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関連審決 不服2023-4563
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事件 令和 6年 (行ケ) 10051号 審決取消請求事件
5
原告 株式会社バッファロー
同訴訟代理人弁理士 中村知公
同 前田大輔 10 同伊藤孝太郎
同 朝倉美知
同 本田彩香
被告 特許庁長官 15 同指定代理人 渡邉潤
同 山田啓之
同 須田亮一
同 阿曾裕樹
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2024/11/27
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 20 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2023-4563号事件について令和6年4月23日にした25 審決を取り消す。
事案の概要
1 1 本件は、商標登録出願の拒絶査定に対する不服審判請求について、特許庁が 請求不成立とした審決の取消しを求める事案である。争点は、出願に係る商標 の商標法4条1項11号該当性である。
2 特許庁における手続の経過等 5 ? 原告は、令和3月5月21日、
「ラクレコ」の文字を標準文字で表してなる 商標(以下「本願商標」という。)について、指定商品及び指定役務を第9類 「電子計算機への接続機能と音声データ・画像データ・映像データの送信機 能とを備えたディスクドライブ」等及び第42類「電子計算機用プログラム の提供」等として商標登録出願(甲5)をした。
10 ? 原告は、令和4年6月3日、指定商品及び指定役務補正したが、同年1 2月9日付けで拒絶査定(甲10)を受けたことから、令和5年3月17日 拒絶査定不服審判請求をし、同年5月8日付け手続補正書(甲12、13) により指定商品及び指定役務を第9類「音楽・映像データの取り込み・再生 用ディスクドライブ」(以下「本願指定商品」という。)のみに補正した。
15 ? 特許庁は、これを不服2023-4563事件として審理し、令和6年4 月23日、請求不成立の審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は 同年5月7日原告に送達された。
? 原告は、令和6年6月5日、本件審決の取消しを求めて本件訴訟を提起し た。
20 3 本件審決の理由の要旨 本願商標は、別紙「引用商標」記載の商標(甲7、14、登録第64349 46号商標。令和3年8月27日設定登録。
「ラクレコ」の片仮名を標準文字で 表してなる。以下「引用商標」という。)と同一の商標であり、かつ、次のとお り、引用商標の指定商品に類似する商品について使用するものであるから、商25 標法4条1項11号に該当する。
? 本願指定商品(第9類「音楽・映像データの取り込み・再生用ディスクド 2 ライブ」)は、電子計算機等とともに利用されるものであり、電子計算機の周 辺機器及び関連製品の製造者が生産し、電気店又は家電量販店で販売され、
電子計算機等のデータ処理装置の利用者全般が需要者となり得る商品である。
引用商標の指定商品及び指定役務中、第9類「ウエイトトレーニング機械器 5 具で測定された負荷重量・マシーンの変位量・回動数・回動スピードのうち いずれか一以上の値を受信して表示するデータ処理装置、運動用トレッドミ ルで測定されたローラーベルトの傾斜角度・走行距離・運動経過時間・平均 走行速度・消費カロリ・利用者の体重・歩数・歩幅・ピッチ・心拍数のうち いずれか一以上の値を受信して表示するデータ処理装置」 (以下「引用商標デ10 ータ処理装置」という。)も同様である。したがって、両者は生産部門及び販 売部門が共通又は近似し、音楽や映像データを処理する機器とともに利用さ れるもの又は電子データを処理する装置という用途において共通性を有し、
本願指定商品の需要者である広く電子計算機等のデータ処理装置を利用する 者全般は、引用商標データ処理装置の需要者と一致する場合もあると考えら15 れるから、これらの指定商品に同一又は類似する商標が使用された場合には、
同一営業主の提供に係る商品と誤認されるおそれがあり、両者は類似の商品 である。
? 本願指定商品(第9類「音楽・映像データの取り込み・再生用ディスクド ライブ」)と、引用商標の指定商品及び指定役務中の第9類「ダウンロード20 可能なモバイル機器用のアプリケーションソフトウェア」(以下「引用商標 ソフトウェア」という。)も、同様に生産部門及び販売部門が共通又は近似 し、音楽や映像データを処理する機器又は携帯情報端末等とともに利用され るという用途において共通性を有し、本願指定商品の需要者である広く電子 計算機等のデータ処理装置を利用する者全般は、引用商標ソフトウェアの需25 要者と一致する場合がある。加えて、本願指定商品も含まれる「データの取 り込み・再生用ディスクドライブ」装置について、当該商品を機能させるた 3 めに必要なコンピュータプログラムが存在し、ディスクドライブとは別にダ ウンロード形式で提供されている実情があると考えられるから、これらの指 定商品に同一又は類似する商標が使用された場合には、同一営業主の提供に 係る商品と誤認されるおそれがあり、両者は類似の商品である。
5 第3 審決取消事由に関する当事者の主張 1 原告の主張 ? 本願指定商品と引用商標データ処理装置は、用途、生産部門、販売部門、
需要者の範囲において一致せず、完成品と部品の関係もない。出所の誤認混 同が生ずることはなく、両者は類似しない。
10 ア 用途につき、本願指定商品は、光学ディスクに記録された音楽・映像に 関する電子データの読み取り・再生を、引用商標データ処理装置は、運動 に関するデータを取り込み表示するためにデータ処理を、各用途とする。
イ 生産部門につき、総務省日本標準産業分類(令和5年7月告示)では、
本願指定商品であるディスクドライブは、情報通信機械器具製造業に属し、
15 その生産部門は、電子計算機・同附属装置製造業中の外部記憶装置製造業 を営む者である。他方、引用商標データ処理装置のデータ処理機は、業務 用機械器具製造業に属し、その生産部門は、事務用機械器具製造業中のそ の他の事務用機械器具製造業を営む者である。複数の大手メーカーが両商 品を製造する事実はあるが、それぞれを専門で製造する業者も多数存在す20 る実情にある。
ウ 販売部門につき、本願指定商品は、原告が運営管理する一般需要者向け 直販サイト又は電気店若しくは家電量販店であり、引用商標データ処理装 置は、企業間取引に対応する特定の専門業者や専門商社である。
エ 需要者の範囲につき、本願指定商品は、ECサイトや電気店又は家電量25 販店を利用する最終消費者、かつ光ディスクの読み込み・再生作業を意図 する者であり、引用商標データ処理装置は、主に運動用機械の使用施設を 4 運営する専門的知見を持つ事業者や運動用機器の製造者である。潜在的顧 客も、一般家電需要者と事業者向け機械を扱う専門的限定的顧客と異なる。
オ 原材料及び品質につき、本願指定商品は、樹脂製・金属製の筐体・部材 であり、引用商標データ処理装置は、樹脂製・金属製の筐体、データ測定 5 部材・解析表示部材である。両商品とも品質は幅広く、比較できない。
カ 本願指定商品及び引用商標データ処理装置は、ともに単独で商品として 成立する。両商品は、相互に関連し組み合わせて利用される関係にはない。
? 本願指定商品と引用商標ソフトウェアは、用途、生産部門、販売部門、需 要者の範囲において一致せず、完成品と部品の関係にあるかの観点からの対10 比は困難である。出所の誤認混同が生ずることはなく、両者は類似しない。
ア 用途につき、本願指定商品と引用商標ソフトウェアは、データの読み取 りという用途は共通するが、ディスクドライブとその動作のためのアプリ ケーションソフトは担う具体的な役割が異なる。
イ 生産部門につき、総務省日本標準産業分類(令和5年7月告示)では、
15 本願指定商品の生産部門は、前記のとおりであり、引用商標ソフトウェア は、情報サービス業に属し、ソフトウェア業を営む者である。生産工程も、
後者は、完成したソフトウェアのデータを複製、収録し生産するか、ダウ ンロード方式等によりデータ自体を供給する。引用商標ソフトウェアは、
独立した専門のシステム開発部門によって生産され、本願指定商品は、生20 産技術部門等の主導により、工場内で生産される。複数の大手メーカーが 両商品を製造する事実はあるが、専門で製造する業者が別個に存在する実 情にある。
ウ 販売部門につき、本願指定商品は、原告が運営管理する一般需要者向け 直販サイト又は電気店若しくは家電量販店であり、引用商標ソフトウェア25 は、インターネットにおけるECサイトや各種ハードウェアの製造者のウ ェブサイト、電気店又は家電量販店(ただし、両商品の販売コーナーは異 5 なる。 、企業間取引に対応する専用メーカーである。
) エ 需要者の範囲につき、本願指定商品は、ECサイトや電気店又は家電量 販店を利用する最終消費者、かつ光ディスクの読み込み・再生作業を意図 する者であり、引用商標ソフトウェアは、広く一般消費者、特定分野の専 5 門家又は事業者、かつ、個々のプログラムが持つ固有の用途・機能を用い てこれに対応する商品の利用を意図する者である。よって、両商品の需要 者は一部共通しても一致はしない。
オ 原材料及び品質につき、本願指定商品は、樹脂製・金属製の筐体・部材 であり、引用商標ソフトウェアの価値は、無形のプログラム自体である。
10 両商品とも品質は幅広く、比較できない。
カ 本願指定商品及び引用商標ソフトウェアは、ともに単独で商品として成 立する。アプリケーションソフトウェアは、常に特定のハードウェアの一 部構成を担い部品に準じるから、完成品と部品との基準は重視することが できない。
15 ? 本願商標と引用商標は、それぞれの指定商品の用途・利用領域に関連性が ないという実情にある上、保護すべき信用の有無、商標採択の機会の観点に 照らし、商標「ラクレコ」が強い特別顕著性や周知・顕著性を持つものでな いことを考慮すれば、本願指定商品と引用商標の指定商品非類似と判断す べきである。
20 ? よって、本願指定商品と引用商標の指定商品は類似せず、本願商標を商標 法4条1項11号に該当するとした本件審決の判断には誤りがある。
2 被告の主張 ? 本願指定商品と引用商標データ処理装置は、同一の営業主により両商品が 生産されており、製造業者(その関連会社を含む)が運営する販売用ウェブ25 サイトのほか、様々な商品を扱う家電量販店だけでなく、電子計算機や周辺 機器を専門に扱う販売店においても扱われるなど同一の営業主により販売さ 6 れている。また、いずれも電子計算機に関連する商品であって、共に電子デ ータを利用することを目的とした商品であって、両商品の主な需要者は、広 く一般の消費者を含んでいる。
? 本願指定商品と引用商標ソフトウェアは、同一の営業主により両商品が生 5 産されており、製造業者(その関連会社を含む)が運営する販売用ウェブサ イトのほか、様々な商品を扱う家電量販店だけでなく、電子計算機や周辺機 器を専門に扱う販売店においても扱われるなど同一の営業主により販売され ている。また、いずれも電子計算機に関連する商品であって、共に電子デー タを利用することを目的とした商品であって、電子計算機等の電子機器は、
10 ディスクドライブ又はコンピュータソフトウェアを用いることで必要な品質 (機能) ・用途を実現するほか、両商品の主な需要者は、広く一般の消費者を 含んでいる。
? よって、本願指定商品と引用商標の指定商品は、これらに同一又は類似の 商標が付されたときは、同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認混同を15 生じるおそれがある類似の商品といえる。そして、本願商標は、引用商標と 同一又は類似の商標であるから、商標法4条1項11号に該当するとした本 件審決の判断に誤りはない。
当裁判所の判断
1 原告は、本願指定商品と引用商標の指定商品は類似しないから、これが類似20 するなどとして商標法4条1項11号該当性を認めた本件審決の判断には誤 りがあるなどと主張する。
指定商品が類似のものであるかどうかは、商品自体が取引上誤認混同のおそ れがあるかどうかにより判定すべきものではなく、それらの商品が通常同一営 業主により製造又は販売されている等の事情により、それらの商品に同一又は25 類似の商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認さ れるおそれがあると認められる関係にある場合には、たとえ、商品自体が互い 7 に誤認混同を生ずるおそれがないものであっても、類似の商品に当たると解す るのが相当である(最高裁判所昭和33年(オ)第1104号同36年6月2 7日第三小法廷判決・民集15巻6号1730頁)。
そこで、判断枠組みを踏まえ、本願指定商品と引用商標の指定商品の類否に 5 ついて検討する。
2 検討 ? 本願指定商品及び引用商標の各指定商品 ア 本願指定商品は「音楽・映像データの取り込み・再生用ディスクドライ ブ」である。
10 そして、ディスクドライブとは、HD、CD、DVDなどディスクを読 み書きするための装置の総称であり(乙1) データのバックアップコピー 、
の作成、音楽・動画等の再生、ソフトウェアのインストール等のために使 われる電子計算機の周辺機器であるから(甲18、19、乙2、3)、本願 指定商品は、音楽・映像データの取り込み・再生をするための電子計算機15 の周辺機器である。
イ 他方、引用商標データ処理装置は「ウエイトトレーニング機械器具で測 定された負荷重量・マシーンの変位量・回動数・回動スピードのうちいず れか一以上の値を受信して表示するデータ処理装置、運動用トレッドミル で測定されたローラーベルトの傾斜角度・走行距離・運動経過時間・平均20 走行速度・消費カロリ・利用者の体重・歩数・歩幅・ピッチ・心拍数のう ちいずれか一以上の値を受信して表示するデータ処理装置」である。
そして、データ処理とは、必要な情報を得るためにデータに対して行う 一連の作業であって、例えば、コンピュータが大量の資料について集計・ 分類・照合・翻訳等の算術的・論理的処理を行うことを意味し、データ処25 理装置とは、電子計算機のことであるから(乙4)、引用商標データ処理装 置は、前記の情報を受信して表示するための電子計算機である。
8 ウ また、引用商標ソフトウェアは「ダウンロード可能なモバイル機器用の アプリケーションソフトウェア」である。
そして、モバイル機器とは、携帯型の情報処理機器(モバイル端末)を 意味し(乙5、6)、ソフトウェアとは、電子計算機を動作させるためのプ 5 ログラムのことであるから(乙7)、引用商標ソフトウェアは、モバイル端 末で使用される電子計算機を動作させるためのプログラムである。
エ したがって、本願指定商品、引用商標データ処理装置及び引用商標ソフ トウェアは、いずれも電子計算機に関連する商品として、電子計算機によ る処理を行う際に通常用いられるという商品であるという意味において、
10 共通性がある。
? 生産及び販売の実情 ア 本願指定商品、引用商標データ処理装置及び引用商標ソフトウェアのよ うなディスクドライブ、電子計算機及びソフトウェアは、いずれも製造業 の同一事業者が生産、販売している例が多く認められる。
15 すなわち、日本電気株式会社は、DVD-ROMドライブ等、ウェアラ ブルデバイスを活用したNEC感情分析ソリューション、ヘルスケア関連 アプリケーションソフトウェア等の開発及び製品の製造販売を行い〔乙8 〜11〕、株式会社日立製作所は、DVD-ROM・CD-R/RWドライ ブ、ウェアラブルデバイスによる作業動作の評価、プラットフォームソフ20 トウェア等の開発、製品化及び販売を行い〔乙12〜15〕、ELECOM 株式会社は、スマホ用CDレコーダ、スマートフォンアプリ連携のトレー ニング製品、マウスのボタンに機能を割り当てるソフトウェア等の開発、
製造、販売を行い〔乙16〜19〕、Apple社は、CD・DVDの再生 等ができるUSB Super Drive、フィットネスに関する動き25 を記録するApple Watch、ヘルスケアとフィットネス等のアプ リケーションソフトウェア等の開発、製造販売を行い〔乙20〜24〕、パ 9 ナソニックコネクト株式会社は、CD-ROMドライブ等機器、ソフトウ ェアの開発、製造、販売等を行い〔乙25、26〕、富士通クライアントコ ンピューティング株式会社は、パソコン、タブレット、ペリフェラル等、
プラットフォーム、ソフトウェア等の開発、販売等を行い〔乙27〜29〕、
5 株式会社日本HPは、HP製USBスーパーマルチドライブや、HP製ソ フトウェアの製造販売等を行い〔乙30〜32〕、株式会社アイ・オー・デ ータ機器は、ポータブルDVDドライブのほか、電子帳簿保存法対応アプ リケーション等の製造、販売等を行い〔乙33、34〕、パイオニア株式会 社は、ポータブル外付け型ブルーレイドライブのほか、スマートフォンで10 使用できる各種アプリ等の製造、販売等を行っていることが認められる 〔乙35、36〕。
また、家電量販店やパソコン及び周辺機器を扱う専門店(ビックカメラ. com、ヨドバシ.com、ヤマダウェブコム、エディオン公式通販、パ ソコン工房、TSUKUMO、ドスパラ、パソコンSHOPアーク〔乙315 7〜44〕)においても、ディスクドライブ、電子計算機及びソフトウェア は、同一販売店において扱われていることが認められる。
したがって、本願指定商品、引用商標データ処理装置及び引用商標ソフ トウェアは、同一営業主により製造及び販売され、又は、同一販売店によ り販売される実情にある。
20 イ この点について、原告は、本願指定商品と引用商標データ処理装置及び 引用商標ソフトウェアは、総務省日本標準産業分類において属する産業を 異にするなどと主張する。しかしながら、引用商標データ処理装置は、電 子計算機であるから、本願指定商品と同じ「(中分類)情報通信機械器具製 造業」(甲25)に属するというべきであり、原告の主張する「(中分類)25 業務用機械器具製造業」(細分類)その他の事務用機械器具製造業」 「 (甲2 6)に属するものと解することはできない。
10 また、原告は、本願指定商品、引用商標データ処理装置及び引用商標ソ フトウェアは、いずれも専門的に製造する業者が多数存在する実情がある ので生産部門は共通しないとか、本願指定商品が一般需要者向けの直販サ イト又は家電量販店等で販売されるのに対し、引用商標データ処理装置及 5 び引用商標ソフトウェアは、企業間取引に対応する特定の専門業者により 販売されるから、販売部門も共通しないなどと主張する。しかしながら、
前記のとおり、本願指定商品、引用商標データ処理装置及び引用商標ソフ トウェアは、いずれもディスクドライブ、電子計算機及びソフトウェアと いう電子計算機に関連する商品として同一営業主により開発され、製造及10 び販売され、又は、同一販売店により販売される実情にあるから、営業主 の同一性を誤認させるような生産・販売形態における共通性があるものと 認めるのが相当である。よって、原告の主張を採用することはできない。
? 用途 ア 前記のとおり、本願指定商品、引用商標データ処理装置及び引用商標ソ15 フトウェアは、それぞれディスクドライブ、電子計算機及びソフトウェア であり、いずれも電子計算機に関連する商品である。
そして、本願指定商品と引用商標データ処理装置は、いずれも電子計算 機に関連し、電子データを利用し、これを読み込み・再生し、又はこれを 処理することを目的とするものである。
20 また、本願指定商品と引用商標ソフトウェアは、いずれも電子計算機に 関連し、本願指定商品は電子計算機を動作させて音楽・映像データの取り 込み・再生を行う周辺機器として、引用商標ソフトウェアは電子データを 利用し、電子計算機の周辺機器又は電子計算機を動作させるためのプログ ラムとして、それぞれ電子計算機の機能を実現させることを目的とするも25 のである。
これらの点に照らすと、本願指定商品、引用商標データ処理装置及び引 11 用商標ソフトウェアは、それぞれ役割が異なるものの、いずれも電子計算 機による処理又は電子データの利用を行うために用いられる商品という 意味において、その用途に共通点があるということができる。
イ この点につき、原告は、本願指定商品の用途は、光学ディスクに記録さ 5 れた音楽・映像に関する電子データの読み取り・再生であり、引用商標デ ータ処理装置の用途は、運動に関するデータを取り込み表示するためのデ ータ処理であって用途を異にし、また、引用商標ソフトウェアは、データ の読み取りという用途は、本願指定商品の用途と共通するが、ディスクド ライブとその動作のためのアプリケーションソフトは担う具体的な役割10 が異なるなどと主張する。しかしながら、前記のとおり、本願指定商品
引用商標データ処理装置及び引用商標ソフトウェアは、電子計算機による 処理又は電子データの利用を行うために用いられる商品であるという共 通点があり、およそ営業主の同一性誤認の可能性を否定するほど用途を異 にするものということはできないから、原告の主張を採用することはでき15 ない。
? 需要者の範囲 ア 本願指定商品は「音楽・映像データの取り込み・再生用ディスクドライ ブ」であるから、電子計算機の周辺機器として、その需要者は、電子計算 機の利用者全般である一般の消費者を含むものということができる。
20 他方、引用商標データ処理装置は「ウエイトトレーニング機械器具で測 定された負荷重量・マシーンの変位量・回動数・回動スピードのうちいず れか一以上の値を受信して表示するデータ処理装置、運動用トレッドミル で測定されたローラーベルトの傾斜角度・走行距離・運動経過時間・平均 走行速度・消費カロリ・利用者の体重・歩数・歩幅・ピッチ・心拍数のう25 ちいずれか一以上の値を受信して表示するデータ処理装置」であるから、
前記の情報を受信して表示するためのデータ処理装置(電子計算機)とし 12 て、その需要者は、前記のウエイトトレーニング機械器具又は運動用トレ ッドミルの利用者である。そして、これらの運動用器具は、家庭用又は自 宅利用のためにも販売され(乙45〜47) モバイル端末とともに利用さ 、
れる場合もあることからすると(乙17、21)、その需要者は、前記の運 5 動用器具を利用する施設等の取引者のほか、一般の消費者を含むものとい うことができる。
また、引用商標ソフトウェアは「ダウンロード可能なモバイル機器用の アプリケーションソフトウェア」であるから、モバイル端末を動作させる ためのプログラムとして、その需要者は、モバイル機器を利用する取引者10 のほか、一般の消費者を含むものである。
よって、本願指定商品、引用商標データ処理装置及び引用商標ソフトウ ェアの各需要者は、いずれも広く一般の消費者を含むものとして需要者の 範囲において共通している。
イ この点につき、原告は、本願指定商品の需要者の範囲は、一般家電需要15 者であるのに対し、引用商標データ処理装置の需要者の範囲は、主に運動 用機械の使用施設を運営する専門的知見を持つ事業者等であるから共通 せず、引用商標ソフトウェアの需要者の範囲は、広く一般消費者のほか特 定分野の専門家又は事業者等であるから、一部共通しても一致しないなど と主張する。
20 しかしながら、引用商標データ処理装置が、専門的知見を持つ事業者に より利用されている実情があるとしても、前記のとおり、一般消費者にお いても利用されている実情にあるから、需要者の範囲に係る原告の主張は、
利用態様の一部をいうにとどまる。また、引用商標ソフトウェアについて は、原告においても、需要者の範囲に一般消費者が含まれることを認める25 のであるから、本願指定商品の需要者の範囲と共通するものと認めるのが 相当である。そして、このように本願指定商品、引用商標データ処理装置 13 及び引用商標ソフトウェアの需要者にはいずれも一般消費者が含まれて いると認められる以上、これらの商品やソフトウェアには需要者の共通性 が認められるというべきである。原告の主張を採用することはできない。
? 完成品と部品の関係等 5 本願指定商品と引用商標データ処理装置又は本願指定商品と引用商標ソフ トウェアは、いずれも完成品と部品の関係にはなく、需要者の範囲は共通し ている。その他、本願指定商品、引用商標データ処理装置又は引用商標ソフ トウェアについて、同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそ れがないことを窺わせるような特段の事情も見当たらない。
10 ? 小括 以上によれば、本願指定商品と引用商標データ処理装置及び引用商標ソフ トウェアは、その生産・販売形態、用途、需要者の範囲において共通性があ り、これらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは、同一営業主の製 造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあると認められる関係にあると15 いうべきであるから、本願指定商品と引用商標の指定商品は類似の商品に該 当すると認めるのが相当である。
そうすると、本願商標は、他人の登録商標である引用商標と同一の商標で あって、引用商標の指定商品に類似する商品について使用するものであり、
商標法4条1項11号に該当するものとして登録することはできないから、
20 拒絶査定不服審判の請求を成り立たないものとした本件審決の判断に誤りは ない。
結論
したがって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとして、主 文のとおり判決する。