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関連審決 無効2001-35384
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審判番号(事件番号) データベース 権利
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平成14行ケ19審決取消請求事件 判例 商標
関連ワード 識別力 /  先願主義 /  指定商品 /  周知性 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  4条1項10号 /  類似性(類否判断) /  先使用(32条) /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  取引の実情 /  出所の混同 /  国内 /  無効審判 /  パリ条約 /  先使用権 /  継続 / 
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事件 平成 15年 (行ケ) 32号 審決取消請求事件
原告 アイ−フロー・コーポレーション
同訴訟代理人弁理士 柳生征男
同 中田和博
同 青木博通
被告 有限会社丼親堂本舗
同訴訟代理人弁護士 二関辰郎
同 松村卓治
同訴訟代理人弁理士 川和高穂
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2003/09/17
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
請求
特許庁が無効2001-35384号事件について平成14年9月13日にした審決を取り消す。
争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告が商標権者である登録第4387328号商標(以下「本件商標」という。)は,別紙審決書写しの「別掲本件商標」欄に記載のとおりの構成からなり,商標法施行令(平成13年政令第265号による改正前のもの,以下同じ)1条別表の第10類「医療用機械器具,氷まくら,三角きん,支持包帯,手術用キャットガット,吸い飲み,スポイト,乳首,氷のう,氷のうつり,ほ乳用具,魔法ほ乳器,綿棒,指サック,避妊用具,人工鼓膜用材料,補綴充てん用材料(歯科用のものを除く。),耳栓,医療用手袋,家庭用電気マッサージ器,しびん,病人用便器,耳かき」を指定商品とするものである。本件商標は,1998年(平成10年)10月5日アメリカ合衆国においてされた商標登録出願に基づきパリ条約4条による優先権を主張して,平成11年3月16日に登録出願され,同12年5月26日に設定登録された。
被告は,平成13年8月30日,本件商標について無効審判を請求したところ(無効2001-35384号事件),特許庁は,平成14年9月13日,「登録第4387328号商標の指定商品中「医療用機械器具,家庭用電気マッサージ器」についての登録を無効とする。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,平成14年9月26日に原告に送達された。
2 本件審決の理由 「On・Q」の文字を横書きしてなる引用商標は,本件商標の出願時(優先権主張の基礎となった平成10年10月5日をいう。以下同様とする。)及び登録時(平成12年5月26日)において,被告の業務に係る商品である遠赤外線治療器を表示するものとして周知であった。本件商標は,引用商標と類似している。引用商標の使用に係る商品である遠赤外線治療器は,本件商標の指定商品中の「医療用機械器具」の範疇に属し,また「家庭用電気マッサージ器」と類似する商品である。したがって,本件商標は,請求に係る指定商品である「医療用機械器具,家庭用電気マッサージ器」について,商標法4条1項10号に違反して登録されたものである。(別紙審決書写し記載のとおり)
原告主張に係る本件審決の取消事由の要点
本件審決は,@引用商標が,本件商標の出願時及び登録時において,被告の業務に係る商品を表示するものとして周知であったと誤って認定し(取消事由1),A本件商標が引用商標と類似していると誤って判断し(取消事由2),また,B本件商標の指定商品中の「点滴ポンプ,薬の投与セット,カテーテル,注射器」(医療用機械器具に含まれる。)及び「家庭用電気マッサージ器」が,引用商標の使用に係る商品と類似すると誤って判断した(取消事由3)ものである。
1 取消事由1(引用商標の周知性認定の誤り) 引用商標は,本件商標の出願時及び登録時において,被告の業務に係る商品である温灸器を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたとはいえないから,この点についての本件審決の判断は誤りである。
(1) すなわち,本件全証拠によっても,被告が主張するように,周知性が認定できるほどの規模で,引用商標の付された温灸器が販売され,また,引用商標の付された印刷物が頒布された事実は認められず,実際の販売台数及び頒布数は僅少なものであった。本件各証拠には,そもそも引用商標の記載がなく(甲23,24等),それとの関連が不明なものが多く含まれている。また,商品の販売については,被告とその下請業者との間の取引内容が明らかになったからといって,商品が実際にどの程度顧客に販売されたか不明である。商品カタログ(甲4,9,21,31等),シール(甲22等)等についても,印刷部数が示されているのみであり,実際にどの程度取引者,需要者に頒布されたのか不明である。
結局,被告が主張するような規模の販売,頒布の事実を認めることはできない。
(2) 仮に,被告主張のとおり,引用商標の付された商品,印刷物が,実際に取引者,需要者に販売,頒布されたとしても,引用商標は,商標法4条1項10号で要求される周知性を獲得していなかったというべきである。
すなわち,商標法は,先願主義の例外として,周知な先使用商標の保護のための登録障害事由(4条1項10号)及び先使用権(32条)の規定を設けている。両者は,共に先使用に係る商標が「需要者の間に広く認識されている」ことを要件としているが 後者が,商標権の効力を制限するに止まり,先願者の権利の安定性を害する程度も低いのに対し,前者は,先使用者の怠慢により出願を怠ったにもかかわらず,先願者の権利を無効とする規定であるから,両者は,先願者の法的安定性を害する程度において異なる。したがって,両者の上記要件である周知性の程度も異なって解釈すべきであり,商標法4条1項10号においては,競業者の圧倒的多数部分に先使用商標が知られており,先願者が先使用商標を当然知りうべきはずであった程度に周知でなければならないと解すべきである。
しかるに,各種統計によれば,平成10年の医師の数は24万8611人に上り,平成15年3月31日現在,あん摩マッサージ指圧師が16万8954人,はり師が11万8162人,きゅう師が11万7101人もおり,平成10年の全国の病院における1日当たりの在院患者数が139万3069人,1日当たりの外来患者数が219万8139人に上り,平成10年における医療用具の国内出荷総額は1兆9436億円に上っている。このような日本全体における医療用機械器具の市場(医師,あん摩マッサージ指圧師,はり師,きゅう師,患者)の規模に照らせば,仮に,被告主張のとおり,引用商標の付された被告商品・印刷物が,実際に取引者,需要者に販売,頒布されたとしても,その数量及び金額は極少であることが明らかであるから,本件商標の登録を無効とすべき程度の周知性は出願時までになかったというべきである。
ちなみに,原告は,引用商標の存在を知らずに,1998年11月5日から米国において本件商標の使用を開始したものである。本件商標は,「痛み止めの薬(QUE)を点滴及びカテーテルを通じて絶えず送り続ける(ON)」という意味合いから採択した造語商標である(「ON」は「動作の継続」を意味し,「QUE」は特定の時間に供与できる痛み止めの薬の単位を表す。)。本件商標は,世界各国において出願され,登録済みである。なお,原告は,1985年7月に設立された,病院用の医療機械器具を製造する会社であり,従業員数は357名,資本金は3000万ドル,2000年の売上高は3196万6000ドルに上る。
2 取消事由2(商標の類否判断の誤り) 本件商標は引用商標と類似しないから,これらが類似するとした本件審決の判断は誤りである。
すなわち,本件商標「ON〜Q」は,「ON」と「Q」の間が中黒ではなく「〜」の記号よりなり,また,「Q」の文字構成も「○」の下に「〜」を結合したユニークなデザインとなっている。
これに対し,引用商標「On・Q」は,引用商標の使用に係る商品である温灸器(なお,引用商標の使用に係る商品は温灸器のみであり,それ以外の医療用機械器具には一切使用されていない。)の「温灸」の称呼「オンキュウ」をアルファベットの当て字「On」,「Q」と中黒で表したものであり,その称呼自体に識別力があるわけではなく,識別力はその外観のみにあるといえるから,引用商標は使用商品との関係で極めて識別力の弱い商標であるというべきである。
このような構成(外観)上の違いから,本件商標に接した需要者が,引用商標との関係で,商品の出所の混同を生ずるおそれがあるとは考えられないから,本件商標は引用商標と類似しないというべきである。
3 取消事由3(商品の類否判断の誤り) 本件商標の指定商品中の「点滴ポンプ,薬の投与セット,カテーテル,注射器」(医療用機械器具に含まれる。)及び「家庭用電気マッサージ器」は,引用商標の使用に係る商品「温灸器」と類似しないから,これらが類似するとした本件審決の判断は誤りである。
すなわち,本件商標の指定商品中,原告の主力商品である「点滴ポンプ,薬の投与セット,カテーテル,注射器」は,一般の病院で医師の指示により使用される医療用機械器具である。これに対して,引用商標の使用に係る商品「温灸器」は,家庭や整体院において個人や医師以外の者により使用され,その販売方法も通信販売の方法をとっている。したがって,両者は,生産部門,販売部門,取引経路が全く異なる。
また,本件商標の指定商品中「家庭用電気マッサージ器」は,体をたたいたり,もんだりすることにより,体のこりをほぐす器具であるのに対して,引用商標の使用に係る商品「温灸器」は,灸であり,灸治療の方法で体を温めることにより体を治療するものであるから,両者は,その用途,機能が異なるものであり,同様に,生産部門,販売部門,取引経路も全く異なる。
したがって,本件商標の指定商品中の前記各商品と引用商標の使用に係る商品「温灸器」とは,同一又は類似の商標が使用されても,商品の出所の混同を生ずるおそれがあるとは認められないから,両商品は類似しない。
被告の反論の要点
本件審決の判断は正当であり,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
1 取消事由1(引用商標の周知性認定の誤り)について 引用商標が付された被告商品(遠赤外線治療器)は,平成7年から平成10年までに合計7542台,平成12年までに合計10646台販売された。引用商標が付された商品カタログは,本件商標の出願時までに1万5000部,登録時までに更に1万部印刷され,ガン関係の会議で頒布されたほか,全国の代理店,特約店を通じて頒布されるなどした。被告は,遠赤外線治療法を開発したA(以下「A」という。)の著作を4000部印刷して販売した。引用商標を付した被告商品は,新聞等で全国に紹介され,座間市商工会議所も引用商標の周知性を認めている。
これらの事情によれば,引用商標が本件商標の出願時及び登録時において,既に需要者の間に広く認識され周知であったことが明らかである。
2 取消事由2(商標の類否判断の誤り) 本件商標と引用商標が,外観及び称呼において類似することは明らかであるから,その旨の審決の判断は正当である。
3 取消事由3(商品の類否判断の誤り) 引用商標の使用に係る商品である遠赤外線治療器は,本件商標の指定商品中の「医療用機械器具」に属し,また,指定商品中の「家庭用電気マッサージ器」と用途,機能等を共通にすることの多い類似する商品であることは,審査基準に照らしても明らかであるから,その旨の審決の判断は正当である。
当裁判所の判断
1 取消事由1(引用商標の周知性認定の誤り)について (1) 後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア 被告会社代表者B(以下「B」という。)は,平成5年当時,三友電気株式会社(以下「三友電気」という。)の常務取締役であった。三友電気は,当時,アイシー温灸器株式会社からの要請により,Aが治療法を開発した遠赤外線治療器についての改良を行い,平成7年1月17日,改良を完成した遠赤外線治療器(以下「本件治療器」という。)について,医療用具製造承認方を申請し,同年9月28日,販売名を「アイシー電気温灸器V2-C型」,類別を「はり又はきゅう用器具」として,医療用具製造承認を受けた(承認番号07B第0857号)。
アイシー温灸器株式会社は,上記改良の完成後,商品カタログ(甲4,乙2)を使用して,「アイシー電気温灸器」なる商標及び引用商標を付して本件治療器の販売を開始したが,平成7年4月に倒産した。そこで,Bは,個人の立場で「丼親堂本舗」の名称により,引用商標を付して本件治療器の販売を開始した後,平成8年にいたり,医療用機械器具及び家庭用健康機器の製造販売等を目的とする「有限会社丼親堂本舗」(被告会社)を設立し(同年11月1日登記),同社は,それ以来Bの個人販売を引き継いで,同様の販売を続けている。
(甲2ないし4,8,乙1の1ないし4,2,27) イ 平成7年7月ころ,Bは,丼親堂本舗の名称により,引用商標を付した商品カタログ(甲9,乙4の1。以下「本件カタログ1」という。)を5000部印刷した。なお,同カタログの表紙には「アイシー電気温灸器」なる商標が引用商標と共に記載されているが,これは,同年4月のアイシー温灸器株式会社の倒産後も,同社が使用していた「アイシー電気温灸器」なる商標を当面引き続き使用したためである。
同年7月13日,Bは,本件治療器の本体に貼付するための,「アイシー電気温灸器」なる商標が記載されたシール(乙5の1の2)を1000枚印刷した。同シールには,本件治療器の製造承認番号が記載されている。
同年10月には,Bは,「アイシー電気温灸器」なる商標を「三井式温熱治療器」に変更して,引用商標と併せて使用することとし,同月13日ころ,引用商標及び「三井式温熱治療器」なる商標が記載された,本件治療器の本体に貼付するためのシール(乙5の2の2)を1010枚印刷した。同シールにも,本件治療器の製造承認番号が記載されている。
平成8年9月,Bは,本件治療器の梱包用緩衝剤に貼付するための梱包内容シール(乙19の7頁)を3000枚印刷したが,これにも「三井式温熱治療器」なる商標と併せて引用商標が使用されている。
同年11月1日,設立後の被告会社は,本件治療器の宣伝のため,温熱治療法を開発したAの著書「自分でできる 温熱治療のポイント」第3版(甲23,乙9の1)を3000部出版し,同年12月10日,さらに3000部増刷した。同書の18頁には,「温灸器の梱包に入っている小冊子「オンキューのご使用に当たって」をよく読んでから治療を始めるようにしてください。」との記載があるが,同小冊子(甲25,乙9の3)には,表紙等に引用商標が表示されている。
同年12月,被告は,既に印刷済みの本件カタログ1中の「アイシー電気温灸器」なる商標の使用部分について,「三井式温熱治療器」なる商標への訂正シールを貼付することとし,同訂正シール(乙19の20頁)を5000組印刷し,本件カタログ1に貼付した。
平成9年10月,被告は,本件治療器についての新たな商品カタログ(甲31,乙8の1。以下「本件カタログ2」という。)を1万部印刷したところ,その表紙には引用商標が記載されており,また,その定格欄には本件治療器の製造承認番号が記載されている。
平成11年8月,被告は,本件治療器についての新たな商品カタログ(甲21,乙14の1。以下「本件カタログ3」という。)を1万部印刷したところ,その表紙には引用商標が記載されており,また,その定格欄には本件治療器の製造承認番号が記載されている。なお,本件カタログ3では,本件カタログ2記載の本件治療器価格6万8500円が,6万8000円に変更されている。
被告会社の特約店・代理店は,平成10年当時には全国に約100店あり,同様に平成12年当初には約150店になり,その後も増加しているところ,前記各カタログや小冊子は,本件治療器の販売促進のため,特約店・代理店や顧客に配布された。また,後記のとおり,3回にわたる「日本ガンコンベンション」の会場において,本件カタログ1が各回約1000部ずつ合計約3000部が配布された。さらに,前記各シールは,所定の目的のため貼付されて使用された。
(甲9ないし12,21ないし23,25,31,32,乙4の1ないし3,5の1の1・2,5の2の1・2,8の1・3,9の1・3,14の1・2,19,20,21の1ないし13,26,27) ウ B及び被告は,三友電気から,平成7年に760台,平成8年に1947台,平成9年に3351台,平成10年に1484台(本件商標出願時の1月前である9月5日までに984台),平成11年に1670台,平成12年に1434台(本件商標登録時の1月前である4月26日までに694台),それぞれ本件治療器の納品を受け,そのころにこれを販売した。なお,被告は,顧客や代理店,特約店からの受注状況から翌月の販売数量を予想し,在庫量と照らし合わせた上,三友電気に対し,本件治療器の発注を行うと同時に,代金相当額を振込送金しており,納品の約1か月後には,納品に係る本件治療器全部の販売をほぼ終わっている。したがって,本件治療器の販売台数は,平成7年から平成10年10月5日(出願時)までの間に合計7000台余り,平成7年から平成12年5月26日(登録時)までの間に合計9900台余りとなる。
(乙22の1ないし12,23の1ないし25,24の1ないし24,25の1ないし13,27,28の1ないし12,29の1ないし15) エ 平成7年8月15,16日,アメリカガンコントロール協会日本支部主催の「第1回日本ガンコンベンション」が,東京都千代田区大手町の「サンケイホール」で開催されたが,その際,Aは,遠赤外線治療法について講演をした。また,会場では,本件カタログ1が約1000部配布された。
平成8年8月24,25日,同様の「第2回日本ガンコンベンション」が,千葉市美浜区内の幕張メッセ国際会議場で開催されたが,その際,Aは,「癌は先手を打てばこわくない」と題して遠赤外線治療法について講演をした。また,会場では,本件カタログ1が約1000部配布された。なお,この講演を受けて,同年9月11日付け「日刊ゲンダイ」において,Aの開発した上記治療法と本件治療器についての紹介記事(乙10の3)が掲載されたところ,同記事には,引用商標が付された本件治療器の写真も同時に掲載されている。
平成9年8月23ないし25日,同様の「第3回日本ガンコンベンション」が,上記幕張メッセ国際会議場で開催されたが,その際,Aは,遠赤外線治療法について講演をした。また,会場では,本件カタログ1(ただし,「アイシー電気温灸器」なる商標の使用部分について,「三井式温熱治療器」なる商標への訂正シール(乙19の20頁)が貼付されたもの)が約1000部配布された。
(甲23,26,27,乙9の1,10の1ないし3,11,19,20,27) オ 平成12年3月1日発行の雑誌「健康ファミリー」(甲33,乙15の1)には,「遠赤外線温熱治療器「On・Q」でわきあがる元気・健康」という特集記事が掲載され,その中で,本件治療器使用者の体験談が紹介されている。
平成12年4月1日発行の「全国療術師協会附属研修所同窓会報第12号」(乙30)には,引用商標を使用した本件治療器の広告が掲載されている。
(甲33,乙15の1,30) (2) 以上の認定事実によれば,@Bは,個人の立場で「丼親堂本舗」の名称を使用して,平成7年4月から,遠赤外線治療のための医療用具である本件治療器を,引用商標を付した上で販売していたところ,平成8年11月には,被告会社を設立し,同社は,Bの個人販売を引き継いで,同様の販売を続けており,AB及び被告は,引用商標が付された本件治療器を,平成7年から平成10年10月5日(出願時)までの間に合計7000台余り,平成7年から平成12年5月26日(登録時)までの間に合計9900台余り販売したものであり,B引用商標が付された,本件治療器についての本件カタログ1ないし3は,平成7年から出願時までに1万5000部,平成7年から登録時までに2万5000部が印刷され,被告会社の全国の約100店以上の特約店・代理店や顧客に配布されたほか,前記「日本ガンコンベンション」の席上でも約3000部が配布され,Cその他,新聞,雑誌,書籍等により,本件治療器を使用した遠赤外線治療法や,引用商標が付された本件治療器の宣伝広告が行われていることが明らかである。これらの事情に照らせば,引用商標は,本件商標の出願時及び登録時において,被告の業務に係る本件治療器を表示するものとして需要者の間に広く認識されており周知であったというべきである。
(3) 原告は,「商品の販売について,被告とその下請業者との間の取引内容が明らかになったからといって,商品が実際にどの程度顧客に販売されたか不明である。」旨主張するが,前認定のとおり,被告は,本件治療器の発注に当たり,受注状況と在庫量を照らし合わせた上で,必要な数量分のみを下請業者に発注し,商品の納入後,ほぼ1か月の間に全部販売していたものであるから,原告の上記主張は採用することができない。
また,原告は,「商品カタログ,シール等についても,印刷部数が示されているのみであり,実際にどの程度取引者,需要者に頒布されたのか不明である。」旨主張するが,前認定のとおり,これらも必要に応じて順次印刷されたものであるから,本件治療器の販売に合わせて使用されたと考えるのが自然であり,不必要な在庫が多量に残ることは通常考えにくいから,原告の上記主張も採用することができない。
さらに,原告は,「日本全体における医療用機械器具の市場(医師,あん摩マッサージ指圧師,はり師,きゅう師,患者)の規模に照らせば,仮に,被告主張のとおり,引用商標の付された本件治療器・印刷物が,実際に取引者,需要者に販売,頒布されても,その数量及び金額は極少であるから,引用商標は,出願時までには,商標法4条1項10号で要求される周知性を獲得していなかった。」旨主張する。なるほど本件治療器の本件商標の出願時及び登録時までの間の販売数量等は必ずしも多数とはいえないが,本件治療器は,遠赤外線治療のための医療用具であるから,大量消費型商品とは異なり,元来その需要者層が限定されているという取引の実情を勘案すると,前認定の本件治療器の販売及び本件治療器に係るカタログの頒布等により,引用商標は,本件商標の出願時及び登録時において,被告の業務に係る本件治療器を表示するものとして上記需要者の間に周知であったというべきであるから,原告の上記主張は採用することができない。
したがって,原告主張の取消事由1は理由がない。
2 取消事由2(商標の類否判断の誤り)について (1) 原告は,「本件商標「ON〜Q」は,「ON」と「Q」の間が中黒ではなく「〜」の記号よりなり,また,「Q」の文字構成も「○」の下に「〜」を結合したユニークなデザインとなっているのに対し,引用商標「On・Q」は,引用商標の使用に係る商品「温灸器」の「温灸」の称呼「オンキュウ」をアルファベットの当て字「On」,「Q」と中黒で表したものであり,その使用商品との関係上,その称呼自体に識別力があるわけではなく,識別力はその外観のみにあるから,両者の構成上の違いを考慮すると,本件商標に接した需要者が引用商標との関係で商品の出所の混同を生ずるおそれはなく,本件商標は引用商標と類似しない。」旨主張するので,検討する。
(2) 本件商標は,別紙審決書写しの「別掲本件商標」欄に記載のとおり,「ON〜Q」との文字を横書きしてなるものであり,「Q」の文字は,大きさが「ON」に比べてやや大きく,また,構成が「○」の下に「〜」を結合した字体となっている。これに対し,引用商標は,「On・Q」の文字を横書きしてなるものである。
そこで,本件商標と引用商標とを比較すると,両者は,共に,「オンキュー」との称呼を生じ,称呼を同一とするというべきである。また,外観について検討すると,両者の相違点としては,@前者では「N」が大文字であるのに対し,後者では小文字の「n」である点,A前者では,「Q」の文字の大きさが「ON」に比べてやや大きく,「Q」の文字の構成が「○」の下に「〜」を結合した字体となっているのに対し,後者では,「Q」の文字の大きさが「O」の文字の大きさと同じであり,「Q」の文字の字体も他の文字と同じである点,B前者の「〜」が,後者では「・」となっている点が挙げられるが,全体としてみると,三文字の欧文字の配列を同一にするものであり,「ON」(または「On」)と「Q」との間に区切りのための記号を配置したものである点で共通しているから,上記相違点は決して著しいものとはいえず,両者は外観において類似するというべきである。(なお,観念については,両者とも造語であり,特段の観念を生じないというべきである。) したがって,本件商標と引用商標とは,称呼及び外観において同一又は類似するものであるから,全体として商品の出所の誤認混同を生じるおそれのある類似の商標であるというべきであり,原告の上記主張は採用することができず,原告主張の取消事由2は理由がない。
3 取消事由3(商品の類否判断の誤り)について (1) 原告は,「@本件商標の指定商品中の,原告の主力商品である「点滴ポンプ,薬の投与セット,カテーテル,注射器」(医療用機械器具に含まれる。)と,引用商標の使用に係る商品「温灸器」とは,使用方法や,生産,販売方法が全く異なり,また,A本件商標の指定商品中の「家庭用電気マッサージ器」と,引用商標の使用に係る商品「温灸器」とは,その用途,機能や,生産,販売方法が全く異なるから,これらの事情によれば,本件商標の指定商品中の「点滴ポンプ,薬の投与セット,カテーテル,注射器,家庭用電気マッサージ器」は,これに同一又は類似の商標が使用されても,引用商標の使用に係る商品「温灸器」と出所の混同を生ずるおそれがあるとは認められないから,両者は類似しない。」旨主張するので,検討する。
(2) 前記認定のとおり,本件治療器は,遠赤外線治療に使用されるものであって,「はり又はきゅう用器具」として医療用具製造承認を受けたものであるから,本件商標の指定商品中の「医療用機械器具」の範疇に属する商品であるというべきであり,原告主張の使用態様の相違等を勘案しても,同じく「医療用機械器具」として使用される「点滴ポンプ,薬の投与セット,カテーテル,注射器」と類似する商品というべきである。また,証拠(乙4の1,8の1,14の1)によれば,本件治療器の効果として,「血行を促進する,筋肉のこりをほぐす,神経痛・筋肉痛を緩和する。」等が挙げられているから,このような本件治療器の用途,機能等は,「家庭用電気マッサージ器」と共通する部分が多いものというべく,そうすると,本件治療器は,「家庭用電気マッサージ器」とも類似する商品というべきである。
したがって,原告の上記主張は採用することができず,原告主張の取消事由3は理由がない。
4 結論 以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,他に本件審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって,原告の本件請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 北山元章
裁判官 清水節
裁判官 沖中康人
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