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関連審決 取消2001-31035
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成17ワ14972不正競争行為差止等請求事件 平成17ワ22496損害賠償等請求事件 判例 不正競争防止法
関連ワード 識別力 /  包装 /  識別機能 /  指定商品 /  通常使用権 /  国内 /  使用許諾 /  正当な理由 / 
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事件 平成 15年 (行ケ) 213号 審決取消請求事件
原告 有限会社アイ・ビー・イー
訴訟代理人弁理士 佐藤英昭、斎藤栄一
被告Y
訴訟代理人弁護士 奥野滋
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2003/11/06
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の求めた裁判
特許庁が取消2001-31035号事件について平成15年4月15日にした審決を取り消す、との判決。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯 登録第2549288号商標(以下「本件商標」という。)は、「πウォーター」と横書きしてなり、第32類「食肉、その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和62年5月29日登録出願、平成5年6月30日に設定登録されたものである。 被告は、原告(商標権者)を被請求人として、本件商標について、その指定商品中「豆腐、及びその類似商品」につき商標法50条の規定に基づく取消しの審判(本件審判)を請求し、特許庁は、これを取消2001-31035号事件として審理し、平成15年4月15日、「登録2549288号商標の指定商品中「豆腐、及びその類似商品」については、その登録を取り消す。」との審決をし、
その謄本を平成15年4月25日原告に送達した。
2 審決の理由の要点 審決の理由の要点は、以下のとおりである。 (1) 原告(被請求人)及びその関連会社であるIBEグループは、浄水器「BCSπウォーターシステム」の製造、販売を行う会社であり、「πウォーター」は、
原告他が取り扱う浄水器について使用される商標であって、アイ・ビー・イー販売の代理店であるAを通じてB(薫風亭)等本件商標の通常使用権者に上記浄水器を販売したと認めることができる。
そして、各「商標の使用許諾に関する契約書」の内容からみると、原告は、原告他が取り扱う浄水器を購入した顧客に対し、これら顧客が取り扱う「豆腐」、「飲食物の提供」、「宿泊施設の提供」などに、上記「πウォーター」商標の浄水器を利用して得た水を、生産物若しくは提供する飲食物又は提供の用に供する物等に使用したことを表示するために、本件商標を無償で使用許諾したと推認することができる。
(2) ところで、商標は、自他商品を識別することをその本質的機能としているから、現実の使用においても、自他商品の識別標識としての機能が発揮される態様で使用されるべきであり、登録商標と形式的に同一の表示が商品に使用されていても、当該表示が、その商品について自他商品の識別標識として機能していると認められない場合、すなわち、商品の品質表示あるいは商品の原材料表示等として認識されるような場合には、当該登録商標を使用しているものということはできない。
しかるところ、審判請求に係る商品に属する「豆腐」の包装用容器には、「πウォーター」の文字が表示されているが、該「πウォーター」の表示は、Cが営業する豆腐店である佐野商店では、豆腐を製造する際に「πウォーター」商標の浄水器から得た水を使用しているということを示したものであり、豆腐についての商標というより、「πウォーター」なる商標を使用した浄水器から得た水を原材料に使用した商品を意味するものということができ、豆腐について自他商品の識別標識としての機能を発揮する態様で使用されるということはできない。
また、飲食物の提供(薫風亭)、宿泊施設の提供(三河湾リゾート・リンクス)は、役務区分第42類に属する役務であって、審判請求に係る商品「豆腐、及びその類似商品には属しないものである。
加えて、「πウォーター」ないし「πウォーターシステム」に関し、「いい水飲んでいますか!?/当店では『水』にこだわりをもち環境と体に優しいπウォーターシステムを利用しています。」、「調理に・・生け簀に・・お風呂に・・“π”びある風景 三河湾リゾートリンクス」、「やっぱりパイウォーターというみずはずごい!・・」(審判乙7及び15)などと記載して宣伝している事実からしても、「πウォーター」なる語は、需要者の間でも、通常の水道水より健康によい水を指称するものと理解される場合が多いというのが相当であって、これを商品「豆腐」、「豆腐料理の提供」等について使用しても、自他商品又は自他役務の識別機能を有するものであると認識し得ないものといえる。
(3) 以上のとおりであるから、原告(商標権者)は、その通常使用権者が審判請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標を審判請求に係る商品「豆腐、
及びその類似商品」のいずれについても使用していたことを証明したものということができない。また、原告は、使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標は、その指定商品中の「豆腐、及びその類似商品」についての登録は、商標法50条の規定により取り消すべきものとする。
原告の主張の要点
1 本件商標につきCは原告から通常使用権の許諾を受けており、同人が営む豆腐店である佐野商店が取り扱う商品「豆腐」の写真(甲3、4)をみると、プラスチック製包装容器に入った豆腐の上面に「おいしい 手作り/ソフトとうふ」、
「πウォーター」、「佐野商店」などの文字が表示されている。この商品「豆腐」の上面にある表示において、自他商品の識別力があるのは、「πウォーター」、
「佐野商店」の部分である。この「πウォーター」なる本件商標が表示されている商品「豆腐」に接した一般の需要者・取引者が、本件商標を使用した浄水器から得た水を原材料に使用した商品を意味するものと即座に認識するか否かははなはだ疑問であり、そのように認識するという合理性もない。
したがって、上記の「豆腐」について、一般の需要者・取引者は、「πウォーター」という商標が使われている「佐野商店」の「豆腐」として理解、認識するというのが最も妥当であり、そのような意味において、本件商標は豆腐について自他商品の識別標識としての機能を十分に発揮する態様で使用されているということができる。
2 本件商標は、「豆腐」を含む指定商品(第32類)「食肉、その他本類に属する商品」について自他商品の識別機能を有するものとして登録が認められたのであるから、「πウォーター」を「豆腐、及びその類似商品」について使用しても自他商品識別機能を有するものとして認識し得ないとの審決の認定判断は、自家撞着である。
3 手作り豆腐の店「薫風亭」は、原告から本件商標について通常使用権の許諾を受けたBが営んでいるものであるが、同店では豆腐料理の提供のほかに、客の要望によっては持ち帰り用として「手作り豆腐」の販売も行っている。したがって、
「薫風亭」は商品「豆腐」について本件商標を使用しているということができる。
4 以上のとおりであるから、本件商標を「豆腐、及びその類似商品」について使用した事実が認められないとした審決は、誤りである。
当裁判所の判断
1 証拠(甲1ないし5)によれば、本件審判は、平成13年9月20日に請求され、同年10月17日にその予告登録がされたこと、本件商標の登録原簿には本件審判請求の予告登録がされた後である平成14年11月29日受付けで、C、株式会社三河湾リゾート・リンクス、Bをそれぞれ通常使用権者とする通常使用権の設定登録(登録日平成14年12月18日。使用権の範囲は、C及びBについては「豆腐」、株式会社三河湾リゾート・リンクスについては「全部」である。)がされていること、佐野商店で販売されている包装容器入り豆腐を撮影したものと認められる甲第3、第4号証の各写真(甲3は撮影年月日不詳、甲4は写真中に撮影日付けと思われる「03’2 10」の文字が表示されている。)には、豆腐容器の表面(透明フィルム)の表面に、「ソフトとうふ」、「おいしい手作りとうふ」、
「佐野商店」などの文字が印刷され、「πウォーター」と印刷したシールが貼付されたものが写っていること、以上の事実が認められる。
また、弁論の全趣旨によれば、Cは豆腐店「佐野商店」を営み、Bは手作り豆腐等の飲食物を提供する「薫風亭」を営んでいること、本件審判請求の予告登録がされる前に、Cは商品「豆腐」につき、Bは「豆腐等飲食物の提供」につき、原告からそれぞれ本件商標の通常使用権を許諾されていたことを認めることができる。
2 ところで、佐野商店で販売されている豆腐を撮影した甲第4号証の写真は、
その写真に入った「03’2 10」の文字から撮影日が2003年(平成15年)2月10日と推認されるものであるから、本件審判請求の予告登録がされる前の本件商標の使用状況を示すものではない。また、甲第3号証の写真も、撮影年月日が不明であるから、本件審判請求の予告登録がされるより前に佐野商店が「πウォーター」のシールを貼付した豆腐を販売していたか否かどうかは、上記写真からは不明といわざるを得ない。
仮に、甲第3号証の写真が本件審判請求の予告登録前に佐野商店で販売されていた容器入り豆腐を撮影したものであるとしても、この豆腐容器に貼付されたシールに表示された「πウォーター」の文字は、商品である「豆腐」について特定の出所を認識させる機能を有するものではなく、むしろ、この豆腐が「πウォーター」という名で知られる特別の水を使って作られたものであると消費者・取引者に受け取られるとみることが相当である。 3 また、Bが営む薫楓亭については、本件審判請求の予告登録前に原告から許諾された通常実施権の範囲に商品「豆腐」が含まれるか否かが証拠上明らかでない上、同店が「πウォーター」を生成する浄水器を使用して豆腐を製造していることは弁論の全趣旨により推認されるものの、同店がその「手作り豆腐」に自他商品の識別標識としての機能を発揮する態様で「πウォーター」の標章を使用していると認めるべき的確な証拠は存在しない。
4 以上認定したところによれば、原告(商標権者)は、その通常使用権者が審判請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標を審判請求に係る商品「豆腐、及びその類似商品」にいずれについても使用していたことを証明したものということができない。また、原告は、使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、これと同旨の認定判断をした審決に誤りは認められないから、原告の請求は棄却されるべきである。
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 古城春実
裁判官 田中昌利