商標の類否について ア 外観 前記1及び2を踏まえると、「リフナビ大阪」の文字を標準文字で表してなる本願商標の外観とピンマークである上側先頭左側部分、「ノフナビ」の文字を示す上側その余の部分及び細い波状の線である下側部分又は「ソフナビ」の文字を示す上側部分及び細い波状の線である下側部分からなる引用商標の外観には、以下の差異が見られる。したがって、本願商標及び引用商標には、その外観において判然と区別できるほどの差異があるといえる。
(ア) 本願商標は、「リフナビ大阪」の文字を示すものであるのに対し、引用商標は、「ノフナビ」の文字又は「ソフナビ」の文字を示すものであること。
(イ) 引用商標には、ピンマーク(上側先頭左側部分)が表示されていること。
(ウ) 引用商標にのみ、下部に細い波状の線(下側部分)が表示されていること。
称呼 本願商標からは、「リフナビオオサカ」の称呼が生じ、引用商標からは、「ノフナビ」又は「ソフナビ」の称呼が生じるところ、両称呼は、先頭が「リ」と「ノ」又は「ソ」で異なる上、「オオサカ」の音の有無にも差異があるため、その構成音及び音数の著しい相違により、全体として聞き誤るおそれはない。したがって、本願商標及び引用商標は、称呼においても異なる。
ウ 小括 以上のとおり、本願商標及び引用商標は、外観称呼及び観念において明確に区別可能であって、役務の出所に誤認混同を来すおそれはないから、類似しない。
(2) 本願商標と「リフナビ」の文字を示す上側部分を構成に含む引用商標の類否について ア 取引の実情 本願商標は、美容行為としてのメンズエステに関する情報提供を行うウェブサイトの名称として使用されている(甲28)。他方、引用商標は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の許可が必要な風俗エステであることをうかがわせるような情報を提供するウェブサイトの名称として使用されている(甲26)。
そして、メンズエステと風俗エステとが混同されてきた歴史があること(甲29、
30)や、間違えて風俗エステや同法等に違反した店舗に行ってしまった結果恐喝被害に遭うケース及びサービスを提供する者が未成年者であると知らずにサービスを受けて逮捕されたケースがあること(甲31ないし33)から、消費者は、間違って風俗エステや同法等に違反した店舗に行かないよう、店舗の情報の提供元の名称には十分注意を払う。そのため、メンズエステの分野の取引者、需要者は、他の分野の取引者、需用者と比較して、情報の提供元の名称に対する注意力が高く、当該名称の一部を安易に分離観察することはしないし、当該名称の一部を図案化した ものとそうでないものとは別物であると考える。
外観 前記アの取引の実情を踏まえると、仮に引用商標の上側部分が「リフナビ」の文字を示すものと認識されるとしても、「リフナビ大阪」の文字を標準文字で表してなる本願商標の外観と「リフナビ」の文字を示す上側部分を構成に含む引用商標の外観には、以下の差異が見られる。したがって、両者の外観には、明確な差異があるといえる。
(ア) 本願商標にのみ、「大阪」の文字が表示されていること。
(イ) 引用商標の上側先頭左側部分は、ピンマークで表示されていること。
(ウ) 引用商標にのみ、下部に細い波状の線(下側部分)が表示されていること。
称呼 前記アの取引の実情を踏まえると、仮に引用商標の上側部分が「リフナビ」の文字を示すものと認識されるとしても、「リフナビ大阪」の文字を標準文字で表してなる本願商標及び「リフナビ」の文字を示す上側部分を構成に含む引用商標の称呼には、「オオサカ」という特定の地域を示す音の有無に差異があるから、やはり取引者、需要者にとって明確な差異があるといえる。
エ 小括 以上のとおりであるから、仮に引用商標の上側部分が「リフナビ」の文字を示すものと認識されるとしても、取引の実情を踏まえると、本願商標及び引用商標は、
外観及び称呼において明確に区別可能であって、役務の出所に誤認混同を来すおそれはないから、類似しない。
被告の主張
以下のとおり、本願商標は、引用商標に類似する商標に該当するから、これを前提に、本願商標が商標法4条1項11号に掲げる商標に該当するとした本件審決の判断に誤りはない。
1 商標の類否に関する考え方について 商標の類否は、対比される商標が同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に、その商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、使用された商標がその外観観念称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかも、その商品又は役務に係る取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である。
また、複数の構成部分を組み合わせた結合商標については、商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合していると認められる場合においては、その構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して類否を判断することは、原則として許されないが、その場合であっても、商標の構成部分の一部が取引者又は需要者に対し、商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼観念が生じない場合などには、商標の構成部分の一部だけを取り出して、他人の商標と比較し、その類否を判断することが許されるものと解される。
加えて、登録商標の範囲は、願書に記載した商標に基づいて定めなければならず、
指定役務の範囲は、願書の記載に基づいて定めなければならない(商標法27条1項及び2項)。
2 本願商標について(1) 本願商標の構成 本願商標は、「リフナビ大阪」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は、文字種が相違する片仮名の「リフナビ」と漢字の「大阪」とを結合したものと看取される。
(2) 本願商標の構成中の「大阪」の文字部分について ア 本願商標の構成中の「大阪」の文字部分は、「近畿地方中央部の府。京都とともに2府の一。」又は「大阪府中部の市。」を意味する語(乙3)であって、い ずれの意味合いであっても我が国において広く知られた地名である。また、「大阪」を含めた「北海道」、「愛知」、「和歌山」等の地名又は「関東」、「関西」といった地域名(以下、地名と地域名を併せて「地名等」という。)については、本願商標の指定役務を始めとする様々な役務の提供に際し、役務の提供の場所を限定し、
又は特定するための情報として、ウェブサイトの名称の一部、検索キー等として使用されているとの実情がある(乙4ないし23(枝番のある書証については、枝番を含む。以下、特に断らない限り、枝番のある書証について同じ。))。
そうすると、本願商標の構成中の「大阪」の文字部分は、「大阪府」又は「大阪市」を容易に認識させるものであり、指定役務との関係においては、「大阪府」又は「大阪市」という特定の地域で役務が提供されること、すなわち、役務の提供の場所を認識させるものといえるから、当該文字部分は、自他役務の識別標識としての機能を果たさないものである。したがって、当該文字部分からは、出所識別標識としての称呼観念が生じないというべきである。
イ 原告は、本願商標の指定役務のうち需用者が実際に現地でサービスの提供を受ける業種において、地名は需用者にとって非常に重要な情報であり、需用者においてサービスを提供する業者を選別する上で着目する部分であるし、メンズエステの業界における業者のほとんどは店舗を一つしか有しない零細業者であり、その名称に地名を付す者(複数の店舗を有する者)は余り存在しないため、他の業界の場合と比較して、標章の中にある地名は目立ちやすいから、本願商標の構成中の「大阪」の文字部分につき「出所識別標識としての称呼観念が生じない」とまでいうことはできないと主張する。しかしながら、指定役務の範囲は、願書の記載に基づいて定められるべきところ(商標法27条2項)、本願商標の指定役務は、メンズエステに係る役務に限られないから、本願商標について、メンズエステという特定の業界に限定して取引の実情を考慮するのは相当でない。また、エステサロンの業界をみても、同業界において、地名等が役務の提供の場所を限定し、又は特定するための情報として使用されているとの実情があることからすると(乙14ないし2 1)、仮にメンズエステの業界において店舗を一つしか有しない業者が多いという実情があるとしても、地名等が有する意義や捉え方が他の業界の場合と異なるとみるべき特別な理由はない。そうすると、仮に地名等がメンズエステ等の業種(需用者が実際に現地でサービスの提供を受ける業種)において重要な情報であって、需要者においてサービスを提供する業者を選別する上で着目する部分であるとしても、
地名等が役務を提供する場所を特定するためのものにすぎないとの前記アの結論に影響を及ぼすものではない。
(3) 本願商標の構成中の「リフナビ」の文字部分について ア 本願商標の構成中の「リフナビ」の文字部分は、「リフナビ」の語が辞書等に載録されていないものであり、これが特定の語義を有するものとして使用されているとの実情もないから、取引者、需要者において、特定の意味合いを有しない一種の造語として認識するといえるものである。また、当該文字部分が本願商標の指定役務との関係において役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途等を認識させるとみるべき特段の事情は見当たらない。
そうすると、当該文字部分は、指定役務との関係において、その出所を表示し、
自他役務を識別する機能を強く果たすものというべきであるから、取引者、需要者に対し自他役務の識別標識として強く支配的な印象を与えるものである。
イ 原告は、本願商標の構成中の「リフナビ」の文字部分に接した取引者、需用者はそれが「リフレッシュ」又は「リフレクソロジー」の略語と「ナビゲーション」の略語との組合せであるとすぐに理解すると主張する。しかしながら、本願商標の指定役務は、「リフレクソロジー」等に限られない上、「リフ」で始まる語としては、原告が主張する「リフレッシュ」及び「リフレクソロジー」のほかにも多数の語(「リフ」、「リフト」、「リフレーン」、「リフレーション」等)が存在するのであるから(乙49)、「リフナビ」の語から直ちに特定の意味合いが生じるとはいえない。
(4) 小括 前記(1)ないし(3)を踏まえると、本願商標は、片仮名の「リフナビ」と漢字の「大阪」の2語からなるものと容易に認識させるものである上、本願商標の構成中の「大阪」の文字部分からは、出所識別標識としての称呼観念が生じない一方で、
「リフナビ」の文字部分は、取引者、需要者に対し自他役務の識別標識として強く支配的な印象を与えることから、本願商標から「リフナビ」の文字部分を抽出して他人の商標と比較し、その類否を判断することは許されるというべきである。
したがって、本願商標からは、その要部である「リフナビ」の文字部分に応じて、
「リフナビ」の称呼が生じ、特定の観念が生じないというべきである。
3 引用商標について(1) 引用商標の構成 引用商標は、白抜きの円を内包した水滴状の図形(上側先頭左側部分)と、その右側に縦方向の直線が途中から左下方向に先細りしながら湾曲する線(上側先頭右側部分)を配し、更にその右側に上側先頭右側部分と同じ色、同じ太さ及び同じ書体で表された「フナビ」の文字を横書きし、これらの下には波状の線(下側部分)を配してなるものである。
(2) 引用商標の上側部分について ア 文字の一部を図案化して表すことは、商取引の実際において一般に行われており(乙8、24ないし48)、その中には、片仮名の「リ」の文字又は平仮名の「り」の文字の一部を図案化している例(乙24ないし28)や、引用商標の上側先頭左側部分と似た形状の図形が文字の一部として使用されている例(乙24、25、29ないし39)もみられるところ、@引用商標の上側先頭左側部分と上側先頭右側部分(及び「フナビ」の文字部分)は、上部の高さが同じようにそろえられ、
上側先頭左側部分の縦の中心軸のほぼ延長上に上側先頭右側部分の左下先端部分が配されているなど、上側先頭部分が一つの升目に収まるかのように一体的にデザインされていること、A上側先頭左側部分は、やや縦長の形状であり、これと上側先頭右側部分の特徴とを併せると、これらの組合せによって形成される形状は、片仮 名の「リ」の構成と特徴を共通にするものであること、B上側先頭右側部分が「ノ」の文字を表すものであるとすると、「ノ」の文字の横幅が「フナビ」の各文字の各横幅と比べてかなり狭いものとなり、「ノ」の文字のみが縦長となって、著しくバランスを欠く上、上側その余の部分の全体が左に詰まりすぎて、余りにも不自然であること、C上側先頭右側部分は、上部の3分の2程度まで垂直方向に縦線が延び、
その後、左下方向に急激に湾曲するものであって、全体が緩やかに大きく湾曲する「ノ」の文字と構成上の特徴が異なること、D上側先頭右側部分は、その右隣にある「フ」の文字部分の曲線部が全体に緩やかに大きく湾曲していることと比較して、
構成上の特徴が異なることなどを併せ考慮すると、引用商標の上側部分については、
片仮名の「リ」の文字を一部図案化した上、全体として「リフナビ」の文字を表したものと認識されるとみるのが自然である。
イ 原告は、実際の使用形態において引用商標の各構成の色彩に相違があることを指摘し、上側その余の部分は「ノフナビ」の文字を示していると認識されると主張する。しかしながら、そもそも登録商標の範囲は、願書に記載した商標に基づいて定められるべきところ(商標法27条1項)、引用商標の願書に記載された商標には、原告が主張するような緑色と黒色の色彩が施されているものではないから、
本願商標と引用商標の類否判断において、引用商標の実際の使用形態をそのまま考慮するのは相当でない(そのような色彩が施されていない引用商標の上側部分につき「リフナビ」の文字を表したものと認識するのが自然であることは、前記アのとおりである。)。なお、仮に引用商標の上側先頭左側部分の色彩が上側その余の部分の色彩と異なるとしても、文字の一部に異なる色彩が使用される例は、多数みられるものであるから(乙8、25、26、28ないし30、32ないし36、41、
42、45ないし48)、文字の一部の色彩が異なることをもって、これが文字の一部と認識されないとみるべきではない。
(3) 引用商標の下側部分について 引用商標の下部に配されている波状の線(下側部分)は、上側部分の文字を単に 装飾するために配されたと認識されるものであって、下側部分から特定の称呼観念が生じるものではない。
(4) 小括 そうすると、引用商標において自他役務の識別標識としての機能を強く発揮する部分は、「リフナビ」の文字部分(上側部分)であるといえるから、引用商標からは、その要部である「リフナビ」の文字部分に応じて「リフナビ」の称呼が生じることが明らかである。また、前記2(3)及び(4)において主張したところに照らすと、
引用商標からは、特定の観念が生じないというべきである。
4 本願商標と引用商標の類否について (1) 本願商標の要部である「リフナビ」の文字部分と引用商標の要部である「リフナビ」の文字部分(上側部分)とを比較すると、両者の外観については、図案化の有無において差異があるものの、我が国において文字の一部を図案化して表記することが一般的に行われていることからすると(乙8、24ないし48)、同じ片仮名で構成され、「リフナビ」のつづりを共通にする両者は、取引者、需要者に同一の出所表示として認識され得るというべきであるから、本願商標と引用商標は、外観において類似するものである。また、本願商標と引用商標は、「リフナビ」の称呼を共通にするものである。さらに、本願商標と引用商標は、いずれも特定の観念を生じさせないものであるから、両者の観念を比較することはできない。
そうすると、本願商標と引用商標は、観念において比較することができないとしても、外観において類似し、称呼を共通にするものであるから、両商標の外観称呼及び観念によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両商標は、役務の出所について誤認混同を生ずるおそれがある類似の商標であるというべきである。
(2) 原告は、メンズエステの分野の取引者、需用者は他の分野の取引者、需用者と比較して情報の提供元の名称に対する注意力が高く、当該名称の一部を安易に分離観察することはしないし、当該名称の一部を図案化したものとそうでないもの とは別物であると考えると主張する。しかしながら、商標の類否判断において考慮することのできる取引の実情とは、その指定商品又は指定役務の全般についての一般的、恒常的なそれを指すのであって、単に当該商標が現在使用されている商品又は役務についてのみの特殊的、限定的なそれを指すものではないところ、本願商標の指定役務は、第35類及び第44類に属する広範な役務であるから、本願商標と引用商標の類否判断において、原告が主張するようなメンズエステの分野に関する限定的な取引の実情のみを考慮するのは相当でない。
当裁判所の判断
1 商標の類否判断について 商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に、その商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品又は役務に使用された商標がその外観観念称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきであり、しかも、その商品又は役務に係る取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。
また、複数の構成部分を組み合わせた結合商標については、商標の構成部分の一部が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えると認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼観念が生じないと認められる場合等、商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合していると認められない場合には、その構成部分の一部を抽出し、当該部分だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許されると解すべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁、最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号50 09頁、前掲最高裁平成20年9月8日第二小法廷判決参照)。
2 分離観察の可否について(1) 本願商標の構成 別紙商標目録記載1のとおり、本願商標は、「リフナビ大阪」の文字(標準文字)からなるものであり、文字の種類の相違に照らし、片仮名の「リフナビ」の文字部分と漢字の「大阪」の文字部分とが結合したものであると認められる。
(2) 本願商標の構成中の「リフナビ」の文字部分 「リフナビ」の語につき、これが一般的に使用されている語であると認めるに足りる証拠はなく、また、その語義を記載した辞書等が存在するものと認めるに足りる証拠もない。
この点に関し、原告は、本願商標に接した需要者はその構成中の「リフ」の文字部分が「リフレッシュ」又は「リフレクソロジー」の略語であると容易に理解し、
「リフナビ」の文字部分についても、これが「リフレッシュ」又は「リフレクソロジー」の略語である「リフ」と「ナビゲーション」の略語である「ナビ」との組合せであるとすぐに理解すると主張する。しかしながら、証拠(乙49)及び弁論の全趣旨によると、片仮名の「リフ」で始まる語は、例えば、「リフレーション」、
「リフレーン」等のように、「リフレッシュ」及び「リフレクソロジー」のほかにも一定数存在するものと認められ、「リフ」の語に接した取引者、需要者において、
これが他の語の略語ではなく「リフレッシュ」又は「リフレクソロジー」の略語であると認識するのが一般的であると認めるに足りる証拠はないから、仮に「リフレッシュ」が日常的に用いられる語であるとしても、また、「リフジョブ」と題するウェブサイト(メンズエステサロンに係る求人情報を掲載したもの)が1件存在すると認められること(乙25)を考慮しても、本願商標に接した取引者、需要者において、その構成中の「リフ」の文字部分が「リフレッシュ」又は「リフレクソロジー」の略語であると容易に理解するものと認めることはできない(なお、原告は、
「リフレーション」、「リフレーン」等の語は本願商標に係る需用者がその構成中 の「リフ」の文字部分から想起する一般的な語ではないと主張するが、本願商標に接した取引者、需用者において、「リフ」の文字部分が「リフレーション」、「リフレーン」等の略語であると容易に理解しないとしても、そのことは、当該取引者、
需用者において、「リフ」の文字部分が「リフレッシュ」又は「リフレクソロジー」の略語であると容易に理解するものと認めることができないとの上記結論を左右するものではない。)。
そうすると、本願商標の構成中の「リフ」の文字部分は、特定の意味合いを有しない一種の造語であると認めるのが相当であり、加えて、「リフレッシュナビゲーション」又は「リフレクソロジーナビゲーション」が一般的に用いられている語であると認めるに足りる証拠がないことも併せ考慮すると、仮に、本願商標に接した取引者、需要者において、その構成中の「ナビ」の文字部分が「ナビゲーション」(「航行、航法、航海(術)、運航指示等の意味を持つ英単語。目的地までの経路や道順、移動方法の案内のこと。」とされる語(甲17))の略語であると推測し得るとしても、本願商標の構成中の「リフナビ」の文字部分に接した取引者、需要者において、それが「リフレッシュ」又は「リフレクソロジー」の略語と「ナビゲーション」の略語との組合せであると直ちに理解するものと認めることはできず、
結局、本願商標の構成中の「リフナビ」の文字部分についても、全体として特定の意味合いを有しない一種の造語であると認めざるを得ない。
以上に加え、上記のとおり特定の意味合いを有しない「リフナビ」の文字部分が、
本願商標の指定役務との関係で、役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法又は時期その他の特徴、数量又は価格を具体的に表示するものではないことも併せ考慮すると、当該文字部分は、取引者、需用者に対して強い訴求力を有するということができる。したがって、当該文字部分は、役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであると認めるのが相当である。
(3) 本願商標の構成中の「大阪」の文字部分 ア 証拠(乙3)及び公知の事実によると、「大阪」は、「近畿地方中央部の府。
大阪府中部の市。」などの語義を有し、我が国において広く知られた地名であると認められるところ、証拠(乙10ないし23)及び弁論の全趣旨によると、役務を提供する場所(例えば、エステサロンの店舗等)の範囲を示す表示として地名が用いられる例が多数あるほか、役務提供者(例えば、弁護士、医療機関、飲食店、温泉、エステサロン、鍼灸院等)に関する情報を提供する役務に関し、当該役務提供者(弁護士等)の所在地の範囲を示す表示として地名が用いられる例が多数あるものと認められる。
以上によると、本願商標の構成中の「大阪」の文字部分は、本願商標の指定役務との関係では、役務の提供の場所、提供する役務の内容(情報の内容)等に相当するとの印象を与えるものにすぎず、当該文字部分からは、出所識別標識としての称呼及び観念が生じないというべきである。
イ この点に関し、原告は、@本願商標の指定役務のうち「エステティック技術を用いた美容・理容に関する情報の提供、美容院・エステサロンの紹介・取次ぎ、
美容・理容・あん摩・マッサージ・指圧・カイロプラクティック・きゅう・柔道整復・はりに関する情報の提供」等は、需用者が実際に現地で役務の提供を受ける業種に関する情報の提供であるところ、このような業種において、地名は、需用者にとって非常に重要な情報であり、需用者において役務を提供する業者を選別する上で着目する部分であること、Aメンズエステの業界における業者のうちその名称に地名を付す者は余り存在せず、他の業界の場合と比較して、標章の中にある地名が目立ちやすいこと、B地名を含むか否かのみが異なる2つの商標が類似しないと判断された審決又は異議の決定の例が多数存在していることを理由として、本願商標の構成中の「大阪」の文字部分が出所識別標識としての称呼及び観念を生じさせないとまではいえないと主張する。
しかしながら、上記@及びAの点は、仮に、上記の「エステティック技術を用いた美容・理容に関する情報の提供」等に係る業界又はメンズエステに係る情報を提供する業界において、地名が重要な情報であり、取引者、需用者において、情報提 供がされた業者(メンズエステサロン等)を選別する上で着目する部分であるとしても、そのことは、本願商標の構成中の「大阪」の文字部分が本願商標の指定役務との関係で役務の提供の場所、提供する役務の内容(情報の内容)等に相当するとの印象を与えるものにすぎず、出所識別標識としての称呼及び観念を生ずるものではないとの前記判断を左右するものではない。なお、上記Bの点は、本件における本願商標と引用商標の類否判断の理由となるものではない。
(4) 小括 以上のとおり、本願商標の構成中の「リフナビ」の文字部分は、役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであると認められる一方、本願商標の構成中の「大阪」の文字部分からは、出所識別標識としての称呼及び観念が生じないから、本願商標については、商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとは認められない。
したがって、本願商標については、その構成中の「リフナビ」の文字部分を抽出し、
当該文字部分だけを他の商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきであり、本願商標の要部は、「リフナビ」の文字部分であると認めるのが相当である。
なお、原告は、メンズエステの分野の取引者、需用者は他の分野の取引者、需用者と比較して情報の提供元の名称に対する注意力が高く、当該名称の一部を安易に分離観察することはしないと主張するが、原告が援用する証拠(甲29ないし33)を考慮しても、そのような事実を推認するに足りる事実を認めることはできず、その他、そのような事実を認めるに足りる証拠はない。
3 引用商標について(1) 引用商標の構成 別紙引用商標目録記載3のとおり、引用商標は、上側部分及び下側部分からなるものである。
(2) 引用商標の下側部分 引用商標の前記(1)の構成に照らし、引用商標に接した取引者、需用者は、下側部分(下部に配された細い波状の線の部分)につき、これを単に文字部分又は文字を含む部分である上側部分を装飾するための下線様の曲線であると認識するものと認められるから、下側部分は、特定の称呼又は観念を生じさせるものではない。
(3) 引用商標の上側部分 ア 引用商標の上側部分のうち上側先頭部分を除いた部分が「フナビ」の文字を表すものと認識されることは、当事者間に争いがない。
また、引用商標の上側先頭左側部分が原告主張に係るピンマーク(甲25)のような形状(白抜きの円を内包した水滴状の形状)に図案化されたものであり、上側先頭右側部分が文字(これが文字の全部(片仮名の「ノ」)であると認識されるか、
一部(片仮名の「ソ」又は「リ」の各右側部分)であると認識されるかについては、
当事者間に争いがある。)を構成する部分であると認識されることも、当事者間に争いがない。
そこで、引用商標の上側先頭左側部分が文字(片仮名の「ソ」又は「リ」)を構成する部分であると認識されるか否かにつき検討するに、@証拠(乙8、24ないし48)及び弁論の全趣旨によると、商取引においては、文字の全部又は一部を図案化して表示することが広く行われ、その中でも、片仮名の「リ」又は平仮名の「り」の各左側部分が図案化されている例や引用商標の上側先頭左側部分に類似する形状の図形(原告主張に係るピンマークのような形状の図形)が文字の全部又は一部として使用されている例が多数存在するものと認められること、A引用商標の上側先頭部分が一つの文字を表しているものと認識すると、上側部分において、片仮名の「ソ」(原告主張に係るもの)又は「リ」(被告主張に係るもの)、「フ」、
「ナ」及び「ビ」の4文字が同じような高さ及び幅をもって均等に配置されているように見え、自然であるのに対し、上側先頭左側部分が文字の一部でなく、上側先頭右側部分のみが文字(片仮名の「ノ」)を表しているものと認識すると、上側先頭左側部分と上側先頭右側部分とが接近しているため、上側その余の部分のうち上 側先頭右側部分のみが縦長(細幅)で窮屈に配置されているように見え、上側その余の部分において、片仮名の「ノ」、「フ」、「ナ」及び「ビ」の4文字の配置が全体として不自然に見えることからすると、引用商標の上側部分については、上側先頭右側部分と原告主張に係るピンマークのように図案化された上側先頭左側部分とが一つの文字を構成し、「フナビ」の文字部分と併せ、全体として4つの文字からなるものと認識されると認めるのが相当である。
そして、引用商標の上側先頭左側部分は、そのうちのとがった部分が略鉛直方向を向き、真上から真下に向かって縦に下ろしたように配されており、片仮名の「ソ」の文字の左側部分(通常は左上方向から右下方向に配されるもの)ではなく、片仮名の「リ」の文字の左側部分に近い形状をしていると認められることからすると、
大学でノートを取る観点から片仮名の「ソ」と「リ」を形がよく似た字の例として挙げるウェブサイト(甲34)及び校正の観点から片仮名の「ソ」と「リ」を字形の似た文字の例として挙げるウェブサイト(甲35)が存在することを考慮しても、
引用商標の上側先頭部分は、片仮名の「リ」の文字を表すものと認識されると認めるのが相当である。したがって、引用商標の上側部分は、「リフナビ」の文字を表すものと認識されるところ、当該部分は、引用商標において出所識別標識としての機能を強く発揮するものと認められるから、前記(2)にも照らすと、引用商標の要部は、「リフナビ」の文字部分であるといえる。
イ 原告の主張について (ア) 原告は、@文字の一部を図案化して表すことが商取引の実際において行われているとの事実は、一般的に知られているものではない、A文字の一部の図案化が行われていることと図案化された部分が実際に文字の一部であると認識できることとは、次元を異にする問題である、B文字の一部を図案化したものであることが分かるのは、当該部分を含む部分の読み方をあらかじめ知っているか、又は前後の文字を基にした推測が可能であるからであるところ、引用商標においてはそのようにいうことはできないとして、引用商標の上側部分につき、全体として文字を表し たものと認識されるとみるのが自然であるとはいえないと主張する。
しかしながら、上記@については、前記ア(@)において挙示した証拠及び弁論の全趣旨によると、文字の一部を図案化して表すことが商取引において広く行われているなどの事実は、一般的によく知られているものと優に認めることができる。
また、上記A及びBについても、前記アにおいて説示したところに照らすと、具体的な商標である引用商標の上側部分について、これに接した取引者、需用者は、その読み方をあらかじめ知らなくても、これが「リフナビ」の文字を表すものと認識すると認めるのが相当である(なお、この点は、引用商標において図案化された部分(上側先頭左側部分)が文字部分(上側部分)の途中(文字と文字の間)ではなく先頭に配置されていること(当該図案化された部分の前後双方の文字による推測が働かないこと)により、結論が左右されるものではない。)。
(イ) 原告は、ピンマークは記号として取引者、需用者に広く認識されているごく一般的なものであり、需用者が一見すれば、地図上の位置を示す記号であると認識できるものであるから、取引者、需用者において、引用商標の上側先頭左側部分を文字の一部と認識するのは極めて例外的な場合であると主張する。
確かに、前記アのとおり、引用商標の上側先頭左側部分は、原告主張に係るピンマークのような形状に図案化されたものであるが、当該部分は、地図上に描かれたものではないし、また、前記アにおいて説示したところにも照らすと、引用商標に接した取引者、需用者が上側先頭左側部分を文字の一部を図案化したものであると認識するのは普通のことであるといえ、そのように認識するのが極めて例外的な場合に限られると認めることはできない。
また、原告は、引用商標の上側先頭左側部分(ピンマーク)は線でない形状のものであるから、上側先頭部分が一つの文字を表すものであるとすると、当該文字は線ですらない形状の部分を含むことになるとも主張するが、上記説示したとおり、
引用商標に接した取引者、需用者は、上側先頭左側部分につき、これが文字の一部を図案化したものであると普通に認識するといえるから、上側先頭左側部分が原告 主張に係るピンマークのような形状に図案化されていることをもって、上側先頭部分が線ですらない部分を含むことになるということはできない。
(ウ) 原告は、引用商標の上側先頭左側部分の色は上側その余の部分の色よりも薄くなっており、引用商標に接した需用者は上側先頭左側部分と上側その余の部分とが別々の構成のものであるとして両者を分離し、上側その余の部分だけが文字を表すものと認識するのであり、そのことは引用商標の実際の使用形態によっても裏付けられていると主張する。
しかしながら、引用商標を子細に観察しても、上側先頭左側部分の色は、上側その余の部分の色と比較して、ほぼ同じ濃さであるか(乙2)、かすかに薄い(甲12)としか見て取ることはできず、迅速を尊ぶ商取引において、引用商標に接した取引者、需用者が上側先頭左側部分と上側その余の部分とを別々の構成のものであるとしてこれらを分離し、上側その余の部分だけが文字を表すものと認識するほどに両者の色の濃さに有意な相違があるということはできない。なお、原告は、甲26に見られる引用商標の実際の使用形態(上側先頭左側部分及び下側部分並びに上側部分の右肩に付された「○」のマークが緑色で表され、上側その余の部分が黒色 Rで表されたもの)も上記主張を裏付けると主張するが、登録商標の範囲は、願書に記載した商標に基づいて定めなければならないところ(商標法27条1項)、願書に記載された引用商標(甲12、乙2)においては、甲26に見られる色分けはされていないのであるから、引用商標の実際の使用の場面において当該色分けがされていることを根拠に、引用商標に接した取引者、需用者が上側先頭左側部分と上側その余の部分とを別々の構成のものであるとしてこれらを分離し、上側その余の部分だけが文字を表すものと認識すると認めることはできない。
(エ) 原告は、引用商標の上側先頭右側部分とほとんど同じ角度及び長さで表記されたものが片仮名の「ノ」の文字を示すと認識させる登録商標(甲27)が存在すると主張する。
しかしながら、原告が主張する事実は、本件における引用商標の上側先頭右側部 分がどのように認識されるかについての判断を左右するものではない。なお、甲27に記載された登録商標のうち仮名文字部分の最右端の部分(商標公報に記載された称呼によると「ノ」と読まれる部分)と引用商標の上側先頭右側部分とを比較しても、両者がほとんど同じ角度及び長さで表記されていると見て取ることはできない。
(オ) 原告は、@片仮名の「ソ」の文字は、片仮名の「リ」の文字と似ていると認識されていること、A引用商標の指定役務の中に第35類「電子計算機・タイプライター又はこれらに準ずる事務用機器の操作」があること、B「ソフ」で始まる語が多数存在し、これらは、「リフレーション」、「リフレーン」等よりも一般的な語であることを根拠に、仮に引用商標の上側先頭左側部分が文字の一部を表すものと認識されるとしても、引用商標を見た需用者は、その上側部分から「ソフトウェア」と「ナビゲーション」の略語である「ソフナビ」の語を想起するとみるのが自然であると主張する。
しかしながら、上記@については、前記アのとおり、引用商標の上側先頭左側部分は、そのうちのとがった部分が略鉛直方向を向き、真上から真下に向かって縦に下ろしたように配されており、片仮名の「ソ」の文字の左側部分(通常は左上方向から右下方向に配されるもの)ではなく、片仮名の「リ」の文字の左側部分に近い形状をしていると認められることに照らして、当該主張が引用商標に該当するとはいえない。また、上記Aについては、引用商標の指定役務には、「ソフトウェア」の語とは余り親和性がないと認められる役務(「リラクゼーションマッサージ」等)も含まれており、引用商標の上側部分のうち先頭の2文字を見た取引者、需用者が普通に「ソフトウェア」の略語としての「ソフ」の語を想起すると認めることはできない。さらに、上記Bについても、確かに、証拠(甲36)及び弁論の全趣旨によると、「ソフ」で始まる語(「ソフトウェア」、「ソフトカバー」等)が複数存在することは認められるが、前記アにおいて説示したところに照らすと、これらの語が存在することをもって、引用商標の上側部分のうち先頭の2文字を見た取引者、
需用者が普通に「ソフトウェア」の略語としての「ソフ」の語を想起すると認めることはできない。そうすると、大学でノートを取る観点から片仮名の「ソ」と「リ」を形がよく似た字の例として挙げるウェブサイト(甲34)及び校正の観点から片仮名の「ソ」と「リ」を字形の似た文字の例として挙げるウェブサイト(甲35)が存在するとしても、引用商標を見た取引者、需用者において、その上側部分から「ソフトウェア」と「ナビゲーション」の略語である「ソフナビ」の語を想起するとみるのが自然であると認めることはできない。
4 本願商標と引用商標の類否について (1) 外観 本願商標の要部である「リフナビ」の文字部分と引用商標の要部である「リフナビ」の文字部分(上側部分)とを比較すると、両者は、@本願商標の構成中の「リ」の文字部分の左側の部分が図案化されたものでない(標準文字)のに対し、引用商標の上側先頭左側部分は、原告主張に係るピンマークのような形状に図案化されたものである点、A本願商標の構成中の「リ」の文字部分の右側の部分及び「フナビ」の文字部分がデザイン化されたものでない(標準文字)のに対し、引用商標の上側その余の部分は、若干のデザイン化がされたものである点において相違するが、前記3(3)ア(@)において説示したとおり、商取引においては、文字の一部を図案化して表示することが広く行われ、その中でも、片仮名の「リ」又は平仮名の「り」の各左側部分が図案化されている例や引用商標の上側先頭左側部分に類似する形状の図形(原告主張に係るピンマークのような形状の図形)が文字の一部として使用されている例が多数存在するものと認められること、引用商標の上側その余の部分のデザイン化の程度は、それほど顕著なものではないこと、本願商標の構成中の「リフナビ」の文字部分と引用商標の上側部分は、いずれも同じ片仮名4文字(「リ」、「フ」、「ナ」及び「ビ」)を同じ順序で配置したものであることなどの事情に照らすと、本願商標の要部及び引用商標の要部を見た取引者、需用者は、
両者を同一又は近似するものとして認識すると認められるから、本願商標の要部と 引用商標の要部は、外観において類似する。
(2) 称呼 本願商標の要部及び引用商標の要部からは、いずれも「リフナビ」の称呼が生じるから、両者は、称呼において共通する。
(3) 観念 前記2(2)において説示したところに照らすと、本願商標の要部及び引用商標の要部からは、いずれも特定の観念が生じない。
(4) 小括 以上によると、本願商標の要部と引用商標の要部は、いずれも特定の観念を生じさせるものではなく、その外観において類似し、その称呼において共通し、本願商標及び引用商標を同一又は類似の役務に使用するときは、役務の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるといえるから、本願商標と引用商標は、互いに類似するものと認めるのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法4条1項11号にいう「商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標に類似する商標」に該当する。
(5) 原告の主張について 原告は、本願商標と引用商標の類否についてるる主張するが、原告の各主張は、
本願商標につき「リフナビ」の文字部分を抽出する分離観察が許されないとの前提又は当該前提及び引用商標の上側部分が「ノフナビ」又は「ソフナビ」の文字を表すと認識されるとの前提に立つものであるから、前提を誤るものとして採用することができない。
5 結論 以上の次第であるから、原告が主張する審決取消事由は失当であり、原告の請求は理由がない。
追加
裁判長裁判官本多知成裁判官浅井憲裁判官勝又来未子 (別紙)商標目録1商標登録を受けようとする商標:リフナビ大阪(標準文字)2商品及び役務の区分並びに指定役務:第35類「インターネットによる広告、広告の代理、広告業、経営の診断又は経営に関する助言、事業の管理、市場調査又は分析、商品の販売に関する情報の提供、
職業のあっせん、コンピュータデータベースへの情報編集、コンピュータ又はコンピュータシステムの操作に関する運用管理、電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作、広告用具の貸与、求人情報の提供、新聞記事情報の提供」第44類「エステティック技術を用いた美容・理容に関する情報の提供、美容院・エステサロンの紹介・取次ぎ、美容・理容・あん摩・マッサージ・指圧・カイロプラクティック・きゅう・柔道整復・はりに関する情報の提供、育毛・増毛・植毛に関する情報の提供、育毛・増毛・植毛及び脱毛の予防に関する情報の提供、頭髪の発毛・育毛・増毛及びかつらの装着に関する情報の提供、美容、理容、リラクゼーションマッサージ・オイルマッサージ・リフレクソロジー・リンパマッサージの提供に関する情報の提供、マッサージの提供に関する情報の提供、あん摩・マッサージ及び指圧、カイロプラクティック、きゅう、柔道整復、整体、はり治療、温泉入浴施設に関する情報の提供、医療・歯科医業に関する情報の提供」以上 (別紙)引用商標目録1登録番号:商標登録第5937768号2商標権者:ひととひと商会株式会社3商標の構成:4商品及び役務の区分並びに指定役務:第35類「広告業、インターネットによる広告の代理、経営の診断及び指導、市場調査、商品の販売に関する情報の提供、商品の売買契約の仲介、広告用具の貸与、
職業のあっせん、電子計算機・タイプライター又はこれらに準ずる事務用機器の操作、輸出入に関する事務の代理又は代行、求人情報の提供」第44類「リラクゼーションマッサージ、オイルマッサージ、リフレクソロジー、
リンパマッサージ、タイ式マッサージ、美容、理容、あん摩・マッサージ及び指圧、
カイロプラクティック、きゅう、柔道整復、はり、リラクゼーションマッサージの提供に関する情報の提供、温泉入浴施設に関する情報の提供、美容・理容・あん摩・マッサージ・指圧・カイロプラクティック・きゅう・柔道整復・はりに関する情報の提供」5登録出願日:平成28年10月18日6設定登録日:平成29年4月7日以上