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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成10ワ16262不正競争行為差止等請求事件 判例 商標
昭和53ワ1264 判例 商標
昭和58ワ27 判例 商標
昭和49ワ393 判例 商標
平成16ネ768商標権侵害差止等請求控訴事件 判例 商標
関連ワード 識別機能 /  指定商品 /  著名な略称 /  3条2項 /  周知性 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  公序良俗(4条1項7号) /  4条1項11号 /  ただ乗り(フリーライド) /  類似性(類否判断) /  結合商標 /  損害額 /  権利濫用(権利の濫用) /  通常使用権 /  専用使用権 /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  取引の実情 /  出所の混同 /  国内 /  警告 /  専用権 /  差止 /  信義則 /  使用許諾 /  無効審判 /  継続 /  非類似 /  商号 /  利益額 / 
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事件 平成 8年 (ワ) 14026号 商標権侵害差止等請求事件
原告 東洋エンタープライズ株式会社
訴訟代理人弁護士 伊藤真
補佐人弁理士 野原利雄
被告 株式会社サンライズ社
被告 株式会社インディアンモトサイクルカンパニージャパン
被告 西澤株式会社
被告三名訴訟代理人弁護士 佐藤雅巳
同復代理人弁護士 古木睦美
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2003/12/26
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の請求
1 被告西澤株式会社(以下「被告西澤」という。)は, (1) ジャケット,ジャンパー,ベスト及びズボンについて,別紙「被告標章目録」1ないし7記載の各標章を使用してはならない。
(2) その本店,工場又は営業所に存する前記目録1ないし7記載の各標章を付したジャケット,ジャンパー,ベスト及びズボンを廃棄せよ。
2 被告株式会社インディアンモトサイクルカンパニージャパン(以下「被告インディアン」という。)及び被告株式会社サンライズ社(以下「被告サンライズ」という。)は,それぞれ,ジャケット,ジャンパー,ベスト及びズボンについて,前記目録1ないし7記載の各標章の使用を許諾し,又は再許諾する契約を第三者と締結してはならない。
3 被告西澤,被告インディアン及び被告サンライズは,原告に対し,連帯して,1億円及びこれに対する被告西澤については平成8年8月31日(訴状送達の日の翌日)から,被告インディアンについては同月20日(前同)から,被告サンライズについては同月30日(前同)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
1 当事者 原告は,繊維製品,化学製衣料品,雑貨類等の国内販売及び輸出入等を目的とする株式会社である。
被告インディアンは,皮革製品,衣料品,袋物,洋品雑貨等の輸出入及び販売等を,被告サンライズは,著作権の取得,譲渡,貸与,管理等を,被告西澤は,各種繊維原料及び繊維製品等の輸出入,卸売,仲介,代理をそれぞれ目的とする株式会社である。
2 訴えの要旨 本件は,1950年代以前にアメリカ合衆国で人気を博したオートバイのメーカーに由来する,「インディアン」という名称のブランドの使用をめぐる紛争である。
原告は,後記商標権(登録番号第2634277号。以下「原告商標権」といい,その登録商標を「原告商標」という。)を有している。原告は,被告らが別紙「被告標章目録」1ないし7記載の各標章(以下,その番号に従い「標章1」などといい,これらすべてを総称して「被告各標章」という。)をジャケット等に付して使用する行為は,上記商標権を侵害する行為に当たると主張して,平成8年7月22日に本件訴訟を提起し,被告らに対して,「第1 原告の請求」記載のとおり,請求をしている。
3 中間判決 上記原告の請求に対し,被告らは,原告商標と被告各標章の類否を争うとともに,被告インディアンが後記商標権(登録番号第2710099号。以下「被告商標権」といい,その登録商標を「被告商標」という。)を有することを根拠に,標章4ないし7につき,いわゆる登録商標使用の抗弁を主張するなどした。
当裁判所は,平成14年8月22日に中間判決(本判決の末尾に中間判決の写しを添付した。以下,単に「中間判決」という。)をし,同判決第2,4に摘示した争点(1)(標章1ないし7が,原告商標と類似するか)及び争点(2)(標章4ないし7が,被告商標権の専用権の範囲内にあるか)につき,それぞれ,@ 別紙「被告標章目録」1ないし7記載の各標章は,いずれも別紙「原告商標目録」記載の商標(原告商標)に類似する,A 別紙「被告標章目録」4記載の標章は,被告が有する商標権(登録第2710099号)の専用権の範囲に属するが,同目録5ないし7記載の各標章は,いずれも同商標権の専用権の範囲に属しない旨の判断を示した(上記@が中間判決主文第1項の,上記Aが中間判決主文第2項のそれぞれ内容である。)。
4 中間判決後の経緯 その後,後記のとおり,最高裁判所の平成15年6月12日付け上告不受理決定(甲46)により,被告商標権の登録が無効であることが確定した。
その一方で,原告商標権は,特許庁の平成15年3月28日付け審決(乙38)により,商標法51条1項の規定に基づき登録が取り消され,原告の提起した同審決に対する取消訴訟が現在も東京高裁に係属中である。
被告らは,上記審決の存在等に照らせば,原告の請求は権利の濫用に当たり許されないとして,権利濫用の抗弁を主張している。
前提となる事実(当事者間に争いがないか,あるいは,当該箇所に掲げた証
拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) 1 原告商標権について (1) 原告は,平成3年11月5日,別紙「原告商標目録」記載の片仮名商標「インディアンモーターサイクル」(原告商標)を商標登録出願し,同商標は,平成6年3月31日に登録された。したがって,原告は,下記のとおりの商標権(原告商標権)を有することとなった。
出願年月日 平成3年11月5日 登録年月日 平成6年3月31日 登録番号 第2634277号 商品区分 平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令 別表の商品区分第17類 指定商品 被服,その他本類に属する商品 登録商標 別紙「原告商標目録」記載のとおり (2) 原告商標が登録された約4か月余後の平成6年8月11日,訴外A(以下「訴外A」という。)が原告商標について無効審判(特許庁平成6年審判第13787号)を請求した。訴外Aは,同審判において,原告の上記商標登録出願は,米国の「Indian Motocycle Co.,Inc.」社(以下「米国インディアン社」という。)からライセンスを受けた被告インディアンの使用にかかる後記被告商標の著名性ないし周知性ただ乗りし,商品流通市場の秩序を侵害するものであるなどとして,原告商標は,商標法4条1項7号,8号,15号に違反して登録されたものであると主張した。
特許庁は,平成9年9月30日,1953年当時「インディアンモトサイクル」及び「インディアン」が米国インディアン社の著名な略称及び商標であったとしても,その後30年以上経過した原告商標の出願時ないし査定時において,同社の著名な略称及び商標であったとは認められないから,原告商標が商標法の上記各規定に違反して登録されたものとはいえないとして,請求不成立の審決(甲25)をした。
(3) 被告インディアンは,平成10年5月26日,原告商標は継続して3年以上わが国において商標権者,専用使用権者及び通常使用権者のいずれによっても使用されていないから,商標法50条1項の規定により取り消されるべきものであるとして,同商標につき登録取消の審判(特許庁平成10年審判第30518号)を請求した。
特許庁は,平成11年10月13日,同審判で提出された証拠上,原告は上記審判請求の予告登録日前3年以内に,その指定商品について原告商標「インディアンモーターサイクル」及び同商標と社会通念上同一の範囲にあると認められる英文字標章「INDIAN MOTORCYCLE」を使用したものと認められるから,商標法50条1項違反の事実は認められないとして,請求不成立の審決(甲35)をした。
被告インディアンは,同審決に対して取消訴訟(東京高裁平成11年(行ケ)第443号)を提起したが,東京高等裁判所は,平成12年11月29日,英文字標章「INDIAN MOTORCYCLE」が原告商標「インディアンモーターサイクル」と社会通念上同一の範囲にあり,原告が上記予告登録日前3年以内にこれらを指定商品に付して使用していたとの同審決の認定に誤りはないとして,同被告の請求を棄却する判決(甲39)をした。
(4) また,被告インディアンは,平成12年11月29日,原告は同被告の登録する後記被告商標(登録第2710099号)及び関連各商標(登録第4022987号,同第4116047号等)と類似する商標を指定商品について使用しており,かかる行為は,これらの商品が同被告のライセンス商品か,あるいは同被告の製造・販売するシャツ,ジャケット等であるかのように,商品の出所に混同を生じさせるものであるから,原告商標は,商標法51条1項の規定により取り消されるべきものであるとして,同商標につき登録取消の審判(特許庁取消2000-31423号)を請求した。
特許庁は,平成15年3月28日,原告は,片仮名の原告商標「インディアンモーターサイクル」を有するところ,あえて英文字「Indian」や「Motocyle」を指定商品に用いており,登録商標である原告商標と同一の商標ではなく,類似する商標を故意にその指定商品に使用し,他人の業務にかかる商品と混同を生じさせているというべきであるとして,商標法51条1項の規定に基づき,原告商標の登録を取り消す旨の審決(乙38)をした。
原告は,同審決に対して取消訴訟(東京高裁平成15年(行ケ)第181号)を提起し,同訴訟は現在も東京高等裁判所に係属中である。
(5) さらに,被告インディアンは,平成15年1月30日,原告商標は,特徴ある筆記体英文字「Indian」からなる商標等を使用して事業を行う正当な権利者(同被告)の企業努力に便乗し,不当な利益を得ることを目的として出願・登録されたものであるから,公正な競争秩序を害するものとして商標法4条1項7号に該当すると主張し,原告商標につき無効審判を請求した。同審判事件は現在も特許庁に係属中である。
2 被告西澤及び訴外プラニングジャパンによる被告各標章の使用 (1) 被告西澤は,少なくとも平成9年9月30日ころまで,下記のとおり,標章1ないし5及び7を実際に使用していた。
ア 標章1,2については,被告西澤が輸入又は製造し,販売するジャンパー,ズボンの下げ札に付して使用した(検甲3ないし検甲6,甲8,10,12,15及び22)。
イ 標章3については,被告西澤が輸入又は製造し,販売するジャンパー,ズボンの衿ネーム及び下げ札に付して使用した(検甲1ないし検甲7,甲4,6,8,10,12,15,17及び22)。
ウ 標章4,5については,被告西澤が輸入又は製造し,販売するジャケットを広告するパンフレットに付して使用した(甲34)。
エ 標章7については,被告西澤が輸入又は製造し,販売するジャンパー,ベスト及びズボンの衿ネーム等に付して使用した(甲34)。
(2) また,標章6については,同じころ,訴外プラニングジャパンがシャツに付して使用した(甲28ないし31,59)。
(3) 被告西澤が標章1ないし5及び7を付して使用した上記ジャケット,ジャンパー,ベスト及びズボン,並びに,訴外プラニングジャパンが標章6を付して使用した上記シャツは,いずれも原告商標の指定商品に該当する。
3 被告商標権について (1) 訴外Aは,平成4年2月6日,別紙「被告商標目録」記載の図形及び英文字からなる結合商標(被告商標)を商標登録出願し,同商標は,平成7年9月29日に登録された。
同年10月16日,被告商標権は訴外Aから被告インディアンに譲渡され,平成8年5月27日にその旨の移転登録がされた。
したがって,同被告は,下記のとおりの商標権(被告商標権)を有することとなった。
出願年月日 平成4年2月6日 登録年月日 平成7年9月29日 登録番号 第2710099号 商品区分 平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令 別表の商品区分第17類 指定商品 被服(運動用特殊被服を除く。),布製身回品(他の 類に属するものを除く。),寝具類(寝台を除く。) 登録商標 別紙「被告商標目録」記載のとおり 被告商標は,上記目録記載のとおり,@ 羽根飾りを冠した右向きのインディアンの横顔の図形,A その中に配した特徴ある筆記体欧文字「Indian」及びB その下部に小書して配された特徴ある筆記体欧文字「Indian Motocycle Co.,Inc.」から構成されている(以下,便宜上,上記@の図形を「インディアン図形」と,同Aの筆記体欧文字を「インディアンロゴ」と,同Bの筆記体欧文字を「モトサイクルロゴ」とそれぞれいう。また,インディアンロゴを図の中に配したインディアン図形を「ヘッドドレスロゴ」という。)。
(2) 被告インディアンは,被告商標権の譲渡を受けるまでの間,出願人である訴外Aから被告商標につき再許諾権限付きの使用許諾を受けており,この権限に基づき,被告サンライズとの間で,同商標の使用を第三者に再許諾する権限を与える旨の契約を締結していた。
さらに,被告サンライズは,同契約に基づき,被告西澤との間で,同商標をジャケット等の商品に付して使用することを許諾する旨の契約を締結していた。
したがって,少なくとも被告商標の使用については,被告インディアンがライセンサー,被告サンライズがマスターライセンシー,被告西澤がサブライセンシーという関係にあった(なお,別紙「被告標章目録」記載の各標章の使用についても,被告らが同様の関係にあったかどうかについては,後記のとおり争いがある。)。
(3) 被告商標が登録された約3か月後の平成7年12月28日,原告は,被告商標について無効審判(特許庁平成7年審判第28124号)を請求した。原告は,同審判において,被告商標権には,商標法4条1項7号,11号違反の無効事由が存在することなどを主張した。
特許庁は,平成10年4月10日,出願人の訴外Aが自然人である一方で,被告商標は法人名を表示したとしか認識し得ないものであるから,かかる商標の使用は,法人でないものが「株式会社」や「有限会社」などの商号を使用することを禁止した商法や有限会社法の規定に該当し,商品流通社会の秩序に反するとともに,公共の利益を害するものというのが相当であり,本件商標は,商標法4条1項7号の規定に違反して登録されたものであるとして,その登録を無効とする旨の審決(甲26)をした。
(4) 被告インディアンは,上記審決に対して取消訴訟(東京高裁平成10年(行ケ)第145号審決取消請求事件)を提起した。
東京高等裁判所は,平成11年4月14日,被告商標の文字部分である「Indian Motocycle Co.,Inc.」は,それ自体によっても,他の構成部分に照らしてみても,商法に基づいて設立された株式会社又は有限会社法に基づいて設立された有限会社を示すことが客観的に明らかであるとは到底言い難いから,訴外Aによる被告商標の使用が,法人でないものによる「株式会社」や「有限会社」の商号の使用を禁じる法律の規定(商法18条1項及び有限会社法3条2項)に該当する旨の前記特許庁の判断は誤りであり,この判断を前提にした商標法4条1項7号違反事由が存在する旨の判断も誤りであるとして,前記審決を取り消す旨の判決(甲41)をした。
原告は,上記判決に対して上告受理の申立(最高裁平成11年(行ヒ)第140号。甲42〜44)をしたが,最高裁判所は,平成13年11月21日,上告不受理の決定をし,同判決は確定した。
(5) 上記判決の確定を受けて,特許庁において,さらに前記無効審判請求事件の審理がされた。
特許庁は,平成14年2月28日,被告商標は,先願の原告商標と少なくとも称呼において類似しており,電話等の口頭による取引が普通に行われている取引社会の実情からすると,外観及び観念を考慮しても,類似する商標といわざるを得ないから,商標法4条1項11号の規定に違反して登録されたものであるとして,その登録を無効とする旨の審決をした。
被告インディアンは,上記審決に対して取消訴訟(東京高裁平成14年(行ケ)第140号審決取消請求事件)を提起し,同訴訟において,仮に被告商標と原告商標が称呼において類似するとしても,その類似性は低いものである上に,外観及び観念はいずれも相違しており,また,被告商標は同被告に係る被服等を表示するものとして周知であるから,被告商標をその指定商品について使用した場合,原告商標を付した商品と出所について混同を生じるおそれはないなどと主張した。
東京高等裁判所は,平成14年12月27日,@ 被告商標と原告商標は,称呼のみならず観念においても類似し,外観の相違も,称呼及び観念類似性をしのぐほどの格段の差異を取引者,需要者に印象付けるものではないから,被告商標を指定商品に使用した場合,取引者,需要者において商品の出所を誤認混同するおそれがあり,したがって,被告商標は原告商標に類似する商標というべきである,A また,被告インディアン提出にかかる多数の書証によっても,被告商標の登録査定時(平成7年3月30日)において,同被告が主張するように,同商標が同被告にかかる被服等を表示するものとして周知であったとまで認めることはできないから,被告商標が商標法4条1項11号に違反して登録されたものであるとの前記審決の判断に誤りはないとして,被告インディアンの請求を棄却する旨の判決(甲45)をした。
被告インディアンは,上記判決に対して上告受理の申立(最高裁平成15年(行ヒ)第73号)をしたが,最高裁判所は,平成15年6月12日,上告不受理の決定(甲46)をし,同判決は確定した。
したがって,被告商標の登録は無効であることが確定した。
4 原告及び被告インディアンの関連各商標について (1) 被告インディアンは,被告商標が登録されて間もない平成7年11月2日,前記インディアンロゴを文字商標として商標登録出願し,平成9年7月4日に登録を受けた(登録第4022987号。乙3)。
また,前記インディアン図形についても,平成7年12月28日,図形商標として商標登録出願し,平成10年2月20日に登録を受けた(登録第4116047号。乙7)。
(2) 他方,原告は,平成8年7月19日,活字体の欧文字「INDIAN MOTOR CYCLE」を横一列に配してなる商標を商標登録出願したが,平成11年4月23日に拒絶査定を受けた。この拒絶査定は,指定商品等が異なるものの,登録商標の構成が被告商標と全く同じである複数の商標(登録第2720681号等)を引用し,上記「INDIAN MOTOR CYCLE」が,引用にかかるこれら先願の商標と類似することを拒絶の理由とするものであった。
原告は,同年6月11日,拒絶査定不服の審判(特許庁平成11年審判第9741号)を請求したが,平成12年6月7日に請求不成立の審決がされた。
原告は,同審決に対してさらに取消訴訟(東京高裁平成12年(行ケ)第253号審決取消請求事件)を提起したが,東京高等裁判所は,平成12年12月21日,上記「INDIAN MOTOR CYCLE」からは「インディアンモーターサイクル」の称呼を生じ,上記引用商標からは「インディアンモトサイクルシーオーインク」,「インディアンモトサイクルカンパニーインク」のほか,「インディアンモトサイクル」の称呼をも生じるから,出願にかかる商標「INDIAN MOTOR CYCLE」と引用商標は,少なくとも称呼において類似し,商品の出所の混同のおそれを生じるおそれがあるものと認められるとした上,原告主張の審決取消事由はいずれも理由がないとして,原告の請求を棄却する旨の判決(甲40)をした。
また,原告は,平成8年11月6日,羽根飾りが前方に突き出た左向きのインディアンの横顔図を商標として商標登録出願し,平成10年5月15日に登録を受けた(登録第4145016号)。
争点
1 標章1ないし7が,原告商標と類似するか(争点1)。
2 標章4ないし7に関する,被告の登録商標使用の抗弁の成否(争点2)。
ア 上記各標章が,被告商標権の専用権の範囲内にあるか(争点2ア)。
イ 被告商標権の効力(争点2イ)。
3 本件の事実関係の下では,原告の請求は,権利の濫用に当たるものとして許されないか(争点3)。
4 被告インディアン及び被告サンライズは,被告西澤及び訴外プラニングジャパンによる被告各標章の使用について共同不法行為者として責任を負うか(争点4)。
5 原告の損害額等(争点5)。
争点に関する当事者の主張
1 争点1(標章1ないし7が,原告商標と類似するか)について (原告の主張) 中間判決の第3,1(原告の主張)記載のとおりであるから,これを引用する。
(被告らの主張) 中間判決の第3,1(被告らの主張)記載のとおりであるから,これを引用する。
2 争点2(登録商標使用の抗弁の成否)について (1) 争点2ア(標章4ないし7が,被告商標権の専用権の範囲内にあるか)について (被告らの主張) 中間判決の第3,2(被告らの主張)記載のとおりであるから,これを引用する。
(原告の主張) 中間判決の第3,2(原告の主張)記載のとおりであるから,これを引用する。
(2) 争点2イ(被告商標権の効力)について (原告の主張) 登録商標使用の抗弁の根拠となる被告商標権については,その登録を無効とする旨の平成14年2月28日付け特許庁の審決(甲45)が,平成15年6月12日付け最高裁の上告不受理決定(甲46)により確定した。
したがって,上記抗弁の主張は,既にその前提が失われている。
3 争点3(本件の事実関係の下では,原告の請求は,権利の濫用に当たるものとして許されないか)について (被告らの主張) (1) 原告は,米国でかつて有名であった「インディアン」ブランドの復活が報じられるや,正規の「インディアン」ブランドビジネスがいずれ日本でも展開されるであろうと予測し,自らは使用する意思がないにもかかわらず,片仮名商標「インディアンモーターサイクル」(原告商標)を商標登録出願した。そして,商標登録を受ける一方で,被告インディアン,同サンライズ及び同西澤の企業努力により,インディアンロゴ,ヘッドドレスロゴ及びモトサイクルロゴが市場に浸透するや,すかさず原告商標と同一の範囲外である,@ インディアンロゴと英文字「Motorcycle」を組み合わせた標章,A インディアンロゴと英文字「Sportswear」を組み合わせた標章,B インディアンロゴと英文字「MOTOCYCLE」を組み合わせた標章,C ヘッドドレスロゴと酷似した標章等を使用して,被告らが製造販売する商品と同種の商品を製造販売し,もって被告らの企業努力の成果に便乗して不正に利益を得た。
このような事実関係の下では,原告商標権の取得は信義則に反するものであり,同商標権に基づく原告の請求は,権利の濫用に当たるものとして許されないというべきである。以下,詳述する。
(2) 「インディアン」ブランドの使用をめぐる紛争の背景事情は,以下のようなものである。
ア 「Indian」は,1901年にマサチューセッツ州スプリングフィールドで設立され,1923年に「インディアン・モトサイクル・カンパニー」に商号変更されたオートバイのメーカー(以下「オリジナル・インディアン社」という。)であり,インディアンロゴ,ヘッドドレスロゴ,インディアン図形,活字体「INDIAN」及び左向きインディアン図形等は,オリジナル・インディアン社の製造販売するオートバイに付された商標として,また,「INDIAN MOTOCYCLE」及び「インディアンモトサイクル」は,同社の略称として,米国はもとよりヨーロッパや日本でも周知であった。
オリジナル・インディアン社は,1953年に操業を停止し,その後解散したが,「Indian」ブランドのオートバイは,同好者向けの雑誌が発行されるほど根強く愛好され,「Indian」は,米国を代表するいわゆるトロフィーブランドとして認識されていた。
イ 1990年(平成2年)6月26日,訴外B(以下「訴外B」という。)は,かつてオリジナル・インディアン社が存在したマサチューセッツ州スプリングフィールドにインディアン・モトサイクル・カンパニー・インク(米国インディアン社)を設立し,「Indian」ブランドのオートバイの製造や,インディアンロゴ,ヘッドドレスロゴ等を使用した「Indian」ブランドのアパレルやアクセサリー等のライセンスビジネスを開始した。
このような動きは,「『インディアン』の復活」として,米国の一般紙である「The Daily News」1991年7月1日号(乙40の6)及び「USA TODAY」同月5日号(乙40の7)に大々的に報じられた。
上記報道がされた約4か月後である1991年(平成3年)11月5日,原告は片仮名商標「インディアンモーターサイクル」(原告商標)を商標登録出願した。
ウ 訴外Aは,当時日本を生活の拠点としていた日系三世であるが,ブランドビジネスに造詣が深く,復活した「Indian」ブランドの将来性に着目し,米国インディアン社と契約して,日本における同ブランドビジネスに関するすべての権利の譲渡を受けた。
他方,被告サンライズは,昭和30年に設立され,劇場広報から出発した会社であり,JT,日本道路公団,宇宙開発事業団等の広報を受注するとともに,米国の20世紀フォックス社,仏のゴーモン社,英国映画「007」シリーズ等の日本における独占的ライセンスエージェンシーとして,ライセンスビジネスを展開していた(乙40の14)。
訴外Aは,1992年(平成4年)2月6日,被告商標を商標登録出願し,さらに平成5年6月3日,被告サンライズと合弁で被告インディアンを設立し,自ら代表取締役に就任した(乙40の13)。その後の平成7年9月29日に被告商標が登録されるや,同年10月16日,被告商標権を被告インディアンに譲渡した。
エ 上記の経緯を経て,被告インディアンをライセンサー,被告サンライズをマスターライセンシーとする「Indian」ブランドの広告宣伝,輸入販売,ライセンスビジネス等が開始された。
1993年(平成5年)7月24日付け繊研新聞(乙40の16)及び同日付け日経流通新聞(乙40の17)において,被告インディアンの設立や,「Indian」ブランド商品の輸入及びライセンスビジネスの展開等が報じられ,「Indian」ブランドは,同年11月の時点で既に米国ではブームを呼んでおり,また日本でも「ブーム着火は時間の問題」(乙40の18)と報じられていた。
被告インディアンは,平成6年1月から平成7年2月にかけて,ヤングメンズカジュアルの分野で有名な全国展開の専門店において配布されている月刊誌「DICTIONARY」に定期広告するなど,「Indian」ブランドの宣伝に努めた。その甲斐あって,被告サンライズは,平成6年に訴外マルヨシとサブライセンス契約を締結し,訴外マルヨシは,同年5月ころから,被告商標及びヘッドドレスロゴ等を付したバッグの販売を開始した。その一方で,被告サンライズは,これらの商標等を付したTシャツ,トレーナーを輸入し,またTシャツを製造販売するなどし,雑誌広告(乙40の24,25)等も相まって,インディアンロゴやヘッドドレスロゴに代表される「Indian」ブランドは,衣類,バッグ,装飾品の分野で市場に浸透した。
しかるに,原告は,平成7年5月ころから,インディアンロゴ等を付したジャケット,シャツ,帽子等の輸入,製造販売及び広告を開始し,被告インディアンの警告を無視してこれを継続した(乙40の24〜40)。
オ 他方,被告インディアンは,同年になって,被告サンライズを介して被告西澤とサブライセンス契約を締結した。また,被告西澤は,平成7年から平成8年にかけて,巨額の資金を投入し,展示会を催したり,広告宣伝に努めるなどし,同被告の製造販売する革製レザージャケット等の市場への浸透に努めたが,そのころ,被告らは,原告が,平成8年の秋冬シーズンから,インディアンロゴを付したレザージャケット等の製造販売を開始するとの情報を入手した。
そこで,被告インディアン及び訴外Aは,平成8年5月に,原告らに対する商標権侵害差止等の訴えを提起した(東京地方裁判所平成8年(ワ)第9391号事件)。
また,被告インディアンは,同年7月に,被告商標が被告インディアンの登録商標であり,被告西澤等が正規のサブライセンシーであることを繊研新聞(乙40の41)で広告した。
さらに,被告インディアンは,同年9月,原告を債務者として,インディアンロゴを主体とする英文字及び図形を組み合わせた合計9つの商標につき,被告商標権の侵害を理由にその使用の差止を求める旨の仮処分を申し立てたところ(東京地方裁判所平成8年(ヨ)第22126号),同年12月にこれを認容する旨の決定(乙40の42)がされた。
カ しかるに,原告は,前記商標権侵害訴訟がすでに提起された平成8年7月以後も,前記左向きインディアン横顔図(登録第4145016号)や,活字体欧文字「INDIAN MOTOR CYCLE」のほか,多数の関連商標を商標登録出願した。また,前記仮処分決定の後も,インディアンロゴ,同ロゴと同一ないし酷似した書体の筆記体英文字「Indian/Motorcycle」(上下2段)及び「Indian Motorcycle」等を付して使用した革製ジャケットやTシャツなどの輸入,製造販売,広告を継続している(乙40の47,48,58〜75)。
キ ちなみに,日本に近い将来上陸し,正規のビジネスが展開されることが予想される海外のブランドが存在するとき,これをまず片仮名で登録しておき,当該ブランドが日本に上陸し,正規の権利者によるビジネスが開始されるや,片仮名の商標に関する権利を盾にして,正規のブランドビジネスを妨害するのは,原告の常套手段である。
そのことは,原告が,著名な米国映画「BIG WEDNESDAY」の中で用いられて有名になった商標「BEAR SURF BOARDS」につき,まず片仮名商標「ベアーサーフボード」を出願して登録を受けた上(これに対しては,正規の権利者であるヴァルキリー社が無効審判を請求した。),「BEAR SURF BOARDS」に図形を組み合わせた商標を出願し,拒絶査定を受けたにもかかわらず,かかる結合商標を使用する正規のマスターライセンシーである訴外サクラインターナショナルに対し,商標権侵害訴訟を提起した事実(乙40の208)に照らしても,明らかである。
また,原告は,上記「BEAR SURF BOARDS」に図形を組み合わせた商標のほか,米国のカジュアルスポーツ系のブランドで,商社トーメンの系列会社がライセンシーである「O’NEILL」,米国のビールメーカーであるバドワイザーの主力商品名の1つである「BUD LIGHT」,米国ラスベガスに古くからあるスターダストホテルに由来する「STARDUST」,米国の著名な小説家の固有名詞「MARK TWAIN」,その小説の主人公の固有名詞「TOM SAWYER」など,海外の著名ブランドにただ乗りする目的としか思えない商標を多数出願している(乙40の1)。
(3) 上記(2)ア〜キの経緯に加え,原告商標権は,その登録が既に取り消されている。
すなわち,第3,1(4)記載のとおり,被告インディアンは,平成12年11月29日,原告商標は商標法51条1項の規定により取り消されるべきものであるとして,同商標につき登録取消の審判(特許庁取消2000-31423号)を請求した。同被告は,上記審判において,原告は同被告の登録する被告商標(登録第2710099号)及び関連各商標(登録第4022987号,同第4116047号等)と類似する商標を指定商品について使用しており,かかる行為は,これらの商品が同被告のライセンス商品か,あるいは同被告の製造・販売するシャツ,ジャケット等であるかのように,商品の出所に混同を生じさせるものであると主張した。すると,特許庁は,平成15年3月28日,原告は,片仮名の原告商標「インディアンモーターサイクル」を有するところ,あえて英文字「Indian」や「Motocyle」を指定商品に用い,登録商標である原告商標と類似する商標を故意にその指定商品に使用し,他人の業務にかかる商品と混同を生じさせているものであるとして,商標法51条1項の規定に基づき,原告商標の登録を取り消す旨の審決(乙38)をした。
かかる事実も,原告の本訴請求が権利の濫用に当たることを基礎付ける事情のひとつというべきである。
(4) 以上のとおりであるから,原告商標権に基づく原告の請求は,権利の濫用に当たるものとして許されない。
(原告の主張) (1) 被告らは,原告商標権の取得は信義則に反するものであり,同商標権に基づく原告の請求は,権利の濫用に当たるものとして許されないと主張する。
しかしながら,被告らの主張は,その前提となる事実関係において誤っている。原告商標権の取得は何ら信義則に反するものではなく,原告の請求は商標法に基づく当然の権利行使にすぎない。
(2) 被告らの主張は,1990年に訴外Bにより設立された米国インディアン社が,インディアンロゴ,ヘッドドレスロゴ,インディアン図形,活字体英文字「INDIAN」及び筆記体英文字「Indian」等の商標につき,オートバイのみならず,アパレル,アクセサリー等広範な商品についての正当な出所として,社会的に認知されていたことを前提とするものである。
しかしながら,そもそも1901年に設立されたオートバイメーカー「インディアン・モトサイクル・カンパニー」(オリジナル・インディアン社)は,1953年に解散消滅した後いかなる営業活動も行っていない。訴外Bの米国インディアン社は,オリジナル・インディアン社とは全く無関係に設立されたものであり,訴外Bは,この米国インディアン社及び「インディアン」のブランドビジネスに関連する詐欺的行為を行ったとして,民事上の懲罰的賠償金の支払いを命じられたばかりか,7年6か月の実刑及び詐取金返還命令という極めて重い刑事罰を受けている。もとより,訴外Bの米国インディアン社によるブランドビジネスが実態として行われた形跡はない。
以上から分かるとおり,被告らが主張するような,米国インディアン社が,「インディアン」ブランドにつき,オートバイのみならず,アパレル,アクセサリー等広範な商品についての正当な出所として,社会的に認知されたなどという事実は存しない。
(3) 特許庁は,被告らが原告商標の登録無効を求めて請求した無効審判事件(特許庁平成6年審判第13787号)の平成9年9月30日付け審決(甲25)において,@ 1901年設立のオリジナル・インディアン社と,訴外Bが設立した米国インディアン社とは,何の関係もないこと,A 被告ら主張にかかるインディアンロゴ等の商標が,被告インディアンの使用により周知となっている事実は存しないこと,B また,これらの商標が,原告商標の出願時及び査定時において,1901年に設立されたオリジナル・インディアン社の著名な略称及び商標であったとはいえないことを,明確に判断している。
また,東京高等裁判所は,原告が被告商標の登録無効を求めて請求した無効審判事件(特許庁平成7年審判第28124号)の審決に対する取消請求事件(東京高裁平成14年(行ケ)第140号)の平成14年12月27日付け判決(甲45)において,被告らが提出した多数の証拠を精査した上,被告商標の登録査定時(平成7年7月30日)において,被告商標が被告インディアンに係る被服等を表示するものとして周知であったとまで認めることはできない旨明確に判断している。
上記の各事実からだけでも,被告らによる,@ 訴外Bによる米国インディアン社の設立は,1901年設立のオリジナル・インディアン社の復活であり,米国インディアン社こそが「インディアン」ブランドの正当な出所である,A したがって,被告インディアンが,インディアンロゴ,ヘッドドレスロゴ,インディアン図形,活字体英文字「INDIAN」及び筆記体英文字「Indian」等の商標の正当な使用権者である,B 被告インディアンが,アパレル,アクセサリー等の広範な商品につき,上記の各商標を付した商品の正当な出所として認知されていた,などの主張が誤りであることは明白である。
(4) 原告が原告商標を出願し,その使用を開始した経緯は,原告常務取締役(当時)Cの陳述書(甲47)及び雑誌記事(甲48)に詳細に述べられているとおりである。
すなわち,原告は,1965年ころからアメリカンカジュアル衣料の製造販売を主な業務とし,高品質の商品を提供し続け,取引者や需要者から高い信頼と支持を得てきた。そのことが米国においても知られるところとなり,数百人からなる米国ヴィンテージバイクの愛好グループから,彼らのバイクジャケットの製作を依頼されたのが原告商標採択のきっかけとなった。彼らの勧めによりこのジャケットを市販商品化することを決定し,また彼らの提案に基づき商標名を「インディアンモーターサイクル」とすることにして,1991年(平成3年)11月5日に原告商標を商標登録出願したのである。
そもそも,上記商標登録出願時において,被告らは「インディアン」ブランドに関して何の活動も行っていなかったのであり,原告による同ブランドの使用を冒用であるかのごとくいう被告らの主張が,根拠を欠くものであることは明らかである。
被告らは,原告が「The Daily News」1991年7月1日号(乙40の6)及び「USA TODAY」同月5日号(乙40の7)の各記事を見て,「インディアン」のブランドビジネスがいずれ日本でも展開されるだろうと予測し,自らは原告商標を使用する意思がないにもかかわらず,同商標を出願し,登録を得たものであると主張する。
しかしながら,上記の各記事は,訴外Bが「インディアン」ブランドを復活させるという名目の下で,金員を詐取するために行った一方的なコメントに基づく些細な報道にすぎない。また,当然のことながら,原告は,日本での購入手段すら定かでない米国発行の一般紙など購読しておらず,上記報道を知らない。原告の商標採択の動機・経緯は前述のとおりであり,訴外Bによる米国インディアン社の設立とは全く無関係である。
(5) 被告らは,被告らによる被告商標等の使用により,「インディアン」ブランドが市場に浸透した後に,原告が被告らの企業努力の成果に便乗したものであるかのごとき主張を行っている。
しかし,被告らが実際に被告商標等の使用を開始したのは,1995年(平成7年)10月〜11月に,被告西澤が英国製の革製ジャケット,パンツを輸入販売して以後のことであり,原告による「インディアン」ブランドの使用開始よりも後のことである。このような使用開始時期の前後関係,原告による広告実績(甲49〜53),業界における原告の実績・評判(甲54)に照らせば,1995年(平成7年)暮れころにおいては,さしたる実績のない被告らに比べ,むしろ原告の使用によるものとして「インディアン」ブランドは周知であったといえる。
少なくとも,被告らが原告よりも先に同ブランドの使用を開始し,その時点でこれを市場に浸透させたとか,周知性を獲得していたなどという事実はない。
かえって,被告らは,原告商標が出願広告された平成5年3月31日には,同商標の存在を知っていたと推測され,遅くとも,被告商標の商標登録出願に対して拒絶理由通知を受けた平成6年2月10日には,原告商標の存在を知っていたはずであるから,この時点で,被告商標の登録が拒絶されるべきものであることを十分承知していた。
しかるに,被告らは,被告商標が特許庁の過誤により原告商標と非類似と判断されて登録されたことを奇貨とし,被告商標等を付した商品を製造販売等する行為を強引に継続した。被告らは,このような行為を重ねて「インディアン」ブランドを市場に浸透させたとするが,そもそも,かかる行為自体が原告商標権を侵害する違法な行為なのであって,原告が,このような違法な行為に基づく効果に便乗しようとして,原告商標を商標登録出願していたなどとする被告らの主張は,荒唐無稽というほかない。
(6) 以上のとおりであり,被告らによる権利濫用の抗弁に理由のないことは明らかである。
4 争点4(被告インディアン及び被告サンライズは,被告西澤及び訴外プラニングジャパンによる被告各標章の使用につき,共同不法行為者として責任を負うか)について (原告の主張) 被告インディアンは,被告サンライズに対し,被告各標章の使用を第三者に許諾する権限を与える旨の契約を締結した。被告サンライズは,上記契約により付与された権限に基づき,被告西澤及び訴外プラニングジャパンに対し,被告各標章の使用を許諾する旨の契約を締結した。
そして,第3,2(1)記載のとおり,被告西澤は標章1〜5及び7を,訴外プラニングジャパンは標章6を,それぞれ原告商標の指定商品に付して使用したが,これらの使用行為は上記各契約に基づくものであり,かつ,被告インディアン及び被告サンライズは,被告各標章が原告商標の類似の範囲にあり,したがって上記行為が原告商標権を侵害する行為であることを十分知りながら,これを了解し,それぞれライセンス料を徴収していたものである。
したがって,被告インディアン及び被告サンライズは,被告西澤と共同して原告商標権を侵害する上記行為を行っていたものであるから,共同不法行為者としてその責めを負い,被告西澤と連帯して損害賠償の義務を負担する。
(被告らの主張) 被告インディアンが,被告サンライズに対し,被告各標章の使用を第三者に許諾する権限を与える旨の契約を締結し,さらに,被告サンライズが,被告西澤に対し,同標章の使用を許諾する旨の契約を締結したとの原告の上記主張は,否認する。
被告インディアンが被告サンライズに対して再許諾権限を与え,被告サンライズが被告西澤に対して許諾したのは,被告各標章ではなく,被告商標の使用についてである。ちなみに,これらのライセンス契約は,いずれも平成9年9月30日をもって終了し,その後は,被告インディアンが,直接被告西澤に対して被告商標の使用を許諾していたが,このライセンス契約も,平成10年12月31日をもって終了した。
被告インディアン及び被告サンライズが,被告西澤とともに,共同不法行為者として,原告商標権の侵害に基づく責任を負う旨の原告の上記主張は,争う。
5 争点5(原告の損害額等)について (原告の主張) (1) 被告らは,平成15年6月4日付け準備書面(被告第13)において,被告各標章を付した革ジャケット及び革パンツに関する,1995年(平成7年)から1998年(平成10年)にかけての販売数量及び売上金額の各合計を,下記のとおりであると主張している。
販売数量(枚) 売上金額(円) 革ジャケット 9203 2億2707万8077 革パンツ 3545 6779万6396 (合計)2億9487万4473 しかしながら,@ 被告ら自身が主張するとおり,被告西澤は1995年(平成7年)から1996年(平成8年)にかけて巨額の資金を投入し,ファッション雑誌で広告したり,展示会を行うなどして,宣伝に努めていたこと,A 同被告の販売用カタログ(甲13,34)は上記各商品のためだけに作成された豪華なものであり,相当数量の商品の販売が企図されていたのは明らかであること,B 被告西澤の扱う上記各商品は,大手量販店であるビブレ系列などを通じて広く全国で販売されていたことなどに照らし,上記数値は極めて些少であり,信用できるものではない。
原告は,販売数量及び売上金額に関する被告らの上記主張を否認する。被告西澤の販売総額は,10億円を下るものではない。
(2) ただし,原告は,訴訟の迅速な進行を優先させ,被告らによる上記販売実績に基づき,被告らの商標権侵害行為により原告に生じた損害の額について,以下のとおり主張する。
ア 原告が原告商標を付して販売する革ジャケット及び革パンツの平均希望小売価格は,それぞれ8万1888円及び5万9000円である。原告は,これらの商品を原則として希望小売価格の60%で販売しており,原告が得る商品1点当たりの粗利益は,希望小売価格の30%を下らない。したがって,被告西澤による販売がなければ原告が販売することのできた革ジャケット及び革パンツの1点当たりの利益の額は,革ジャケットにおいて2万4566円,革パンツにおいて1万7700円となる。
そして,被告らの前記主張を前提にしても,被告西澤は,革ジャケットを9203枚,革パンツを3545枚販売したのだから,商標法38条1項に基づき算出される原告の損害額は,下記のとおり,合計2億8882万7398円となる。
2万4566円×9203枚=2億2608万0898円 1万7700円×3545枚= 6274万6500円 合計 2億8882万7398円 イ 上記(1)記載のとおり,被告らの主張を前提にしても,被告西澤は,革ジャケットにつき2億2707万8077円,革パンツにつき6779万6369円,合計2億9487万4473円を売り上げている。これら商品の販売により同被告が得た粗利益額は,上記売上額合計の50%,すなわち1億4743万7236円を下らない。この額が,商標法38条2項に基づき算出した原告の損害額となる。
ウ なお,革ジャケット及び革パンツに関する被告西澤の販売総額は,上記のとおり2億8882万7398円であるところ,同被告は希望小売価格の少なくとも60%でこれらの商品を卸売りしていたから,希望小売価格ベースの販売総額は,4億8137万8996円(2億8882万7398÷0.6=4億8137万8996)を下らない。
仮に原告が原告商標の使用を第三者に許諾する場合,使用料として希望小売価格ベースの販売総額の少なくとも10%を受領するから,商標法38条3項に基づく原告の損害額は,4億8137万8996円の10%である4813万7899円となる。
(3) さらに,被告インディアン及び被告サンライズは,被告西澤以外にも,訴外山室繊維株式会社,訴外有限会社ヒットファクトリーその他の会社に,革ジャケット及び革パンツ以外の被服等商品の製造販売に関するライセンス契約を締結し,被告各標章の使用を許諾していた。業界紙等(甲59〜61)において,上記ライセンスビジネスは,小売ベースで1997年秋冬から1998年春夏にかけて10億円,その3年後には50億円の売上げを計画していた旨報じられていることなどに照らせば,上記被服等商品の現在に至るまでの販売総額は5億円を下らないと考えられる。
前記のとおり,仮に原告が原告商標の使用を第三者に許諾する場合,使用料として希望小売価格ベースの販売総額の少なくとも10%を受領するから,商標法38条3項に基づき算出される,上記商品の製造販売に起因する原告の損害額は,上記5億円の10%である5000万円となる。
(4) 上述したところを総合すれば,被告らが連帯して原告に賠償すべき損害の額の合計は1億円を下らない。原告は,この損害額合計の一部である1億円の支払を求める。
(被告らの主張) 損害額等に関する原告の上記主張は,すべて争う。
当裁判所の判断
1 争点1(標章1ないし7が,原告商標に類似するか)について 中間判決の第4,1記載のとおりであるから,これを引用する。同記載のとおり,標章1ないし7は,いずれも原告商標に類似するものと認められる。
2 争点2(標章4ないし7に関する登録商標使用の抗弁の成否)について (1) 争点2ア(標章4ないし7が,被告商標権の専用権の範囲内にあるか)について 中間判決の第4,2記載のとおりであるから,これを引用する。同記載のとおり,標章4は,被告商標権の専用権の範囲に属するが,標章5ないし7は,いずれも同商標権の専用権の範囲に属しない。
(2) 争点2イ(被告商標権の効力)について 第3,3(5)記載のとおり,中間判決がされた後の平成15年6月12日,同日付け最高裁の上告不受理決定により,被告商標の登録を無効とすべき旨の審決が確定した。
したがって,被告商標権は,初めから存在しなかったとみなされるものであり(商標法46条の2第1項本文),上記(1)の判断にかかわらず,被告の登録商標使用の抗弁には理由がない。
3 争点3(原告の請求は,権利の濫用に当たるものとして許されないか)について (1) 第3記載の前提となる事実に加え,証拠(甲25,26,35,39,41,45,46,48〜53,乙38,40の1〜208)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の各事実が認められる。
@ オリジナル・インディアン社は,1901年にアメリカ合衆国マサチューセッツ州スプリングフィールドで設立され,1923年に「インディアン・モトサイクル・カンパニー」に商号を変更したオートバイのメーカーである。
同社は,「INDIAN MOTOCYCLE」(インディアン・モトサイクル)と略称され,1950年代以前,ハーレー・ダビッドソンと並ぶアメリカ合衆国を代表するオートバイメーカーとして知られていた。同社の用いるインディアンロゴ,ヘッドドレスロゴ,インディアン図形,活字体「INDIAN」及び左向きインディアン図形等は,オリジナル・インディアン社の製造販売するオートバイに付された商標として,米国はもとよりヨーロッパや日本でも周知であった。
オリジナル・インディアン社は,1953年に操業を停止し,その後1959年に解散した。「Indian」ブランドのオートバイは,一部の同好者に根強く愛好されていたが,同社は既に解散し,同社の名称を用いた活動も30年以上にわたって行われなかったので,1990年当時,「Indian」(インディアン)ないし「Indian Motocycle」(インディアン・モトサイクル)の商標は,商品の出所識別機能をほとんど失っていた。
A 訴外Bは,「Indian」ブランドのオートバイの製造販売を再開すること,及び,インディアンロゴ,ヘッドドレスロゴ等を使用した「Indian」ブランドの商品に関するライセンスビジネスを展開することを企図して,1990年(平成2年)6月ころ,かつてオリジナル・インディアン社が存在したマサチューセッツ州スプリングフィールドにインディアン・モトサイクル・カンパニー・インク(米国インディアン社)を設立した。
訴外Bによる「インディアン」ブランド復活に向けた動きは,米国の一般紙である「The Daily News」1991年(平成3年)7月1日号(乙40の6)及び「USA TODAY」同月5日号(乙40の7)で報じられた。
上記報道の約4か月後の平成3年(1991年)11月5日,原告は,片仮名からなる原告商標「インディアンモーターサイクル」を商標登録出願した。
B 他方,「インディアン」ブランドの将来性に着目した訴外Aは,平成4年(1992年)2月6日,被告商標を商標登録出願し,さらに平成5年6月3日,被告サンライズと合弁して被告インディアンを設立した(乙40の13)。
平成5年(1993年)7月24日付け繊研新聞(乙40の16)及び同日付け日経流通新聞(乙40の17)において,被告インディアンの設立,並びに,「Indian」ブランド商品の輸入及びライセンスビジネスの展開等が報じられたが,これらの記事においては,「Indian」ブランドは,同年11月の時点で既に米国ではブームを呼んでおり,日本でも「ブーム着火は時間の問題」(乙40の18)とされていた。
C 被告インディアンは,平成5年秋ころから,米国インディアン社の製造にかかるジャケット,Tシャツ,帽子,バッグ等の輸入販売を行った。これらの商品には,インディアンロゴ及びヘッドドレスロゴ等が付されていた。また,同被告は,平成6年1月から平成7年2月にかけて,ヤングメンズカジュアルの分野で有名な全国展開の専門店において配布されている月刊誌「DICTIONARY」に定期広告するなど,「Indian」ブランドの宣伝に努めた。この広告においても,インディアンロゴ及びヘッドドレスロゴが使用されていた。
被告サンライズは,上記米国インディアン社の製品の輸入販売を継続する一方で,平成6年に訴外マルヨシとサブライセンス契約を締結した。訴外マルヨシは,同年5月に展示会を行い,上記契約に基づく被告商標の使用を開始し,インディアンロゴ及びヘッドドレスロゴ等を付したバッグを販売するなどした(乙40の24,25)。
D すると,原告は,平成6年9月21日に,インディアン図形,インディアンロゴ及び活字体英文字「MOTOCYCLE」を組み合わせた商標並びに左向きインディアン横顔図,インディアンロゴ及び活字体英文字「MOTOCYCLE」等を組み合わせた商標を登録出願した(乙40の1)。
また,原告は,平成7年5月ころから,(ア)インディアンロゴ,(イ)インディアンロゴ及び活字体英文字「MOTOCYCLE」を組み合わせた商標,(ウ)インディアンロゴ,左向きインディアン横顔図及び英文字筆記体「Motorcycle Co.」を組み合わせた商標等,いずれもインディアンロゴを主体に構成された商標を付したジャケット,シャツ,帽子等の輸入,製造販売及び広告を開始した。
E 被告インディアンは,上記原告のインディアンロゴ等の使用に対し,被告商標が登録される前,平成7年6月30日付け「警告書」(乙40の30)をもって,英文字「Indian」等の使用は,既に登録査定を受けた被告商標の登録により生じる商標権の侵害に当たり,原告が上記使用を継続する場合には,民事・刑事上の責任を追及するつもりである旨通知した。
これに対し,原告は,出願中の被告商標は登録されるべきものではないと考えており,設定登録された場合には,直ちに無効審判を申し立てるつもりであるとともに,原告の方でも,被告商標の使用が原告商標権を侵害することを理由に,被告インディアンに対して法的措置を取るつもりである旨文書で回答した(弁論の全趣旨)。
F 原告は,上記のやり取りの後も,インディアンロゴ等を含む標章を付したジャケット等の製造販売及び広告を継続した。証拠上認められる,原告による原告商標等の使用の態様は,以下のとおりである。
(ア) 「モノ・マガジン」1997年(平成9年)1月号(甲48)には,ジャンパーに関する広告に原告商標が付されている一方で,襟ネームにインディアンロゴを含む英文字筆記体及び図形からなる結合標章を付したジャンパーの写真が掲載されている。
(イ) 「ポパイ」1995年(平成7年)6月号(甲49)には,ジャンパーに関する広告にインディアンロゴを大書して左向きインディアン図形等と組み合わせた標章が付されている一方で,英文字筆記体「Indian Motorcycle」を付した帽子の写真が掲載されている。
(ウ) 「ファインボーイ」1995年(平成7年)7月号(甲50)には,ブルゾン等に関する広告に原告商標が付されている一方で,左胸にインディアンロゴを付したシャツ等の写真が掲載されている。
(エ) 「ファインボーイ」同年9月号(甲51)には,プルオーバー等に関する広告に原告商標が付されている一方で,インディアンロゴを含む英文字標章を付した帽子等の写真が掲載されている。
(オ) 「ファインボーイ」同年10月号(甲52)には,ジャンパー等に関する広告に原告商標が付されている一方で,インディアンロゴを含む英文字筆記体の標章「Indian Motocycle」を付したジャンパーの写真が掲載されている。
(カ) 「ポパイ」1996年(平成8年)3月号(甲53)には,Tシャツに関する広告に原告商標が付されている一方で,インディアンロゴを含む英文字筆記体「Indian Motocycle」及び図形を組み合わせた標章を付したTシャツや,英文字活字体「Indian Motorcycle」及び図形を組み合わせた標章を付したTシャツの写真が掲載されている。
以上から分かるとおり,原告は,平成7年6月ころから平成9年1月ころにかけて,原告商標の指定商品に属するジャンパー等に関する広告に,同商標「インディアンモーターサイクル」及びこれと社会通念上同一の範囲にあると認められる英文字「Indian Motorcycle」を使用したものと認められる。
しかしながら,片仮名からなる原告商標を実際に需要者に提供される商品に付した事実は認めることができない。また,英文字活字体「Indian Motorcycle」からなる標章については,前記第3,4(2)記載のとおり,これと実質的に同一と認められる英文字標章「INDIAN MOTOR CYCLE」が,被告商標と全く同じ構成の先願商標と類似することを理由に,特許庁で拒絶査定を受け,拒絶査定不服審判請求,請求不成立の審決及び審決取消訴訟の提起を経て,平成12年12月21日付けの東京高裁判決(甲40)により,これを登録しない旨の上記特許庁の審決が確定している。
その一方で,原告は,インディアンロゴを含む多数の標章を実際に商品に付して使用しており,その中には,自ら登録する原告商標から生じる「インディアンモーターサイクル」の称呼ではなく,被告商標から生じる「インディアンモトサイクル」の称呼を生じる英文字筆記体「Indian Motocycle」の使用(上記(オ))も含まれている。
G 訴外Aは,平成7年9月29日に被告商標が登録されると,同年10月16日,被告商標権を被告インディアンに譲渡した。
被告インディアンは,そのころ,被告サンライズを介して被告西澤とライセンス契約を締結し,被告西澤は,平成7年から平成8年にかけて,雑誌広告を掲載し,展示会を催すなど,同被告の製造販売する革製レザージャケット等の広告宣伝に努めた。
そのころ,被告らは,原告が,平成8年の秋冬シーズンから,インディアンロゴを付したレザージャケット等の製造販売を開始するとの情報を入手し,被告インディアン及び訴外Aは,平成8年5月21日,原告らに対する商標権侵害差止等の訴えを提起した(東京地方裁判所平成15年8月28日判決・同庁平成8年(ワ)第9391号事件)。
これに対し,原告は,同年7月22日,被告らに対する本件訴訟を提起した。また,インディアンロゴ及び活字体英文字「MOTOCYCLE」を組み合わせた商標,インディアンロゴ及び英文字筆記体「Motorcycle」を組み合わせた商標等,インディアンロゴを主体に構成された商標を付したジャケット,シャツ,帽子等の販売を継続した。
H 原告は本件訴訟提起に先立つ平成8年7月19日,英文字活字体「INDIAN MOTOR CYCLE」を商標登録出願した(ただし,これについては,上記Fで触れたとおり,被告商標と全く同じ構成の先願商標と類似することを理由に,これを登録しない旨の特許庁の審決が既に確定している。)。また,その後も,左向きインディアン横顔図(登録第4145016号)等の多数の関連商標を商標登録出願した。
I 平成8年9月,被告インディアンは,被告商標権の侵害を理由に,原告を債務者として,インディアンロゴを主体とした英文字及び図形を組み合わせた合計9つの商標の使用差止を求める旨の仮処分を申し立て(東京地方裁判所平成8年(ヨ)第22126号),同年12月にこれを認容する旨の決定(乙40の42)がされた。
しかるに,原告は,上記仮処分決定の後も,インディアンロゴ,同ロゴとほぼ同一の書体の筆記体英文字「Indian/Motorcycle」(上下2段)及び「Indian Motorcycle」等を付して使用した革製ジャケットやTシャツなどの製造販売,広告等を継続した(乙40の47,48,58〜75)。また,平成9年1月に左向きインディアン横顔図等からなる結合商標を登録出願し,同年3月には,インディアンロゴ及び「Motorcycle」を上下2段に配した商標を登録出願した。
J 第3,1(4)記載のとおり,特許庁は,平成15年3月28日,原告は,片仮名の原告商標「インディアンモーターサイクル」を有するところ,あえて英文字「Indian」や「Motocyle」を指定商品に用い,登録商標である原告商標と同一の商標ではなく,類似する商標を故意にその指定商品に使用し,他人の業務にかかる商品と混同を生じさせているものであるとして,商標法51条1項の規定に基づき,原告商標の登録を取り消す旨の審決(乙38)をした。
他方,第3,3(5)記載のとおり,その後の平成15年6月12日付け最高裁の上告不受理決定により,被告商標の登録が無効である旨の審決が確定した。
K ちなみに,原告は,米国映画「BIG WEDNESDAY」の中で用いられて有名になった商標「BEAR SURF BOARDS」につき,まず片仮名商標「ベアーサーフボード」を出願して登録を受けた上,「BEAR SURF BOARDS」に図形を組み合わせた商標を出願し,拒絶査定を受けたにもかかわらず,かかる結合商標を使用する正規のマスターライセンシーである訴外サクラインターナショナルに対し,商標権侵害を理由とする訴訟を提起した(乙40の208)。
また,原告は,上記のほかにも,米国のカジュアルスポーツ系のブランドで,商社トーメンの系列会社がライセンシーである「O’NEILL」,米国のビールメーカーであるバドワイザーの主力商品名の1つである「BUD LIGHT」,米国ラスベガスに古くからあるスターダストホテルに由来する「STARDUST」,米国の著名な小説家の固有名詞「MARK TWAIN」,その小説の主人公の固有名詞「TOM SAWYER」,米国国旗の名称であり,米国国防総省の機関紙名でもある「STARS AND STRIPES」など,海外の著名なブランドないし固有名詞に関連する商標を多数出願している(乙40の1)。
(2) 上記の事実関係を前提に,権利濫用の抗弁の成否について検討する。
本件で提出されたすべての証拠によっても,被告らが主張するように,米国インディアン社が,「インディアン」ブランドにつき,オートバイのみならず,アパレル,アクセサリー等広範な商品についての正当な出所として,社会的に認知された事実を認めることはできない。かえって,(1)@で認定したとおり,1990年当時,「インディアン」ないし「インディアン・モトサイクル」の名称は,商品の出所識別機能をほとんど失っていたものと認められるから,インディアンロゴ等の商標が,原告商標の出願時及び査定時において,1901年に設立されたオリジナル・インディアン社の著名な略称及び商標であったとは認められないし,米国インディアン社の商標として著名ないし周知であったとも認められない。また,原告商標は平成3年11月5日に出願され,平成6年3月31日に登録されたが,他方,被告らが実際に被告商標の使用を開始したのは,同年5月ころであったと認められる((1)C)ことからすれば,原告商標の出願及び登録の各時点で,被告商標が被告インディアンの商品の出所を表す商標として周知となっていた事実も,認められないというべきである。
しかしながら,原告は,最も代表的な米国の一般紙である「The Daily News」及び「USA TODAY」において,「インディアン」ブランド復活の動きが報じられた時から約4か月経過した平成3年(1991年)11月5日に,原告商標を出願している。また,出願中の平成5年(1993年)7月24日,繊研新聞(乙40の16)及び日経流通新聞(乙40の17)の記事により,被告インディアンの設立や,「Indian」ブランド商品の輸入及びライセンスビジネスの展開等が報道され,「Indian」ブランドは,同年11月の時点で既に米国でブームを呼んでおり,日本でも「ブーム着火は時間の問題」(乙40の18)と報じられ,ブランドビジネスの専門業者として,このような状況を知らなかったはずはないのに,平成6年3月31日に原告商標の登録を受けても,自ら登録商標及びこれと実質的に同一の範囲にある商標を使用することはしなかった。また,被告サンライズが訴外マルヨシと被告商標に関するサブライセンス契約を締結し,訴外マルヨシが平成6年5月ころから実際に被告商標等を付したバッグの販売を開始しても,商標権者としてこれに対応することもしなかった。その一方で,被告らによるインディアンロゴを主体とする各種商標(被告商標を含む。)の使用開始と歩調を合わせるかのように,平成6年9月21日に,インディアン図形,インディアンロゴ及び活字体英文字「MOTOCYCLE」を組み合わせた商標並びに左向きインディアン横顔図,インディアンロゴ及び活字体英文字「MOTOCYCLE」等を組み合わせた商標を登録出願したほか,原告商標の登録から1年以上経過した平成7年5月ころから,(ア)インディアンロゴ,(イ)インディアンロゴ及び活字体英文字「MOTOCYCLE」を組み合わせた商標,(ウ)インディアンロゴ,左向きインディアン横顔図及び英文字筆記体「Motorcycle Co.」を組み合わせた商標等,いずれもインディアンロゴを主体に構成された商標を付したジャケット,シャツ,帽子等の輸入,製造販売及び広告を開始した。
また,原告は,被告インディアンからの平成7年6月30日付け「警告書」(乙40の30)に文書で応答した後も,証拠上,少なくとも平成9年1月ころまで,インディアンロゴ等を含む標章を付したジャケット等の製造販売や広告を継続したが,(1)Fで認定したとおり,その主な使用の態様は,雑誌広告に原告商標「インディアンモーターサイクル」を使用したほか,指定商品に属するジャンパー等にこれと社会通念上同一の範囲にあると認められる英文字「Indian Motorcycle」を使用したというものである。原告商標は,雑誌広告等の上で活字になったにとどまり,現実に需要者に提供される商品について,同商標が付されて使用された事実を認めることはできない。また,上記「Indian Motorcycle」については,これと実質的に同一と認められる英文字商標「INDIAN MOTOR CYCLE」が,被告商標と全く同じ構成の先願商標と類似することを理由に,これを登録しない旨の特許庁の審決が既に確定している(第3,4(2))ことから分かるとおり,原告商標よりもむしろ当時出願中であった被告商標との類似性が強いと認められる商標である。その一方で,原告が現実に使用したのは,原告商標よりも被告商標との類似の程度が強いと認められるインディアンロゴを含む多数の標章であり,その中には,自ら登録する原告商標から生じる「インディアンモーターサイクル」の称呼ではなく,被告商標から生じる「インディアンモトサイクル」の称呼を生じる英文字筆記体「Indian Motocycle」を含むものも存在する(上記(1)F)。このような行為は,自ら原告商標を登録し,かつ,被告インディアンらが使用する被告商標等の存在を知りながら,あえてその登録商標と同一の範囲ではなく,類似の範囲にある商標を指定商品について使用し,被告インディアンの業務にかかる商品と混同を生じさせたものと評価されてもやむを得ない。このことは,これと同趣旨の判断をして,商標法51条1項の規定に基づき,原告商標の登録を取り消した特許庁の審決(乙38)の存在からも,裏付けられるというべきである。
さらに原告については,被告らが指摘するとおり,米国映画「BIG WEDNESDAY」の中で用いられて有名になった商標「BEAR SURF BOARDS」につき,まず片仮名商標「ベアーサーフボード」を出願して登録を受けた上,「BEAR SURF BOARDS」に図形を組み合わせた商標を出願し,拒絶査定を受けたにもかかわらず,かかる結合商標を使用する正規のマスターライセンシーである訴外サクラインターナショナルに対し,商標権侵害訴訟を提起した事実(乙40の208),及び,このほかにも,@米国のカジュアルスポーツ系のブランドで,商社トーメンの系列会社がライセンシーである「O’NEILL」,A米国のビールメーカーであるバドワイザーの主力商品名の1つである「BUD LIGHT」,B米国ラスベガスに古くからあるスターダストホテルに由来する「STARDUST」,C米国の著名な小説家の固有名詞「MARK TWAIN」,Dその代表作(小説)の主人公の固有名詞「TOM SAWYER」,E米国国旗の名称であり,米国国防総省の機関紙名でもある「STARS AND STRIPES」など,海外の著名なブランドないし固有名詞に関連する商標を多数出願している事実が認められるのであって,上述した原告商標の出願・登録の経緯,原告商標の実際の使用態様及び被告らとの紛争の経緯に,上記「ベアーサーフボード」に関する商標登録等の各事実を併せ考えれば,原告は,自ら登録商標を使用するよりも,むしろ類似の商標を使用する他者に対して権利行使し,そのことによって経済的利益を得ることを主な目的として,原告商標を出願し,その登録を得たものというべきである。
以上のとおり,原告は,業界紙において「ブーム着火は時間の問題」と報じられる状況にあった平成6年3月31日に原告商標の登録を受けたが,自ら登録商標及びこれと実質的に同一の範囲にある商標を使用することはせず,被告らのライセンスビジネスが開始し,訴外マルヨシが被告商標を付したバッグの製造販売を開始した後の平成7年5月ころになって,原告商標よりもむしろ被告商標との類似の程度が強いと認められるインディアンロゴを含む多数の商標を使用し始めたものであって,このような商標の使用は,あえて原告商標と同一の範囲ではなく,類似の範囲にある商標を指定商品について使用し,被告インディアンの業務に係る商品と混同を生じさせたものと評価されてもやむを得ない。原告商標の実際の使用状況,他の著名ブランドに関わる原告の商標出願の実態等をも併せ考えれば,原告は,自ら使用するよりも,むしろ類似の商標を使用することが見込まれる者に対して権利を行使し,経済的利益を得ることを主たる目的として原告商標を出願・登録し,現に類似の商標を使用する被告インディアンらに対し,権利を行使しようとするものであって,本件の事実関係にかんがみれば,かかる商標権の行使は,権利の濫用に当たるものとして許されないというべきである。
(3) 原告の主張について ところで,原告は,原告商標の採択・登録出願の経緯に関し,日本での購入手段すら定かでない米国発行の一般紙など購読しておらず,「The Daily News」1991年7月1日号(乙40の6)及び「USA TODAY」同月5日号(乙40の7)の各記事は見ていない,原告商標採択のきっかけは,米国ヴィンテージバイクの愛好グループから,彼らのバイクジャケットの製作を依頼されたことであり,彼らの勧めにより同ジャケットを市販商品化すること及び商標名を「インディアンモーターサイクル」とすることを決定し,1991年(平成3年)11月5日に原告商標を商標登録出願したものであると主張する(第5,3(原告の主張)(4))。
しかしながら,原告のような海外の著名ブランドに関する商標を数多く取り扱う専門業者は,需要者のニーズの動向をいち早く察知するため,海外のブランドビジネスの動きに日々注意を払い,情報の収集と分析に努めているのが実情であるから,このような原告が,最も一般的な米国一般紙である「The Daily News」や「USA TODAY」の上記各記事を見ていないなどということは,上記取引の実情に照らし,信用しがたい。また,原告は,上記原告商標採択の経緯を裏付ける証拠として,原告常務取締役(当時)Cの陳述書(甲47)及び雑誌記事(甲48)を提出するが,これらは文書としての性質上,いずれも原告側の認識にのみ基づき記載されたものであって,客観性に乏しく,原告主張のとおりの経緯を認めるには足らない。
また,原告は,被告らが実際に被告商標等の使用を開始したのは,平成7年(1995年)10月〜11月に,被告西澤が英国製の革製ジャケット,パンツを輸入販売して以後のことであり,原告による「インディアン」ブランドの使用開始よりも後のことであるから,このような使用開始時期の前後関係や,原告による広告実績(甲49〜53)等に照らせば,平成7年(1995年)暮れころにおいては,さしたる実績のない被告らに比べ,むしろ原告の使用によるものとして「インディアン」ブランドは周知であり,少なくとも,被告らが原告よりも先に同ブランドの使用を開始し,その時点でこれを市場に浸透させたとか,周知性を獲得していたなどという事実はないと主張する(第5,3(原告の主張)(5))。
原告商標の出願及び登録の各時点において,被告商標が被告インディアンの商品の出所を示す商標として周知であったといえないことは前記のとおりであるが,前記(1)Cで認定したとおり,証拠上(乙40の24,25),平成6年5月ころには,被告サンライズとサブライセンス契約を締結した訴外マルヨシが,被告商標,ヘッドドレスロゴ及び左向きインディアン図形等を付したバッグの販売を開始したと認められる。そうすると,被告らが実際に被告商標等の使用を開始したのは,平成7年(1995年)10月〜11月に,被告西澤が英国製の革製ジャケット,パンツを輸入販売して以後のことであることを前提とする原告の上記主張は,そもそもその前提において誤っている。証拠上認められる事実関係を前提にすると,被告らによる被告商標やインディアンロゴの使用により,「インディアンブランド」が市場においてある程度知られるに至った後に,被告商標やインディアンロゴに類似する標章の使用を開始したのは,むしろ原告の方であると認められるのは前判示のとおりである。原告の上記主張を採用することはできない。
4 結論 以上のとおり,別紙「被告標章目録」1ないし7記載の各標章は,いずれも原告商標と類似すると認められるものの,本件事実関係の下においては,原告の請求は,権利の濫用に当たるものとして許されない。
そうすると,その余の点につき判断するまでもなく,原告の請求は理由がない。よって,主文のとおり判決する(なお,前記第2,3記載のとおり,平成14年8月22日付け中間判決は,@ 別紙「被告標章目録」1ないし7記載の各標章は,いずれも別紙「原告商標目録」記載の商標(原告商標)に類似する,A 別紙「被告標章目録」4記載の標章は,被告が有する商標権(登録第2710099号)の専用権の範囲に属するが,同目録5ないし7記載の各標章は,いずれも同商標権の専用権の範囲に属しない旨の判断を主文で示したものであるから,本判決の認定・判断は,中間判決の拘束力に抵触するものではない。)。
裁判長裁判官 三村量一
裁判官 青木孝之
裁判官 吉川泉
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