関連審決 | 取消2000-30753 |
---|
関連ワード | 指定商品 / 不使用 / 国内 / 正当な理由 / |
---|
元本PDF | 裁判所収録の全文PDFを見る |
---|
事件 |
平成
15年
(行ケ)
207号
審決取消請求事件
|
---|---|
原告 有限会社コンフォート 訴訟代理人弁護士 佐藤雅巳 同 古木睦美 被告A |
|
裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 2003/10/29 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
特許庁が取消2000−30753号事件について平成15年4月9日にした審決を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
---|---|
請求
主文と同旨 |
|
原告の主張
1 特許庁における手続の経緯 被告は,「花療法」の漢字と「フラワーセラピー」の片仮名文字を上下2段に横書きしてなり,第16類「雑誌,新聞,写真,写真立て,文房具類,紙製ハンカチ,紙製タオル,紙製手ふき,衛生手ふき,紙製テーブルクロス」を指定商品とする商標登録第3326183号商標(平成6年10月24日登録出願,平成9年6月27日設定登録,以下「本件商標」という。)の商標権者である。 原告は,平成12年6月28日,被告を被請求人として,本件商標の指定商品中「新聞,雑誌」について不使用に基づく登録取消しの審判の請求をし,その登録が同年8月2日にされた。 特許庁は,同事件を取消2000-30753号事件として審理した上,平成15年4月9日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,同月21日,原告に送達された。 2 審決の理由 審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,被請求人(被告)は,本件商標と社会通念上同一の商標と認められる商標を,その指定商品中「雑誌」について,本件審判請求の登録前3年以内に,日本国内において,商標権者である被請求人により使用していたことを証明したと認め得るから,本件商標の登録は商標法50条1項により取り消すべき限りではないとした。 3 審決の取消事由 (1) 審決は,「心と体を癒す/花療法/フラワーセラピー」と題する印刷物(審判乙1・本訴甲2,以下「本件印刷物」という。)は,本件審判請求の登録前3年以内に発行された「雑誌」であり,本件商標と社会通念上同一の商標と認められる「フラワーセラピー」の表示がされているとして,これにより商標法50条1項にいう使用の事実を証明したと認め得るとしたが,誤りであり,違法として取り消されるべきである。 (2) 本件印刷物は,「雑誌」ではなく,雑誌名を「レディブティックシリーズ」とするムック(単行本を定期的にシリーズで出すもの)であるから,「心と体を癒す/花療法/フラワーセラピー」は,雑誌の題号ではなく,これをもって本件商標の指定商品中「雑誌」について使用の事実の証明があったということはできない。 |
|
被告の応訴態度
被告は,適式の呼出しを受けながら,本件口頭弁論期日に出頭せず,答弁書その他の準備書面を提出しない。当裁判所は,第1回口頭弁論期日後に,平成15年7月18日付け決定をもって,被告に対し,本件訴訟における主張立証があれば本決定送達の日から30日以内に当裁判所に対する書面の提出をもってすべき旨の期日外釈明をしたところ,被告は,同月22日付け回答書をもって,次回以降の口頭弁論期日に出頭せず,本件について主張立証しない旨の回答をした。 |
|
当裁判所の判断
1 原告の主張1,2の各事実は,被告において争うことを明らかにしないから,自白したものとみなす。 2 原告主張の審決取消事由について判断する。 (1) 審決は,「乙第1号証(注,本件印刷物)は,雑誌コードの表示があり,加えて,その目次が示しているとおり,具体的内容として,病気の各症状についての記載や花言葉等,種々雑多な記載内容が含まれるものであるから,『雑誌』というべきである。また,本件審判請求の登録前3年以内である『1998年5月20日発行第1刷』という記載が認められる。さらに,『心と体を癒す』及び『花療法』の表題の下部に,本件商標と社会通念上同一の商標と認められる『フラワーセラピー』の表示が認められる」(審決謄本8頁2の項)と認定した上,本件印刷物をもって,本件商標の指定商品中「雑誌」について,本件審判請求の登録前3年以内における商標権者による使用の事実を肯定した。 (2) 確かに,本件印刷物(甲2)には,審決が認定(審決謄本8頁1(1)の項)するように,表表紙の中央上部に「心と体をす」及び「花療法」の表題の下に,小振りの「フラワーセラピー」の片仮名文字が表示され,中央下部に「A著」の記載があり,裏表紙には,表表紙と同様に,中央上部に「心と体をす」及び「花療法」の表題の下に,小振りの「フラワーセラピー」の片仮名文字が表示され,左下に「1998年5月20日発行第1刷」,「レディブティックシリーズ通巻1289号」及び「雑誌コード69629-89」の記載,右下に「ISBN4-8347-1289-3」及び「C9476¥886E」の記載があり,背表紙の上部に「心と体を癒す」及び「花療法」の表示があり,最下部に「ブティック社」の記載がある。 しかしながら,インターネットホームページasahi-netの「バーコード」(甲5)によれば,雑誌コードは6桁の数字とハイフンで結んだ2桁の数字から成ること,6桁の数字中,第1桁は発行形態コードを表し,これに続く第2桁〜第5桁は雑誌名コードを,その最後の1桁は月刊誌又は週刊誌を表し,ハイフンの後の2桁の数字は号数又は巻数を表すこと,発行形態コードは,「0,1」は月刊誌を,「2,3」は週刊誌を,「6」はムックを表すことが認められるから,本件印刷物の「雑誌コード69629-89」は,最初の6桁の数字中,第1桁の「6」はムックを,末尾の「9」は月刊を表し,ハイフンの後の2桁「89」は,通巻号を表し,雑誌コードの上部に記載されているとおり,本件印刷物がムックである「レディブティックシリーズ通巻1289号」を表していることが明らかである。そして,ムックの意義については,岩波書店発行「広辞苑第三版」(甲4)によれば,「編集の仕方や体裁が雑誌と書籍との中間であるような出版物」,小学館発行「国語大辞典」によれば,「雑誌と書籍との中間の性質をもつ出版物。定期刊行物の特集,増刊ものや,週単位で発行される百科辞典のように,発行形態が雑誌に準じながら,書籍としての内容をもつ刊行物をいう」とされている。指定商品の区分を定める商標法施行規則別表第16類の五「印刷物」は,「雑誌」を「書籍」等と区別して規定しており,本件印刷物は,上記のとおり,ムック,すなわち,発行形態が雑誌に準じながら,編集の仕方や体裁は書籍としての内容をもつ刊行物であって,「雑誌」に当たるということはできないから,本件印刷物の表表紙,裏表紙及び背表紙の上記表示が,本件商標と社会通念上同一の商標と認められるものであるとしても,これが「雑誌」について使用されている商標であると認めることはできない。 したがって,本件印刷物をもって,本件商標の指定商品中「雑誌」について,本件審判請求の登録前3年以内における商標権者による使用の事実を肯定した審決の判断は,誤りというべきである。審決は,本件印刷物の具体的内容として,病気の各症状についての記載や花言葉等,種々雑多な記載内容が含まれることを,「雑誌」と認める根拠の一つとして挙げるが,これによって上記判断が左右されるものではない。 (3) 被告は,本件口頭弁論期日において,他に,本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者等が本件商標ないしこれと社会通念上同一と認められる商標をその指定商品中「新聞,雑誌」について使用していたこと又はその使用をしていないことについて正当な理由があることについては,何らの主張立証もしないのであるから,審決の上記誤りがその結論に影響を及ぼすことは明らかである。 3 以上のとおり,原告の取消事由の主張は理由があるから,審決は違法として取消しを免れない。 よって,原告の請求は理由があるから認容することとし,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 篠原勝美 |
---|---|
裁判官 | 岡本岳 |
裁判官 | 長沢幸男 |