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事件 |
令和
4年
(ワ)
9818号
商標権侵害差止等請求事件
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5 原告株式会社ブレイン 同代表者代表取締役 同訴訟代理人弁護士 秦周平 同 田尾賢太 10 同高橋翔志 同 補 佐人弁理士仲晃一 同 田中勲 被告リンクサス株式会社 15 同代表者代表取締役 同訴訟代理人弁護士 北川修平 |
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裁判所 | 大阪地方裁判所 |
判決言渡日 | 2023/12/19 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 20 事 実 及 び 理 由第1 請求1 被告は、別紙商品目録記載1ないし7の商品(以下、「対象商品1」などといい、これらを併せて「対象商品」という。)に「熱中対策応急キット」なる標章(以下「被告標章」という。)を付し、又は被告標章を付した対象商品を販売し、 25 販売のために展示し、若しくはこれに関する広告に被告標章を付してはならない。 2 被告は、対象商品及びこれに関する広告から被告標章を抹消せよ。 13 被告は、原告に対し、81万2000円及びこれに対する令和4年11月22日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要1 本件は、原告が、被告に対し、「熱中対策応急キット」との被告標章を付し5 た対象商品の販売及び対象商品に関する広告に被告標章を付するといった被告の行為は、原告の別紙商標権目録記載の商標権(以下「本件商標権」といい、本件商標権に係る商標を「本件商標」という。)を侵害するものであるとして、商標法(以下「法」という。)36条1項に基づき、前記販売等の行為の差止めを求め、同条2項に基づき、対象商品及びこれに関する広告から被告標章を抹消するよう求める10 とともに、不法行為に基づき、損害賠償金81万2000円及びこれに対する令和4年11月22日(訴状送達日の翌日であり、不法行為よりも後の日)から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(争いのない事実、掲記の証拠〔枝番号を含む。以下同じ。〕及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)15 (1) 当事者原告は、安全衛生保護用具、防災機器類の販売等を目的とする株式会社である。 被告は、安全衛生保護具、防災用品の販売等を目的とする株式会社である。(以上につき、争いがない。)(2) 原告による商標登録20 原告は、別紙商標権目録記載のとおり、令和3年4月13日に「熱中対策応急キット」(標準文字)との商標の登録出願をし、令和4年2月28日の登録査定(以下、同日のことを「本件査定日」という。)を経て、同年3月11日に登録されており、現在、本件商標権を有している(争いがない事実、甲3)。 (3) 本件商標と被告標章の対比及び被告による被告標章の使用25 ア 本件商標と被告標章は、同一又は類似している(争いがない。)。 イ 本件商標の指定商品と、対象商品1ないし6は、同一又は類似している(争2いがない。)。 ウ 被告は、平成31年4月から、サプリメント(対象商品1と類似)、カード式温度計(同2と類似)、収納バッグ(同3と類似)、瞬間冷却材(同4と類似)、 冷感タオル(同5と類似)及び飲料水(同6と類似)を一つのセットとした商品5 (前記収納バッグのみの商品を含む。以下「被告商品」という。)につき、前記収納バッグに被告標章を付して「熱中対策応急キット」の名称で販売し、又は被告商品に関する広告に被告標章を付して、被告標章の使用を継続していた(争いがない事実、甲5、乙22〜27)。 3 争点10 (1) 本件商標の法3条1項3号に基づく無効理由の有無(争点1)(2) 被告標章の法26条1項2号該当性(争点2)(3) 被告標章の法26条1項6号該当性(争点3)(4) 本件商標権に基づく本訴請求は権利の濫用に当たるか(争点4)(5) 損害の発生及びその額(争点5)15 (6) 差止め等の必要性(争点6)4 当事者の主張(1) 本件商標の法3条1項3号に基づく無効理由の有無(争点1)〔被告の主張〕本件商標の構成中、「熱中対策」の文字は、本件査定日の時点で、「熱中症対策」20 の意味で用いられている実情がある。また、「熱中対策応急キット」の文字は、熱中症の対策又は応急処置に用いる複数の商品をバッグに入れて一まとめにしたキットを表すものとして用いられている実情があり、実際に商品として販売されているキットには、本件商標の指定商品(以下「本件指定商品」という。)と同一又は類似し、熱中症の対策又は応急処置に利用可能な商品が含まれている。 25 すなわち、ウェブサイトやカタログ等の記載によると、ミドリ安全株式会社(以下「ミドリ安全」という。)においては平成24年から、中央労働災害防止協会に3おいては平成25年から、株式会社つくし工房においては遅くとも平成27年から、 ユニット株式会社においては少なくとも令和2年の時点で、株式会社レンタルのニッケンにおいては少なくとも令和3年及び令和4年の時点で、エスアールエス株式会社においては少なくとも令和4年(本件査定日と同時期頃)の時点で、それぞれ5 前記の状況を認めることができる。また、被告においては、平成31年4月から令和4年にかけて、「熱中対策」の文字列が「熱中症対策」を意味するものとして、 「熱中対策応急キット」との被告標章を用いて被告商品の広告販売を継続してきた。 さらに、原告自身も、平成28年から、「熱中対策」の文字列を「熱中症対策」の意で用いて、「熱中対策キット」等の名称を付した熱中症対策に関する商品の広告10 販売を行ってきている。 そうすると、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する需要者は、 単に熱中症の対策又は応急処置のためのキットに含められる商品であること、すなわち、単に商品の用途を普通に用いられる方法で表示したものとして認識し理解するから、本件商標は法3条1項3号に該当する。 15 〔原告の主張〕本件商標は、「熱中」(物事に心を集中すること。夢中になってすること。また、 熱烈に思うこと。)、「対策」(相手の態度や事件の状況に応じてとる方策。)、 「応急」(急場のまにあわせ。)、「キット」(組立て模型などの部品一式。工具・用具一式。)の各語から構成されるところ、この中に、「熱中症」(高温や多湿20 の環境下で起こる障害の総称。)(括弧内の意味はいずれも広辞苑による。)を想起させる意味内容は存在せず、前記各語をいかに組み合わせようとも、本件商標をもって、需要者に対して熱中症対策の商品であるとの認識を与えることにはなり得ない。実際にも、例えば、ミドリ安全のウェブサイトにおいては、「熱中対策応急キット」との名称の商品の説明書きとして「熱中症予防」の文言が用いられており、 25 これは、「熱中対策」という商品名だけでは熱中症対策という意味が伝わらないことの証左である。 4また、「熱中対策」との語句の使用は一般に普及しておらず、被告が挙げる「熱中対策応急キット」の複数の販売事例は、製造業者であるミドリ安全が他の法人に販売した商品につき、当該法人が同じ商品名で販売等を行っているにすぎない。そして、ミドリ安全を含む各法人とも、「熱中対策応急キット」との標章を他の語句5 と明確に区別して商品名として使用していることからすると、同標章は記述的商標には該当しない。 以上のことからすると、本件商標は、法3条1項3号に該当するものではない。 (2) 被告標章の法26条1項2号該当性(争点2)〔被告の主張〕10 前記(1)〔被告の主張〕からすれば、被告標章を、被告商品に付して販売し、又は、被告商品に関する広告に付したとしても、当該被告標章の使用は、「指定商品若しくはこれに類似する商品の…用途…を普通に用いられる方法で表示する商標」(法26条1項2号)に該当する。 〔原告の主張〕15 前記(1)〔原告の主張〕からすれば、被告標章は、法26条1項2号には該当しない。 (3) 被告標章の法26条1項6号該当性(争点3)〔被告の主張〕前記(1)〔被告の主張〕からすれば、被告標章は、「需要者が何人かの業務に係20 る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標」(法26条1項6号)に該当する。 〔原告の主張〕被告による被告標章の使用態様は、被告のウェブサイト上で「熱中対策応急キット」と単独で大きく表示したり、チラシの左上部分に白抜きで「熱中対策応急キッ25 ト」と大きく表示したりするものであり、また、被告商品の収納バッグの表面には「熱中対策応急キット」と大きく目立つように表示されている。 5以上のとおり、被告標章は、明らかに自他商品識別標識たる商標として使用されているものであるから、法26条1項6号には該当しない。 (4) 本件商標権に基づく本訴請求は権利の濫用に当たるか(争点4)〔被告の主張〕5 本件商標の出願日(令和3年4月13日)及び登録日(令和4年3月11日)の時点において、被告は、熱中症の対策又は応急処置に用いる複数の商品をバッグに入れて一まとめにしたキット(被告商品)について、「熱中対策応急キット」の名称(被告標章)で販売を継続していた一方で、原告は、前記と同様のキットについて、「熱中対策キット」等の名称で販売をするのみであり、「熱中対策応急キット」10 の名称での販売をしたことはなく、また、これらの状況を認識していた。 そうすると、原告は、「熱中対策応急キット」との被告標章に係る信用は被告に正当に帰属し、原告には帰属しないことを認識していたにもかかわらず、専ら被告に対して被告商品の販売を停止させ、損害賠償金を得る目的で、本件商標の出願・登録を経た上で本訴提起に及んだものであるから、本訴請求は権利の濫用に当たる。 15 〔原告の主張〕原告は、本件商標の出願以前に「熱中対策応急キット」との名称を表示した製品を販売したことがあるし、現在も本件商標を使用して販売活動を行っている。すなわち、本件商標を利用して商品を販売する目的の下に本件商標の出願を行ったものであり、先願主義及び登録主義を採用した法の趣旨及び目的を没却するような不当20 な目的は有していない。 また、被告の長年の販売活動等による信用や顧客誘引力が「熱中対策応急キット」との標章(被告標章)に化体していたというような特別な事情は存在しないし、被告は、被告商品の販売を開始した平成31年4月以降、被告標章について商標登録出願を行う機会を有していたにもかかわらず、これを行わなかったことなどからす25 ると、被告標章の使用の意思は希薄であったといえる。 以上のことからすると、法の原則を制限してまで、被告標章につき被告を保護す6べき特別な事情があるとはいえないから、被告の権利濫用の抗弁は認められない。 (5) 損害の発生及びその額(争点5)〔原告の主張〕被告は、令和4年4月から同年8月までの間に、被告商品を1個当たり17965 円の価格で、1か月当たり400個販売したところ、1個当たりの利益は406円(仕入価格1390円と前記販売価格との差額)であるから、前記期間に被告は少なくとも81万2000円(406円×400個×5か月)の利益を得ている。 したがって、原告は、被告による本件商標権の侵害により、少なくとも同金額の損害を受けたものと推定される(法38条2項)。 10 〔被告の主張〕争う。 (6) 差止め等の必要性(争点6)〔原告の主張〕被告は、本件訴訟の係属後も被告標章を付した商品の販売を行っているから、そ15 の差止め等の必要性がある。 〔被告の主張〕争う。 第3 当裁判所の判断1 認定事実20 前記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば次の事実が認められる。 (1) ミドリ安全は、昭和27年に設立された、令和3年5月期の売上高1180億円の企業であるところ、平成24年に「熱中対策商品カタログ2012」を作成し、同カタログにおいて、「熱中対策応急キット」との標章が収納バッグに付され、熱中症に応急的に対応するための物品一式が同収納バッグに収納された、「熱25 中対策応急キット」との名称の商品(同商品のデラックス版を含む。)の広告販売を行い、その後も同商品の広告販売を継続した。 7前記収納バッグの内容物は、時期により若干異なるものの、食塩又は経口補水パウダー、液晶体温計、瞬間冷却剤、圧縮タオル、飲料水等であり、前記収納バッグを含め、本件商標に係る商品の区分ごとに本件指定商品と同一又は類似の商品を含んでいる(例えば、「第5類 タブレット状サプリメント、その他のサプリメント」5 に類似するものとして前記食塩又は経口補水パウダーがあり、「第18類 ポーチ、 かばん類」と同一又は類似するものとして前記収納バッグがある。)。(以上につき、前記前提事実(2)、乙8〜11、50〜54)(2) 中央労働災害防止協会は、労働災害防止団体法に基づき昭和39年に設立された法人であるところ、平成25年から、ミドリ安全が製造した「熱中対策応急10 キット」との名称の商品(前記(1))の広告販売を開始し、その後も同商品の広告販売を継続した(乙5〜7)。 (3) 株式会社つくし工房は、 昭和42年に設立された、資本金5000 万 円(令和5年2月時点)の企業であるところ、平成27年に、前記(1)の「熱中対策応急キット」との名称の商品と同一又は類似の商品(同商品のデラックス版を含15 む。)につき、同じ名称で広告販売を行い、その後も同商品の広告販売を継続した。 また、同社は、平成27年及び平成28年には、これらと内容物が類似する「つくしの熱中対策応急セット」などの名称の商品の広告販売も行っていた。(乙14、 15、44、45)(4) ユニット株式会社は、昭和44年に設立された、令和2年3月期の売上高20 8 1 億 1000万円の企業であるところ、 少なくとも令和2年には、 前記 (1)の「熱中対策応急キット」との名称の商品と同一又は類似の商品(同商品のデラックス版を含む。)につき、同じ名称で広告販売を行った(乙12、13)。 (5) 株式会社レンタルのニッケンは、昭和42年に設立された、令和4年3月期の売上高1138億円の企業であるところ、少なくとも令和3年及び令和4年に25 は、前記(1)の「熱中対策応急キット」との名称の商品と同一又は類似の商品(同商品のデラックス版を含む。)につき、「熱中対策応急キット2」ないし「熱中対8策応急キットDX2」との名称で広告販売を行った。また、同社は、令和4年には、 これらと内容物が類似する「熱中対策キット」や「熱中対策応急セット」などの名称の商品の広告販売も行った。(乙17、18)(6) エスアールエス株式会社は、平成4年に設立された、令和3年12 月期の5 売上高126億6000万円の企業であるところ、少なくとも令和4年には、前記(1)の「熱中対策応急キット」との名称の商品と同一又は類似の商品(同商品のデラックス版を含む。)につき、「熱中対策応急キット U」ないし「熱中対策応急キットDX U」との名称で広告販売を行った。また、同社は、同年に、これらと内容物が類似する「熱中対策応急セット」との名称の商品の広告販売も行った。 10 (乙19、20)(7) 原告は、平成28年に「熱中対策2016」と題する「熱中対策用品総合カタログ」を作成し、同カタログにおいて、「熱中症対策キット」との標章がポーチに付され、熱中症に応急的に対応するための物品一式が同ポーチに収納された、 「熱中症対策キット」との名称の商品(同商品のデラックス版を含む。)の広告販15 売を行った。 また、原告は、平成31年(令和元年)には、「熱中対策カタログ2019vol.9−2」を作成し、同カタログにおいて、「熱中対策キット」との標章がポーチに付され、熱中症に応急的に対応するための物品一式が同ポーチに収納された、 「熱中対策キット」との名称の商品(同商品のデラックス版、ミニ版、スケルトン20 バッグタイプを含む。)の広告販売を行い、その後も同商品の広告販売を継続した。 さらに、原告は、令和5年には、「熱中対策応急キット」との標章がポーチに付され、熱中症に応急的に対応するための物品一式(前記(1)の「熱中対策応急キット」と類似の内容物)が同ポーチに収納された、「熱中対策応急キット」との名称の商品の広告販売を開始した。(以上につき、甲47、乙28〜32)25 (8) 被告は、平成31年4月から、「熱中対策応急キット」との標章が収納バッグに付され、熱中症に応急的に対応するための物品一式(前記(1)の「熱中対策9応急キット」と類似の内容物)が同収納バッグに収納された、「熱中対策応急キット」との名称の商品(被告商品)の広告販売を開始し、その後も同商品の広告販売を継続した(前記前提事実(3)ウ)。 2 本件商標の法3条1項3号に基づく無効理由の有無(争点1)について5 (1) 本件商標が、その指定商品について商品の用途を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるというためには、本件査定日(令和4年2月28日)の時点において、当該商標が当該商品との関係で商品の用途を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、当該商標の取引者、需要者によって当該商品に使用された場合に、将来を含め、商品の用途を表示したものと一般に10 認識されるものであれば足りると解される。そして、当該商標の取引者、需要者によって当該商品に使用された場合に商品の用途を表示したものと一般に認識されるかどうかは、当該商標の構成やその指定商品に関する取引の実情を考慮して判断すべきである。 (2)ア 本件商標は、「熱中対策応急キット」の文字を標準文字で表してなり、 15 本件商標を構成する文字は、同じ大きさ及び書体で、等間隔かつ横一列にまとまりのある態様で並べられている。そうすると、本件商標は、取引者及び需要者に、これを構成する文字の全体をもって、一連一体の語を表すものとして理解されると考えられる。 イ 本件商標中の「熱中」、「対策」、「応急」及び「キット」の4つの語は、 20 それぞれ、「物事に心を集中すること。夢中になってすること。また、熱烈に思うこと。」、「相手の態度や事件の状況に応じてとる方策。」、「急場のまにあ わせ。」、「組立て模型などの部品一式。工具・用具一式。」といった意味を一般に有するところ(いずれも広辞苑第七版、平成30年1月発行)、これらの語を字義どおりに捉えると、「熱中対策応急キット」の語全体から、熱中症の対策又は応急25 処置に用いる物品ないしそれらをバッグに入れて一まとめにしたものといった意味合いが直ちに導かれるものではない。 10もっとも、「熱中」との語は、「熱中症」との3文字の語のうち、「症状」を示すものと解される「症」の文字を除く2文字と一致しており、「熱中症」との語の一部を示すものとみても不自然とはいえない。 ウ 取引の実情をみると、前記認定事実のとおり、「熱中対策応急キット」との5 標章が付された商品(本件商標に係る商品の区分ごとに本件指定商品と同一又は類似の商品を含んでいるもの)は、平成24年頃から本件査定日(令和4年2月28日)までに、ミドリ安全を中心とする多数の法人(被告を含む。)において、熱中症に応急的に対応するための物品一式として広告販売されている状況が認められる。 一方、前記イの「熱中」の語の意味(物事に心を集中すること。夢中になってする10 こと。また、熱烈に思うこと。)を踏まえて、これに対応するといった用途に用いられる商品が、「熱中対策応急キット」ないし「熱中対策」との標章を付して広告販売されている事実を認めるに足りる証拠はない。なお、原告も、平成31年(令和元年)から、熱中症に対応するための物品一式が収納されたポーチに「熱中対策キット」との標章を付して広告販売している上、令和5年には、熱中症に応急的に15 対応するための物品一式がポーチに収納された「熱中対策応急キット」との名称の商品の広告販売を開始している(前記認定事実(7))。 エ 以上を総合すると、「熱中対策」の語は、本件査定日の時点で、「熱中症対策」との意味でも一般的に理解され、「熱中対策応急キット」の語は、熱中症の対策又は応急処置に用いる物品一式ないしそのような物品を含む商品との意味を有す20 ることが一般に認識されていたことが認められる。そして、本件指定商品は、熱中症の対策又は応急処置に用いる物品ないしそれらを収納するポーチ等(それらの全部又は一部を組み合わせたものを含む。)の商品に含まれると認められるところ、 標準文字で表される「熱中対策応急キット」との本件商標がかかる商品に使用された場合、当該商品の取引者又は需要者によって、当該商品の用途を示すものとして25 一般に認識される状態となっていたといえる。そうすると、「熱中対策応急キット」との本件商標は、指定商品に使用された場合、商品の用途を普通に用いられる方法11で表示する標章のみからなる商標として、法3条1項3号に該当するものと解するのが相当である。 (3) したがって、本件商標は、法3条1項3号に違反して登録されたものであり、無効審判により無効とされるべきものであるから、原告は、被告に対し、本件5 商標権を行使することができない(法46条1項1号、39条、特許法104条の3第1項)。 3 結論よって、その余の争点につき判断するまでもなく、原告の請求にはいずれも理由がないから、これらを棄却することとして、主文のとおり判決する。 10 大阪地方裁判所第21民事部15 裁判長裁判官武 宮 英 子20裁判官阿 波 野 右 起2512裁判官峯 健 一 郎13(別紙)商 品 目 録1 サプリメント5 2 カード型温度計3 ポーチ、かばん4 保温保冷具、再利用可能な代用氷、水筒、飲料用断熱容器、携帯用クーラーボックス(電気式のものを除く。)、保温袋5 布製身の回り品、タオル10 6 飲料水、清涼飲料、果実飲料、飲料用野菜ジュース、乳清飲料7 前記1ないし6の商品の全部又は一部を組み合わせて販売する商品以 上14(別紙)商 標 権 目 録登録番号 第6526506号5 出願日 令和3年4月13日登録査定日 令和4年2月28日登録日 令和4年3月11日商品の区分・指定商品第5類 タブレット状サプリメント、その他のサプリメント10 第9類 カード型温度計第18類 ポーチ、かばん類第21類 化学物質を充てんした保温保冷具、再利用可能な代用氷、 水筒、飲料用断熱容器、携帯用クーラーボックス(電気式のものを除く。)、保温袋15 第24類 布製身の回り品、タオル第32類 飲料水、清涼飲料、果実飲料、飲料用野菜ジュース、乳清飲料商 標 熱中対策応急キット(標準文字)以 上2015 |
事実及び理由 | |
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全容
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