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事件 平成 14年 (ワ) 15521号 商標権侵害差止等請求事件
原告 ワテック株式会社
訴訟代理人弁護士 生田哲郎
同 山田基司
同 山崎 理恵子
訴訟復代理人弁護士 森本晋
補佐人弁理士 八木秀人
被告 日本エンジニアリング貿易株式会社
訴訟代理人弁護士 長谷則彦
補佐人弁理士 鈴木 征四郎
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2003/12/10
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告は,別紙被告標章目録記載の標章を別紙被告商品目録1記載の商品の包装若しくは広告に付し,又は前記標章を包装に付した別紙被告商品目録1記載の商品を譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示してはならない。
2 被告は,その占有する前項記載の標章を付した前項記載の商品の包装又は広告を廃棄せよ。
3 被告は,原告に対して,67万7500円及びこれに対する平成14年7月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
5 訴訟費用は,これを2分し,その1を原告の,その余を被告の,各負担とする。
6 本件判決は,原告勝訴部分に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
1 被告は,別紙被告標章目録記載の標章をCCDカメラ本体の包装若しくは広告に付し,又は前記標章を包装に付したCCDカメラ本体を譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示してはならない。
2 被告は,その占有する前項記載の標章を付したCCDカメラ本体の包装又は広告を廃棄せよ。
3 被告は,原告に対して,1億円及びこれにこれに対する平成14年7月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は,別紙「原告商標1」及び「原告商標2」記載の商標(以下,それぞれ,「原告商標1」,「原告商標2」といい,原告商標1及び原告商標2を併せて「原告商標」という。)についての商標権を有する原告が,別紙被告標章目録記載の標章(以下「被告標章」という。)を包装に付したCCDカメラの本体部分を販売,輸出している被告に対し,被告の上記行為等は原告の有する上記各商標権を侵害するとして,同行為等の差止め等を求めている事案である。
1 争いのない事実等 (1) 原告は,光学機器の開発,製造,販売を主たる事業とする会社である。被告は,電子カメラ及びその附属品の販売,輸出入を主たる業務とする会社である。
(2) 原告は,以下の各商標権(以下,アの商標権を「本件商標権1」といい,イの商標権を「本件商標権2」といい,本件商標権1と本件商標権2を併せて「本件商標権」という。)を有する(甲1ないし4)。
ア 登録番号 4502781号 登録年月日 平成13年8月31日 商品の区分 第9類 指定商品 CCDカメラ・ドーム型CCDカメラその他のビデオカメラ,ビデオカメラ用交換レンズ,ACアダプター,DCプラグ,マイクロフォン,コネクター,ケーブル,CCDカメラの附属品,その他の電気通信機械器具 登録商標 別紙「原告商標1」記載のとおり イ 登録番号 2491887号 登録年月日 平成4年12月25日 商品の区分 旧第10類 指定商品 理化学機械器具(電子応用機械器具に属するものを除く)光学機械器具(電子応用機械器具に属するものを除く)写真機械器具,映画機械器具,測定機械器具(電子応用機械器具に属するものおよび電気磁気測定器を除く)医療機械器具,これらの部品および附属品(他の類に属するものを除く)写真材料 登録商標 別紙「原告商標2」記載のとおり (3) 原告は,CCDカメラを製造し,包装に原告商標を付して同CCDカメラ(以下「原告商品」という。)を販売している。原告は,原告商標を包装に付した原告商品を被告に供給し,被告は,これを販売,輸出していたが,原告は,平成12年3月31日をもって,被告に対する原告商品の供給を停止した。
(4) 被告は,別紙被告商品目録1記載の商品(以下「被告商品1」と総称する。)を日本国内で販売していた(被告が日本国内で販売していた被告商品1の包装に被告標章を付していたかについては争いがある。)。また,被告は,包装に被告標章を付した被告商品1をアメリカ,欧州などに輸出していた。なお,被告が,別紙被告商品目録2記載の商品(以下「被告商品2」と総称し,被告商品1と被告商品2を併せて「被告商品」と総称する。)を日本国内で販売,又は輸出していたかについては争いがある。
(5) 原告商標と被告標章は類似している。
(6) 原告は,本件訴訟提起に先立って,東京地方裁判所に対して,被告が被告標章をCCDカメラの包装に付すること等の差止めを求める仮処分命令の申立てをし,同申立てに対して,同裁判所は,平成14年4月30日,@被告に対し,被告標章をCCDカメラの包装等に付すること等を止めること,A執行官に対し,被告標章を付した包装等の保管をすることをそれぞれ命じた(以下「本件仮処分決定」という。甲17)。
(7) 被告商品(包装に被告標章を付したものか否かは問わない。)の売上高は別紙被告商品売上表のとおりである。
2 争点 (1) 本件商標権2における指定商品「写真機械器具」と被告商品との間の類否(本件商標権2に基づく請求について) (2) 被告が被告標章を包装に付した被告商品を日本国内で販売したか否か (3) 民法709条の1般不法行為に基づく損害賠償請求の可否 (4) 損害額の多寡 3 争点に対する当事者の主張 (1) 本件商標権2における指定商品「写真機械器具」と被告商品との類否(争点(1))について (原告の主張) ア 商標法は,自他商品の識別機能を有する標章を保護することを目的としていること,近時,取り扱われる商品が多様化し,経営が多角化し,取引者,需要者にとって,商品と営業との識別が困難になっていること等に照らすと,商品の類似とは,対比される商品に同一又は類似の商標を付した場合,当該商品の取引者,需要者に同一の出所の製造販売に係る商品と誤認されるおそれがあることをいうと解すのが相当である(最判昭和36年6月27日,最判昭和39年6月16日,最判昭和41年2月22日,最判昭和43年11月15日)。
イ 以下のとおり,「写真機械器具」とCCDカメラとは,通常同一営業主により製造,販売されているという取引状況が存在する。「写真機械器具」とCCDカメラとに同一又は類似の商標を使用するときは,当然に,商品の出所について一般需要者の誤認混同が生じる。
したがって,CCDカメラである被告商品は,本件商標権2の指定商品である「写真機械器具」と同一であるか,又は類似する。
(ア) CCDカメラとはCCDを撮影素子に用いたカメラであるから,デジタルカメラも,当然にCCDカメラである。
(イ) デジタルカメラは,画像を撮影するという点で,「写真機械器具」と同一の機能を果たすため,最近では,一般需要者の間で「写真機械器具」に含まれるカメラに代わる商品として認識されている。
(ウ) 「写真機械器具」とデジタルカメラは同一の営業主により製造又は販売されている。例えば,キャノン,ニコン,ペンタックス及びミノルタはデジタルカメラのみならず,一眼レフカメラ及びコンパクトカメラを,オリンパス,京セラ,コダック及びコニカはデジタルカメラのみならずコンパクトカメラを,フジフイルムはデジタルカメラのみならずコンパクトカメラ及びインスタントカメラを,それぞれ製造している(甲18)。また,電化製品の量販店である「サトームセン駅前1号店」では,カメラとデジタルカメラを同フロアで販売しており(甲19),電化製品の量販店である「ビックカメラ」及び「キタムラ」でも,カメラとデジタルカメラを同じカテゴリーに属する商品として販売している(甲20,21)。
(エ) 電化製品の量販店である「ビックカメラ池袋店」では,CCDカメラとカメラが販売されている(甲29)。
(被告の反論) 以下の理由から,写真機械器具と被告商品との間には,商品としての類似性はない。
ア CCDカメラは,平成3年改正による商標法では,写真機械器具と同じ第9類であるが,類似商品・役務審査基準においては類似群を異にする電気通信機械器具に含まれる(昭和34年改正による商標法では写真機械器具は第10類であり,CCDカメラが含まれる電気通信機械器具は第9類であり,類も異にしていた。)。
イ 商取引の実情等に照らして判断すると,CCDカメラの用途は,監視用,防犯・防災用の映像センサーであり,需要者は,主としてビル・店舗・工場の製造ライン等の管理者,建築設備業者等に限られ,「写真機械器具」とは,生産部門,販売部門及び流通ルートを異にし,原材料及び品質も一致しない。
ウ CCDカメラとデジタルカメラとは,いずれもCCD(映像素子)を組み込んでいるという点において共通するが,CCDカメラの用途は防犯・防災用の映像センサーであるのに対し,デジタルカメラは映像をデジタルデータとして記憶媒体・記録メディア等に記録する用途のものであって,そのために必要な構造を備えているのであるから,両者は,用途及び構造において相違する。
(2) 被告は,被告標章を包装に付した被告商品を日本国内で販売したか(争点(2))について (原告の主張) 被告は,以下のとおりの証拠によれば,被告標章を付して,被告商品を日本国内で販売していた。
ア 甲23の1ないし24の11は,被告発行のトモカ電気株式会社(以下「トモカ電気」という。)にあてた被告商品についての請求書及び納品書である。
同証拠の存在から,被告は,6年前ころから継続的に,トモカ電気に対し,被告商品を販売していたことが窺える。
トモカ電気の代表者の陳述書(甲30)には,被告から購入した被告商品の包装には被告標章が付されていた旨記載されている。
原告の代表取締役専務の陳述書(甲31)にも,同人がトモカ電気から購入した被告商品の包装には被告標章が付されていた旨記載されている。
イ 原告代表者は,平成15年6月17日から19日にかけて,トモカ電気から被告商品を納入した小売店を訪問し,調査を行った。
その結果,有限会社ワイケー無線(以下「ワイケー無線」という。)において,包装に被告標章が付され,日本円の値札も付された被告商品が販売されているのを発見した(甲34ないし37)。
また,アストロ光学工業株式会社(以下「アストロ光学工業」という。)の副社長の陳述書(甲38)には,アストロ光学工業が平成12年12月21日にトモカ電気から被告商品4台を仕入れたところ,そのの包装のすべてに,被告標章が付されていたことが記載されている。
ウ 乙1は,被告商品のパンフレットであるが,日本語で記載されている。
被告が被告商品を日本国内で一切販売していないのであれば,日本語のパンフレットは存在しないはずであるにもかかわらず,日本語で記載された上記パンフレットが存在することから,被告が被告商品を日本国内で販売していたことが推認される。
なお,乙1のパンフレットの表紙に写っている被告商品の包装からは,被告標章が赤く塗りつぶされ,巧みに消去されている。乙1は,本件訴訟に提出する目的で画像処理されたものと推測される。
エ 被告がインターネット上に開設したホームページでは,被告商品が日本語で紹介,宣伝されている。このことからも,被告が被告商品を日本国内で販売していることが窺える。
オ 被告の事務所において行われた本件仮処分決定の執行手続きにおいて作成された調書には,「室内には,別紙債務者標章目録の標章を付した包装(8684枚)及び広告(1枚)が存在した。」との記載があり,この記載から,執行日である平成14年5月13日当時,被告の事務所には,被告標章を付した包装及び広告が存在したことが推認される。
(被告の反論) ア 被告は,被告商品2を販売,輸出したことはない。
被告は,被告標章を付した被告商品1を日本で販売したことは一切ない。なお,被告は,被告標章を付した被告商品1をアメリカ等に輸出しているが,輸出行為は,商標法2条3項の商標の使用には該当しない。
イ 甲23,24(被告がトモカ電気にあてた被告商品についての請求書及び納品書)から,被告がトモカ電気に被告商品を販売したことは立証されても,これらの被告商品の包装に被告標章が付されていたことまでも立証されるものではない。被告は,これらの被告商品の包装に被告標章を付していなかった。
(3) 民法709条の1般不法行為に基づく損害賠償請求の可否(争点(3))について (原告の主張) 仮に,被告が,被告標章を付した被告商品を,日本国内で販売したことがなく,専らアメリカに輸出していたとしても,これにより原告商品の売上が減少したのであるから,被告の輸出行為は不法行為を構成する。
したがって,上記の場合でも,原告は,被告に対して,民法709条に基づき,損害賠償請求をすることができる。
(被告の認否) 争う。
(4) 損害額の多寡(争点(4))について (原告の主張) 原告は,被告商品のうち,商品型番「LCL-UFO5」以外のものについては商標法38条1項に基づき,商品型番「LCL-UFO5」については商標法38条2項に基づき,それぞれ算定した金額を,損害額として主張する。そうすると,原告の損害額は合計8億1522万1498円となり,原告は,そのうち1億円を求める(被告商品の販売数量及びそれに対応する原告商品の利益率は,別紙原告損害表記載のとおりである。)。
なお,被告標章を付した被告商品の日本における販売数は,別紙被告商品売上表の「台数」欄記載のとおりであることは認める。
(被告の認否) 争う。被告は,被告商品1を,別紙被告商品売上表の「台数」欄記載のとおりの台数販売し,その売上高は同表の「金額」欄記載のとおりであるが,上記被告商品1の包装には,被告標章を付していなかった。
当裁判所の判断
1 本件商標権2における指定商品「写真機械器具」と被告商品との類似性(争点(1))について (1) 事実認定 証拠(甲16,26,27,29,乙1,2,丙14ないし17,18ないし22の各1及び2)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ,これに反する証拠はない。
ア 被告商品は,ビル,店舗,倉庫,住宅玄関等に設置される監視用ないし防犯用のCCDカメラの本体部分(レンズが装着されていないもの)であり,その用途は,主として業務用ないしこれに準ずるものであって,一眼レフカメラ,コンパクトカメラ,デジタルカメラ及びインスタントカメラ等の写真機械器具が一般の消費者を需要者とするのと異なる。
イ 被告がインターネット上のホームページに掲載した商品広告では,「自分の身は自分で守るという意識が高まっています。もう危険に対して無防備ではいられません。カメラでモニターをして盗難等犯罪の重要な証拠にする事ができます。そのためにもカメラは高解像度,高感度,高性能であるべきです。」と,被告商品1のLCL-UFO5については「店舗の死角になる場所等に。カメラを感じさせないおしゃれなデザイン。優しさを感じさせる柔らかいフォルムでインテリアにもマッチ」と,被告商品とは異なる品番のCCDカメラについては「深夜のお店のわずかな明かりの下等に。夜間に誰かに悪戯されている場合赤外感度によってわずかな明かりで映像がはっきり。駐車場等の夜間監視に威力を発揮します。また,夜行性動物の観察にも多数使用されています。」と,被告商品1のLCL-613については「カメラを目立たせたくない場所などに。監視していることを感じさせない外観。見えないカメラの設置が必要です。」などの記載がある。
ウ 監視用CCDカメラの製造会社には,株式会社エルモ社,CBC株式会社,ソニーマーケティング株式会社,竹中エンジニアリング株式会社,TOA株式会社,株式会社東芝,日本ビクター株式会社,日本フィリップス株式会社,株式会社日立国際電気,松下通信工業株式会社,三菱電機株式会社,ワテック株式会社等があり,他方,上記の写真機械器具の製造業者には,「ペンタックス」,「オリンパス」,「キャノン」,「京セラ」,「コシナ」,「コニカ」,「三洋電機」,「シグマ」,「セイコーエプソン」,「セコニック」,「タムロン」,「トキナー」,「ニコン」,「日本シイベルヘグナー」,「ポラロイド」,「富士フイルム」,「マミヤ」,「ミノルタ」,「リコー」等があり,監視用のCCDカメラと一眼レフカメラ,コンパクトカメラ,デジタルカメラ及びインスタントカメラ等の写真機械器具とは製造業者は異なる。
エ 一眼レフカメラ,コンパクトカメラ,デジタルカメラ,インスタントカメラ,ビデオカメラ等のカメラ関連製品を幅広く扱っている販売店でも,監視用のCCDカメラを扱っていない販売店が存在し,写真機械器具を扱っている店舗でも,特に大型の店舗でない限り,一般的には,監視用CCDカメラを扱っていない。また,監視用CCDカメラ及びカメラ関連製品を扱っている大型店舗においても,監視用CCDカメラと一眼レフカメラ,コンパクトカメラ,デジタルカメラ及びインスタントカメラ等の写真機械器具の売り場が異なる。
(2) 判断 上記認定した事実を基礎にして判断する。
商標法が,商標登録制度を設け,商標権者に登録商標を,指定商品又は指定役務に独占的に使用する権能を付与したのは,第三者が当該登録商標と同一又は類似の商標を使用することによって生ずる商品ないし役務の出所の混同を防止するためであることに鑑みると,対象となる商品が指定商品に類似しているか否かは,問題となる商品の製造業者,販売店ないし販売場所,需要者,用途等を総合考慮し,これらの商品に同一又は類似の商標が使用された場合に出所の混同を生ずる虞があるか否かによって判断すべきである。
そうすると,上記のとおり,写真機械器具と被告商品とは,用途が異なり,その製造業者及び需要者も異なること,写真機械器具を扱っている店舗でも,特に大型の店舗でない限り,一般的には,監視用CCDカメラを扱っておらず,販売経路が異なること,監視用CCDカメラ及びカメラ関連製品を扱っている大型店舗においても,監視用CCDカメラと写真機械器具の売り場は異なること等の事実を総合考慮すると,指定商品「写真機械器具」と被告商品とは商品としての関連性が乏しく,類似しないと解するのが相当である。
以上のとおり,被告商品は本件商標権2の指定商品である写真機械器具に類似するとはいえないから,本件商標権2に基づく損害賠償請求は理由がない 。
2 被告は,被告標章を包装に付した被告商品を日本国内で販売したか否か(争点(2))について (1) 事実認定 前記争いのない事実等,証拠(甲30,31,34,35,36の1ないし3,37,38,39及び40の各1ないし3,検甲1ないし3,原告代表者,被告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められる。
ア 原告は,平成12年3月31日まで,被告に対して,原告商品を供給し,被告は,原告から供給を受けた原告商品を販売,輸出していたが,同日以降,原告は被告に対する原告商品の供給を停止したため,被告は,その後は,原告商品の販売,輸出をしていない。
被告は,被告商品1につき,日本国内において,別紙被告商品売上票の「期間」欄記載のとおりの時期に,「台数」欄記載のとおりの台数を販売した。
イ 原告代表者Aは,平成13年10月20日,トモカ電気の秋葉原の販売店において,被告商品のうちのLCL-211H及びLCL-902HSを購入したが,それらの包装用の箱には被告標章が付されていた(また,Aは,「LCL・660A」,「WATEC AMERICA CORP.」と表示された包装用の箱に入ったCCDカメラも購入している。)。
Aは,平成15年6月19日,ワイケー無線2号店において,被告商品のうちのLCL-903HS,LCL-211H及びLCL-613を購入したが,それらの包装用の箱には,被告標章が付されており,また,LCL-903HS,LCL-211Hの取扱説明書は日本語で書かれており,LCL-613の取扱説明書は日本語で書かれているものと英語で書かれているものとがあった。
平成15年6月26日の時点で,ワイケー無線2号店において,被告商品のLCL-903HS及びLCL-902HSが販売されていたが,同商品の包装用の箱には被告標章が付されていた(また,「LCL・660A」,「WATEC AMERICA CORP.」と表示された箱に入ったCCDカメラ,「LCL-811K」,「WATEC AMERICA CORP.」と表示された包装用の箱に入ったCCDカメラも販売されていた。)。
ウ 原告は,本件訴訟提起に先立って,東京地方裁判所に対して,被告が被告標章をCCDカメラの包装に付することの差止めを求める仮処分命令の申立てをしたが,同裁判所は,平成14年4月30日,@被告に対し,被告標章をCCDカメラの包装等に付すること等を停止すること,A執行官に対し,被告標章を付した包装等の保管をすることを内容とする本件仮処分決定をした。
(2) 認定事実に基づく判断 ア 上記(1)で認定したように,平成13年10月20日の時点で,被告商品のうちのLCL-211H及びLCL-902HSが販売されており,同商品の包装に被告標章が付されていたこと,平成15年6月19日の時点で,被告商品のうちのLCL-903HS,LCL-211H及びLCL-613が販売されており,同商品の包装に被告標章が付されていたこと,同月26日の時点で,被告商品のうちのLCL-903HS及びLCL-902HSが販売されており,同商品の包装に被告標章が付されていたこと等の事実によれば,上記の各時点において,被告商品のうち,上記各型番の付けられた各商品の包装に被告標章を付して,同商品を販売していたことは明らかである。
ところで,本件商標権1の商標登録がされた平成13年8月31日以降,被告は,被告商品1を日本国内で販売していたことは争いがない。本件全証拠によるも,国内販売をしていた被告商品1のうち,特定の型番が付けられた被告商品についてだけ被告標章を付し,他の型番の付けられた被告商品については,別の標章を付したという事情を認めることはできないから,被告が日本国内で販売していた被告商品目録1に記載のあるすべての型番の付けられた商品の包装に,被告標章が付されていたものと認められる。
イ これに対し,被告代表者は,@輸出用の被告商品1の多くの包装には被告標章を付していたが,日本国内で販売する被告商品1の包装には被告標章は付していなかった,Aワイケー無線2号店において包装に被告標章が付された被告商品1が販売されていたのは,被告の従業員の過誤で輸出用の被告商品1を日本国内で販売してしまったか,又はワイケー無線2号店で販売されていた上記被告商品1はアメリカから逆輸入等されたものである,Bしたがって,ワイケー無線2号店で販売されていた上記被告商品1以外は,日本国内で販売されていた被告商品1のほとんどには被告標章は付されていなかった,などと供述する(被告代表者尋問)。
しかし,前記(1)で認定したように,ワイケー無線で販売されていた被告商品1のLCL-903HS,LCL-211Hの取扱説明書は日本語で書かれており,LCL-613の取扱説明書は日本語で書かれているものと英語で書かれてるものとがあったことからすれば,これらの商品が輸出用であったとは考えられず,被告代表者の上記供述は採用することができず,他に前記認定を左右するに足りる証拠はない。
ウ 証拠(甲30)及び弁論の全趣旨によれば,平成14年4月以降は,被告が販売する被告商品1の包装には被告標章が付されていなかったことが認められる。
また,本件全証拠によっても,被告が被告商品2を日本国内で販売していたことを認めるに足りない。
(3) 以上のとおり,被告は,日本国内において,包装に被告標章を付して,被告商品1を販売していたことが認められるが,被告商品2を販売していたとは認められない。
3 民法709条の1般不法行為に基づく損害賠償請求の可否(争点(3))について 原告は,被告が,被告標章を包装に付した被告商品を日本国内で販売したことがなく,専らアメリカに輸出していたとしても,これにより原告商品の売上が減少したのであるから,被告の輸出行為は不法行為を構成する旨主張する。しかし,原告は,被告が包装に被告標章を付した被告商品を輸出することが違法となることについて何ら主張,立証をしていない以上,被告の上記行為が違法であると認めることはできない。原告の上記主張は理由がない。
4 損害額(争点(4))について (1) そこで,被告が被告商品1を販売し,本件商標権1を侵害したことによって原告が被った損害額について検討する(前記1で判示したように,被告商品1は本件商標権2の指定商品である写真機械器具に類似するとはいえないから,本件商標権2に基づく損害賠償請求は理由がない 。) 本件商標権1は平成13年8月31日に登録され,被告は,同日以降平成14年3月までの間,被告商品1の包装に被告標章を付して,日本国内において販売し,被告商品1の売上高は,別紙被告商品売上表のとおりであり,平成13年9月1日から平成14年3月末日までの売上高は合計271万円(そのうち,LCL-UFO5の売上高は8万円)であった。そして,本件全証拠によるも,同じ期間に販売した同一商品について異なった包装を使用したとする事情は窺われないこと,被告代表者尋問の結果によれば,被告代表者も,平成14年4月ころまでは,被告商品の包装に被告標章を付することについて何らの疑問も抱いてないなかったと認められることに照らすならば,上記期間において販売された被告商品1のすべての包装に被告標章が付されていたものと推認するのが相当である。
(2) 原告は,被告商品1のうち,商品品番LCL-211H,LCL-217HS,LCL-903HS,LCL-902HS,LCL-902C,LCL-613の販売による原告の損害額については,商標法38条1項に基づき,上記各商品についての原告の利益率をそれぞれ順に,53パーセント,54パーセント,61パーセント,54パーセント,56パーセント,52パーセントとして算定すべき旨主張する。しかし,本件全証拠によるも,原告の利益率が上記のとおりであると認めることはできない。弁論の全趣旨によれば,上記各商品についての原告の利益率は,本件商品の種類,販売数量,用途,需要者,販売規模等の事情を総合考慮して,25パーセントは下らなかったものと認められるから,被告商品1のうちの上記各商品の販売による原告の損害額は,少なくとも65万7500円であったと認められる。
また,原告は,被告商品1のうち,商品品番LCL-UFO5の販売による損害額については,商標法38条2項に基づき算定すべき旨主張するが,弁論の全趣旨によれば,被告の上記商品についての利益率は,前記と同様の事情を総合考慮して,25パーセントは下らなかったものと認められるから,被告商品1のうちの上記商品の販売による原告の損害額は,少なくとも2万円であったと認められる。
(3) したがって,原告の損害額は,67万7500円である。
5 よって,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 榎戸道也
裁判官 佐野信