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事件 |
令和
6年
(ネ)
10027号
商標権侵害差止等請求控訴事件
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令和6年8月28日判決言渡 令和6年(ネ)第10027号 商標権侵害差止等請求控訴事件 (原審・東京地方裁判所令和4年(ワ)第70028号) 口頭弁論終結日 令和6年7月8日 5判決 控訴人 ヴェンガーエス アー 10 同訴訟代理人弁護士 松永章吾 同 丸山悠 同訴訟代理人弁理士 前川砂織 被控訴人 TRAVELPLUSINTER 15 NATIONAL株式会社 同訴訟代理人弁護士 中野博之 同訴訟復代理人弁護士 辻野篤郎 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2024/08/28 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
20 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 3 控訴人のために、この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 |
事実及び理由 | |
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控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。 10 2 被告は、被告商品を輸入、譲渡し、又は譲渡のために展示してはならず、被 告標章を付した宣伝用のパンフレットほかの広告宣伝物を展示し、又は頒布 してはならない。 3 被告は、前項の製品及び広告宣伝物を廃棄せよ。 4 被告は、原告に対し、5000万円及びこれに対する令和4年11月11日15 から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 |
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事案の概要
本件は、原告商標権を有する原告が、被告標章は原告商標に類似するところ、 被告商品はいずれも原告商標の指定商品に該当するから、被告が被告商品を輸入、 譲渡し、又は譲渡のために展示すること、及び被告標章を付した宣伝用のパンフ20 レットほかの広告宣伝物を展示し、又は頒布することはいずれも原告商標権の侵 害(商標法37条1号)となると主張して、次の各請求をした事案である。 @ 商標法36条1項に基づき被告商品の輸入等の差止めを求める請求 A 商標法36条2項に基づき被告商品及びその広告宣伝物の廃棄を求める請求 B 商標権侵害の不法行為に基づき損害金5000万円及びこれに対する不法行25 為の後である令和4年11月11日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民 法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める請求 2 原審が、原告商標と被告標章が類似するとは認められないとして、原告の請求 をいずれも棄却したところ、原告がこれを不服として控訴した。 1 前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、後記2のとおり当審にお ける原告の補足的主張を加えるほかは、原判決の「事実及び理由」中、第2の 5 2、3及び第3(原判決2頁20行目から10頁25行目まで)に記載のとお りであるから、これを引用する。なお、引用文中の「別紙」はいずれも「原判 決別紙」と読み替える。 2 当審における原告の補足的主張 (1) 外観について10 ア 原判決は、原告商標と被告標章の外観について、以下のとおり共通点と 相違点を認定した上、外観が類似しているとはいえないと判断した(以下、 それぞれ「共通点@」、「相違点@」などという。)。 【共通点】 以下の構成から成ること。 15 @ 外側に配置された四角形状の図形(略四角形又は四角形) A 内側に配置された四角形状の図形(略四角形又は四角形) B 中央に位置する幅広の十字 【相違点】 @ 外側の四角形がやや丸みを帯びた縁及び角を有する略四角形であるか20 (原告商標)、直線状の縁と略直角を有する四角形であるか(被告標章) A 内側の四角形がやや丸みを帯びた縁及び角を有するか(原告商標)、 直線状の縁と丸められた角を有するか(被告標章) B 外縁部分の四隅には円型凹部が、上下左右の縁には棒状凹部が存在す るか25 C 外縁部分の色が白色であるか(原告商標)、銀色であるか(被告標章) D 十字において、直線状の溝が存在するか 3 E 十字の上下左右に外縁部分に向けた直線状の支持棒が存在するか F 四角形内側の十字以外の色が黒色であるか(原告商標)、赤色である か(被告標章) G 十字の色が白色であるか(原告商標)、銀色であるか(被告標章) 5 イ しかし、被告標章は、被告商品においてワンポイントマークとして表示 され、実寸は縦2.2p、横2.2p程度のごく小さなものであるから (甲15)、需要者がより強い印象を受けるのは、一見して看取可能な全 体的構成に関わる部分である共通点@〜Bである。 ウ これに対し、相違点@〜B、D、Eは、前記の被告標章の大きさに照ら10 せば、一見して看取できない些細な相違にすぎない。また、相違点B、D、 Eは、たとえ看取できたとしても、銀色の立体的形状として現れているも のであり、見る角度や光の加減によっては、認識することが困難となる。 さらに、これらの相違点は、たとえ細部まで看取することができたとして も、共通点から全体として受ける類似の印象を凌駕するものではない。 15 相違点C、Gについては、白色と銀色は同系色であり、光沢感があるか 否かが主な相違であるため、実際に被告商品を手に取り、見る角度や光の 加減を変えながら観察しなければ一見して看取することはできない(後記 のとおり、被告商品は主にインターネット上のショッピングサイトで販売 され、そのような機会はない。)。 20 さらに、色彩に係る相違である相違点C、F及びGについては、原被告 間の別件訴訟(甲11〜14)において色彩の相違が外観の類似性を否定 する事情として一切評価されていないことからみても、全体的構成に関わ る共通点と比べる微差であることは疑いようがない。 このように、相違点@〜Gは、一見して看取することができない些細な25 相違にすぎないか、共通点から全体として受ける類似の印象を凌駕するも のとは到底いえないものである。 4 エ したがって、原告商標と被告標章の外観は類似している。 (2) 取引の実情について 被告商品は、主にインターネット上のショッピングサイトで販売されてい るため、需要者は、その購入に際し、被告商品の商品タグや商品の現物を確 5 認することはない。 そして、被告標章は、前記(1)イのとおり、ワンポイントマークとして表 示されるごく小さなものにすぎず、多くの被告商品の販売ページにおいても 小さく表示され(甲4、5)、共通点は看取可能であっても相違点はおよそ 看取することができない。 10 その上、被告商品は数千円程度と比較的廉価で取引されているため、需要 者は被告商品の購入にあたって特段の注意を払うことはなく、原告商標と被 告標章の些細な相違点を看取することなく、出所を混同したまま購入に至る 可能性は極めて高い。 |
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当裁判所の判断
15 1 当裁判所も、原告商標と被告標章は、外観において類似しているとはいえず、 取引の実情を踏まえて全体的に考察しても互いに類似しているとは認められな いから、原告の請求はいずれも理由がないと判断する。その理由は、後記2の とおり当審における原告の補足的主張に対する判断を付加するほかは、原判決 「事実及び理由」第4の1(原判決10頁26行目から15頁6行目まで)に20 記載のとおりであるから、これを引用する(ただし、12頁1行目及び18行 目の各「指示棒」をいずれも「支持棒」に改める。)。 2 当審における原告の補足的主張に対する判断 (1) 原告は、被告標章が被告商品においてワンポイントマークとして表示され、 小さなものであることを考慮すれば、共通点@〜Bは一見して看取可能な全25 体的構成に関わる部分であり、需要者がより強い印象を受けるのに対し、相 違点@〜Gは、一見して看取することができない些細な相違にすぎないか、 5 共通点から全体として受ける類似の印象を凌駕するものとはいえない旨主張 する。 しかし、両商標・標章の中央の十字を取り囲む部分についてみると、相違 点@、Aのとおり、外側及び内側の各四角形状部分において、原告商標の縁 5 (辺)は緩やかな曲線、角はややなだらかな曲線であり、全体的に曲線で構 成されるのに対し、被告標章は角のみが丸められた直線状の縁(辺)で構成 されることに加え、被告標章は、原告商標にはない四角形状部分の立体的な 装飾(相違点B)、中央に位置する幅広の十字部分につながる細い支持棒 (相違点E)が存在し、さらに外側の四角形と内側の四角形との間の部分の10 幅が原告商標より広いこととあいまって、原告商標がシンプルな印象を与え るのに対し、重厚で複雑な印象を与えるといえる。 さらに、被告標章の色彩は、外側の四角形と内側の四角形との間の部分と 十字部分が金属的な光沢の銀色、その間の十字以外の部分が赤色で(相違点 C、F、G)、それぞれが白色、黒色である原告商標の色彩とは全体として15 明らかに異なる上、被告標章はそれぞれの色が目立つとともにコントラスト をなしており、前記の形状の相違を強調する効果も有しているといえる。な お、原告が指摘する別件訴訟(甲11〜14)で原告商標との類否が問題と なった被告使用の標章は、色彩や外縁の形状が本件の被告標章とは異なるも のであるから、別件訴訟における判断は、本件における類否判断を左右する20 に足りるものではない。 これに対し、各共通点についてみると、@の外側の四角形状の図形、Aの 内側の四角形状の図形は、前記のとおり、全体としてむしろ相違する要素の 方が看者により強い印象を与えるといえるし、Bの中央に位置する幅広の十 字についても、具体的な形状が同一ではない上(相違点Dのほか、幅の広さ25 が異なることも認められる。)、幅広の十字の図形自体は、スイス国旗や赤 十字旗等にも使用される著名な図柄であり、その意味ではありふれた図柄で 6 ある。したがって、共通点@〜Bから全体として受ける印象によって、前記 各相違点が凌駕されると認めることはできない。 以上の判断は、商標の類否判断が離隔的観察によるべきことを前提とした ものであるが、さらに原告が指摘する被告標章の大きさと被告商品における 5 使用態様を考慮しても、例えば、被告商品の販売用ウェブサイトの各写真 (甲3〜5、乙4)をみると、前記の相違点に係る被告標章の特徴は、一定 以上の大きさで写された写真であれば明らかで、小さく写された写真であっ ても、その色彩、縁(辺)が直線からなる四角形の形状等、相違点の大部分 は十分看取可能である。 10 以上のとおり、原告商標と被告標章の外観は、相違点と比べて共通点が需 要者、取引者により強い印象を与えるものであるとか、その相違点が一見し て看取することができない些細な相違であるなどということはできない。被 告標章は、全体として需要者、取引者に対し原告商標とは異なる印象を与え るものであるから、原告の主張を採用することはできない。 15 (2) 原告は、被告商品は主にインターネット上のショッピングサイトで販売さ れ、需要者は、原告商標と被告標章の共通点は看取可能であっても、相違点 はおよそ看取することができない旨主張するが、原告の主張を採用すること ができないことは、前記(1)で述べたとおりである。 また、原告は、被告商品は数千円程度の廉価な商品であるため、需要者が20 注意を払わず、出所を混同したまま購入する可能性が高い旨主張する。 しかし、被告商品に係るインターネットショッピングの実情(需要者によ る商品検索、被告商品のショッピングサイトにおける被告のブランド名やロ ゴの表示、購入決定までの手順等)は、前記引用に係る原判決「事実及び理 由」第4の1(4)ウ、エ(原判決13頁11行目から14頁24行目まで)25 のとおりであり、原告の主張するような取引の実情を認めることはできない。 3 結論 7 よって、原告の請求をいずれも棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理 由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。 |
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追加 | |
5裁判長裁判官清水響10裁判官菊池絵理15裁判官頼晋一8(別紙)原告商標目録登録番号国際登録第1002196号5国際登録日2009年(平成21年)1月16日(優先権主張2008年(平成20年)8月14日米国出願)国内登録日2010年(平成22年)11月5日商品の区分第8類、9類、14類、18類、25類指定商品第18類All-purposedrybags、luggage、backpacks、 10daypacks、duffelbags、utilitybags、shoulderbags、 casualbags、briefcases、non-motorizedwheeledpacks、 cosmeticcasessoldemptyandtoiletrycasessoldempty、 travelbags、smallpersonalleathergoods、namely、 wallets、billfolds、creditcardcases、neck、necklace15wallets、andshavingbagssoldempty;umbrellasandnameandcallingcardcases、cosmeticcasessoldempty、 toiletrycasessoldempty、luggagetags、waistpacks、 bagswornonthebody、businesscases、travelbags、 all-purposepersonalcarebags、smallpersonalleather20goods;shoebagsfortravel;unfittedbagsforhandheldelectronicdevices;waistpacksforholdingelectronicdevices.等(参考訳)汎用防水バッグ、旅行かばん、バックパック、デイパック(日帰25りハイキング用などの小型ナップサック)、ダッフルバッグ、多用途のかばん、肩掛けかばん、カジュアルバッグ、ブリーフケー9ス、車輪の付いたパック(原動機付きのものを除く。)、化粧品用ケース(中身が入っていないもの)、旅行かばん、革製の小さな身の回りの物、すなわち財布、札入れ、クレジットカード入れ、首にぶら下げる財布・ネックレス付きの財布、シェービング5バッグ(中味が入っていないもの)、傘及び名刺用ケース、化粧品用ケース(中身なし)、化粧品入れ(空のもの)、旅行かばん用タグ、ウエストパック、身体に装着させるかばん、書類かばん、旅行かばん、汎用の身の回りの物を入れるかばん、革製の小さな身の回りの物、旅行用靴袋、手持ち式の電子式装置に不向き10なバッグ、電子式装置保持用のウエストパック等登録商標以上10(別紙)被告標章目録1(バッグ正面に付されたロゴ)51015112溝直線状の支持棒棒状凹部5通風部通風部90度90度彫刻部10棒270度90度状凹通風部270度90度通風部部90度90度15棒状凹部円形凹部リベット頭部状部分20以上12 |