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追加

関連審決 不服2023-17017
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事件 令和 6年 (行ケ) 10060号 審決取消請求事件

原告 X
同訴訟代理人弁理士:廣江武典、廣江政典、橋本哲、吉田哲基、服部 素 明、谷口直也
被告 特許庁長官
同指定代理人:大塚正俊、大島康浩、山根まり子
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2025/02/04
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2023-17017号事件について令和6年5月 20日にした審決を取り消す。
事案の概要
第 2-1 特許庁における手続の経過等(当事者間に争いがない。)(1) 原告は、令和4年6月7日、「JPCスポーツ教室」の文字から 1 なり、指定役務を第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授、セミ ナーの企画・運営又は開催、スポーツの興行の企画・運営又は開催、
運動施設の提供、運動用具の貸与」とする商標(本願商標)につい て商標登録出願をした。
(2) 原告は、令和5年7月5日付けで拒絶査定を受けたため、同年1 0月6日、拒絶査定不服審判を請求した。
特許庁は、上記請求を不服2023-17017号事件として審 理を行い、令和6年5月20日、「本件審判の請求は、成り立たな い。」との審決(本件審決)をし、その謄本は同年6月4日原告に 送達された。
(3) 原告は、令和6年7月3日、本件審決の取消しを求める本件訴訟 を提起した。
第 2-2 本件審決の理由の要旨 以下のとおり、本願商標は、公益に関する事業であって営利を目 的としないものを表示する標章であって著名な「JPC」(引用標 章)と類似の商標であり、商標法4条1項6号に該当する。
第 2-2(1) 「JPC」の文字は、財団法人日本障害者スポーツ協会の内部組織 で あ る 日 本 パ ラ リ ン ピ ッ ク 委 員 会 ( Japanese Paralympic Committee)の略称であり、パラリンピック競技大会が2001年 以降正式にオリンピック開催地で開催され、その様子がテレビやイ ンターネット等を通じて全世界に向けて発信され、当該競技大会及 びその関連活動等は広く認識されていることからすると、日本パラ リンピック委員会及びその略称「JPC」は、一般に広く認識され て著名性を有するものである。
したがって、「JPC」は、公益に関する事業であって営利を目 的としないものを表示する標章として、本願商標の登録出願前より 著名なものであると認められる。
2 第 2-2(2) 本願商標の構成中「スポーツ」の文字は、「陸上競技・野球・テニ ス・水泳・ボートレースなどから登山・狩猟などにいたるまで、遊 戯・競争・肉体的鍛錬の要素を含む身体運動の総称。」の意味、「教 室」の文字は、「学校で、授業・学習を行う部屋。大学で、専攻領 域ごとの研究室。また、教科別の教官の組織。技芸などを教える 所。」の意味をそれぞれ有する語であり、全体としては、「スポーツ に関する教室」ほどの意味合いを認識させるにすぎず、本願の指定 役務に含まれる「技芸・スポーツ又は知識の教授」との関係におい ては、役務の質(内容)を表示したものとして看取、理解され得る ものであることから、役務の出所識別標識として機能しないもの又 はその機能が極めて弱いものといえる。
他方、本願商標の構成中、「JPC」の文字は、パラリンピック 競技大会の関連活動を行っている組織である、日本パラリンピック 委員会及びその略称として著名な標章である「JPC」とその構成 文字を同じくするものであるから、当該部分は、役務の出所識別標 識として強く支配的な印象を与える。
そうすると、本願商標の構成中、「JPC」の文字を要部として 抽出し、当該構成部分のみを引用標章と比較して商標の類否を判断 することも許されるというべきである。
第 2-2(3) 本願商標の要部である「JPC」の文字と引用標章とを対比する と、いずれも「JPC」の文字からなる点で外観が同一であり、ま た、「ジェイピイシイ」の称呼が生じる点で、称呼が同一である。
そして、本願商標の要部と引用標章は、「パラリンピック競技大会 の関連活動を行っている組織である、日本パラリンピック委員会 (Japanese Paralympic Committee)及びその略称」という観念も 生じる点で、観念が同一である。
3
取消事由
原告が主張する商標法4条1項6号該当性の判断の誤りに関す る取消事由は、以下のとおりである。
・ 「JPC」の文字の著名性判断の誤り(取消事由1) ・ 本願商標と引用標章の類否判断の誤り(取消事由2)
取消事由に関する当事者の主張
第 4-1 取消事由1(「JPC」の文字の著名性判断の誤り)について第 4-1(1) 取消事由1:原告の主張 「JPC」の文字が日本パラリンピック委員会の略称であること、
パラリンピック競技大会及びその関連活動等が広く認識されており、
同委員会も一般に広く認識されて著名性を有するものであることは 認めるが、以下のとおり、その略称である「JPC」までが一般に 広く認識されて著名性を有するものであるとはいえない。
ア 新聞やインターネットなどにおける使用実績 以下の使用実績をみても、「JPC」の文字は、日本パラリン ピック委員会の略称として、一般に広く認識されているとはいえな い。
ア(ア) 朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、産経新聞、日本経済新聞のウェ ブサイトで提供される記事検索において過去3年分の「JPC」の 文字を有する記事を検索したところ、「JPC」の文字が表示され ないか(読売新聞) 「日本パラリンピック委員会(JPC) 、 」と表 示されて、その後「JPC」の文字のみが表示されるだけである。
しかも、その検索結果は、日本オリンピック委員会の略称である 「JOC」で検索される記事数と比較しても少数である。
同様に、インターネット検索エンジンのGOOGLE、MSN、
YAHOOのウェブサイトにおいて「JPC」の文字を検索すると、
4 日本パラリンピック委員会のウェブサイトが表示されるが、その検 索結果の見出しにも「日本パラリンピック委員会(JPC)」と表 示され、「JPC」の文字が単独で表示されることはない。
これらは、検索結果において「JPC」の文字のみを表示しても、
閲覧者はこれが「日本パラリンピック委員会」の略称であると認識 できないために生じた結果であるといえる。
ア(イ) また、上記の検索エンジンによる検索結果の最上位に表示される のは、日本パラリンピック委員会と無関係のウェブサイトであり、
日本パラリンピック委員会と無関係の者が使用する「JPC」の文 字も多数表示される。この点からしても、「JPC」の文字が日本 パラリンピック委員会ないしその略称として一般に広く認識されて いるとはいえない。
ア(ウ) さらに、「日本オリンピック委員会」及びその略称である「JO C」は、国語辞典に掲載されているのに対し、「日本パラリンピッ ク委員会」及びその略称「JPC」の文字は、国語辞典に掲載され ていない。日本パラリンピック委員会のウェブサイトにおいても、
「JPC」の文字を同委員会の略称として宣伝、広告しているペー ジなどは発見できない。やはり、「JPC」の文字は、日本パラリ ンピック委員会の略称として著名ではない。
イ アンケート調査結果 原告において、「JPC」の文字が、日本パラリンピック委員会 の略称として一般に広く認識されているかについてアンケート調査 (以下「本件アンケート」という。)を実施したところ、「JPC」 の文字を正しく想起、認識したものの数は、回答者総数624人中 11人(1.8%)にすぎず、「JOC」の文字を正しく想起、認 識した者(624人中53人、8.4%)より相当少なかった。本 件アンケートの回答者は、スポーツ観戦に関心を有する者、又は自 5 ら運動・スポーツを行う者であり、また、回答者中311人は自ら の身体に何らかの障がいを有するものであるにもかかわらず、この ような条件を満たした回答者においてさえ、「JPC」の文字を日 本パラリンピック委員会の略称として想起、認識した者は極めて少 数である。そうすると、スポーツ観戦に関心がなく又は何らの運 動・スポーツを行っていない等の一般の者においては、「JPC」 の文字を日本パラリンピック委員会の略称として正しく想起、認識 する者の数は、さらに少なくなると推測できる。こうした本件アン ケートの結果に鑑みても、「JPC」の文字は、日本パラリンピッ ク委員会の略称として、一般に広く認識されて著名性を有している とはいえない。
第 4-1(2) 取消事由1:被告の主張ア 日本パラリンピック委員会は、その活動の際に、当該委員会又は その略称を表示するものとして引用標章(「JPC」)を使用してい る。この引用標章は、日本パラリンピック委員会や当該委員会が実 施する活動等を紹介する新聞記事やウェブサイトにおいて、当該委 員会又はその略称を表示するものとして広く一般に使用されている。
そして、記事の見出しにおいては、引用標章が「日本パラリンピッ ク委員会」の文字を伴わない形で使用されているところ、その記事 は全国紙を含む各種新聞におけるものであり、ウェブサイトはその ような新聞社のものや、全国の一般消費者によく知られた大企業の ものである。近年、パラリンピックの認知度が非常に高くなってい ることも踏まえれば、引用標章は、日本パラリンピック委員会又は その略称を表示するものとして、広く一般に認識されるに至ってい るというべきである。
よって、引用標章は、「公益に関する団体であって営利を目的と しないものを表示する標章」であって、かつ、広く一般に知られて 6 いて「著名なもの」に該当する。
イ 原告は、インターネットによる本件アンケートの結果を踏まえ、
引用標章の著名性を否定するが、@本件アンケートは、調査対象者 に対する調査会社(マクロミル社)のコンタクト方法等の実施方法 の詳細が明らかではないところがあり、A本件アンケートの質問2 及び質問3の形式は、「JPC」や「JOC」の正式名称を答えさ せるものではなく、これらの文字から連想させるものを問うような 質問であって、認知度を量る上では適切とはいえず、B原告の主張 のように、自由記述式の質問2の回答結果と、選択式の質問4の回 答結果を比較するのは不適切であり、C質問4では、16問中15 問が特定の組織の略称を表す欧文字に関する質問になっており、質 問数が多すぎて信ぴょう性に影響するという点でも疑義がある。
よって、本件アンケートの結果は、「JPC」の文字について我 が国における周知性がないことを推し量る根拠としては適切なもの とはいい難い。
第 4-2 取消事由2(本願商標と引用標章の類否判断の誤り)について第 4-2(1) 取消事由2:原告の主張ア 本願商標は、その外観、呼称及び観念のいずれの判断要素におい ても一体不可分の商標として認定されるものである。本件審決が認 定したように、本願商標中の「スポーツ教室」の部分が「スポーツ に関する教室」ほどの意味合いを認識させることは認めるが、当該 部分が本願の指定役務に含まれる「技芸・スポーツ又は知識の教授」 との関係において、役務の出所識別標識として機能しないもの又は その機能が極めて弱いなどとはいえない。このような本件審決の認 定は、本願商標から生じる観念のみに基づいて行われたものであり、
本願商標の外観称呼を総合した上で認定を行っていない点で誤り である。
7 まず、本願商標の外観は、普通の書体で表した「JPCスポーツ 教室」の文字からなる商標であるところ、各文字の大きさ及び書体 は同一であり、全体が等間隔に1行でまとまりよく表されているも のであって、外観に起因して一体性を損なう商標ではない。
また、本願商標の呼称は「ジェイピーシースポーツキョウシツ」 ないし「ジェーピーシースポーツキョウシツ」であるが、特段冗長 ともいえず、語頭に長音を備えた3音が並び、語呂、語感よく称呼 できる。そして、「JPC」、「スポーツ」及び「教室」の文字は 需要者、取引者によく知られて容易に称呼できる文字であるから、
本願商標は、呼称において一気一連に称呼される。
本願商標の観念についても、本願商標は、その構成中「スポーツ 教室」部分が、識別標識として機能しないもの又はその機能が極め て弱いものとされるものではないから、需要者・取引者において、
「JPCが提供するスポーツに関する教室」ないし「JPCのス ポーツに関する教室」ほどの意味合いを生じるものである。
イ 上記のとおり、「JPC」の部分は著名とはいえず、しかも、あ りふれたアルファベット3文字を組み合わせた簡単な構成にすぎず、
構成上顕著な特徴や独創性を有するものではないから、役務の出所 識別標識として強く支配的な印象を与えるとはいえない。
ウ 以上によれば、本願商標は、「JPCスポーツ教室」と一体不 可分の商標として認定されるべきであり、その構成中の「JPC」 の部分を役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるもの として抽出することはできず、引用標章と類似すると判断すること はできない。
第 4-2(2) 取消事由2:被告の主張 後記第5-2と同趣旨であるから、詳細は割愛する。
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当裁判所の判断
第 5-1 取消事由1(「JPC」の文字の著名性判断の誤り)について第 5-1(1) 商標法4条1項6号の「著名なもの」の意義についてア 本件においては、本願商標構成中の「JPC」の文字が日本パラ リンピック委員会の略称であり、同委員会が公益に関する団体で あって営利を目的としないものであることについて、当事者間に争 いはないから、引用標章である「JPC」は、商標法4条1項6号 (以下、この項において「本号」という。)の「公益に関する団体 であって営利を目的としないもの」を表示する標章であるといえる。
そこで、引用標章が上記委員会の略称として「著名なもの」とい えるかを検討する前提として、「著名なもの」の意義について述べ る。
イ 本号の趣旨は、@国、地方公共団体、公益に関する団体等の公共 性に鑑み、その信用を尊重するとともに、A出所の混同を防いで取 引者、需要者の利益を保護しようとしたものと解される。
上記Aの趣旨は、商標法4条1項10号と基本的に異なるもので はなく、本号の「著名なもの」については、同項10号の「需要者 の間に広く認識されている」(いわゆる広知性)と整合的に解釈す るのが合理的である。また、上記@の趣旨が加わっている点は、同 条3項、47条1項の適用の有無に違いを生じさせている理由にな るとしても、本号の「著名なもの」を上記広知性よりも限定的に解 釈すべき根拠となるものではない。
そうすると、本号の「著名なもの」とは、4条1項10号の「需 要者の間に広く認識されている」と同等の意義を有するものと解す べきである。以下、このような前提で、本号の著名性要件の充足を 検討することとする。
第 5-1(2) インターネット上での使用状況について 9 ア 「JPC」の文字は、新聞社を含む各種ウェブサイトの記事や、
インターネット検索エンジンの検索結果において、「日本パラリン ピック委員会(JPC)」というように、正式名称である「日本パ ラリンピック委員会」という標記を伴うこともあるが(甲7〜10、
12〜14)、記事などの見出しにおいて「JPC」の文字だけが 単独で使用され、本文に最初に登場する場合に正式名用が記載され ていることも多く(乙16〜37)、正式名称を伴わずに「JPC」 の文字だけが表記される例もある(乙38)。
また、日本パラリンピック委員会のウェブサイトで、事業内容の 説 明 と し て 「 日 本 パ ラ リ ン ピ ッ ク 委 員 会 ( JPC = Japanese Paralympic Committee)は、・・・次の事業を行なっています。」と表 記され、同ウェブサイトの各所で「【JPC プレスリリース】 、
」 「JPC オフィシャルスポンサー」 「・・・JPC加盟団体向け法務相談窓口」 、 、
「JPC 強化本部」 「JPC 女性スポーツ委員会」 「JPC クラス分け委員 、 、
会」 「JPC 加盟要項」 「JPC 委嘱者一覧」などと、
、 、 「JPC」の文字 が正式名称を伴わないまま単独で使用されている(甲17の1、
2)。
以上によると、「JPC」の文字は、日本パラリンピック委員会 又はその略称を表示するものとして、広く一般に使用されていると 推認できるといえ、原告が主張するように、上記のウェブサイトを 閲覧する本願商標の指定役務に係る需要者において、「日本パラリ ンピック委員会」という正式名称を伴わなければ、その意味を理解 することができないとはいえない。
イ さらに、インターネットの各種検索エンジンによって「JPC」 の文字を検索すると、検索結果として、@Googleの場合は、
上から順に「Japan Percussion Center」 「株式会社JPC:ホー 、
ムページ」 「JPC株式会社」 「日本パラリンピック委員会(JP 、 、
10 C)」と表示され(甲12、26)、AマイクロソフトのMSNの場 合は、上から順に「JPC スポーツ教室・・・」 「JPC スポーツ教室岐阜 、
店・・・」 「日本パラリンピック委員会」と表示され(甲13、27) 、 、
B Y A H O O ! J A P A N の 場 合 は 、 上 か ら 順 に 「 Japan Percussion Center」 「株式会社JPC:ホームページ」 「JPC 、 、
株式会社」 「日本パラリンピック委員会(JPC) 、 」と表示される (甲14、28)。
このように、「日本パラリンピック委員会」の検索結果は上位3 〜4位に必ず入っているのであり、しかも、「日本パラリンピック 委員会」以外の検索結果は、本願商標の指定役務に含まれる「技 芸・スポーツ又は知識の教授」とは無関係であることからすると、
指定役務に係る需要者との関係では、「日本パラリンピック委員 会」は最上位に掲載されているといえる。
以上の事実は、「JPC」の文字が、日本パラリンピック委員会 又はその略称として一般に広く認識されていることを示す有力な根 拠となり得るものである。
第 5-1(3) 本件アンケートの結果についてア 証拠(甲31、41、46、47、いずれも枝番を含む。以下同 じ。)及び弁論の全趣旨によれば、本件アンケートの結果(一部抜 粋)は、別紙「本件アンケート結果」記載のとおりであると認めら れる。
イ 質問1の回答結果によれば、「JPC」を聞いたことがあると答 えた回答者は、624人中179人(28.7%)になっており、
回答者全体の約3割という高い割合になっている。
もっとも、質問2で、「JPC」と聞いて思い浮かぶものを最大 3つまで挙げた回答者のうち、「日本パラリンピック委員会」及び 「ジャパンパラリンピック委員会」と回答した者は、合計で11人 11 (1.8%)にとどまっている。原告はこの点を指摘して「JPC」 の著名性を否定するが、質問2の質問内容は、「思い浮かぶもの」 を最大3つまで回答させるものであり、日本パラリンピック委員会 を知っている者が、同委員会に多少なりとも関連し得るものとして、
例えば、「パラリンピック」(全体での回答者34人、5.4%)、
「パラスポーツ」(4人、0.6%) 「オリンピック」 、 (4人、0. 6%) 「日本パラリンピック」 、 (3人、0.5%) 「障害者スポー 、
ツ」(2人、0.3%) 「パラ五輪」 、 (1人、0.2%) 「スポーツ」 、
(3人、0.5%) 「障害者」 、 (3人、0.5%)等を選択した可 能性も否定できない。そして、以上の選択肢の合計回答者数は54 人(8.7%)に上り、以上の結果は、「JPC」について、完全 に正確な理解とまではいえなくても、日本パラリンピック委員会に 関係する略語であるとの認識という意味であれば、需要者における 相当の認知度を示すものということができる。
ウ 原告は、本件アンケートの結果、「JPC」の認知度が「JOC」 より低いと主張する。確かに、質問3の回答結果によれば、「JO C」について思い浮かぶものを最大3つまで回答させたところ、
「JOC(日本オリンピック委員会) (51人、8.2%) 「日本 」 、
オリンピックいいんかい」(1人、0.2%)及び「JAPANオ リンピック委員会」(1人、0.2%)と回答した者の合計は53 人(8.5%)であり、「JPC」と聞いて「日本パラリンピック 委員会」及び「ジャパンパラリンピック委員会」と回答した者(合 計11人、1.8%)より多くなっている。しかし、本件では「J PC」自体の著名性が認められれば足りるのであり、「JOC」と 比較してその認知度が低いからといって、このことから「JPC」 が日本パラリンピック委員会ないしその略称として認知されていな いと推認することはできない。
12 また、原告は、質問4の結果も踏まえ、「JPC」は、「JFA」、
「JAL」 「JAXA」 「JICA」 「JRA」 「JRE」などと 、 、 、 、
いった略称と比較しても認知度が低いとも主張するが、上記同様の 理由でそのような比較は失当である。
原告は、本件アンケートの対象者(回答者)が、スポーツ観戦 に関心を有する者か、自ら運動・スポーツを行う者であり、これら の条件を満たさない一般の者においては、「JPC」の文字を日本 パラリンピック委員会の略称として想起、認識する者はさらに低く なるとも主張する。しかし、上記のように、「JPC」が同委員会 の略称として広く認識されて「著名なもの」といえるかについては、
本願商標の指定役務に係る需要者との関係で判断するのが相当であ り、これを広く一般の者にまで広げる原告の上記主張は、その前提 において採用することができない。
エ 以上によれば、本件アンケートの結果は、原告が主張するような 「JPC」の認知度の低さを示すものとは必ずしもいえず、むしろ、
需要者における相当の認知度を示すものと評価することができる。
第 5-1(4) 以上に加え、昨今におけるパラリンピック競技に関する活動の活 性化やその宣伝広告の状況を踏まえると、「JPC」の文字が、原 告が主張するように、国語辞典に掲載されておらず、あるいは、仮 に「JOC」の文字より知名度が低いとしても、なお、引用標章は、
本願商標の指定役務に係る需要者の間において広く認識されており、
著名性を有すると認めるのが相当である。
よって、取消事由1に関する原告の主張は、採用できない。
第 5-2 取消事由2(本願商標と引用標章の類否判断の誤り)について第 5-2(1) 要部観察について 本願商標の構成中、「JPC」の文字は、「日本パラリンピック委 員会又はその略称」を表示する標章として著名な引用標章と構成文 13 字を同一にするものであるから、当該文字部分は、「日本パラリンピック委員会」ほどの意味合いを理解させるものである。本願商標は、当該文字部分によって、「日本パラリンピック委員会」に関するものであることを強く理解、認識させるものであり、「JPC」の文字は、役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものといえる。
また、「スポーツ」の文字と「教室」の文字を結合してなる「スポーツ教室」の文字は、「陸上競技やテニスなどのスポーツの技術等を教えるところ」ほどの意味合いを認識させる語として広く一般に使用されているものと認められるから(乙43〜48)、当該文字部分は、本願の指定役務に含まれる「技芸・スポーツ又は知識の教授」との関係において、役務の質を表示したものであって、役務の出所識別標識として機能しないか、その機能が極めて弱いものといえる。
そうすると、本願商標の構成中の「JPC」の文字部分は、「スポーツ教室」の文字部分と比較して、強く支配的な印象を与えるということができるから、本願商標は、その構成中の「JPC」の文字部分を要部として抽出し、当該文字部分のみを引用標章と比較して、商標の類否判断をすることが許されるといえる。
したがって、本願商標は、これを構成する文字全体 から生じる「ジェイピイシイスポーツキョウシツ」の呼称及び「日本パラリンピック委員会によるスポーツの技術等を教えるところ」の観念のほか、その構成中の要部である「JPC」の文字に相応して、「ジェイピイシイ」の呼称及び「日本パラリンピック委員会」の観念を生じるものといえる。
そして、引用標章と本願商標の要部である「JPC」と引用標章を比較すると、両者はその構成文字を同じくし、外観、呼称及び観 14 念において同一である。そうすると、本願商標と引用標章は類似す るというべきである。
第 5-2(2) 原告の主張について これに対し、原告は、本願商標中の「スポーツ教室」の部分が 「スポーツに関する教室」ほどの意味合いを認識させることは認め るものの、当該部分が本願の指定役務に含まれる「技芸・スポーツ 又は知識の教授」との関係で、役務の出所識別標識として機能しな いもの又はその機能が極めて弱いものとはいえないと主張する。
しかし、本件において、そのような主張を基礎づけるに足りる取 引の実情等について、具体的な主張・立証があるわけではなく、失 当というべきである。
また、原告は、「JPC」の部分の著名性を争い、当該部分が役 務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものではないと も主張するが、これが採用できないことは、上記のとおりである。
第 5-2(3) 小括 以上のとおり、原告の主張する取消事由2も理由がない。
以上によれば、原告主張の取消事由はいずれも理由がなく、本件
審決にこれを取り消すべき違法は認められない。したがって、原告 の請求を棄却することとして、主文のとおり判決する。
追加
15 裁判官本吉弘行裁判官岩井直幸16 (別紙)本件アンケート結果1調査概要調査委託先:マクロミル調査方法:インターネット調査対象者:全国の15歳以上70歳未満の者回答者数:624人調査期間:令和6年8月6日から同月9日まで条件:回答者の全てがスポーツ観戦に関心を有する者か、自ら運動・スポーツを行う者である。また、回答者624人中311人は自らの身体に何らかの障がいを有する者であり、残りの313人は健常者である。
2質問1(甲31-1)(1)質問内容あなたは、「JPC」を聞いたことがありますか。
(2)回答結果人数聞いたことが聞いたことがある。ない。
全体62417944528.7%71.3%うち健常者3135825518.5%81.5%障がいを持311121190つ方38.9%61.1%3質問2(甲31-2)17 (1)質問内容あなたが、「JPC」と聞いて、思い浮かぶものを最大3つまでお答えください。※思い浮かぶものがない場合は、「わからない」とお答えください。【1つ目のみ必須】(2)回答結果(一部抜粋)全体うち健常者うち障がいを持(624人)(313人)つ方(311人)日本パラリンピッ1046ク委員会1.6%1.3%1.9%パラリンピック3410245.4%3.2%7.7%パラスポーツ4130.6%0.3%1.0%オリンピック4220.6%0.6%0.6%日本パラリンピッ321ク0.5%0.6%0.3%障害者スポーツ2020.3%0.0%0.6%ジャパンパラリン110ピック委員会0.2%0.3%0.0%パラ五輪1100.2%0.3%0.0%・・・スポーツ3120.5%0.3%0.6%・・・18 障害者3120.5%0.3%0.6%・・・その他5114378.2%4.5%11.9%わからない・特に505271234無し80.9%86.6%75.2%19 4質問3(甲31-3)(1)質問内容あなたが、「JOC」と聞いて、思い浮かぶものを最大3つまでお答えください。※思い浮かぶものがない場合は、「わからない」とお答えください。【1つ目のみ必須】(2)回答結果(一部抜粋)全体うち健常者うち障がいを持つ(624人)(313人)方(311人)JOC(日本オリン512427ピック委員会)8.2%7.7%8.7%・・・日本オリンピッ101クいいんかい0.2%0.0%0.3%・・・JAPANオリンピッ110ク委員会0.2%0.3%0.0%・・・20 5質問4(甲41-1〜甲41-14)(1)質問内容次の略称のうち、あなたはどの程度知っていますか。あてはまるものをそれぞれ一つずつお選びください。
(2)回答結果(一部抜粋)全体うち健常者うち障がいを持つ(624人)(313人)方(311人)日本パラリ1156ンピック委1.8%1.5%1.9%員会、ジャパンパラリンピック委員会JFA(日本279143136サッカー協44.7%45.7%43.7%会)JAL(日本航477238239空)76.4%76.0%76.8%JAXA(宇宙247105142航空研究開39.6%33.5%45.7%発機構)JICA(国際1858699協力機構)29.6%27.5%31.8%JRA(日本中320146174央競馬会)51.3%46.6%55.9%JRE(東日本215108107旅客鉄道)34.5%34.5%34.4%21 ・・・22
裁判長裁判官 宮坂昌利