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関連審決 無効2022-680001
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事件 令和 6年 (行ケ) 10101号 審決取消請求事件
5
原告 ナガセテクノエンジニアリング株式会社
同訴訟代理人弁理士 三上真毅 10
被告アレフ 15 同訴訟代理人弁護士 千且和也
同訴訟代理人弁理士 内田佐江子
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2025/04/10
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
20 事 実 及 び 理 由第1 請求特許庁が無効2022−680001号事件について令和6年10月23日にした審決を取り消す。
第2 事案の概要25 1 特許庁における手続の経過等(当事者間に争いがない。)(1) 被告が商標権を有する国際登録第1496667号商標(以下「本件商1標」という。)は、以下の構成からなり、2018年(平成30年)11月23日にフランス国においてした商標登録出願に基づく優先権を主張し、2019年(令和元年)5月15日に国際商標登録出願、第7類、第9類及び第42類に属する別紙の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、令和5 3年6月11日に登録査定、同年11月12日に設定登録されたものである。
10 (2) 原告は、令和4年10月19日付け審判請求書にて、特許庁に対し、本件商標について、商標法4条1項10号及び15号該当を理由に、本件商標の指定商品及び指定役務中、第9類の全ての指定商品、及び第42類の指定役 務 中 「 computer system analysis; design and development ofcomputers and software for measuring; research and development of15 new products for third parties in the field of precision measuring;computer system design; software development in the context ofsoftware editing; software development, software installation,maintenance of computer software; calibration; electronic datastorage; monitoring of computer systems for fault detection;20 monitoring of computer systems by remote access; design anddevelopment of computer hardware and software for measuringtechnology; research and development of new products for thirdparties in the field of precision measuring; massive data analysiscomputer services.」(以下「請求商品及び請求役務」という。)について25 の商標登録を無効とする審判を請求した。
特許庁は、上記の申立てを無効2022−680001号事件として審理2を行い、令和6年10月23日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は同月29日原告に送達された。
(3) 原告は、令和6年11月28日、本件審決の取消しを求める本件訴えを5 提起した。
2 本件審決の理由の要旨本件審決は、以下のとおり、引用商標の周知性を否定し、商標法4条1項10号該当性を否定するとともに、周知性が認められないから引用商標に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれもないとして、同項15号該当性も否定した。
10 (1) 引用商標原告が、本件商標の登録の無効の理由として引用する商標(以下「引用商標」という。)は、以下のとおり「SCANTEC」の文字を横書きしてなるものであり、原告が「表面欠陥検査装置」(以下「引用商品」という。)について使用し、需要者間で広く知られていると主張するものである。
15(2) 引用商標の周知性について20 原告が引用商標の周知性の根拠として主張する「SCANTEC3000」 「SCANTEC4000」 「SCANTEC5000」等、
、 、 「SCANTEC(Scantec) (引用商標)の文字を使用した表面欠陥検査装」置(以下、これらをまとめて「引用使用商品」という。)に関する分野における国内市場シェア、展示会出展の事実、引用使用商品が紹介された新聞及25 び専門誌の存在、引用使用商品を記載した特許公報の存在については、引用使用商品単独での国内市場シェアが分からないなど、周知性を測る事実とし3て不十分なものである。
よって、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用使用商品に使用されている引用商標が、原告又は原告の親会社で引用使用商品に係る事業を原告に承継させた長瀬産業株式会社(以下「長瀬産業」といい、原告5 と併せて「原告ら」という。)の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の取引者及び需要者の間において、広く知られていると認めることはできない。
(3) 商標法4条1項10号該当性について本件商標は、「SCANTECH」の文字部分が自他商品及び役務の識別10 標識として強く支配的な印象を与える部分といえるから、これを要部として分離、抽出し、他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許される。
そして、当該「SCANTECH」の文字は、辞書類に掲載された語ではなく、特定の意味合いをもって親しまれた語でもないから、一種の造語として理解される。
15 そうすると、本件商標と引用商標は、観念において比較できないとしても、外観において近似した印象を与え、称呼「スキャンテック」を共通にするから、両者は類似の商標である。しかし、引用商標は、原告らの業務に係る商品を表示するものとして、我が国の取引者及び需要者の間で広く認識されていたものではないから、本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標の20 使用商品の類否について検討するまでもなく、本件商標は、商標法4条1項10号に該当しない。
(4) 商標法4条1項15号該当性について本件商標と引用商標とは類似性の程度が高く、本件商標の請求商品及び請求役務と引用商標の使用商品が一定程度の関連性を有し、引用商標が一定25 程度の独創性を有するといい得る。しかし、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、原告らの業務に係る商品を表示するものとし4て、我が国の取引者及び需要者の間に広く知られているものではないから、
本件商標が請求商品及び請求役務に使用された場合、需要者をして引用商標を連想又は想起させることは考えにくく、請求商品及び請求役務が他人(原告ら)あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に5 係る商品又は役務であると誤認させ、商品又は役務の出所について混同を生じさせるおそれはない。
したがって、本件商標は、商標法4条1項15号に該当しない。
3 取消事由(1) 引用商標の周知性に関する判断の誤り10 (2) 商標法4条1項10号該当性判断の誤り(3) 商標法4条1項15号該当性判断の誤り第3 取消事由に関する当事者の主張1 取消事由1(引用商標の周知性に関する判断の誤り)について【原告の主張】15 原告及びその親会社である長瀬産業(原告は、平成28年に長瀬産業から引用使用商品に係る事業を承継した。)は、1990年発売の「SCANTEC3000」以降、一貫して引用商標である「SCANTEC」の名称を使用してきている。本件の引用商品は、事業者の生産設備や製造工程・ラインに組み込まれて利用される産業用のものであるから、店頭に陳列して販売に供される20 ものではない。しかも、需要者の製造ラインに用いられる商品の性質上、納入先や数量・スペック等は内部情報に関わり、実際の需要者の公表を控えざるを得ない。さらに、引用商品は、メンテナンスなどのために長期的・継続的なサポートが必要であり、一旦納入されれば、エンドユーザーやその社内関係者は、
連日、原告らの引用商標及び引用使用商品を目にする。こうした事情を前提に、
25 以下の点に鑑みれば、引用使用商品については、長年の使用期間、十分な納入実績、売上げ、国内市場シェアが認められ、引用商標には周知性があるという5べきである。
(1) 株式会社富士経済発行の「画像処理システム市場の現状と将来展望」(甲49〜60)に掲載された統計データを基に、引用使用商品を含む「SCANTEC」シリーズの販売数量、金額及び市場シェアを見てみると、数5 量ベース及び金額ベースとも、過去20年間継続して、「Web外観検査装置」市場の国内シェア10%前後で推移している。また、メーカー名を時系列でみると、2002年(平成14年)以降、常に上位に掲載されたメーカーは原告らしかなく、しかも、近年は、原告を含む11社で国内市場シェア(金額ベース)の95%近くを占めるに至っている。この国内市場シェア10 は、引用使用商品の他に廉価版の商品を加えたものであるが、当該廉価版である「WebSENSOR」及び「WEBSENSORU」は「SCANTEC」シリーズのオプションとして位置付けられており、これら廉価版のモニターには「SCANTECELEMENTS」又は「SCANTECELEMENTS2」の文字が表示されるから、これら廉価版の商品はいずれも15 引用使用商品に他ならない。よって、上記国内市場シェアは、全て引用使用商品についてのものである。
また、インターネット検索エンジンGoogleを用いて、「検査装置」の後に、競合他社のWeb外観検査装置(機種名)の主力機種名を入力してキーワード検索したところ、下記の結果が確認された(甲135)。近年、
20 国内市場シェア上位を占めるメーカーの主力機種の中で、「LSC−6000」に次いで原告の「SCANTEC」の検索件数が多かったことは、引用商標の周知性を推し量るものといえる。
メーカー名 機種名 Google 検索件数ナガセテクノエンジニアリ SCANTEC 約 2,930 件ング(原告)6ヒューテック MaxEye (甲 53) 約 523 件オムロン NASP (甲 53) 約 1,970 件タカノ Hawk eyes (甲 58) 約 1,640 件メック LSC-6000 (甲 56) 約 4,690 件ニレコ Mujiken (甲 57) 約 838 件(2) 原告らは、業界団体が主催する展示会において、頻繁に「SCANTEC」シリーズのカタログやパネル展示をし、実機を使った表面欠陥検査のデモを行うなどして、事業者向けの販促活動に注力してきた(甲41〜47)。
その出展回数や頻度、展示会の会場や規模(出展者は約100〜500社)、
5 業界内での注目度(来場者数は約5千〜4万人)、引用商品が特定の事業者向け商品であるという取引の実情を考慮すると、原告らの展示ブースへの来訪者が不明であることだけをもって引用商標の周知性を否定することは、原告らの営業努力を軽視しすぎており、妥当とは言い難い。
(3) 「SCANTEC」シリーズに関する記事は、下記の業界新聞等におい10 て度々掲載されただけでなく(甲6〜17。発行部数等については甲136〜141)、各種専門誌(甲61〜75、90〜115)においても何度となく掲載されている。引用商品である「表面欠陥検査装置」(Web外観検査装置)は大量消費型商品ではなく、事業者の生産設備や製造工程・ラインに組み込まれて利用される産業用であり、各社とも、メディアを用いた宣伝15 広告活動を大々的に行っているわけではないから、こうした掲載によって引用商標の周知性は十分認められるというべきである。
新聞・雑誌名 創刊 発行部数 出版社化学工業日報 1947 年 13万部余 株式会社化学工業日報社日刊工業新聞 1915 年 338,086 部 株式会社日刊工業新聞社7月刊 1981 年 12,000 部 株式会社オプトロニクス社OPTRONICS画像ラボ 1990 年 15,000 部 日本工業出版株式会社プラスチックス 1950 年 25,000 部 日本工業出版株式会社(2011 年〜)映像情報 Medical 1968 年 10,000 部 産業開発機構株式会社(4) 引用商品の主たる需要者である大手事業者(甲89)が、その作成する特許明細書(甲76〜88)において、原告らの引用商品である「表面欠陥検査装置」について言及している。これは、引用商品の主たる需要者における引用商標の認知度を推し量る有用な認定要素として、十分評価されて然る5 べきであり、当該事業者が属する業界において、引用商標は認知度が高いといえる。
【被告の主張】以下のとおり、原告の主張は失当であり、引用商標に周知性は認められない。
(1) 原告が主張する統計データは、原告らの商品全体の国内市場シェアを示10 すだけで、引用使用商品自体の国内市場シェアを示すものではない。引用使用商品は、単に原告らの主要商品として紹介されているにすぎず、その国内市場シェアには、引用使用商品でない廉価版「WebSENSOR」及び「WEBSENSORU」が相当な割合で含まれていることが明らかである。
そして、原告が主張する廉価版の商品は、引用商標と異なる名称のものであ15 り、引用商標を使用しているとはいえない。
さらに、原告の主張する国内市場シェアの数値も、2002年頃には44.0%であったものの、2006年には10%台まで落ち込み、2011年からは、引用商標を使用していない廉価版「WEBSENSORU」の実績が向上しているから、本件商標の優先日である2018年(平成30年)20 11月23日頃には、引用使用商品の国内市場シェアは相当程度落ち込んだ8ことが予想される。
また、原告は、インターネット検索エンジンの検索結果を用いて引用商標の周知性を主張しているが、検索エンジンの検索結果は様々なアルゴリズムに基づいて生成されるものであって、ヒット数が多いことと、それが広く5 認識されていることは必ずしも結びつくものではない。そもそもこの検索結果(甲135)は、本件商標の優先日以降の令和7年1月8日に検索された結果であって、上記優先日における引用商標の周知性の証拠になり得ない。
(2) 原告は、展示会への出展の多さを周知性の根拠として主張するが、その出展回数や頻度は1年間に1回程度であって、決して多いとはいえない。展10 示会の規模や来場者数も必ずしも多くなく、例え多くの来場者がいたとしても、引用使用商品が展示されたブースに足を運んだ者の数が多くなければ、
引用商標が多く認識されることはない。本件において、引用使用商品が展示されたブースへの訪問者数について何ら主張立証がなされていない。
(3) 原告は、業界紙に原告らの製品が紹介されたことを引用商標の周知性を15 基礎付ける事実として主張するが、僅かな回数の新聞掲載にすぎず、しかもこれら新聞の発行部数も明らかではない。また、原告が主張する新聞記事(甲6〜17)の中には、本件商標の優先日よりも20年以上前に発行された新聞(甲8〜10、13など)が複数含まれており、しかもそのうちの甲10の新聞記事(平成4年11月26日付け日本工業新聞)は、査定型カメ20 ラに関する記事であって、引用使用商品の記事ですらない。
(4) 原告は、原告らの製品について特許明細書に記載した大手事業者が引用商品の主たる需要者であるとするが、中小企業など、甲第89号証に記載されていない事業者であっても、引用商品を利用することはあるから、需要者を大手事業者に限定する理由はない。そもそも、原告は、これらの大手事業25 者の間に引用商標が広く認識されていることについてすら主張立証していない。
9また、特許明細書に原告らの製品を記載するのは、いわゆる実施可能要件などを満たすためであり、その記載者は、装置の現物やその他資料などを確認しながら記載するのが通常であって、装置の名称を記憶しているとは限らない。よって、特許明細書に記載されたからといって、引用商標の周知性5 が基礎付けられることにはならない。
2 取消事由2(商標法4条1項10号該当性判断の誤り)について【原告の主張】上記のとおり、引用商標は、引用商品及びこれに関連する役務に係る需要者又は取引者の間に広く認識されている。また、本件商標と引用商標は、仮に、
10 観念において比較できないとしても、外観において近似した印象を与え、称呼を共通にするから、両者は類似の商標である。
さ ら に 、 本 件 商 標 の 指 定 商 品 第 9 類 中 の 「 weighing apparatus andinstruments; measuring sensors, infrared sensors, beta radiationsensors, laser triangulation sensors; distance recording apparatus;15 quantity indicators; densimeters, densitometers, detectors, infrareddetectors, gages, electric measuring apparatus, precision measuringapparatus; measures, measuring apparatus and instruments; measuringapparatus; optical sensors, x-ray sensors; microwave detectors,interferometers, optical detectors; measuring instruments」は、「表面20 欠陥検査装置」と同一の類似群コードが付される類似商品である。
したがって、本件商標は、上記の指定商品について、商標法4条1項10号の無効理由がある。
【被告の主張】上記のとおり、引用商標に周知性は認められない。商標法4条1項10号は、
25 例外的に未登録の商標を保護する制度であるので、仮に引用商標程度の認知度しかなく、しかも未登録で保護されるとすると、それは、商標制度を崩壊する10ことになる。
3 取消事由3(商標法4条1項15号該当性判断の誤り)について【原告の主張】上記のとおり、引用商標は、原告らの引用商品を表示するものとして、需要5 者又は取引者の間で広く認識されていた。よって、文字部分において引用商標と外観において酷似し、同一の称呼「スキャンテック」を生じ、スキャン技術という観念上も類似していると認められる本件商標が、請求商品及び請求役務に付して使用された場合には、これに接する取引者又は需要者は、「SCANTEC」の文字部分に着目し、周知な引用商標を連想、想起して、当該商品又10 は役務が原告ら又はこれと緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る商品又は役務であると誤信するおそれがあるものというべきである。
したがって、本件商標は、請求商品及び請求役務において、商標法4条1項15号の無効理由がある。
15 【被告の主張】本件商標は、「スキャンテック」の称呼を有する点において引用商標と共通するが、「SCANTECH」の欧文字全体を黒い枠で囲むとともに、欧文字を白抜きで表示し、「SCANTECH」の欧文字及びこれを構成する「A」の上下に三角の図形を向かい合うような形で配しており、両商標は、外観を著20 しく異にする。そして、原告が主張するところの、引用商標の商品又は役務の取引者・需要者の特殊性を考慮すれば、引用商品を取り扱う市場において、取引者・需要者が専ら商標の称呼のみによって商標を識別し、商品又は役務の出所が判別される実情はない。すなわち、引用商品の取引者・需要者たる専門家が取引に際して商標に払うであろう注意力は一般の取引者・需要者より高く、
25 その外観の差異によって容易に商標を識別するであろうことは必定である。そして、引用商標が、引用商品の業界の需要者に広く認識されていないことは、
11上記のとおりである。
したがって、本件商標が引用商標と混同が生じることはない。
第4 当裁判所の判断1 取消事由1(引用商標の周知性に関する判断の誤り)について5 (1) 原告は、引用商標が引用商品の需要者の間に広く認識されていること(周知性)の根拠として、引用使用商品の国内市場シェアが高いことを主張するが、原告が主張する「画像処理システム市場の現状と将来展望」(甲49〜60)に掲載された統計データから分かる国内市場シェアは、原告らの扱う商品全体についてのものであり、引用使用商品だけに限ったものではな10 い。その国内市場シェアに関する数値には、引用使用商品を含む「SCANTEC」シリーズの廉価版「WebSENSOR」及び「WEBSENSORU」が含まれており、そのような廉価版商品の需要が相当程度あることは十分推測できる。原告は、これら廉価版のモニターに「SCANTECELEMENTS」又は「SCANTECELEMENTS2」の文字が表示さ15 れるなどと主張するが、これらは引用商標そのものではなく、引用商標の周知性を基礎付けることにはならない。
また、原告は、インターネット検索エンジンによる「SCANTEC」の検索結果の多さ(甲135)を主張するが、当該検索結果は様々なアルゴリズムに基づいて検索されるものであって、検索結果数が多いことから直ち20 に周知性が基礎付けられるものではない。しかも、同検索結果(約2930件)についても、周知性の観点からこの数値を評価する適当な基準も見当たらず、当該結果をもって直ちに引用商標の周知性を認めるわけにもいかない。
(2) また、原告は、業界団体が主催する展示会への出展数の多さを周知性の根拠として主張し、証拠(甲41)を提出するが、同証拠によっても、その25 出展回数や頻度は1年間に1、2回程度というのであり、決して多いとはいえない。そして、同証拠によれば、展示会への出展者数については、10012社から500社程度であり、参加者数が5000人から4万人以上であったということからすると、これらの展示会にはある程度の来場者があったとはいえるものの、原告の出展ブースに来場した者の数の分かる証拠もない以上、
こうした出展の事実をもって引用商標の周知性を認めることもできない。
5 (3) さらに、原告は、業界新聞や各種専門誌に原告らの製品が紹介されたことを主張するが、業界新聞への掲載回数は、30年近くの間に12回程度であり(甲6〜17)、専門誌への記事や広告の掲載回数も27年間で40回程度であり(甲61〜75、90〜115)、それらの掲載は散発的であるといわざるを得ず、その回数も必ずしも多いともいえない。しかも、これら10 の記事が掲載された業界新聞や専門誌の発行部数の詳細も本件証拠上不明である。そうであるとすると、上記の事実をもって、引用商標の周知性を認めることはできない。
(4) 原告は、特許明細書(甲76〜88)に原告らの製品について言及があることを指摘し、これらの特許明細書を作成した大手事業者が引用商品の主15 たる需要者に該当すると主張するが、中小企業などであっても引用商品を利用することは容易に想定し得るところであるし、そもそも、特許明細書に原告らの製品について言及があることと引用商標の周知性が直接結び付くものではない。したがって、上記言及の事実をもって引用商標の周知性を認めることはできない。
20 (5) 原告は、以上のほかに、引用商品が店頭に陳列して販売に供されるものではなく、需要者の製造ラインに用いられる商品の性質上、納入先や数量・スペック等は内部情報に関わるものであり、実際の需要者の公表を控えざるを得ないこととか、引用商品について長期的・継続的なサポートが必要であるから、一旦納入されれば、エンドユーザーやその社内関係者は、連日、原25 告らの引用商標及び引用使用商品を目にするようになるなどとも主張する。
しかし、仮にそのような事情が認められるとしても、引用商標の周知性の立13証が著しく困難になるものでもないから、周知性立証が不十分であるとの上記判断は左右されない。
(6) 以上により、引用商標に周知性があることを理由にした取消事由1に関する原告の主張は、採用することができない。
5 2 取消事由2(商標法4条1項10号該当性判断の誤り)について上記のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商品又は本件商標の請求商品及び請求役務の需要者の間に広く認識されているとは認められないから、本件商標につき商標法4条1項10号該当性は認められない。
10 3 取消事由3(商標法4条1項15号該当性判断の誤り)について(1) 商標法4条1項15号の「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、
当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取15 引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである。
(2) そこで検討するに、本件商標と引用商標とは、本件審決が認定するように、その外観称呼の点において類似性の程度が高く(観念は生じないので比較できない。)、請求商品及び請求役務と引用商品が一定程度の関連性を20 有し、さらに引用商標は造語であるから一定程度の独創性を有するといい得るものの、上記のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者及び需要者の間に広く知られているものとは認められないから、本件商標が請求商品及び請求役務に使用された場合、取引者及び需要者をして引用商標を連想又は想起させることは考えにくい。そう25 であるとすると、本件商標が請求商品及び請求役務に使用された場合、これらが原告らあるいは原告らと経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の14業務に係る商品又は役務であると誤認させ、商品又は役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるとはいえない。
したがって、本件商標につき、商標法4条1項15号該当性は認められない。
5 4 結論以上のとおり、本件審決につき、原告主張の取消事由はいずれも採用することができず、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部10裁判長裁判官増 田 稔15 裁判官本 吉 弘 行裁判官20岩 井 直 幸15(別紙)本件商標の指定商品及び指定役務第7類 Fabric making machines; machines for processing plastics;5 glassware manufacturing machines and apparatus; papermaking machines andapparatus; rolling mills.第9類 Optical apparatus and instruments; weighing apparatus andinstruments; measuring sensors, infrared sensors, beta radiationsensors, laser triangulation sensors; distance recording apparatus;10 quantity indicators; densimeters, densitometers, detectors, infrareddetectors, gages, electric measuring apparatus, precision measuringapparatus; measures, measuring apparatus and instruments, apparatus andinstruments for physics; measuring apparatus; signals, luminous ormechanical; electrical monitoring apparatus; optical sensors, x-ray15 sensors; x-ray detectors, microwave detectors, interferometers, opticaldetectors; measuring instruments; scintillators as a part of x-raydetectors.第42類 Scientific research; computer system analysis; design anddevelopment of computers and software for measuring; research and20 development of new products for third parties in the field of precisionmeasuring; technical project studies; computer system design;consultation of technological research; quality control; softwaredevelopment in the context of software editing; software development,software installation, maintenance of computer software; calibration;25 technical, physical, mechanical research, namely technological research;electronic data storage; monitoring of computer systems for fault16detection; monitoring of computer systems by remote access; design anddevelopment of computer hardware and software for measuring technology;research and development of new products for third parties in the fieldof precision measuring; massive data analysis computer services.17
事実及び理由
全容