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関連審決 不服2022-4998
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事件 令和 5年 (行ケ) 10045号 審決取消請求事件
5
原告 株式会社医療情報技術研究所
同訴訟代理人弁理士 大野浩司 10 被告特許庁長官
同 指定代理人綾郁奈子
同 豊瀬京太郎
同 森山啓
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2023/09/28
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 15 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2022-4998号事件について令和5年3月16日にした20 審決を取り消す。
事案の概要
1 特許庁における手続の経過等(当事者間に争いがない) (1) 原告は、令和3年6月17日、別紙の構成からなる商標について、第7 類「産業用ロボット並びにその部品及び附属品」、第39類「荷役用ロボッ25 トの貸与,業務用の荷物運搬用自走式ロボットの貸与,梱包用ロボットの貸 与」及び第40類「半導体製造用ロボットの貸与,組立用ロボットの貸与, 1 金属加工用ロボットの貸与,食料加工用又は飲料加工用ロボットの貸与」を 指定商品及び指定役務として、商標登録出願を行った(以下、その商標を 「本願商標」という。 。
) (2) 原告は、令和4年3月10日付けで拒絶査定を受けたため、同年4月5 5 日、拒絶査定不服審判を請求した。
特許庁は、上記請求を不服2022-4998号事件として審理を行い、
令和5年3月16日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下 「本件審決」という。)をし、その謄本は同年4月3日原告に送達された。
(3) 原告は、令和5年4月27日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提10 起した。
2 本件審決の理由の要旨 本件審決の理由の要旨は、以下のとおりである。
(1) 本願商標をその指定役務に使用したときは、これに接する取引者、需要 者は、これを構成する文字から、ロボット・アズ・ア・サービスで貸与され15 る「産業用ロボット並びにその部品及び付属品」、又はロボット・アズ・ ア・サービスにおける「荷役用ロボットの貸与,業務用の荷物運搬用自走式 ロボットの貸与,梱包用ロボットの貸与,半導体製造用ロボットの貸与,組 立用ロボットの貸与、金属加工用ロボットの貸与,食料加工用又は飲料加工 用ロボットの貸与」であること、すなわち、商品の品質、用途又は役務の質、
20 提供の用に供する物、提供の方法を認識するにとどまるというべきであって、
本願商標は、役務の質を普通に用いられる方法で表示するにすぎない。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
(2) また、本願商標を上記商品及び役務以外の商品又は役務に使用するとき は、商品の品質又は役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるから、本願商25 標は、商標法4条1項16号に該当する。
3 取消事由 2 (1) 商標法3条1項3号該当性の判断の誤り (2) 商標法4条1項16号該当性の判断の誤り
当事者の主張
1 取消事由1(商標法3条1項3号該当性の判断の誤り)について 5 (1) 原告の主張 本件審決で挙げられた証拠によっても、「RaaS」は「Robot a s a Service」の頭文字の集合体にすぎず、「RaaS」自体に 特定の意味はないことが表されている。そうすると、これに接する取引者、
需要者は、「RaaS」から商品又は役務の特徴等を認識できないというべ10 きであり、本願商標が商標法3条1項3号に該当するということはできない。
(2) 被告の主張 後記第4の1と同趣旨であるから、詳細は割愛する。
2 取消事由2(商標法4条1項16号該当性の判断の誤り) (1) 原告の主張15 「RaaS」から特定の意味が看取できない以上、品質の誤認も生じな いので、本願商標が商標法4条1項16号に該当するということはできない。
(2) 被告の主張 後記第4の2と同趣旨であるから、詳細は割愛する。
当裁判所の判断
20 1 取消事由1(商標法3条1項3号該当性の判断の誤り)について (1) 商標法3条1項3号は、「その商品の産地、販売地、品質、原材料、効 能、用途、形状(包装の形状を含む。・・・)、生産若しくは使用の方法若し くは時期その他の特徴、数量若しくは価格又はその役務の提供の場所、質、
提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の25 特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからな る商標」は、商標登録を受けることができない旨を規定しているが、これは、
3 同号掲記の標章は、商品の産地、販売地その他の特性を表示、記述する標章 であって、取引に際し必要な表示として誰もがその使用を欲するものである から、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであ るとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合、自他商品・役 5 務識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないことから、登録を許さな いとしたものである。
(2) 本願商標は、別紙のとおり、上段に「ラース」の片仮名、下段に「Ra aS」の欧文字を、普通に用いられる方法で二段に表してなるものである。
そして、証拠(乙1〜21)及び弁論の全趣旨によれば、下段の「RaaS」10 の欧文字は、ロボット・アズ・ア・サービス(「Robot as a S ervice」又は「Robotics as a Service」)の 略で、「ロボットをサービスとして提供・利用することができるサービスで あり、ロボット本体やロボットを制御するシステムを自社でつくり運用する のではなく、ロボット本体をレンタルし、クラウド上にある制御システムを15 利用するしくみ」を意味するものとして、上段の「ラース」の文字はその読 み方として一般に用いられていること、このような意味における「ロボッ ト・アズ・ア・サービス(RaaS)」の概念は、本願の指定商品及び指定 役務に係る物流業界、製造業界、金属加工業界、食品加工業界を含む産業界 において注目を集め、実際に、一部の業界において、「RaaS(ラース)」20 と称されてロボットが提供(貸与)されていることが認められる。
そして、本願商標は、上段に「ラース」の片仮名を、下段に「RaaS」 の欧文字を二段に表してなるものであるが、特に図案化がされているもので もなく、普通に用いられる方法で表示されたものである。
(3) そうすると、「RaaS」の欧文字及びその読み方を表した「ラース」25 の片仮名を二段に表したにすぎない本願商標に接した取引者、需要者は、
「ロボットをサービスとして提供・利用することができるサービスのための 4 ロボット並びにその部品及び附属品」及び「ロボットをサービスとして提 供・利用することができるサービスのためのロボットの貸与」を意味するも のと理解し、本願の指定商品及び指定役務との関係においては、本願商標は、
商品の品質、用途及び役務の質、提供の用に供する物、提供の方法を表した 5 ものと認識するにとどまるというべきである。
よって、本願商標は、商品の品質、用途及び役務の質、提供の用に供す る物、提供の方法を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標 であるから、商標法3条1項3号に該当する。
(4) これに対し、原告は、「RaaS」自体に特定の意味がなく、「RaaS」10 から商品又は役務の特徴等を認識できないと主張する。
しかしながら、前記のとおり、本願商標を構成する「RaaS」 「ラー 、
ス」の文字は、ロボット・アズ・ア・サービス(ロボットをサービスとして 提供・利用することができるサービス)を意味するものとして用いられてい ること、このような意味における「RaaS(ロボット・アズ・ア・サービ15 ス)」の概念は、本願の指定商品及び指定役務に係る物流業界、製造業界、
金属加工業界、食品加工業界においても注目を集めていることが認められる のであって、「RaaS」が頭文字の集合体であるからといって、それ自体 から特定の意味を認識させないとはいえない。
(5) 以上のとおりであって、本願商標が商標法3条1項3号に該当するとし20 た本件審決の判断に誤りはない。
2 取消事由2(商標法4条1項16号該当性の判断の誤り)について 本願商標の「RaaS」からは,「ロボットをサービスとして提供・利用す ることができるサービスであり、ロボット本体やロボットを制御するシステム を自社でつくり運用するのではなく、ロボット本体をレンタルし、クラウド上25 にある制御システムを利用するしくみ」を意味するものとして一般に用いられ ていることは前記1(2)のとおりである。このような本願商標を「ロボットを 5 サービスとして提供・利用することができるサービスのためのロボット並びに その部品及び附属品」及び「ロボットをサービスとして提供・利用することが できるサービスのためのロボットの貸与」以外の指定商品及び指定役務に使用 するときは、当該商品及び役務が、あたかも「ロボットをサービスとして提 5 供・利用することができるサービスのためのロボット並びにその部品及び附属 品」及び「ロボットをサービスとして提供・利用することができるサービスの ためのロボットの貸与」であるかのように、商品の品質及び役務の質の誤認を 生ずるおそれがある。
よって、本願商標は商標法4条1項16号に該当し、この点に関する本件審10 決の判断に誤りはない。
3 結論 以上によれば、本願商標は商標法3条1項3号、同法4条1項16号に該当 するから、原告主張の取消事由はいずれも理由がなく、本件審決にこれを取り 消すべき違法は認められない。
15 したがって、原告の請求を棄却することとして、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 宮坂昌利