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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成10ワ16262不正競争行為差止等請求事件 判例 商標
昭和49ワ393 判例 商標
昭和58ワ27 判例 商標
平成8ワ14026商標権侵害差止等請求事件 判例 商標
昭和53ワ2295 判例 商標
関連ワード 商品商標 /  使用事実 /  先願主義 /  指定商品 /  指定役務 /  著名な略称 /  商標の同一性 /  周知性 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  公序良俗(4条1項7号) /  4条1項11号 /  類似性(類否判断) /  権利濫用(権利の濫用) /  商品の類似 /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  取引の実情 /  出所の混同 /  国内 /  警告 /  専用権 /  差止 /  信義則 /  使用許諾 /  無効審判 /  類似商標 /  外国 /  継続 /  非類似 /  商号 /  同業者 / 
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事件 平成 15年 (行ケ) 181号 審決取消請求事件
原告 東洋エンタープライズ株式会社
同訴訟代理人弁護士 伊藤真
同訴訟代理人弁理士 野原利雄
被告 株式会社インディアンモトサイクルカンパニージャパン
同訴訟代理人弁護士 佐藤雅巳
同 古木睦美
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2003/11/28
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 特許庁が取消2000−31423号事件について平成15年3月28日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 主文と同旨 2 被告 (1) 原告の請求を棄却する。
(2) 訴訟費用は原告の負担とする。
争いがない事実等(証拠を掲げたもの以外は当事者間に争いがない。)
1 特許庁における手続の経緯 (1) 原告は,「インディアンモーターサイクル」の片仮名文字を横書きしてなり,平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令1条別表第17類の「被服,その他本類に属する商品」を指定商品とする登録第2634277号商標(別紙1の(1)参照。平成3年11月5日登録出願。平成6年3月31日設定登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である。
(2) 被告は,平成12年11月29日,原告を被請求人として,本件商標の登録を商標法(以下「法」という。)51条1項の規定により取り消すことについて特許庁に審判を請求した。
(3) 特許庁は,被告の請求を取消2000-31423号事件として審理を行った上,平成15年3月28日,「登録第2634277号商標の商標登録は取り消す。」との審決(以下「本件審決」という。)をした。そして,その謄本は同年4月8日に原告に送達された(弁論の全趣旨)。
2 本件審決の理由の要旨(甲1) (1) 原告(被請求人)は,別紙1の(2)ないし(8)に記載の構成よりなる商標(以下「原告使用商標AないしG」といい,これらをまとめて「原告使用商標」という。)を革製ジャケット及びTシャツに使用した事実が認められる。
(2) 本件商標と原告使用商標との類否 本件商標は,「インディアンモーターサイクル」の片仮名文字を横書きしてなり,「インディアンモーターサイクル」の称呼を生ずる。
これに対し,原告使用商標は,いずれも筆記体の欧文字の「Indian」と活字体の欧文字の「MOTORCYCLE」(又は筆記体の欧文字の「Motorcycle」)とを上下2段に横書きしたものを有してなるから,これよりは「インディアンモーターサイクル」の称呼を生ずると認められる。
してみれば,本件商標と原告使用商標とは,文字の種類及び構成態様に明らかな差異があるとしても,同一の「インディアンモーターサイクル」の称呼を生ずる類似の商標と認められる。
(3) 本件引用商標に係る商品との出所の混同の有無について ア 被告(請求人),そのマスターライセンシーの株式会社サンライズ社(以下「サンライズ社」という。),又はサンライズ社とライセンス契約を締結した株式会社マルヨシ(以下「マルヨシ」という。)あるいは西澤株式会社(以下「西澤社」という。)らは,平成6年(1994年)11月から少なくとも平成8年(1996年)7月22日にかけて,別紙1の(11)ないし(18)に記載の引用A商標ないし引用H商標(以下「本件引用商標AないしH」といい,これらをまとめて「本件引用商標」という。)をジャンパー,Tシャツ,革製ジャケット等に使用していたことが認められる。
イ 原告使用商標と本件引用商標の類否 (ア) 原告使用商標は,上記のとおり,いずれも筆記体の欧文字の「Indian」を構成中に有してなり,それぞれ「インディアン」の称呼及び観念を生ずるものと認められる。これに対し,本件引用商標中の本件引用商標A,B,D及びFないしHは,同様に,いずれも筆記体の欧文字の「Indian」を構成中に有してなり,それぞれ「インディアン」の称呼及び観念を生ずるものと認められる。そして,原告使用商標中の筆記体の欧文字の「Indian」と,本件引用商標中の本件引用商標A,B,D及びFないしHにおける筆記体の欧文字の「Indian」とは,ほとんど同一に近く,その外観が極めて紛らわしいものである。
そうとすれば,原告使用商標と,本件引用商標中の本件引用商標A,B,D及びFないしHは,いずれも「Indian」の文字の外観,「インディアン」の称呼及び観念を共通にする類似の商標と認められる。
(イ) 原告使用商標中の「Indian」及び「MOTORCYCLE」(又は「Motorcycle」)の文字と,本件引用商標Aの要部と認められる「Indian Motocycle」の文字及び本件引用商標FないしH中の「Indian」及び「MOTOCYCLE」の文字とは,「MOTOCYCLE」(又は「Motocycle」)という文字のほぼ中間付近において,欧文字の1字「R」(又は「r」)を有するか否かの差異にすぎず,それ以外の文字配列を同じくするから,文字の種類及び大小並びに構成態様に差があるとしても,これらの文字配列の比較においては,極めて近似しているものということができ,時と所を異にして接するときは,互いに紛れるおそれがある類似の商標といわなければならない。
(ウ) また,本件商標及び原告使用商標中の「MOTORCYCLE」(又は「Motorcycle」)の文字部分と,本件引用商標FないしH中の「MOTOCYCLE」(又は本件引用商標A中の「Motocycle」)の文字部分とは,いずれも「オ ートバイ」といった意味合いの同義語のごとく看取される場合も充分にあり得るから,その観念が紛らわしいものといえる。
(エ) さらに,本件商標及び原告使用商標より生ずる称呼「インディアンモ ーターサイクル」と,本件引用商標FないしHより生ずる称呼「インディアンモトサイクル」(又は本件引用商標Aの要部と認められる「Indian Motocycle」より生ずる称呼「インディアンモトサイクル」)とは,いずれも11音以上という冗長な音構成よりなるものであって,「イ」「ン」「ディ」「ア」「ン」「サ」「イ」「ク」「ル」の各音を共通にし,その異なるところは,中間に位置する「モーター」と「モト」との差異にすぎない。しかして,「モー」と「モ」は長音の有無の違いであって,長音は前音をやや伸ばすにすぎず,前音との区別が定かでないことから,長音の有無が称呼全体に及ぼす影響は決して大きいものとはいえず,「モー」と「モ」は極めて近似して聴覚されるものというべきである。
次に,「ター」と「ト」についてみるに,長音の有無については,上記と同様であるところ,残る「タ」と「ト」は,いずれも50音図の同行に属する音であって,ともに舌尖を上前歯のもとに密着して破裂させる無声音であり,調音位置,音調,音感が極めて近似した音といえるものである。
してみると,本件商標及び原告使用商標より生ずる称呼「インディアンモーターサイクル」と,本件引用商標FないしHより生ずる称呼「インディアンモトサイクル」(又は本件引用商標Aの要部と認められる「Indian Motocycle」より生ずる称呼「インディアンモトサイクル」)とは,いずれも11音以上にわたる極めて冗長な称呼の全体をそれぞれ一連に称呼するときには,前述の差異音が比較的明瞭には聴別し難い中間に,いずれも位置していることと相俟って,互いに紛れるおそれがあるものといわなければならない。
したがって,本件商標及び原告使用商標と上記引用商標とは称呼上類似する商標と認められる。
(オ) 以上の点を総合すると,本件商標及び原告使用商標と,被告の本件引用商標A,B,D及びFないしHとは,類似する商標と認められる。
ウ 他人の業務に係る商品との混同について (ア) 被告ら又はマルヨシあるいは西澤社は,その製造,販売に係る革製ジ ャケット,シャツ等に,本件引用商標のいずれか又はそれらと酷似した商標を使用した事実,また,新聞や雑誌に,これらの商品の宣伝広告又は紹介記事を相当程度掲載した事実が認められる。
(イ) 原告使用商標は,いずれも筆記体の欧文字の「Indian」の文字部分において,本件引用商標A,B,D及びFないしHと酷似しており,上述のとおり,それぞれの商標は,いずれも「インディアン」の称呼及び観念を生ずるものである。そして,原告が原告使用商標を使用した革製ジャケット及びTシャツと,被告ら又はマルヨシあるいは西澤社が本件引用商標A,B,D及びFないしHを使用した革製ジャケット,シャツ等とは同一又は類似する商品である。
(ウ) そうすると,原告による革製ジャケット及びTシャツについての原告使用商標の使用は,本件引用商標A,B,D及びFないしHを革製ジャケット,シャツ,帽子等に使用していた被告ら又はマルヨシあるいは西澤社の業務に係る商品であるかのように取引者及び需要者に商品の出所を混同させたものと認められる。
(4) 故意について 原告は,本件引用商標と同一又は類似の文字又は図形を含む商標に係る多数の商標登録出願を行っており,被告ら又は西澤社とは同業者であって,いわゆる競業関係にあり,しかも,後述のとおり,被服業界に長く従事し,被服関連の諸情報に精通していたと推認できるほか,平成7年7月4日に,被告から警告書を受け,本件引用商標Aが近々登録になる旨を告げられていたものである。
これらを総合すると,原告は,前記(3)ウ(ア)のとおり,本件引用商標を使用 した商品の宣伝広告,紹介記事を掲載した新聞や雑誌を知っていた上,被告ら又はマルヨシあるいは西澤社が本件引用商標を革製ジャケット,シャツ等に使用している事実を知っていたものと認められる。
本件商標は,「インディアンモーターサイクル」の片仮名文字を横書きしてなるのに対し,原告が使用した原告使用商標は,上述のとおり,筆記体の欧文字の「Indian」のほか,他の文字又は図形を含む構成態様よりなるものである。そして,原告使用商標中の筆記体の欧文字の「Indian」と,本件引用商標中の本件引用商標A,B,D及びFないしHの各商標における筆記体の欧文字の「Indian」とは,ほとんど同一に近く,その外観が極めて紛らわしいものである。
そうしてみると,原告使用商標中の筆記体の欧文字の「Indian」が,偶然に本件引用商標中の本件引用商標A,B,D及びFないしH中の筆記体の欧文字の「Indian」と似たものとなったとは到底考えられないから,原告は,意識的に,原告使用商標中に,筆記体の欧文字の「Indian」を採用して使用したものと認められ,被告ら又はマルヨシあるいは西澤社の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあることを認識していたものといわざるを得ない。
したがって,原告は,故意に,被告ら又はマルヨシあるいは西澤社の業務に係る商品と混同を生じさせる行為をしたと認められる。
(5) 以上のとおりであり,本件商標の商標権者である原告は,故意に本件商標と類似する原告使用商標をその指定商品について使用し,他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたというべきであるから,法51条1項の規定により,本件商標の登録は取り消しを免れない。
当事者の主張
(原告の主張) 1 取消事由1(審判請求の違法性) 本件審判の請求は,被告らによる原告所有の本件商標に係る商標権(以下,「本件商標権」という。)の侵害事実をその根拠としてなされたものであるから,権利の濫用として却下されるべきであったのに,この点を看過した本件審決は違法である。
(1) 事件の背景及び経緯 ア 本件商標は,平成3年11月5日に登録出願され,平成6年3月31日に設定登録されたものである。これに対して,本件引用商標Aは,A(以下「A」という。)によって,平成4年2月6日に登録出願されたものであるが,同出願につき特許庁は,平成6年2月10日に,「本願商標(本件引用商標A)は,本件商標に類似する。」旨の拒絶理由通知書を発し,これに対しAは,「本願商標(本件引用商標A)からは,「インデアンモトサイクルカンパニーインク」の一連の称呼のみが生じ,「インディアンモーターサイクル」の称呼が生ずる本件商標とは類似しない。」との意見書を提出するとともに,本件商標について,法46条により登録の無効を求める審判(平成6年審判第13787号)を請求した。特許庁は,上記審判の結果を待たず,本件引用商標Aの登録出願につき,平成7年3月30日に登録査定をし,同年9月29日に設定登録をした。
イ その後,本件引用商標Aに係る商標権は,平成8年5月27日に被告に譲渡されてその旨の移転登録がされた。被告は,本件商標の使用が上記商標権を侵害するとして,平成8年5月21日,上記商標権に基づく商標権侵害差止等請求訴訟(平成8年(ワ)第9391号)を東京地方裁判所に提起した。
一方,原告は,上記訴訟に対する対抗措置として,平成7年12月28日,特許庁に本件引用商標Aの登録の無効を求める審判(平成7年審判第28124号)の請求をするとともに,平成8年7月15日,被告ら及び西澤社による別紙2の(1)ないし(7)記載の商標の使用が本件商標権を侵害するとして,本件商標権に基づく商標権侵害差止等請求訴訟(平成8年(ワ)第14026号)を東京地方裁判所に提起した。
ウ 被告が請求した前記無効審判事件(平成6年審判第13787号)について,特許庁は,平成9年9月30日,「「インディアンモトサイクル」,「インディアン」は,本件商標の出願時及び査定時において,インディアンオートバイ社(1901年(明治34年)設立の米国法人)の著名な略称及び商標であったものということはできず,本件商標は,その指定商品について使用しても,同社と何らかの経済関係にある者の業務に係る商品であるかの如くその出所について混同を生ずるおそれがないものというべきである。」旨認定判断した上,「本件審判の請求は,成り立たない。」とする審決をし,本件商標の登録の有効性が確認された。
エ 他方,原告が請求した本件引用商標Aに係る前記無効審判事件(平成7年審判第28124号)について,特許庁は,平成10年4月10日,本件引用商標Aは法4条1項7号(公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標)に違反するものであるとし,同商標の登録を無効とする旨の審決をしたが,同審決は,東京高等裁判所の判決により取り消された。これを受けて,特許庁は,更に審理し,平成14年2月28日,本件引用商標Aは,本件商標に類似する(法4条1項11号に該当)とし,再び同商標の登録を無効とする旨の審決をした。被告は同審決に対しその取消請求訴訟(平成14年(行ケ)第140号)を提起したが,東京高等裁判所は,平成14年12月27日,その請求を棄却する判決をした。同判決に対する上告受理申立てについて,最高裁判所は,平成15年6月12日,上告不受理の決定をしたことから,上記審決は確定し,これによって,本件引用商標Aの登録の無効は確定した。
オ 原告が提起した前記商標権侵害差止等請求事件(平成8年(ワ)第14026号)について,東京地方裁判所は,平成14年8月22日,中間判決をした。同判決は,@別紙2の(1)ないし(7)記載の各標章は,いずれも本件商標に類似する。A別紙2の(4)記載の標章(本件引用商標Aに酷似する標章)は,本件引用商標Aに係る被告の商標権の専用権の範囲に属するが,別紙2の(5)ないし(7)記載の各標章は,いずれも同商標権の専用権の範囲に属さないとするものであった。
カ 本件引用商標Aの使用について,同商標の登録の無効が確定し,本件引用商標EないしHの使用が本件引用商標Aに係る商標権の専用権の範囲内であると主張する根拠が失われたのであるから,被告らによる本件引用商標EないしHの使用が本件商標権の侵害に該当することは明らかである。
なお,本件引用商標Eについては,原告所有の登録第4145016号商標の商標権にも抵触する。
(2) 本件引用商標の使用の違法性と本件審判請求 ア 本件引用商標のうち,本件引用商標A,EないしHは,本件商標と類似する商標であり,その使用が本件商標権を侵害する違法な使用であることは前記のとおりである。被告らの上記各引用商標の使用は,その使用を正当化する免責事由も,使用の正当性を考慮すべき事情も一切存在しない。
そして,被告らは,遅くとも本件商標が出願公告された平成5年3月31日には,本件商標の存在を承知していたと推認でき,また,本件引用商標Aの登録出願について拒絶理由通知を受けた平成6年2月10日には,本件商標の存在を確認していた。その上,多くの関連事件での審理の経緯やその結論から,被告らによる本件引用商標A,EないしHの使用が,本件商標権の侵害行為に該当すること(若しくはその蓋然性)を十分承知していたはずである。それにもかかわらず,被告らは,本件引用商標A,EないしHのみならず,片仮名商標「インディアンモトサイクル」や,欧文字商標「INDIAN MOTOCYCLE」等,明らかに本件商標権の侵害にあたる商標使用を開始,継続し,しかも,本件引用商標Aの登録出願について拒絶理由通知を受けるや,これに対する意見書では「Moto(モト)」と「モーター(Motor)」の相違,「Co.,Inc.(カンパニーインク)」の文字の有無を理由に,本件商標と本件引用商標Aとは類似しないとの主張をし,それによって本件引用商標Aにつき設定登録を受けておきながら,その登録後は一転して,欧文字標章「INDIAN MOTORCYCLE」についてまで本件引用商標 Aに類似するとの主張をし始めた。そればかりか,被告自らが「Moto(モト)」ではなく「Motor(モーター)」と表記した商標や,「Co.,Inc.(カンパニーインク)」を省いた商標を使用している。このような被告の場当たり的な言動は,まさに,禁反言・信義則の原則に反するというべきである。
イ そもそも,侵害行為の強引な継続によって,侵害者に何らかの権利や保護法益が発生するなどといったことは到底容認されるものではなく,ましてや,侵害行為を因として,被侵害者に何らかの制裁を課することなどは,法の建前からして決して許されないというべきである。すなわち,原告の本件商標を違法に侵害する被告らが違法に使用する商標を引用してした本件審判の請求は,権利の濫用に該当し許されないというべきである。
ウ なお,本件引用商標B,C,Dは,被告らが実際に使用した本件引用商標A,FないしH又は別紙3の(1),(2)記載の被告使用商標を分割して個別に抽出した標章にすぎず,原告が原告使用商標を使用していた期間中に,被告が本件引用商標BないしDを単独で使用した事実はなく,したがって,これらの商標を商品の出所の混同の有無を判断する上での引用商標とすることは許されない。
2 取消事由2(法51条1項の解釈適用の誤り(1)) 法51条1項は,商標権者の不正,違法な商標の変更使用があった場合に適用されるべきものと解釈すべきであるのに,本件審決は,全く違法性のない原告の商標使用につきこれを適用したものであり,法51条1項の解釈適用を誤った違法がある。
(1) 法51条1項は,一般公衆の利益保護を主要目的とするものであるが,同条は,権利行使に名をかりて不法な商標使用を敢えてする商標権者に対する制裁としてその登録を取り消すものに外ならない。したがって,商標権者に同条所定の責任があるとするには,当該商標権者による商標の変更使用が他人の権利を不法に侵害するものであることを要すると解するのが同条及び先願・登録主義を基調とする商標法制度全体の趣旨に照らして正当というべきである。まして,他人による商標の使用が,その使用について何ら免責事由も認められない侵害行為である場合には,結果において,登録商標と類似する商標の使用が他人に係る商品との混同を生じたとしても,登録商標に係る商標権者に何らかの非があったというわけではなく,法51条1項による制裁を受けるべきいわれはないというべきである。
(2) 原告は,被告会社設立日(平成5年6月3日)以前に本件商標を出願(平成3年11月5日)し,登録主義を基調とする我が国商標法制度に則り,その登録(平成6年3月31日)を待って,カナダインディアン社との間で業務提携を図り,同社商品を輸入することから原告使用商標の使用を開始したものである。そして,本件商標の出願前及び登録前にあって,被告らが本件引用商標を本件商標の指定商品又はこれに類似する商品について実際に使用した事実は皆無であり,被告らに本件商標権に対抗できる権利や利益は認められないから,被告らによる本件引用商標A,EないしHの使用は法36条所定の不法な使用に当たる。
なお,本件引用商標BないしDは,被告らが実際に使用した本件引用商標A,FないしH又は別紙3の(1),(2)記載の被告使用商標を分割したものであり,原告が原告使用商標を使用していた期間中に使用され,登録されていた商標ではない。
上記のとおり,原告による原告使用商標の使用は何ら不正,違法な本件商標の変更使用には当たらず,むしろ,被告による本件引用商標A,EないしHの使用こそが不法な使用に該当するのであって,原告の本件商標について法51条1項を適用する余地はない。
(3) 本件引用商標B,Cは,いずれも,原告出願の別紙1の(9),(10)記載の商標H,I(以下「原告出願商標H,I」という。)より後願の商標であり,法8条に違反して設定登録されたものである。本来,特許庁は,本件引用商標B,Cについて,法15条の3の規定により拒絶査定の予告通知をすべきであったのに,これをせず,先願である原告出願商標H,Iを差し置いて,後願である本件引用商標B,Cの登録を先行させたものである。先願・登録主義を基調とする我が国法制からして,本来であれば,先願である原告出願商標H,Iが先に登録されてしかるべきであり,少なくとも,本件引用商標Aの無効審判の結論が確定するまでは,後願である本件引用商標B,Cについての査定を留保しておくのが公正公平な審査というべきである。そうとすると,法15条の3所定の手続きがされなかった審査手続には,違法とはいえないまでも重大な瑕疵があったというべきである。
そして,原告出願商標H,Iと本件引用商標BないしDとが類似するとの本件審決での認定に従えば,本件引用商標Aの登録無効が確定した以上,本件引用商標B,Cの登録が法8条の規定に違反するものとし無効とされ(両商標に対して,原告は,既に登録無効審判の請求を済ませている。),先願に係る原告出願商標H,Iが登録されることは確かなところであり,その際には,被告らによる本件引用商標BないしDの使用も原告の商標権の侵害となるものである。
にもかかわらず,本件審決は,これらの事情を一切考慮しないばかりか,先願に係る原告出願商標H,I等の出願事実をもって,原告の出所混同の故意を推認し,それによって,原告による原告使用商標の使用を不正な使用と判断したもので,本件審決が法51条1項の解釈適用を誤ったものであることは明らかである。
3 取消事由3(法51条1項の解釈適用の誤り(2)) 原告の原告使用商標の使用行為は,「故意に指定商品についての本件商標に類似する商標の使用であって他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたとき」に該当しないものであり,これと異なる本件審決の判断は違法である。
(1) 本件審決は,「原告による原告使用商標の使用は,本件引用商標A,B,D,FないしHを革製ジャケット,シャツ,帽子等に使用していた被告ら又はマルヨシあるいは西澤社の業務に係る商品であるかのように取引者及び需用者に商品の出所を混同させた。」とするが,本件審決のかかる判断は誤りである。
ア 本件引用商標等が「商品の出所の混同」の有無の判断上で引用商標としての適格を有するか否かについて (ア) 本件引用商標BないしDは,被告らが実際に使用した本件引用商標A,FないしH又は別紙3の(1),(2)に記載の商標を分割したものであり,また,本件引用商標Eは,マルヨシが「バッグ」について使用した商標である。したがって,原告使用商標との関係で商品の出所の混同の有無の判断をするについて,これらを引用商標とすることは認められない。原告が原告使用商標を使用していた期間中にあって,被告らがジャンパー,Tシャツ,革製ジャケットに使用していた商標,すなわち,引用すべき商標は,本件引用商標A,FないしHと別紙3の(1),(2)に記載の商標とすべきである。
原告使用商標AないしGが,本件引用商標A,FないしHに類似すること,原告使用商標B,C,Eが本件引用商標Bに類似することは本件審決の認定するとおりであるが,原告使用商標A,D,F,Gと本件引用商標B,Dとが類似するとは直ちにいえない。
(イ) ところで,出所の混同が生じるとするためには,商標権者が当該登録商標の類似商標を使用する際において,対象となる他人の商標(引用商標)が,登録されているか,未登録であるかを問わず,識別標識として現に使用されていなければならない。そして,1,2度の商標の使用があったからといって,当該商標と類似する商標の使用によって直ちに出所の混同が生じることなどは到底考えられないことであるから,対象とする他人の商標には,ある程度の周知性が必要というべきである。
まして,他人が使用する商標が,特定の登録商標に類似する商標である場合には,本来,免責事由がない限り上記登録商標に係る商標権を侵害するものであるから,商標権者の上記登録商標の変更使用について違法性そのものがなく,法51条の適用がないと解釈すべきは前記したとおりであり,出所混同の有無の判断においても当該他人の使用商標を引用商標とすべきではなく,少なくとも,当該他人の使用商標が上記登録商標の出願前の使用により周知性を獲得したといえる商標(使用につき免責事由のある商標),あるいは,上記登録商標の出願後登録前の使用によって周知著名性を獲得したといえる商標でない限り,出所の混同を判断する上での引用商標とすべきではない。
(ウ) そこで,本件引用商標A,B,D,FないしHについてみると(本件引用商標C,Eは,本件審決により類似商標と認定されていないので省略する。),いずれも,原告が原告使用商標の使用をした際には,未登録の商標であり(本件引用商標Aの登録を無効とする審決の効力は遡及するものである。),原告による原告使用商標の使用期間中にあっても,実質的に未登録商標であった。そして,別紙3の(1),(2)に記載の商標及び本件引用商標A,FないしHの被告らによる使用は,そのすべてが本件商標の登録後の使用であるから,本件商標権の侵害に該当するものである。
したがって,本件引用商標A,B,D,FないしHは,出所混同の有無を判断する上での引用商標にはなり得ないものである。
イ 本件引用商標の使用の事実及びその周知性について (ア) 本件商標の出願日(平成3年11月5日)又は登録日(平成6年3月 31日)以前に,被告らが本件引用商標のいずれかを,原告使用商標を使用した商品と同一又は類似の商品に使用したとする事実は認められない。
被告は,外国での些細な報道や,日付も発行者も不明な外国で頒布された英文カタログをその使用の根拠とするが,法51条でいう出所の混同とは,我が国での出所の混同を意味するものであって,我が国の取引者や需用者が到底知り得ないような外国でのこのような些細な事実は,我が国での出所の混同の判断に微塵も影響しない。
(イ) 原告が原告使用商標の使用を開始する以前にあっても,被告らが本件引用商標のいずれかを,原告使用商標を使用した商品と同一又は類似する商品に使用したとする事実は認められない。
原告は,本件商標が公告され,登録されたことを踏まえ,カナダ国の「INDIAN MOTORCYCLE」商標の権利者である「カナダインディアン社 」(INDIAN MANUFACTURING LTD.)と提携し,平成7年(1995年)の 初めに同社商品をサンプル輸入し,その販売を開始したもので,最初 の雑誌広告は,同年6月25日発行の「ポパイ」による。
原告による原告使用商標の使用開始前に,被告らによる本件引用商標の使用事実があるとすれば,「マルヨシ」が本件引用商標Eを使用した「バッグ」の雑誌広告(平成6年(1994年)12月20日発行「フィールド・ギア」)であるが,この商品「バッグ」は,原告使用商標を使用した商品である革製ジャケット,Tシャツとは非類似の商品であり,しかも,本件審決では,原告使用商標と本件引用商標Eとが類似するとの認定はなされていない。
(ウ) 被告らが,実際に本件引用商標の使用をしたと認められるのは,平成7年(1995年)後期(10月〜11月)に,西澤社が英国製の革製ジャケット,パンツを輸入販売したのが最初であり,原告による原告使用商標の使用よりも後のことであり,少なくとも,原告使用商標の使用開始より以前にその使用を開始し,原告使用商標の使用開始の時点で,既に周知性を獲得していたなどということはない。
(エ) 原告使用商標と本件引用商標の各使用時期,原告による広告実績及び 当業界(アメリカンカジュアルウェアー業界)での原告の実績や評判等からして,どちらがより周知であったかということになれば,当業界においてさしたる実績もない被告らに比べ,原告の方がより周知であったというべきは明らかである。
原告の「インディアン社」のロゴ入り商品との関わりは,米国においても知られているところであり,同商品の日本を代表する取扱店として,原告商品の直販店である「ジャンキー”Janky”」「ジャンキークラシック”Janky Classics”」が,米国で出版されたモーターサイクルジャケットの総合案内書に挙げられている程である。
ウ 旧インディアン社の商標の周知著名性について (ア) 原告は,原告使用商標や本件引用商標等が,1901年(明治34年)創立のインディアン社(以下「旧インディアン社」という。)が使用していたオートバイ商標又はそれに依拠する商標であること,そして,同社商標が存続時に著名であったことを特に否定するものでもない。しかし,同社は,1953年(昭和28年)に消滅して以降,現在に至るまで,関係者を含め一切の事業活動を行っていないのであるから,既に,同社商標の周知著名性は消滅しており,そもそも,出所の混同を問疑すべき営業主体そのものが存在しないのであるから,商品出所について混同が生ずるとする前提自体を欠くものである。
(イ) 被告は,(以下「B」という。)が設立したインディアン社(以下「新インディアン社」という。)は,1901年(明治34年)創立の旧インディアン社の復活であり,「インディアン商標」(旧インディアン社の略称を除く同社使用に係る商標等を総称して用いるものとする。以下同じ。)の正当な出所であるとの主張をしている。
しかしながら,被告らは,いずれも,1901年(明治34年)創立の旧インディアン社とは全く無関係で,法的にも,経済的にも,事実としても一切関係がない。旧インディアン社は,1901年に設立されたオートバイメーカー ”INDIAN MOTO(R)CYCLE CO.,INC.”で(「MOTO」と「MOTOR」の違いは,同社が時期や場合によって使い分けていたこと による。),おおよそ今から50年前の1953年(昭和28年)に解散消滅し,以後,関係者を含めて如何なる事業活動もしていない。被告らが関係したのは,この「インディアン社」ではなく,関連事件で,刑事犯として米連邦裁判所から有罪判決を受けたBと,Bがこの犯罪を実行するために設立した同名の米国法人「インディアン社」(新インディアン社)である。新インディアン社は,1953年(昭和28年)に解散消滅した旧インディアン社とは全く関係のない別法人であり,Bが詐欺行為の道具として利用するため,意図的に,消滅した旧インディアン社と同一の商号「Indian Motocycle Co.,Inc.」,同一の商標「本件引用商標A」,同一の所在地「Springfield」を採用し,あたかも,旧インディアン社と同一会社であるかのように,あるいは,同社と何らかの関係又は継続性があるかのように装ったにすぎない会社である。しかも,新インディアン社は,投資家から金員を詐取しただけで,オートバイの製造はもちろん,企業本来の事業活動はおろかその準備行為すら一切せずに設立後間もなく倒産しているのである。
新インディアン社の実体は上記のとおりであり,これより日本をテリトリーとする「インディアン社」関連商標の使用権限を譲り受けたと主張する者がAで,Aより本件引用商標Aを譲り受けたのが被告,被告の親会社がサンライズ社,被告より本件引用商標A等の使用許諾を受けたのが西澤社及びマルヨシである。AとBとの間で締結された契約が有効であるか否かは当事者間の問題であるとしても,本件引用商標A等について,日本において何らの権利も有さず,米国にあっても如何なる権原も有さないBや新インディアン社が,我が国の第三者の使用をも拘束する,日本における商標使用許諾の権原を持たないことは論ずるまでもないことである。
そうとすると,旧インディアン社と無関係であることについては,被告らも原告も(何人であろうと)同等であって,旧インディアン社が存続時使用していたオートバイ商標又はそれを原型起源とする商標を被服等の商標として採択使用することについて,一方が正当な使用者で,他方が不正な使用者であるとか,一方の商標が,他方の商標を真似たとかいう関係にあるものではなく,商標採択の動機及びその起源が共通していたということにすぎない。
(2) 本件審決は,原告には,「出所の混同をさせた行為」につき,「故意があった。」と認定したが,かかる認定は全く根拠のないものである。
ア 原告の商標採択の動機,経緯 (ア) 原告は,昭和40年(1965年)頃からアメリカンカジュアル衣料 の製造販売を主な業務とし,創業以来一貫して高品質な商品の提供をし続け,当業界の取引者や需用者から高い信頼と支持を得ている会社である。このことは,米国においても知られるところとなり,数百人からなる米国ヴィンテージバイクの愛好家グループより,彼らのバイクジャケットを作ることを依頼されたのが本件商標採択のきっかけであり,彼らの奨めから,このバイクジャケットを市販品化することとし,そしてまた,彼らの提案により,商標名を「インディアンモーターサイクル」とすることとして,平成3年(1991年)11月5日に本件商標の登録出願をしたものである。
その際,商標の表記をカタカナとしたのは,当初,ロゴ書体が決まっていなかったので,取り敢えず音表示で出願したもので,このような手法は,先願主義を採用する我が国商標法制度上一般的に採られている手法である。
(イ) その後,本件商標が公告され,登録されたことを踏まえ,原告は,商品の具体的な企画に着手するとともに,「INDIAN MOTORCYCLE」につき,カナダ連邦裁判所により正当な商標権者と認められたカナダ国の商標権者「カナダインディアン社 」と提携し,同社商品を輸入して販売を開始した ものである。原告使用商標AないしGのすべての商標は,カナダインディアン社の商品に初めから付されていたものである。原告が原告使用商標を使用するに至ったのは,上記経緯によるものであり,決して,本件引用商標等の被告使用商標を意識し,これに依拠して採択したのではない。
(ウ) 原告使用商標も本件引用商標も,いずれも,旧インディアン社のオートバイ商標を原型起源として採択されたもので,1900年代に製造された同社のバイクイメージや,当時の時代イメージを種々商品に再現させることを意図してのものである。このような試みは,同社が消滅した4年後の昭和32年(1957年)には既に行われており,これらの商品を集めたカタログも発行されている。当時の商品は,ヴィンテージ品としてマニアの間で珍重され高く評価されているが,今もそのレプリカ品(復刻品)を取り扱う業者は,種々の商品毎に各国に存在し,原告も,被告らも,カナダインディアン社等々もその内の一業者にすぎない。そして,これら業者は,程度の違いはあっても,旧インディアン社のオートバイ商標に依拠して自らの商品商標を採択しているのであるから,その書体や外観が近似することは必然の結果であり,被告らのように,「自分達だけが,全商品について,全世界において,旧インディアン社のオートバイ商標及びそれに依拠する商標を使用する正当な権利者である。」との全く根拠のない主張をする者は,他に誰一人としておらず,各自がそれぞれ自国で,自らの取扱商品について,個別に商標登録等の手当をして使用しているのである。
したがって,原告使用商標の書体や外観が,被告引用商標のそれに近似しているからといって,原告使用商標が本件引用商標を真似たものであるということはできない。
イ 以上のとおり,原告による原告使用商標の使用は,被告らのライセンスビジネスとは全く無関係にされたものである。そして,原告の原告使用商標の使用は,登録主義の商標法制度に則り,本件商標の登録(平成5年7月16日)を待って開始し,本件引用商標Aの特許庁審査での類否判断に準じ(誤解であったが),先願商標であるにもかかわらず,「Moto」と表記され,あるいは「本件引用商標A中の図形に酷似したインディアン図形」のある原告出願商標H,Iの使用を差し控え,更には,被告の申立てに基づく東京地方裁判所の仮処分決定(平成8年(ヨ)第22126号事件)に従って,多大の費用と労力を掛けて原告使用商標を付した商品を全国の取引先より回収し,以後の原告使用商標の使用においては,東京高等裁判所が平成12年11月29日にした判決(被告が原告を相手方として提起した平成11年(行ケ)第443号審決取消請求事件)で本件商標と同一性ある商標の使用と認められた態様に変更して使用しているものである。このような一連の原告の対応からしても,原告による原告使用商標の使用が,故意に出所の混同を生じさせた行為であるとは到底言い難いものである。
(被告の主張) 1 取消事由1について (1) 原告は,本件引用商標A,EないしHの使用が本件商標に対する原告の商標権を侵害し免責事由もなく違法であるから,本件審判請求は権利濫用にあたり許されない旨主張する。
(2) ところで,本件審決は,要約すると,@本件商標と原告使用商標とは類似し,また,原告使用商標と本件引用商標A,B,D及びFないしHとは類似する,A原告が原告使用商標を使用した革製ジャケット及びTシャツは,本件商標の指定商品中の「被服」に含まれる,B上記革製ジャケット及びTシャツは被告が本件引用商標A,B,D及びFないしHを使用した革製ジャケット,シャツ,帽子と同一又は類似であると認定した上で,商品の出所の混同を認定し,原告の故意を認定して,法51条1項に該当すると判断し,本件商標の登録を取り消したものである。
しかるに,原告は,本件引用商標A,EないしHについてのみ言及するのみであり,本件引用商標B,Dには何ら言及するところがない。かえって,原告は,当初は,「本件引用商標A,EないしH」と言いながら,途中で「本件引用各商標の使用」と言いかえて,その範囲を拡張し,論旨をすり変えている。
本件審決が適正に認定するように,原告の使用に係る原告使用商標は被告らの使用にかかる本件引用商標B,Dに類似するのであり,原告に「他人の業務に係る商品と混同を生じさせるもの(行為)」があったことは明白で,被告の本件審判請求は適正なものであり,原告の権利濫用の主張は既にこの点で理由がない。
(3) 原告の,被告が本件引用商標A,EないしHを使用する正当な事由がないとの主張もまた,理由がない。
被告は,「インディアンロゴ」や「ヘッドドレスロゴ」や「モトサイクルロゴ」等の「インディアン商標」の日本における正当な使用権者である。このことは,被告の権利取得の経緯からも明らかであり,現に,多くの一流企業が,被告からライセンスを受けて,「インディアンロゴ」や「ヘッドドレスロゴ」や「モトサイクルロゴ」等の「インディアン商標」の使用をしていることからも明らかである。
「インディアンロゴ」と同一または酷似した書体の「Indian」を含む商標(原告使用商標AないしG)や「ヘッドドレスロゴ」と酷似した商標(原告使用商標F)を無断使用したのは一人原告のみである。このように,原告は,本件商標を使用する意思なしに(事実使用しなかった),正当な権利者である被告らの企業努力の成果を収奪し,被告らの業務を妨害するため,本件商標を出願登録したのであり,かかる商標権の取得は商標登録制度を悪用し信義に反するものであるから,そもそも,原告による本件商標権の被告らに対する行使は商標権の濫用を構成し許されないものである。そして,原告による原告使用商標の使用は被告に対する不正競争行為を構成すべきものでもある。したがって,被告らの本件引用商標A,EないしHの使用が違法であるとの原告の主張は理由がない。
(4) 本件引用商標Aについて,それが本件商標に類似するとしてこれを無効とする審決が確定したことは原告主張のとおりである。しかし,被告は本件商標について,平成15年1月30日,本件商標が原告においてこれを使用する意思がなく,正当な権利者の業務を妨害し正当な権利者の企業努力に只乗りする目的で出願登録されたものであるから,本件商標は法4条1項7号に該当するとして,その登録の無効を求める審判請求をした(無効2003-35031号)。本件商標の登録の無効が確定すれば,本件引用商標Aの登録は再審により有効となる。
また,原告は本件引用商標EないしHも本件商標に類似するからこれらの引用商標の使用も違法であると主張して,東京地方裁判所の前掲中間判決を引用するが,本件引用商標EないしHが本件商標と類似するとの主張の当否はさておき,原告がかかる主張の根拠とするのは中間判決にすぎない上,上述のとおり,本件商標の登録が無効となれば,かかる主張は根拠を失う。また,上述のとおり,実質,本件引用商標A,EないしHが本件商標と類似しないとした東京高等裁判所の決定(平成9年(ラ)第1852号事件。原告申立てに係る仮処分申請を却下した東京地方裁判所の決定に対する抗告申立事件における決定)が存する。
したがって,本件引用商標A,EないしHの使用が原告の本件商標に対する商標権の侵害を構成する違法なものであるとの主張は理由がない。
(5) 原告の,本件審判請求は権利の濫用に該当し,許されないとの主張には理由がない。
2 取消事由2について 本件は,法51条1項を適用すべき典型的な事例であり,原審の認定判断は正当であり,原告主張のような法51条1項の解釈適用の誤りはない。
すなわち,要約すれば,原告は,「インディアンの復活」が報じられ,いずれ日本において正規の「インディアン」ビジネスが展開されることを予期し,正規の権利者による「インディアン」ビジネスの企業努力の成果に便乗し,正規の「インディアン」ビジネスの展開を妨害せんとして,すかさず本件商標の登録出願をし,登録を得た。そして,日本において正規に権利を取得した被告らにより「インディアン」ビジネスが展開され,「インディアン商標」が市場に浸透するや,すかさず原告使用商標の使用をジャケット,Tシャツ,帽子,セーターについて開始した。さらに,西澤社による企業努力の結果,「インディアン商標」が革製のジャケットやズボンについても市場に浸透するや,すかさず原告使用商標の使用を革製ジャケットやシャツについて開始した。そして,本件商標の片仮名文字「インディアンモーターサイクル」は一切使用しなかった。原告使用商標は「インディアンロゴ」を含むものであり,「右向きのインディアン図形」を含むものであり,「インディアンロゴ」や「ヘッドドレスロゴ」に類似するものである。あまつさえ,被告の略称である「「インディアンロゴ」/MOTOCYCLE」,「「インディアンロゴ」/Motocycle」(書体は「インディアンロゴ」に同じ。)さえ使用した。そして,原告使用商標は本件商標の同一性の範囲外にある(当時は片仮名よりなる商標と同音の欧文字よりなる商標とは同一性の範囲外にあった。)。また,それは「インディアン/モーターサイクル」(上下2段)等とも同一性の範囲外にあった。かかる事実に照らせば,原告が法51条1項に該当する行為を行ったことは明白であり,原審の認定判断及び法51条1項の解釈適用は正当であって,原告主張のような違法はない。
原告が本件審決に法51条1項の解釈適用を誤った違法があると主張する根拠とするものは,原告の原告使用商標の使用に全く違法性が無いという主張であり,かかる主張の前提となっているのは,被告による本件引用商標の使用が原告の本件商標に対する商標権を侵害するという主張のようであるが,いずれも理由がなく,原告の上記主張は理由がない。
3 取消事由3について 原告の原告使用商標の使用行為は,「故意に指定商品についての本件商標に類似する商標の使用であって他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたとき」に該当するものであり,この点に関する本件審決の認定判断は正当である。
(1) 本件商標の商標権者である原告が本件商標に類似する商標(原告使用商標AないしG)を使用したことは原告の認めるところである。
(2) 原告のかかる行為が「他人の業務に係る商品と混同を生ずるもの(行為)」に該当するものであることも明らかである。
ア 本件引用商標を含む被告の使用商標が市場に浸透し周知になるや,原告はすかさず原告使用商標を使用したものであり,その経緯は以下に述べるとおりである。
(ア) 平成3年(1991年)7月,新インディアン社の設立が「「インデ ィアン」の復活」として米国の一般紙に報じられた。すると,すかさず,原告は本件商標(「インディアンモーターサイクル」の片仮名を横書きしてなるもの)を平成3年11月5日に登録出願した。本件商標は平成6年3月31日に設定登録された。
(イ) 平成5年(1993年)6月3日に被告会社が設立された。被告は,マスターライセンシーのサンライズ社を通じて平成5年秋より,新インディアン社の製造に係る商品の輸入販売を行った。輸入販売は平成9年にサブライセンスに切り替えるまで続けた。
上記輸入販売した商品は,ライダージャケット,Tシャツ,帽子,眼鏡,ペンダント,キーリング,ブレスレット,バッグであった。これらの商品について,「インディアンロゴ」(本件引用商標B),「ヘッドドレスロゴ」(本件引用商標D),「「インディアンロゴ」/MOTOCYCLE」(本件引用商標FないしH)等が使用された。被告らは,「新インディアン社」の作成したカタログを当時輸入商品の販売に伴って配布したが,当該パンフレットには「インディアンロゴ」が使用された。
被告らは,輸入商品の広告を雑誌「DICTIONARY」に打ったが,同広告には,「インディアンロゴ」及び「ヘッドドレスロゴ」を使用した。なお,「ヘッドドレスロゴ」は繊研新聞上で「「インディアン」のロゴマーク」として報じられた。
すなわち,被告らは,ライダージャケット,Tシャツ,帽子,眼鏡,ペンダント,キーリング,ブレスレット,バッグについて,「インディアンロゴ」,「ヘッドドレスロゴ」,「「インディアンロゴ」/MOTOCYCLE」等を識別標識として使用した。かかる商標は平成5年11月には「ブーム着火は時間の問題」という程に市場に浸透していた。
(ウ) かかる商標が市場に浸透したので,平成6年(1994年)初め,サンライズ社は輸入販売を継続しつつ,マルヨシとバッグについて「インディアン商標」のサブライセンス契約を締結した。マルヨシは,同年5月16日展示会を行い,「インディアン商標」のバッグへの使用を開始した。マルヨシは,バッグについて,「ヘッドドレスロゴ」,「インディアンロゴ」,「左向きのインディアン図形」(本件引用商標E)を使用した。すなわち,「インディアンロゴ」,「ヘッドドレスロゴ」,「「インディアンロゴ」/MOTOCYCLE」,「左向きのインディアン図形」等は,平成6年前半にはライダージャケット,Tシャツ,帽子,バッグ等について被告を出所とする商標として既に周知であった。
(エ) すると,すかさず,原告は,「「右向きのインディアン図形」+「イ ンディアンロゴ」/MOTOCYCLE」からなる商標(原告出願商標H)及び「「左向きのインディアン図形」+「「インディアンロゴ」/MOTOCYCLE」からなる商標(原告出願商標I)を商標法施行令1条別表第25類を指定商品として,平成6年9月21日に登録出願した。
(オ) さらに,平成7年(1995年)5月ころ,被告らの企業努力により「インディアンロゴ」,「ヘッドドレスロゴ」,「「インディアンロゴ」/Motocycle」,「左向きのインディアン図形」等が周知になるのをまって,原告は,「インディアンロゴ」,原告使用商標BないしG,「「インディアンロゴ」/Sportswear(「インディアンロゴ」と同じ書体)」からなる商標等を使用したジャケット,Tシャツ,帽子,セーターの輸入又は製造,販売,広告を開始し,被告の警告を受けながらこれを継続した。
なお,原告は,あたかも原告が旧インディアン社(1901年(明治34年)創立のインディアン・モトサイクル・カンパニー)と関係があるかの如き広告をし,「「インディアンロゴ」/MOTOCYCLE」を帽子に使用し,「「インディアンロゴ」/Motocycle(書体は「インディアンロゴ」と同一)」を背中に配したジャケットも販売した。
(カ) 被告のライセンスビジネスは順調に発展し,被告は,平成7年,西澤社と,サンライズ社経由で,革製ジャケット及び革製ズボン(パンツ)について,サブライセンス契約を締結した。
西澤社は,平成7年(1995年)から平成8年(1996年)1月にかけて,積極的に「「インディアンロゴ」/MOTOCYCLE」及び「「ヘッドドレスロゴ」/MOTOCYCLE」を使用して広告宣伝をし,「「インディアンロゴ」/Indian Motocycle Co.,Inc.」,「モトサイクルロゴ」(本件引用商標A)を付した革製ジャケット及び革製ズボンを積極的に販売した。この結果,平成7年暮には,「インディアンロゴ」(本件引用商標B),「ヘッドドレスロゴ」(本件引用商標D),「モトサイクルロゴ」(本件引用商標A),「「インディアンロゴ」/MOTOCYCLE」等は被告を出所とし革製ジャケット,ズボンについて使用する商標としても,周知になった。
(キ) 平成8年(1996年)秋,西澤社が前年の企業努力の成果の果実を回収しようとしていた矢先,原告は,またしてもすかさず,かつ,平成8年5月に被告らから商標使用差止等請求の訴を提起されていたにもかかわらず,原告使用商標AないしC,Eを使用して革製ジャケットを製造,販売,広告した。原告は上記(オ)のジャケット,Tシャツ,帽子,セーターの販売も継続した。
(ク) そこで,被告は,平成8年(1996年)7月市場の混乱を防ぐため繊研新聞に広告を出したが,原告は販売をやめず,他方,被告らの営業を誹謗する行為を行ったので,平成8年9月,本件引用商標Aに係る商標権に基づき東京地方裁判所に商標権侵害差止の仮処分命令の申請をし(平成8年(ヨ)第22126号事件),平成8年12月16日,仮処分命令を得た。
原告は,同仮処分命令申立後も,被告らの営業を誹謗する文書(乙1の(50))を配布した。また,原告は,仮処分命令を受けた直後の平成9年(1997年)3月31日,原告使用商標Eと同一の書体の「「インディアンロゴ」/Motocycle(上下二段)+図形」からなる商標2つを施行令別表第25類を指定商品として登録出願した。また,平成9年1月14日にも,「左向きのインディアン図形」(本件引用商標E)に類似した商標を上記第25類を指定商品として登録出願した。その他,原告は,平成7年4月以降,施行令別表各類を指定商品として「インディアン」関連商標の登録出願をした。
イ 本件引用商標を含む被告の使用商標と原告使用商標とは類似する。
(ア) 本件引用商標を含む被告らの使用商標は,「インディアンロゴ」, 「ヘッドドレスロゴ」,「インディアンロゴ」を顕著な要部とする商標,「ヘッドドレスロゴ」を顕著な要部とする商標である。他方,原告使用商標は「インディアンロゴ」又は「右向きのインディアン図形」を要部とするものである。したがって,本件引用商標を含む被告らの使用商標と原告使用商標とは類似する。
(イ) なお,「インディアンロゴ」はそれ自体として使用されるばかりでなく,「ヘッドドレスロゴ」(本件引用商標D),本件引用商標A,EないしH,その他被告らの使用商標の要部である。そして,「インディアンロゴ」は「インディアン商標」の中核をなす商標である。「ヘッドドレスロゴ」もその使用の実態から「インディアン商標」の中核をなす商標である。したがって,「インディアンロゴ」及び「ヘッドドレスロゴ」は被告をその出所とする商標として広く需要者に認識されており,「インディアンロゴ」又は「ヘッドドレスロゴ」を含む商標を付した商品は被告を出所とする商品と認識されているものである。
商品の類似及び出所の混同のおそれ (ア) 被告,サンライズ社,マルヨシ,西澤社が本件引用商標を含む商標を 使用した商品中,ジャケット(ライダージャケット,革製ジャケット),ズボン(革製ズボン),Tシャツ,帽子が,原告が原告使用商標を使用した商品であるジャケット(布製,革製),シャツ(革製シャツ,Tシャツ),帽子,セーターと類似することは明白である。
(イ) なお,法51条1項においては,商品の類否は,同一又は類似の商標が使用されたとき,それらが同一のものの取扱いにかかるものと認識されるおそれのある関係にある商品か否かにより決すべきものである。今日,ブランドビジネスは進歩し,同一ブランドで衣類やバッグや身飾品等広範囲の商品がブランドのオーナー及びそのライセンシーにより同一ブランドの下で製造販売されている。そして,衣類もバッグも同一の店舗や売り場で販売されることが多い。したがって,バッグも衣類も法51条1項の関係では類似の商品と解すべきものである。
(ウ) したがって,原告が原告使用商標をその商品であるジャケット等に使用した場合,それが被告ら又はその関連業者であるマルヨシあるいは西澤社の業務に係る商品であるかのように,商品の出所についての混同のおそれが存したことは明らかである。
エ 前記(2)アに述べた経緯等からすれば,原告に故意があったことは明白である。
当裁判所の判断
1 取消事由3について (1) 法51条1項によれば,商標権者が故意に指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用であって他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたときは,何人も,その商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる旨定めているところ,取消事由3に係る本件の争点は,原告の原告使用商標の使用行為が,上記規定に該当するか否かである。
まず,証拠(甲39ないし50,58,乙1の(27)ないし(30),(51)ないし(53),(56))及び弁論の全趣旨によれば,原告は,被告会社の設立日(平成5年(1993年)6月3日)以前に本件商標の登録出願(平成3年(1991年)11月5日)をし,その設定登録(平成6年(1994年)3月31日)を待って,「INDIAN MOTORCYCLE」の商標につき,カナダ国の商標権者「カナ ダインディアン社 」(INDIAN MANUFACTURING LTD.)と提携し,平成7年(1995年)5月ころから,同社の商品である革製ジャケット,Tシャツ,帽子等を輸入して販売を開始したこと,その輸入商品には原告使用商標AないしGの商標が付けられており,原告はこの商標を付したまま,これを販売し,その後も,平成8年(1996年)12月ころまで,原告使用商標を付した革製ジャケット,Tシャツ等の製造又は販売,広告を継続して行ったことが認められ,また,原告使用商標が本件商標と類似するものであることは当事者間に争いがない。
(2) そこで,次に,原告が原告使用商標を商品である革製ジャケットやTシャツ等に使用した上記行為が,法51条1項に規定する「故意に他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたとき」に該当するか否かについて判断するに,上記の「他人の業務に係る商品と混同を生ずる」か否かは,当該商標と他人の表示の類似性の程度,他人の表示の周知著名性の程度や,当該商標に係る商品と他人の業務に係る商品との間の性質,用途等における関連性の程度並びに商品の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らして,当該商標に係る商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきである。
ア 本件についてみると,文中掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(ア) 旧インディアン社は,1901年(明治34年),Cが,設計者のDを迎えて,マサチューセッツ州スプリングフィールドに設立したオートバイのメーカーである。旧インディアン社は,マン島のレースや,デイトナビーチ(DAYTONA BEACH)でのレースで優勝するなどして,その品質とデザインにより,米国はもとよりヨーロッパや日本でも極めて有名であった。旧インディアン社の商号は,当初は,「ヘンディー・マニュファクチュアリング・カンパニー」であったが,1923年(大正12年)に「インディアン・モトサイクル・カンパニー」に変更された。
旧インディアン社のオートバイには,特徴ある書体の筆記体の「Indian」(「インディアンロゴ」),羽根飾りを冠した右向きのインディアンの酋長の図形(「右向きのインディアンの図形」)に「インディアンロゴ」を配したもの(「ヘッドドレスロゴ」)が主に商標として使用され(その他に「左向きのインディアンの図形」や活字体の欧文字「INDIAN」や「インディアンロゴ」と類似した筆記体の「Indian」等も使用された。),これらの「インディアン商標」は,旧インディアン社の製造販売するオートバイの商標として米国はもとよりヨーロッパや日本でも周知であった。
また,「Indian Motocycle」,「インディアンモトサイクル」は,旧インディアン社,すなわち,インディアン・モトサイクル・カンパニーの略称として,米国はもとより,ヨーロッパや日本においても広く知られ,周知著名性を獲得していた。
しかし,旧インディアン社は,1953年(昭和28年)に操業を停止し,後に解散した。
(甲28ないし30,乙1の(1)ないし(4)) (イ) Bは,インディアンモトサイクル商標(「インディアン商標」との関係は明らかでない。)の100%所有者である第三者との間で新たにインディアン・オートバイを製造し市場に出して販売する共同事業を行うことを約束し,同商標について50%の持分権の譲渡を受けた。そして,平成2年(1990年)6月ころ,解散消滅した旧インディアン社と同一の商号「Indian Motocycle Co.,Inc.」,「インディアン商標」である本件引用商標A等を採用し,所在地を旧インディアン社と同じく「Springfield」として,米国法人「イン ディアン社」(新インディアン社。具体的には,Indian Motocycle Company Inc.)を設立した。
新インディアン社は,旧インディアン社とは全く関係のない別法人であったが,Bによる新インディアン社,すなわち,インディアン・モトサイクル・カンパニー・インクの設立は,「「インディアン」の復活」として米国の一般紙「ザ・デイリー・ニュース」1991年(平成3年)7月1日号及び「U.S.A TODAY」同年7月5日号により報じられた。
Bは,平成4年(1992年)1月ころ,上記インディアンモトサイクル商標について,残余の持分を取得し,単独所有者となり,同年6月ころ,Indian Motocycle Apparel and Accessories Co.,Inc.,Indian Motocycle Manufacturing Co.,Inc.の2つの会社を設立した。
Bは,これらの会社経営のためとして,多数の投資家から資金を集めた。
(甲33,乙1の(5),(6)) (ウ) しかし,Bは,新インディアン社を設立し,投資家から資金を集めたものの,オートバイの製造などの企業本来の事業活動をほとんど行わず,そのため,新インディアン社は設立後間もなく倒産した。
Bは,新インディアン社及び同社商標に関連して国内外200人にも及ぶ人々から金員等を詐取したとされ,その詐欺行為等に関し,平成8年(1996年)6月5日ころ逮捕され,拘禁された。そして,Bは,米連邦地方裁判所により,投獄7年6ケ月に処するとともに,百万ドルを超える弁償金等の支払を命ずる旨の判決を受けている。
(甲31ないし36) (エ) Aは,「インディアン」のブランドとしての将来性に着目し,平成3年(1991年)12月,新インディアン社との間で,同社は,「インディアン商標」の出願,登録を受ける地位,その第三者へのライセンスを付与する地位を含め,「インディアン商標」に関する日本でのすべての権利をAに譲渡する旨の契約を締結した。
Aは,上記権利の譲渡を受け,平成4年(1992年)2月,特許庁に対し,旧施行令別表17類等を指定商品として「ヘッドドレスロゴ」及び特徴ある筆記体の「Indian Motocycle Co.,Inc.」よりなる商 標(「モトサイクルロゴ」(本件引用商標A))の登録出願をした。
平成4年(1992年)の米国の新インディアン社名義のカタログには,Aが企画した商品であるレザージャケット,Tシャツ,帽子,眼鏡,ペンダント,キーホルダー等が掲載されており,それらの商品には「インディアンロゴ」及び「ヘッドドレスロゴ」,「「インディアンロゴ」/Motocycle」,筆記体の「I」等の商標が使用されている。
(甲6,乙1の(9)ないし(11)) (オ) Aは,上記「モトサイクルロゴ」の登録出願をする一方で,広告宣伝等の業を営むサンライズ社と合弁し,平成5年(1993年)6月3日,被告会社を設立し,代表取締役に就任した。Aは,「モトサイクルロゴ」の商標(本件引用商標A)の設定登録を受け,その後,同商標に係る商標権を被告に譲渡した。平成5年7月24日,繊研新聞及び日経流通新聞で,被告会社の設立,「インディアン」ブランドの輸入,ライセンスビジネスの展開の開始が報じられた。
被告会社の設立後,被告はライセンサーとして,サンライズ社はマスターライセンシーとして,「インディアン」ブランドの広告宣伝及びライセンスビジネスを展開した。なお,「ヘッドドレスロゴ」は,上記繊研新聞上で「「インディアン」のロゴマーク」として報じられた。
被告は,若者向けの広報誌である月刊誌「DICTIONARY」に,平成6年(1994年)1月ころから平成7年(1995年)2月ころにかけて,定期的に広告をし,「インディアンロゴ」,「ヘッドドレスロゴ」等の「インディアン」ブランドの宣伝に務めた。
(甲64,乙1の(10),(12)ないし(19)) (カ) 平成6年初め,サンライズ社は,マルヨシとの間で,バッグについて「インディアン商標」のサブライセンス契約を締結した。マルヨシは,平成6年(1994年)5月中旬展示会を行い,「インディアン商標」のバッグへの使用を開始した。マルヨシは,バッグについて,「ヘッドドレスロゴ」,「インディアンロゴ」,「左向きのインディアン図形」(本件引用商標E)を使用した。さらに,同年中,マルヨシのバッグ及びサンライズ社の輸入に係るTシャツ,トレーナー等が雑誌等で広告された。
(乙1の(20)ないし(22),(25),(26)) (キ) 被告のライセンスビジネスは順調に推移し,被告は,平成7年(1995年),西澤社と,サンライズ社経由で,革製ジャケット及び革製ズ ボン(パンツ)について,サブライセンス契約を締結した。
西澤社は,同年10月から平成8年(1996年)1月にかけて,積極的に「「インディアンロゴ」/Motocycle」及び「「ヘッドドレスロゴ」/Motocycle」を使用して広告宣伝をし,本件引用商標の一部を付した革製ジャケット及び革製ズボンを販売した。
(甲17,乙1の(32)ないし(41)) (ク) 被告らと原告との間では,商標の登録,使用をめぐって対立が生じ,この紛争に関して多数の審判請求,訴訟が提起されることになった。その一部の経過は次のとおりである。
Aが平成4年2月6日にした本件引用商標Aの登録出願について,特許庁が,平成6年2月10日,「本件引用商標Aは,本件商標に類似する。」旨の拒絶理由通知書を発したことを受けて,Aは,本件商標について,法46条により登録の無効を求める審判(平成6年審判第13787号)を請求した。なお,特許庁は,上記審判の結果を待たず,本件引用商標Aの登録出願につき,平成7年3月30日に登録査定をし,同年9月29日に設定登録した。
被告らは,原告使用商標等の使用が本件引用商標Aに係る商標権を侵害するとして,平成8年5月21日,上記商標権に基づく商標権侵害差止等請求訴訟(平成8年(ワ)第9391号)を東京地方裁判所に提起した。また。被告は,本件引用商標Aに係る商標権に基づき東京地方裁判所に商標権侵害差止の仮処分命令の申請をし(平成8年(ヨ)第22126号事件),平成8年12月16日,原告使用商標等の差し止めを命ずる仮処分命令を得た。原告は,その後,この仮処分決定に従い,原告使用商標の使用を中止した。
一方,原告は,被告らの上記審判請求及び訴訟の提起等に対抗して,平成7年12月28日,特許庁に本件引用商標Aの登録の無効を求める審判(平成7年審判第28124号)の請求をするとともに,平成8年7月15日,被告ら及び西澤社による別紙2の(1)ないし(7)記載の商標の使用が本件商標権を侵害するとして,本件商標権に基づく商標権侵害差止等請求訴訟(平成8年(ワ)第1402
追加
Aが請求した前記無効審判事件(平成6年審判第13787号)について,特許庁は,平成9年9月30日,「インディアンモトサイクル」,「インディアン」は,本件商標の出願時及び査定時において,インディアンオートバイ社(1901年設立の米国法人)の著名な略称及び商標であったものということはできず,本件商標は,その指定商品について使用しても,同社若しくは同社と何らかの経済関係にある者の業務に係る商品であるかの如くその出所について混同を生ずるおそれがないものというべきであるなどと認定判断した上,「本件審判の請求は,成り立たない。」とする審決をした。
一方,原告が請求した本件引用商標Aに係る前記無効審判事件(平成7年審判第28124号)について,特許庁は,平成10年4月10日,本件引用商標Aは法4条1項7号(公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標)に違反するものであるとし,同商標の登録を無効とするとの審決をした(なお,平成8年5月27日に本件引用商標Aに係る商標権につき被告への移転登録がされたことに伴い,被告がAから被請求人の地位を承継した。)が,同審決は,東京高等裁判所の判決により取り消され,同判決に対する上告受理申立てに対する最高裁判所の上告不受理決定により,同判決は確定した。これを受けて,特許庁は,更に審理をし,平成14年2月28日,本件引用商標Aは,本件商標に類似する(法4条1項11号に該当)とし,再び同商標の登録を無効とする旨の審決をした。被告は同審決に対しその取消請求訴訟を提起した(平成14年(行ケ)第140号)が,東京高等裁判所は,平成14年12月27日,その請求を棄却する判決をした。同判決に対する上告受理申立てについて,最高裁判所は,平成15年6月12日,上告不受理の決定をしたことから,上記審決は確定し,これによって,本件引用商標Aの登録無効は確定した。
原告が提起した商標権侵害差止等請求事件(平成8年(ワ)第14026号)について,東京地方裁判所は,平成14年8月22日,中間判決をした。
同判決は,@別紙2の(1)ないし(7)記載の各標章は,いずれも本件商標に類似する。A別紙2の(4)記載の標章(本件引用商標Aに酷似する標章)は,本件引用商標Aに係る被告の商標権の専用権の範囲に属するが,別紙2の(5)ないし(7)記載の各標章は,いずれも同商標権の専用権の範囲に属さないとするものである。
被告らが提起した商標権侵害差止等請求事件(平成8年(ワ)第9391号)について,東京地方裁判所は,平成15年8月28日,本件引用商標Aの登録は無効であることが確定したから,同商標に係る商標権は当初から存在しなかったことになるとして,被告らの請求をいずれも棄却する旨の判決をし,上記の東京地方裁判所平成8年(ヨ)第22126号事件の仮処分決定もその根拠を失った。
(甲4ないし7,10ないし13,64,66,乙1の(47))イ(ア)前記(1)及び前記アで認定した事実に基づき検討するに,原告使用商標AないしGと,本件引用商標A,B,D,FないしHとを,その外観,称呼,観念において対比してみれば,本件審決の認定するとおり,両各商標は互いに類似するものと認められ(原告使用商標AないしGが本件引用商標A,FないしHと類似することについて,原告はこれを争わない。),また,原告の原告使用商標を付した商品と被告らの本件引用商標を付した商品とは,バッグを除き,類似するものと認められる。
(イ)a次に,本件引用商標の周知性についてみるに,1953年(昭和28年)当時,「インディアンモトサイクル」が旧インディアン社の略称として,「インディアン商標」が旧インディアン社の製造販売に係るオートバイ等を表示するものとして,我が国においても周知著名であったと認められるが,同社は,1953年に操業を停止し,後に解散しており,同社がその後において営業活動を行ったことをうかがわせる証拠は存在しない。
また,平成2年6月ころに「新インディアン社」が設立され,それが「「旧インディアン」の復活」として米国の一般紙に報じられたことが認められる。しかしながら,その設立者であるBは,インディアンモトサイクル商標(「インディアン商標」との関係は明らかでない。)の100%所有者である第三者との間で新たにインディアン・オートバイを製造し市場に出して販売する共同事業を行うことを約束し,同商標について50%の持分権の譲渡を受け(その後残余の持分も取得して,単独所有者となった。),平成2年6月ころに新インディアン社を設立し,多数の投資家から資金を集めたものの,オートバイ等の製造などの企業本来の事業活動をほとんど行わず,そのため,新インディアン社は設立後間もなく倒産するに至った。これらのことに加え,Bが詐欺罪により処罰を受けた経緯を考慮すれば,新インディアン社は,投資家から資金を集めてこれを詐取するため,旧インディアン社と同一会社であるかのように,あるいは,同社と何らかの関係又は継続性があるかのように装ったにすぎない会社で,営業活動の実体のない会社であったと認められ,これが旧インディアン社の周知著名であった略称,「インディアン商標」の使用権の正当な承継者とは到底いえない。
したがって,Aが新インディアン社から日本をテリトリーとする「インディアン社」関連商標に関する権利を有効に譲り受けたものとしても,旧インディアン社の周知著名であった略称,「インディアン商標」の使用権限を有するということはできず,Aより本件引用商標Aに係る商標権を譲り受けた被告,そのマスターライセンシーのサンライズ社,被告より本件引用商標A等の使用許諾を受けた西澤社及びマルヨシがその使用権限を有しないことも明らかである。
被告は,マスターライセンシーのサンライズ社を通じて平成5年秋より,新インディアン社の製造に係る商品(ライダージャケット,Tシャツ,帽子,眼鏡,ペンダント,キーリング,ブレスレット,バッグ)を輸入し,「インディアンロゴ」(本件引用商標B),「ヘッドドレスロゴ」(本件引用商標D),「『インディアンロゴ』/MOTOCYCLE」(本件引用商標FないしH)等を付して販売を行った旨主張するが,証拠(乙1の(11),(15))だけからは,その事実は必ずしも明らかでなく,販売実績について主張立証がないことからして,仮に上記販売が行われたものとしても,その販売実績はさしたるものではなかったと推認するのが相当である。
b被告らが,実際に本件引用商標の使用をしたと認められるのは,早くとも平成5年秋ころであるが,その販売実績がさしたるものではなかったと推認すべきことは上記認定のとおりである。その後,マルヨシが本件引用商標E等を使用した「バッグ」の雑誌広告(平成6年(1994年)12月20日発行「フィールド・ギア」。乙1の(26)等)をし,そのバッグの販売を始めたものであるが,この商品「バッグ」は,原告使用商標を使用した原告の商品である革製ジャケット,Tシャツ等とは非類似の商品である。被告らが,ジャケット等の衣服について,本格的に本件引用商標を使用し始めたのは,平成7年(1995年)後期(10月〜11月)に,西澤社が革製ジャケット,革製ズボン(パンツ)を販売した時であると認められる。
一方,原告は,本件商標が公告され,登録されたことを踏まえ,カナダ国の「INDIANMOTORCYCLE」商標の権利者である「カナダインディアン社」(INDIANMANUFACTURINGLTD.)と提携し,平成7年(1995年)の初めに商品をサンプル輸入し(甲58),同年5月ころから,原告使用商標を付してこれらの販売を開始したものであり,同年6月25日発行の雑誌「ポパイ」(甲41)にその旨の広告がされている。
要するに,被告ら又はそのライセンシーが本件引用商標を使用し始めたのは,本件商標の登録より少し前かその後であり,被告らの本件引用商標を付した商品の販売実績及び広告実績に照らして,本件商標の設定登録時(平成6年3月)及び原告による原告使用商標の使用が開始された時点(平成7年5月ころ)で,被告らの本件引用商標が被告らないしそのライセンシーの商品を表示するものとして取引者及び需要者の間に広く知られ,周知性を獲得するに至っていたものということはできず,他にこれを認めるべき的確な証拠はない。
(ウ)原告使用商標に係る商品及び本件引用商標に係る商品は,革製ジャケット等であり,その需要者は若者層が中心であると考えられるが,本件引用商標が周知性を獲得するに至っていなかったことからすれば,原告が敢えて本件引用商標を付した商品を販売している被告ら関係の店舗に隣接して店舗を設け,原告使用商標を付した商品の販売を行ったなど特段の事情の認められない本件においては,原告使用商標を付した革製ジャケット等の商品に接した需要者が直ちに本件引用商標A,B,D,FないしHを想起するものとは考えにくく,他方,原告使用商標の周知性の程度が高いとする的確な証拠もないから,これらの商品に接した需要者は,その出所を明確には認識できず,その商品選択は,その製造販売会社,品質,商品の仕様その他の要素をも考慮して行われるのが通常であると考えられる。したがって,原告が革製ジャケット等の商品に原告使用商標を使用したものとしても,取引者及び需要者がこれを被告ら又は被告らと経済的又は組織的に何らかの関連を有する者の業務に係る商品であるかのように,その出所につき混同を生ずるおそれがあったものということはできない。
ウのみならず,原告は,被告会社の設立日(平成5年(1993年)6月3日)以前に本件商標を出願(平成3年(1991年)11月5日)し,その設定登録(平成6年(1994年)3月31日)を受け,「INDIANMOTORCYCLE」の商標につき,カナダ国の商標権者「カナダインディアン社」と提携し,平成7年(1995年)5月ころから,原告使用商標AないしGの商標を使用した革製ジャケット,Tシャツ等の販売を行っているものである。そして,原告使用商標の使用開始前において,本件引用商標が被告らないし被告からその使用許諾を受けた者の商品を表示するものとして周知性を獲得していたと認められないことは前示のとおりである。かかる事情のほか,訴訟の経過を含む前記ア認定の事実を併せ考慮すれば,原告が本件商標ないし原告使用商標を被服等の商標として採択した動機は,被告と同様,旧インディアン社とは無関係な立場で,旧インディアン社の略称又は「インディアン商標」を利用しようとしたことにあり,原告が,被告が本件引用商標を被服等に使用していたことを認識しつつ,敢えて,原告使用商標を被服等に使用する行為を行ったとは認められず,他に上記事実を認めるに足りる的確な証拠はない。
したがって,仮に,原告が革製ジャケット等の商品に原告使用商標を使用した場合に,上記イ記載の出所の混同を生ずるおそれがあったものとしても,原告がそのおそれがあることを認識しつつ,故意に,原告使用商標を革製ジャケット等に使用したと認めることは到底できない。
(3)以上のとおり,原告による原告使用商標の使用は,法51条1項の要件に該当しないというべきであり,本件審決のこの点に関する判断は誤りである。
2よって,原告の本件請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由があるから,これを認容することとし,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第3民事部裁判長裁判官北山元章裁判官青蜉]裁判官沖中康人(別紙)123
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