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関連審決 取消2002-30180
関連ワード 指定商品 /  不使用 /  国内 / 
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事件 平成 14年 (行ケ) 636号 審決取消請求事件
原告 協和電線株式会社
同訴訟代理人弁護士 岡田康夫
同 廣政 純一郎
同 宮下 幾久子
被告ザ ブルートゥースエスアイジー インコー ポレーテッド
同訴訟代理人弁理士 浅村皓
同 浅村肇
同 小池恒明
同 岩井秀生
同 高梨範夫
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2003/08/27
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の請求
1 特許庁が取消2002-30180号事件について平成14年11月15日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
前提となる事実(争いのない事実)
1 特許庁における手続の経緯 原告は、指定商品を商標法施行規則別表(平成3年通産令70号による改正前のもの、以下、商品の区分はこれによる。)第11類の「電線,その他本類に属する商品」とし、別紙審決書の写し(以下「審決書」という。)の別掲のとおりの図形からなる登録第663434号商標(昭和38年11月4日登録出願、昭和39年12月31日設定登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である。
被告は、平成14年2月19日、本件商標につき、第11類のうち、「回転電気機械,配電用または制御用機械器具,電球類および照明器具,電池,電気磁気測定器,民生用電気機械器具,電気通信機械器具,電子応用機械器具」(以下「本件指定商品」という。)についての不使用による登録取消しの審判の請求をした。
特許庁は、同請求を取消2002-30180号事件として審理した上、平成14年11月15日、「登録第663434号商標の登録は、その指定商品中「回転電気機械,配電用または制御用機械器具,電球類および照明器具,電池,電気磁気測定器,民生用電気機械器具,電気通信機械器具,電子応用機械器具」について取り消す。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同月26日、原告に送達された。
2 本件審決の理由 本件審決は、審決書に記載のとおり、「本件商標は、本件審判の請求登録日前3年以上、日本国内において、商標権者により、本件取消しに係る商品の何れかについて使用されていたと認めることはできない。」として、本件商標を商標法50条の規定により本件指定商品について取り消すべきものであると判断した。
原告主張の審決取消事由の要点
本件商標は、被告が取消しを求める本件指定商品の一部について、本件審判の請求登録日(平成14年3月13日)前3年以内の期間中、これを使用した事実が認められる(取消事由1、2)から、本件審決は、違法として取り消されるべきである。
1 取消事由1(フェルール付楔ファイバでの使用) 本件商標は、原告が製造販売している「フェルール付楔ファイバ」に使用されており、このフェルール付楔ファイバは、第11類「電気通信機械器具」中の「電気通信機械器具の部品及び附属品」の「接続器」に該当する。
(1) レーザーダイオード素子(LD素子)から出力されたレーザ光は、そのままでは拡散するため、光ファイバの一端にレーザ光を集光するためのレンズが取り付けられ、この光ファイバとレンズを一体化したレンズドファイバと、レーザーダイオード素子とを光結合してモジュール化したレーザーダイオードモジュール(LDモジュール)が、光通信に用いられる。そして、このレンズドファイバのレンズが楔形であるものが、楔ファイバであり、この楔ファイバをLDモジュールのベースに固定するために、フェルール(いわばファイバを被覆するパイプ)を取り付けたものが、フェルール付楔ファイバである。
このフェルール付楔ファイバは、単にレーザ光の通り道ではなく、レーザ光を集光して伝播する役割を担っている。すなわち、これは、複数のレンズの組合せと光ファイバとを一体的に組み込んだものであり、発光素子から出射される光をレンズを用いて絞り込んでいるのであるから、単に光を導通ないし伝達しているのではなく、物理的に改変させているといえる。このように電気あるいは光に何らかの物理的又は化学的改変を加えるものは、第11類の「電線及びケーブル」に該当するものでなく、電気の作用を機能の本質的要素とするものであって、他の商品区分に該当しない限り、上記「電気通信機械器具の部品及び附属品」の「接続器」に該当すると解される。
(2) 原告は、このフェルール付楔ファイバに本件商標を使用して、前記期間中、原告の親会社である古河電気工業株式会社等に納入するなど単体の製品として取り引きしていたものである。また、このフェルール付楔ファイバの日本語及び英語の紹介パンフレットには、本件商標が使用されているから、フェルール付楔ファイバの販売に際して、本件商標が使用されていたと認められる。
2 取消事由2(光学式ボイド計のセンサでの使用) 本件商標は、原告が製造販売している「光学式ボイド計のセンサ」に使用されており、この光学式ボイド計のセンサは、第11類「電気通信機械器具」中の「電気磁気測定器」の「検出器」か、あるいは、同類の「電子応用機械器具」に該当する。
(1) 光学式ボイド計は、液体中のボイド(気泡)を検出するセンサと、そのセンサが検出したボイドの数や発生頻度等を計測する計測器とから構成される。センサと計測器とは、通常別売りされていて、装置に組み付けられた1又は複数のセンサに任意の計測器が接続され、全体として光学式ボイド計が構成される。
そして、原告は、光学式ボイド計のうち、センサ部分を製造出荷しており、この光学式ボイド計センサは、原子炉の蒸気発生器に取り付けられ、蒸気発生器内部で発生する気泡を検出する役割を果たしているのであるから、第11類「電気通信機械器具」中の「電気磁気測定器」の「検出器」に該当することは明らかである。
(2) 仮に、光学式ボイド計のセンサが第11類の「電気磁気測定器」に該当しないとしても、同類の「電子応用機械器具」に該当する。
すなわち、原告が製造する光学式ボイド計と同じ方式である「光ファイバープローブによる気泡計測装置」(甲16)は、光電子倍増管、フォトトランジスター等を使用しており、測定原理は電子の作用を応用したものであるから、第10類「測定機械器具」には含まれず、超音波応用測深器やガイガー計数器等と同様に、第11類の「電子応用機械器具」に該当する。
(3) 原告は、上記の光学式ボイド計センサを製造し、前記期間中、本件商標を使用したシールを貼付するなどして梱包の上、販売していたから、本件商標の使用の事実が認められる。
被告の反論の要点
本件審決の認定・判断は正当であり、本件審決に原告主張の違法はない。
1 取消事由1について 「フェルール付楔ファイバ」は、レンズによってレーザ光の絞り込みを行っているにすぎず、物理的な改変を加えているとはいえないから、第11類「電気機械器具」中の「電線 ケーブル」の「接続函」あるいは「終端函」に該当するものである。
しかも、当該製品が単独で取り引きされた事実は認められない。
2 取消事由2について 商品区分上の「電気磁気測定器」とは、「電気の単位又は磁気の単位を測定するものであって、電気又は磁気により測定するものではない」(乙6)から、
「光学式ボイド計のセンサ」は、これに該当するものでなく、また、電子の作用が機械器具の機能の面で本質的な要素とはなっていないから、「電子応用機械器具」にも該当しない。光学式ボイド計のセンサは、原子炉の蒸気発生器内部で発生する気泡を検出するものであるから、第10類「測定機械器具」中の「誘導単位計量器」に該当することが明らかである。
しかも、原告提出の証拠によって、本件商標が付された当該製品が原告により製造販売されている事実は認められない。
当裁判所の判断
1 取消事由1(フェルール付楔ファイバでの使用)について (1) 光ファイバによる光通信は、レーザーダイオード素子から出力されたレーザ光を光ファイバに入射させて行うが、出力されたレーザ光の回折現象による拡散を防止するため、光ファイバの一端に拡散するレーザ光を集光するためのレンズが取り付けられ、光ファイバのコア内にレーザ光を入射させるための光の絞り込みが行われる。このレンズが楔形であるものが、楔ファイバであり、この楔ファイバに、LDモジュールのベースに固定するためのフェルールを取り付けたものが、フェルール付楔ファイバであると認められる(甲4、11ないし14、乙1ないし5)。
原告は、原告の製造するフェルール付楔ファイバが、単に光を導通ないし伝達しているのではなく、発光素子から出射される光をレンズを用いて絞り込んでいるのであるから、物理的に改変させており、電気の作用を機能の本質的要素とするものとして、第11類の「電気通信機械器具の部品及び附属品」の「接続器」に該当すると主張する。
しかし、第11類の「電気通信機械器具の部品及び附属品」は、電気の作用を機能の本質的要素とするものである(甲9)ところ、フェルール付楔ファイバは、前記認定のとおり、レーザーダイオード素子から出力されたレーザ光の拡散を防止するため、光ファイバの一端にレーザ光を集光するための楔形レンズを取り付け、この楔形レンズの形状によりレーザ光を入射させるための光の絞り込みを行っているものであり、電気光学的な作用としてのレンズの屈折率変化等により、光の集光作用を行うわけではない。
したがって、フェルール付楔ファイバは、レンズの形状により光の進行方向を変化させるという物理的な改変を行っているとしても、電気の作用を機能の本質的要素とするものとは認められないから、第11類の「電気通信機械器具の部品及び附属品」の「接続器」に該当するものではなく、同類の「電線及びケーブル」に該当するものと解され、原告の上記主張は、採用することができない。
(2) そうすると、原告が、本件商標が使用された事実を立証するために提出したフェルール付楔ファイバの日本語及び英語の紹介パンフレット等(甲4、11、
14、15)について検討するまでもなく、原告主張の取消事由1には理由がない(なお、本件商標が付されたフェルール付楔ファイバが、商品として取り引きされていることを認めるに足る証拠はない。)。
2 取消事由2(光学式ボイド計のセンサでの使用)について (1) 原告の製造する光学式ボイド計のセンサが取り付けられる光学式ボイド計は、蒸気発生器内部の液体中に光ファイバの先端部分を配設し、該ファイバ内を通して先端部分に光を供給して、気泡が先端部分を通過する際の反射による光量の変化を検出し、その検出された計測結果に基づいて、液体中の気泡の数や発生頻度、
体積率、通過速度等を測定するものと認められる(甲2の1、甲16、乙7、8及び弁論の全趣旨)。
原告は、光学式ボイド計のセンサが、第11類「電気通信機械器具」中の「電気磁気測定器」の「検出器」か、あるいは、同類の「電子応用機械器具」に該当すると主張する。
しかし、商品区分上の「電気磁気測定器」は、「電気の単位又は磁気の単位を測定するもの」(甲9、乙6)、すなわち、電気的変量又は磁気的変量を測定するものであるから、上記のように光量の変化を用いて気泡の数や発生頻度等を検出する光学式ボイド計のセンサが、これに該当するものでないことは明らかである。
また、商品区分上の「電子応用機械器具」は、電子の作用が機械器具の機能の面で本質的な要素になっているものである(甲9)ところ、当該センサは、対象である液体中の気泡の数、発生頻度等を、光ファイバの供給する光の光量の変化によって検出しているものであり、その後、この検出された光量の変化が電気的に処理されて当該数値が算出されるとしても、光量の変化により気泡を検出するというセンサの機能自体は、電子の作用を本質的な要素としているとは認められないから、光学式ボイド計のセンサは、「電子応用機械器具」に該当するものでもない。
したがって、原告の上記主張を採用することはできない。
(2) そうすると、原告が、本件商標が付された光学式ボイド計のセンサが取り引きされている事実を立証するために提出した各証拠(甲2の1ないし6、甲7、
8)について検討するまでもなく、原告主張の取消事由2には理由がない。
3 結論 以上のとおり、原告主張の取消事由にはいずれも理由がなく、その他本件審決にこれを取り消すべき瑕疵は認められない。
よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 北山元章
裁判官 清水節
裁判官 沖中康人