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関連審決 不服2022-13794
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事件 令和 5年 (行ケ) 10114号 審決取消請求事件
5
原告X
同訴訟代理人弁理士 西村知浩
被告 特許庁長官 10 同指定代理人岩谷禎枝 豊田純一 清川恵子
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2024/04/17
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
15 2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2022-13794号事件について令和5年8月18日にした審 決を取り消す。
20 第2 事案の概要 本件は、別紙商標目録記載の商標(以下「本願商標」という。)に係る商標登録 出願の拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。争点 は、@本願商標が商標法3条1項3号に掲げる商標に該当するか否か、A本願商標 が同条2項に規定する商標に該当するか否か、B本願商標が同法4条1項16号に25 掲げる商標に該当するか否かである。
1 特許庁における手続の経緯等(争いがない事実及び当裁判所に顕著な事実以 外の事実については、後掲証拠及び弁論の全趣旨で認定した。) 原告は、令和3年8月18日、本願商標について商標登録出願(商願2021- 102625号)をしたところ(甲1)、令和4年6月1日付けで拒絶査定を受け た。そこで、原告は、同年9月2日、同拒絶査定に対する不服審判の請求(不服2 5 022-13794号)をした。
特許庁は、令和5年8月18日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審 決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同年9月22日、原告に送達 された。
原告は、令和5年10月18日、本件審決の取消しを求めて本件訴えを提起した。
10 2 本件審決の理由の要旨 (1) 本願商標の商標法3条1項3号該当性及び同法4条1項16号該当性につ いて 本願商標は、「Tibetan Tiger」の文字を標準文字で表してなると ころ、その構成中の「Tibetan」の文字は、「チベット(文化)の」(「ベ15 ーシックジーニアス英和辞典第2版」(株式会社大修館書店))の意味を有する英 語であり、「Tiger」の文字は、「トラ」(前掲書)の意味を有する英語であ るから、本願商標は、構成全体として「チベットのトラ」ほどの意味合いを容易に 理解させ、又は認識させるものである。
そして、本願商標の指定商品中の「じゅうたん、敷物、ラグ」との関係において、
20 チベットやネパールは、じゅうたんの生産地及び販売地として世界的に知られてお り、じゅうたんは、チベット民族の伝統的な手工芸品であって、チベット民族やネ パールに在住しているチベット難民によって手織りされているじゅうたんは、「チ ベットじゅうたん」と称されていることが認められ、また、「チベットじゅうたん」 の中でもトラをモチーフとするものは、位の高い僧侶のために作られていたことか25 ら由緒あるものと言われ、トラの図柄を描き、又はトラの形状を模した「チベット じゅうたん」は、生産地及び販売地の地域を表す語(チベタン(Tibetan) 又はチベット(Tibet))とトラを意味する「Tiger(タイガー)」とを 組み合わせて、「Tibetan Tiger (Rug)」、「チベタンタイガ ー(ラグ)」、「チベットタイガー(カーペット)」などと称されていることが認 められる。
5 そうすると、「Tibetan Tiger」の文字からなる本願商標をその指 定商品中の「トラの図柄を描き、又はトラの形状を模したじゅうたん、敷物又はラ グ(チベットで生産され、又は販売されるもの)」(以下「本件商品」という。) に使用しても、これに接する取引者、需要者は、本願商標が単に商品の産地、販売 地又は品質を表示したものであると理解するにとどまり、これが自他商品の識別標10 識であるとは認識しないというべきである。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当し、また、本件商品以外の 「じゅうたん、敷物、ラグ」について使用されるときは、商品の品質の誤認を生ず るおそれがあるから、同法4条1項16号に該当する。
(2) まとめ15 以上のとおり、本願商標は、商標法3条1項3号及び同法4条1項16号に該当 するものであるから、登録することができない。
原告主張の審決取消事由
1 取消事由1(商標法3条1項3号該当性についての判断の誤り)について (1) 「Tibetan Tiger」の語(本願商標)の意味合いについて20 我が国の取引者、需要者にとって、「チベット」の地名は、必ずしも著名なもの ではなく、「チベット」がどこの地域を意味するのかについて、取引者、需要者が 正確かつ共通の認識を有しているわけでもない。また、「チベットトラ」というト ラは存在しないため、「チベットトラ」の語も、取引者、需要者にとってなじみの ないものである。
25 したがって、「Tibetan Tiger」(本願商標)は、一つの意味合い を生ずる一種の造語を表したものであると認識されるのであって、「チベットに生 息するトラ」、「チベットのトラ」などと同義ではないし、また、「チベットに生 息するトラ」、「チベットのトラ」などを直接的かつ具体的に表示するものでもな い。なお、「チベット」の語と「トラ」の語が接続されることにより、どのような 観念が生まれるのかは不明である。
5 (2) 本願商標とその指定商品との関係について ア ある商標が商標法3条1項3号に掲げる商標に該当するといえるためには、
当該商標が商品又は役務の特徴等を直接的に表示するものであることを要し、当該 商標が当該特徴等を間接的に表示するにとどまるときは、当該商標は、同号に掲げ る商標に該当しないものと解するのが相当である。
10 イ 本願商標の指定商品は、トラの体、肉又は内臓を直接使用した商品であると 一概にいえるものではないから、本願商標は、その指定商品の特徴等を間接的に表 示するにとどまり、当該特徴等を直接的かつ具体的に表示するものであるとはいえ ない。また、仮に、本願商標を本件商品について使用した場合に、商品の産地、販 売地、品質等が想起されるとしても、本願商標は、そのような産地等に係る意味合15 いを間接的に表示するにとどまり、商品の産地等の特徴を直接的かつ具体的に特定 するものではない。
ウ 本件商品について使用された場合に商品の産地、販売地又は品質を表示する にすぎないとされ得る商標は、「チベット」、「トラじゅうたん」、「トラ敷物」、
「トララグ」等の語からなる商標であって、本願商標ではない。
20 エ 本件審決が依拠した各記事(甲15から24まで(甲22を除く。)の各記 事及び「カワチェンネットショップ」(甲22)に掲載されていたとされる記事) について (ア) 甲15から24まで(甲22を除く。)の各記事及び「カワチェンネット ショップ」(甲22)に掲載されていたとされる記事は、いずれもウェブサイトに25 掲載されたものであるところ、無名の個人らによって作成された公平性及び正確性 に欠けるウェブサイト上の記事の存在をもって、取引者、需要者の認識の根拠とす るのは相当でない。商標法3条1項3号該当性の判断の根拠となる証拠は、有識者 によって多くの考察及び検査が重ねられた書物(広辞苑等の辞典及び辞書)に限ら れると解すべきである。
(イ) 甲15から18までの各記事によっても、「チベット」、「チベット絨毯」 5 等の語が我が国において周知又は著名であるということはできない。また、仮に 「チベット」、「チベット絨毯」等の語が我が国において周知又は著名であったと しても、その場合に商標法3条1項3号に掲げる商標に該当し得る商標は、「チベ ット」、「チベット絨毯」等からなる商標であり、「Tibetan Tiger」 からなる本願商標ではない。
10 (ウ) 甲19から24まで(甲22を除く。)の各記事は、商品販売のウェブサ イト(甲24を除き余り知られていないもの)における記事であり、商品の販売促 進のためのマーケティングの手段として記載されているものであるし、これらの記 事の内容の真偽を確かめる手段もないから、これらの記事によって、本件商品に係 る取引者、需要者の共通の認識を認定することはできない。なお、これらの記事に15 みられる「Tibetan Tiger Rug」又は「チベタンタイガーラグ」 との名称は、「Tibetan Tiger」(本願商標)と類似するものではな い。また、本件商品の品質は、「トラの図柄を付したものであるか」のみならず、
「トラの体毛を使ったものであるか」、「トラの皮を使ったものであるか」、「ト ラの形状にデザインしたものであるか」、「宗教的にトラと何らかのつながりがあ20 るか」など多岐にわたるものであるから、上記の各記事に掲載された唯一の例(ト ラ柄のラグ)は、商品の品質を一義的に特定するものではない。
(エ) 「カワチェンネットショップ」(甲22)に掲載されていたとされる記事 は、現在は存在しない。
オ 乙1から60までについて25 乙1から60までは、審査及び審判の段階で提示されたものではないから、この ような証拠を本件訴訟において提出することは許されない(最高裁昭和51年3月 10日大法廷判決(昭和42年(行ツ)第28号)民集30巻2号79頁。以下 「最判昭和51年」という。)。
(3) 不合理な差別等 特許庁は、これまで、地名又は地域名の文字及び動物名の文字からなる多数の商 5 標について、その商標登録を許してきた。本願商標も、商標登録に値する商標であ る。それにもかかわらず、本願商標の商標登録だけを拒絶するのは、憲法14条に 反し、国家公務員による職権濫用に該当する。
(4) 小括 以上のとおりであるから、本件審決は、商標法3条1項3号若しくは憲法14条10 に反してされ、又は国家公務員による職権濫用に該当する違法な行政処分である。
2 取消事由2(商標法3条2項該当性についての判断の看過等)について 原告は、平成30年8月21日から現在まで、自ら販売する商品(本願商標の指 定商品)について本願商標を継続して使用している。平成30年8月21日以降の 原告の商品の販売実績は、他の業者の商品のそれよりも格段に優れている。同日当15 時、「Tibetan Tiger」等の商標を使用した例はほとんど見当たらな かったが、同月以降、「チベタンタイガー」又は「チベタンタイガーラグ」を検索 ワードとする検索数が急増した。
以上によると、本願商標は、原告による長年の継続的使用及び原告による商品の 販売実績によって広く世間に認識されるようになったものであり、その結果、原告20 の商品を識別する商標となったものであるといえる。したがって、本願商標は、公 益的な観点から独占適応性が認められるものであるし、また、商標法3条2項に規 定する商標に該当する。
この点を看過してされた本件審決の判断は誤りである。
3 取消事由3(商標法4条1項16号該当性についての判断の誤り)について25 前記1(1)から(3)までのとおりであるから、本件審決は、商標法4条1項16号 若しくは憲法14条に反してされ、又は国家公務員による職権濫用に該当する違法 な行政処分である。
被告の主張
1 取消事由1(商標法3条1項3号該当性についての判断の誤り)について (1) 本願商標の構成 5 本願商標は、「Tibetan Tiger」の文字を標準文字で表してなると ころ、その各構成部分の語義に相応して、構成全体からは、一義的に「チベットの トラ」ほどの意味合いが容易に理解され、認識される。
(2) 「チベタンラグ」等の語の使用例 本願商標の指定商品中のじゅうたん、敷物及びラグ(以下、併せて「じゅうたん10 等」という。)との関係において、チベットで生産され、又は販売される手織りの 小さいじゅうたん等は、「チベタンラグ」などと称されている。
(3) 「チベット絨毯」等の語の使用例 じゅうたんは、チベット民族の伝統的な手工芸品であり、チベット民族やネパー ル在住のチベット難民により手織りされたじゅうたんは、「チベット絨毯」などと15 称されている。
(4) 「Tiger」等の語の使用例 本願商標の指定商品中のじゅうたん等との関係において、トラ柄又はトラの図柄、
形状等を表す語として「Tiger」、「タイガー」等が一般に使用されている。
(5) 「Tibetan」等の語に「Tiger」等の語を組み合わせた語の使20 用例 トラの図柄を描き、又はトラの形状を模したチベットじゅうたんは、産地又は販 売地を表す「Tibetan」等の語とトラを意味する「Tiger」等の語を組 み合わせて「Tibetan Tiger(Rug)」、「チベタンタイガー(ラ グ)」などと称されている。
25 (6) 小括 以上の事実を総合考慮すると、本願商標の指定商品中のじゅうたん等との関係に おいて、本願商標は、産地又は販売地を表す「Tibetan」の文字とトラの図 柄や形状を表す「Tiger」の文字を結合したものといえる。したがって、「T ibetan Tiger」の文字からなる本願商標を本件商品について使用して も、これに接する取引者、需要者は、単に商品の産地又は販売地及び品質を表示し 5 たものと理解するにとどまるというべきである。
そうすると、本願商標は、商品の産地又は販売地や図柄といった商品の品質を表 示するものとして取引に際し必要適切な表示であり、本件商品について使用された ときは、取引者、需要者により、将来を含め、商品の品質を表示したものと一般に 認識されるといえるから、特定人による本願商標の独占使用を認めるのは公益上適10 当でなく、また、本願商標は、自他商品の識別力を欠くというべきである。
したがって、本願商標は、本件商品について使用されたときは、商品の産地又は 販売地及び品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるか ら、商標法3条1項3号に掲げる商標に該当する。
2 取消事由2(商標法3条2項該当性についての判断の看過等)について15 原告が提出した証拠によっても、使用の結果、本願商標が自他商品識別力を獲得 したものと認めることはできないし、公益的な観点から、原告に本願商標を独占的 に使用させることが相当であると認めることもできない。
したがって、本願商標が商標法3条2項に規定する商標であるということはでき ないし、本願商標に独占適応性が認められるということもできない。
20 3 取消事由3(商標法4条1項16号該当性についての判断の誤り)について 本願商標が本件商品以外のじゅうたん等について使用されるときは、当該じゅう たん等があたかも本件商品であるかのように認識されるから、本願商標は、商品の 品質の誤認を生ずるおそれがある商標であるといえる。したがって、本願商標は、
商標法4条1項16号に掲げる商標に該当する。
25 第5 当裁判所の判断 1 取消事由1(商標法3条1項3号該当性についての判断の誤り)及び取消事 由2(商標法3条2項該当性についての判断の看過等)について (1) 乙1から60までについて 原告は、審査及び拒絶査定不服審判の手続において提示されなかった乙1から6 0までを本件訴訟において提出することは許されないと主張する。
5 しかしながら、審決の取消訴訟において、当事者が提出する証拠の範囲を制限し た法令の規定は見当たらない。解釈上、拒絶査定不服審判の手続において審理判断 がされなかった拒絶理由につき、これを当該手続に係る審決の取消訴訟において主 張することは許されないとしても、拒絶査定不服審判の手続において審理判断がさ れた拒絶理由に係る具体的な事実の有無は、それまでの手続において当事者の攻防10 の対象となっていたものであり、取消訴訟において裁判所が審理判断すべき対象そ のものである。したがって、裁判所が、自由な心証に基づき、拒絶査定不服審判の 手続において示された資料以外の資料(証拠)を当該取消訴訟において参酌するこ とは、最判昭和51年の趣旨に何ら反しないものと解するのが相当である。
したがって、本件訴訟においても、弁論の全趣旨により拒絶査定不服審判の手続15 において示されなかった資料(証拠)を含むと認められる乙1から60までにつき、
これらの資料(証拠)を本願商標が商標法3条1項3号に掲げる商標に該当するか 否かを判断するための事実認定に当たり参酌することは当然に許されるというべき である。原告の主張を採用することはできない。
(2) 取引の実情について20 ア 掲記の証拠によると、次の事実が認められる。
(ア) 「BAYCREW’S STORE」なる名称の販売業者のウェブサイト (甲19、乙39)には、トラの図柄を模し、トラを上から見たときの平面形状を かたどったラグ(下の写真参照。以下、このラグ及びこれと同種のラグを「本件ラ グ」という。)の写真が「TIBETAN TIGER RUG L チベタンラ25 グ」との商品名及び「世界四大絨毯の一つに数えられるチベット絨毯の中でも、位 の高い僧侶のために作られていたという由緒正しきチベタンタイガーラグ」との説 明と共に掲載されている。
(イ) 「価格.com」のウェブサイト(乙37)には、本件ラグの写真が「チ ベタン タイガーラグ DTTR-02 Lサイズ Tibetan Tiger 5 Rug Large 90×160cm」との商品名及び「世界4大絨毯(じゅう たん)の一つに数えられるチベット絨毯(じゅうたん)の中でも、位の高い僧侶の ために作られていたという由緒正しきチベタンタイガーラグをモチーフに作られた ラグ」との説明と共に掲載されている。
(ウ) 「YAHOO!JAPANショッピング」のウェブサイト(乙38)には、
10 本件ラグの写真が「新品 チベタン タイガーラグ Sサイズ」などの商品名と共 に掲載されている。
(エ) 「SLOWTIGER」なる名称の販売業者のウェブサイト(甲20、乙 40)には、本件ラグの写真が「Tibetan Tiger Rug〈Sサイズ ・ウール007〉チベタンタイガーラグ」との商品名及び「世界四大絨毯の一つと15 もいわれるチベット絨毯」との説明と共に掲載されている。
(オ) 「CIBONE」なる名称の販売業者のウェブサイト(甲21、乙41) には、本件ラグの写真が「TIBETAN TIGER 01 L」との商品名及 び「かつて、ヒマラヤ文化において、トラのモチーフは守護神として捉えられてい ました。実際のトラの毛皮を用い、僧が瞑想するための敷物や、経典の箱、魔よけ20 として使用されていました。19世紀のイギリスの統治により、トラの毛皮は使用 されなくなりましたが、その信仰は続き、世界4大絨毯のひとつに数えられるチベ ット絨毯の中でも、トラのモチーフは、位の高い僧侶のためにつくられていたとい う、由緒正しいチベタンタイガーラグを再現したラグです」との説明と共に掲載さ れている。
5 (カ) 「plywood」なる名称の販売業者のウェブサイト(甲23、乙43) には、本件ラグの写真が「チベタンタイガーラグ ラージ DETAIL Tib etan Tiger Rug DTTR-01/Lサイズ DTTR-02/L サイズ」などの商品名及び「世界4大絨毯の一つに数えられるチベット絨毯の中で も、位の高い僧侶のために作られていたという実は由緒正しき「チベタンタイガー10 ラグ」をモチーフにしたラグの登場です」との説明と共に掲載されている。
(キ) 「Amazon.co.jp」のウェブサイト(甲24、乙44)には、
本件ラグの写真が「チベタンタイガーラグ スモール DETAIL Tibet an Tiger Rug[DTTR-01/Sサイズ]」などの商品名(平成3 0年8月19日取扱開始)及び「世界4大絨毯の一つに数えられるチベット絨毯の15 中でも、位の高い僧侶のために作られていたという実は由緒正しき「チベタンタイ ガーラグ」をモチーフにしたラグの登場です」との説明と共に掲載されている。
(ク) 令和4年8月30日発行の雑誌「POPEYE 部屋とシティボーイ3」 (乙45)には、「チベタンタイガーラグ かつてヒマラヤ文化で守護神として崇 められていた虎。僧侶たちは瞑想時にその毛皮を敷いていたのだとか。そんな由緒20 正しきタイガーラグを職人が手作りで再現」との記載があり、本件ラグの写真が掲 載されている。
(ケ) 「O.L.D Furniture and Apparel」なる名称 の販売業者の平成31年1月11日時点のウェブサイト(乙46)には、本件ラグ の写真が「Tibetan Tiger Rug DTTR-01 Large25 チベタンタイガーラグ DTTR―01 ラージ」との商品名及び「世界四大絨毯 の一つに数えられるチベット絨毯の中でも、位の高い僧侶のために作られていたと いう由緒正しきチベタンタイガーラグをモチーフに玄関やリビングと色々な場所に 対応できるようウールと裏面をコットン素材に仕立てております」との説明と共に 掲載されていた。
(コ) 「ieko」なる名称の販売業者の令和2年4月11日時点のウェブサイ 5 ト(乙47)には、本件ラグの写真が「世界四大絨毯の一つに数えられるチベット 絨毯の中でも、位の高い僧侶のために作られていたという由緒正しきチベタンタイ ガーラグをモチーフにしています」との説明と共に掲載されていた。
(サ) 「Apartment」なる名称の販売業者の令和4年2月8日時点のウ ェブサイト(乙48)には、本件ラグの写真が「チベタンタイガーラグ 顔パター10 ン【1(青)】S tibetan tiger rug」との商品名及び「世界 四大絨毯の一つに数えられるチベット絨毯の中でも、位の高い僧侶のために作られ ていたという実は由緒正しきチベタンタイガーラグをモチーフに制作されたラグ」 との説明と共に掲載されていた。
(シ) 「BICASA」なる名称の販売業者の令和3年12月30日時点のウェ15 ブサイト(乙49)には、本件ラグの写真が「ラグ INC.チベタンタイガーラ グ DTTR-02/スモール Tibetan Tiger Rug DTTR -02/Small 331602S」との商品名及び「チベタンタイガーラグ “DTTR-02/スモール”(Tibetan Tiger Rug“DTTR -02/Small”)331602Sは(INC.)のラグです。世界四大絨毯20 の一つに数えられるチベット絨毯の中でも、位の高い僧侶のために作られていたと いう由緒正しきチベタンタイガーラグをモチーフに玄関やリビングと色々な場所に 対応できるようウールと裏面をコットン素材にて2種4サイズを製作」との説明と 共に掲載されていた。
(ス) 「Eight Hundred Ships & Co.」なる名称の販25 売業者の平成30年9月10日時点のウェブサイト(乙50)には、本件ラグの写 真が「Tibetan Tiger Rug チベタンタイガーラグ DTTR- 01 Lサイズ」との商品名及び「世界四大絨毯の一つに数えられるチベット絨毯 の中でも、位の高い僧侶のために作られていたという、由緒正しきチベタンタイガ ーラグ。…チベタンタイガーラグだけを集めた写真集、『The Tiger R ugs of Tibet』も出版されるなど、大変奥の深い世界です」との説明 5 と共に掲載されていた。
(セ) 「LAND Lifestyle Shop」なる名称の販売業者の令和 3年5月7日時点のウェブサイト(乙51)には、本件ラグの写真が「チベタンタ イガーラグ01 XL」との商品名及び「世界四大絨毯の一つに数えられるチベッ ト絨毯の中でも、位の高い僧侶のために作られていたという由緒正しきチベタンタ10 イガーラグをモチーフに玄関やリビングと色々な場所に対応できるようウールと裏 面をコットン素材にて2種4サイズを製作」との説明と共に掲載されていた。
(ソ) 「TRUSS FURNITURE & GENERAL STORE」 なる名称の販売業者の平成30年8月25日時点のウェブサイト(乙52)には、
本件ラグの写真が「DETAIL|Tibetan Tiger Rug【2ty15 pe 4size】チベタンタイガーラグ」との商品名及び「世界四大絨毯の一つ に数えられるチベット絨毯をモチーフにデザインした「Tibetan Tige r Rug(チベタンタイガーラグ)」です。世界四大絨毯の一つに数えられるチ ベット絨毯の中でも、位の高い僧侶のために作られていたという実は由緒正しきチ ベタンタイガーラグをモチーフに作られています」との説明と共に掲載されていた。
20 (タ) 「WAIPER」なる名称の販売業者の令和4年2月1日時点のウェブサ イト(乙53)には、本件ラグの写真が「新品チベタンタイガーラグSサイズ」と の商品名及び「世界四大絨毯の一つに数えられるチベット絨毯。その中でも位の高 い僧侶のためにしか作られないタイガーラグを忠実に再現致しました」との説明と 共に掲載されていた。
25 (チ) 「アメリカン雑貨COLOUR」なる名称の販売業者の令和元年6月30 日時点のウェブサイト(乙54)には、本件ラグの写真が「チベタン タイガーラ グ ブルー DTTR-01L ラージ」などの商品名及び「世界四大絨毯の一つ に数えられるチベット絨毯の中でも、位の高い僧侶のために作られていたという由 緒正しきラグマット「チベタンタイガーラグ」」との説明と共に掲載されていた。
(ツ) 「Rigna」なる名称の販売業者の令和5年5月13日時点のウェブサ 5 イト(乙55)には、本件ラグの写真が「チベタン タイガー ラグ(サイズMサ イズ)TIBETAN TIGER RUG」との商品名及び「世界四大絨毯の一 つに数えられるチベット絨毯の中でも、位の高い僧侶のために作られていたという 由緒正しきチベタンタイガーラグをモチーフに玄関やリビングと色々な場所に対応 できるようウールと裏面をコットン素材にて製作しました」との説明と共に掲載さ10 れていた。
(テ) 楽天市場のウェブサイト内にある「Happy Hour」なる名称の販 売業者の令和5年6月3日時点のページ(乙56)には、本件ラグの写真が「チベ タンタイガーラグ」との商品名並びに「ネパールの職人が製造している本物のチベ タンタイガーラグです」及び「世界的にも有名なチベットのラグ、その中でもチベ15 ット仏教僧が使うためにお寺などへ納品されるのがチベタンタイガーラグです」と の説明と共に掲載されていた。
(ト) 「LAID BACK STORE」なる名称の販売業者の令和3年3月 12日時点のウェブサイト(乙57)には、本件ラグの写真が「【ウール サイズ L】ネパール製手織り Tibetan Tiger Rug(チベタンタイガー20 ラグ」との商品名及び「世界四大絨毯の一つともいわれるチベット絨毯。手作りの 温かみが伝わる希少な最高品質のラグです。…ネパール、チベット人居住区の絨毯 職人が約2ヶ月かけ織りあげた物を現地調達いたしました」との説明と共に掲載さ れていた。
(ナ) 株式会社そごう・西武作成の令和2年10月19日付けのインターネット25 上の記事(乙58)には、「ネパールの職人が織り上げる伝統工芸品チベタンタイ ガーラグ」、「チベタンタイガーラグ 世界四大絨毯の一つ」などの記載があり、
本件ラグの写真が掲載されていた。
(ニ) 「TIGER WITH WINGS」なる名称の販売業者の令和4年1 2月9日時点のウェブサイト(乙59)には、「パパタイガー」との商品名のほか、
「チベタンラグは、チベット地方の伝統工芸の織物です。…チベタンラグの中でも、
5 虎をモチーフとしたものはチベタンタイガーラグと呼ばれ、そのインパクトと愛嬌 のある姿は一度見たら忘れられません」及び「大変クオリティにこだわる生産者さ んの手によるチベタンタイガーラグをご紹介しています」との記載があり、本件ラ グの写真が掲載されていた。
(ヌ) 「すえきちブログ」と題するウェブサイト(乙60)には、「偽物のチベ10 タンタイガーラグと本物の見分け方」、「チベタンタイガーラグは、ネパールの工 芸品です。ネパール在住のチベット難民によって、手織りされているチベット絨毯」 などの記載と共に本件ラグの写真を掲載する令和3年8月24日付けのブログ記事 が投稿されていた。
イ 前記アによると、じゅうたん等の分野においては、本件ラグ(トラの図柄を15 模し、トラを上から見たときの平面形状をかたどったラグ(チベットを産地とする チベットじゅうたんの一種又はこれをモチーフとして製作されたもの))が存在す るものと認められる。したがって、本願商標の指定商品中には、本件ラグが含まれ るものと認めるのが相当である。
また、前記アによると、本件ラグは、取引者、需要者の間において、「Tibe20 tan Tiger Rug」、「TIBETAN TIGER RUG」、「t ibetan tiger rug」又は「チベタンタイガーラグ」と称されてい るものと認められる。そして、「TIBETAN TIGER RUG」及び「t ibetan tiger rug」は、「Tibetan Tiger Rug」 と比較してアルファベットの大文字・小文字の違いがあるにすぎず、生じる称呼25 (「チベタンタイガーラグ」)も同一であるから、実質的にみて「Tibetan Tiger Rug」と同一のものであると認められる。したがって、以下、本件 ラグは、「Tibetan Tiger Rug」又は「チベタンタイガーラグ」 と称されているものとして検討する。
ウ 前記アの認定において挙示した証拠に関し、原告は、「これらの証拠は、無 名の個人らによって作成された公平性及び正確性に欠けるものであり、これらを取 5 引者、需要者の認識の認定に供することはできない」旨主張する。しかしながら、
本件ラグをめぐる取引の実情を認定するに当たり、無名の個人が作成したウェブサ イトの記事を参酌してはならないとする理由はないし、前記アの認定の根拠とした 各証拠の信用性を疑わせるような事情もみられない。また、これらの証拠のほとん どは、本件ラグの取引者が需要者に向けて発信したウェブサイト上の記事であり、
10 まさに本件ラグに係る取引者、需要者の認識を根拠付けるものである。当該取引の 実情の認定に係る証拠を広辞苑等の辞典及び辞書に限定すべきであるとする原告の 主張は、独自の見解というほかなく、採用の限りでない。
(3) 本願商標の商標法3条1項3号該当性について 前記(2)において認定した取引の実情に基づいて検討するに、「Tibetan15 Tiger Rug」を構成する「Rug」の部分及び「チベタンタイガーラグ」 を構成する「ラグ」の部分は、敷物の一種である「ラグ」一般を指し、本件ラグで あることまでは表示しない語であると認められるから、「Tibetan Tig er Rug」のうちの「Tibetan Tiger」の部分及び「チベタンタ イガーラグ」のうちの「チベタンタイガー」の部分は、「Tibetan Tig20 er Rug」又は「チベタンタイガーラグ」と称される商品が具体的に本件ラグ であることを直接的に表示するものであるといえる。そうすると、「Tibeta n Tiger」の文字からなる本願商標は、その指定商品中の本件ラグとの関係 においては、トラの図柄を模し、トラを上から見たときの平面形状をかたどったチ ベットじゅうたん又はこれをモチーフにした敷物という商品の品質等の特徴を表示25 する標章のみからなる商標であると認めるのが相当である。
そして、本願商標は、「Tibetan Tiger」の語句のみからなり、当 該語句を標準文字で表してなるものであるところ、前記説示したところにも照らす と、その指定商品中の本件ラグとの関係においては、商品の品質等の特徴を普通に 用いられる方法で表示するものと認められる。
以上のとおり、本願商標は、その指定商品中の本件ラグとの関係においては、商 5 品の品質等の特徴を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標である ということができるから、商標法3条1項3号に掲げる商標に該当するというべき である。
(4) 本願商標の独占適応性について 前記(3)のとおり、本願商標は、その指定商品中の本件ラグとの関係においては、
10 商品の品質等の特徴を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であ る。そうである以上、他の事業者において、本件ラグに該当する商品の製造、販売 等をするに当たり、「Tibetan Tiger」と同一又は類似の標章を用い ようとすることは当然に想定されるところであるから、本願商標につき特定の者に よる独占使用を認めるのは公益上適当でない。本願商標は、独占適応性を欠くもの15 である。
(5) 本願商標の商標法3条2項該当性について 証拠(甲6から9まで)によっても、原告が本願商標の使用をした結果、本願商 標が需要者において何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識し得る商標 に至ったものと認めることはできず、その他、そのような事実を認めるに足りる証20 拠はない。本願商標は、商標法3条2項に規定する商標に該当しない。
(6) 不合理な差別の有無等について 原告は、地名又は地域名の文字及び動物名の文字からなる多数の商標の中で、本 願商標の商標登録だけを拒絶するのは憲法14条に反し、国家公務員による職権濫 用に該当すると主張する。
25 しかしながら、ある商標が商標登録されるかどうかは、商標法の規定する要件を 備えているか否かによって決まるところ、商標法の規定は、いかなる地名又は地域 名の文字及び動物名の文字からなる商標であっても平等に適用されるのであり、法 適用の結果、他の地名又は地域名の文字及び動物名の文字からなる商標の商標登録 が認められ、本願商標の商標登録が拒絶されることになったからといって、直ちに 憲法14条に反することになるわけではない。また、原告の主張が、地名又は地域 5 名の文字及び動物名の文字からなる商標の全部又は大部分は当然に商標登録に至っ ていることを前提とするものであるならば、そのような事実を認めるに足りる証拠 はないから、当該主張は、前提を欠くものとして失当である。さらに、原告の主張 が、地名又は地域名の文字及び動物名の文字からなる商標につき商標登録がされた 例が幾つかあるのであるから、本願商標についても商標登録がされるべきである旨10 をいうものであれば、前記のとおり、商標登録の可否は、地名、地域名又は動物名 の別にかかわらず、法の要件を備えているか否かによって決まるべきものである。
原告の主張は、商標登録出願に係る商標の構成、その指定商品及び指定役務の内容 及び性質、当該商標等をめぐる取引の実情の内容等を捨象した抽象論であって、具 体的な本願商標について商標登録の要件を備えていることをいうものではないから、
15 この点でも失当である。その他、特許庁が本件審決をしたことが憲法14条に反し、
又は国家公務員による職権濫用に該当するものと評価し得る事情を認めるに足りる 証拠はない。
2 結論 以上のとおり、本願商標は商標法3条1項3号に掲げる商標に該当し、同条2項20 に規定する商標には該当しないから、商標登録を受けることができない。したがっ て、取消事由3について判断するまでもなく、原告の請求は理由がない。